JP3828957B2 - 冷媒循環式熱移動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器そして圧縮機の順に冷媒を循環させることにより、蒸発器で熱を冷媒に取り込む一方、凝縮器で熱を冷媒から放出する冷媒循環式熱移動装置、とくに空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷媒循環式熱移動装置において、圧縮機から膨張弁までの高圧側冷媒回路のうちで圧縮機と凝縮器の間の部分と、膨張弁から圧縮機までの低圧側冷媒回路のうちで蒸発器と圧縮機の間の部分とをバイパス路で連結し、かつ、高圧側冷媒回路の圧力を検知する圧力センサを配置し、検知圧力が高い場合にバイパス路を導通させるようにする弁手段を配置したものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の装置によると、例えば圧縮機が異常に高回転になる場合、凝縮器の能力がファン異常や作動台数の限定等によってとくに低下する場合、膨張弁開度がとくに小さくなる場合等、何らかの異常により高圧側冷媒回路の圧力が異常に上昇するといった事態を防止し、高圧側冷媒回路の各部の冷媒漏れや異常圧力上昇に起因する損傷等を防止することができる。
【0004】
しかし、低圧側冷媒回路のうちで蒸発器と圧縮機の間にバイパスされる冷媒は高温高圧であり、これが再び圧縮機に吸われて圧縮吐出されて高圧側冷媒回路の冷媒を昇圧する。そして冷媒は圧縮機、高圧側冷媒回路、バイパス路、低圧側冷媒回路そして圧縮機と循環し続け、段々昇温する。このため圧縮機の潤滑機能が低下し、圧縮機が損傷する問題がある。また、圧縮機の温度が所定以上に上昇する場合、圧縮機を駆動する駆動装置を緊急停止するものでは、駆動装置が停止してしまうことになり、冷媒循環式熱移動装置そのものの継続運転が不能となってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑み、高圧側冷媒回路の冷媒圧力の上昇に起因する冷媒漏れや損傷を防止可能とするのみでなく、圧縮機を通過する冷媒温度が異常に上昇することのないようにすることができる冷媒循環式熱移動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、請求項1に記載したように、駆動装置により圧縮機を作動させ、暖房時に圧縮機、四方弁、凝縮器としての室内熱交換器、膨張弁、蒸発器としての室外熱交換器、四方弁、圧縮機の順に冷媒を循環させる空調装置からなる冷媒循環式熱移動装置において、上記駆動装置を水冷式内燃機関により構成し、膨張弁から室外熱交換器および四方弁を経て圧縮機に至る暖房運転時の低圧側冷媒回路に、内燃機関冷却後の温水と冷媒とを熱交換させる温水冷媒熱交換器を上記室外熱交換器と直列又は並列に配置するとともに、圧縮機から四方弁および室外熱交換器を経て膨張弁に至る暖房運転時の高圧側冷媒回路のうちで圧縮機から室内熱交換器に至るまでの間にある部分と、上記暖房運転時の低圧側冷媒回路のうちで膨張弁から上記室外熱交換器および上記温水冷媒熱交換器に至るまでの間にある部分とを連結するバイパス路と、高圧側冷媒回路の圧力を検知する圧力センサと、暖房運転時において上記圧力センサによる検知圧力が高い場合に上記バイパス路を導通させ、かつ、その検知圧力に応じてバイパス路の流量を制御する弁手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0011】
さらにこの冷媒循環式熱移動装置において、請求項2に記載したように、上記圧縮機または駆動装置の作動回転数を検知する回転数センサを設け、検知圧力が高い場合において、検知回転数が所定値以上にときは駆動装置へのエネルギー供給量を低下させ、検知回転数が所定値以下にときは上記バイパス路を導通させるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
【作用】
