JP3832819B2 - 薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびに磁気ディスク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果膜に縦バイアス磁界を印加する磁区制御層を備えた薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、ならびにこの薄膜磁気ヘッドを用いた磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気変換素子の一種である磁気抵抗効果素子(以下、「MR(Magnetoresistive)素子」という。)を有する再生ヘッド部と、誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッド部とを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。
【0003】
MR素子としては、巨大磁気抵抗効果(以下、「GMR(Giant Magnetoresistive)効果」という。)を示す磁性膜(GMR膜)を用いたGMR素子が一般的である。とりわけ、比較的構成が単純で量産に好ましく、微弱な磁界であっても大きな磁気抵抗変化を示すスピンバルブ型GMR膜を用いたGMR素子が主流となっている。
【0004】
このようなMR素子は、磁性膜の積層体であるMR膜を備えている。このMR膜には、一般にフリー層と呼ばれる磁気感受層が含まれ、記録媒体から発生する信号磁界に応じて磁化方向が自由に回転するようになっている。この磁気感受層の両端部には、磁区制御層が、記録媒体のトラック幅に相当する方向に設けられている。この磁区制御層は、磁気感受層内部の複数の磁区を仕切る磁壁が外部磁界によって移動することに起因する、いわゆるバルクハウゼンノイズを防止するために、磁気感受層の単磁区化を促進する働きを有している。この磁区制御膜およびMR膜の上面には、磁気感受層にセンス電流を流すためのリード層が設けられている。
【0005】
一般に、薄膜磁気ヘッドにおいて、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面をエアベアリング面(ABS)という。MR素子において、ABSからその反対側の端面までの長さはMRハイト(MR素子高さ)と呼ばれている。一方、MR素子の積層面内においてABSに平行な方向のMR素子の長さは、記録媒体のトラック幅に対応する寸法(以下、「MR素子幅」という。)である。最近では、著しい高記録密度化に伴い、このMR素子幅がますます小さくなっている。さらに、これに伴い、MRハイトの微小化も進んでいる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなMR素子の小型化により、以下のような問題が生じてきている。すなわち、本来、磁気感受層の単磁区化を促進し、再生時にバルクハウゼンノイズ等のノイズを抑制する機能を有する磁区制御膜の一部が、上記の機能とは反対の作用、つまり、磁気感受層のMR素子幅方向への単磁区化を妨げる作用を生じることがある。これは、本来、磁気感受層の単磁区化のためには、MR膜の積層面と平行な面内において、磁気記録媒体対向面に平行な方向に磁界が印加されればよいのであるが、磁区制御膜の面積がMR膜に比べて必要以上に大きい場合には、上記以外の角度を持った方向からも磁界が印加されることになるからである。この場合には、単磁区化が妨げられてしまい、再生時のバルクハウゼンノイズを低減することができない。
【0007】
上記問題を解決するには、磁区制御層のサイズが必要以上に大きくならないようにすればよい。しかしながら、最近では、薄膜磁気ヘッドの微小化に伴い、上記したMRハイトの微小化も著しく進んだため、これに対応した微小なサイズの磁区制御層を高精度に形成することが困難になってきている。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、バルクハウゼンノイズを低減することのできる薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびにその薄膜磁気ヘッドを用いた磁気ディスク装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドであり、一対の磁区制御層が、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含み、第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、第1の領域の厚みよりも小さい磁区制御層が残存するように構成したものである。
【0010】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設されると共に磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層が、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含んでいる。この第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みが、第1の領域の厚みよりも小さくなるように構成したので、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。
【0011】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドであり、一対の磁区制御層は、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域とを含み、第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、第1の領域の厚みよりも小さい磁区制御層が残存するように構成したものである。
【0012】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の磁区制御層が、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域とを含み、第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みが、第1の領域の厚みよりも小さくなるように構成したので、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。
【0013】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、基体と、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であり、基体上に磁気抵抗効果膜を選択的に形成する第1の工程と、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向する領域に、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含むように、一対の磁区制御層を選択的に形成する第2の工程と、一対の磁区制御層および磁気抵抗効果膜の上に、パターニング用のマスクを選択的に形成する第3の工程と、このマスクを利用して一対の磁区制御層を選択的にエッチングすることにより、一対の第1の領域の厚みよりも、一対の第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みを薄くする第4の工程とを含むようにしたものである。第4の工程では、一対の磁区制御層のうちの一対の第3の領域内の部分が磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に残存するように、マスクおよび一対の磁区制御層の少なくとも一方によって覆われた領域以外の領域における磁気抵抗効果膜が全て除去されるまで一対の磁区制御層の選択的なエッチングを行うようにする。
【0014】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、第1の工程において、基体上に磁気抵抗効果膜を選択的に形成し、第2の工程において、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向する領域に、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含むように、一対の磁区制御層を選択的に形成する。次いで、第3の工程において、一対の磁区制御層および磁気抵抗効果膜の上に、パターニング用のマスクを選択的に形成したのち、第4の工程において、このマスクを利用して一対の磁区制御層を選択的にエッチングする。これにより、一対の第1の領域の厚みよりも、一対の第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みを薄くすることが可能となる。したがって、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。
【0015】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、基体と、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であり、基体上に磁気抵抗効果膜を選択的に形成する第1の工程と、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向する領域に、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域とを含むように、一対の磁区制御層を選択的に形成する第2の工程と、一対の磁区制御層および磁気抵抗効果膜の上に、パターニング用のマスクを選択的に形成する第3の工程と、このマスクを利用して一対の磁区制御層を選択的にエッチングすることにより、第1の領域の厚みよりも、第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みを薄くする第4の工程とを含むようにしたものである。第4の工程では、一対の磁区制御層のうちの一対の第3の領域内の部分が磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に残存するように、マスクおよび一対の磁区制御層の少なくとも一方によって覆われた領域以外の領域における磁気抵抗効果膜が全て除去されるまで一対の磁区制御層の選択的なエッチングを行う。
【0016】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、第1の工程において、基体上に磁気抵抗効果膜を選択的に形成し、第2の工程において、記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向する領域に、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域を含むように、一対の磁区制御層を選択的に形成する。次いで、第3の工程において、一対の磁区制御層および磁気抵抗効果膜の上に、パターニング用のマスクを選択的に形成したのち、第4の工程において、このマスクを利用して一対の磁区制御層を選択的にエッチングする。これにより、一対の第1の領域の厚みよりも、一対の第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みを薄くすることが可能となる。したがって、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。
