JP3832796B2 - ピストンロッドの成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シリンダに対して摺動しつつ伸縮動作するピストンを担うピストンロッドの成形方法に関し、さらに詳しくは、高荷重を受ける自動車の懸架機構であるストラット型ショックアブソーバ用として好適なこの種のピストンロッドの成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から特に、自動車の懸架機構であるストラット型ショックアブソーバに用いられているピストンロッドは、ピストンからアウタシェルを通してそれらより小径のピストンロッドで車体重量を支持することから、当該ピストンロッドには大きな曲げ力が加わることになる。
【0003】
そこで、上記したような大きい曲げ力に対しても充分に耐えるようにするために、ピストンロッドの主要部分を構成する部材として所定の長さと外径を有するパイプ素材を用い、このパイプ素材の両端部分にボス部材を溶着してこれら両端部分を塞ぐ。
【0004】
そして、これらパイプ素材と両端部分のボス部材の表面を全長に亙って所定の外径に切削加工し、しかる後、両端部分を残してパイプ素材の中間部分に焼き入れを施すことにより当該部分を硬化処理するようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようにして、ピストンロッドの主要部分を構成する部材であるパイプ素材の両端部分にボス部材を溶着して外径を必要寸法に仕上げ、しかる後に、パイプ素材の両端部分を残して中間部分に焼き入れを施すことで硬化処理するようにしたのでは、パイプ素材に対するボス部材の溶着部分と焼き入れ部分とが相互にラップし易く、そのような状態がしばしば生じることになる。
【0006】
勿論、この場合において、パイプ素材の両端にボス部材を溶着してからパイプ素材の両端部分を除く中間部分に焼き入れを施して硬化処理する際に、多種類の治具を用いて両端にボス部材を溶着したパイプ素材の位置決めを正確に出し、この状態でパイプ素材の中間部分に焼き入れを正しく施すようにしてやれば、パイプ素材に対するボス部材の溶着部分と焼き入れ部分とが相互にラップすることはない。
【0007】
しかし、このようにして、多種類の治具により両端にボス部材をもつパイプ素材の位置を正確に出して正しい位置範囲に焼き入れを施すことは、治具の製作に費用が掛るばかりでなく、両端にボス部材をもつパイプ素材の位置決めのための作業工程にも時間が掛ることからコスト高とならざるを得ず、したがって、できればこのような手段は採用したくない。
【0008】
その結果、パイプ素材に対するボス部材の溶着部分と焼き入れ部分との間に相互のラップが生じると、伸縮動作に伴う大きな曲げ応力の繰り返しで上記のラップにより金属疲労が生じ、当該金属疲労の進行に伴ってピストンロッドが曲がったり或いは折損したり等してストラット型ショックアブソーバとしての寿命が低下することになる。
【0009】
したがって、この発明の目的は、パイプ素材の両端に対するボス部材の溶着部分と硬化処理用の焼き入れ部分とがラップするのを容易に除去して、金属疲労の進行に伴いピストンロッドが曲がったり或いは折損したり等するのを確実に防止し、ピストンロッドとしての寿命を延ばすことのできるピストンロッドの成形方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、所定の長さと外径と肉厚を有するパイプ素材と、一側端部端面の中心部分に窪みを設けて環状の接合面とすると共に加工代を見込んで外径に余裕を持たせて形成した一対のボス部材とを用意し、上記パイプ素材の中間部分に焼き入れを施すことで硬化処理する工程と、
上記各ボス部材における上記接合面を上記パイプ素材の両端部分に押し当てながら高速で相対回転することにより摩擦熱でボス部材を溶着してパイプ素材の両端へと突き合わせ溶接する工程と、
各ボス部材に切削加工を施して各外径を上記パイプ素材の外径に合わせる工程と、
各ボス部材の上記接合面と反対側の端部に対してそれぞれ機械加工を施してそれぞれ軸部と固定用のねじ部を成形する工程と
からなることを特徴とする。
【0011】
すなわち、このように構成することで、焼き入れによる硬化処理を主要部分である所定の長さと外径を有するパイプ素材に単体で前もって施すことができ、その結果、多種類の治具を用いることなくパイプ素材に対し両端の部分を残して正確な位置に亙り容易に硬化処理のための焼き入れを施すことができる。
【0012】
しかも、その後に、硬化処理されていないパイプ素材の両端部分にボス部材を溶着して塞いでやれば、パイプ素材に対するボス部材の溶着部分と焼き入れ部分とが相互にラップするのを容易に防ぐことができる。
【0013】
したがって、パイプ素材の両端に対するボス部材の溶着部分と硬化処理用の焼き入れ部分とのラップによる金属疲労の進行に伴い、ピストンロッドが曲がったり或いは折損したり等するのを確実に防止して、ピストンロッドとしての寿命を延ばすことができることになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を明細書に添付した図面に基づいて説明していくことにする。
【0015】
