JP3826779B2 - 光受信回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信の基幹伝送系の分野において光ファイバから出力された光信号を電気信号に変換する光受信回路に関し、詳しくは、光信号を光電流に変換する受光素子と、この受光素子で変換された光電流を増幅するプリアンプと、を備えた光受信回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平6-151945号公報に開示された光受信回路(以下「第一従来例」という。)と、特開平9-93203号公報に開示された光受信回路(以下「第二従来例」という。)とについて説明する。
【0003】
図4は、光受信回路の第一従来例を示す回路図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0004】
光受信回路100に用いられている増幅回路140は、入力端の電位Vaが変わると、その利得や周波数特性が変わってしまう性質を有している。そのため、光受信回路100では、増幅回路140の入力端の電位Vaが常に一定になるように、トランジスタ131を制御している。更に詳しく説明する。
【0005】
光受信回路100は、APD(アバランシ・フォト・ダイオード)110、電流検出回路120、直流電流源130、増幅回路140等からなる。APD110は抵抗器111が接続され、電流検出回路120は抵抗器121とオペアンプ122の回路で構成され、直流電流源130はトランジスタ131と抵抗器132で構成される。Va,VkはそれぞれAPD110のアノードとカソードの電位を示す。VDD、VSSは増幅回路140の電源電圧、VAPDはAPD110の電源電圧である。V1はVkに対する基準電圧、V2はトランジスタ131の電源電圧である。
【0006】
次に、光受信回路100の動作を説明する。APD110では、入射した光信号を光電流に変換する。増幅回路140では、APD110に流れる光電流の交流成分を増幅し出力する。なお、抵抗器111の抵抗値は増幅回路140の入力インピーダンスより十分大きいものとする。抵抗器121には、APD110の光電流の直流分が流れる。そのため、電位VkはAPD110の光信号の平均受光パワーに応じて変化する。それをオペアンプ122が検知してトランジスタ131のベース電圧を制御し、抵抗器132とトランジスタ131のエミッタ電圧からコレクタ電流Ipを決める。
【0007】
ここで、光信号の平均受光パワーが増え光電流の直流分が増えると、電位Vkが下がる。Vkが下がればオペアンプ122の出力電圧すなわちトランジスタ131のベース電圧が上がって、コレクタ電流Ipが増加する。その逆に、平均受光パワーが減少すればIpも減少する。したがって、コレクタ電流Ipと光電流の直流分の大きさが同程度になるように抵抗器121,132、オペアンプ122等を調整しておけば、増幅回路140に直流電流が流れ込むのを抑えることができる。光電流の直流分の増減で抵抗器111の両端の電位差は変化するが、電位Vaは増幅回路140内の帰還抵抗器Rfで自己バイアスされているので変化せず、トランジスタ131のコレクタ−エミッタ間の電圧が変わる。
【0008】
このように、APD110に流れる光電流の直流分は、直流電流源130に流れ込み、増幅回路140には流れ込まない。その結果、増幅回路140の入力端の電位Vaは一定に保たれることから、平均受光パワーが時間的に大きく変化する場合や受光パワーのダイナミックレンジを大きく取る必要がある場合にも、利得の周波数特性を一定に保持することができる。
【0009】
図5は、光受信回路の第二従来例を示す回路図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0010】
光受信回路200は、瞬時的な過大光が入射されたときに受光素子210に印加される電圧(以下「逆方向バイアス電圧」という。)を減少させて光電流を制限することにより、受光素子210や前置増幅器220を過大電流から保護するものである。
【0011】
