JP3827203B2 - 格納型航空機エンジンランナップ設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、格納型航空機エンジンランナップ設備に関し、特に吸気口の配置、テスト室の天井の構造、空気を排出する排気路の構造を改善し、テスト室内に安定した空気流を形成可能にしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、航空機エンジンをオーバーホールした場合、新規に就航する航空機エンジンの性能を確認する場合などに、通常は開放された地上においてエンジン試験を行うが、最近は騒音対策の面から種々の対策が取られている。屋外で試験する場合に、エンジン排気口のすぐ下流側に消音ダクトを設ける方法が一般的であるが、最近では航空機全体を収容可能で消音機能のある建屋(これを、消音ハンガーという)を用いる方法も採用されつつある。
【0003】
それら消音ハンガーにおける空気導入口の構造としては、殆どの設備において航空機前方となる消音ハンガーの前端部から空気を導入する形式となっている。 消音ハンガー前端部から空気を導入する前方空気導入口方式では、ハンガーの前端部に整流機能と消音機能のある空気導入口を有する大扉を設け、航空機の出し入れの際にはその大扉を開閉する必要がある。空気導入口に整流機能と消音機能を持たせるには、空気導入口の奥行き長さを十分に大きくする必要があり、特に空気導入口がエンジン前方に位置する前方導入口方式では消音機能を確保する為に空気導入口の奥行き長さ、即ち大扉の厚さが非常に大きくなり、大扉の厚さが7.5mとなった実例もある。
【0004】
前方導入口扉の厚さは空気導入口の奥行き長さに対応した値を有する大扉となる。航空機の搬出入の度に開閉する空気導入口扉が厚い大扉の場合、その移動が大掛かりとなり、空気導入口扉の移動収納スペースを確保する為に広い設置スペースが必要となる。厚い大扉と広い移動収納スペースによって設備費は高価となる。しかも、空気導入口における吸気抵抗が大となるため、消音ハンガー内における排気の逆流現象が発生し易いという欠点をゆうすると共に、外界で風が吹き、空気導入口に流入する方向と直角方向に強い横風が吹く場合には、空気導入口から導入される空気が整流された一様な流れになりにくく、航空機エンジンのランナップを正確に行うことが困難になる。
【0005】
そこで、ハンガーの前端部から空気を導入する形式に代えて、ハンガーの前端部分の上方の屋根側に空気を導入する吸気口を設ける消音ハンガーも提案されている。例えば、特開平2000−318696号公報に記載の消音ハンガーにおいては、消音ハンガーの前端側部分の上方の屋根側に空気を導入する吸気口を形成し、テスト室内に航空機エンジンの排気口に接続される排気ダクトを設け、排気ダクトからハンガーの後端側の排気路に排気しながら、航空機のエンジンを試験するようになっている。
【0006】
しかし、前記排気ダクト方式では、航空機の機種が変わる毎に排気ダクトを移動させる必要があるため、その排気ダクトの移動に多くの労力がかかる。そこで、特開平2000−313399号公報に記載の消音ハンガーにおいては、ハンガーの前端部分の上方の屋根側に吸気口を設け、ハンガー内のテスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側に設け、テスト室の後部の天井側に断面J字形の排気還流防止板を設けてある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平2000−313399号公報に記載された消音ハンガーでは、ハンガーの天井を航空機の高さの高い尾翼が通過可能な高さ位置に設けてあるため、ハンガー内の上部空間に余分なスペースがあり、このスペースを流れる空気流を整流する整流板などが設けられていないため、前記上部空間に後方から前方へ向かう排気の逆流や渦状の流れが発生しやすくなっている。そのため、排気が航空機のエンジンに吸入され易くなり、航空機エンジンのランナップを適正な条件で行なうことが難しい。
【0008】
尤も、航空機の尾翼よりも僅かに前側に位置する排気還流防止板を設けているが、特に排気還流防止板の前方の広い空間に前記余分なスペースがあるため、排気還流防止板より前側の上部空間に排気の逆流や渦状の流れが発生しやすい。
この消音ハンガーでは、テスト室の後端から直接排気路に排気する構造であるため、テスト時にエンジンの排気流に随伴する随伴流(排気流の約4倍の量)が形成されるが、この随伴流を後方へ向けて整流する整流手段が何ら設けられていないため、排気の逆流を防止し得るような随伴流を形成できない。
【0009】
本発明の目的は、ハンガーの前端部分の上方の屋根側の吸気口から導入した空気流を方向変換して航空機の方へ供給できる格納型航空機エンジンランナップ設備を提供すること、テスト室から排気路に直接排気可能な格納型航空機エンジンランナップ設備を提供すること、テスト室に排気の逆流を防止し得るような随伴流を形成可能な格納型航空機エンジンランナップ設備を提供すること、などである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の格納型航空機エンジンランナップ設備は、航空機を格納可能なテスト室を形成するハンガーと空気導入用の吸気口と空気排出用の排気通路とを有する航空機エンジンランナップ設備において、前記ハンガーの前端部に航空機を導入するための航空機導入口を設け、前記吸気口をハンガーの前端部分の上方の屋根側に上方開放状に設け、前記テスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側部分に設け、前記吸気口から導入された空気流をハンガー内に収容された航空機の方へ案内する1又は複数の空気流方向変換部材を吸気口の下側付近に設け、前記ハンガーの天井の少なくとも一部に空気流を整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井を、ハンガーの屋根構造の下方にハンガー内に設け、前記傾斜天井の左右方向の中央部には、テスト室に搬出入される航空機の垂直尾翼の通過を許すように上方へ凹入した天井溝を形成し、前記傾斜天井は前記天井溝から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜し、前記ハンガーの屋根構造に、前記天井溝の前部に外部から空気を導入可能な空気導入口を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
吸気口をハンガーの前端側部分の上方の天井側に設けるため、航空機の出し入れの為の大扉に空気導入口を設ける必要がなく、通常の防音扉と同程度の簡易な構造とすることができる。従って、大扉の移動収納の為に大きなスペースを確保する必要がなく、設置スペース的に有利であり、吸気口に種々の整流手段を装備する上でも有利である。テスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側部分に設けるため、排気ダトク方式のように航空機の機種が変わる毎に排気ダクトを移動させる必要がないうえ、テスト室内の空気がハンガーの後端側の上方へ排気されるので、ハンガーの後方の排気の排出の為のスペースを縮小することができ、設置スペース的に有利である。
【0012】
ハンガーの天井の少なくとも一部に空気流の流れを整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井を設け、この傾斜天井の左右方向の中央部には、テスト室に搬出入される航空機の垂直尾翼の通過を許すように上方へ凹入した天井溝を形成するため、垂直尾翼よりも十分に低い位置に傾斜天井を形成でき、この後方程低くなる傾斜天井により、テスト室内の排気流に随伴する随伴流を後方向きの流れに整流し、テスト室内に排気の逆流を発生させないような随伴流を形成でき、航空機エンジンの上流側の空気流を整え、航空機エンジンのランナップの為の適正な空気流条件を確保することができる。
