JP3828324B2 - 自動車の車体構造 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の車体構造、とりわけ、アルミ合金等の軽量金属材料により押出成形したフロアパネルとその前後端部に結合されるクロスメンバとの結合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の中には、例えば特開平9−99870号公報に示されているように、車体の軽量化と剛性確保の両立を狙ってフロアパネルをアルミ合金等の軽量金属材料により車体前後方向に閉断面構造に押出成形したものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
車体の軽量化および剛性確保を図るためには、フロアパネルだけにとどまらず該フロアパネルの前端に結合されるダッシュクロスメンバや、フロアパネルの後端に結合されるリヤシートクロスメンバ等のクロスメンバも、フロアパネルと同様の軽量金属材料により車幅方向に閉断面構造に押出成形したものを用いることが望ましいが、これらフロアパネルとクロスメンバとを通常のプレス成形品の場合と同様に直線状に突き合わせた状態で溶接接合したのでは、フロアパネルとクロスメンバの閉断面押出方向が直交状態となっているため、継目部分に応力が集中し易くなってしまう可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は簡単な構造によって、押出方向が直交するフロアパネルとクロスメンバとの継目部分に応力が集中するのを緩和することができる結合構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、車幅方向中央部にトンネル部を備えると共に、車幅方向側部にサイドシル部を備えて閉断面構造に前後方向に押出成形したフロアパネルと、
閉断面構造に車幅方向に押出成形され、車幅方向中央部に前記トンネル部に嵌合するトンネル嵌合部を切欠形成したクロスメンバとを、前後方向に突き合わせた状態で結合する構造であって、
前記フロアパネルのトンネル部とサイドシル部との間のフロア一般部の前後方向端部に切欠部を形成する一方、クロスメンバに前記切欠部に嵌合する連接部を閉断面構造で延設し、これら切欠部と連接部とを嵌合して結合して、クロスメンバと、フロア一般部との結合位置を、これらトンネル部およびサイドシル部の前後方向端部とクロスメンバとの結合位置よりも、フロアパネルの前後方向中央側にオフセットした位置に設定したことを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載のクロスメンバが、前傾したトーボード部と該トーボード部からほぼ垂直に立上がる縦壁部とを備えたダッシュクロスメンバであって、フロアパネルのフロア一般部を、トーボード部の傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置で該トーボード部に連接結合したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明にあっては、請求項1または2に記載の切欠部および連接部を、平面略矩形状に形成したことを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明にあっては、請求項1または2に記載の切欠部および連接部を、一側縁がトンネル部に沿って形成されて該トンネル部側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成したことを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明にあっては、請求項4に記載の連接部と切欠部とを嵌合して結合した部分の下面に沿って、連接部の延設基部と切欠部の平面略V字状の斜辺の切欠縁部とに接合された前後方向に延在する複数本の補強バーを備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項6の発明にあっては、請求項5に記載の補強バーは、その断面積がフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくなるように形成したことを特徴としている。
【0012】
請求項7の発明にあっては、請求項6に記載の複数本の補強バーの中間部分を、切欠部の車幅方向両側の切欠縁部に接合した車幅方向に延びる梁部材により一体に連設したことを特徴としている。
【0013】
請求項8の発明にあっては、請求項5に記載の補強バーを、その曲げ強度がフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくなるように形成したことを特徴としている。
【0014】
請求項9の発明にあっては、請求項8に記載の補強バーを、フロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって中実断面から漸次下側が開放した開断面に断面形状変化して形成したことを特徴としている。
【0015】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、押出方向が直交するフロアパネルとクロスメンバとの継目部分が車幅方向に直線状に揃うことがなく、フロア一般部ではクロスメンバとの継目部分がフロアパネルの前後方向中央側にオフセットして、押出方向が直交したフロアパネルとクロスメンバとが入り組んでいるため、車両の前後方向衝突時に前記継目部分への応力集中を緩和して、クロスメンバがフロアパネルとの接続部分を基点として大きく折れ曲り変形するのを抑制するこができる。
【0016】
この結果、フロントコンパートメント又はリヤコンパートメントの圧潰反力を高く維持できて、これらフロントコンパートメント又はリヤコンパートメントの潰れストロークを拡大して衝突エネルギー吸収効果を高めることができる。
【0017】
また、トンネル部およびサイドシル部がフロア一般よりも前後方向に突出した構造となるため、これらトンネル部およびサイドシル部はその突出した部分で曲げ剛性が低められることになり、従って、前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際の衝撃を緩和することができる。
