JP3833560B2 - 水素検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料電池のカソードから排出されるカソードオフガス中の水素を検出する水素検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば固体高分子膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されたスタックを備えており、アノードに燃料として水素が供給され、カソードに酸化剤として空気が供給されて、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電するようになっている。
【0003】
このような固体高分子膜型燃料電池等の燃料電池において、従来、例えば特公平6−52662号公報に開示されているように、燃料電池のカソード側の排出系に酸素検出器および水素検出器を備え、各検出器による検出値が所定の閾値を超えた場合に、燃料電池の運転を停止する保護装置が知られている。
また、特開平6−223850号公報に開示されているように、燃料電池のカソード側の排出系に水素検出器を備え、この水素検出器により水素が検出された場合に、燃料電池の運転を停止する保護装置が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記水素検出器は、流通するガス中の水素を検出するため、図3に示すように、検査対象ガス中の水素濃度が一定の場合にもガス流量によって検出出力(水素濃度)が相違するという出力特性を有しており、ガス流量が水素検出器の検出精度に影響を及ぼすことがわかった。
【0005】
しかしながら、前記燃料電池では、カソードに供給される空気流量が燃料電池の運転状態に応じて制御されるため、カソードから排出される反応済みの空気(以下、空気オフガスという)の流量も燃料電池の運転状態に応じて変化し、そのため、水素検出器の検出精度に検出誤差が生じるという問題があった。
そこで、この発明は、検出結果の信頼性向上を図ることができる水素検出装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、燃料電池(例えば、後述する実施の形態における燃料電池2)のカソードから排出されるカソードオフガス(例えば、後述する実施の形態における空気オフガス)が流通するガス流路(例えば、後述する実施の形態における空気排出路22)に設置され前記カソードオフガス中の水素を検出する水素検出手段(例えば、後述する実施の形態における水素センサ25)と、前記ガス通路を流れる前記カソードオフガスの流量に関与する物理量に応じて前記水素検出手段の検出値を補正する補正手段(例えば、後述する実施の形態における制御装置30)と、を備え、前記物理量は、前記燃料電池の出力電流と、前記燃料電池の電流目標値と、前記燃料電池の目標発電量と、前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給するコンプレッサ(例えば、後述する実施の形態におけるコンプレッサ23)の回転数のいずれかであることを特徴とする水素検出装置である。
このように構成することにより、カソードオフガスの実流量を検出することなく前記水素検出手段の検出値を補正することができ、カソードオフガスのガス流量に起因する検出誤差をなくすことができ、その結果、水素検出装置の検出結果に対する信頼性が向上することができる。
【0007】
また、カソードオフガス中の水素濃度管理に対する信頼性が向上する。
【0008】
また、カソードオフガスの実流量を検出することなく、前記水素検出手段の検出値を補正することができるので、装置構成を簡略化することができる。
また、この発明においては、前記水素検出手段は接触燃焼式水素センサとすることができる。ここで、接触燃焼式水素センサとは、水素が触媒に接触した際に燃焼する熱を利用して、検出素子と温度補償素子との電気抵抗の差異から水素濃度を検出するセンサである。
このように構成することにより、カソードオフガス中の水素を高精度に検出することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る水素検出装置の実施の形態を図1および図2の図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る水素検出装置1を備えた燃料電池システムの構成図である。この実施の形態において、水素検出装置1を備えた燃料電池システムは、例えば電気自動車等の車両に搭載されている。
【0010】
燃料電池2は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されたスタックからなる。この燃料電池2では、図示しない水素供給装置から水素供給路11を介して燃料として水素が前記アノードに供給されるとともに、コンプレッサ23により空気供給路21を介して酸化剤として空気が前記カソードに供給され、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで酸素と電気化学反応を起こして発電するようになっている。そして、未反応の水素、すなわち水素オフガスは水素排出路12から排出され、反応済みの空気、すなわち空気オフガス(カソードオフガス)は空気排出路(ガス流路)22から排出される。
なお、コンプレッサ23は、制御装置30によって、燃料電池2の出力電流に応じた流量の空気を燃料電池2に供給するように制御される。
【0011】
空気排出路22の途中には、空気排出路22を流れる空気オフガスの流量を検出する流量センサ24と、空気オフガス中の水素濃度を検出する水素センサ(水素検出手段)25が設けられている。
水素センサ25は、空気排出路22の外周面上に固定され、水素を検知する検知部25aが空気排出路22内に突出するように設置されている。なお、水素センサ25は、検知部25aが空気排出路22の内面とほぼ面一となるように設置することも可能である。
水素センサ25は、いわゆるガス接触燃焼式水素センサであり、水素が触媒に接触した際に燃焼する熱を利用して、検出素子と温度補償素子との電気抵抗の差異から水素濃度を検出するようになっている。
流量センサ24の出力信号と水素センサ25の出力信号は制御装置30に入力される。
【0012】
この燃料電池システムでは、前述したように、燃料電池2の出力電流に応じてコンプレッサ23の運転を制御することにより燃料電池2への供給空気流量が制御されるので、燃料電池2の出力増大に従って、燃料電池2から排出され空気排出路22に流れる空気オフガスの流量も増大する。