上記のような構成の本発明装置によると、暖房時に、バイパス路を通過して低圧側冷媒回路に至る高温高圧の冷媒は、本来は吸熱作用をする蒸発器としての室外熱交換器および温水冷媒熱交換器を通過するとき、放熱して温度が低下し、かつ圧力低下が起きる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の冷媒循環式熱移動装置の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の冷媒循環式熱移動装置の一例としての空調装置の概略を示すもので、エンジン1は、水冷火花点火式のガスエンジンであって、伝動装置2を介して冷媒の圧縮機8を駆動するものである。このエンジン1と圧縮機8の間に設けられる伝動装置2は、エンジン1の出力軸3と圧縮機8の入力軸6のそれぞれに固定されたプーリ4,7間にベルト5を掛け渡すことによって構成されている。
【0015】
このエンジン1に対して、圧縮機8により冷媒を循環させるための冷媒回路10と、エンジン1の冷却と廃熱の回収を行うための冷却水回路50が設けられていて、冷却水回路50には、エンジンの冷却器(冷却水ジャケット)63と排気管に設けられた排ガス熱交換器62が、冷却水への廃熱供給部として組み込まれている。
【0016】
冷媒回路10は、圧縮機8によりフロン等の冷媒を循環させる回路であって、圧縮機8とオイルセパレータ30が管路11により接続され、オイルセパレータ30と四方弁32が管路12により接続され、四方弁32と二重管熱交換器33が管路13により接続され、二重管熱交換器33と複数個の室外熱交換器34が分岐管路14により接続され、室外熱交換器34とディストリビュータ36が複数の管路15により接続され、ディストリビュータ36と液ガス熱交換器37が管路16により接続され、液ガス熱交換器37と複数個の室内熱交換器40が、分岐部17aにそれぞれ配置された電子膨張弁38を介して、管路17により接続され、室内熱交換器40と四方弁32が管路18により集合接続され、四方弁32と圧縮機8が、液ガス熱交換器37及びアキュムレータ45を介して、管路19により接続されているものである。
【0017】
この冷媒回路10のアキュムレータ45と圧縮機8の間の管路19には、オイルセパレータ30において冷媒から分離されたオイルを圧縮機8に戻すために、オイルセパレータ3から延びるオイル戻し通路31が途中の毛細管70を介して接続されている。
【0018】
管路14と管路15の間に配置された室外熱交換器34には、この室外熱交換器34に対して空気を吹き付けるためのファン35が設けられており、管路17と管路18と間に並列に配置された複数個の電子膨張弁38および室内熱交換器40に対しては、ドライヤー41、ストレーナ42,44がそれぞれ配備されている。
【0019】
管路11の途中には可撓管100が配置され、また管路11を通過する冷媒温度を検知する高圧側温度センサ103と、圧縮機8から電子膨張弁38の間の高圧側冷媒回路の冷媒圧力を検知する高圧側圧力センサ101が配置される。高圧側冷媒回路は、冷房時には管路11、オイルセパレータ30、管路12、四方弁32、管路13、二重管熱交換器33、管路14、室外熱交換器34、管路15、管路16、液ガス熱交換器37及び管路17で構成され、暖房時には管路11、オイルセパレータ30、管路12、四方弁32及び管路18で構成される。そして、圧縮機8には圧縮機温度センサ106が、管路19の途中には可撓管100がそれぞれ配置される。また、電子膨張弁38から圧縮機8までの間の低圧側冷媒回路の冷媒圧力を検知する低圧側圧力センサ102が管路19に配置される。低圧側冷媒回路は、冷房時には管路18、四方弁32、及び、途中に液ガス熱交換器37とアキュムレータ45が配置された管路19で構成され、暖房時には管路17、液ガス熱交換器33、管路16、管路15、室外熱交換器34、管路14、二重管熱交換器33、管路13、四方弁32及び管路19で構成される。
【0020】
また、上記冷媒回路10には、オイルセパレータ30と四方弁32とを接続する管路12の途中と、四方弁32と圧縮機8を接続する管路19のアキュムレータ45より手前の部分との間に、冷媒バイパス路20が設けられており、この冷媒バイパス路20の途中には、迂回する冷媒の流量を調節するための流量制御弁兼開閉弁となる開閉制御弁21が設置されている。
【0021】
さらに、高圧側冷媒回路のうちの圧縮機、凝縮器間の部分と低圧側冷媒回路のうちの膨張弁、蒸発器間の部分とを連結するバイパス路として、上記バイパス路20の途中から分岐した第2のバイパス路105が設けられ、その下流端が管路16に接続されている。この第2のバイパス路105にも開閉制御弁104が設けられている。
【0022】