光受信回路200は、受光素子210、前置増幅器220、電流検出部230、可変インピーダンス回路260等からなる。受光素子210はバイアス供給回路240から逆方向バイアス電圧を受け、入力光強度に対応する電流を発生する。この電流値は電流検出部230によって検出されて可変インピーダンス回路260に送られる。この可変インピーダンス回路260は、バイアス供給回路240に対し、検出電流値が通常運用範囲にあるときは逆方向バイアス電圧を通常運用レベルにし、通常運用範囲より低い閾値レベルより下がった時点で逆方向バイアス電圧を下げるように制御して、受光素子210で発生可能な電流の上限値を制限する。また、検出電流値が再度通常運用範囲内に入った場合には、受光素子210への逆方向バイアス電圧を通常値まで上げていくように制御する。
【0012】
可変インピーダンス回路260は、電界効果トランジスタ(FET)261により構成され、電流検出部230で検出される電流値に応じて電界効果トランジスタ261のゲート電圧を制御することにより、ドレイン・ソース間のインピーダンスを増減することができる。
【0013】
いま、受光素子210に通常運用範囲の光が入射しているときには、電流検出部230からの出力電圧によって電界効果トランジスタ261のドレイン・ソース間のインピーダンス値は下げられているので導通状態となるが、入射される光の強度が下がって受光素子210にて発生する電流値が減ってくると、電流検出部230の検出出力電圧も下がっていく。このため、電界効果トランジスタ261のドレイン・ソース間のインピーダンスが増して開放状態となる。
【0014】
このとき、瞬時的な過大光が入射されたときには、ドレイン・ソース間におけるインピーダンス値が非常に大きい状態なので、スイッチが開放されているとみなせる。よって、受光素子210に発生する電流の最大値が制限され、受光素子210や前置増幅器220を過大電流から保護することが可能となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
高周波数領域で使用される光通信の基幹伝送は、局内伝送、局間伝送、光アンプを用いた線形中継伝送、長距離伝送と適用範囲が多岐に渡る。このため、光受信回路に入力される光信号レベルは、レベル差が大きくばらつく。つまり、光送信回路の光出力レベル、伝送媒体である光ファイバのロス、線形中継による光アンプの出力レベル等により、光受信回路に到達する際には、0dBm程度から−30dBm程度までと1000倍以上のレベル差を生じる。したがって、光受信回路には大きな入力ダイナミックレンジが要求されている。その反面、小型化及び低消費電力化への要望も高いので、光受信回路に給電される電源電圧は低くなっている。また、微小となった光信号に対しては、光プリアンプ、NF(noise figure)の十分に低い増幅回路等により対応が可能である。
【0016】
これに対し、1000倍以上のレベル差に対応できる入力ダイナミックレンジの実現は、数V以下の電源電圧では、対応が非常に困難となっている。これは、光−電流変換された信号がプリアンプに入力する際に、図6[2]にあるように、入力信号レベルに応じてプリアンプ入力へのDCバイアス点に変動が生じてしまうためである。従来、これに対応するために、大信号入力時にある一定レベルにて振幅制限を掛けるような回路構成となっていた。この場合、図6[3]にあるように光信号の‘1’レベルの時にリミットをかけるため、出力波形に歪みが生じる問題があった。その結果、特にWDM(wavelength division multiplexing:波長分割多重)等の長距離伝送により、歪みを生じた波形が光受信回路に入力された場合、出力波形に歪みが重畳されることとなるので、後段の識別回路にて符号誤りなどが発生することがあった。
【0017】
そこで、前述の第一及び第二従来例の技術を用いて、出力波形の歪みを抑える光受信回路を考えてみる。
【0018】