【0013】
そして、前記傾斜天井は、ハンガーの屋根構造の下方にハンガー内に設けられ、この傾斜天井は、前記天井溝から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜しているため、天井溝から左右方向へ遠のくほど随伴流の流量も少なくなるため、傾斜天井も低くし、随伴流の流速の低下を防止するようにしてある。また、前記ハンガーの屋根構造に、前記天井溝の前部に外部から空気を導入可能な空気導入口を設けたので、この空気導入口から天井溝に外部の空気が導入されて、天井溝内に排気の逆流が発生しにくくなる。
【0014】
請求項2の格納型航空機エンジンランナップ設備は、航空機を格納可能なテスト室を形成するハンガーと空気導入用の吸気口と空気排出用の排気通路とを有する航空機エンジンランナップ設備において、前記ハンガーの前端部に航空機を導入するための航空機導入口を設け、前記吸気口をハンガーの前端部分の上方の屋根側に上方開放状に設け、前記テスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側部分に設け、前記吸気口から導入された空気流をハンガー内に収容された航空機の方へ案内する1又は複数の空気流方向変換部材を吸気口の下側付近に設け、前記ハンガーの天井の少なくとも一部に空気流を整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井を、ハンガーの屋根構造の下方にハンガー内に設け、前記傾斜天井の左右方向の中央部には、テスト室に搬出入される航空機の垂直尾翼の通過を許すように上方へ凹入した天井溝を形成し、前記傾斜天井は前記天井溝から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜し、前記天井溝の左右両端において、前記傾斜天井から下方へ突出した1対の尾翼エンジン用整流部材を設けたことを特徴とするものである。前記天井溝の左右両端において、前記傾斜天井から下 方へ突出した1対の尾翼エンジン用整流部材を設けたので、傾斜天井に沿う空気流が左右から天井溝に向う横流れとなって尾翼エンジンに悪影響を及ぼすが、その横流れ状にて尾翼エンジンに向かう空気流を1対の尾翼エンジン用整流部材により整流することができる。その他は基本的に請求項1と同様の作用を奏する。
【0015】
請求項3の格納型航空機エンジンランナップ設備では、前記天井溝の左右両端部と傾斜天井とを連続的に接続する曲面状部材を設けたので、傾斜天井に沿う空気流が左右から天井溝に向う横流れ状となって尾翼エンジンに吸入されるが、この横流れ状の空気流を曲面状部材を介して整流することができる。
【0016】
請求項4では、前記テスト室に収容した航空機の垂直尾翼の前側付近に位置するように、テスト室の天井側にテスト室の左右方向のほぼ全幅にわたる逆流防止板を設けた。そのため、この逆流防止板により、テスト室の後部の上部空間から前方への排気の逆流を防止できる。
請求項5では、前記逆流防止板の左右方向中央部に、航空機搬出入時に航空機の垂直尾翼の通過を許す尾翼通過用開口を設け、この尾翼通過用開口を開閉可能な逆流防止用開閉体を設けた。航空機搬出入時には逆流防止用開閉体を開放し、航空機の垂直尾翼を尾翼通過用開口から通過させる。エンジンテスト時には、逆流防止用開閉体を閉じるため、尾翼通過用開口からの排気の逆流を防止できる。
請求項6では、前記逆流防止板は前記傾斜天井の後端付近に配設された。そのため、傾斜天井で整流された空気流は逆流防止板の後側へ流れ、逆流防止板により逆流することはない。
【0017】
請求項7では、前記尾翼エンジン用整流部材は、金網、繊維製ネット、有孔板、スリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成された。簡単な構造の尾翼エンジン用整流部材により、整流作用と消音作用が得られる。
請求項8では、前記テスト室の左右の側壁のほぼ後半部が後方へいく程相接近する方向へ傾斜している。このため、テス室全体に適正な随伴流をすることかできると共に、音波の多重繰り返し反射による特定周波数の音圧上昇を避けることができ、騒音の低減を図ることができる。
【0018】
請求項9では、前記テスト室の左右の側壁には吸音構造を設けた。この吸音構造によ り吸音して騒音を低減できる。
請求項10では、前記排気路は、ハンガーの後端部の左右方向のほぼ全幅にわたるように形成された。そのため、十分に大きな通路断面の排気路とすることができるから、航空機エンジンからの排気とその随伴流を円滑に排出でき、テスト室内に流れ方向が後方向きの安定した空気流を形成する面で有利である。
【0019】
請求項11では、前記排気路は、ハンガーの後端部の左右方向の全幅にわたって連通状に構成された。排気路の構造を簡単化することができる。その他請求項11と同様の作用を奏する。請求項12では、前記排気路は、後方程上方へいくように湾曲又は屈曲した通路を有する。そのため、排気を円滑に方向変換し、鉛直上方へ向けて排気できる。
【0020】
請求項13では、前記排気路は、航空機の左右の主翼エンジンからの排気を排出する主翼エンジン用排気路と、この主翼エンジン用排気路よりも後方まで延び航空機の尾翼エンジンからの排気を排出する尾翼エンジン用排気路を有する。エンジンから排気路までは所定の距離を空けることが望ましい。主翼エンジン用排気路よりも尾翼エンジン用排気路を後方に配置することにより、エンジンから排気路までの適正な距離を確保することが可能となる。
【0021】
請求項14では、前記主翼エンジン用排気路は、ハンガーの後端部において垂直に立ち上がる排気塔を有する。この排気塔をハンガーの後側壁に沿って配置でき、構造を簡単化できる。請求項15では、前記尾翼エンジン用排気路は、後方程上方へいくように湾曲又は屈曲した通路を有する。そのため、排気を円滑に方向変換し、鉛直上方へ向けて排気できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る格納型航空機エンジンランナップ設備1は、航空機2を格納可能なテスト室3を形成するハンガー4、その前端の航空機導入口5、テスト室3に空気を導入する為の吸気口6、テスト室3内から排気する排気路7などを有する。尚、航空機2に向かって前後左右を前後左右として説明する。
【0023】
図1〜図9に示すように、ハンガー4は鉄骨構造の建屋からなり、ハンガー4は、前面構造10、左右の側面構造11,12、後面構造13、屋根構造14などを有する。前面構造10には、左右方向の全幅にわたる航空機導入口5が形成され、この航空機導入口5にはこれを大扉15が設けられている。
【0024】
大扉15は、左側大扉15aと右側大扉15bとからなり、左側大扉15aと右側大扉15bは、夫々、レールに支持案内される複数の連結されない小幅の扉部材からなる。尚、複数の連結されない小幅の扉部材からなるものとしてもよい。左側大扉15aは、モノレール形式の水平移動装置(図示略)でハンガー4の左側面構造11の内面側へ移動させた格納位置と、航空機導入口5の左半分を閉じる使用位置とに切換え可能である。同様に、右側大扉15bもモノレール形式の水平移動装置(図示略)でハンガー5の右側面構造12の内面側へ移動させた格納位置と、航空機導入口5の右半分を閉じる使用位置に切換え可能である。
【0025】
吸気口6がハンガー4の前端部分の屋根側に上方開放状に設けられ、吸気口6は航空機導入口5とは分離されており、航空機2のエンジンを試験する際には航空機導入口5から空気を導入する必要がないので大扉15は閉じた状態に保持される。そのため、大扉15の扉厚さは通常の防音扉と同程度の厚さである。尚、大扉15は昇降駆動装置で鉛直に昇降移動させて航空機導入口5を開閉する構造にしてもよい。以上のような大扉15を採用するため、ハンガー4の前端部の左右両側に扉開放用のスペースをとる必要がないから、格納型航空機エンジンランナップ設備1の設置スペースの面で有利である。