一方、冷却水回路50は、水ポンプ61に排ガス熱交換器62が管路51により接続され、エンジンの排気管に設けられた排ガス熱交換器62と冷却水ジャケット63が管路52により接続され、冷却水ジャケット63と切換弁64が管路53により接続され、切換弁64と室外ラジエータ65が管路54により接続され、室外ラジエータ65と水タンク67が管路55により接続され、管路55の途中と水ポンプ61が管路57により接続され、管路57と切換弁64が、二重管熱交換器33を介して管路56により接続され、排ガス熱交換器62と管路54が管路58により接続され、管路58と水タンク67が細管路59により接続されているものである。
【0023】
管路58には絞り弁68が設けられており、管路58,59は空気抜き用の通路として使用され、管路55は、冷却水の補給用の通路として使用されるとともに、室外ラジエータ65から水ポンプに向けて冷却水を循環させる通路として使用される。室外ラジエータ65には、このラジエータ65に対して空気を吹き付けるためのファン66が設けられている。
【0024】
なお、上記の冷媒回路10と冷却水回路50に渡って設けられている二重管熱交換器33は、両回路を流れる冷媒と冷却水の間で熱交換を行うためのものであり、温水冷媒熱交換器に相当する。
【0025】
また、エンジン1には吸気管117が接続され、吸気管117の上流部にはエアクリーナ118が配置され、吸気管117の下流部にはガス燃料を混合する混合器119とその下流のスロットル弁120とが配置されている。スロットル弁120はステップモータから構成されるスロットル弁開度制御アクチュエータ111により開閉制御される。混合器119のベンチュリ部にはガス吐出口が設けられ、この吐出口には、途中に燃料ガス流量制御弁112、減圧調整弁113、2つの開閉弁114を有して燃料ガス供給源115と連結されたガス供給管路116が接続されている。さらに、エンジン1には排気管123が接続され、その途中に設けられた排ガス熱交換器62を介して大気に排気ガスを排出可能としている。エンジン1にはエンジン回転数を検知するエンジン回転数センサ110が配置されている。
【0026】
図2は当実施形態の制御ブロック図であり、CPU140にはエンジン回転数センサ110、高圧側圧力センサ101、高圧側温度センサ103、低圧側圧力センサ102及び圧縮機に取り付けられた温度センサ106から、回転数情報、高圧側圧力情報、高圧側温度情報、低圧側圧力情報及び温度情報が入力される。CPU140はメモリ141中のプログラム及び記憶データと、各センサからの情報に基づき、開閉制御弁21からなるガスバイパス弁を開閉制御するガスバイパス弁1開閉制御アクチュエータ21a、開閉制御弁104からなるガスバイパス弁を開閉制御するガスバイパス弁2開閉制御アクチュエータ104a、電子膨張弁38を開閉制御する電子膨張弁開閉制御アクチュエータ38a、室内熱交換器ファン駆動アクチュエータ40a、室外熱交換器ファン駆動アクチュエータ35a、切換弁64あるいは後述のようなリニア三方弁を駆動するリニア三方弁駆動アクチュエータ64a、燃料ガス流量制御弁駆動アクチュエータ112a、スロットル弁開度制御アクチュエータ111a、点火回路113をそれぞれ制御する。
【0027】
上記のような構造を有する当実施形態の空調装置の作用について以下に説明する。
【0028】
まず、冷却水回路50では、水ポンプ61から吐出される冷却水は、エンジンの排気管に設けられた排ガス熱交換器62から排ガスの熱を吸収して加熱された後、冷却水ジャケット63に供給され、冷却水ジャケット63を通ってさらに加熱された冷却水は、管路53を通して切換弁64に案内される。
【0029】
切換弁64は、サーモスタット弁であり、冷却水の温度が78°C以下の時には、管路54を閉じて管路56に向けて冷却水を流し、管路57を介して、冷却水を再び水ポンプ61に供給するように作動する。
【0030】
冷却水温度が78°Cを越える時には、切換弁64を介して管路54に向けて冷却水の一部を流し、室外ラジエータ65からファン66により吹き付けられる外気より熱を放出してから、冷却された水を管路55から管路57を通して水ポンプ61に案内するとともに、切換弁64から冷却水の一部を二重管熱交換器33に向けて流し、冷媒の加熱も同時に行うこととなる。
【0031】
さらに、冷却水の温度が86°Cを越えると、切換弁64は二重熱交換器33に対する管路56を閉じて管路54を全開し、高温となった冷却水の全てを室外ラジエータ65に向けて流し、冷却水の冷却を強力に行うこととなり、この時には、二重管熱交換器33に冷却水は送られないので、二重管熱交換器33における冷却水と冷媒との間での熱交換が停止される。
