JP3828032B2 - 電気音響変換器用防水振動板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響機器の一種であるスピーカやマイクロホン等に用いられる電気音響変換器用振動板に関し、詳しくは、防水性を向上させた紙製の電気音響変換器用防水振動板に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピーカ等の電気音響変換器用振動板に要求される物性としては、比弾性率、比曲げ剛性率が大きく、適度な内部損失を有し、機械疲労に強く、耐候性が良いことである。
【0003】
振動板素材としては、種々の金属、セラミックス、合成繊維、カーボン、アラミド繊維、合成樹脂、紙を主体としたもの等が存在する。この中で、紙製の振動板は、質量が軽く、また、設計の自由度も高く、コスト面でも有利となる等のメリットを有している。このため、一般的に、紙製の振動板が用いられている。
【0004】
近年、振動板の用途としては、車載用としての需要が多く、車載用として使用するためには優れた防水性をもたせることが重要な課題になってきている。すなわち、車載用の揚合、スピーカは車のドアに取り付けられることが多く、洗車時に用いられる洗浄剤カーシャンプー等の界面活性剤に対しても防水性、耐水性が求められてきている。
【0005】
しかし、紙製の振動板は、防水性が低いため、防水処理を施す必要がある。この防水処理としては、例えば、防水性の高い樹脂を含浸したり、表面をコーティングしたり、合成フィルムを加熱圧着や加熱吸着して表面にフィルム層を設けたりする方法がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、樹脂を含浸する方法は、防水性の効果に持続力がなく、また、表面をコーティングするには、コーティング剤を用意し、コーティングする作業を要し、製造が煩雑であった。合成樹脂フィルムを加熱圧着、加熱吸着して表面にフィルム層を設ける方法は、フィルムを加熱することで、ピンホールができ、そこから水が浸入する等の問題があった。
【0007】
また、上記方法では、何れもカーシャンプーに含まれる界面活性剤入りの溶液に対し防水性が不十分であった。
【0008】
この発明は上記の課題を解決し、界面活性剤入りの溶液に対してもコスト高を招くことなく防水性を向上させ、かつ音響特性も向上させた紙製の電気音響変換器用防水振動板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、セルロース繊維または、セルロース繊維と合成繊維とを混合して湿式抄造法により抄き、加熱加圧乾操して、所定の形状に成形した後、シリカ系樹脂とフッ素系樹脂とを含浸し、さらに加熱処理してなる構成を採用している。
【0010】
また、前記合成繊維は、ポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維、カーボン繊維、ポリベンザゾール繊維を用いたことを特徴としている。前記シリカ系樹脂は、酸性の水性コロイド状シリカと非水性コロイド状シリカ混合物、オルガノヒドロキシシランまたは、その部分縮合体からなる固形分であることを特徴としている。前記フッ素系樹脂は、メタクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーであることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における電気音響変換器用防水振動板は、セルロース繊維を主体として、抄造物を作製する。その後、熱プレス乾操して、所定の形状に成形する。この振動板にシリカ系樹脂とフッ素系樹脂の含浸を行って、再度加熱し硬化させる。加熱硬化させることによって、パルプ繊維間の結合力を高め、また、繊維間にシリカ系樹脂の皮膜を形成した。
【0012】
さらに、セルロース繊維を主体とした物に、合成繊維を混合し、抄造物を作製し、その後熱プレス乾燥して、所定の形状に成形し、シリカ系樹脂とフッ素系樹脂の含浸を行って、再度加熱硬化させる構成とすると、さらに高い性能を確保できる。
【0013】
【実施例】
セルロース繊維としてベースパルプ、NUKP(34°SR)を用いた。合成繊維としてポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維の3mmのカット品を用いた。
【0014】
ベースパルプ(乾燥質量)に対して、3mmにカットしたポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維を10質量%加え、上記で得られた繊維の水中分散液(スラリー)を金網等の上で、所定の形状に抄き上げ脱水工程において、適当な水分量に調整した。
【0015】
上記で得られた抄造物を所定の形状の金型を用いて、加熱乾燥した。後に、酸性の水性コロイド状シリカと非水性コロイド状シリカ混合物、オルガノヒドロキシシランまたは、その部分縮合体からなる固形分で構成されるシリカ系樹脂(商品名:スカイミック SRCクリアー 大阪有機化学工業株式会社)とフッ素系樹脂であるメタクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマー(商品名:モディパーF210 日本油脂株式会社)を所定の濃度に希釈して、振動板に含浸する。後に常温で15分乾操し、ついで170℃で20分加熱処理して、16cmの振動板を作製した。
【0016】
