JP3830349B2 - ポリマーptc素子及びポリマーptc素子の製造方法 - Google Patents

ポリマーptc素子及びポリマーptc素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、過電流から電池や回路を保護する正の抵抗温度係数を示すポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法に係り、携帯電話、ビデオカメラ、コンピュータ等の電池パックに繋がる回路を過電流や過熱から保護する為の素子及びこの素子の製造方法として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーPTC素子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子の一種とされ、このポリマーPTC素子の従来例とされる実開平2−146401号公報には、図18に示すように、はんだメッキ層118を溶融させることで素子本体112に設けられた電極114とリード端子116との間をはんだ付けして接続した構造が、開示されている。
【0003】
同じく従来例とされる特開平2−268402号公報には、素子本体に設けられた電極とリード端子との間を溶接により接続する構造が従来の技術として開示されるだけでなく、図19に示すように、電極114が変形しない程度に押圧しつつリード端子116と電極114との間をスポット溶接用電極120で溶接した後に、その周辺を接着剤122により固定したものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特に低温度で動作するポリマーPTC素子において、リード端子と電極との間を一般的なはんだ付けにより単に接続する場合、はんだの溶融温度が200℃程度以上であるので、ポリマーPTC素子が熱劣化して特性不良を招いてしまう欠点を有していた。また、上記実開平2−146401号公報のように、はんだメッキ層118を溶融させて接続する場合であっても溶融温度が同様に高い為、熱劣化の問題を基本的に解決することはできなかった。
【0005】
さらに、電極114とリード端子116との間を接続する為にはんだを溶融させる際に、一般的なリフロー処理の他にも種々の処理が用いられるが、半田ごて等を接触させる場合には圧力と熱により素子本体112が変形して、歩留りが低下してしまうという問題も生じていた。
【0006】
一方、特開平2−268402号公報の従来の技術として開示された一般的な溶接では、素子本体及び電極が変形して歩留りが低下する問題を有していた。従ってこの問題を改善すべく、電極114等が変形しない程度に押圧して溶接した後に、その周辺を接着剤122により固定してリード端子116の接続強度を高くする製造方法がこの公報に開示されているが、この製造方法では、接着剤122及び、この接着剤122を用いた接着工程等の特殊工程が必要となってコスト高を招いてしまう欠点を有していた。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、熱劣化による特性不良を招くおそれを無くすだけでなく、リード端子の接続強度を高くして特殊工程の必要を無くすと共に歩留まりの向上を図って低コストで製造可能なポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1によるポリマーPTC素子は、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
複数の穴部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合され
前記電極部の穴部を形成する部分が、バーリング形状とされたことを特徴とした。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んで、例えば60℃〜120℃程度の低温度の温度範囲で抵抗変化が生じるPTC素子本体を本体部分としたポリマーPTC素子が形成される。さらに、複数の穴部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、このPTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子はなっている。
【0010】
つまり、これらの接合の際に電極部の穴部にポリマーを成分に含むPTC素子本体が入り込んで、このPTC素子本体のポリマーに電極部が食い込むように密着することで、PTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力が高まる。さらに、電極部の穴部を単にストレート形状としてもPTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力は充分に高くなるものの、本請求項では、電極部の穴部を形成する部分がバーリング形状とされたことで、一層高い接合強度が得られるようになる。
従って、このPTC素子本体は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱くなるものの、従来例のように電極部材をPTC素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなる。
【0011】
この結果、はんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、電極とリード端子との間の接続強度を高める為の接着剤を用いた接着工程等の特殊工程の必要がなくなるだけでなく、熱による影響や変形からの特性不良がPTC素子本体に生じない為に、ポリマーPTC素子の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まり、さらにははんだ部材及びはんだ付け工程、溶接工程が無い為に、安価なポリマーPTC素子ともなる。
【0013】
請求項によるポリマーPTC素子は、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
複数の突起部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合され
前記電極部の突起部が、電極部の一部を切り曲げして形成されることを特徴とした。
【0014】
請求項に記載の発明によれば、請求項1と同様に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んだPTC素子本体を本体部分としたポリマーPTC素子が形成される。さらに、複数の突起部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、このPTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子はなっている。そして、本請求項では、電極部の突起部が電極部の一部を切り曲げして形成されている。
【0015】