第一従来例の技術を利用した光受信回路は、光電流の大小に関係なく、プリアンプ入力のDCバイアス点を常に一定になるように制御することにより、出力波形の歪みを抑えるものとなる。しかし、図7[3]に示すように、光電流が大きすぎると、正常に増幅できる下限値に余裕があるにもかかわらず、正常に増幅できる上限値を越えてしまう波形が生じてしまう。そのため、ダイナミックレンジが狭くなる。また、図8[3]に示すように、あまり大きくない光電流が流れても、正常に増幅できる上限値に余裕があるにもかかわらず、DCバイアス点を常に一定になるように過剰に制御してしまう。そのため、応答速度が遅くなる。
【0019】
第二従来例の技術を利用した光受信回路は、光電流が大きくなると、受光素子に印加される電圧(逆方向バイアス電圧)を減少させて光電流を制限することにより、出力波形の歪みを抑えるものとなる。しかし、このような光受信回路では、次のような問題を生ずる。(1).一般的なPINフォトダイオードなどの雪崩増倍機能を伴わない受光素子では、光電流の大きさが光信号の大きさのみに依存するので、逆方向バイアス電圧で光電流を制御することが実質的に不可能である。(2).APDであっても、光信号が大きすぎると、光電流が逆方向バイアス電圧に依存しない飽和領域での動作となるので、逆方向バイアス電圧を減少させても光電流を抑えることが困難になる。(3).APDの雪崩降伏が起きる逆方向バイアス電圧がごく狭い範囲に限られ、かつ、その逆方向バイアス電圧の変化に対する光電流の変化が大きいので、逆方向バイアス電圧を増減させても所望の光電流値を得ることが難しい。
【0020】
【発明の目的】
そこで、本発明の目的は、ダイナミックレンジを狭めることなく、かつ、応答速度を落とすことなく、しかも、受光素子が雪崩増倍機能を伴わなくても又は飽和領域で動作しても、過大な光信号に対して出力波形の歪みを抑えることができる、光受信回路を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光受信回路は、光信号を光電流に変換する受光素子と、この受光素子で変換された光電流を増幅するプリアンプと、前記受光素子で変換された光電流の大きさを検出する入力レベル検出回路と、この入力レベル検出回路で検出された光電流の大きさに応じて前記プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を変化させるバイアス調整回路とを備えたものである(請求項1)。
【0022】
光信号は受光素子で光電流に変換され、光電流はプリアンプで増幅される。このとき、光電流の大きさが入力レベル検出回路で検出され、プリアンプの入力端の直流バイアス電圧がバイアス調整回路で光電流の大きさに応じて変えられる。例えば、バイアス調整回路は、光電流が増加すれば直流バイアス電圧を減少させ、光電流が減少すれば直流バイアス電圧を増加させる(請求項1)。ここで、過大な光信号が受光素子に照射されたため、光電流の波形の一部が正常に増幅できる範囲の上限を越えそうになると、直流バイアス電圧が自動的に減少する。その結果、光電流の波形全体が正常に増幅できる範囲の下限の方へ移動するので、出力波形の歪みが抑えられる。つまり、バイアス調整回路は、光電流の波形の最大値が正常に増幅できる範囲の上限値に一致するように、直流バイアス電圧を変化させる(請求項1)。
【0023】
前述の第一従来例では、プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を、光電流の大きさに関係なく常に固定する。そのため、光電流が大きすぎると、正常に増幅できる範囲の上限又は下限の一方に余裕がある場合でも、光電流の波形がその他方を越えてしまうことがあるので、ダイナミックレンジが狭くなる。また、あまり大きくない光電流が流れても、正常に増幅できる上限に余裕があるにもかかわらず、直流バイアス電圧を常に一定になるように過剰に制御してしまうため、応答速度が遅くなる。
【0024】
これに対し、本発明では、プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を、光電流の大きさに応じて固定ではなく変化させる。そのため、本発明では、光電流が大きすぎても、正常に増幅できる範囲内に光電流の波形を効果的に収められるので、ダイナミックレンジが広くなる。また、また、あまり大きくない光電流が流れても、必要なだけ直流バイアス電圧を変化させることにより、過剰に制御してしまうことがないので、応答速度が速くなる。