更に、フロア一般部に切欠部を設ける一方、クロスメンバに該切欠部に嵌合する連接部を延設した簡単な構造によって、フロアパネルとクロスメンバとの継目の前後方向オフセット配置を容易に構成することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、車両の前面衝突時にはフロントコンパートメントのフロントサイドメンバからの軸力によって、ダッシュクロスメンバのトーボード部の傾斜下縁の曲折部が曲げモーメント最大位置となるが、フロア一般部はこのトーボード部の傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置で該トーボード部に連接結合して、前記曲げモーメント最大となる位置に対して押出方向が直交した閉断面急変部(継目部分)を分離することができ、従って、ダッシュクロスメンバとフロアパネルとの結合部に極端な応力集中部分を生じることがなく、フロントサイドメンバの支持剛性を高めてフロントコンパートメントの圧潰反力を高く維持できると共に、ダッシュクロスメンバの座屈タイミングを遅らせることが可能となって、車室の変形を可及的に少なく抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、切欠部および連接部を平面略矩形状に形成してあるため、成形性が良くこれら切欠部および連接部の嵌合精度を出し易く、従って、接合強度を高めることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、切欠部および連接部を、一側縁がトンネル部に沿って形成されて該トンネル部側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成してあるため、車両の側面衝突時にフロアパネルの側部中央部分から座屈変形が進行する場合に、このフロアパネル側部の座屈変形の可能領域を前後方向に可及的に広げることができて、衝突エネルギー吸収効果を高めることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、連接部と切欠部との結合部分の下面に沿って配設した複数本の前後方向に延在する補強バーによって前記結合部分を補強することができ、車両の前後方向衝突時におけるクロスメンバとフロアパネルとの結合部での応力集中をより一層緩和することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加えて、補強バーの断面積をフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくしてあるため、補強バーによる切欠部と連接部との結合部分の補強剛性をフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって低められ、この結果、車両の前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際に衝撃が大きくなるのを抑制することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて、車幅方向に延在させた梁部材によって、補強バーによる前後方向補強剛性の調整を容易に行うことができる。
【0025】
また、該梁部材の存在によって車両の側面衝突時における車幅方向の補強効果を得ることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加えて、補強バーの曲げ強度の変化によって該補強バーによる切欠部と連接部との結合部分の補強剛性をフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって低めることができて、車両の前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際に衝撃が大きくなるのを抑制することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8の発明の効果に加えて、補強バーの曲げ強度の変化を該補強バーの断面形状変化によって容易に調整設定することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0029】
図1〜3において、1は平坦なフロア一般部1Aと、車幅方向中央部のトンネル部1Bと、車幅方向側部のサイドシル部1Cとを一体に備えたフロアパネルを示し、該フロアパネル1はアルミ合金等の軽量金属材料により内壁2と外壁3とを有する閉断面構造に前後方向に押出成形してあり、これら内,外壁2,3間には前後方向に延びる複数のリブ壁4を介在させて剛性を高めてある。
【0030】
5はフロアパネル1の前端部に結合されるクロスメンバとしてのダッシュクロスメンバを示し、該ダッシュクロスメンバ5は通常のプレス成形したダッシュロアパネルと同様に傾斜したトーボード部5Aと該トーボード部5Aから略垂直に立上がる縦壁部5Bとを備え、フロアパネル1と同様の軽量金属材料により内壁6と外壁7とを有する閉断面構造に車幅方向に押出成形してあって、これら内,外壁6,7間に車幅方向に延びる複数のリブ壁8を介在させて剛性を高めてある。
【0031】
ダッシュクロスメンバ5のトーボード部5Aの略中央部には、前記トンネル部1Bに嵌合するトンネル嵌合部5Cを切欠形成してある。
【0032】
ダッシュクロスメンバ5の外面測には、縦壁部5Bからトーボード部5Aに廻り込んでレインフォース部材9を接合配置してあり、該レインフォース部材9の車幅方向両側部に前方に向けて延設したアーム部9Aにフロントサイドメンバ10を嵌合して接合固定してある。
【0033】
これら左右のフロントサイドメンバ10,10の前端部はファーストクロスメンバ11およびバンパーアーマチュア12により連結してあり、これらフロントサイドメンバ10,ファーストクロスメンバ11,バンパーアーマチュア12等によってフロントコンパートメントF・Cの骨格を構成している。
【0034】
前記フロアパネル1とダッシュクロスメンバ5は、それらを前後方向に突き合わせた状態で、具体的にはトンネル部1Bの前端部にトンネル嵌合部5Cを嵌合し、サイドシル部1Cの端末をトーボード部5Aに突き合わせた状態でそれらの継目部分をレーザー溶接,ミグ溶接等により溶接して結合するが、フロア一般部1Aとトーボード部5Aとの結合位置は、前記トンネル部1Bおよびサイドシル部1Cとトーボード部5Aとの結合位置よりも、フロアパネル1の前後方向中央側(後方)にオフセットした位置に設定してある。
【0035】
この実施形態にあっては、フロア一般部1Aの前端部にトンネル部1Bの下縁からサイドシル部1Cの内側下縁に亘って平面略矩形状に切欠部1Dを形成する一方、トーボード部5Aの傾斜下縁から後方に向けて前記切欠部1Dに嵌合する平面略矩形状の平坦な連接部5Dを上,下壁6,7とそれらを継ぐ複数のリブ壁8とからなる閉断面構造で延設し、これら切欠部1Dと連接部5Dとを嵌合してそれらの継目部分を同様に溶接して結合してある。
【0036】
この実施形態では連接部5Dの後端に開断面の接続部5Eを形成して、該接続部5E内にフロア一般部1Aの前端、即ち、切欠部1Dの前縁を嵌合して結合するようにしているが、この他、連接部5Dの後端とフロア一般部1Aの前端とを相互に嵌合する図外のジョイント部材を介して略面一となるように接続して結合するようにしてもよい。