【0032】
このようなものでは、冷房運転時には、圧縮器8から高温高圧の冷媒が管路13を通って二重管熱交換器33に流れてくるので、二重管熱交換器33での冷却水と冷媒との間での熱交換は行われにくいため、冷却水温度は78°C以上になり易く、冷却水温度が86°Cを越えると、上記のように切換弁64により冷却水の全てが管路54からラジエータ65に向けて流れて、外気に熱を放出してから管路57を介して水ポンプ61に向けて送られることとなる。
【0033】
なお、切換弁64をリニア三方弁とし、これに冷却水温度センサ、運転状態検知機器、及びリニア三方弁駆動制御機器を配置して、二重熱管交換器33および室外ラジエータ65に流す冷却水割合を制御するようにしてもよい。
【0034】
その場合には、例えば、暖房運転時で複数台設けられている室内熱交換器40の全部が運転されている時には、冷却水の全てを管路56を通して二重管熱交換器33に流すことにより、膨張弁38で低温低圧化されて室外熱交換器34で吸熱された冷媒中の未気化の部分に、冷却水によってエンジン廃熱の全てが伝熱されることとなって、暖房効率が高められることとなる。
【0035】
但し、冷却水温度が高すぎる時、あるいは、各室内熱交換器40の放熱量が少なくなる時には、室外ラジエータ65に冷却水を多く循環させて、エンジンを充分冷却できるよう、冷却水温度を低下させるようにする。
【0036】
上記のような冷却水回路50に対して、冷媒回路10では、冷房運転時には、四方弁32が図に破線で示すように切り換えられ、管路12と管路13が接続され、管路18と管路19が接続されて、圧縮機8から排出される高圧の冷媒は、図中に破線矢印で示すように、管路11,12,13から二重管熱交換器33と室外熱交換器34を通り、管路15,16,17を経て、膨張弁38から室内熱交換器40に案内され、室内を冷房してから管路18,19を経て圧縮機8に戻される。
【0037】
すなわち、冷房運転時には、圧縮機8から排出される高温、高圧の冷媒は、高温のため二重熱交換器33で冷却水により加熱されることが少なく、室外熱交換器34で外気により冷却され、凝縮熱を放出して液化された後、液ガス熱交換器37で残熱を吸収され、その後に膨張弁38で急激に膨張されてから、室内熱交換器40で外気から蒸発熱を奪って気化する。
【0038】
なお、液ガス熱交換器37については、主に冷房運転時に、室外熱交換器34で液化した冷媒の残熱を、室内熱交換器40で気化した冷媒に吸収させることによって冷房効率を高めるためのものであって、暖房時には熱交換機能が低いものである。
【0039】
一方、暖房運転時には、四方弁32が図に実線で示すように切換えられ、管路12と管路18が接続され、管路13と管路19が接続されて、圧縮機8から排出される高圧の冷媒は、図中に実線矢印で示すように、管路11,12,18を通り、ストレーナ44を通って室内熱交換器40に案内され、室内熱交換器で凝縮熱を放出して液化することにより室内を暖房する。
【0040】
そして、室内熱交換器40で液化した高圧の冷媒は、膨張弁38において減圧されてから、管路17から液ガス熱交換器37を通り、管路16からディストリビュータ36および管路15を通って室外熱交換器34に案内され、外気から蒸発熱を奪って気化してから、管路14を通って二重管熱交換器33に案内され、二重管熱交換器33で冷却水によりエンジン廃熱を受け取ってから、管路13,19を通って圧縮機18に案内され、圧縮機8で再び圧縮されて管路11に吐出される。
【0041】
ところで、上記冷媒回路10において、暖房運転時に室内熱交換器40の作動台数が少ない場合には、作動しない室内機の室内ファンが停止され、電子膨張弁38の開度が全閉寸前まで絞られているため、電子膨張弁38を通過できる冷媒重量が減少することとなる。
【0042】
そして、例え作動する室内機の電子膨張弁38の開度を全開としても、電子膨張弁38の上流側となる高圧側冷媒圧力が上昇してしまう。なお、作動する室内機の電子膨張弁38の開度を全開とすると、室内熱交換器40を流れる冷媒量が過大となり暖房過多となるので、作動する室内機の電子膨張弁の開度は適度に絞る必要があり、高圧側冷媒圧力が上昇し過ぎることとなる。
【0043】