つまり、これらPTC素子本体と外部接続導電部材との接合の際に、ポリマーを成分に含むPTC素子本体が電極部の複数の突起部の周囲に入り込んで、ポリマーに電極部が食い込むように密着することで、PTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力が高まる。この際、電極部の一部を切り曲げして突起部が形成されていることから、より簡易に一層高い接合強度が得られるようになる。
従って、このPTC素子本体は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱くなるものの、請求項1と同様に、従来例のように電極部材をPTC素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなり、請求項1と同様にポリマーPTC素子の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まると共に、安価なポリマーPTC素子ともなる。
【0016】
請求項3及び請求項4によるポリマーPTC素子は、電極部の突起部が電極部の一部を切り曲げして形成されている点を除く請求項2のポリマーPTC素子と同様の構成の他に、請求項3では電極部の突起部が、電極部の一部を袋状に突出させると共にこの突出された部分の先端を押しつぶして形成されるという構成を有し、請求項では電極部の突起部が、金属材料を電極部に接合することで形成されるという構成を有している。
つまり、複数の突起部を有しただけでもPTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力は充分に高くなるが、これらの請求項のようにすることで、請求項2と同様に、より簡易に一層高い接合強度が得られる。
【0017】
請求項によるポリマーPTC素子は、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
粗面化された表面を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部の表面によってそれぞれ接合され、
前記電極部の粗面化された表面の粗面部分を構成する凹凸の内の凸部に圧力が加えられて、この凸部がフック状に形成されていることを特徴とした。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、請求項1と同様に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んだPTC素子本体を本体部分としたポリマーPTC素子が形成される。さらに、粗面化された表面を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、このPTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子はなっている。そして、電極部の粗面化された表面の粗面部分を構成する凹凸の内の凸部に圧力が加えられて、この凸部がフック状に形成されている。
【0019】
つまり、これらの接合の際に、ポリマーを成分に含むPTC素子本体が電極部の粗面化された表面の凹部に入り込んで、ポリマーに電極部が食い込むように密着することで、PTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力が高まる。
従って、このPTC素子本体は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱くなるものの、請求項1と同様に、従来例のように電極部材をPTC素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなる。
【0020】
この結果、はんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、請求項1と同様にポリマーPTC素子の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まると共に、安価なポリマーPTC素子ともなる。
さらに、電極部の表面を単に粗面化しただけでなく、この電極部の表面が粗面化されるのに伴って生じる凸部に圧力を加えて凸部の先端部を変形させてフック状の凸部とすることにより、フック状の凸部間の凹部内にPTC素子本体が入り込んで一層高い接合強度が得られる。
【0021】
請求項によるポリマーPTC素子は、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
粒状材が付着してフック状となった凸部により表面が粗面化された電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部の表面によってそれぞれ接合されたことを特徴とした。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、請求項1と同様に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んだPTC素子本体を本体部分としたポリマーPTC素子が形成される。
さらに、電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、このPTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子はなっている。そして、この電極部の表面に、粒状材が付着して先端側が膨らんだフック状の凸部が形成されることで、電極部の表面が粗面化されている。
【0023】
つまり、これらポリマーPTC素子と電極部の接合の際に、請求項と同様にポリマーを成分に含むPTC素子本体が電極部の粗面化された表面の凹部に入り込んで、PTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力が高まる。
この結果、請求項と同じくはんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、請求項1と同様にポリマーPTC素子の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まると共に、安価なポリマーPTC素子ともなる。
さらに、電極部の表面を単に粗面化しただけでなく、電極部の表面に付着した粒状材を成長させてフック状の凸部としたので、フック状の凸部間の凹部内にPTC素子本体が入り込み、いわゆるアンカー効果が生じて一層高い接合強度が得られるようになった。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、まず、複数の穴部を有した電極部、複数の突起部を有した電極部或いは粗面化された表面を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材を複数連続した状態で作製すると共に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を作製する。この際、PTC素子本体をこの電極部の幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状に作製する。