【0017】
本発明の第1の観点に係る磁気ディスク装置は、磁気記録媒体と、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドとを備えた磁気ディスク装置であり、一対の磁区制御層は、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含み、第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、第1の領域の厚みよりも小さい磁区制御層が残存するように構成したものである。
【0018】
本発明の第1の観点に係る磁気ディスク装置では、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設されると共に磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層が、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含んでいる。この第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みが、第1の領域の厚みよりも小さくなるように構成したので、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。
【0019】
本発明の第2の観点に係る磁気ディスク装置は、磁気記録媒体と、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドとを備えた磁気ディスク装置であり、一対の磁区制御層は、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域とを含み、第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、第1の領域の厚みよりも小さい磁区制御層が残存するように構成したものである。
【0020】
本発明の第2の観点に係る磁気ディスク装置では、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設されると共に磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層が、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する領域である一対の第2の領域とを含んでいる。この第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みが、第1の領域の厚みよりも小さくなるように構成したので、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。
【0021】
本発明の第1および第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の磁区制御層が、一対の第3の領域における厚み方向の少なくとも一部が除去された形状を有するように構成することが望ましい。
【0022】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の第1の領域が、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される領域であり、一対の第2の領域が、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する領域であることが望ましい。
【0023】
また、本発明の第1および第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の第3の領域が、一対の第2の領域の全体と一致することが望ましい。
【0024】
また、本発明の第1および第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の第3の領域が、一対の第1の領域に接すると共に、一対の第2の領域における、磁気抵抗効果膜を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在する一対の領域であってもよい。この場合、一対の第3の領域における磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向の長さが、0.05μm以上であることが望ましい。
【0025】
さらに、本発明の第1および第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の第3の領域における、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さが、磁気抵抗効果膜における磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さの1.5倍以上であることが望ましい。
【0026】
さらにまた、本発明の第1および第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一対の磁区制御層のうちの一対の第3の領域内の部分は、磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に延在していることが望ましい。
【0027】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第2の工程において、スパッタリング法を用いて原料粒子を堆積させることにより一対の磁区制御層を形成し、第4の工程において、一対の第3の領域が以下の条件式(2)を満足するようにエッチングを行うことが望ましい。
W=2{β/2+αtan(πθ/180)}…(2)
但し、
W:一対の第3の領域における、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿った幅
α:一対の磁区制御層における基体側の面からマスクの上面までの距離
β:マスクにおける、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿った幅
θ:基体に垂直な方向に対する原料粒子の入射角度
【0028】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第4の工程において、一対の第1の領域が、磁気感受層の両隣に延在し、磁気抵抗効果膜の、記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、記録媒体対向面とによって画定される領域であり、一対の第2の領域が、延長線から記録媒体対向面と反対の方向に延在する領域となるように、一対の磁区制御層を形成することが望ましい。
【0029】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第4の工程において、一対の第3の領域が、一対の第2の領域の全体と一致するように一対の磁区制御層を形成することが望ましい。
【0030】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第4の工程において、一対の第3の領域が、一対の第1の領域に接すると共に、一対の第2の領域における、磁気抵抗効果膜を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在する一対の領域となるように、一対の磁区制御層を形成するようにしてもよい。この場合、一対の第3の領域の各々における磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向の長さが、0.05μm以上となるように一対の磁区制御層を形成することが望ましい。
【0031】
さらに、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第4の工程において、一対の第3の領域における、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さが、磁気抵抗効果膜における、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さの1.5倍以上となるように、一対の磁区制御層を形成することが望ましい。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
<磁気ディスク装置>
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドが適用される磁気ディスク装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気ディスク装置の構成を示したものである。なお、本実施の形態では、CSS(Contact-Start-Stop)動作方式と呼ばれる方式の磁気ディスク装置を例示して説明するものとする。この磁気ディスク装置は、複数の磁気記録媒体1と、これらの磁気記録媒体1の各面に対応して配設された複数の磁気ヘッド装置2とを備えている。磁気記録媒体1は、筐体3に固定されたスピンドルモータ4により回転するようになっている。磁気ヘッド装置2は、筐体3に固定された固定軸5に、ベアリング6を介して回動可能なように取り付けられている。ここでは、複数の磁気ヘッド装置2が共通のベアリング6を介して固定軸5に取り付けられており、これにより、複数の磁気ヘッド装置2が一体となって回動するようになっているものとする。磁気ヘッド装置2の先端側には磁気ヘッドスライダ7(以下、単にスライダ7と呼ぶ)が取り付けられている。また、この磁気ディスク装置は、磁気ヘッド装置2の他方の後端側に、磁気記録媒体1のトラック上におけるスライダ7の位置決めを行うための駆動部8を備えている。駆動部8は、固定軸5を中心として磁気ヘッド装置2を回動させるものであり、これにより、スライダ7は、磁気記録媒体1の径方向に移動可能となっている。
【0035】
図2は、図1に示したスライダ7の拡大斜視図である。スライダ7は、例えばアルティック(Al2 O3 ・TiC)よりなり、ほぼ六面体状に形成された基体100を有している。そのうちの磁気記録媒体1に対向する面が、記録媒体対向面あるいはエアベアリング面(ABS:Air Bearing Surface )9である。図2に示したように、スライダ7のABS9に直交する一側面には、薄膜磁気ヘッド10が設けられている。
【0036】
続いて、このように構成された磁気ディスク装置による記録・再生の動作について、図1を参照して説明する。CSS動作方式の場合、磁気ディスク装置が動作していない時、すなわち、スピンドルモータ4が停止しており磁気記録媒体1が回転していない状態においては、スライダ7のABS9と磁気記録媒体1とを接触させておく。記録・再生動作を行う際には、スピンドルモータ4により磁気記録媒体1を高速回転させる。磁気記録媒体1が高速回転すると空気流が発生し、揚力が生まれる。スライダ7を、この揚力によって磁気記録媒体1の表面から浮上させると共に、駆動部8により、この磁気記録媒体1の表面に対して水平方向に相対的に移動させる。この際、スライダ7の一側面に形成された薄膜磁気ヘッド10によって記録・再生を行うのである。
【0037】