【0037】
また、サイドシル部1Cの前端部分は連接部5Dの側部上に重合して前端をトーボード部5Aに突き合わせて結合するようにしているため、該サイドシル部1Cの前端部の連接部5D上に重合する部分は、該連接部5Dの板厚(高さ)相当分で切削加工してある。
【0038】
なお、図2中、13は図外のサスペンションメンバを連結するためのマウントボルトを示す。
【0039】
以上の実施形態の構造によれば、押出方向が直交するフロアパネル1とダッシュクロスメンバ5との継目部分が車幅方向に直線状に揃うことがなく、フロア一般部1Aでは切欠部1Dとトーボード部5Aに延設した連接部5Dとを嵌合して結合し、該フロア一般部1Aではトーボード部5Aとの継目部分がトンネル部1Bおよびサイドシル部1Cとトーボード部5Aとの継目部分よりも後方にオフセットして、これら押出方向が直交したフロアパネル1とダッシュクロスメンバ5とが入り組んでいるため、車両の前面衝突時に前記継目部分への応力集中を緩和して、ダッシュクロスメンバ5がフロアパネル1との接続部分を基点として大きく折れ変形するのを抑制することができる。
【0040】
とりわけ、この前面衝突時にはフロントサイドメンバ10からの軸力によって、トーボード部5Aの傾斜下縁の曲折部が曲げモーメント最大位置となるが、フロア一般部1Aは切欠部1Dと連接部5Dとを嵌合することによって、該トーボード部5Aの傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置でトーボード部5Aに連接結合して、前記曲げモーメント最大となる位置に対して押出方向が直交した閉断面急変部(継目部分)を分離することができ、従って、ダッシュクロスメンバ5とフロアパネル1との結合部に極端な応力集中部分が生じることがない。
【0041】
これらのことから、フロントサイドメンバ10の圧潰反力(支持剛性)を高めて該フロントサイドメンバ10を図4に示すようにその前端側から整然と潰れ変形させ、フロントコンパートメントF・Cの潰れストロークを拡大して衝突エネルギー吸収効果を高めることができる。
【0043】
図5のa線は本実施形態における衝突エネルギー吸収特性を、b線はフロアパネル1の前端とダッシュクロスメンバ5の後端とを、車幅方向でほぼ直線状に結合して構成した構造(以下、対比構造と称する)の衝突エネルギー吸収特性を示しており、同図からも明らかなように対比構造におけるダッシュクロスメンバ5の座屈タイミングPb に対して、本実施形態ではダッシュクロスメンバ5の座屈タイミングPa を大幅に遅らせることができて斜線領域で示すようにフロントコンパートメントF・Cの潰れ変形量を増大でき、従って、車室の変形を可及的に少なく抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態ではフロア一般部1Aの前端部の切欠部1Dの形成により、トンネル部1Bおよびサイドシル部1Cが、該フロア一般部1Aの前端よりも前方に突出した構造となるため、これらトンネル部1Bおよびサイドシル部1Cはその前端部の突出した部分で曲げ剛性が低められることになり、従って、図5に示すように対比構造に比べて車室が座屈変形した際の衝撃をGb からGa へと緩和することができる。
【0045】
ここで、本実施形態にあっては前述のようにフロア一般部1Aに切欠部1Dを設ける一方、ダッシュクロスメンバ5のトーボード部1Aにこの切欠部1Dに嵌合する連接部5Dを延設した簡単な構造によって、フロアパネル1の前端とダッシュクロスメンバ5の後端との継目の前後方向オフセット配置を設計的に容易に構成することができる。
【0046】
特に、前記切欠部1Dおよび連接部5Dを平面略矩形状に形成してあるため、成形性が良くこれら切欠部1Dおよび連接部5Dの嵌合精度を出し易く、従って、接合強度を高めることができる。
【0047】
図6〜8は本発明の第2実施形態を示すもので、本実施形態にあっては前記第1実施形態における切欠部1Dおよび連接部5Dを、一側縁がトンネル部1Bに沿って形成されて該トンネル部1B側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成してあり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。
【0048】
従って、この第2実施形態の構造によれば前記第1実施形態の効果に加えて次のような効果を奏せられる。
【0049】
即ち、車両の側面衝突時にはフロアパネル1はサイドシル部1Cの前後方向略中央部に接合して立設した図外のセンターピラーとの結合部近傍を中心にしてほぼ同心円状に座屈変形が進行するようになるが、前述のような平面略V字状に切欠部1Dおよび連接部5Dを形成することによって、フロア一般部1Aのサイドシル部1C側の前端部を極力該サイドシル部1Cの前端部近くまで残すことができて、該サイドシル部1C寄りにフロア一般部1Aと押出方向が直交する連接部5Dが存在しなくなるため、フロア一般部1Aの前記座屈変形を前端側にまで拡大して衝突エネルギー吸収量を増大することができる。
【0050】
また、閉断面の急激な変化による座屈の集中等の変形モードの急激な変化が発生することがなく、しかも、フロア一般部1Aの車幅方向の座屈変形がある程度進行すると、連接部5Dによって必要以上にこの座屈変形が進行するのを抑制することができる。
【0051】
これらのことから、車両の前面衝突時のみならず、側面衝突時においても安全対策上良好な変形モードを得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態では切欠部1Dおよび連接部5Dを、その平面略V字状の斜辺、つまり、これら切欠部1D,連接部5Dの前後方向の継目が直線となるように形成しているが、この斜辺を前方に向けて凸となる円弧状に形成するようにして、側面衝突時の要求変形モードに対応させることもできる。
【0053】
図9は本発明の第3実施形態を示すもので、本実施形態にあっては、前記図6〜8に示した第2実施形態における平面略V字状の切欠部1Dと連接部5Dとを嵌合して結合した部分の下面に沿って、該連接部5Dの延設基部と切欠部1Dの平面略V字状の斜辺の切欠縁部とに接合された前後方向に延在する複数本の補強バー20を付設してある。
【0054】
これらの補強バー20は前端側を接合座21Fにより一体に連接してあり、各後端には切欠部1Dの斜辺の切欠縁近傍で所要の接合面積を確保し得るように所要の形状で接合座21Rを形成してある。
【0055】
補強バー20は、例えばフロアパネル1およびダッシュクロスメンバ5と同様の軽量金属材料により、プレス成形,鋳造成形,あるいは射出成形等により形成してあって、各補強バー20はその断面積が前端から後端に至るにしたがって小さくなるように形成してある。
【0056】
