JP3827514B2 - ポリマーptc素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過電流から電池や回路を保護する正の抵抗温度係数を示すポリマーPTC素子に係り、携帯電話、ビデオカメラ、コンピュータ等の電池パックに繋がる回路を過電流や過熱から保護する為の素子として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーPTC素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子の一種とされ、このポリマーPTC素子の従来例とされる実開平2−146401号公報には、図10に示すように、はんだメッキ層118を溶融させることで素子本体112に設けられた電極114とリード端子116との間をはんだ付けして接続した構造が、開示されている。
【0003】
同じく従来例とされる特開平2−268402号公報には、素子本体に設けられた電極とリード端子との間を溶接により接続する構造が従来の技術として開示されるだけでなく、図11に示すように、電極114が変形しない程度に押圧しつつリード端子116と電極114との間をスポット溶接用電極120で溶接した後に、その周辺を接着剤122により固定したものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特に低温度で動作するポリマーPTC素子において、リード端子と電極との間を一般的なはんだ付けにより単に接続する場合、はんだの溶融温度が200℃程度以上であるので、ポリマーPTC素子が熱劣化して特性不良を招いてしまう欠点を有していた。また、上記実開平2−146401号公報のように、はんだメッキ層118を溶融させて接続する場合であっても溶融温度が同様に高い為、熱劣化の問題を基本的に解決することはできなかった。
【0005】
さらに、電極114とリード端子116との間を接続する為にはんだを溶融させる際に、一般的なリフロー処理の他にも種々の処理が用いられるが、半田ごて等を接触させる場合には圧力と熱により素子本体112が変形して、歩留りが低下してしまうという問題も生じていた。
【0006】
一方、特開平2−268402号公報の従来の技術として開示された一般的な溶接では、素子本体及び電極が変形して歩留りが低下する問題を有していた。従ってこの問題を改善すべく、電極114等が変形しない程度に押圧して溶接した後に、その周辺を接着剤122により固定してリード端子116の接続強度を高くする製造方法がこの公報に開示されているが、この製造方法では、接着剤122及び、この接着剤122を用いた接着工程等の特殊工程が必要となってコスト高を招いてしまう欠点を有していた。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、熱劣化による特性不良を招くおそれを無くすだけでなく、リード端子の接続強度を高くして特殊工程の必要を無くすと共に歩留まりの向上を図って低コストで製造可能なポリマーPTC素子を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1によるポリマーPTC素子は、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体と、該PTC素子本体の両面と接触する電極部及びこの電極部から延びるリード端子部とが一体に形成された外部接続導電部材とを有したポリマーPTC素子であって、
少なくとも前記電極部の内側表面に金属粉体を塗布して焼結させ、この表面が粗面化され、
前記PTC素子本体の両面に、加熱することなく前記外部接続導電部材の電極部を接合して接触させたことを特徴とした。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んで、例えば60℃〜120℃程度の低温度の温度範囲で抵抗変化が生じるPTC素子本体を本体部分としたポリマーPTC素子が形成される。さらに、金属粉体を塗布し焼結して表面を粗面化した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、このPTC素子本体の両面にこの電極部の内側表面によってそれぞれ接触して接合される構造に、このポリマーPTC素子はなっている。
但し、本請求項では、PTC素子本体の両面に、加熱することなく外部接続導電部材の電極部を接合して、接触させている。
【0010】
つまり、これらの接合の際に、ポリマーを成分に含むPTC素子本体が電極部の粗面化されて生じた凹凸の凸部間に入り込んで、このPTC素子本体のポリマーに電極部が食い込むように密着することで、PTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力が高まる。
従って、このPTC素子本体は、従来例のように電極部材をPTC素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなる。
【0011】