【0026】
図1〜図4に示すように、ハンガー4の屋根構造14は緩傾斜状の屋根形の形状に構成されているが、水平な屋根構造でもよい。屋根構造14の前端部分にはハンガー4の左右方向のほぼ全幅にわたる吸気口6が形成されている。吸気口6は、ハンガー内に収容された航空機の前方の上方に対応する位置に形成されている。
【0027】
吸気口6に吸入される空気流への外風の影響(空気流の流れ方向や速度の不均一、渦流や乱れの存在)を緩和ないし解消する為に、屋根構造14には、吸気口6の外周部から屋根構造14よりも上側へ立ち上がった通気性のある防風用フェンス部材16が設けられている。この防風用フェンス部材16の全周にわたる平均高さは少なくとも2.0m以上ある。防風用フェンス部材16は、開口率が50〜75%となるような1重または2重の金網で構成されている。但し、金網以外に、繊維製ネット、エキスパンドメタル、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板のうちの何れかで構成してもよい。
【0028】
防風用フェンス部材16と同様の目的で、吸気口6の上方を覆う通気性のある防風用上面フェンス部材17が、防風用フェンス部材16の上端部にそれとほぼ同レベルに設けられている。この防風用上面フェンス部材17は、開口率が50〜75%となるような1重または2重の金網で構成されている。但し、金網以外に、繊維製ネット、エキスパンドメタル、多数の小孔付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板、のうちの何れかで構成してもよい。
【0029】
吸気口6には、平面視にて格子状に配置した立て向きの複数の板材18aからなり空気流の上方から下方への流れ方向に所定長さ(例えば、4〜5m)の整流機構18が設けられている。複数の板材18aは夫々矩形波状断面の鋼板に吸音材を貼り付けた吸音パネルで構成されている。この整流機構18は、この吸気口6から導入する空気流を下方へ(下方向きの流れとなるように)整流する整流機能と、吸気口から屋外にでるハンガー内のランアップ騒音を消音する消音機能を得る為のものである。
【0030】
整流機構18の下端には吸気口6から導入される空気流を整流する第1整流部材21が整流機構18の下端の全面にわたって設けられている。この第1整流部材21は開口率が40〜70%に設定された金網又は繊維製ネットで構成され、左右方向の中央部において第1整流部材21の上面には整流機構18の左右方向向き板材の下端に連結された鋼板製の平板ガイド部材18bが設けている。尚、第1整流部材21は、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成してもよい。
【0031】
整流機構18の下端には、後述のように1つの空気流方向変換部材20が固定されて下方へ所定長さ延びている。この空気流方向変換部材20よりも前側(出入口側)において、整流機構18の下側付近に所定の高さ(例えば、4〜5m)の整流用空間19が設けられ、この整流用空間19の下端には吸気口6から導入された空気流を整流する第2整流部材22が整流用空間19の下端の全面にわたって設けられている。この第2整流部材22は開口率が40〜70%に設定された金網又は繊維製ネットで構成されている。尚、第2整流部材22は、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成してもよい。
【0032】
整流用空間19には、平面視格子状に配置され空気流の流れ方向につまり鉛直方向に延びる複数の第3整流部材23が設けられている。この第3整流部材23は開口率が40〜70%に設定された金網又は繊維製ネットで構成されている。 尚、第3整流部材23は、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成してもよい。
空気流方向変換部材20の後側において空気流方向変換部材20の下端近傍部からハンガー4の天井部まで延びて吸気口6の後部から導入された空気流を整流する第4整流部材24が設けられている。この第4整流部材24は開口率が40〜70%に設定された金網又は繊維製ネットで構成されている。尚、第4整流部材24は、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成してもよい。
【0033】
次に、空気流方向変換部材20について説明する。
図1〜図3に示すように、空気流方向変換部材20は吸気口6から導入された空気流をホボ水平方向変換して航空機2の方へ案内する為のものである。空気流方向変換部材20は、1つの側面視ほぼJ字形のハンガー4のほぼ全幅にわたる板材からなり、吸気口6の後端から吸気口前後幅の3/14〜3/7の位置又はその付近に配設され、空気流方向変換部材20の上端が整流機構18の左右方向に延びる板材18aの下端に固定され、ハンガー4の屋根構造14に連結されたトラス構造25で支持されている。
【0034】
空気流方向変換部材20は立板部20aとその下端から湾曲して水平に後方へ延びる水平板部20bとを一体形成したものである。この水平板部20bは、テスト室3に収容される最も大型の航空機2の胴部2a及び水平尾翼の上端よりも幾分高い位置に配設されている。航空機2の搬出入時に航空機2との干渉を避ける為である。尚、この空気流方向変換部材20の配置位置は、前記に限定されるものではなく、吸気口6の前後方向途中部(吸気口6の前後幅をBとして、例えば吸気口6の後端から約B/8〜B/2の位置)に配置してもよい。尚、空気流方向変換部材20の立板部20aは下方程後方又は前方へ進むように適当角度傾斜していてもよく、水平板部20bも僅かに傾斜していてもよい。
【0035】
図3に示すように、空気流方向変換部材20の左右方向中央部には、航空機2の搬出入時における航空機2の垂直尾翼2bの通過を許す尾翼通過用開口26が設けられ、この尾翼通過用開口26を開閉可能な開閉体27とその開閉駆動装置(図示略)が設けられている。この開閉体27は昇降式の折曲可能な所謂シャッター状の部材で構成され、屋根構造14側に設けた駆動装置で開閉駆動され、航空機2の搬出入時には開放され、航空機エンジンのテスト時には閉状態に切換えられる。但し、開閉体27を左右1対の扉で構成し、開閉駆動装置により左右両側へ開閉駆動する構造にしてもよい。
【0036】
図1〜図2に示すように、航空機2のエンジン試験の際に排気流に随伴して流れる随伴流とその周辺の空気流がテスト室3内を後方へ整然と流れるようにテスト室3内の空気流を整流する為に、ハンガー4の天井の大部分には、空気流を整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井30が、ハンガー4の屋根構造14より下方にハンガー4内に設けられている。図4に示すように、この傾斜天井30の左右方向の中央部には、テスト室3に搬出入される航空機2の垂直尾翼2bの通過を許すように上方へ凹入した天井溝31が形成され、天井溝31の左右側面は板材で仕切られている。
【0037】
傾斜天井30は、吸気口6の後端近傍部から、テスト室3に収容される航空機2の垂直尾翼2bの前側付近にかけて後方下がりに緩傾斜しており、この傾斜天井30は、天井溝31から左右方向へ遠のくほど低くなるように屋根の傾斜と平行に傾斜している。天井溝31から遠のく程前記の随伴流の流量が少なくなるので、傾斜天井30を左右へ傾斜させることで、テスト室3の左右両側付近において随伴流の流速の低下を防止できる。
【0038】