従って、この第3実施形態の構造によれば前記第2実施形態の効果に加えて、連接部5Dと切欠部1Dとの平面略V字状の結合部分の下面に沿って配設した複数本の前後方向に延在する補強バー20によって前記結合部分を補強することができ、従って、車両の前後方向衝突時におけるダッシュクロスメンバ5とフロアパネル1との結合部での応力集中をより一層緩和することができて、理想的な衝突エネルギー吸収を行わせることができる。
【0057】
特に、本実施形態では各補強バー20はその断面積を前端から後端に至るに従って小さく形成してあるので、各補強バー20の配設部分における連接部5Dとフロア一般部1Aおよび補強バー20の断面積の総和を、図10に示すようにフロアパネル1の前後方向中央側に至るにしたがって小さくして、例えば同図に示すように前記総和断面積の変曲点Sp を各補強バー20の配設部の前部側で該補強バー20の長さの20〜50%の領域に設定することができて、各補強バー20配設部分で該変曲点Sp を平面略V字状の継目の斜辺にほぼ沿わせるこができ、この結果、各補強バー20による切欠部1Dと連接部5Dとの結合部分の補強剛性をフロアパネル1の前後方向中央側に至るにしたがって低められて、車両の前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際に衝撃が大きくなるのを効率的に抑制することができる。
【0058】
図11は図9に示した第3実施形態の変形例を示すもので、この第4実施形態にあっては前記複数本の補強バー20の中間部分を、切欠部1Dの車幅方向両側の切欠縁部に接合した車幅方向に延びる梁部材22により一体に連設してある。
【0059】
梁部材22の車幅方向両端部には適宜形状の接合座23を設けて、所要の接合面積を確保できるようにしてある。
【0060】
従って、この第4実施形態の構造によれば前記第3実施形態の効果に加えて、梁部材22の配設部分から後方へ突出する補強バー20の本数を調整することによって、図10に示した総和断面積の変曲点Sp の調整、即ち、補強バー20による前後方向補強剛性の調整を容易に行うことができる。
【0061】
また、該梁部材22の存在によって車両の側面衝突時における車幅方向の補強効果を得ることができる。
【0062】
前記第3,第4実施形態では補強バー20の断面積の調整によって補強剛性をコントロールするようにしているが、この他、補強バー20の曲げ強度の調整により補強剛性をコントロールすることもできる。
【0063】
これは、例えば図12の(A)に示すように補強バー20の前端部を断面長円形の中実に形成すると共に、前端部から後端部に至るにしたがって漸次下側が開放した開断面、例えば同図の(B)に示すように上方に凸となる円弧状の開断面に断面形状変化させて、補強バー20の曲げ強度を後端に至るにしたがって低めるようにしてもよい。
【0064】
このように補強バー20の曲げ強度の変化を補強バー20の断面形状変化によって実現できることにより、該補強バー20による補強剛性のコントロールを容易に行うことができ、また、前記第3,第4実施形態のように補強バー20を先細にして断面積を変化させるものに較べて成形性を向上することができる。
【0065】
また、この第5実施形態のように補強バー20を前後端に亘って断面積を変えずに、後端側が上方に凸となる円弧状に漸次断面形状変化させることにより、車両の前面衝突時の車室の座屈変形によって該補強バー20が下向きに曲げ変形した際に、該補強バー20の曲げ許容限界を拡大できて破断するのを回避することができる。
【0066】
ここで、前記第3,第4実施形態では切欠部1Dおよび連接部5Dを平面略V字状に形成しているが、この他、変形モードの要求によっては図13に示すように、これら切欠部1D,連接部5Dを平面略U字状に形成するようにしてもよく、この第6実施形態では補強バー20として図12の第5実施形態に示したものを用いた場合を例示している。
【0067】
なお、前記実施形態ではクロスメンバとしてダッシュクロスメンバ5を例示したが、フロアパネル1の後端に結合される図外のリヤシートクロスメンバとの結合部に適用して前述と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を示す斜視図。
【図2】 本発明の第1実施形態の断面説明図。
【図3】 本発明の第1実施形態におけるフロアパネルとダッシュクロスメンバとを分離して示す斜視図。
【図4】 本発明の第1実施形態の車両前面衝突時における変形状態を示す斜視図。
【図5】 車両前面衝突時のエネルギー吸収特性を説明するグラフ。
【図6】 本発明の第2実施形態を示す斜視図。
【図7】 本発明の第2実施形態におけるフロアパネルとダッシュクロスメンバを分離して示す斜視図。
【図8】 本発明の第2実施形態のフロア下側から見た斜視図。
【図9】 本発明の第3実施形態のフロア下側から見た斜視図。
【図10】 本発明の第3実施形態における補強バー周りの断面積変化状態を示すグラフ。
【図11】 本発明の第4実施形態のフロア下側から見た斜視図。
【図12】 本発明の第5実施形態における補強バーの断面形状を示し、(A)は前端側を、(B)は後端側を示す。
【図13】 本発明の第6実施形態を示す略示的底面図。
【符号の説明】
1 フロアパネル
1A フロア一般部
1B トンネル部
1C サイドシル部
5 ダッシュクロスメンバ(クロスメンバ)
5A トーボード部
5B 縦壁部
5C トンネル嵌合部
5D 連接部
20 補強バー
22 梁部材
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の車体構造、とりわけ、アルミ合金等の軽量金属材料により押出成形したフロアパネルとその前後端部に結合されるクロスメンバとの結合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の中には、例えば特開平9−99870号公報に示されているように、車体の軽量化と剛性確保の両立を狙ってフロアパネルをアルミ合金等の軽量金属材料により車体前後方向に閉断面構造に押出成形したものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
車体の軽量化および剛性確保を図るためには、フロアパネルだけにとどまらず該フロアパネルの前端に結合されるダッシュクロスメンバや、フロアパネルの後端に結合されるリヤシートクロスメンバ等のクロスメンバも、フロアパネルと同様の軽量金属材料により車幅方向に閉断面構造に押出成形したものを用いることが望ましいが、これらフロアパネルとクロスメンバとを通常のプレス成形品の場合と同様に直線状に突き合わせた状態で溶接接合したのでは、フロアパネルとクロスメンバの閉断面押出方向が直交状態となっているため、継目部分に応力が集中し易くなってしまう可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は簡単な構造によって、押出方向が直交するフロアパネルとクロスメンバとの継目部分に応力が集中するのを緩和することができる結合構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、車幅方向中央部にトンネル部を備えると共に、車幅方向側部にサイドシル部を備えて閉断面構造に前後方向に押出成形したフロアパネルと、