次に、図3ないし図5を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド10について、より詳細に説明する。
【0038】
<薄膜磁気ヘッド>
図3は、スライダ7(図1)の一側面に形成された薄膜磁気ヘッド10の構造を表す分解斜視図である。図4は、図3に示した矢印IV方向から眺めた平面図を表し、図5は、図4に示したV−V線に沿った矢視方向断面図である。図3および図5に示したように、薄膜磁気ヘッド10は、基体100に近い側から順に、再生ヘッド部10Aと記録ヘッド部10Bとが積層されて一体に構成されたものである。再生ヘッド部10Aは、磁気記録媒体1に記録された磁気情報を再生するためのものであり、一方の記録ヘッド部10Bは、磁気記録媒体1のトラックに磁気情報を記録するためのものである。
【0039】
再生ヘッド部10Aは、図3および図5に示したようにエアベアリング面9に露出する側において、例えば、基体100の上に、下部シールド層101、下部ギャップ層102、MR素子10C、上部ギャップ層120および上部シールド層121が順に積層された構造を有している。
【0040】
下部シールド層101は、例えば、ニッケル鉄合金(NiFe)等の磁性材料により構成され、後述するMR膜20に不要な磁界の影響が及ばないようにする機能を有する。下部ギャップ層102は、アルミナ(Al2 O3 )や窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁材料からなり、下部シールド層101と後述のMR膜20との絶縁をするためのものである。MR素子10Cは、MR膜20と、その両隣に延在する一対の磁区制御層105A,105B(以下、総称して「磁区制御層105」という。)と、その磁区制御層105の上に形成される一対の第1リード層106A,106B(以下、総称して「第1リード層106」という。)と、この第1リード層106上に選択的に形成される一対の第2リード層109A,109B(以下、総称して「第2リード層109」という。)とを含んでいる。ここで、本実施の形態のMR膜20は、本発明における「磁気抵抗効果膜」の一具体例に対応するものである。上部ギャップ層120は、下部ギャップ層102と同様に絶縁材料からなり、上部シールド層121とMR膜20との間を絶縁するものである。上部シールド層121は、下部シールド層101と同様にニッケル鉄合金(NiFe)等の磁性材料により構成され、やはりMR膜20に不要な磁界の影響が及ばないようにするためのものである。この上部シールド層121は、記録ヘッド部10Bにおける下部磁極としての機能も兼ね備えている。なお、上部シールド層121とは別の層として、新たに下部磁極を構成するようにしてもよい。
【0041】
MR膜20は、磁性材料を含む多層構造からなるスピンバルブ型のMR膜であり、磁気記録媒体1に記録された情報を読み出す機能を有するものである。MR膜20の底面は下部ギャップ層102に接し、上面は上部ギャップ層120に接している。再生ヘッド部10Aでは、磁気記録媒体1からの信号磁界に応じてMR膜20の電気抵抗が変化することを利用して、磁気記録媒体1に記録された情報を再生するようになっている。
【0042】
ここで、図6を参照して、MR膜20の構成について説明する。図6は、図4に示したVI−VI線に沿った矢視方向の構成を示す断面図である。MR膜20は、例えば、下部ギャップ層102の上に、下地層21、固定作用層22、被固定層23、非磁性層24、フリー層と呼ばれる磁気感受層25および保護層26とが順に積層された構造を有している。
【0043】
下地層21は、例えば、5nmの厚みを有するタンタル等から構成される。固定作用層22は、イリジウムマンガン合金(IrMn)等の反強磁性を示す材料により構成され、被固定層23の磁化方向を固定する、いわゆるピンニング層として機能するものである。コバルト鉄合金(CoFe)等からなる被固定層23は、一般的にピンド層と呼ばれ、固定作用層22との界面における交換結合により磁化の向きが固定されている磁性層である。非磁性層24は、例えば、3nmの厚みを有する銅(Cu)あるいは金(Au)等の非磁性金属材料から構成される。磁気感受層25は、例えば2nmの厚みを有するコバルト鉄合金(CoFe)等からなり、磁気記録媒体1からの信号磁界に応じて磁化の向きが変化するようになっている。保護層26は、例えば、1nmの厚みを有するタンタル等から構成される。
【0044】
上記した一対の磁区制御層105および一対の第1リード層106は、MR膜20の両側の下部ギャップ層102上に順に積層されている。磁区制御層105は、コバルト白金合金(CoPt)等を含む硬磁性材料により構成され、MR膜20の記録トラック幅方向に対応する方向に沿った両隣に延在している。この磁区制御層105は、磁気感受層25の磁区の向きを揃えて単磁区化することでバルクハウゼンノイズの発生を抑制するように機能する。第1リード層106は、磁区制御層105を介してMR膜20にセンス電流を流すための電流経路として機能するものであり、図3および図4に示したように第2リード層109を介し、電極EA,EBにそれぞれ接続されている。
【0045】
このような構成を有する再生ヘッド部10Aでは、磁気感受層25の磁化方向が、磁気記録媒体1からの信号磁界に応じて変化するため、固定作用層22によって一方向に固定された被固定層23の磁化方向との相対的変化を生じる。この際、MR膜20内にセンス電流を流すと、磁化方向の変化が磁気抵抗の変化として現れる。これを利用することにより信号磁界を検出し、磁気情報を再生するようになっている。
【0046】
続いて、記録ヘッド部10Bの構成について説明する。図3ないし図5に示したように、記録ヘッド部10Bは、下部磁極としても機能する上部シールド層121、記録ギャップ層41、コイル43,45、フォトレジスト層42,44,46および上部磁極47を有している。
【0047】
記録ギャップ層41は、アルミナ等の絶縁材料よりなり、上部シールド層121の上に形成される。この記録ギャップ層41は、コイル43,45の中心部に対応する位置に磁路形成のための開口部41Aを有している(図4および図5参照)。コイル43は、記録ギャップ層41上にフォトレジスト42を介して、開口部41Aを中心として形成されている。さらに、コイル43を覆うようにフォトレジスト層44が所定のパターンに形成されている。このフォトレジスト層44上には、コイル45と、これを覆うフォトレジスト層46とが形成されている。ここで、コイル43とコイル45とは、図示しない接続部においてそれぞれの一端同士が電気的に接続され、一連のコイルとして機能するようになっている。なお、コイル43,45の各他端側は、電極43E,45Eにそれぞれ接続されている(図3および図4参照)。
【0048】
記録ギャップ41、開口部41Aおよびフォトレジスト層42,44,46の上には、例えば、NiFe合金あるいは窒化鉄(FeN)等の高飽和磁束密度を有する磁性材料からなる上部磁極47が形成されている。この上部磁極47は、開口部41Aを介して上部シールド層121と接触しており、磁気的に連結している。なお、図示しないが、アルミナ等からなるオーバーコート層が記録ヘッド部10Bの上面全体を覆うように形成されている。
【0049】
このような構成を有する記録ヘッド部10Bは、コイル43,45に流れる電流によって上部シールド層121と上部磁極47とを含んで構成される磁路内部に磁束を生じ、これにより記録ギャップ層41の近傍に生ずる信号磁界によって磁気記録媒体1を磁化し、情報を記録するようになっている。
【0050】
次に、図7(A)を参照して、本発明の重要な特徴部分であるMR膜20近傍領域における磁区制御層105について詳細に説明する。図7(A)は、本実施の形態における薄膜磁気ヘッド10に含まれるMR膜20近傍の拡大平面図である。なお、図7(A)は、MR膜20と、このMR膜20に縦バイアスを印加する磁区制御層105との位置関係を説明するための平面図であるので、記録ヘッド部10Bあるいは第1リード層106等、ここでの説明に不要な部分については省略する。
【0051】
図7(A)における4点EFGHを頂点とする矩形領域に、MR膜20が形成されている。このMR膜20の一側面を示す線分EFは、ABS9を表す。MR膜20の両隣には、ABS9に対向する磁気記録媒体1の記録トラック幅方向(x軸方向)に対応する方向に沿ってMR膜20を挟んで互いに対向するように磁区制御層105が配設され、MR膜20に含まれる磁気感受層25に磁界を印加するようになっている。具体的には、MR膜20を挟んで対峙した2辺、すなわち線分EHを含む直線L1Aと線分FGを含む直線L1Bとをそれぞれの基線として、互いに離れる方向に延在する領域に磁区制御層105が形成されている。それらの領域を磁区制御層形成領域50A,50B(以下、総称して「磁区制御層形成領域50」という。)とする。
【0052】
磁区制御層形成領域50は、その機能の面から大きく2種類に分類することができる。すなわち、信号磁界非印加状態において磁気感受層25の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域51A,51Bと、これとは反対に、信号磁界非印加状態において磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域52A,52Bとに分けられる。
【0053】
上記第1の領域51A,51Bは、磁気感受層25の両隣に延在し、MR膜20の、ABS9と反対側の端縁を示す線分GHを含む直線L2Aおよび直線L2Bと、ABS9とによって画定される領域である。すなわち、この第1の領域51A,51Bに形成される磁区制御層105は、MR膜20に対し、x軸方向に磁界を印加し、磁気感受層25の単磁区化を促進する作用を示す。
【0054】
一方、上記第2の領域52A,52Bは、一対の第2の領域は、直線L2AおよびL2BからABS9と反対の方向に延在する領域である。すなわち、この第2の領域52A,52Bに形成される磁区制御層105は、MR膜20に対し、様々な方向の磁界を印加してしまうため、磁気感受層25の単磁区化を妨げる作用を示す。特に、MR膜20のごく近傍の第3の領域53A,53Bにおける磁区制御層105は、磁気感受層25の単磁区化を妨害し、バルクハウゼンノイズを引き起こす原因となる。
【0055】
そこで本実施の形態では、MR膜20に対する不要な印加磁界を防ぐために、第3の領域53A,53Bにおける磁区制御層105の厚み方向の少なくとも一部を除去して、この第3の領域53A,53Bの厚みが第1の領域51A,51Bにおける厚みよりも薄くなるようにしている。少なくとも、第3の領域53A,53Bにおける磁区制御層105は、磁気感受層25の厚みに対応する空間を除いた空間に延在するように配設されていることが望ましい。すなわち、磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間を占める磁区制御層105は除去されていることが望ましい。このような、磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間にも磁区制御層が延在していると、記録トラック幅方向(x軸方向)とは平行でない方向の大きなバイアス磁界がMR膜20に印加されることとなるからである。具体的には、図6において、磁区制御層105の上面(第1リード層106側の面)が、エッチング位置30に対応する位置よりも下部ギャップ層102側になるように構成されていることが望ましい。すなわち、例えば保護層26が1nmの厚みを有し、磁気感受層25が2nmの厚みを有している場合、第3の領域53A,53Bの磁区制御層105は、第1の領域51A,51Bの厚みよりも3nm以上薄くなるように構成されていることが好ましい。