図1 、図2、図4に示すように、テスト室3の天井側には、テスト室3に収容した航空機2の垂直尾翼2bの前側付近に位置するように、テスト室3の左右方向のほぼ全幅にわたる逆流防止板32が設けられている。この逆流防止板32は、側面視J字形の板材からなり、傾斜天井30の後端又は後端付近に対応する位置に配設され、逆流防止板32の上端部は屋根構造14に固定され、逆流防止板32の下端部に傾斜天井30の後端が固定されている。
【0039】
この逆流防止板32の左右方向中央部には、航空機2の搬出入時に垂直尾翼2bの通過を許す尾翼通過用開口33が形成され、この尾翼通過用開口33を開閉可能な左右1対の逆流防止用開閉体34とこの逆流防止用開閉体34を開閉駆動する開閉駆動装置(図示略)も設けられている。左右1対の逆流防止用開閉体34は左右へ屋根の傾斜と平行に開閉可能な1対の扉からなり、航空機2の搬出入の際には尾翼通過用開口33が開放され、エンジンを試験する際には尾翼通過用開口33が閉状態に保持される。尚、1対の逆流防止用開閉体34の代わりに、昇降式の折曲可能なシャッター部材を設け、このシャッター部材を昇降させて開閉する構造としてもよい。
【0040】
天井溝31の下方に沿って尾翼エンジンの方へ流れる空気流を整流する為に、天井溝31の左右両端において、傾斜天井30から下方へ突出した左右1対の尾翼エンジン用整流部材35が設けられている。この尾翼エンジン用整流部材35は、金網、繊維製ネット、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成されている。
【0041】
図5、図6に示すように、テスト室3の左右の側壁36には、それを構成する板材に吸音性を有する部材を貼り付けた吸音構造が設けられている。また、テスト室3の左右の側壁36は、テスト室全体に適正な随伴流を生成する為、並びに特定周波数の音が左右の側壁36での反射を繰り返して騒音が悪化することを防止する為に、テスト室3の左右の側壁36のほぼ後半部が後方へいく程相接近する方向へ傾斜する傾斜側壁36aに構成されている。
【0042】
図1、図2、図5、図6に示すように、テスト室3の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路7がハンガー4の後端側部分に設けられ、この排気路7は、ハンガー4の後端部の左右方向のほぼ全幅にわたるように形成されている。排気路7は、航空機2の左右の主翼2cに装備された主翼エンジン2dからの排気を排出する主翼エンジン用排気路37と、この主翼エンジン用排気路37よりも後方まで延び尾翼エンジン2eからの排気を排出する尾翼エンジン用排気路38を有する。
【0043】
主翼エンジン用排気路37の上端には鉛直上方向きに排気する排気口37aが形成されている。尾翼エンジン用排気路38の上端にはほぼ鉛直上方に向けて排気する排気口38aが形成されている。主翼エンジン用排気路37は、後方程上方へいくように急に湾曲した湾曲通路39と、この湾曲通路39に連通し且つハンガー4の後端部で垂直に立ち上がる排気塔40を有する。尾翼エンジン用排気路38は、後方程上方へいくように緩やかに湾曲した湾曲通路41からなる。前記の湾曲通路39,41の下面板材には多数の小穴が形成され、この下面板材の背部には消音用空間42,43と吸音性部材44,45が夫々設けられている。
【0044】
次に、以上説明した格納型航空機ランナップ設備 の作用、効果について説明する。吸気口6をハンガー4の前端部分の上方の天井側に設けるため、航空機2の搬出入の為の大扉に空気導入口を設ける必要がなく、通常の防音扉と同程度の簡易な構造とすることができる。従って、大扉のために大きな移動収納スペースを確保する必要がなく、設置スペース的に有利であり、吸気口6に種々の整流手段を装備する上でも有利である。
【0045】
吸気口6がハンガー4の前端部分の上方の天井側にあるため、吸気口6からテスト室3内へ導入された空気流はそのまま鉛直向きに下降してテスト室3の床面に衝突して乱れを生じやすく且つ後方からの逆流を誘発し易いが、吸気口6から導入された空気流をハンガー4内の航空機2の方へ案内する空気流方向変換部材20を吸気口6の下側付近に設けるので、吸気口6から流入する空気流ははほぼ水平な空気流に方向変換されて航空機2の方へ案内され、テスト室3の床面と衝突しにくくなる。そのため、航空機のエンジンに渦や乱れの少ない安定した空気流が供給されランナップに適した条件を確保できる。
【0046】
テスト室3の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路7をハンガー4の後端側部分に設けるため、排気ダクト方式のように航空機の機種が変わることに排気ダクトを移動させる必要がないうえ、テスト室3内の空気がハンガー4の後端側の上方へ排気されるので、ハンガー4の後方の排気の排出の為のスペースを縮小することができ、設置スペース的に有利である。
【0047】
吸気口6の外周部からハンガーの屋根より上側へ立ち上がった通気性のある防風用フェンス部材16を設けたので、外風の風向や風速や渦等の影響を緩和し、吸気口6に向かう空気流の流速を吸気口6の全域にわたって極力均一化させることができる。吸気口6に平面視格子状又はハニカム状に配置した複数の板材18aからなり空気流を下方へ整流する整流機構18を設けたので、吸気口6から導入される空気流を整流機構18により確実に下方へ(下方向きの流れに)整流することができる。
【0048】
整流機構18が平面視格子状又はハニカム状に配置され且つ吸音機能のある複数の板材18aで構成されているため、吸気口から屋外に出るハンガー内のランアップ騒音の消音を図ることができる。特に、吸気口6を構成する整流機構18が上方に開口しているため、吸気口からのハンガー内ランアップ騒音は上空へ向かって放散されるため、屋外地上付近の騒音を軽減できる。整流機構18の下端に空気流を整流する第1整流部材21を設けたので、整流機構18を通過後の空気流をさらに整流できる。
【0049】
空気流方向変換部材20よりも前側(出入口側)において、整流機構18の下側付近に所定の高さの整流用空間19を設け、この整流用空間19の下端に空気流を整流する第2整流部材22を設けたので、整流用空間19において、整流機構18の複数の板材18aの下流側に発生する流速不均一現象や微小な渦などを解消でき、また、整流用空間19で整流された後の空気流を第2整流部材22でさらに整流できる。
【0050】
整流用空間19に空気流の上方から下方への流れ方向に延びる平面視格子状又は平行線状の複数の第3整流部材23を設けた。そのため、整流用空間19を流れる空気流の整流を促進できる。吸気口6は、ハンガー4の屋根構造14の前端部分に、ハンガー4内に収容された航空機2の前方の上方に対応する位置に設けられたので、吸気口6の後部から導入した空気流を空気流方向変換部材20でほぼ水平な空気流に方向変換して航空機2の方へ流すことができる。
【0051】
吸気口6はハンガー4の前端部分の左右方向幅の全幅に近い左右方向幅を有するため、吸気口6の面積を大きくして吸気口6を流れる空気流の流速を低く維持して整流を促進でき、テスト室3内の空気流に左右方向向きの流れが生じるのを抑制する面で有利である。
【0052】
空気流方向変換部材20は、1つの側面視ほぼJ字形の板材からなる。そのため、空気流方向変換部材20の後側の空気流は空気流方向変換部材20の案内作用で後方へ方向変換され、空気流方向変換部材20の前側の空気流はコアンダ効果により後方へ方向変換される。この空気流方向変換部材20を吸気口6の後端から吸気口6の前後幅の3/14〜3/7の位置に設けたので、空気流方向変換部材20の前後両側に空気流が流れ、空気流方向変換部材20は案内作用とコアンダ効果を確実に発揮する。尚、前記3/14〜3/7という値は実験的に得られたもので、これについては後述する。
【0053】