この結果、はんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、電極とリード端子との間の接続強度を高める為の接着剤を用いた接着工程等の特殊工程の必要がなくなるだけでなく、熱による影響や変形からの特性不良がPTC素子本体に生じない為に、ポリマーPTC素子の信頼性が高くなると共に歩留まりが高まり、さらにははんだ部材及びはんだ付け工程、溶接工程が無い為に、安価なポリマーPTC素子ともなる。
【0012】
請求項2によるポリマーPTC素子は、請求項1のポリマーPTC素子と同様の構成の他に、金属粉体がニッケル或いは銅の粉体であるという構成を有している。つまり、ニッケルは、酸化し難く種々の使用環境においてもPTC素子本体との間の接触抵抗が大きく変化せずに安定している為、金属粉体として採用でき、また銅は、低コストでもあるので同様に金属粉体として採用できる。
【0013】
請求項3によるポリマーPTC素子は、請求項1及び請求項2のポリマーPTC素子と同様の構成の他に、金属粉体の平均粒径が1〜10μmであるという構成を有している。
つまり、金属粉体の平均粒径が1μm未満の場合には、PTC素子本体を構成するポリマーが粗面化された表面の凸部間に入り込み難くなってPTC素子本体との接合強度が低くなる。この逆に、金属粉体の平均粒径が10μmを越えた場合には、この金属粉体を焼結させる際に例えば用いることになる金属粉体を含んだ金属粉体ペーストを20〜50μm程度の厚みで薄く塗ることが難しくなる。この結果として、ポリマーPTC素子全体の厚さが厚くなり、携帯電話、ビデオカメラ、コンピュータ等に搭載されることから求められるポリマーPTC素子の小型化の要請に反することになる。
以上より、金属粉体の平均粒径は1〜10μmの範囲が良いことになる。
【0014】
請求項4によるポリマーPTC素子は、請求項1から請求項3のポリマーPTC素子と同様の構成の他に、外部接続導電部材が、ニッケル或いは銅又は、これらの合金で形成されるという構成を有している。
つまり、PTC素子本体との間の接触抵抗が大きく変化せずに安定していること、低コストなこと及び、金属粉体を確実に焼結できること等の観点から、本請求項では、外部接続導電部材の少なくとも電極部をニッケル或いは銅又は、これらの合金で形成するようにした。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るポリマーPTC素子の一実施の形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1及び図2は本実施の形態に係るポリマーPTC素子10を示す図である。本実施の形態では、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される板状のPTC素子本体である素子本体12が、この図に示すポリマーPTC素子10の本体部分を構成している。
【0016】
尚、本実施の形態のポリマーPTC素子10は比較的低い温度での温度変化の検出を可能なように、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマー及び、このポリマーに分散的に混入されたスパイク状の突起を有する導電性粒子を導電性物質として含んだものが素子本体12として採用されており、この素子本体12の抵抗変化点の温度は60℃〜120℃と比較的低く設定されている。
【0017】
さらに、この素子本体12の上下両面には通電用で金属製の外部接続導電部材である導電部材14がそれぞれ接合されている。つまり、これら一対の導電部材14それぞれには、素子本体12に接合される部分である電極部14A及び、この電極部14Aから細長い板状にそれぞれ形成されて延びるリード端子部14Bが、一体的に設けられている。
【0018】
そして、これら一対の導電部材14のリード端子部14Bは、素子本体12を中心として相互に逆向きに延びるように配置されており、素子本体12の上下両面にこれら導電部材14がそれぞれ接合されることで、ポリマーPTC素子10が形成されている。
また、素子本体12に接合される導電部材14の電極部14Aの一方の面である内側面の表面が、金属粉体を焼結して粗面化されていて、図2に示すように、この電極部14Aの粗面化された表面が素子本体12に接触して配置されることで、粗面化されて生じた凹凸の凸部間に素子本体12の表面部分が入り込んだ構造となっている。
【0019】
次に、本実施の形態に係る素子本体12として、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマー及び、このポリマーに分散的に混入されたスパイク状の突起を有する導電性粒子を導電性物質として含んだものを採用した理由を説明する。
ポリマーPTC素子10の素子本体12として要求される特性としては、室温における非動作時の室温抵抗値が充分低いこと、室温抵抗値と動作時の抵抗値との間の変化率が十分大きいこと、繰り返し動作による抵抗値の変化が小さいことが挙げられる。
【0020】