高圧側冷媒圧力が上昇し過ぎると、高圧側冷媒回路の各部に冷媒漏れや高圧力に起因する損傷が発生し易くなるという問題がある。また、室内機の作動台数が少ないのに合わせて、室外熱交換器34の吸熱量を減少させていない場合には、アキュムレータ45を経て圧縮機8に吸入される冷媒の温度が加熱ぎみとなり、圧縮機8の温度が上昇し、圧縮機8の潤滑機能が低下して圧縮機8の耐久性を低下させる問題が発生する。また、室内熱交換器40の放熱量に比べて室外熱交換器34の吸熱量が過大になると、例えエンジン回転数を低下させても高圧側冷媒圧力を低くしにくく、作動する室内機の部屋は暖房過多気味となる問題もある。
【0044】
なお、上記のように高圧側冷媒圧力の正常域を越えての上昇は、上記以外に電子膨張弁38の作動不良、エンジン1の回転数制御不良、二重管熱交換器33での吸熱過多、室外熱交換器34のファン35の回転低下不良等によっても発生する。
【0045】
このような問題に対処するために、室内熱交換器40と電子膨張弁38を迂回するバイパス路20の開閉制御弁21の開度を大きくすることがなされる。これにより、電子膨張弁38の開度不足が解消されて高圧側冷媒回路の圧力が低下するとともに、バイパス路20に冷媒が流れる分、作動する室内機に見合った量の冷媒が室内熱交換器40に流入するので、室内機を作動させる部屋が暖房過多になることがない。
【0046】
しかし、バイパス路20の途中には放熱部がないので、これだけでは高温のガス冷媒がそのまま圧縮機8に吸われることになり、圧縮機8の温度が上昇する問題は解決できない。また、低圧側冷媒回路に高圧のガス冷媒がバイパスされるので、低圧側の圧力が上昇してしまう。このため、エンジン1の回転数を低下させない限り、圧縮機8により昇圧される結果、高圧側冷媒回路の圧力が再び上昇することになり、結果としてバイパス路20に冷媒を流しても高圧側冷媒回路の圧力を低下させることも、圧縮機8の温度を低下させることも効果的に実施できない。
【0047】
そこで、当実施形態においては、前記のように第2のバイパス路105が設けられ、高圧側冷媒回路の圧力が所定値以上の場合、開閉制御弁104を開とし、高圧側圧力検知値が大きくなるほど開度を大としている。このため、暖房時、管路12から管路13にバイパスする高圧の冷媒は、暖房時本来は蒸発器として機能する室外熱交換器34を通過するとき冷却され、圧力及び温度が低下された後、液ガス熱交換器37でさらに冷されアキュムレータ45を経て圧縮機8に吸われる。これにより圧縮機8の温度上昇が防止されるとともに、高圧側冷媒回路の過大圧力も低下される。
【0048】
なお、電子膨張弁38が室内機側に配置されず、室外機側である管路16の途中のA部に配置される場合には、冷房時において高圧側圧力センサの検知値が所定値以上である場合開閉制御弁104を開とする。これにより高温高圧の冷媒は第2のバイパス路105を通過し、管路17から冷房時本来は蒸発器として機能する室内熱交換器40を通過するとき放熱し、圧縮機8の温度上昇や高圧配管の損傷を防止できる。
【0049】
図3は当実施形態の装置における制御のフローチャートである。
【0050】
当実施形態では暖房運転状態において開閉制御弁104の開閉制御が実施され、起動後、ステップS1において空調装置の停止信号の有無を判断し、停止信号があれば、燃料ガス流量制御弁112を全閉、あるいはさらに点火回路113を失火状態にする停止処理をステップS2において実施する。一方、停止信号がなければ、ステップS3において吐出圧力すなわち高圧側圧力センサの検知値が目標圧力の上限値より高いかどうかを判断する。目標圧力上限値より検知値が高ければ、ステップS4に進み、エンジン回転数が目標エンジン回転域の下限値以下であるかどうかを判断する。ここで、NOとなる場合にはステップS5に進み、スロットル弁120を絞るかあるいはさらに燃料ガス流量制御弁112を絞ることにより、エンジン回転数を低下させる。
【0051】
すなわち、検知値が目標圧力上限値より高い状態では圧縮機8の効率が低下したり、凝縮器(暖房状態では室内熱交換器40)での放熱効率が低下したりする不具合があるので、この不具合を解消すべく圧力低下させるため、エンジン回転数を低下させるか、開閉制御弁21あるいはさらに開閉制御弁104を開とする必要がある。ステップS5はステップS4でエンジン回転数を下げ得る余裕があることを検知した後であり、このステップでは開閉弁21,104の開作動に先行して、まずエンジン回転数を低下させる。
【0052】