空気流方向変換部材20の後側において空気流方向変換部材20の下端近傍部からハンガー4の天井部まで延びる第4整流部材24を設けたので、空気流方向変換部材20の後側に流れる空気流も第4整流部材24により整流できる。空気流方向変換部材20の左右方向中央部に、航空機搬出入時における垂直尾翼2bの通過を許す尾翼通過用開口26を設け、この尾翼通過用開口26を開閉可能な開閉体27を設けたので、空気流方向変換部材20を垂直尾翼2bの通過領域まで延ばしても、開閉体27を開けば垂直尾翼2bが尾翼通過用開口26を通過できるため航空機2を搬出入させることができる。エンジンの試験時には、開閉体27で尾翼通過用開口26を閉じれば、尾翼通過用開口26の影響なしに空気流の方向変換が可能になる。防風用フェンス部材16の開口率が50〜75%であるので、空気流の通過抵抗を低く維持しながら、防風機能を確保できる。
【0054】
防風用フェンス部材16の全周にわたる平均高さは少なくとも2.0m以上あるため防風機能を確保できる。防風用フェンス部材16の上端部にそれとほぼ同レベルに配設されて吸気口6の上方を面状に覆う通気性のある防風用上面フェンス部材17を設けたので、防風用上面フェンス部材17から流入する空気流についても、外風の風向や風速や渦等の影響を緩和し、吸気口6に向かう空気流の流速を吸気口6の全域にわたって極力均一化させることができる。
【0055】
整流機構18は空気流の上方から下方への流れ方向に所定の長さを有する。そのため、整流機構18の整流性能を確保することができる。整流機構18の板材は吸音性部材からなるため、吸気口から屋外に出るハンガー内のランアップ騒音を吸音性部材により効果的に消音できる。第1〜第4整流部材21〜24が、金網、繊維製ネット、有孔板、スリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成され、その開口率が40%〜70%に設定されたので、第1〜第4整流部材21〜24の構造を簡単化でき、空気流の通過抵抗を過大にすることなく、整流性能を確保できる。
【0056】
ハンガー4の天井の少なくとも一部にテスト室3内の空気流を整流する為の傾斜天井30を設け、この傾斜天井30の左右方向の中央部には、テスト室3に搬出入される航空機2の垂直尾翼2bの通過を許すように上方へ凹入した天井溝31を形成したので、垂直尾翼2bよりも十分に低い位置に傾斜天井30を形成でき、この後方程低くなる傾斜天井30により、テスト室3内の排気流に随伴する随伴流とその周辺の空気流を後方向きの流れに整流し、テスト室3内全体に排気の逆流を発生させないような随伴流を形成でき、航空機2のエンジン2d,2eの上流側の空気流を整え、航空機エンジンのランナップに必要な適正条件を確保することができる。
【0057】
傾斜天井30は、天井溝31から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜しているが、天井溝31から左右方向へ遠のくほど随伴流の流量も少なくなるため、傾斜天井30も低くして随伴流の流速の低下を防止するようにしてある。テスト室3に収容した航空機2の垂直尾翼2bの前側付近に位置するように、テスト室3の天井側にテスト室3の左右方向のほぼ全幅にわたる逆流防止板32を設けたので、この逆流防止板32により、テスト室3の後部の上部空間から前方への排気の逆流を防止できる。
【0058】
逆流防止板32の左右方向中央部に、航空機2の搬出入時に垂直尾翼2bの通過を許す尾翼通過用開口33を設け、この尾翼通過用開口33を開閉可能な逆流防止用開閉体34を設けた。航空機2の搬出入時には逆流防止用開閉体34を開放して垂直尾翼2bを尾翼通過用開口33を通過させる。エンジンテスト時には、逆流防止用開閉体34を閉じるため、尾翼通過用開口33からの排気の逆流を防止できる。逆流防止板32は傾斜天井30の後端付近に配設されるため、傾斜天井30で整流された空気流は逆流防止板32の後側へ流れ、逆流防止板32でもって逆流するするのを阻止される。
【0059】
天井溝31の左右両端において、傾斜天井30から下方へ突出した1対の尾翼エンジン用整流部材35を設けた。傾斜天井30に沿う空気流が左右から天井溝31に向う横流れとなって尾翼エンジン2eに吸入されエンジンに悪影響を及ぼす。その横流れ状にて尾翼エンジン2eに向かう空気流を1対の尾翼エンジン用整流部材35により整流することができる。この尾翼エンジン用整流部材35は、金網、繊維製ネット、有孔板、スリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成された。
【0060】
テスト室3の左右の側壁36のほぼ後半部に後方へいく程相接近する方向へ傾斜する傾斜側壁36aを設けたため、テスト室全体に適正な随伴流を形成することができると共に、音波の多重繰り返し反射を避けることができ、特定周波数の音圧上昇を抑えることができる。また、テスト室3の左右の側壁36には吸音構造を設けたので、吸音構造により吸音して騒音を低減できる。
【0061】
排気路7は、ハンガー4の後端部の左右方向のほぼ全幅にわたるように形成されたので、十分に大きな通路断面の排気路とすることができるから、航空機2のエンジン2d,2eからの排気とその随伴流を円滑に排出でき、テスト室3内に流れ方向が後方向きの安定した空気流を形成する面で有利である。
【0062】
エンジン2d,2eから排気路7まで所定の距離を空けることが望ましい。排気路7は、航空機2の左右の主翼エンジン2dからの排気を排出する幅の大きな1対の主翼エンジン用排気路37と、この主翼エンジン用排気路37よりも後方まで延び航空機2の尾翼エンジン2eからの排気を排出する幅の小さな尾翼エンジン用排気路38を有するため、主翼エンジン用排気路37よりも尾翼エンジン用排気路38を後方に配置することによりエンジン2d,2eから排気通路7までの距離を適正なものとすることが可能となる。
【0063】
主翼エンジン用排気路37が後方程上方へいくように湾曲し且つ消音機能のある湾曲通路39を有するため、排気を円滑に方向変換し、消音しながら鉛直上方へ向けて排気できる。主翼エンジン用排気路38は、ハンガー4の後端部において垂直に立ち上がる排気塔40を有するため、この排気塔40をハンガー4の後面構造13に沿って配置できるため、排気塔40の構造を簡単化できる。尾翼エンジン用排気路38は、後方程上方へいくように緩湾曲した湾曲通路41であって消音機能のある湾曲通路41を有するため、排気を円滑に方向変換し、消音しながら上方へ向けて排気できる。
【0064】
次に、前記格納型航空機エンジンランナップ設備1の種々の整流部材の性能を確認する為に行った模型実験の結果について、図10〜図19に基づいて説明する。図10、図11は、防風用フェンス部材16の高さの影響を調べた実験結果を示すもので、「フェンスの高さ」は屋根の棟部からフェンス部材16の天端までの高さを示す。大気圧とテスト室3内の主翼エンジンの吸気口直前における全圧測定値との差を全圧低下とし、フェンス高さ0mのときの全圧低下を1.0とする「全圧低下比」で実験結果を整理した。尚、フェンス部材16は開口率(φ)=70%の金網を2重にして構成した。
【0065】
この実験結果から、防風用フェンス部材16の高さが大きくなる程、「全圧低下比」が小さくなり、空気流中の渦流や乱れの成分が小さくなることが判る。そのため、防風用フェンス部材16の高さ(全周にわたる平均的な高さ)は2m以上とするのが望ましい。
【0066】
図12、図13は、防風用フェンス部材16の開口率(φ)の影響を調べる為に行った実験結果を示すもので、フェンス部材16としては、開口率70%の金網を1重、2重、3重にした3種類のフェンスを用いて実験した。この実験から、フェンス部材16の開口率が大き過ぎる場合にも小さ過ぎる場合にも防風作用が弱くなるので、フェンス部材16の開口率は50〜75%の範囲に設定するのが望ましいことが判る。
【0067】