【0028】
この次に、この電極部がPTC素子本体に対向した状態でシート状のPTC素子本体の両面に外部接続導電部材をそれぞれ密着させて接合した後、これらPTC素子本体及び外部接続導電部材が接合された状態で、これらを一体的に切断したことで、ポリマーPTC素子が製造される。
【0029】
つまり、電極部が穴部や突起部を有し或いは粗面化された表面を有することにより、接合の際に、電極部の穴部内や突起部間にポリマーを成分に含むPTC素子本体が確実に入み或いは、電極部の粗面化された表面に生じた凹部内にポリマーを成分に含むPTC素子本体が確実に入り込んで、このPTC素子本体のポリマーに電極部が食い込むように密着して、PTC素子本体と外部接続導電部材との間の接合力が高まる。
従って、このPTC素子本体は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱くなるものの、請求項1と同様に、従来例のように電極部材をPTC素子本体にはんだ付け等する接続工程が必要なくなるのに伴って、請求項と同様に、信頼性及び歩留まりが高いポリマーPTC素子を安価に製造することができる。
【0030】
さらに、本請求項では、外部接続導電部材を連続して複数作製すると共に、PTC素子本体をこの電極部の幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状に作製し、これらPTC素子本体及び外部接続導電部材を接合させた状態で、これらを一体的に切断したので、大量のポリマーPTC素子をより一層簡易に製造でき、ポリマーPTC素子を一層安価に製造できるようになった。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法の第1の実施の形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1及び図2は本実施の形態に係るポリマーPTC素子10を示す図である。本実施の形態では、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される板状のPTC素子本体である素子本体12が、この図に示すポリマーPTC素子10の本体部分を構成している。
【0034】
尚、本実施の形態のポリマーPTC素子10は比較的低い温度での温度変化の検出を可能なように、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマー及び、このポリマーに分散的に混入されたスパイク状の突起を有する導電性粒子を導電性物質として含んだものが素子本体12として採用されており、この素子本体12の抵抗変化点の温度は60℃〜120℃と比較的低く設定されている。
【0035】
さらに、この素子本体12の上下両面には通電用で金属製の外部接続導電部材である導電部材14がそれぞれ接合されている。つまり、これら一対の導電部材14それぞれには、素子本体12に接合される部分である電極部14A及び、この電極部14Aから細長い板状にそれぞれ形成されて延びるリード端子部14Bが、一体的に設けられている。
【0036】
そして、これら一対の導電部材14のリード端子部14Bは、素子本体12を中心として相互に逆向きに延びるように配置されており、素子本体12の上下両面にこれら導電部材14がそれぞれ接合されることで、ポリマーPTC素子10が形成されている。また、素子本体12に接合される導電部材14の電極部14Aには、それぞれ電極部14Aを貫通する複数の穴部16がそれぞれ円形でテーパ状に形成されていて、図2に示すように、テーパの細い側で電極部14Aが素子本体12に対向して配置されることで、これら多数の穴部16内に素子本体12が入り込んでいる。
【0037】
次に、本実施の形態に係る素子本体12として、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマー及び、このポリマーに分散的に混入されたスパイク状の突起を有する導電性粒子を導電性物質として含んだものを採用した理由を説明する。
ポリマーPTC素子10の素子本体12として要求される特性としては、室温における非動作時の室温抵抗値が充分低いこと、室温抵抗値と動作時の抵抗値との間の変化率が十分大きいこと、繰り返し動作による抵抗値の変化が小さいことが挙げられる。
【0038】
そして、ポリマーPTC素子10の素子本体12用のポリマーである熱可塑性結晶性高分子として、これまで結晶性の高い高密度ポリエチレンが主に用いられていた。この理由は、高結晶性の高分子であるほど膨張率が大きく、大きな抵抗変化率が得られるからである。これに対して低結晶性の高分子であるほど結晶化速度が遅く、溶融後冷却した時、元の結晶状態に復帰できず室温での抵抗値の変化が大きくなるので、採用することは本来困難であった。
【0039】
しかし、高密度ポリエチレンを用いる際の欠点として、その動作温度の高さが挙げられる。つまり、過電流保護素子として用いたときのポリマーPTC素子の動作温度はその融点の130℃前後となり、回路基板上の他の電子部品への熱的な影響が無視できない場合がある。また、2次電池の過熱保護部品としては動作温度がやはり高すぎる。
【0040】
従って、動作温度の高い高密度ポリエチレンより低い100℃前後の動作温度にしながら、良好な抵抗復帰性を維持可能とするように、メタロセン触媒を用いて重合されたポリマーである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を特に採用することにした。
このメタロセン触媒を使って重合することで、ポリマーの分子量分布の幅が狭くなり低密度・低分子量成分が少ないことが、抵抗復帰性を維持できる原因の一つと考えられる。つまり従来の一般的な直鎖状低密度ポリエチレンでは高密度成分が結晶化し、それが結晶核になって結晶化が進むようになる。これに対してメタロセン触媒を用いて合成されたポリマーにおいては、結晶核が均一に生成・成長する為、ポリマーPTC素子が動作して結晶が融解しても、その後の特性変化が小さくなって室温での抵抗値の変化が少なくなると考えられる。
【0041】
以上より、メタロセン触媒を用いて合成されたポリマーを採用することにより、従来のポリマーPTC素子より動作温度を低くすることができ、従来は困難であった低動作温度でありながら特性が安定している素子を得ることができる。
【0042】
さらに、スパイク状の突起を持つ導電性粒子を用いたことにより、低い室温抵抗と大きい抵抗変化率の両立が可能となった。
つまり、スパイク状の突起を有する導電性粒子を用いているので、その形状によりトンネル電流が流れ易くなり、球状の導電性粒子と比較して低い室温抵抗の素子本体が得られる。また、導電性粒子間の間隔が球状のものと比較して大きいため、動作時にはより大きな抵抗変化が得られるようになった。
【0043】