ステップS4においてエンジン回転数が目標エンジン回転域の下限値以下である場合は、エンジン回転数をこれ以上に低下させることができず、開閉弁21,104の開動作の準備のためステップS6に進む。このステップにおいてガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104の開閉状態を判断し、閉状態であることを検知するとステップS7に進み、ガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104を開とする。一方、エンジン回転数が目標エンジン回転域の下限値以下であることがステップS4で既に検知されており、この状態は天候の急変等の外乱があった場合や運転者が運転条件を急変させた場合等に対して充分追従させるだけの余裕がないので、エンジン回転数を高めておく必要がある。当実施形態では、本ステップにおいて、室内側への冷媒循環量が減少しない回転数まで高めるため、スロットル弁120をわずかに開けるか、あるいはさらに燃料ガス流量制御弁112をわずかに開けるようにしている。
【0053】
上記ステップS6でガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104の開状態を検知すれば、ステップS8に進み、高圧側圧力センサの検知値が異常判定値(高圧側冷媒回路の漏れその他の損傷の発生を防止するために直ちに圧力低下が必要と判断させる値)以上かどうかが判断され、異常判定値以上の場合はステップS9に進み、エンジン1を停止させる。このとき、燃料ガス流量制御弁112及び両開閉弁114を全閉とする。ステップS8において高圧側圧力センサの検知値が異常判定値より小さい場合はステップS10に進み、開閉制御弁21,104が開状態に保持されるとともに、エンジン回転数が目標エンジン回転域の下限値以下であることが既にステップS4で検知されており、この状態に保持する。
【0054】
ステップS3において、目標圧力上限値より検知値が小さければ、ステップS11に進み、検知値が目標圧力下限値より低いかどうかを判断する。検知値が目標圧力下限値より低い場合は、膨張弁による差圧が小さくなり冷媒循環量が大きくとれず、能力が低下する等の問題が発生するので、検知値を目標圧力の下限値より高めるためエンジン回転数を増加させる制御を実施する。そのため、ステップS12においてエンジン回転数が目標エンジン回転域の上限値以上かどうかを判断する。この判断の結果がNOの場合は、エンジン回転数を増加させ得るので、ステップS13にてエンジン回転数を上げるべくスロットル弁の開度を増加させるか、あるいはさらに燃料ガス流量制御弁112の開度を増加させる。このとき、ガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104の開閉状態は変化させない。
【0055】
ステップS12における判断の結果がYESの場合は、エンジン回転数を増加させることができず、ステップS14にてガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104の開閉状態を判断する。この判断においてガスバイパス弁が開である場合には、ステップS15に進み、両開閉制御弁21,104を閉とする。両開閉制御弁21,104を閉とすると高圧側冷媒回路の圧力は上昇し、室内機への冷媒循環量が増加する。これによりエンジン回転数を減少させることが可能となる。このため当実施形態ではステップS15において、室内機への冷媒循環量が両開閉制御弁21,104を閉とする前の量と同程度となるまで、エンジン回転数を減少させる。
【0056】
ステップS14での判断において両開閉制御弁21,104が閉である場合には、開閉制御弁21,104の制御によって高圧側冷媒圧力を上昇させることも、エンジン回転数を上限値より下げることも不可能となるので、スロットル弁120の開度、燃料ガス流量制御弁112の開度及びガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104の開度を不変とする(ステップS16)。なお、高圧側冷媒回路の圧力を増加させるには、電子膨張弁38を絞ることや、暖房時において二重管熱交換器33へのエンジン温水の循環量を増加させること等によって可能ではある。
【0057】