図14、図15は、第2整流部材22の開口率(φ)の影響を調べる為に行った実験結果を示すものであり、航空機のエンジンの前方にて気流の乱れ強さを測定した。第2整流部材22としては、図示のような5種類の整流部材について実験した。この実験結果から、開口率が大き過ぎる場合にも小さ過ぎる場合にも整流作用が弱くなるので、第2整流部材22の開口率は40〜70%の範囲に設定するのが望ましいことが判る。尚、金網(φ=70%)2重の整流部材の開口率は約約50%に相当する。
【0068】
図16、図17は、空気流方向変換部材20の配置位置を調べる為に行った実験結果を示すものであり、配置位置(b)は、吸気口6の後端から吸気口6の前後幅(B)に対する値であり、例えばb=1/7は吸気口後端からB×(1/7)の位置である。大気圧とテスト室内航空機のエンジン吸気口直前位置での全圧測定値との差を全圧低下とし、b=0の配置位置(つまり、吸気口6の後端に空気流方向変換部材20を設けた場合の全圧低下)を1.0とする「全圧低下比」で実験結果を整理した。この実験から、空気流方向変換部材20は、吸気口6の後端からB×(3/14〜3/7)の位置に配置するのが最も望ましいことが判る。
【0069】
図18、図19は、格納型航空機エンジンランナップ設備1における空気流について有限要素法の数値流体解析プログラムにより得られた流線図を簡単化して概念的に示す略図であり、図18は空気流方向変換部材20を設けた場合(実施例)の流線略図、図19は空気流方向変換部材20を設けない場合(比較例)の流線略図である。図18の線A,Bと、図19の線C,Dは主翼エンジン2dに吸入される空気流の境界に沿って手筆にて記入した線である。これらの流線略図から、空気流方向変換部材20を設けない場合には、後方から逆流した空気流が主翼エンジンに吸入されることになるが、空気流方向変換部材20を設けた場合には、後方から逆流する空気流が弱くなり、主翼エンジンに吸入されなくなることが判る。
【0070】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変更形態について、図20以降の図面に基づいて説明する。但し、同様の又は同機能の部材に同一符号を付して説明を省略する。
1〕図1に示す前記尾翼通過開口26を開閉する開閉体27を省略することも可能である。この場合、図34に示すように、空気流方向変換部材20には、尾翼通過用開口26の左右両端において空気流方向変換部材20の前方と後方へ所定幅突出する鉛直状で前後方向に延びる1対の整流板28が設けられている。この整流板28は鋼板で構成してもよいし、多数の小穴付きの有孔板、多数の小スリット付きのスリット板で構成してもよい。このような1対の整流板28を設ける場合には、空気流方向変換部材20の開口側端部からの渦や乱れが発生しにくくなる。
【0071】
2〕図20〜図24に示すように、この格納型航空機エンジンランナップ設備1Aにおいては、ハンガー4の屋根構造14が殆ど傾斜のない形状に形成され、吸気口6の外周に対応するハンガー4の軒先部には、ハンガー4の前と左右の側面に沿って上昇する外風による悪影響を緩和する為の軒先整流部材50が突出状に形成されている。側面視J字状の複数(例えば、6枚)の空気流方向変換部材51が、整流機構18における左右方向に延びる複数の板材の下端部分に夫々一体形成されている。複数の空気流方向変換部材51は前方のもの程下方まで延びている。
【0072】
傾斜天井30の前端に立板部30aとして形成される。立板部30aは吸気口6の後端部に空気流方向変換部材として作用するように設けられる。傾斜天井30に天井溝は形成されているが、傾斜天井30の後端から水平天井30bが後方へ排気塔まで延びているため、排気の逆流の虞がない。そのため、天井溝を開閉する可動の逆流防止用開閉体は設けられているが、前記実施形態の逆流防止板32と同様の逆流防止板は設けられていない。
【0073】
ハンガー4の左右の側壁52が全長に亙って平行に形成され、排気路53の主翼エンジン用排気路53aと尾翼エンジン用排気路53bとが側面視同一形状に形成され、この排気路53がハンガー4の後端部の左右方向の全幅にわたって連通状に構成され、この排気路53は後方程上方へいくように緩く湾曲した湾曲通路53cを有し、排気口53dは鉛直上方向きに形成されている。
天井溝の左右両端部と傾斜天井30とを連続的に接続する曲面状部材71が設けられている。傾斜天井に沿う空気流が左右から天井溝に向う横流れ状となって尾翼エンジンに吸入されるが、この横流れ状の空気流を曲面状部材を介して整流することができる。
【0074】
その他、前記実施形態のものと同機能の部材に同一符号を付して説明を省略する。前記複数の空気流方向変換部材51を設けるので、空気流の方向変換性能に優れる。当該部において屋根構造14が左右方向に殆ど傾斜がないため、吸気口6がほぼ水平に形成されるので、吸気口6の全域に亙って空気流が均一化しやすい。排気路53の構造が簡単化し、ハンガー4の左右の側面構造11,12も簡単化する。
【0075】
3〕図25、図26に示すように、この格納型航空機エンジンランナップ設備1Bにおいては、前記ランナップ設備1Aの空気流方向変換部材51と同様の空気流方向変換部材51が設けられ、傾斜天井30の後端に対応する位置に逆流防止板32が設けられ、天井溝を開閉する逆流防止用開閉体54も設けられている。尚、ハンガー4の左右の側面構造は前記の実施形態のものと同様であり、排気路53はランナップ設備1Aのものとほぼ同様に形成されている。
【0076】
4〕図27に示すように、複数の空気流方向変換部材を、前後方向に所定間隔おきに配置された複数の湾曲状ガイド部材55であって、前方の湾曲状ガイド部材55ほど低く位置するように配設された複数の湾曲状ガイド部材55で構成してもよい。また、ガイド部材は側面視斜めの平板ガイド部材や側面視鉛直の平板ガイド部材でもよい。
【0077】
5〕図28に示すように、図20〜図24に示したものと同様の傾斜天井30と、水平天井30bと、排気路53を有するハンガー4において、前記実施形態の空気流方向変換部材20と同様の空気流方向変換部材を設けられている。
6〕図29に示すように、図20〜図24に示したものと同様の傾斜天井30と、水平天井30bと、排気路53を有するハンガー4において、前記実施形態の空気流方向変換部材20と同様の空気流方向変換部材20を設け、尾翼通過開口の左右両端部の空気流方向変換部材20に前記1〕の欄で説明した1対の整流板28と同様の1対の整流板28が設けられている。
【0078】
7〕図30に示すように、ランナップ設備1Bと同様の天井構造が設けられ、空気流方向変換部材として、側面視J字形の2つの空気流方向変換部材56が前後に間隔をあけて設けられている。
8〕図31に示すように、図20〜図24に示したランナップ設備1Aと同様のランナップ設備において、ランナップ設備1Aにおける傾斜天井30と水平天井30bとが排気塔に至るまで後方下がりに傾斜した傾斜天井30Aに形成されている。
【0079】
9〕図32に示すように、図20〜図24に示したランナップ設備1Aと同様のランナップ設備において、ランナップ設備1Aにおける空気流方向変換部材51に変えて、1つのほぼS字形断面の空気流方向変換部材57が設けられる。
【0080】
10〕図33に示すように、前記空気流方向変換部材20の代わりに採用される図示の空気流方向変換部材20Aは、左右方向に延びる縦板状の方向変換部材本体58と、この方向変換部材本体58の下端部との間に隙間59を空けて配設された湾曲状のフラップ60と、このフラップ60の後端との間に隙間61を空け得る状態に配設された湾曲状のフラップ62とで構成されている。隙間59,61を空けて配置した湾曲フラップ60,62を設けるため、空気流方向変換部材20Aに沿う流れが剥離しにくくなり、空気流に渦が生じにくくなり、空気流の乱れが少なくなるのでランナップに適した気流条件を確保することができる。