また、前述したように、水素センサ25には、検査対象ガスの流量によって検出精度が相違するという特性があるため、水素センサ25で検出された空気オフガス中の水素濃度が、真の水素濃度と異なる値となる場合がある。
【0013】
そこで、この実施の形態の水素検出装置1では、空気オフガス流量と水素センサ25の検出精度との関係を予め実験的に求め、その実験結果に基づいて、水素センサ25で検出された検出濃度(検出値)Aと空気オフガス流量Qから、真の水素濃度(補正後濃度)Bを求める関数B=f(A,Q)を設定し、さらに、これに基づいて、検出濃度Aと空気オフガス流量Qと補正後濃度Bからなる3次元の濃度補正マップを作成し、この濃度補正マップを制御装置30のROMに記憶しておくことにした。図2は、濃度補正マップの一例を示している。
【0014】
そして、この水素検出装置1では、制御装置30は、水素センサ25で検出された空気オフガス中の水素濃度と、流量センサ24で検出された空気オフガスの流量に基づいて、前記濃度補正マップを参照して補正後濃度を求め、この補正後濃度を空気オフガス中の実際の水素濃度として管理することとした。これにより、空気オフガス流量に起因する検出誤差が解消され、燃料電池2から排出される空気オフガス中の水素濃度管理に対する信頼性が向上する。なお、濃度補正マップを用いずに、前記関数B=f(A,Q)から補正後濃度を算出することも可能である。
この実施の形態においては、制御装置30により水素検出手段の検出値を補正する補正手段が実現され、水素検出装置1は、水素センサ25および流量センサ24と、制御装置30により構成される。
【0015】
なお、前述した実施の形態では、流量センサ24によって空気オフガスの実流量を検出し、この実流量に応じて水素センサ25の検出値を補正するようにしているが、空気オフガスの実流量を検出しないで行うことも可能である。
その場合には、空気オフガスの流量に関与する物理量に応じて水素センサ25の検出値を補正するようにする。ここで、空気オフガスの流量に関与する物理量とは、空気オフガスの流量と所定の関係を有して増減する物理量であり、燃料電池2の出力電流、燃料電池2の電流目標値、コンプレッサ23の回転数、燃料電池2の目標発電量などを例示することができる。以下、その理由を説明する。
【0016】
燃料電池2の出力電流から空気オフガスの流量を推定可能であるので、空気オフガスの実流量に代えて燃料電池2の出力電流を用いて水素センサ25の検出値の補正を行うことができる。
また、燃料電池2から排出される空気オフガスの流量は燃料電池2に供給される空気流量に応じて決まるものであり、燃料電池2の目標発電量に応じて燃料電池2の電流目標値が決定され、この電流目標値に応じて燃料電池2のカソードに供給すべき空気流量が決定され、決定された空気流量に応じてコンプレッサ23の回転数が制御されるので、燃料電池2の電流目標値、あるいは、コンプレッサ23の回転数、あるいは、目標発電量から空気オフガスの流量を推定可能である。したがって、空気オフガスの実流量に代えて、燃料電池2の電流目標値、あるいは、コンプレッサ23の回転数、あるいは、目標発電量を用いて、水素センサ25の検出値の補正を行うことができる。
このように、空気オフガスの流量に代え、空気オフガスの流量に関与する物理量を用いた場合には、流量センサ24が不要になり、水素検出装置1の構成を簡略化することができる。
【0017】
〔他の実施の形態〕
尚、この発明は前述した実施の形態に限られるものではない。
例えば、水素検出手段は、接触燃焼式水素センサに限るものではなく、ガス流中で水素を検出することができるタイプのものであれば、その形式は問わない。
【0018】
【発明の効果】
以上説明するように、この発明によれば、燃料電池のカソードから排出されるカソードオフガスが流通するガス流路に設置され前記カソードオフガス中の水素を検出する水素検出手段と、前記ガス通路を流れる前記カソードオフガスの流量に関与する物理量に応じて前記水素検出手段の検出値を補正する補正手段と、を備え、前記物理量は、前記燃料電池の出力電流と、前記燃料電池の電流目標値と、前記燃料電池の目標発電量と、前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給するコンプレッサの回転数のいずれかであることにより、カソードオフガスの実流量を検出することなく前記水素検出手段の検出値を補正することができ、カソードオフガスのガス流量に起因する検出誤差をなくすことができ、その結果、水素検出装置の検出結果に対する信頼性が向上するという優れた効果が奏される。
【0019】
また、カソードオフガス中の水素濃度管理に対する信頼性が向上するという効果がある。
また、カソードオフガスの実流量を検出することなく、前記水素検出手段の検出値を補正することができるので、装置構成を簡略化することができるという効果がある。
また、この発明において、前記水素検出手段は接触燃焼式水素センサとした場合には、カソードオフガス中の水素を高精度に検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る水素検出装置の一実施の形態における構成図である。
【図2】 水素センサの検出値をガス流量に応じて補正するための濃度補正マップである。
【図3】 同一水素濃度の検査対象ガスを検出した場合の水素センサの出力特性図である。
【符号の説明】
1 水素検出装置
2 燃料電池
22 空気排出路(ガス流路)
25 水素センサ(水素検出手段)
30 制御装置(補正手段)
Claims (2)
- 燃料電池のカソードから排出されるカソードオフガスが流通するガス流路に設置され前記カソードオフガス中の水素を検出する水素検出手段と、
前記ガス通路を流れる前記カソードオフガスの流量に関与する物理量に応じて前記水素検出手段の検出値を補正する補正手段と、
を備え、前記物理量は、前記燃料電池の出力電流と、前記燃料電池の電流目標値と、前記燃料電池の目標発電量と、前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給するコンプレッサの回転数のいずれかであることを特徴とする水素検出装置。 - 前記水素検出手段は接触燃焼式水素センサであることを特徴とする請求項1に記載の水素検出装置。
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