また、本実施の形態に係る素子本体12として採用できる材質の第1例における抵抗と温度との関係を表すグラフを図3に示し、第2例における抵抗と温度との関係を表すグラフを図4に示す。
これらの図の内の図3に示す第1例では加熱と冷却の間でヒステリシスを有しているが素子本体12として採用可能な範囲である。一方、低分子有機化合物を混入し、この低分子有機化合物を動作物質とすることで、加熱時に抵抗が増加する転移温度(動作温度)と冷却時に低抵抗に復帰する温度とを殆ど同じにでき、図4に示すグラフの特性の材質を得ることが可能となった。
【0044】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の製造工程を説明する。
先ず、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される素子本体12を製造すると共に、電極部14Aとリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を製造する。
【0045】
具体的には、シート状の素子本体12を打ち抜きや切断等により製品形状にしたり、或いは成形時にシート状ではなく直接に製品形状にすることで、この図5(A)に示す直方体状の製品形状に素子本体12が形成される。またこれとは別に、金属製の薄板をプレス加工して打ち抜くことで、図5(A)に示すように、導電部材14が形成されるが、この際に多数のテーパ状の穴部16をプレス加工により電極部14Aに形成しておくことにする。
【0046】
この次に、多数の穴部16を有した電極部14Aが素子本体12に対向した状態で、一対の導電部材14をこの素子本体12の上下両面にそれぞれ配置する。そしてこの後、図5(B)に示すように、これら素子本体12及び一対の導電部材14をプレス機20等で圧着することで、これらが接合されて図1及び図2に示すポリマーPTC素子10が完成される。
以上より、これら素子本体12及び一対の導電部材14の接合の際に、ポリマーを成分に含んで変形し易くなっている素子本体12が電極部14Aの穴部16内に入り込んで、この素子本体12のポリマーに電極部14Aが食い込むように密着するので、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まる。
【0047】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10及びポリマーPTC素子10の製造方法の作用を説明する。
本実施の形態では、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含んで、低温度の60℃〜120℃の温度範囲で抵抗変化が生じる素子本体12をポリマーPTC素子10の本体部分として採用した。さらに、複数の穴部16を有した電極部14Aとこの電極部14Aから延びるリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14が、この電極部14Aを介してこの素子本体12の両面にそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子10はなっている。
【0048】
つまり、前述のように、これらの接合の際に電極部14Aの穴部16にポリマーを成分に含んで変形し易くなっている素子本体12が入り込んで、この素子本体12のポリマーに電極部14Aが食い込むように密着するので、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まることになる。
従って、この素子本体12は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱く、特に200℃以上の熱付加により特性の劣化が顕著となるものの、本実施の形態においては、従来例のように電極部材を素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなる。
【0049】
この結果、はんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、電極とリード端子との間の接続強度を高める為の接着剤を用いた接着工程等の特殊工程の必要がなくなるだけでなく、熱による劣化の影響や変形からの特性不良が素子本体12に生じないようになる為に、ポリマーPTC素子10の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まり、さらにははんだ部材及びはんだ付け工程、溶接工程が無い為に、安価なポリマーPTC素子10を製造できることになる。
【0050】
以下に図に基づき、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の変形例を説明する。
図6(B)〜(D)は電極部14Aに設けた穴部16の変形例の断面形状を示す断面図である。例えば、穴部16の断面形状としては、図6(A)に示すテーパー形状の他に、図6(B)に示す単純なストレートの穴形状としたもの、図6(C)に示す段付き部22を有する形状としたもの、図6(D)に示すバーリング部24を有するバーリング形状としたものなどが、考えられる。
【0051】
つまり、電極部14Aの穴部16を単にストレート形状としても素子本体12と導電部材14との間の接合力は充分に高くなるものの、テーパー形状、段付き部22を有する形状及び、バーリング形状等の穴部16とすることにより、一層高い接合強度が得られる。
【0052】
図7(B)、(C)は電極部14Aに設けた穴部16の変形例の平面形状を示す平面図である。例えば、穴部16の平面形状としては、図7(A)に示す丸い形状の他に、図7(B)に示す長穴状穴部26としたもの、図7(C)に示す星型穴部28としたものなど色々考えられ、これらによっても一層高い接合強度が得られる。
図8は本実施の形態に係るポリマーPTC素子10自体の変形例を示す斜視図であり、電極部14Aの形状が円形であってリード端子部14Bの延びる方向も相互に同一方向となった構造とされている。
【0053】
図9は電極部14Aに複数の突起部18を設けた変形例の詳細形状を示す断面図である。
電極部14Aに複数の突起部18を設けたものとしては、図9(A)及び図9(B)に示すように一対のスリット34を電極部14Aに形成し、これらスリットの間の電極部14Aの部分をV字形状に切り曲げて突起部18としたもの、図9(C)に示すフック状の突起部18をプレス加工により電極部14Aの一部を袋状に突出変形させると共に先端部分を押しつぶすことで設けたものなどが、考えられる。
【0054】
さらに、図9(D)に示すバンプとなる部材を超音波接合で電極部14Aに接合して、頂部が突出したぎぼし状の突起部18を電極部14Aに設けたもの、図9(E)に示すT型のチップ36を溶接して電極部14Aにフック状の突起部18を設けたもの、図9(F)に示すボール形状の球材38をはんだ又は溶接して電極部14Aに突起部18を設けたものなどのように、電極部14Aに金属材料を接合するものも、考えられる。
【0055】