【0081】
11〕図34に示すように、前記ランナップ設備1と同様のランナップ設備において、ハンガー4の屋根構造14に、天井溝31の前部に外部から空気を導入可能な空気導入口63を設けてもよい。空気導入口63から天井溝31に外部の空気が導入されるため、天井溝31内に排気の逆流が発生しにくくなる。
その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態や変更形態に種々の変更を付加した形態で実施可能である。
【0082】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、吸気口をハンガーの前端側部分の上方の天井側に上方開放状に設けるため、航空機の出し入れの為の大扉に空気導入口を設ける必要がなく、通常の防音扉と同程度の簡易な構造とすることができる。従って、大扉の移動収納の為に大きなスペースを確保する必要がなく、設置スペース的に有利であり、吸気口に種々の整流手段を装備する上でも有利である。テスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側部分に設けるため、排気ダクト方式のように航空機の機種が変わることに排気ダクトを移動させる必要がないうえ、テスト室内の空気がハンガーの後端側の上方へ排気されるので、ハンガーの後方の排気の排出の為のスペースを縮小することができ、設置スペース的に有利である。
【0083】
吸気口の下側付近に空気流を航空機の方へ案内する1又は複数の空気流方向変換部材を設けるため、吸気口から導入される空気流を水平方向の流れに整流する上で有利である。 ハンガーの天井の少なくとも一部に空気流を整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井を設け、この傾斜天井の左右方向の中央部には、テスト室に搬出入される航空機の垂直尾翼の通過を許すように上方へ凹入した天井溝を形成するため、垂直尾翼よりも十分に低い位置に傾斜天井を形成でき、この後方程低くなる傾斜天井により、テスト室内の排気流に随伴する随伴流を後方向きの流れに整流し、テスト室内に排気の逆流を発生させないような随伴流を形成でき、航空機エンジンの上流側の空気流を整え、航空機エンジンのランナップ性能を高めることができる。
【0084】
そして、傾斜天井はハンガー内に設けられて天井溝から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜しているため、テスト室内の左右両側方部分における随伴流の流速の低下を防止できる。また、ハンガーの屋根構造に、天井溝の前部に外部から空気を導入可能な空気導入口を設け、空気導入口から天井溝に外部の空気が導入されるため、天井溝内に排気の逆流が発生しにくくなる。
【0085】
請求項2の発明によれば、天井溝の左右両端において、傾斜天井から下方へ突出した1対の尾翼エンジン用整流部材を設けたため、傾斜天井に沿う空気流が天井溝に向う横流れとなり、尾翼エンジンに吸い込まれる空気流を1対の尾翼エンジン用整流部材で整流できる。その他は基本的に請求項1と同様の効果を奏する。
【0086】
請求項3の発明によれば、天井溝の左右両端部と傾斜天井とを連続的に接続する曲面状部材を設けるため、傾斜天井に沿う空気流が左右から天井溝に向う横流れ状となって尾翼エンジンに吸入されるが、この横流れ状の空気流を曲面状部材を介して整流することができる。
【0087】
請求項4の発明によれば、前記逆流防止板を設けたため、この逆流防止板により、テスト室の後部の上部空間から前方への排気の逆流を防止できる。
請求項5の発明によれば、逆流防止板の左右方向中央部に、尾翼通過用開口を設け、この尾翼通過用開口を開閉可能な逆流防止用開閉体を設けたため、逆流防止板と航空機の垂直尾翼との干渉を防止でき、尾翼通過用開口を逆流防止用開閉体で閉じることにより排気の逆流を防止できる。
【0088】
請求項6の発明によれば、逆流防止板は傾斜天井の後端付近に配設されたので、傾斜天井で整流された空気流は逆流防止板の後側へ流れ、逆流防止板により逆流することはない。
請求項7の発明によれば、尾翼エンジン用整流部材は、金網、繊維製ネット、有孔板、スリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成されるため、簡単な構造の尾翼エンジン用整流部材により、整流作用が確保できる。
【0089】
請求項8の発明によれば、テスト室の左右の側壁のほぼ後半部が後方へいく程相接近する方向へ傾斜しているので、テスト室全体に適正な随伴流を形成することができると共に、テスト室内に発生する騒音の低減を図ることができる。
【0090】
請求項9の発明によれば、テスト室の左右の側壁には吸音構造を設けたため、この吸 音構造により吸音してテスト室内に発生する騒音を低減できる。
請求項10の発明によれば、前記排気路は、ハンガーの後端部の左右方向のほぼ全幅にわたるように形成したので、十分に大きな通路断面の排気路とすることができるから、航空機エンジンからの排気とその随伴流を円滑に排出でき、テスト室内に流れ方向が後方向きの安定した空気流を形成する面で有利である。
【0091】
請求項11の発明によれば、前記排気路は、ハンガーの後端部の左右方向の全幅にわたって連通状に構成されるので、排気路の構造を簡単できる。その他請求項11と同様の効果を奏する。
請求項12の発明によれば、前記排気路は後方程上方へいくように湾曲した湾曲通路を有するので、排気を円滑に方向変換し、鉛直上方へ向けて排気できる。
【0092】
請求項13の発明によれば、前記排気路は、主翼エンジン用排気路と、この主翼エンジン用排気路よりも後方まで延びる尾翼エンジン用排気路を有するため、主翼エンジン用排気路よりも尾翼エンジン用排気路を後方に配置することが可能となり、エンジンから排気路まで所定の距離を空けることが可能となる。
【0093】
請求項14の発明によれば、前記主翼エンジン用排気路は、ハンガーの後端部において垂直に立ち上がる排気塔を有するため、この排気塔をハンガーの後側壁に沿って配置でき、構造を簡単化できる。
請求項15に発明によれば、前記尾翼エンジン用排気路は、後方程上方へいくように湾曲した湾曲通路を有するので、排気を円滑に方向変換し、鉛直上方へ向けて排気できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る格納型航空機ランナップ設備の縦断側面図(左右方向幅中心部にて縦断)である。
【図2】前記ランナップ設備の縦断側面図(左右方向幅中心部から外れた位置で縦断した縦断側面図である。
【図3】前記ランナップ設備の縦断正面図である。
【図4】前記ランナップ設備の縦断正面図である。
【図5】前記ランナップ設備の平面図である。
【図6】前記ランナップ設備の横断平面図である。
【図7】前記ランナップ設備の正面図である。
【図8】前記ランナップ設備の背面図である。
【図9】前記ランナップ設備の左側面図である。
【図10】防風用フェンス部材の高さに関する模型実験結果を示す図表である。
【図11】図10のデータをグラフ化した線図である。
【図12】前記フェンス部材の開口率に関する模型実験結果を示す図表である。
【図13】図12のデータをグラフ化した線図である。
【図14】エンジン前上方の乱れ強さに関する模型実験結果を示す図表である。
【図15】図14のデータをグラフ化した線図である。
【図16】空気流方向変換部材の位置に関する模型実験結果を示す図表である。
【図17】図16のデータをグラフ化した線図である。
【図18】前記ランナップ設備における空気流の速度ベクトル略図である。
【図19】比較例のランナップ設備における空気流の速度ベクトル略図である。
【図20】変更形態のランナップ設備の横断平面図である。