図1は、ピストンロッドの主要部分を構成するパイプ素材1を縦断して示したもので、当該パイプ素材1は、上記した所定の長さ寸法と併せて所定の外径と肉厚をも有し、しかも、前もって、両端部分を除く中間部分Aの範囲に亙り高周波等によるの焼き入れを施すことで硬化処理するようにしている。
【0016】
一方、上記したパイプ素材1の取付側とピストン嵌着側とを塞ぐ二つのボス部材2,3は、パイプ素材1の各端部への取付と形状加工に合わせて図2および図3のように、接合端の中心部分に窪み4,5を設けて環状の接合面6,7とすると共に、加工代を見込んで外径に余裕をもたせて構成してある。
【0017】
そして、これらボス部材2,3における環状の接合面6,7をパイプ素材1の硬化処理を施されていない両端部分1a,1bに押し当て、高速で相対回転することにより両端面間に生じる摩擦熱でボス部材2,3を溶着し、図4に示すようにパイプ素材1の両端へと突き合わせ溶接することにより、パイプ素材1の両端部分1a,1bをこれらボス部材2,3で塞ぐ。
【0018】
しかる後に、図5のようにして、ボス部材2,3に切削加工を施して各外径をパイプ素材1の外径に合わせ、しかも、前記したように取付側であるボス部材2とピストン嵌着側であるボス部材3とに対し、それぞれ機械加工を施して必要とする装着のための軸部8,9と固定用のねじ部10,11を構成するようにしたのである。
【0019】
このようにして、ピストンロッドの主要部分を構成する所定の長さと外径とをもつパイプ素材1に対し、焼き入れによる硬化処理を前もって施すようにしたのである。
【0020】
その結果、従来のように、多種類の治具を用いて両端部分1a,1bを除くパイプ素材1の所定部分に焼き入れを施すことなく、これら両端部分1a,1bを残して容易かつ正確に硬化処理のための焼き入れを行うことが可能となる。
【0021】
しかも、その後に、硬化処理されてないパイプ素材1の両端部分1a,1bにボス部材2,3を溶着して塞いでやれば、パイプ素材1に対するボス部材2,3の溶着部分と焼き入れ部分とが相互にラップすることはなくなる。
【0022】
したがって、パイプ素材1の両端部分1a,1bに対するボス部材2,3の溶着部分と硬化処理用の焼き入れ部分とのラップによる金属疲労の進行に伴い、ピストンロッドが曲がったり或いは折損したり等するのを確実に防止して、ピストンロッドとしての寿命を延ばすことになるのである。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、所定の範囲に亙って硬化処理したパイプ素材と両端部分に溶着したボス部材とでピストンロッドを構成する際に、パイプ素材に対し前もって硬化処理を施すようにしたことにより、多種類の治具を用いてパイプ素材の所定の部分に焼き入れを施すことなく、簡単でしかも正確に硬化処理を施すことが可能になる。
【0024】
また、上記のようにして、パイプ素材の所定の部分に正確に硬化処理を施し得ることから、その後に、硬化処理されてないパイプ素材の両端部分にボス部材を溶着して塞いでやることにより、パイプ素材に対するボス部材の溶着部分と焼き入れ部分とが相互にラップするのを容易に防ぐことができる。
【0025】
したがって、パイプ素材の両端に対するボス部材の溶着部分と硬化処理用の焼き入れ部分とのラップによる金属疲労の進行に伴い、ピストンロッドが曲がったり或いは折損したり等するのを確実に防止してピストンロッドとしての寿命を延ばすことができることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明によるピストンロッドの主要部分を構成するパイプ素材の両端部分を残して所定部分に焼き入れを施すと共に、長手方向に沿って切断して示した縦断正面図である。
【図2】 同上、パイプ素材の取付側における開口部を塞ぐ一方のボス部材を長手方向に切断して示した縦断正面図である。
【図3】 同じく、パイプ素材のピストン嵌着側における開口部を塞ぐ他方のボス部材を長手方向に切断して示した縦断正面図である。
【図4】 所定部分に焼き入れを施したパイプ素材の両端にそれぞれボス部材を同軸状に溶着して取り付けた状態を示す縦断正面図である。
【図5】 さらに、図4におけるパイプ素材の両端部分を塞ぐ二つのボス部材に対して所定の機械加工を施した状態を示す一部縦断正面図である。
【符号の説明】
1 パイプ素材
1a パイプ素材の一方の端部
1b パイプ素材の他方の端部
2 パイプ素材に溶着して一方の端部を塞ぐボス部材
3 パイプ素材に溶着して他方の端部を塞ぐボス部材

Claims (1)

  1. 所定の長さと外径と肉厚を有するパイプ素材と、一側端部端面の中心部分に窪みを設けて環状の接合面とすると共に加工代を見込んで外径に余裕を持たせて形成した一対のボス部材とを用意し、上記パイプ素材の中間部分に焼き入れを施すことで硬化処理する工程と、
    上記各ボス部材における上記接合面を上記パイプ素材の両端部分に押し当てながら高速で相対回転することにより摩擦熱でボス部材を溶着してパイプ素材の両端へと突き合わせ溶接する工程と、
    各ボス部材に切削加工を施して各外径を上記パイプ素材の外径に合わせる工程と、
    各ボス部材の上記接合面と反対側の端部に対してそれぞれ機械加工を施してそれぞれ軸部と固定用のねじ部を成形する工程と
    からなるピストンの成形方法
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