【0025】
前述の第二従来例では、光電流が大きくなると、受光素子の逆方向バイアス電圧を減少させて光電流を制限する。これでは、雪崩増倍機能を伴わない受光素子には適用できない。また、APDであっても、光電流が逆方向バイアス電圧に依存しない飽和領域での動作には適用できない。更に、APDの雪崩降伏が起きる逆方向バイアス電圧はごく狭い範囲に限られ、かつ逆方向バイアス電圧の変化に対する光電流の変化が大きいので、逆方向バイアス電圧を増減させても所望の光電流値を得ることが難しい。
【0026】
これに対し、本発明では、光電流の大きさに応じて、受光素子の逆方向バイアス電圧を変えるのではなく、プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を変える。そのため、雪崩増倍機能を伴わない受光素子にも、APDの飽和領域での動作にも適用できる。また、光電流の制御に比べて、直流バイアス電圧の制御は極めて容易である。
【0027】
また、前記入力レベル検出回路は、前記光電流が流れる抵抗器と、この抵抗器の両端の電圧を増幅する増幅器とを備えた、としてもよい(請求項2)。
【0028】
前記バイアス調整回路は、前記増幅器の出力電圧がゲートに印加される電界効果トランジスタと、この電界効果トランジスタのソース及びドレインの一方に一端が接続された交流信号遮断用のインダクタとの直列回路からなり、前記電界効果トランジスタのソース及びドレインの他方に直流電源電圧が印加されるとともに、前記インダクタの他端に前記プリアンプの入力端が接続され、又は、前記電界効果トランジスタのソース及びドレインの他方に前記プリアンプの入力端が接続されるとともに、前記インダクタの他端に直流電源電圧が印加された、としてもよい(請求項3)。
【0029】
前記バイアス調整回路は、前記増幅器の出力電圧がベースに印加されるバイポーラ・トランジスタと、このバイポーラ・トランジスタのエミッタ及びコレクタの一方に一端が接続された交流信号遮断用のインダクタとの直列回路からなり、前記バイポーラ・トランジスタのエミッタ及びコレクタの他方に直流電源電圧が印加されるとともに、前記インダクタの他端に前記プリアンプの入力端が接続され、又は、前記バイポーラ・トランジスタのエミッタ及びコレクタの他方に前記プリアンプの入力端が接続されるとともに、前記インダクタの他端に直流電源電圧が印加された、としてもよい(請求項4)。
【0030】
前記プリアンプは、入力端及び出力端を有する増幅器と、この増幅器の入力端と出力端との間に接続された帰還用の抵抗器と、前記増幅器の出力端に接続された直流信号遮断用のコンデンサとを備えた、としてもよい(請求項5)
【0031】
換言すると、本発明は、受光素子とプリアンプとの間にDCバイアス調整機能を持ち、受光電流に応じてプリアンプへの入力バイアス電圧を調整することを特徴とする。本発明によれば、入射される光信号が入力レベル検出回路にて処理され、大信号入力時にDCバイアス点が調整されることにより、大信号入力時にも歪みなく、後段回路に電気信号を受け渡すことが可能である。すなわち、本発明では、DCバイアス点を制御することで、信号の‘1’レベル及び‘0’レベルともに歪みのない出力波形を後段回路に送信することが可能となる。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る光受信回路の一実施形態を示す回路図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0033】
本実施形態の光受信回路10は、光信号Pを光電流Ipに変換する受光素子11と、受光素子11で変換された光電流Ipを増幅するプリアンプ20と、受光素子11で変換された光電流Ipの大きさを検出する入力レベル検出回路30と、入力レベル検出回路30で検出された光電流Ipの大きさに応じてプリアンプ20の入力端の直流バイアス電圧Vbを変化させるバイアス調整回路40とを備えたものである。
【0034】