【図21】図20のランナップ設備の縦断側面図である。
【図22】図20のランナップ設備の縦断正面図である。
【図23】図20のランナップ設備の縦断正面図である。
【図24】図20のランナップ設備の正面図である。
【図25】変更形態のランナップ設備の横断平面図である。
【図26】図25のランナップ設備の縦断側面図である。
【図27】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【図28】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【図29】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【図30】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【図31】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【図32】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【図33】変更形態の空気流方向変換部材の拡大縦断側面図である。
【図34】変更形態のランナップ設備の縦断側面図である。
【符号の説明】
1,1A,1B 格納型航空機ランナップ設備
2 航空機
3 テスト室
4 ハンガー
6 吸気口
7,53 排気路
14 屋根構造
16 防風用フェンス部材
17 防風用上面フェンス部材
18 整流機構
18a 板材
19 整流用空間
20,51,55,56,57,20A 空気流方向変換部材
21 第1整流部材
22 第2整流部材
23 第3整流部材
24 第4整流部材
26 尾翼通過用開口
27 開閉体
28 整流板
30 傾斜天井
31 天井溝
32 逆流防止板
33 尾翼通過用開口
34 逆流防止用開閉体
35 尾翼エンジン用整流部材
36 側壁
37 主翼エンジン用排気路
38 尾翼エンジン用排気路
39,41 湾曲通路
40 排気搭
55 湾曲状ガイド部材
60,62 可動フラップ
63 空気導入口
71 曲面状部材
Claims (15)
- 航空機を格納可能なテスト室を形成するハンガーと空気導入用の吸気口と空気排出用の排気通路とを有する航空機エンジンランナップ設備において、
前記ハンガーの前端部に航空機を導入するための航空機導入口を設け、
前記吸気口をハンガーの前端部分の上方の屋根側に上方開放状に設け、
前記テスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側部分に設け、
前記吸気口から導入された空気流をハンガー内に収容された航空機の方へ案内する1又は複数の空気流方向変換部材を吸気口の下側付近に設け、
前記ハンガーの天井の少なくとも一部に空気流を整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井を、ハンガーの屋根構造の下方にハンガー内に設け、
前記傾斜天井の左右方向の中央部には、テスト室に搬出入される航空機の垂直尾翼の通過を許すように上方へ凹入した天井溝を形成し、
前記傾斜天井は前記天井溝から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜し、
前記ハンガーの屋根構造に、前記天井溝の前部に外部から空気を導入可能な空気導入口を設けたことを特徴とする格納型航空機エンジンランナップ設備。 - 航空機を格納可能なテスト室を形成するハンガーと空気導入用の吸気口と空気排出用の排気通路とを有する航空機エンジンランナップ設備において、
前記ハンガーの前端部に航空機を導入するための航空機導入口を設け、
前記吸気口をハンガーの前端部分の上方の屋根側に上方開放状に設け、
前記テスト室の後端に連通しこの後端から後方かつ上方へ延びる排気路をハンガーの後端側部分に設け、
前記吸気口から導入された空気流をハンガー内に収容された航空機の方へ案内する1又は複数の空気流方向変換部材を吸気口の下側付近に設け、
前記ハンガーの天井の少なくとも一部に空気流を整流する為に後方程低くなるように傾斜した傾斜天井を、ハンガーの屋根構造の下方にハンガー内に設け、
前記傾斜天井の左右方向の中央部には、テスト室に搬出入される航空機の垂直尾翼の通過を許すように上方へ凹入した天井溝を形成し、
前記傾斜天井は前記天井溝から左右方向へ遠のくほど低くなるように傾斜し、
前記天井溝の左右両端において、前記傾斜天井から下方へ突出した1対の尾翼エンジン用整流部材を設けたことを特徴とする格納型航空機エンジンランナップ設備。 - 前記天井溝の左右両端部と傾斜天井とを連続的に接続する曲面状部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記テスト室に収容した航空機の垂直尾翼の前側付近に位置するように、テスト室の天井側にテスト室の左右方向のほぼ全幅にわたる逆流防止板を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記逆流防止板の左右方向中央部に、航空機搬出入時に航空機の垂直尾翼の通過を許す尾翼通過用開口を設け、この尾翼通過用開口を開閉可能な逆流防止用開閉体を設けたことを特徴とする請求項4に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記逆流防止板は、前記傾斜天井の後端付近に配設されたことを特徴とする請求項4又は5に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記尾翼エンジン用整流部材は、金網、繊維製ネット、有孔板、スリット板、エキスパンドメタルのうちの何れかで構成されたことを特徴とする請求項2に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記テスト室の左右の側壁のほぼ後半部が後方へいく程相接近する方向へ傾斜していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記テスト室の左右の側壁には吸音構造を設けたことを特徴とする請求項8に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記排気路は、ハンガーの後端部の左右方向のほぼ全幅にわたるように形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記排気路は、ハンガーの後端部の左右方向の全幅にわたって連通状に構成されたことを特徴とする請求項10に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記排気路は、後方程上方へいくように湾曲又は屈曲した通路を有することを特徴とする請求項11に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記排気路は、航空機の左右の主翼エンジンからの排気を排出する主翼エンジン用排気路と、この主翼エンジン用排気路よりも後方まで延び航空機の尾翼エンジンからの排気を排出する尾翼エンジン用排気路を有することを特徴とする請求項10に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記主翼エンジン用排気路は、ハンガーの後端部において湾曲部又は屈曲部を経て垂直に立ち上がる排気塔を有することを特徴とする請求項13に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
- 前記尾翼エンジン用排気路は、後方程上方へいくように湾曲又は屈曲した通路を有することを特徴とする請求項13に記載の格納型航空機エンジンランナップ設備。
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