【0056】
ここで、第3の領域53A,53Bのサイズについて詳しく説明する。第3の領域53A,53Bは、x軸方向の長さが0.05μm以上であると共に、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向(y軸方向)の長さが、MR膜20のy軸方向の長さの1.5倍以上を有する領域である。具体的には、領域53Aは、直線L1Aから例えば0.05μmの距離にあると共に直線L1Aに平行である線分JNと、直線L2AからMRハイトに相当する線分EHの1.5倍の距離にあると共に直線L2Aに平行である線分MNと、直線L1Aと、直線L2Aとによって画定される領域である。同様に、領域53Bは、直線L1Bから例えば0.05μmの距離にあると共に直線L1Bに平行である線分PKと、直線L2BからMRハイトに相当する線分FGの1.5倍の距離にあると共に直線L2Bに平行である線分LPと、直線L1Bと、直線L2Bとによって画定される領域である。これらの領域53A,53Bは、一般に、磁界の強さが相互の距離の2乗に反比例して小さくなることから、バルクハウゼンノイズの発生を防ぐために最低限必要な距離を有する範囲として画定されたものである。上記した数値の意義については後述する。
【0057】
次に、本実施の形態の作用を、比較例と対比して説明する。図7(B)は、比較例としてのMR膜20近傍の拡大平面図である。磁区制御層形成領域50には、ほぼ均一の厚みを有する磁区制御層105が形成されている。このような構造では、磁気感受層25の単磁区化は困難である。上記したように、磁区制御層105のうち、第3の領域53A,53Bを占める部分が、MR膜20に対し、様々な方向からのバイアス磁界を印加してしまい、磁気感受層25の単磁区化を妨げるからである。これに対し、本実施の形態では、第3の領域53A,53Bにおける磁区制御層105の厚み方向の少なくとも一部を除去して、この第3の領域53A,53Bの厚みが第1の領域51A,51Bにおける厚みよりも薄くなるようにしている。こうすることにより、磁気感受層25の単磁区化を促進するように作用するバイアス磁界をMR膜20に印加しつつ、磁気感受層25の単磁区化を妨げるように作用する不要なバイアス磁界を低減することができる。
【0058】
次に、いくつかの変形例を説明する。図7(C)は、本実施の形態の薄膜磁気ヘッド10における、第1の変形例を示す拡大平面図である。この第1の変形例は、本発明の「第3の領域」が「第2の領域」の全体と一致した例に対応するものである。すなわち、磁区制御層形成領域50のうち、MR膜20の両隣に延在する第1の領域51A,51Bを除く全ての領域である第2の領域52A,52Bにおいて、磁区制御層105が、第1の領域51A,51Bの厚みよりも薄くなるように構成されている。この場合も、第2の領域52A,52Bにおいては、図7(A)と同様、少なくとも、磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間を占める磁区制御層105が除去されていることが望ましい。
【0059】
図7(D)は、本実施の形態における薄膜磁気ヘッド10の第2の変形例を示すMR膜20近傍の拡大平面図である。本変形例においては、第3の領域54A,54Bは、第1の領域51A,51Bに接すると共に、第2の領域52A,52Bにおける、MR膜20を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに、例えば0.05μm以上離れる方向に延在する一対の領域であり、これらの第3の領域54A,54Bにおける磁区制御層105の厚みが、第1の領域51A,51Bの厚みよりも薄くなるように構成されている。具体的には、一方の第3の領域54Aは、直線L1Aから例えば0.05μmの距離にあると共に直線L1Aに平行である直線と、直線L1Aと、直線L2Aとによって画定される領域であり、他方の第3の領域54Bは、直線L1Bから例えば0.05μmの距離にあると共に直線L1Bに平行である直線と、直線L1Bと、直線L2Bとによって画定される領域である。線分HJあるいは線分GKで示される距離は、バルクハウゼンノイズの発生を防ぐために最低限必要な距離である。なお、この場合、第3の領域54A,54Bにおいては、図7(A)と同様に少なくとも、磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間を占める磁区制御層105が除去されていることが望ましい。
【0060】
図7(E)は、本実施の形態における薄膜磁気ヘッド10の第3の変形例を示すMR膜20近傍の拡大平面図である。本変形例における第3の領域55A,55Bは、ABS9と反対側の端縁の延長線からABS9と反対の方向に延在する領域であり、ここでの磁区制御層105の厚みは、第1の領域51A,51Bの厚みよりも薄くなるように構成されている。第3の領域55A,55Bでは、y軸方向の長さが、MR膜20のy軸方向の長さの1.5倍以上を有する。具体的には、一方の第3の領域55Aは、直線L2Aと、直線L2AからMRハイトに相当する線分EHの長さの1.5倍の距離にあると共に直線L2Aに平行な直線L3Aとによって画定される領域であり、他方の第3の領域55Bは、直線L2Bと、直線L2BからMRハイトに相当する線分FGの長さの1.5倍の距離にあると共に直線L2Bに平行な直線L3Bとによって画定される領域である。直線L2Aと直線L3Aとの距離および直線L2Bと直線L3Bとの距離は、バルクハウゼンノイズの発生を防ぐために最低限必要な距離である。なお、この場合も、第3の領域55A,55Bにおいては、図7(A)と同様、少なくとも、磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間を占める磁区制御層105が除去されていることが望ましい。
【0061】
<薄膜磁気ヘッドの製造方法>
次に、薄膜磁気ヘッド10の製造方法について、適宜図面を参照して説明する。
【0062】
薄膜磁気ヘッドの説明に先立ち、まず、図8を参照して、磁気ヘッド装置の製造方法の全容について説明する。図8は、図1に示した磁気ヘッド装置2の形成工程全体の流れを表すものである。
【0063】
まず、アルティック(アルミナと炭化チタンとの複合材)等からなる基板(図示せず)を用意する(ステップS101)。この基板は、最終的に基体100となるものであり、複数の薄膜磁気ヘッド10を形成する十分な領域を有している。次に、この基板上に、のちにMR膜20となる多層膜103を有する再生ヘッド部10Aを形成し(ステップS102)、さらにこの再生ヘッド部10Aの上に記録ヘッド部10Bを形成することにより、薄膜磁気ヘッド10の形成が一応完了する(ステップS103)。次に、薄膜磁気ヘッド10の列ごとに切り出して棒状片を形成し、その棒状片における薄膜磁気ヘッド10の成膜面に直交する端面を機械研磨することで、ABS9を形成する(ステップS104)。さらに、個別の薄膜磁気ヘッド10ごとに切り出したのち所定形状になるように加工することで、スライダ7を形成する(ステップS105)。最後に、スライダ7をスライダ支持部2Aに搭載することで磁気ヘッド装置2が完成する。(ステップS106)。以上により、図1に示した磁気ヘッド装置2が完成する。
【0064】
次に、図3ないし図6を参照して、薄膜磁気ヘッド10の製造方法を詳細に説明する。
【0065】
まず、基体100となる基板上に、スパッタリング等によりNiFe合金等の導電性磁性材料よりなる下部シールド層101を形成したのち、下部シールド層101上にアルミナ等よりなる下部ギャップ層102を形成する。次に、この下部ギャップ層102上に、スピンバルブ構造を有するMR膜20となる多層膜103を形成する。具体的には、スパッタリング等を用いて、下地層21、固定作用層22、被固定層23、非磁性層24、磁気感受層25および保護層26とを順に積層する(図6参照)。続いて、フォトリソグラフィによるパターニングおよびイオンミリング等の処理を施すことで選択的に多層膜103をエッチングしたのち、最終的にMR膜20となる部分の多層膜103を挟んで対向するように、下部ギャップ層102上に1対の磁区制御層105(105A,105B)を形成する。さらに、磁区制御層105の上に、第1リード層106(106A,106B)と第2リード層109(109A,109B)とを順に形成する。こののち、下部ギャップ層102、磁区制御層105、第1リード層106、第2リード層109および多層膜103を覆うように、例えばスパッタリングにより上部ギャップ層120を形成する。この上部ギャップ層120の上に、NiFe合金等の導電性磁性材料よりなる上部シールド層121を選択的に形成する。
【0066】
以上により、スピンバルブ型の多層膜103と、磁区制御層105と、多層膜103に対して成膜面に垂直な方向に電流を流すための経路(すなわち、上部シールド層121、上部ギャップ層120、下部ギャップ層102および下部シールド層101)とを有する再生ヘッド部10Aの形成が一応完了する。なお、この再生ヘッド部10Aの製造方法については、後にさらに詳述する。
【0067】
続いて、再生ヘッド部10Aの上に、記録ヘッド部10Bを形成する。具体的には、まず、スパッタリング等により、上部シールド層121上に絶縁材料よりなる記録ギャップ層41を選択的に形成したのち、この記録ギャップ層41を部分的にエッチングし、磁路形成のための開口部41Aを形成する。
【0068】
次に、記録ギャップ層41の上に、フォトレジスト層42を所定のパターンで形成した後、開口部41Aを中心として渦巻き形状を有するコイル43を形成する。このコイル43を覆うようにして、スローハイトを決定するフォトレジスト層44を所定のパターンに形成する。なお、スローハイトとは、コイル43を埋め込んでいるフォトレジスト層44の最前端からABS9までの距離を指す。次いで、フォトレジスト層44上に、必要に応じて、コイル45およびフォトレジスト層46を繰り返し形成する。なお、本実施の形態ではコイルを2層積層するようにしたが、1層だけでもよいし、また、3層以上積層しても構わない。
【0069】
フォトレジスト層46を形成した後、記録ギャップ層41、開口部41A、フォトレジスト層44,46の上に、上部磁極47を選択的に形成する。次に、この上部磁極47をマスクとして、イオンミリング等により、記録ギャップ層41を選択的にエッチングする。さらに、図示しないレジスト層を形成し、これをマスクとして、ABS9が形成される領域の近傍領域において、上部シールド層121を所定の深さまで選択的にエッチングする。これにより、記録ヘッド部10Bの形成が一応完了する。
【0070】
最後に、上部磁極47を含むすべての構造物を覆うように、アルミナ等の絶縁材料よりなる図示しないオーバーコート層を形成する。こうして、再生ヘッド部10Aと記録ヘッド部10Bとを有する薄膜磁気ヘッド10の形成が完了する。
【0071】
次に、図9ないし図20を参照して、再生ヘッド部10Aの製造方法をさらに詳細に説明する。この再生ヘッド部10Aに含まれる磁区制御層105の製造方法が、本実施の形態における重要な特徴部分である。なお、図9ないし図20は、再生ヘッド部10Aが形成される基板の一部を拡大して表すもので、(A)は平面構成を表す。(B)および(C)は、(A)に図示した切断線に沿った断面構成を表す。具体的には、(B)は(A)におけるABS9となる面に垂直な方向に沿った断面図であり、(C)は(A)におけるABS9となる面に平行な方向に沿った断面図である。ただし、図9の段階では(A)の平面図に方向性がないため、任意の方向の切断線に沿った断面図を(B)とする。