そして、ポリマーPTC素子10の素子本体12用のポリマーである熱可塑性結晶性高分子として、これまで結晶性の高い高密度ポリエチレンが主に用いられていた。この理由は、高結晶性の高分子であるほど膨張率が大きく、大きな抵抗変化率が得られるからである。これに対して低結晶性の高分子であるほど結晶化速度が遅く、溶融後冷却した時、元の結晶状態に復帰できず室温での抵抗値の変化が大きくなるので、採用することは本来困難であった。
【0021】
しかし、高密度ポリエチレンを用いる際の欠点として、その動作温度の高さが挙げられる。つまり、過電流保護素子として用いたときのポリマーPTC素子の動作温度はその融点の130℃前後となり、回路基板上の他の電子部品への熱的な影響が無視できない場合がある。また、2次電池の過熱保護部品としては動作温度がやはり高すぎる。
【0022】
従って、動作温度の高い高密度ポリエチレンより低い100℃前後の動作温度にしながら、良好な抵抗復帰性を維持可能とするように、メタロセン触媒を用いて重合されたポリマーである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を特に採用することにした。
このメタロセン触媒を使って重合することで、ポリマーの分子量分布の幅が狭くなり低密度・低分子量成分が少ないことが、抵抗復帰性を維持できる原因の一つと考えられる。つまり従来の一般的な直鎖状低密度ポリエチレンでは高密度成分が結晶化し、それが結晶核になって結晶化が進むようになる。これに対してメタロセン触媒を用いて合成されたポリマーにおいては、結晶核が均一に生成・成長する為、ポリマーPTC素子が動作して結晶が融解しても、その後の特性変化が小さくなって室温での抵抗値の変化が少なくなると考えられる。
【0023】
以上より、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマーを採用することにより、従来のポリマーPTC素子より動作温度を低くすることができ、従来は困難であった低動作温度でありながら特性が安定している素子を得ることができる。
【0024】
さらに、スパイク状の突起を持つ導電性粒子を用いたことにより、低い室温抵抗と大きい抵抗変化率の両立が可能となった。
つまり、スパイク状の突起を有する導電性粒子を用いているので、その形状によりトンネル電流が流れ易くなり、球状の導電性粒子と比較して低い室温抵抗の素子本体が得られる。また、導電性粒子間の間隔が球状のものと比較して大きいため、動作時にはより大きな抵抗変化が得られるようになった。
【0025】
また、本実施の形態に係る素子本体12として採用できる材質の第1例における抵抗と温度との関係を表すグラフを図3に示し、第2例における抵抗と温度との関係を表すグラフを図4に示す。
これらの図の内の図3に示す第1例では加熱と冷却の間でヒステリシスを有しているが素子本体12として採用可能な範囲である。一方、低分子有機化合物を混入し、この低分子有機化合物を動作物質とすることで、加熱時に抵抗が増加する転移温度(動作温度)と冷却時に低抵抗に復帰する温度とを殆ど同じにでき、図4に示すグラフの特性の材質を得ることが可能となった。
【0026】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の第1の製造方法を説明する。
先ず、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される素子本体12を製造すると共に、電極部14Aとリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を製造する。
【0027】
具体的には、粒径1〜10μmの金属粉体であるニッケル粉体(以下Ni粉体と言う)Fが90w%で、例えばブチルカルビトールアセテート(BCA)等の溶剤が5w%で、例えばポリビニルアルコール等の有機バインダが5w%となるように、これらを混ぜ合わせて金属粉体ペーストであるNi粉体ペーストTを先ず作成する。
【0028】
そして、ニッケル製の薄板である例えば0.1mmの厚さの図5(A)に示すNiシート材S上に、上記のNi粉体ペーストTを20〜50μmの厚さで図5(B)に示すように塗布又は印刷し、Ni粉体ペーストTが塗布等されたこのNiシート材Sを200℃の温度で約5分間熱処理して溶剤を揮発させて除去した後、さらに400℃の温度で約5分間熱処理して有機バインダの有機物を分解させて仮焼成する。
【0029】
この後、窒素ガス(N2 )中又は、水素を含む還元ガス中において、1000℃〜1200℃の温度で約10〜20分間焼成して有機バインダを除去し、図5(C)に示すようにNi粉体FをNiシート材Sの上面に焼結させて、表面を粗面化する。
【0030】
さらに、このNi粉体Fが上面に焼結されたNiシート材Sをプレス加工等により打ち抜くことで、図6(A)に示すように、リード端子部14B及び電極部14Aを一体的に有する導電部材14が形成される。
尚この際、少なくとも電極部14Aには、Ni粉体Fが焼結されている必要があるものの、リード端子部14Bには、Ni粉体Fが焼結されていても良く焼結されて無くても良い。
【0031】