ステップS11での判断において目標圧力下限値より検知値の方が大きければ、高圧側冷媒圧力が適正状態にあることになるので、スロットル弁120の開度、燃料ガス流量制御弁112の開度及びガスバイパス弁すなわち開閉制御弁21,104の開度を不変とする(ステップS17)。
【0058】
図4は、本発明が適用されるエンジン駆動式冷凍機の一実施形態を示すシステムズである。本図においてエンジン1の吸気系、排気系の構成は図1の空調装置のものと同じである。エンジン1で冷却系は管路51,52,53等からなる冷却水回路50と、冷却水回路50の途中に配置される水ポンプ61、排ガス熱交換器62、冷却水ジャケット63、サーモスタット71、リニア三方弁72、アキュムレータ45内の温水冷媒熱交換器73と、サーモスタット71から分岐する分岐水路74と、リニア三方弁72から分岐する分岐水路75と、分岐水路75の途中に配置されるラジエータ65により構成される。暖機時にはサーモスタット71から分岐水路74に冷却水を循環させる。また、リニア三方弁72は、蒸発器として機能するアキュムレータ45の必要吸熱量に応じた温水流量I1を流す一方、水ポンプ61の吐出量Iから上記温水流量I1を差し引いた量に相当する温水流量I2をラジエータ65に流す。
【0059】
冷媒回路は圧縮機8から電子膨張弁38までの高圧側冷媒回路125と、電子膨張弁38から圧縮機8に至る低圧側冷媒回路126とからなる。上記高圧側冷媒回路125は、圧縮機8から凝縮器130までの高圧側上流部125aと、凝縮器130から電子膨張弁38までの高圧側下流部125bとからなる。一方、上記低圧側冷媒回路126は、電子膨張弁38から蒸発器131までの低圧側上流部126aと、蒸発器131から圧縮機8までの低圧側下流部126bとからなる。低圧側下流部126bには第2の蒸発器として機能する温水冷媒熱交換器73を備えたアキュムレータ45が配置されている。高圧側上流部125aと低圧側上流部126aとの間には開閉制御弁104が配置されたバイパス路105が配置されている。当実施形態においても、高圧側冷媒圧力センサの検知圧力が所定値以上となる場合に開閉制御弁104が開とされ、バイパス路を105を通過する高温高圧の冷媒は本来は吸熱作用をする蒸発器131で放熱される。
【0060】
図中、130aは凝縮器130に対して設けられたファン、131aは蒸発器131に対して設けられたファン、121は電磁クラッチである。なお、当実施形態におけるバイパス路105の代りに、途中に開閉制御弁104´及び放熱器132を設けたバイパス路105´を配置し、開閉制御弁104´を高圧側冷媒圧力センサ101の検知圧力が所定値以上となる場合、あるいは圧縮機8の温度センサ106による検知温度所定以上となる場合に開としてもよい。
【0061】
また、当実施形態において、エンジン1の代りに電動モータで圧縮機8を駆動するようにしてもよい。この場合には、アキュムレータ45は単に液冷媒が圧縮機に流出するのを防止するためのものとし、アキュムレータ45内の熱交換器73は廃止される。
【0062】
また、図5に示す別の実施形態のように、図4に示す実施形態に対して、アキュムレータ(図示省略)は熱交換器を廃止したものとする一方、蒸発器131と並列に冷媒回路126cを設け、この冷媒回路126cに二重管熱交換器133を配置し、エンジンの温水を循環するようにしてもよい。
【0063】
また、図6に示すさらに別の実施形態のように、図5に示す実施形態に対して、冷媒回路126cを廃止する一方、蒸発器131とアキュムレータ45との間に二重管熱交換器134を配置し、エンジン1の温水を循環するようにしてもよい。また、バイパス路105´は低圧側下流部126bにおける蒸発器131と二重管熱交換器134の中間部に接続するようにしてもよい。高温高圧のガス冷媒温度が温水の温度より高い場合に、冷媒の温度を低下させることができる。
【0064】
なお、図6に示す実施形態において、蒸発器131を廃止するようにしてもよい。
【0065】
図7は、本発明が適用されるエンジン駆動式空調装置の別の実施形態を示すシステム図である。本図において、圧縮機8から吐出された冷媒は管路11によりオイルセパレータ30に送られ、オイルセパレータ30から管路12によりさらに四方弁32に送られる。暖房運転時には、実線矢印方向に冷媒が流れ、四方弁32から管路18を通って室内熱交換器40に冷媒が供給され、室内熱交換器40からの冷媒は管路17aから膨張弁38及び管路17を通って室外熱交換器34に送られ、さらに管路13、四方弁32、管路19を経て圧縮機8に吸込まれる。また、冷媒供給回路には暖房運転時用冷媒バイパス手段として、管路12と管路17を結ぶ管路200,201及び開閉制御弁203か、あるいは管路18と管路17を結ぶ管路204及び開閉制御弁205かのいずれか一方が配置され、高圧側圧力センサ101の検知値が所定値以上の場合に、開閉制御弁203または開閉制御弁205が開とされる。なお、管路19にエンジンの冷却水を循環する二重管熱交換器210を配置している。