【0072】
まず、基板の上に、全面を覆うように下部シールド層101を形成した後、図9に示したように、下部シールド層101上に全面に渡ってアルミナからなる下部ギャップ層102を、例えば20nmの厚みで形成する。次いで、下部ギャップ層102上の全面に渡って多層膜103を、例えば30nmの厚みとなるように形成する。上記の下部シールド層101ないし多層膜103は、いずれもスパッタリング法等によって行う。なお、多層膜103の製造方法については、既に説明したので、ここでは省略する。
【0073】
次に、多層膜103上に、フォトリソグラフィ法を用いて、図10に示したように選択的にフォトレジストパターン104を形成する。続いて、図11に示したように、このフォトレジストパターン104をマスクとしてイオンミリングを行う。この際、マスクに保護されていない領域の多層膜103は厚み方向に完全に除去されると共に、その下側の層である下部ギャップ層102も厚み方向に例えば3nmほど削られる。こうすることで、多層膜103を選択的に形成すると共に、対向する2つの下部ギャップ層パターン102A,102Bを形成する。この工程が、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法における「第1の工程」の一具体例に対応する。
【0074】
次いで、図12に示したように、これら2つの下部ギャップ層パターン102A,102Bを含め、全面に渡って磁区制御層105を形成する。この磁区制御層105は、例えば50nmの厚みとなるように硬磁性材料を用いて形成する。この磁区制御層105が、磁気感受層25に対して磁界を印加する機能を発揮する。さらに、図13のように、全面に渡って第1リード層106を例えば50nmの厚みとなるように形成したのち、図14のようにフォトレジストパターン104をリフトオフすることで、磁区制御層105および第1リード106を選択的に除去する。こうすることにより、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向(x軸方向)に沿って多層膜103を挟んで互いに対向する一対の磁区制御層105(105A,105B)と、それらの上に形成される一対の第1リード層106(106A,106B)とを形成する。この工程が、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法における「第2の工程」の一具体例に対応する。この際、第1リード層106は完全に露出するが、磁区制御層105Aの上面は第1リード層106Aに覆われ、磁区制御層105Bの上面は第1リード層106Bに覆われている。また、磁区制御層105は、この段階では、多層膜103によって周囲を取り囲まれている。
【0075】
次に、図15に示したように、対向して配置される1対の第1リード層106および、それらに挟まれた一部の多層膜103を覆うようにフォトリソグラフィ法によって選択的にフォトレジストパターン107を形成する。この工程が、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法における「第3の工程」の一具体例に対応する。ここで、フォトレジストパターン107によってマスクされる、磁区制御層105Aおよび105Bの間に挟まれたわずかな矩形領域の多層膜103一部が、最終的にMR膜20となる領域部分に相当する。
【0076】
続いて、フォトレジストパターン107をマスクとしてイオンミリング等でエッチングすることにより、図16に示したように、未保護部分の多層膜103および第1リード層106の全てと、磁区制御層105における厚み方向の一部を除去する。こうすることで、図7(A)に示した第1の領域51A,51Bの厚みよりも、領域52A,52Bのうち少なくとも一部をなす領域53A,53Bの厚みを薄くする。この工程が、本発明における「第4の工程」の一具体例に対応する。この工程では、磁区制御層105の、少なくとも多層膜103に含まれる磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間を占める部分を除去することが望ましい。具体的には、図6に示したエッチング位置30A,30Bに対応する位置よりも第1リード層106に近い側の磁区制御層105を除去することが望ましい。また、磁区制御層105の除去される領域は、x軸方向には、多層膜103を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に少なくとも0.05μmの長さを有すると共に、y軸方向には、最終的に得るMR膜20のy軸方向の長さの1.5倍以上の長さを有することが望ましい。
【0077】
続いて、図17に示したように、フォトレジストパターン107をリフトオフしたのち、第2リード層109の形成をおこなう。図18に示したように、下部ギャップ層102、多層膜103および磁区制御層105の一部を除く露出部分と、第1リード層106の一部を除く周縁部とを覆うように選択的にフォトレジストパターン108を形成したのち、図19に示したように、第2リード層109を全面に渡って形成する。この第2リード層109は、例えば、タンタル(Ta)、銅(Cu)、タンタルが順に積層された3層構造からなる。第2リード層109には、最終的に、電極EA,EBにそれぞれに繋がる配線が接続され、第1リード層106および磁区制御層105を介しMR膜20にセンス電流を導く経路となる。次に、フォトレジストパターン108をリフトオフし、図20に示したように、第1リード層106の上に選択的に形成された第2リード層109を露出させる。以上により、再生ヘッド部10Aが一応完成する。なお、図20(A),(B)における破線部分は、記録ヘッド部10B等を形成したのち、ABS9を形成するために機械研磨によって除去される部分を示す。
【0078】
上記したように、本実施の形態では、一旦大きな面積を有する磁区制御層105を形成した後、磁気感受層25の単磁区化を妨げるように作用する不要な磁区制御層105を、エッチング処理により除去している。こうすることにより、最初から微小なパターンを直接形成する場合と比べ、精度良く微細な加工をすることができ、最終的に、所望の形状を有する微小なサイズの磁区制御層105を容易に得ることが可能となる。
【0079】
<製造方法の第1の変形例>
図22ないし図27を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法の第1の変形例について説明する。上記した再生ヘッド部10Aでは、図20に示したように、電流経路となる第1リード層106の先端部分、すなわち、MR膜20近傍の第1リード層106におけるy軸方向の幅が非常に細くなっている。このため、MR膜20にセンス電流を流す際の電気抵抗値が非常に高くなり、実用上、支障を来す場合も考えられる。この変形例では、第1リード層106に、さらに追加リード層116を付加することによって電気抵抗値を低減する製造方法について説明する。
【0080】
図22は、図17に続く、本変形例における一工程を説明する平面図および断面図である。図22に示したように、下部ギャップ層102および多層膜103の露出部分の全てと、磁区制御層105の周縁部とを覆うと共に、第1リード層106を露出させるように選択的にフォトレジストパターン113を形成する。次いで、図23に示したように、例えば金およびタンタルの2層構造からなる追加リード層116を全面に渡って形成する。そののち、フォトレジストパターン113をリフトオフすることで、図24に示したように、第1リード層106上に形成された追加リード層116を露出させる。これにより、MR膜20を挟んだ第1リード層106Aおよび106Bの間の電気抵抗値が下がり、全てのセンス電流をより確実にMR膜20の内部を流すことが可能となる。
【0081】
続いて、第2リード層109を形成する。具体的には、まず、図25に示したように、追加リード層116の一部を除く周縁部を覆うと共に、下部ギャップ層102、多層膜103、磁区制御層105および第1リード層106の一部を除く露出部分を覆うように選択的にフォトレジストパターン114を形成する。次いで、図26に示したように、全面に渡って第2リード層109を形成したのち、フォトレジストパターン114をリフトオフすることで、図27に示したように、第2リード層109を追加リード層116上に露出させる。以上により、再生ヘッド部10Aが一応完成する。なお、図27(A),(B)における破線部分は、記録ヘッド部10B等を形成したのち、ABS9を形成するために機械研磨によって除去される部分を示す。
【0082】
本変形例では、第1リード層106Aおよび106B間における電気抵抗値が、最終的に、MR膜の電気抵抗値に50Ωを加えた値以下となることが望ましい。
【0083】
以上、説明したように、本変形例によれば、第1リード層106に、追加リード層116を付加するようにしたので、MR膜20を挟んだ第1リード層106Aおよび106B間の電気抵抗値を下げ、全てのセンス電流をより確実にMR膜20の内部を流すことが可能となる。
【0084】
<製造方法の第2の変形例>
次に、図28ないし図37を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法の第2の変形例について、以下に説明する。上記した製造方法の第1の変形例では、第1リード層106に追加リード層116を付加することによって電気抵抗値を低減する製造方法について説明した。本変形例では、図20に示した第1リード層106における微小な幅を有する先端部分の、x軸方向に沿った長さをより短くすることで、電気抵抗値の低減を図る。
【0085】
図28は、図14に続く、本変形例における一工程を説明する平面図および断面図である。図28に示したように、多層膜103および磁区制御層105の一部を除く露出部分と、第1リード層106の一部を除く周縁部とを覆うように、選択的にフォトレジストパターン107を形成する。次いで、図29に示したように、全面に渡って、例えば、アルミナ等によりキャップ層110を例えば30nmの厚みで形成する。キャップ層110は、後述の工程でエッチングを行う際に第1リード層106の保護を目的とするものであり、ミリング速度の遅い物性を有する他の材料を用いてもよい。
【0086】
フォトレジストパターン107をリフトオフし、図30に示したように、対向して配置された1対の第1リード層106の上に形成されたキャップ層110A,110B(以下、総称して「キャップ層110」という。)を露出させる。続いて、図31に示したように、キャップ層110と、第1リード層106と、それらに挟まれた一部の多層膜103を覆うようにフォトリソグラフィ法によって選択的にフォトレジストパターン111を形成する。ここで、フォトレジストパターン111によってマスクされる、第1リード層106Aおよび106Bの間に挟まれたわずかな矩形領域の多層膜103の一部が、最終的にMR膜20となる領域部分に相当する。
【0087】