またこれとは別に、シート状の素子本体12を打ち抜きや切断等により製品形状にしたり、或いは成形時にシート状ではなく直接に製品形状にすることで、この図6(A)に示す直方体状の製品形状に素子本体12を形成する。
【0032】
この次に、電極部14Aの粗面化された表面側を素子本体12に対向した状態で、一対の導電部材14をこの素子本体12の上下両面にそれぞれ配置する。そしてこの後、図6(B)に示すように、これら素子本体12及び一対の導電部材14をプレス機20等で圧着することで、粗面化されて電極部14Aの表面42に生じた凹凸の凸部間に図5(D)に示す素子本体12が入り込んで、これらが接合されて図1及び図2に示すポリマーPTC素子10が完成される。
【0033】
尚、本実施の形態においては、Niシート材S上にNi粉体Fを焼結してからこのNiシート材Sを打ち抜いて導電部材14を作製するようにしたが、導電部材14の形状にNiシート材Sを打ち抜いてから、導電部材14の電極部14A上に上記のNi粉体ペーストTを塗布してNi粉体Fを焼結するようにしても良い。
【0034】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の作用を説明する。
本実施の形態では、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んで、低温度の60℃〜120℃の温度範囲で抵抗変化が生じる素子本体12をポリマーPTC素子10の本体部分として採用した。さらに、Ni粉体Fを塗布し焼結して表面42を粗面化した電極部14Aとこの電極部14Aから延びるリード端子部14Bとが一体的に設けられた一対の導電部材14が、電極部14Aを介してこの素子本体12の両面にそれぞれ接触して接合される構造に、このポリマーPTC素子10はなっている。
【0035】
つまり、これら素子本体12及び一対の導電部材14の接合の際に、ポリマーを成分に含んで変形し易くなっている素子本体12が、粗面化されて電極部14Aの表面42に生じた凹凸の凸部間に入り込んで、この素子本体12のポリマーに電極部14Aが食い込むように密着するので、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まることになる。
従って、この素子本体12は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱く、特に200℃以上の熱付加により特性の劣化が顕著となるものの、本実施の形態においては、従来例のように電極部材を素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなる。
【0036】
この結果、はんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、電極とリード端子との間の接続強度を高める為の接着剤を用いた接着工程等の特殊工程の必要がなくなるだけでなく、熱による劣化の影響や変形からの特性不良が素子本体12に生じないようになる為に、ポリマーPTC素子10の信頼性が高くなると共に歩留まりが高まり、さらにははんだ部材及びはんだ付け工程、溶接工程が無い為に、安価なポリマーPTC素子10を製造できることになる。
【0037】
一方、本実施の形態では、金属粉体が平均粒径を1〜10μmとしたニッケルの粉体であるNi粉体Fとされている。
つまり、ニッケルは、酸化し難く種々の使用環境においても素子本体12との間の接触抵抗が大きく変化せずに安定している為、金属粉体として採用できる。また、金属粉体の平均粒径が1μm未満の場合には、素子本体12を構成するポリマーが粗面化された表面の凸部間に入り込み難くなって素子本体12との接合強度が低くなる。この逆に、金属粉体の平均粒径が10μmを越えた場合には、Ni粉体ペーストTを20〜50μm程度に薄く塗るのが難しくなるのに伴って、ポリマーPTC素子10全体の厚さが厚くなる結果として、ポリマーPTC素子10の小型化の要請に反することになる。以上より、平均粒径が1〜10μmの範囲の大きさのNi粉体Fが、金属粉体として最適であることになる。
【0038】
さらに、本実施の形態では、導電部材14全体がニッケルで形成されているので、その一部となる電極部14Aもニッケルで形成されることになる。つまり、素子本体12との間の接触抵抗が大きく変化せずに安定していること、低コストなこと及び、金属粉体を確実に焼結できること等の観点から、本実施の形態では電極部14Aをニッケルで形成することにした。
【0039】
他方、図7は本実施の形態に係るポリマーPTC素子10自体の変形例を示す斜視図であり、電極部14Aの形状が円形であってリード端子部14Bの延びる方向も相互に同一方向となった構造とされている。つまり、このような構造であっても、上記実施の形態と同様に、信頼性及び歩留まりが高いポリマーPTC素子10を安価に製造することができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の素子本体12と導電部材14との間の接合強度について、説明する。