閉断面構造に車幅方向に押出成形され、車幅方向中央部に前記トンネル部に嵌合するトンネル嵌合部を切欠形成したクロスメンバとを、前後方向に突き合わせた状態で結合する構造であって、
前記フロアパネルのトンネル部とサイドシル部との間のフロア一般部の前後方向端部に切欠部を形成する一方、クロスメンバに前記切欠部に嵌合する連接部を閉断面構造で延設し、これら切欠部と連接部とを嵌合して結合して、クロスメンバと、フロア一般部との結合位置を、これらトンネル部およびサイドシル部の前後方向端部とクロスメンバとの結合位置よりも、フロアパネルの前後方向中央側にオフセットした位置に設定したことを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載のクロスメンバが、前傾したトーボード部と該トーボード部からほぼ垂直に立上がる縦壁部とを備えたダッシュクロスメンバであって、フロアパネルのフロア一般部を、トーボード部の傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置で該トーボード部に連接結合したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明にあっては、請求項1または2に記載の切欠部および連接部を、平面略矩形状に形成したことを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明にあっては、請求項1または2に記載の切欠部および連接部を、一側縁がトンネル部に沿って形成されて該トンネル部側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成したことを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明にあっては、請求項4に記載の連接部と切欠部とを嵌合して結合した部分の下面に沿って、連接部の延設基部と切欠部の平面略V字状の斜辺の切欠縁部とに接合された前後方向に延在する複数本の補強バーを備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項6の発明にあっては、請求項5に記載の補強バーは、その断面積がフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくなるように形成したことを特徴としている。
【0012】
請求項7の発明にあっては、請求項6に記載の複数本の補強バーの中間部分を、切欠部の車幅方向両側の切欠縁部に接合した車幅方向に延びる梁部材により一体に連設したことを特徴としている。
【0013】
請求項8の発明にあっては、請求項5に記載の補強バーを、その曲げ強度がフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくなるように形成したことを特徴としている。
【0014】
請求項9の発明にあっては、請求項8に記載の補強バーを、フロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって中実断面から漸次下側が開放した開断面に断面形状変化して形成したことを特徴としている。
【0015】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、押出方向が直交するフロアパネルとクロスメンバとの継目部分が車幅方向に直線状に揃うことがなく、フロア一般部ではクロスメンバとの継目部分がフロアパネルの前後方向中央側にオフセットして、押出方向が直交したフロアパネルとクロスメンバとが入り組んでいるため、車両の前後方向衝突時に前記継目部分への応力集中を緩和して、クロスメンバがフロアパネルとの接続部分を基点として大きく折れ曲り変形するのを抑制するこができる。
【0016】
この結果、フロントコンパートメント又はリヤコンパートメントの圧潰反力を高く維持できて、これらフロントコンパートメント又はリヤコンパートメントの潰れストロークを拡大して衝突エネルギー吸収効果を高めることができる。
【0017】
また、トンネル部およびサイドシル部がフロア一般よりも前後方向に突出した構造となるため、これらトンネル部およびサイドシル部はその突出した部分で曲げ剛性が低められることになり、従って、前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際の衝撃を緩和することができる。
更に、フロア一般部に切欠部を設ける一方、クロスメンバに該切欠部に嵌合する連接部を延設した簡単な構造によって、フロアパネルとクロスメンバとの継目の前後方向オフセット配置を容易に構成することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、車両の前面衝突時にはフロントコンパートメントのフロントサイドメンバからの軸力によって、ダッシュクロスメンバのトーボード部の傾斜下縁の曲折部が曲げモーメント最大位置となるが、フロア一般部はこのトーボード部の傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置で該トーボード部に連接結合して、前記曲げモーメント最大となる位置に対して押出方向が直交した閉断面急変部(継目部分)を分離することができ、従って、ダッシュクロスメンバとフロアパネルとの結合部に極端な応力集中部分を生じることがなく、フロントサイドメンバの支持剛性を高めてフロントコンパートメントの圧潰反力を高く維持できると共に、ダッシュクロスメンバの座屈タイミングを遅らせることが可能となって、車室の変形を可及的に少なく抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、切欠部および連接部を平面略矩形状に形成してあるため、成形性が良くこれら切欠部および連接部の嵌合精度を出し易く、従って、接合強度を高めることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、切欠部および連接部を、一側縁がトンネル部に沿って形成されて該トンネル部側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成してあるため、車両の側面衝突時にフロアパネルの側部中央部分から座屈変形が進行する場合に、このフロアパネル側部の座屈変形の可能領域を前後方向に可及的に広げることができて、衝突エネルギー