【0066】
冷房運転時、破線矢印方向に冷媒が流れ、四方弁32から管路13を通って室外熱交換器34に冷媒が供給され、室外熱交換器34からの冷媒は管路17から膨張弁及び管路17aを通って室内熱交換器40へ送られ、さらに管路18、四方弁32、管路19を経て圧縮機18に吸込まれる。また、冷媒供給回路には冷房運転時用冷媒バイパス手段として、管路12と管路17aを結ぶ管路200,206及び開閉制御弁207か、あるいは管路13と管路17aを結ぶ管路208及び開閉制御弁209かのいずれか一方が配置され、高圧側圧力センサ101の検知値が所定値以上の場合に、開閉制御弁207または開閉制御弁209が開とされる。
【0067】
当実施形態によると、冷暖房の両運転状態において高圧側冷媒回路が所定値以上となることがないようにすることができる。
【0068】
なお、上記暖房運転時用冷媒バイパス手段または冷房運転時用冷媒バイパス手段のいずれか一方を設けておいてもよい。
【0069】
【発明の効果】
本発明の構成により、暖房時に、バイパス路を通過して低圧側冷媒回路に至る高温高圧の冷媒は、本来は吸熱作用をする蒸発器としての室外熱交換器や温水冷媒熱交換器を通過する時、放熱して温度が低下し、かつ、圧力低下が起きる。これにより、圧縮機が過度に昇温することがなくなるとともに、高圧側冷媒回路の圧力を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される空調装置の一実施形態を示すシステム図である。
【図2】空調装置の制御系統を示すブロック図である。
【図3】制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明が適用されるエンジン駆動式冷凍機の一実施形態を示すシステム図である。
【図5】本発明が適用されるエンジン駆動式冷凍機の別の実施形態を示すシステム図である。
【図6】本発明が適用されるエンジン駆動式冷凍機のさらに別の実施形態を示すシステム図である。
【図7】本発明が適用される空調装置の別の実施形態を示すシステム図である。
【符号の説明】
1 エンジン
8 圧縮機
10 冷媒回路
32 四方弁
34 室外熱交換器
38 膨張弁
40 室内熱交換器
45 アキュムレータ
20,105 バイパス路
21,104 開閉制御弁
Claims (2)
- 駆動装置により圧縮機を作動させ、暖房時に圧縮機、四方弁、凝縮器としての室内熱交換器、膨張弁、蒸発器としての室外熱交換器、四方弁、圧縮機の順に冷媒を循環させる空調装置からなる冷媒循環式熱移動装置において、
上記駆動装置を水冷式内燃機関により構成し、
膨張弁から室外熱交換器および四方弁を経て圧縮機に至る暖房運転時の低圧側冷媒回路に、内燃機関冷却後の温水と冷媒とを熱交換させる温水冷媒熱交換器を上記室外熱交換器と直列又は並列に配置するとともに、
圧縮機から四方弁および室外熱交換器を経て膨張弁に至る暖房運転時の高圧側冷媒回路のうちで圧縮機から室内熱交換器に至るまでの間にある部分と、上記暖房運転時の低圧側冷媒回路のうちで膨張弁から上記室外熱交換器および上記温水冷媒熱交換器に至るまでの間にある部分とを連結するバイパス路と、
高圧側冷媒回路の圧力を検知する圧力センサと、
暖房運転時において上記圧力センサによる検知圧力が高い場合に上記バイパス路を導通させ、かつ、その検知圧力に応じてバイパス路の流量を制御する弁手段とを設けたことを特徴とする冷媒循環式熱移動装置。 - 上記圧縮機または駆動装置の作動回転数を検知する回転数センサを設け、暖房運転時で検知圧力が高い場合において、検知回転数が所定値以上にときは駆動装置へのエネルギー供給量を低下させ、検知回転数が所定値以下にときは上記バイパス路を導通させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷媒循環式熱移動装置。
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