つまり、導電部材14が素子本体12の両面に電極部14Aによってそれぞれ接合される際に、ポリマーを成分に含む素子本体12が電極部14Aのこれら複数の突起部18の周囲に入り込んで、ポリマーに電極部14Aの複数の突起部18が食い込むように密着することで、素子本体12と外部接続導電部材14との間の接合力が高まるようになる。
【0056】
尚、図9(D)に示すぎぼし状の突起部18の大きさは、例えば直径Dが50μm程度とされると共に高さ寸法Hが30μm程度とされ、他の図9(E)及び図9(F)に示す突起部18も平面が同様の直径の円形とされている。また、図9(E)に示す突起部18を設ける際に、T型のチップ36の替わりにテトラポット形状等の他の形状のものを接合しても良い。
【0057】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の素子本体12と導電部材14との間の接合強度について、説明する。
すなわち、一対の導電部材14のそれぞれのリード端子部14Bを図1の矢印P方向に相互に引っ張ることにより素子本体12に対する電極部14Aの剥離強度を測定したところ、穴部16や突起部18の無いサンプルでは10ニュートン程度の強度を有し、図6(B)のストレートの穴形状のサンプルでは90ニュートン程度の強度を有し、図6(A)のテーパー形状のサンプルでは100ニュートン程度の強度を有していた。
【0058】
従って、この結果からテーパー形状の穴部16を有する本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の接合強度が十分に高くなっていることが理解できる。但し、本実施の形態では、素子本体12の板厚が0.3〜0.4mm程度とされ、導電部材14の板厚が0.1〜0.2mm程度とされ、テーパ量としても0.1〜0.2mm程度とされている。また、穴部16の数は50個程度とされ、穴部16の内径はテーパーの最小径で測定して0.3〜0.5mm程度であった。
【0059】
一方、図9(D)のぎぼし状の突起部18を電極部14Aに設けたサンプルの素子本体12に対する電極部14Aの剥離強度を、図9に示す複数の突起部18を電極部14Aに設けた変形例の代表として同様に測定したところ、100ニュートン程度の強度を有していた。
【0060】
次に、本発明に係るポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法の第2の実施の形態を説明する。但し、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の完成品は、図1及び図2に示す第1の実施の形態と同様の構造とされるが、以下のような製造方法が採用されている。
【0061】
先ず、金属製でロール状の薄板をプレス加工して連続的に打ち抜くことで、電極部14Aとリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を複数連続した状態で製造するが、この際に複数の穴部16をプレス加工により電極部14Aに形成しておくことにする。
またこれとは別に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される素子本体12を製造するが、この際に素子本体12を電極部14Aの幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状に形成する。
【0062】
次に、複数の穴部16を有した電極部14Aが素子本体12に対向した状態で、このシート状の素子本体12の両面に、複数連続された導電部材14をそれぞれ密着させ、プレス機等で図10(A)に示すように圧着して接合する。この後、これら素子本体12及び導電部材14が接合された状態で、この図に示すように順次これらを一体的に切断することで、図10(B)に示すポリマーPTC素子10が順次製造される。
【0063】
以上より、第1の実施の形態と同様に電極部14Aが穴部16を有することで、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まり、信頼性及び歩留まりが高いポリマーPTC素子10を安価に製造することができる。
さらに、本実施の形態では、導電部材14を複数連続した状態で形成すると共に、素子本体12をこの電極部14Aの幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状に形成し、これら素子本体12及び導電部材14を接合させた状態で、これらを一体的に切断するようにしたので、大量のポリマーPTC素子10をより一層簡易に製造でき、ポリマーPTC素子10を一層安価に製造できるようになった。
【0064】
次に、本発明に係るポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法の第3の実施の形態を説明する。但し、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の完成品は、図1及び図2に示す第1の実施の形態と同様の構造とされるが、以下のような製造方法が採用されている。
【0065】
先ず、金属製の薄板をプレス加工して打ち抜くことで、穴部16を有した電極部14Aとこの電極部14Aから延びるリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を図5(A)に示す導電部材14と同様に形成する。
次に、図11に示す上型32Aと下型32Bとから成る成形金型32内にこの導電部材14を配置した後、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含み溶融された素子本体12を成形金型32内に注入して素子本体12を射出成形することで、素子本体12が導電部材14と接合されてポリマーPTC素子10が製造される。
【0066】
以上より、本実施の形態では、成形金型32内にこの導電部材14を配置した後に、素子本体12を成形金型32内に注入して導電部材14と接合しつつ素子本体12を成形したので、電極部14Aの穴部16内に素子本体12が確実に入り込み、導電部材14と素子本体12との間の接合力が一層高まり、結果として、信頼性及び歩留まりが高いポリマーPTC素子10を安価に製造することができる。
【0067】
次に、本発明に係るポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法の第4の実施の形態を説明する。但し、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図12及び図13に示すように本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の完成品は第1の実施の形態とほぼ同様の構造とされるが、以下のような相違を有する。
【0068】