吸収効果を高めることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、連接部と切欠部との結合部分の下面に沿って配設した複数本の前後方向に延在する補強バーによって前記結合部分を補強することができ、車両の前後方向衝突時におけるクロスメンバとフロアパネルとの結合部での応力集中をより一層緩和することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加えて、補強バーの断面積をフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくしてあるため、補強バーによる切欠部と連接部との結合部分の補強剛性をフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって低められ、この結果、車両の前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際に衝撃が大きくなるのを抑制することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて、車幅方向に延在させた梁部材によって、補強バーによる前後方向補強剛性の調整を容易に行うことができる。
【0025】
また、該梁部材の存在によって車両の側面衝突時における車幅方向の補強効果を得ることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加えて、補強バーの曲げ強度の変化によって該補強バーによる切欠部と連接部との結合部分の補強剛性をフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって低めることができて、車両の前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際に衝撃が大きくなるのを抑制することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8の発明の効果に加えて、補強バーの曲げ強度の変化を該補強バーの断面形状変化によって容易に調整設定することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0029】
図1〜3において、1は平坦なフロア一般部1Aと、車幅方向中央部のトンネル部1Bと、車幅方向側部のサイドシル部1Cとを一体に備えたフロアパネルを示し、該フロアパネル1はアルミ合金等の軽量金属材料により内壁2と外壁3とを有する閉断面構造に前後方向に押出成形してあり、これら内,外壁2,3間には前後方向に延びる複数のリブ壁4を介在させて剛性を高めてある。
【0030】
5はフロアパネル1の前端部に結合されるクロスメンバとしてのダッシュクロスメンバを示し、該ダッシュクロスメンバ5は通常のプレス成形したダッシュロアパネルと同様に傾斜したトーボード部5Aと該トーボード部5Aから略垂直に立上がる縦壁部5Bとを備え、フロアパネル1と同様の軽量金属材料により内壁6と外壁7とを有する閉断面構造に車幅方向に押出成形してあって、これら内,外壁6,7間に車幅方向に延びる複数のリブ壁8を介在させて剛性を高めてある。
【0031】
ダッシュクロスメンバ5のトーボード部5Aの略中央部には、前記トンネル部1Bに嵌合するトンネル嵌合部5Cを切欠形成してある。
【0032】
ダッシュクロスメンバ5の外面測には、縦壁部5Bからトーボード部5Aに廻り込んでレインフォース部材9を接合配置してあり、該レインフォース部材9の車幅方向両側部に前方に向けて延設したアーム部9Aにフロントサイドメンバ10を嵌合して接合固定してある。
【0033】
これら左右のフロントサイドメンバ10,10の前端部はファーストクロスメンバ11およびバンパーアーマチュア12により連結してあり、これらフロントサイドメンバ10,ファーストクロスメンバ11,バンパーアーマチュア12等によってフロントコンパートメントF・Cの骨格を構成している。
【0034】
前記フロアパネル1とダッシュクロスメンバ5は、それらを前後方向に突き合わせた状態で、具体的にはトンネル部1Bの前端部にトンネル嵌合部5Cを嵌合し、サイドシル部1Cの端末をトーボード部5Aに突き合わせた状態でそれらの継目部分をレーザー溶接,ミグ溶接等により溶接して結合するが、フロア一般部1Aとトーボード部5Aとの結合位置は、前記トンネル部1Bおよびサイドシル部1Cとトーボード部5Aとの結合位置よりも、フロアパネル1の前後方向中央側(後方)にオフセットした位置に設定してある。
【0035】
この実施形態にあっては、フロア一般部1Aの前端部にトンネル部1Bの下縁からサイドシル部1Cの内側下縁に亘って平面略矩形状に切欠部1Dを形成する一方、トーボード部5Aの傾斜下縁から後方に向けて前記切欠部1Dに嵌合する平面略矩形状の平坦な連接部5Dを上,下壁6,7とそれらを継ぐ複数のリブ壁8とからなる閉断面構造で延設し、これら切欠部1Dと連接部5Dとを嵌合してそれらの継目部分を同様に溶接して結合してある。
【0036】
この実施形態では連接部5Dの後端に開断面の接続部5Eを形成して、該接続部5E内にフロア一般部1Aの前端、即ち、切欠部1Dの前縁を嵌合して結合するようにしているが、この他、連接部5Dの後端とフロア一般部1Aの前端とを相互に嵌合する図外のジョイント部材を介して略面一となるように接続して結合するようにしてもよい。
【0037】
また、サイドシル部1Cの前端部分は連接部5Dの側部上に重合して前端をトーボード部5Aに突き合わせて結合するようにしているため、該サイドシル部1Cの前端部の連接部5D上に重合する部分は、該連接部5Dの板厚(高さ)相当分で切削加工してある。
【0038】
なお、図2中、13は図外のサスペンションメンバを連結するためのマウントボルトを示す。
【0039】
以上の実施形態の構造によれば、押出方向が直交するフロアパネル1とダッシュクロスメンバ5との継目部分が車幅方向に直線状に揃うことがなく、フロア一般部1Aでは切欠部1Dとトーボード部5Aに延設した連接部5Dとを嵌合して結合し、該フロア一般部1Aではトーボード部5Aとの継目部分がトンネル部1Bおよびサイドシル部1Cとトーボード部5Aとの継目部分よりも後方にオフセットして、これら押出方向が直交したフロアパネル1とダッシュクロスメンバ5とが入り組んでいるため、車両の前面衝突時に前記継目部分への応力集中を緩和して、ダッシュクロスメンバ5がフロアパネル1との接続部分を基点として大きく折れ変形するのを抑制することができる。
【0040】