続いて、フォトレジストパターン111をマスクとしてイオンミリング等でエッチングすることにより、図32に示したように、未保護部分の多層膜103および第1リード層106の全てと、露出部分の磁区制御層105およびキャップ層110における厚み方向の一部を除去する。これにより、のちにMR膜20となる多層膜103が、磁区制御層パターン105Aおよび105Bに挟まれた位置に選択的に形成される。フォトレジストパターン111をマスクとしてエッチングする目的は、MR膜20となる領域以外の不要な多層膜103を除去することと、MR膜20が形成される領域近傍の、磁気感受層25の単磁区化を妨げる不要な磁区制御層105を除去することにある。ここで、磁区制御層105における、少なくとも多層膜103に含まれる磁気感受層25の厚みに対応する、積層面に平行な方向の空間を占める部分については除去されることが望ましい。また、磁区制御層105の除去される領域は、x軸方向には、多層膜103を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に少なくとも0.05μmの長さを有すると共に、y軸方向には、最終的に得るMR膜20のy軸方向の長さの1.5倍以上の長さを有することが望ましい。この工程では、キャップ層110に保護されていた領域の第1リード層106は、完全に保存される。したがって、よりMR膜20に近い領域まで、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向に直交する方向に大きな幅を有する第1リード層106を形成することができる。
【0088】
続いて、図33に示したように、フォトレジストパターン111をリフトオフしたのち、第2リード層109の形成をおこなう。具体的には、図34に示したように、下部ギャップ層102、多層膜103、磁区制御層105および第1リード層106の一部を除く露出部分と、キャップ層110の一部を除く周縁部を覆うように選択的にフォトレジストパターン112を形成する。こののち、フォトレジストパターン112をマスクとして、イオンミリングによりキャップ層110の未保護部分を厚み方向に全て除去し、図35に示したように、第1リード層106および下部ギャップ層102を露出させる。次いで、図36に示したように、全面に渡って第2リード層109を形成したのち、フォトレジストパターン112をリフトオフすることで図37に示したように、第1リード層パターン106A,106Bの上に選択的に形成された第2リード層109A,109Bを露出させる。以上により、再生ヘッド部10Aが一応完成する。なお、図31(A),(B)における破線部分は、記録ヘッド部10B等を形成したのち、ABS9を形成するために機械研磨によって除去される部分を示す。
【0089】
以上のように、本変形例によれば、第1リード層106における微小な幅を有する先端部分の、x軸方向に沿った長さをより短くするようにしたので、電気抵抗値の低減を図ることができる。
【0090】
<第3の領域に関する具体例>
次に、第3の領域の好ましい大きさおよび位置について説明する。まず、第3の領域における、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向(x軸方向)に沿った寸法について説明する。この寸法、すなわち、図7(A),(D)に示した幅W1,W2は、プロセス上の制約から次のように規定することが望ましい。
【0091】
図21は、本実施の形態における図11および図12に相当する工程を表すものであり、ABS9に垂直な方向から眺めた断面図である。この工程では、フォトレジストパターン104をマスクとして用い、スパッタリング法を用いて下部ギャップ層102上に原料粒子を堆積させることにより、選択的に磁区制御層105を形成する。フォトレジストパターン104と下部ギャップ層102との間には、多層膜103が形成されている。幅Wは、第3の領域である領域53A,53Bおよび領域54A,54Bにおける、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向(x軸方向)に沿った幅である。ここで、磁区制御層105における基体100側の面からマスクの上面までの距離、すなわち、磁区制御層105を形成する領域の下部ギャップ層102上面からフォトレジストパターン104の上面までの距離をαとし、マスクにおける、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向(x軸方向)に沿った幅、すなわち、多層膜103の幅をβとし、基体100に垂直な方向に対する原料粒子の入射角度、すなわち、磁区制御層105の原料粒子の入射方向31と積層面に垂直な方向とのなす角度を入射角度θとすると、以下の式(3)で表される幅Wの領域に形成される磁区制御層105の厚みは不均一になる。ここで、幅Wの中心位置は、フォトレジストパターン104の中心位置と一致する。
【0092】
W=2{β/2+αtan(πθ/180)} …(3)
【0093】
なお、厚みが不均一になる原因は、原料粒子の入射角度θに傾きがあることにより、フォトレジストパターンの陰になる部分が生じるからである。入射角度θが大きくなるほど不均一な幅Wの領域は拡がる。したがって、入射角度θをゼロにすれば不均一領域は無くなることになる。しかし、実際には、原料粒子は僅かながらも互いに離れるように発散する。これにより、原料粒子の入射方向31を積層面に垂直な方向と一致させても、入射角度θを完全にゼロとすることはできず、不均一な厚みの領域が生じる。
【0094】
図7の領域53A,53Bあるいは、領域54A,54Bにおける、この幅Wに含まれる幅W1,W2の領域内の磁区制御層105の厚みがより厚くなってしまった場合、磁気感受層25の単磁区化を大きく妨げる要因となる。したがって、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法における第4の工程では、領域53A,53Bあるいは領域54A,54Bが上記条件式(3)を満足するようにエッチングを行うことが望ましい。具体的には、領域53A,53Bあるいは領域54A,54Bのうち、幅Wで規定される厚みの不均一な領域においては、エッチング処理により磁区制御層105を除去、または薄くすることが望ましく、それによって磁気感受層25の単磁区化が促進される。
【0095】
例えば、距離αを0.3μm、入射角度θを10°とした場合、幅Wは
W(μm)≒β+0.1
となる。よって、この場合、図7(A)に示した幅W1,W2は、いずれも0.05μmとなる。
【0096】
次に、第3の領域の、ABS9と直交する方向について説明する。
【0097】
まず、図7および図38を参照して、本実施の形態の薄膜磁気ヘッド10における磁区制御層105が示す磁界の強さの、磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向における距離依存性について説明する。図38は、図7(D)に示した第3の領域54A(54B)に形成された磁区制御層105が、直線L2A(L2B)からのy軸方向の距離によってどのように磁界の強さが変化するのかについてシュミレーションを行った結果である。図38の横軸は、MRハイト(すなわち線分EH(FG)の長さ)を1単位として規格化した場合の直線L2A(L2B)からのy軸方向の距離Yを示す。一方の縦軸は、領域54A(54B)における、直線L2A(L2B)から距離Yまでの範囲内に形成された磁区制御層105が、MR膜20上で形成する磁界の強さを示す。この磁界の強さは、距離Yに沿った方向(y軸方向)に無限遠まで形成された磁区制御層が形成する全体の磁界の強さを1として規格化したものである。なお、MR膜20のxおよびy軸方向の寸法は、0.1μm×0.1μmとし、第3の領域54A(54B)の幅W1(W2)は0.05μmとした。
【0098】
図38によれば、MRハイトの1.5倍までの領域を占める磁区制御層105が形成する磁界の強さは、全体の約50%に達しており、MRハイトの5倍までの領域を占めると、全体の80%以上まで達していることがわかる。この結果は、第3の領域54A(54B)のうち、y軸方向における少なくともMRハイトの1.5倍までの領域に形成された磁区制御層105を除去すれば、磁気感受層25の単磁区化は阻害されずに、バルクハウゼンノイズを避けることが可能であることを示すものである。したがって、図7(A)に示した幅Dが、MRハイトの1.5倍の大きさの寸法を有するように第3の領域53A,53Bを設定し、この領域を占める磁区制御層105を除去することにより、バルクハウゼンノイズを低減することができる。
【0099】
次に、図7および図39を参照して、第3の領域における磁区制御層105の厚みと、バルクハウゼンノイズとの関係について説明する。
【0100】
図39は、薄膜磁気ヘッド10におけるバルクハウゼンノイズによる不良率を示すものである。ここでは、薄膜磁気ヘッド10の再生ヘッド部10Aは、図7(A)に示した平面構成を有する。図39の横軸は、除去処理後の第3の領域53A,53Bの磁区制御層105の厚みtと、除去処理前の磁区制御層105の厚みdとの比を示す。一方、縦軸は、バルクハウゼンノイズに起因する不良率を示す。ここでは、第3の領域53A,53Bを占める磁区制御層105を全く除去しない場合、すなわち、
t/d=1
の場合の不良率を1として規格化した。図39の結果から、第3の領域53A,53Bの磁区制御層105の厚みtを小さくするほど、バルクハウゼンノイズに起因する不良率をより低減できることがわかる。特に、磁気感受層25に対応する空間の位置、すなわち、磁気感受層25と保護膜26との界面に相当するt/dが0.8の位置から、磁気感受層25と非磁性層24との界面に相当するt/dが0.675までの位置においては、厚みtを小さくすることにより不良率を大幅に低減できることがわかる。
【0101】
以上のように、本実施の形態によれば、磁区制御層105の、磁気感受層25の単磁区化を妨げる作用を有する部分を除去するようにしたので、磁気感受層25に対し磁気記録媒体1の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。これにより、薄膜磁気ヘッドの再生動作時における磁気感受層25の単磁区化を可能とし、バルクハウゼンノイズ等のノイズを抑制することができる。
【0102】
さらに、本実施の形態によれば、一旦大きな面積を有する磁区制御層105を形成したのち、不要な磁区制御層105を、エッチング処理により除去することにより微細加工するようにしたので、MRハイトの微小化にともない著しく微小化した磁区制御層105であっても高精度に、かつ容易に形成することができる。
【0103】
以上、実施の形態およびいくつかの変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施の形態および変形例に限定されず、種々変形可能である。例えば、磁区制御層として硬磁性材料を用いるようにしたが、強磁性膜と反強磁性膜とを積層して用いるようにしてもよい。さらに、上記実施の形態では、記録再生両用の薄膜磁気ヘッドの例について説明したが、再生専用の薄膜磁気ヘッドであってもよい。
【0104】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド、請求項16ないし請求項23のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法、または請求項24もしくは請求項25に記載の磁気ディスク装置によれば、磁気感受層の単磁区化を促進する作用を示す領域の磁区制御層を残しつつ、磁気感受層の単磁区化を妨げる作用を示す領域における磁区制御層の一部を除去するようにしたので、磁気感受層に対し、磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って単磁区化に必要な磁界を印加することができると共に、それ以外の方向の印加磁界を低減することができる。これにより、薄膜磁気ヘッドの再生動作時における磁気感受層の単磁区化を可能とし、バルクハウゼンノイズ等のノイズを抑制することができる。
