JP3833444B2 - モールド真空バルブ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂でモールドするモールド真空バルブ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
定格電圧33kVクラス以下の中電圧回路においては、遮断機に真空バルブが数多く用いられている。真空バルブは、容器内部の真空絶縁に比べて、外部の沿面が気中絶縁となり絶縁耐力が低いため、例えばエポキシ樹脂でモールドして絶縁補強されることがある。
一般的にエポキシ樹脂でモールドした真空バルブを図5に示す。真空バルブ14の固定軸15と可動軸16の先端には一対の電極17が取り付けられ、これらは例えばセラミックからなる高真空の真空容器18に収納されている。真空容器18の上下にはフランジ19が銀ロウ付けされ、可動軸16側には伸縮自在のベローズ20が取り付けられている。真空容器18の周囲には、例えばエポキシ樹脂でモールドしたヒダ付きの絶縁層21が取り付けられていて、絶縁補強されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
真空バルブ14において、電源回路を構成するため真空バルブ14の上下には他の電気機器に接続させる主回路導体が接続される。真空バルブ14は、電極17を開閉する可動軸16が上下移動するため、可動部分、主回路導体部を含めて真空バルブ14を絶縁層21で一体モールドすることは構造面から困難であった。これは、最近の電気機器の縮小化に逆行するものであった。
本発明の目的は、真空バルブの固定側と可動側の両側を絶縁層で一体モールドして、モールド真空バルブの全体形状を縮小化することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明においては、真空容器と、この真空容器の内部から外部に導出される固定軸および可動軸と、これらの軸にそれぞれ固設され且つ前記真空容器内で接離可能な状態で配設した固定電極および可動電極と、前記可動軸が貫通して接触する接続部と、前記可動軸に直角に配置され且つ前記接続部に接続される主回路導体と、前記真空容器の外側にモールドして設けられる絶縁層とを有するモールド真空バルブにおいて、
前記可動軸が可動できるように前記可動軸の周囲に空隙を持たせる前記接続部と同等の径を有する金属筒を、前記真空バルブと前記接続部間に設け、前記固定軸から前記真空容器、前記主回路導体及び前記金属筒までを一体モールドして前記絶縁層を形成したことを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるエポキシ樹脂で一体モールドした真空バルブの第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、一体モールドした真空バルブの断面を示したものである。真空バルブ1がエポキシ樹脂の絶縁層2で一体モールドされている。真空バルブ1は、図示していない電力用ケーブルをブッシング部2aに接続し主回路導体3から受電される。主回路導体3は、接続部4で可動軸5に接続されている。可動軸5は接続部4を貫通していて、接続部4には可動軸5との接続状態を維持できる接触子が収納されている。また、受電側と同様に図示していない絶縁母線をブッシング部2bに接続し固定軸6と絶縁母線を接続する。受電側と同様に凸状のブッシング部2bとなっているが、凸状の傾斜角度は接続される部分により若干異なっている。絶縁層7はEPゴムからなる可撓性材料である。絶縁層7は可動軸5が可動できるように可動軸5との間に空隙をもつように可動軸5のまわりにモールドしてある。また可動軸5には真空バルブ1の接点を開閉する操作ロッド8が連結されており、図示していない操作機構で上下の運動が行われる。操作ロッド8などを組み立てるためにスペースが設けてある。9は貫通形変流器であり電源側に設けられている。
【0006】
ここで、このような絶縁層2、7で一体モールドした真空バルブ1を製造する方法について説明する。