とりわけ、この前面衝突時にはフロントサイドメンバ10からの軸力によって、トーボード部5Aの傾斜下縁の曲折部が曲げモーメント最大位置となるが、フロア一般部1Aは切欠部1Dと連接部5Dとを嵌合することによって、該トーボード部5Aの傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置でトーボード部5Aに連接結合して、前記曲げモーメント最大となる位置に対して押出方向が直交した閉断面急変部(継目部分)を分離することができ、従って、ダッシュクロスメンバ5とフロアパネル1との結合部に極端な応力集中部分が生じることがない。
【0041】
これらのことから、フロントサイドメンバ10の圧潰反力(支持剛性)を高めて該フロントサイドメンバ10を図4に示すようにその前端側から整然と潰れ変形させ、フロントコンパートメントF・Cの潰れストロークを拡大して衝突エネルギー吸収効果を高めることができる。
【0043】
図5のa線は本実施形態における衝突エネルギー吸収特性を、b線はフロアパネル1の前端とダッシュクロスメンバ5の後端とを、車幅方向でほぼ直線状に結合して構成した構造(以下、対比構造と称する)の衝突エネルギー吸収特性を示しており、同図からも明らかなように対比構造におけるダッシュクロスメンバ5の座屈タイミングPb に対して、本実施形態ではダッシュクロスメンバ5の座屈タイミングPa を大幅に遅らせることができて斜線領域で示すようにフロントコンパートメントF・Cの潰れ変形量を増大でき、従って、車室の変形を可及的に少なく抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態ではフロア一般部1Aの前端部の切欠部1Dの形成により、トンネル部1Bおよびサイドシル部1Cが、該フロア一般部1Aの前端よりも前方に突出した構造となるため、これらトンネル部1Bおよびサイドシル部1Cはその前端部の突出した部分で曲げ剛性が低められることになり、従って、図5に示すように対比構造に比べて車室が座屈変形した際の衝撃をGb からGa へと緩和することができる。
【0045】
ここで、本実施形態にあっては前述のようにフロア一般部1Aに切欠部1Dを設ける一方、ダッシュクロスメンバ5のトーボード部1Aにこの切欠部1Dに嵌合する連接部5Dを延設した簡単な構造によって、フロアパネル1の前端とダッシュクロスメンバ5の後端との継目の前後方向オフセット配置を設計的に容易に構成することができる。
【0046】
特に、前記切欠部1Dおよび連接部5Dを平面略矩形状に形成してあるため、成形性が良くこれら切欠部1Dおよび連接部5Dの嵌合精度を出し易く、従って、接合強度を高めることができる。
【0047】
図6〜8は本発明の第2実施形態を示すもので、本実施形態にあっては前記第1実施形態における切欠部1Dおよび連接部5Dを、一側縁がトンネル部1Bに沿って形成されて該トンネル部1B側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成してあり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。
【0048】
従って、この第2実施形態の構造によれば前記第1実施形態の効果に加えて次のような効果を奏せられる。
【0049】
即ち、車両の側面衝突時にはフロアパネル1はサイドシル部1Cの前後方向略中央部に接合して立設した図外のセンターピラーとの結合部近傍を中心にしてほぼ同心円状に座屈変形が進行するようになるが、前述のような平面略V字状に切欠部1Dおよび連接部5Dを形成することによって、フロア一般部1Aのサイドシル部1C側の前端部を極力該サイドシル部1Cの前端部近くまで残すことができて、該サイドシル部1C寄りにフロア一般部1Aと押出方向が直交する連接部5Dが存在しなくなるため、フロア一般部1Aの前記座屈変形を前端側にまで拡大して衝突エネルギー吸収量を増大することができる。
【0050】
また、閉断面の急激な変化による座屈の集中等の変形モードの急激な変化が発生することがなく、しかも、フロア一般部1Aの車幅方向の座屈変形がある程度進行すると、連接部5Dによって必要以上にこの座屈変形が進行するのを抑制することができる。
【0051】
これらのことから、車両の前面衝突時のみならず、側面衝突時においても安全対策上良好な変形モードを得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態では切欠部1Dおよび連接部5Dを、その平面略V字状の斜辺、つまり、これら切欠部1D,連接部5Dの前後方向の継目が直線となるように形成しているが、この斜辺を前方に向けて凸となる円弧状に形成するようにして、側面衝突時の要求変形モードに対応させることもできる。
【0053】
図9は本発明の第3実施形態を示すもので、本実施形態にあっては、前記図6〜8に示した第2実施形態における平面略V字状の切欠部1Dと連接部5Dとを嵌合して結合した部分の下面に沿って、該連接部5Dの延設基部と切欠部1Dの平面略V字状の斜辺の切欠縁部とに接合された前後方向に延在する複数本の補強バー20を付設してある。
【0054】
これらの補強バー20は前端側を接合座21Fにより一体に連接してあり、各後端には切欠部1Dの斜辺の切欠縁近傍で所要の接合面積を確保し得るように所要の形状で接合座21Rを形成してある。
【0055】
補強バー20は、例えばフロアパネル1およびダッシュクロスメンバ5と同様の軽量金属材料により、プレス成形,鋳造成形,あるいは射出成形等により形成してあって、各補強バー20はその断面積が前端から後端に至るにしたがって小さくなるように形成してある。
【0056】
従って、この第3実施形態の構造によれば前記第2実施形態の効果に加えて、連接部5Dと切欠部1Dとの平面略V字状の結合部分の下面に沿って配設した複数本の前後方向に延在する補強バー20によって前記結合部分を補強することができ、従って、車両の前後方向衝突時におけるダッシュクロスメンバ5とフロアパネル1との結合部での応力集中をより一層緩和することができて、理想的な衝突エネルギー吸収を行わせることができる。
【0057】
特に、本実施形態では各補強バー20はその断面積を前端から後端に至るに従って小さく形成してあるので、各補強バー20の配設部分における連接部5Dとフロア一般部1Aおよび補強バー20の断面積の総和を、図10に示すようにフロアパネル1の前後方向中央側に至るにしたがって小さくして、例えば同図に示すように前記総和断面積の変曲点Sp を各補強バー20の配設部の前部側で該補強バー20の長さの20〜50%の領域に設定することができて、各補強バー20配設部分で該変曲点Sp を平面略V字状の継目の斜辺にほぼ沿わせるこができ、この結果、各補強バー20による切欠部1Dと連接部5Dとの結合部分の補強剛性をフロアパネル1の前後方向中央側に至るにしたがって低められて、車両の前後方向衝突入力により車室が座屈変形した際に衝撃が大きくなるのを効率的に抑制することができる。
【0058】
図11は図9に示した第3実施形態の変形例を示すもので、この第4実施形態にあっては前記複数本の補強バー20の中間部分を、切欠部1Dの車幅方向両側の切欠縁部に接合した車幅方向に延びる梁部材22により一体に連設してある。