つまり、第1の実施の形態の電極部14Aが穴部16を有する替わりに、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10を構成する導電部材14の電極部14Aは、凹凸を有するように粗面化された表面42を有しており、この凹凸の内の凸部46が図14(B)に示すフック状に形成されている。さらに、この粗面化された表面42が素子本体12に対向した状態で、素子本体12の上下両面に一対の導電部材14がそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子10はなっている。
尚、この図において、凸部46の高さ寸法Hとしては1μm以上であれば良いが、4〜10μm程度とすることが考えられ、凸部46間のピッチ寸法Pは高さ寸法Hに比例した大きさとし、高さ寸法Hが大きくなればピッチ寸法Pを大きくするような形とされている。
【0069】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の製造工程を説明する。
先ず第1の実施の形態と同様に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される素子本体12を製造する。またこれとは別に、金属製の薄板をプレス加工して打ち抜くことで、電極部14Aとリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を製造するが、この際に電極部14Aに穴部16を形成しない替わりに、電極部14Aの表面42を粗面化する。
【0070】
具体的には、図14(A)に示すように電極部14Aの表面42を化学的又は機械的に粗した状態とし、この状態でこの表面42の一部又は全面に圧力を加えて粗されて生じた凸部44を変形させて、図14(B)に示すフック状の凸部46とした。
【0071】
この次に、図15(A)に示す電極部14Aの粗面化された表面42を素子本体12に対向した状態で、一対の導電部材14をこの素子本体12の上下両面にそれぞれ配置する。そしてこの後、図15(B)に示すように、これら素子本体12及び一対の導電部材14をプレス機20等で圧着することで、これらが図14(C)のように接合されて図12及び図13に示すポリマーPTC素子10が完成される。
【0072】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10及びポリマーPTC素子10の製造方法の作用を説明する。
以上の説明より、これら素子本体12及び一対の導電部材14の接合の際に、ポリマーを成分に含んで変形し易くなっている素子本体12が電極部14Aの粗面化された表面42の凸部46間の凹部に入り込んで、この素子本体12のポリマーに電極部14Aが食い込むように密着することで、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まる。
【0073】
従って、この素子本体12は、ポリマーに導電性物質が分散されている為に熱に対して弱くなるものの、第1の実施の形態と同様に従来例のように電極部材を素子本体に貼り付けてから、リード端子をはんだ付けや溶接する必要が無くなる。
この結果、はんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、電極とリード端子との間の接続強度を高める為の接着剤を用いた接着工程等の特殊工程の必要がなくなり、第1の実施の形態と同様に、ポリマーPTC素子10の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まると共に、安価なポリマーPTC素子10ともなる。
【0074】
さらに、電極部14Aの表面42を単に粗面化しただけでも素子本体12と導電部材14との間の接合力は充分に高くなるが、本実施の形態では、この電極部14Aの表面42に生じた凸部44を変形させてフック状の凸部46としたので、一層高い接合強度が得られることになる。
【0075】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の素子本体12と導電部材14との間の接合強度について、説明する。
すなわち、一対の導電部材14のそれぞれのリード端子部14Bを図12の矢印P方向に相互に引っ張ることにより素子本体12に対する電極部14Aの剥離強度を測定したところ、粗面化されていないサンプルでは10ニュートン程度の強度を有し、図14(A)の状態に粗面化されたサンプルでは50ニュートン程度の強度を有し、図14(B)の状態に粗面化されたサンプルでは100ニュートン程度の強度を有していた。
従って、この結果から本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の接合強度が十分に高くなっていることが理解できる。
【0076】
次に、本発明に係るポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法の第5の実施の形態を説明する。但し、第1の実施の形態及び第4の実施の形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の完成品は、第4の実施の形態と同様に図12及び図13に示す構造とされる。
【0077】
つまり、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10を構成する導電部材14の電極部14Aは、第4の実施の形態とほぼ同様に、凹凸を有するように粗面化された表面42を有しており、この凹凸の内の凸部46が図16(B)に示すような先端側が膨らんでフック状となった凸部46になっている。
【0078】
そして、本実施の形態では、電極部14Aの表面42に粒状材48が付着してフック状となった多数の凸部46により表面42が粗面化されるという相違を、第4の実施の形態に対して有する。尚、この図16(B)に示す電極部14Aの表面42の表面粗さは、Ra で例えば1.1〜1.3μm程度となっている。
さらに、第4の実施の形態と同様に本実施の形態でも、図16(C)に示すように、この粗面化された表面42が素子本体12に対向した状態で、素子本体12の上下両面に一対の導電部材14がそれぞれ接合される構造に、このポリマーPTC素子10はなっている。
【0079】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の製造工程を説明する。
先ず第1の実施の形態と同様に、ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質により構成される素子本体12を製造する。またこれとは別に、圧延加工することで導電部材14用の金属製の薄板を作製し、少なくとも電極部14Aとなる薄板の部分を図16(A)に示すようにエッチング又はメッキ等の処理により粗して粗面化されて、凸部44を有する表面42とする。
【0080】
この粗面化処理された後にこの薄板に電解処理を施して、粗された表面42の内の凸部44の頂部分に電解液中のイオン化された物質を付着する。例えば、この凸部44の頂部分に限界電流密度付近の電流密度で金属の粉末とメッキの中間的な塊状の粒状材48を析出させることにより、この粒状材48を成長させて粒状材48が付着した図16(B)に示すフック状の凸部46とする。