真空バルブ1を絶縁層2でモールドする場合、可動軸5側の凹形状に合わせて凸形状の入れ子と称する金型を装着する必要があるが、直角に交差している主回路導体3のため、真空バルブ1まで凸形状の入れ子を装着することができない。このため、可動軸5が可動できるように可動軸5との間に空隙をもつように可動軸5のまわりと主回路導体3にあらかじめ絶縁層7をモールドしておく。これらを絶縁層2をモールドする金型に取付けて、絶縁層7部分を除いた凸形状の入れ子を装着して絶縁層2で一体モールドする。
このようにして、一体の絶縁層2でモールドすることで全体形状の縮小化を図ることができる。
また、モールド時には約150℃に加熱されるので、熱膨張率の大きいEPゴムからなる絶縁層7は膨張して真空バルブ1に密着する。絶縁層7が真空バルブ1に密着しシール性が向上するので、エポキシ樹脂が可動軸5側に浸入することを防ぐことができる。また、モールドの高温から常温までの冷却時において、絶縁層2のエポキシ樹脂や真空バルブ1のセラミック、主回路導体3の熱膨張係数は異なるので、残留応力が発生する。しかしながら、EPゴムからなる絶縁層7がエポキシ樹脂の収縮に追従して変位するので、エポキシ樹脂側への残留応力は低減される。このように、絶縁層7は硬化収縮時の熱応力の緩和も図ることができる。
【0007】
さらに、真空バルブ1は、モールドされる絶縁層2で固定軸6側が全面モールドされているが、可動軸5側は可撓性の絶縁層7を介しているので、真空バルブ1の両端がエポキシ樹脂で拘束されているのではない。真空バルブ1の形状から円周方向よりも軸方向が長いため、軸方向の残留応力が大きくなるが、この残留応力は両端が拘束されていないので、可動軸5側は応力的に見れば開放されている。そのためエポキシ樹脂への残留応力が低減される。
このようにして、残留応力の少ない耐クラック性の優れた真空バルブ1のモールドができる。
また、図2には絶縁層2の外周に接地層10を設けた構成を示す。この場合、電界ストレスが上昇するので、可動軸5と絶縁層7との間の空隙部の電界が上昇する。この電界を緩和するため、金属製で網目織りしたシールド11を絶縁層7の外周に装着して、これらを一体でエポキシ樹脂の絶縁層2をモールドしている。シールド11の両端部には、リングを設け端部の電界緩和を図っている。シールド11は、真空バルブ1と接触していて同電位となっている。
この構成により、可動軸5と絶縁層7との間の空隙部は可動軸5が移動できる程度の2〜3mmのギャップ長であるが、組み立て公差で微少ギャップが形成されてもシールド11により電界緩和が図れる。またシールド11の網目には、エポキシ樹脂が充填し接着されるが、硬化収縮時などの残留応力を網目で吸収してくれるので、耐クラック性にも優れたものとなる。
【0008】
また、接地層10は貫通形変流器9の近傍まで設けてあるので、接地層10端部の電界緩和が図れる。これは、貫通形変流器9の電位が主回路と比べて十分に低く、接地電位と見なしてよい。このため、接地層10の端部は、貫通形変流器9により電界が抑制される。これにより、主回路導体3に接続される図示していないケーブルとの勘合が、電界的に抑制されており容易となる。
また、図3には絶縁層2の外周に接地層10を設けた構造で、可撓性の絶縁層7の表面に導電層12を設けた構成を示す。導電層12は、例えばエポキシ樹脂に銀粉を混合した銀ペイントであり、絶縁層7の表面にハケ塗りで設けられている。導電層12は、真空バルブ1と接触していて同電位となっている。また、電界緩和のために導電層12の下端にはくぼみが設けてある。
この構成により、可動軸5と絶縁層7との間の空隙部に微少ギャップが形成されても電界緩和が図れる。また、導電層12は、絶縁層2がモールド時に硬化収縮する時、同じエポキシ形樹脂のため、絶縁層2側に接着する。したがって、エポキシ樹脂の絶縁層2側に残留応力を発生させることなく、耐クラック性の優れたものになる。また図2と同様に、接地層10が貫通形変流器9の近傍まで設けてあるので、接地層10端部の電界緩和が図れる。
【0009】
次に、第2の実施の形態について説明する。図4には真空バルブ1の可動軸側に金属筒13を設けた構造を示す。金属筒13は、可動軸5を通し真空バルブ1と接続部4との間に設けてある。
モールド時においては、まず金属筒13を可動軸5を通して真空バルブ1と接続部4との間に設ける。これらを絶縁層2をモールドする金型に取付けて、絶縁層2の凹形状に合わせた凸形状の入れ子を接続部4に密着シールさせる。これは、例えば入れ子と接続部4との間にシリコンゴムのような耐熱性のあるOリングを設ければ容易にできる。エポキシ樹脂を金型に充填してモールドする。金属筒13は、真空バルブ1と気密に接合されているので、可動軸5部分にエポキシ樹脂が浸入することはない。