【0059】
梁部材22の車幅方向両端部には適宜形状の接合座23を設けて、所要の接合面積を確保できるようにしてある。
【0060】
従って、この第4実施形態の構造によれば前記第3実施形態の効果に加えて、梁部材22の配設部分から後方へ突出する補強バー20の本数を調整することによって、図10に示した総和断面積の変曲点Sp の調整、即ち、補強バー20による前後方向補強剛性の調整を容易に行うことができる。
【0061】
また、該梁部材22の存在によって車両の側面衝突時における車幅方向の補強効果を得ることができる。
【0062】
前記第3,第4実施形態では補強バー20の断面積の調整によって補強剛性をコントロールするようにしているが、この他、補強バー20の曲げ強度の調整により補強剛性をコントロールすることもできる。
【0063】
これは、例えば図12の(A)に示すように補強バー20の前端部を断面長円形の中実に形成すると共に、前端部から後端部に至るにしたがって漸次下側が開放した開断面、例えば同図の(B)に示すように上方に凸となる円弧状の開断面に断面形状変化させて、補強バー20の曲げ強度を後端に至るにしたがって低めるようにしてもよい。
【0064】
このように補強バー20の曲げ強度の変化を補強バー20の断面形状変化によって実現できることにより、該補強バー20による補強剛性のコントロールを容易に行うことができ、また、前記第3,第4実施形態のように補強バー20を先細にして断面積を変化させるものに較べて成形性を向上することができる。
【0065】
また、この第5実施形態のように補強バー20を前後端に亘って断面積を変えずに、後端側が上方に凸となる円弧状に漸次断面形状変化させることにより、車両の前面衝突時の車室の座屈変形によって該補強バー20が下向きに曲げ変形した際に、該補強バー20の曲げ許容限界を拡大できて破断するのを回避することができる。
【0066】
ここで、前記第3,第4実施形態では切欠部1Dおよび連接部5Dを平面略V字状に形成しているが、この他、変形モードの要求によっては図13に示すように、これら切欠部1D,連接部5Dを平面略U字状に形成するようにしてもよく、この第6実施形態では補強バー20として図12の第5実施形態に示したものを用いた場合を例示している。
【0067】
なお、前記実施形態ではクロスメンバとしてダッシュクロスメンバ5を例示したが、フロアパネル1の後端に結合される図外のリヤシートクロスメンバとの結合部に適用して前述と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を示す斜視図。
【図2】 本発明の第1実施形態の断面説明図。
【図3】 本発明の第1実施形態におけるフロアパネルとダッシュクロスメンバとを分離して示す斜視図。
【図4】 本発明の第1実施形態の車両前面衝突時における変形状態を示す斜視図。
【図5】 車両前面衝突時のエネルギー吸収特性を説明するグラフ。
【図6】 本発明の第2実施形態を示す斜視図。
【図7】 本発明の第2実施形態におけるフロアパネルとダッシュクロスメンバを分離して示す斜視図。
【図8】 本発明の第2実施形態のフロア下側から見た斜視図。
【図9】 本発明の第3実施形態のフロア下側から見た斜視図。
【図10】 本発明の第3実施形態における補強バー周りの断面積変化状態を示すグラフ。
【図11】 本発明の第4実施形態のフロア下側から見た斜視図。
【図12】 本発明の第5実施形態における補強バーの断面形状を示し、(A)は前端側を、(B)は後端側を示す。
【図13】 本発明の第6実施形態を示す略示的底面図。
【符号の説明】
1 フロアパネル
1A フロア一般部
1B トンネル部
1C サイドシル部
5 ダッシュクロスメンバ(クロスメンバ)
5A トーボード部
5B 縦壁部
5C トンネル嵌合部
5D 連接部
20 補強バー
22 梁部材
Claims (9)
- 車幅方向中央部にトンネル部を備えると共に、車幅方向側部にサイドシル部を備えて閉断面構造に前後方向に押出成形したフロアパネルと、 閉断面構造に車幅方向に押出成形され、車幅方向中央部に前記トンネル部に嵌合するトンネル嵌合部を切欠形成したクロスメンバとを、前後方向に突き合わせた状態で結合する構造であって、
前記フロアパネルのトンネル部とサイドシル部との間のフロア一般部の前後方向端部に切欠部を形成する一方、クロスメンバに前記切欠部に嵌合する連接部を閉断面構造で延設し、これら切欠部と連接部とを嵌合して結合して、クロスメンバと、フロア一般部との結合位置を、これらトンネル部およびサイドシル部の前後方向端部とクロスメンバとの結合位置よりも、フロアパネルの前後方向中央側にオフセットした位置に設定したことを特徴とする自動車の車体構造。 - クロスメンバが、前傾したトーボード部と該トーボード部からほぼ垂直に立上がる縦壁部とを備えたダッシュクロスメンバであって、フロアパネルのフロア一般部を、トーボード部の傾斜下縁よりも後方にオフセットした位置で該トーボード部に連接結合したことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体構造。
- 切欠部および連接部を、平面略矩形状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の車体構造。
- 切欠部および連接部を、一側縁がトンネル部に沿って形成されて該トンネル部側に偏寄して頂点を持つ平面略V字状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の車体構造。
- 連接部と切欠部とを嵌合して結合した部分の下面に沿って、連接部の延設基部と切欠部の平面略V字状の斜辺の切欠縁部とに接合された前後方向に延在する複数本の補強バーを備えていることを特徴とする請求項4に記載の自動車の車体構造。
- 補強バーは、その断面積がフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくなるように形成したことを特徴とする請求項5に記載の自動車の車体構造。
- 複数本の補強バーの中間部分を、切欠部の車幅方向両側の切欠縁部に接合した車幅方向に延びる梁部材により一体に連設したことを特徴とする請求項6に記載の自動車の車体構造。
- 補強バーを、その曲げ強度がフロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって小さくなるように形成したことを特徴とする請求項5に記載の自動車の車体構造。
- 補強バーを、フロアパネルの前後方向中央側に至るにしたがって中実断面から漸次下側が開放した開断面に断面形状変化して形成したことを特徴とする請求項8に記載の自動車の車体構造。
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