【0081】
次に、プレス加工してこの薄板を打ち抜くことで、フック状の凸部46を有した電極部14Aとリード端子部14Bとが一体的に設けられた導電部材14を製造する。但し、プレス加工は粗面化処理の前に行っても良く、この場合には導電部材14の形状になった状態で、粗面化処理及び電解処理が行われることになる。
【0082】
この後、第4の実施の形態と同様に、電極部14Aの粗面化された表面42を素子本体12に対向した状態で、一対の導電部材14をこの素子本体12の上下両面にそれぞれ配置し、これら素子本体12及び一対の導電部材14をプレス機等で圧着する。これによりこれらが図16(C)のように接合されて、第4の実施の形態と同様の図12及び図13に示すポリマーPTC素子10が完成される。
【0083】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10の別の製造方法による製造工程を説明する。
前記と同様に素子本体12とは別に、圧延加工することで金属製の薄板を作製する。この後、この薄板の表面42をエッチング又はメッキにより粗面化する処理を省略して、この状態でいきなり前述の電解処理を薄板に施すようにする。
この場合、薄板の表面42は電解処理前において粗面化されていないものの、圧延加工後の表面が本来的に有している図17(A)に示す凹凸の内の凸部44の頂部分に電解液中のイオン化された物質が付着することになる。そして、前述と同様に粒状材48を成長させて、粒状材48が付着した図17(B)に示すフック状の凸部46とすることができる。
この後、前述と同様に図17(C)のように一対の導電部材14を素子本体12の上下両面に接合してポリマーPTC素子10を完成する。
【0084】
次に、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10及びポリマーPTC素子10の製造方法の作用を説明する。
以上の説明より、本実施の形態に係るポリマーPTC素子10も、第4の実施の形態と同様にこれら素子本体12及び一対の導電部材14の接合の際に、ポリマーを成分に含んで変形し易くなっている素子本体12が電極部14Aの粗面化された表面42の凸部46間の凹部に入り込んで密着し、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まることになる。
【0085】
つまり、これらの接合の際に、第4の実施の形態と同様にポリマーを成分に含む素子本体12が電極部14Aの粗面化された表面42の凹部に入り込んで、この素子本体12のポリマーに電極部14Aが食い込み、素子本体12と導電部材14との間の接合力が高まる。この結果、第4の実施の形態と同じくはんだ付け等の接続工程が必要なくなるのに伴って、第1の実施の形態と同様にポリマーPTC素子10の信頼性が高くなるだけでなく歩留まりが高まると共に、安価なポリマーPTC素子10ともなる。
さらに、電極部14Aの表面42を単に粗面化しただけでなく、電極部14Aの表面42に付着した粒状材48を成長させてフック状の凸部46としたので、フック状の凸部46間の凹部内に素子本体12が入り込むことで、いわゆるアンカー効果が生じて一層高い接合強度が得られるようになった。
【0086】
尚、上記各実施の形態において導電部材14として採用される金属材料としては、ニッケル、ニッケル合金、銅或いは、銅合金が考えられるが、他の金属材料を採用しても良い。
さらに、上記第5の実施の形態において用いられる粒状材48の材質としてはニッケルや銅でも良く、導電部材14と粒状材48との組み合わせも同一種の材質だけでなく、例えば、ニッケルと銅との組み合わせや、銅とニッケルとの組み合わせなども、考えられる。
【0087】
また、電極部14Aの粗面化された表面42により素子本体12と導電部材14との間の接合力を高めたポリマーPTC素子10を製造する際に、第4の実施の形態の製造方法の替わりに、第2の実施の形態のように、複数連続した状態で製造された導電部材14とシート状に形成された素子本体12とを接合してからこれらを順次切断するようにしても良い。さらに、第3の実施の形態のように、成形金型32内に導電部材14を配置した後に、素子本体12を成形金型32内に注入して導電部材14と接合しつつ素子本体12を成形するようにしても良い。
【0088】
一方、第1の実施の形態及び第4、第5の実施の形態において、素子本体12及び一対の導電部材14をプレス機20等で圧着してこれらを接合し、ポリマーPTC素子10を完成したが、プレス機20等による圧着時に適切な熱量の熱を加える事により、素子本体12と導電部材14との間をより容易に密着できる場合もある。
【0089】
他方、第4の実施の形態において、電極部14Aの表面42を化学的又は機械的に粗した状態とする際には、例えばメッキやエッチング等の化学的手段或いは、切削加工や研削加工等の機械加工及びレーザ加工を含む機械的手段を採用することができる。また、図3及び図4のグラフの特性を有した物質を第2の実施の形態から第4の実施の形態においても、素子本体12として当然に採用できる。
【0090】
【発明の効果】
本発明のポリマーPTC素子及びポリマーPTC素子の製造方法によれば、熱劣化による特性不良を招くおそれを無くすだけでなく、リード端子の接続強度を高くして特殊工程の必要を無くすと共に歩留まりの向上を図って低コストでポリマーPTC素子を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るポリマーPTC素子の第1例における素子本体の抵抗と温度との関係を表すグラフを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るポリマーPTC素子の第2例における素子本体の抵抗と温度との関係を表すグラフを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子の製造を示す図であって、(A)は素子本体と導電部材との間の接合前の状態を示す図であり、(B)は素子本体と導電部材との間の圧着の状態を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子及びその変形例の要部を示す断面図であって、(A)は第1の実施の形態の断面図であり、(B)は穴部を単純なストレートの穴形状とした変形例の断面図であり、(C)は段付き部を有する形状の変形例の断面図であり、(D)はバーリング形状とした変形例の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子及びその変形例を示す導電部材の平面図であって、(A)は第1の実施の形態の平面図であり、(B)は穴部を長穴状穴部とした変形例の平面図であり、(C)は穴部を星型穴部とした変形例の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子自体の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るポリマーPTC素子の変形例の要部を示す断面図であって、(A)はV字形状に電極部の一部を曲げて突起部を設けた変形例の断面図であり、(B)は(A)の9B−9B矢視線断面図であり、(C)はフック状の突起部を設けた変形例の断面図であり、(D)はぎぼし状の突起部を設けた変形例の断面図であり、(E)は溶接によりフック状の突起部を設けた変形例の断面図であり、(F)はボール形状の突起部を設けた変形例の断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るポリマーPTC素子の製造を示す図であって、(A)はシート状の素子本体と複数連続した状態の導電部材との間が接合されたものからポリマーPTC素子が切断される状態を示す図であり、(B)は切断された状態のポリマーPTC素子の側面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るポリマーPTC素子の製造を示す図であって、成形金型内で素子本体が射出成形されてポリマーPTC素子が製造される状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係るポリマーPTC素子を示す斜視図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るポリマーPTC素子を示す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係るポリマーPTC素子の電極部の表面を粗面化する手順を説明する図であって、(A)は電極部の表面を化学的又は機械的に粗した状態を示す断面図であり、(B)は電極部の表面に生じている凸部を変形させた状態を示す断面図であり、(C)は電極部と素子本体とが接合された状態を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係るポリマーPTC素子の製造を示す図であって、(A)は素子本体と導電部材との間の接合前の状態を示す図であり、(B)は素子本体と導電部材との間の圧着の状態を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態に係るポリマーPTC素子の電極部の表面を粗面化する手順を説明する図であって、(A)は電極部の表面を粗した状態を示す断面図であり、(B)は電極部の表面に生じている凸部に粒状材を付着した状態を示す断面図であり、(C)は電極部と素子本体とが接合された状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係るポリマーPTC素子の電極部の表面を粗面化する別の手順を説明する図であって、(A)は電極部の圧延加工後の表面を示す断面図であり、(B)は電極部の表面に生じている凸部に粒状材を付着した状態を示す断面図であり、(C)は電極部と素子本体とが接合された状態を示す断面図である。
【図18】第1の従来技術に係るポリマーPTC素子を示す斜視図である。
【図19】第2の従来技術に係るポリマーPTC素子を示す図であって、(A)はポリマーPTC素子の素子本体の斜視図であり、(B)は素子本体にリード端子を溶着する状態を示す斜視図であり、(C)はリード端子を固定したポリマーPTC素子の外観斜視図である。
【符号の説明】
10 ポリマーPTC素子
12 素子本体
14 導電部材
14A 電極部
14B リード端子部
16 穴部
18 突起部

Claims (7)

  1. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
    複数の穴部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合され
    前記電極部の穴部を形成する部分が、バーリング形状とされたことを特徴としたポリマーPTC素子。
  2. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
    複数の突起部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合され、
    前記電極部の突起部が、電極部の一部を切り曲げして形成されることを特徴としたポリマーPTC素子。
  3. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
    複数の突起部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合され、
    前記電極部の突起部が、電極部の一部を袋状に突出させると共にこの突出された部分の先端を押しつぶして形成されることを特徴としたポリマーPTC素子。
  4. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
    複数の突起部を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部によってそれぞれ接合され
    前記電極部の突起部が、金属材料を電極部に接合することで形成されることを特徴としたポリマーPTC素子。
  5. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
    粗面化された表面を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部の表面によってそれぞれ接合され、
    前記電極部の粗面化された表面の粗面部分を構成する凹凸の内の凸部に圧力が加えられて、この凸部がフック状に形成されていることを特徴としたポリマーPTC素子。
  6. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子であって、
    粒状材が付着してフック状となった凸部により表面が粗面化された電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材が、前記PTC素子本体の両面にこの電極部の表面によってそれぞれ接合されたことを特徴としたポリマーPTC素子。
  7. ポリマー及びこのポリマーに分散的に混入された導電性物質を含むPTC素子本体を有したポリマーPTC素子を製造するポリマーPTC素子の製造方法であって、
    まず、複数の穴部を有した電極部、複数の突起部を有した電極部或いは、粗面化された表面を有した電極部とこの電極部から延びるリード端子部とが一体的に設けられた外部接続導電部材を複数連続した状態に作製すると共に、この電極部の幅寸法に合わせた幅寸法を有するシート状にPTC素子本体を作製し、
    次に、この電極部がPTC素子本体に対向した状態でシート状のPTC素子本体の両面 に外部接続導電部材をそれぞれ密着させて接合し、
    この後、これらPTC素子本体及び外部接続導電部材を接合した状態でこれらを一体的に切断したことを特徴としたポリマーPTC素子の製造方法
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