この構成により、真空バルブ1の主回路導体3、可動軸5、固定軸6などを一体でモールドできるので、全体形状の縮小化を図ることができる。
また、図4では金属筒13の径は接続部4の径と同程度であるので、可動軸5のまわりの空隙部は図2、3のときよりも広くなる。
このような構成により、可動軸5と金属筒13との間の空隙部の電界は、ギャップ長が十分に広いため、抑制されて、絶縁特性上は良好となる。尚、金属筒13によって可動軸5と金属筒13との間の空隙部の電界が緩和されている。
【0010】
また、図4では金属筒13の径を接続部4の径と同程度にしているが、金属筒13、接続部4の径を真空バルブ1の径と同程度にすれば残留応力の少ない耐クラック性にも優れたものとなる。また、金属筒13の代わりにあらかじめ絶縁物でつくられた筒を用いても耐クラック性に優れたものとなる。この場合、図2のように金属製で網目織りしたシールドを筒の外周に装着したり、図3のように筒の表面に導電層を設けたりすることのよって空隙部の電界緩和が図れる。
他の実施例として、真空ボトルからなる開閉器、断路器など可動軸を有している機器の可動部分に、可撓性材料からなる絶縁層を設け、これらの可動部を固定側も含めてエポキシ樹脂で一体にモールドすれば、固定軸と可動軸側が一体の形状となり、全体形状の縮小化が図れ、また、熱応力による残留応力を低減させることができる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、真空バルブの可動軸が可動できるように可動軸の周囲に空隙を持たせる部材を設け、真空バルブの固定側から可動側までの主回路部分を絶縁層で一体モールドしたので、全体形状を縮小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるモールド真空バルブの断面を示す図。
【図2】本発明におけるモールド真空バルブの可動部分を示す図。
【図3】本発明におけるモールド真空バルブの可動部分を示す図。
【図4】本発明におけるモールド真空バルブの可動部分を示す図。
【図5】従来のモールド真空バルブの断面を示す図。
【符号の説明】
1、14・・・真空バルブ
2、7、21・・・絶縁層
3・・・主回路導体
4・・・接続部
5、16・・・可動軸
6、15・・・固定軸
8・・・操作ロッド
9・・・貫通形変流器
10・・・接地層
11・・・シールド
12・・・導電層
13・・・金属筒
17・・・電極
18・・・真空容器
19・・・フランジ
20・・・ベローズ
Claims (2)
- 真空容器と、この真空容器の内部から外部に導出される固定軸および可動軸と、これらの軸にそれぞれ固設され且つ前記真空容器内で接離可能な状態で配設した固定電極および可動電極と、前記可動軸が貫通して接触する接続部と、前記可動軸に直角に配置され且つ前記接続部に接続される主回路導体と、前記真空容器の外側にモールドして設けられる絶縁層とを有するモールド真空バルブにおいて、
前記可動軸が可動できるように前記可動軸の周囲に空隙を持たせる前記接続部と同等の径を有する金属筒を、前記真空バルブと前記接続部間に設け、前記固定軸から前記真空容器、前記主回路導体及び前記金属筒までを一体モールドして前記絶縁層を形成したことを特徴とするモールド真空バルブ。 - 真空容器と、この真空容器の内部から外部に導出される固定軸および可動軸と、これらの軸にそれぞれ固設され且つ前記真空容器内で接離可能な状態で配設した固定電極および可動電極と、前記可動軸が貫通して接触する接続部と、前記可動軸に直角に配置され且つ前記接続部に接続される主回路導体と、前記真空容器の外側にモールドして設けられる絶縁層とを有するモールド真空バルブの製造方法であって、
前記可動軸が可動できるようにこの可動軸の周囲に空隙を持たせる金属筒で覆う第1の工程と、
可動軸側には前記接続部に密着すOリングを設けた入れ子を装着し前記真空バルブ、前記主回路導体及び前記金属筒を金型に組み込み絶縁層で一体モールドする第2の工程と
からなるモールド真空バルブの製造方法。
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