本実施例に用いられたシリカ系樹脂をさらに詳しく説明すると、酸性の水性コロイド状シリカと非水性コロイド状シリカ混合物{式R1Si(OR2)3(式中は、R1は炭素原子数1〜3個のアルキル基、ビニル基、フェニル基3.4−エポキシシクロへキシルエチル基、γ−グロシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、γ一クロロプロピル基から成る群より選ばれた基を表し、R2 は炭素原子1〜3個のアルキル基またはアリール基を表す)}や、オルガノアルコルコキシシランを酸性の水性コロイド状シリカを、非水性コロイド状シリカの混合物散液中で加水分解して得られる、式R1Si(OH)3で示されるオルガノヒドロキシシラン、または、その部分縮合体からなる固形分で構成されるものである。
【0017】
本発明の振動板と、これと同一の組成の抄造物であって、本発明の樹脂含浸処理を施さないものを従来品として物性を比較すると次の通りである。
【0018】
振動板の断面構造を電子顕微鏡で観察すると、本発明の振動板は、従来品に比べ、パルプの繊維間に本発明の含浸剤が膜状に結着して強固に結合しているのが認められ、これにより優れた防水性を得ていることが確認された。
【0019】
このように本発明によれば、特別な設備を必要とせず、パルプ繊維間にシリカ系樹脂が膜状に結着して、これら繊維どうしを強固に結合させて、耐水性、防水性を持たせると同時に、フッ素系樹脂であるメタクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーの相溶性セグメントが、基材(パルプ繊維およびシリカ系樹脂等)に捕捉され、繊維間の結合力を更に高めると共に、Tanδを向上させた。
【0020】
また、フッ素セグメントが表面に移行、配向するため、強い撥水作用も働き、振動板表面、裏面からの水の浸入を防ぎ、冠水試験後においても、高い挫屈強度を保ち、界面活性剤に対しても有効な耐水性、防水性を持たせることが可能になったことで、優れた耐水性、防水性を有する紙を主体とした電気音響変換器用防水振動板を得ることが出来る。さらに、繊維結着力が増加するため、水素結合を持たない(あってもごくわずかな)合成繊維を強固に結着できるため、弾性率も向上するという特徴も有している。
【0021】
音響特性は、図1(a)に示すように、図1(b)に示す従来品の特性に比べ、高域側の音圧が向上すると共に、フラットになり、良好な音質を得ることが出来た。これはポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維等の合成樹脂繊維混抄により、弾性率が向上したことに起因するが、上記したような本発明の含浸剤の働きが、その効果をより高めていることが確認された。混抄する合成樹脂繊維としてポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維を用いたが、これに限定されることなく、カーボン繊維、ポリベンザゾール繊維等を用いても、同様の効果が得られた。
【0022】
なお、上記実施例ではセルロース繊維と合成繊維とを混抄した例について示したが、セルロース繊維100%のものに、シリカ系樹脂とフッ素系樹脂(特に、メタクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマー)を含浸し、加熱処理しても同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
また、合成繊維としてはポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維以外に、カーボン繊維、ポリベンザゾール繊維等を用いても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、製造にあたり、セルロース繊維またはセルロース繊維と合成繊維とを混抄したものを抄造し、その後、シリカ系樹脂とフッ素系樹脂の含浸、加熱硬化といった手段により、コスト高を招くことなく、紙を主体とした振動板の耐水性、防水性を向上させることができ、かつ音響特性も向上する、といった効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明品の周波数対音圧特性、(b)は従来品の周波数対音圧特性を示す。
Claims (4)
- セルロース繊維または、セルロース繊維と合成繊維とを混合して湿式抄造法により抄き、加熱加圧乾燥して、所定の形状に成形した後、シリカ系樹脂とフッ素系樹脂を含浸し、さらに加熱処理したことを特徴とする電気音響変換器用防水振動板。
- 前記合成繊維は、ポリ−パラ−フェニレン−テレフタル−アミド繊維、カーボン繊維、ポリベンザゾール繊維であることを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器用防水振動板。
- 前記シリカ系樹脂は、酸性の水性コロイド状シリカと非水性コロイド状シリカ混合物、オルガノヒドロキシシランまたは、その部分縮合体からなる固形分であることを特徴とする請求項1または2記載の電気音響変換器用防水振動板。
- 前記フッ素系樹脂は、メタクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電気音響変換器用防水振動板。
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