【0105】
特に請求項4もしくは請求項11に記載の薄膜磁気ヘッド、または請求項19に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、一対の第3の領域が一対の第2の領域の全体と一致するので、磁気感受層の単磁区化を妨げる作用を示す領域の磁区制御層が広範囲にわたって薄くなり、または除去される。このため、最も効果的にバルクハウゼンノイズを抑制することができる。
【0106】
また、請求項16ないし請求項23のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、一旦大きな面積を有する磁区制御層を形成したのち、磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する不要な磁区制御層をエッチング処理により除去するようにしたので、精度良く微細な加工をすることができ、最終的に、所望の形状を有する微小なサイズの磁区制御層を容易に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気ディスク装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えた磁気ヘッドスライダの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図4】図3に示した薄膜磁気ヘッドのIV矢視方向から見た構造を示す平面図である。
【図5】図3に示した薄膜磁気ヘッドの図4におけるV−V線に沿った矢視方向の構造を示す断面図である。
【図6】図3に示した薄膜磁気ヘッドの図5におけるVI−VI線に沿った矢視方向の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける磁区制御層形成領域を説明するための平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法を表す工程図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を表す平面図および断面図である。
【図10】図9に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図11】図10に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図12】図11に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図13】図12に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図14】図13に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図15】図14に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図16】図15に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図17】図16に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図18】図17に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図19】図18に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図20】図19に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図21】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を表す他の断面図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における第1の変形例の一工程を表す平面図および断面図である。
【図23】図22に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図24】図23に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図25】図24に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図26】図25に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図27】図26に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図28】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における第2の変形例の一工程を表す平面図および断面図である。
【図29】図28に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図30】図29に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図31】図30に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図32】図31に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図33】図32に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図34】図33に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図35】図34に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図36】図35に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図37】図36に続く一工程を表す平面図および断面図である。
【図38】本実施の形態の薄膜磁気ヘッドの作用を示す説明図である。
【図39】本実施の形態の薄膜磁気ヘッドの他の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
1…磁気記録媒体、9…記録媒体対向面(ABS)、10…薄膜磁気ヘッド、20…磁気抵抗効果膜(MR膜)、25…磁気感受層、50…磁区制御層非形成領域、51…第1の領域、52…第2の領域、100…基体、101…下部シールド層、102…下部ギャップ層、103…多層膜、104…フォトレジスト、105…磁区制御層、106…第1リード層、109…第2リード層。
Claims (25)
- 磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、前記磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、
前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、前記磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層と
を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記一対の磁区制御層は、信号磁界非印加状態での前記磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での前記磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含み、
前記第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、前記第1の領域の厚みよりも小さい前記磁区制御層が残存している
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の磁区制御層は、前記一対の第3の領域における厚み方向の少なくとも一部が除去された形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第1の領域は、前記磁気感受層の両隣に延在し、前記磁気抵抗効果膜の、前記記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、前記記録媒体対向面とによって画定される領域であり、
前記一対の第2の領域は、前記延長線から前記記録媒体対向面と反対の方向に延在する領域である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域は、前記一対の第2の領域の全体と一致する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域は、前記一対の第1の領域に接すると共に、前記一対の第2の領域における、前記磁気抵抗効果膜を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在する一対の領域であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記一対の第3の領域の各々における前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向の長さは、0.05μm以上である
ことを特徴とする請求項5に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さは、前記磁気抵抗効果膜における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さの1.5倍以上である
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の磁区制御層のうちの前記一対の第3の領域内の部分は、前記磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に延在している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、前記磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、
前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、前記磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層と
を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記一対の磁区制御層は、
前記磁気感受層の両隣に延在し、前記磁気抵抗効果膜の、前記記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、前記記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、
前記延長線から前記記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域と
を含み、