すなわち、一対の導電部材14のそれぞれのリード端子部14Bを図1の矢印P方向に相互に引っ張ることにより素子本体12に対する電極部14Aの剥離強度を測定したところ、電極部14AにNi粉体Fが焼結されていないサンプルでは10ニュートン程度の強度を有し、図1のNi粉体Fを焼結して電極部14Aの表面42を粗面化したサンプルでは100ニュートン程度の強度を有していた。
【0041】
従って、この結果からNi粉体Fが焼結されて表面42を粗面化した電極部14Aを有する本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の接合強度が十分に高くなっていることが理解できる。但し、本実施の形態では、素子本体12の板厚が0.3〜0.4mm程度とされ、導電部材14の板厚が0.1〜0.2mm程度とされ、Ni粉体Fの平均粒径が1〜10μm程度とされている。
【0042】
次に、本発明に係るポリマーPTC素子の第2の製造方法を説明する。但し、上記の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。そして、本製造方法によるポリマーPTC素子10の完成品は、図1及び図2に示すものと同様の構造とされるものの、以下のような製造方法とされている。
【0043】
先ず、ロール状の薄板であるNiシート材Sをプレス加工して連続的に打ち抜くことで、電極部14Aとリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を複数連続した状態で製造するが、このプレス加工の前後の何れかにおいてNiシート材S上にNi粉体Fを焼結して、少なくとも導電部材14の電極部14Aの表面42を粗面化しておくことにする。
またこれとは別に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される素子本体12を製造するが、この際に素子本体12を電極部14Aの幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状に形成する。
【0044】
次に、Ni粉体Fを焼結して粗面化された電極部14Aの表面側を素子本体12に対向した状態で、このシート状の素子本体12の両面に、複数連続された導電部材14をそれぞれ密着させ、プレス機等で図8(A)に示すように圧着して接合する。この後、これら素子本体12及び導電部材14が接合された状態で、この図に示すように順次これらを一体的に切断することで、図8(B)に示すポリマーPTC素子10が順次製造される。
【0045】
以上より、上記の実施の形態と同様に、Ni粉体Fを焼結して電極部14Aの表面を粗面化することで、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まり、信頼性及び歩留まりが高いポリマーPTC素子10を安価に製造することができる。
さらに、本実施の形態では、導電部材14を複数連続した状態で形成すると共に、素子本体12をこの電極部14Aの幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状に形成し、これら素子本体12及び導電部材14を接合させた状態で、これらを一体的に切断するようにしたので、大量のポリマーPTC素子10をより一層簡易に製造でき、ポリマーPTC素子10を一層安価に製造できるようになった。
【0046】
次に、本発明に係るポリマーPTC素子の第3の製造方法を説明する。但し、上記の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。そして、本製造方法によるポリマーPTC素子10の完成品は、図1及び図2に示すものと同様の構造とされるものの、以下のような製造方法とされている。
【0047】
先ず、金属製の薄板であるNiシート材Sをプレス加工して打ち抜くことで、電極部14Aとこの電極部14Aから延びるリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を図6(A)に示す導電部材14と同様に形成する。そして、このプレス加工の前後の何れかにおいて、Niシート材S上にNi粉体Fを焼結して少なくとも導電部材14の電極部14Aの表面42を粗面化しておくことにする。
【0048】
次に、図9に示す上型32Aと下型32Bとから成る成形金型32内にこの導電部材14を配置した後、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含み溶融された素子本体12を成形金型32内に注入して素子本体12を射出成形することで、素子本体12が導電部材14の電極部14Aと接合されてポリマーPTC素子10が製造される。
【0049】
以上より、本実施の形態では、成形金型32内にこの導電部材14を配置した後に、素子本体12を成形金型32内に注入して導電部材14と接合しつつ素子本体12を成形したので、粗面化されて凹凸を有した電極部14Aの表面42の凸部間に素子本体12が確実に入り込むのに伴って、導電部材14と素子本体12との間の接合力が一層高まり、結果として、信頼性及び歩留まりが高いポリマーPTC素子10を安価に製造することができる。