前記第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、前記第1の領域の 厚みよりも小さい前記磁区制御層が残存している
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の磁区制御層は、前記一対の第3の領域における厚み方向の少なくとも一部が除去された形状を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域は、前記一対の第2の領域の全体と一致する
ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域は、
前記一対の第1の領域に接すると共に、前記一対の第2の領域における、前記磁気抵抗効果膜を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在する一対の領域である
ことを特徴とする請求項9に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域の各々における前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向の長さは、0.05μmである
ことを特徴とする請求項12に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の第3の領域における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さは、前記磁気抵抗効果膜における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さの1.5倍以上である
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記一対の磁区制御層のうちの前記一対の第3の領域内の部分は、
前記磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に延在している
ことを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 基体と、磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、前記磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、
前記磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層と
を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記基体上に前記磁気抵抗効果膜を選択的に形成する第1の工程と、
前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向する領域に、信号磁界非印加状態での前記磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での前記磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含むように、前記一対の磁区制御層を選択的に形成する第2の工程と、
前記一対の磁区制御層および前記磁気抵抗効果膜の上に、パターニング用のマスクを選択的に形成する第3の工程と、
このマスクを利用して前記一対の磁区制御層を選択的にエッチングすることにより、前記一対の第1の領域の厚みよりも、前記一対の第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みを薄くする第4の工程と
を含み、
前記第4の工程では、前記一対の磁区制御層のうちの前記一対の第3の領域内の部分が前記磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に残存するように、前記マスクおよび前記一対の磁区制御層の少なくとも一方によって覆われた領域以外の領域における前記磁気抵抗効果膜が全て除去されるまで前記一対の磁区制御層の選択的なエッチングを行う
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第2の工程において、スパッタリング法を用いて原料粒子を堆積させることにより前記一対の磁区制御層を形成し、
前記第4の工程において、前記一対の第3の領域が以下の条件式(1)を満足するようにエッチングを行う
ことを特徴とする請求項16に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
W=2{β/2+αtan(πθ/180)}…(1)
但し、
W:前記一対の第3の領域における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿った幅
α:前記一対の磁区制御層における前記基体側の面から前記マスクの上面までの距離β:前記マスクにおける、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿った幅
θ:前記基体に垂直な方向に対する前記原料粒子の入射角度 - 前記第4の工程において、
前記一対の第1の領域が、前記磁気感受層の両隣に延在し、前記磁気抵抗効果膜の、前記記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、前記記録媒体対向面とによって画定される領域であり、
前記一対の第2の領域が、前記延長線から前記記録媒体対向面と反対の方向に延在する領域であるように、前記一対の磁区制御層を形成する
ことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第4の工程において、
前記一対の第3の領域が、前記一対の第2の領域の全体と一致するように前記一対の磁区制御層を形成する
ことを特徴とする請求項16ないし請求項18のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第4の工程において、
前記一対の第3の領域が、前記一対の第1の領域に接すると共に、前記一対の第2の領域における、前記磁気抵抗効果膜を挟んで対峙する2辺からそれぞれ互いに離れる方向に延在する一対の領域となるように、前記一対の磁区制御層を形成する
ことを特徴とする請求項18に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第4の工程において、
前記一対の第3の領域の各々における前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向の長さが、0.05μm以上となるように前記一対の磁区制御層を形成する
ことを特徴とする請求項20に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第4の工程において、
前記一対の第3の領域における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さが、前記磁気抵抗効果膜における、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向と直交する方向の長さの1.5倍以上となるように、前記一対の磁区制御層を形成する
ことを特徴とする請求項20または請求項21に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 基体と、
磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、前記磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、
前記磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層と
を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記基体上に前記磁気抵抗効果膜を選択的に形成する第1の工程と、
前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向する領域に、前記磁気感受層の両隣に延在し、前記磁気抵抗効果膜の、前記記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、前記記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、前記延長線から前記記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域とを含むように、前記一対の磁区制御層を選択的に形成する第2の工程と、
前記一対の磁区制御層および前記磁気抵抗効果膜の上に、パターニング用のマスクを選択的に形成する第3の工程と、
このマスクを利用して前記一対の磁区制御層を選択的にエッチングすることにより、前記第1の領域の厚みよりも、前記第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域の厚みを薄くする第4の工程と
を含み、
前記第4の工程では、前記一対の磁区制御層のうちの前記一対の第3の領域内の部分が前記磁気感受層の厚みに対応する空間を除いた空間に残存するように、前記マスクおよび前記一対の磁区制御層の少なくとも一方によって覆われた領域以外の領域における前記磁気抵抗効果膜が全て除去されるまで前記一対の磁区制御層の選択的なエッチングを行う
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、前記磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、前記磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドと
を備えた磁気ディスク装置であって、
前記一対の磁区制御層は、信号磁界非印加状態での前記磁気感受層の単磁区化を促進するように作用する一対の第1の領域と、信号磁界非印加状態での前記磁気感受層の単磁区化を妨げるように作用する一対の第2の領域とを含み、
前記第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、前記第1の領域の厚みよりも小さい前記磁区制御層が残存している
ことを特徴とする磁気ディスク装置。 - 磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体からの信号磁界に応じて磁区の方向が変化する磁気感受層を有し、前記磁気記録媒体に対向する記録媒体対向面が形成された磁気抵抗効果膜と、前記磁気記録媒体の記録トラック幅方向に対応する方向に沿って前記磁気抵抗効果膜を挟んで互いに対向するように配設され、前記磁気感受層に縦バイアス磁界を印加する一対の磁区制御層とを有する薄膜磁気ヘッドと
を備えた磁気ディスク装置であって、
前記一対の磁区制御層は、
前記磁気感受層の両隣に延在し、前記磁気抵抗効果膜の、前記記録媒体対向面と反対側の端縁の延長線と、前記記録媒体対向面とによって画定される一対の第1の領域と、
前記延長線から前記記録媒体対向面と反対の方向に延在する一対の第2の領域と
を含み、
前記第2の領域のうちの少なくとも一部をなす一対の第3の領域に、前記第1の領域の厚みよりも小さい前記磁区制御層が残存している
ことを特徴とする磁気ディスク装置。
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