【0050】
尚、上記各実施の形態において導電部材14及び金属粉体として採用される金属材料としてニッケルが考えられるが、低コストな銅等の金属材料を導電部材14及び金属粉体として採用しても良く、この際のニッケルや銅は純粋なものでなく合金であっても良い。さらに、金属粉体としては、低コストで酸化し難く安定性の高いステンレス鋼の粉体或いは、金や銀等の酸化し難く安定性の高い金属の粉体等を採用しても良い。
【0051】
また、金属粉体を焼結する際において、上記各実施の形態で採用される金属粉体ペーストにガラスフリットを入れて、600℃程度の温度で焼結しても良い。但しこの場合、金属粉体の表面がガラスで覆われて電気抵抗が高くなると共に、ガラスにより覆われた金属粉体の表面が滑らかになって、接合強度が低下する虞がある。そして、金属粉体を焼結する際の加熱条件として、例えばNiシート材の裏面側からヒータ等で加熱することにより、金属粉体が焼結されるNiシート材の表面側と焼結されない裏面側とで、温度勾配を設けるようにしても良い。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、熱劣化による特性不良を招くおそれを無くすだけでなく、リード端子の接続強度を高くして特殊工程の必要を無くすと共に歩留まりの向上を図って低コストなポリマーPTC素子を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るポリマーPTC素子の第1例における素子本体の抵抗と温度との関係を表すグラフを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るポリマーPTC素子の第2例における素子本体の抵抗と温度との関係を表すグラフを示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子の電極部の表面にNi粉体を焼結する手順を説明する図であって、(A)は当初のNiシート材を示す断面図であり、(B)はNiシート材上にNi粉体ペーストを塗布等した状態を示す断面図であり、(C)はNiシート材上にNi粉体を焼結した状態を示す断面図であり、(D)はNi粉体が焼結された電極部に素子本体が接合された状態を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子の製造を示す図であって、(A)は素子本体と導電部材との間の接合前の状態を示す図であり、(B)は素子本体と導電部材との間の圧着の状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子自体の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子の第2の製造方法を示す図であって、(A)はシート状の素子本体と複数連続した状態の導電部材との間が接合されたものからポリマーPTC素子が切断される状態を示す図であり、(B)は切断された状態のポリマーPTC素子の側面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るポリマーPTC素子の第3の製造方法を示す図であって、成形金型内で素子本体が射出成形されてポリマーPTC素子が製造される状態を示す断面図である。
【図10】第1の従来技術に係るポリマーPTC素子を示す斜視図である。
【図11】第2の従来技術に係るポリマーPTC素子を示す図であって、(A)はポリマーPTC素子の素子本体の斜視図であり、(B)は素子本体にリード端子を溶着する状態を示す斜視図であり、(C)はリード端子を固定したポリマーPTC素子の外観斜視図である。
【符号の説明】
10 ポリマーPTC素子
12 素子本体
14 導電部材
14A 電極部
14B リード端子部
F Ni粉体
S Niシート材
T Ni粉体ペースト
Claims (4)
- ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体と、該PTC素子本体の両面と接触する電極部及びこの電極部から延びるリード端子部とが一体に形成された外部接続導電部材とを有したポリマーPTC素子であって、
少なくとも前記電極部の内側表面に金属粉体を塗布して焼結させ、この表面が粗面化され、
前記PTC素子本体の両面に、加熱することなく前記外部接続導電部材の電極部を接合して接触させたことを特徴としたポリマーPTC素子。 - 前記金属粉体がニッケル或いは銅の粉体であることを特徴とした請求項1記載のポリマーPTC素子。
- 前記金属粉体の平均粒径が1〜10μmであることを特徴とした請求項1或いは請求項2記載のポリマーPTC素子。
- 前記外部接続導電部材が、ニッケル或いは銅又は、これらの合金で形成されることを特徴とした請求項1から請求項3の何れかに記載のポリマーPTC素子。
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