受光素子11は、PINフォトダイオードであり、抵抗器31を介して直流電源電圧Vdc1がカソードに印加されている。プリアンプ20は、入力端及び出力端を有する増幅器21と、増幅器21の入力端と出力端との間に接続された帰還用の抵抗器22と、増幅器21の出力端に接続された直流信号遮断用のコンデンサ23とを備えている。入力レベル検出回路30は、光電流Ipが流れる抵抗器31と、抵抗器31の両端の電圧を増幅する増幅器32とを備えている。
【0035】
バイアス調整回路40は、増幅器32の出力電圧がゲートに印加されるFET(電界効果トランジスタ)41と、FET41のソースに一端が接続された交流信号遮断用(すなわち主信号遮断用)のインダクタ42との直列回路からなり、FET41のドレインに直流電源電圧Vdc2が印加されるとともに、インダクタ42の他端にプリアンプ20の入力端が接続されたものである。具体的に言えば、バイアス調整回路40は、光電流Ipが増加すれば直流バイアス電圧Vbを減少させ、光電流Ipが減少すれば直流バイアス電圧Vbを増加させる。
【0036】
図2及び図3は、光受信回路10の動作を示す波形図である。以下、図1乃至図3に基づき、光受信回路10の動作を説明する。
【0037】
光信号Pは受光素子11で光電流Ipに変換され、光電流Ipはプリアンプ20で増幅される。このとき、光電流Ipの大きさが入力レベル検出回路30で検出され、プリアンプ20の入力端の直流バイアス電圧Vbがバイアス調整回路40で光電流Ipの大きさに応じて変えられる。ここで、過大な光信号Pが受光素子11に照射されたため、光電流Ipの波形の一部が正常に増幅できる範囲の上限を越えそうになると、直流バイアス電圧が自動的に減少する(図2及び図3)。その結果、光電流Ipの波形全体が正常に増幅できる範囲の下限の方へ移動するので、出力波形の歪みが抑えられる。
【0038】
光受信回路10は、直流バイアス電圧Vbを、光電流Ipの大きさに応じて固定ではなく変化させる。そのため、光電流Ipが大きすぎても、正常に増幅できる範囲内に光電流Ipの波形を効果的に収められるので、ダイナミックレンジが広くなる(図2及び図7)。また、あまり大きくない光電流Ipが流れても、必要なだけ直流バイアス電圧Vbを変化させることにより、過剰に制御してしまうことがないので、応答速度が速くなる(図3及び図8)。
【0039】
また、光受信回路10は、光電流Ipの大きさに応じて、受光素子11の逆方向バイアス電圧を変えるのではなく、プリアンプ20の入力端の直流バイアス電圧Vbを変える。そのため、雪崩増倍機能を伴わない受光素子にも、APDの飽和領域での動作にも適用できる。また、光電流Ipの制御に比べて、直流バイアス電圧Vbの制御は極めて容易である。
【0040】
更に、光受信回路10は、光電流Ipの波形の最大値が正常に増幅できる範囲の上限値に一致するように、直流バイアス電圧Vbを制御している。そのような動作も含め光受信回路10の動作は、受光素子11の光電特性、抵抗器31の抵抗値、増幅器32の増幅率、FET31の相互コンダクタンス、直流電源電圧Vdc1,Vdc2等を、例えばコンピュータ・シミュレーションによって適切な値とすることにより、実現される。
【0041】
次に、言葉を変えてもう一度説明する。
【0042】
光信号Pは、受光素子11に入力され、そこで光−電流変換されて光電流Ipとなる。光電流Ipは、プリアンプ20に入力され、そこで電流−電圧変換されて、出力電圧Voutとして後段の回路へ伝送される。一方、光電流Ipは、入力レベル検出回路30で検出され、検出レベルに応じた電圧信号として、バイアス調整回路40へ入力する。バイアス調整回路40は、光信号Pが大きくなった場合に、プリアンプ20へのDCバイアス点を調整する。
【0043】
光信号Pが小さい場合、バイアス調整回路40は動作しない(すなわち直流バイアス電圧Vbを変えない)ので、光電流Ipはそのままプリアンプ20へ入力する。これに対して、過大な光信号Pが入力した場合、その光電流Ipが入力レベル検出回路3で検出されるので、バイアス調整回路40は、直流バイアス電圧Vbを入力レベルに応じて引き下げる。また、バイアス調整回路40はインダクタ42を含んでいるので、交流信号である主信号については影響を与えない。これにより、光受信回路10では、波形歪みを生じることなく、後段回路へ主信号を送信することが可能である。なお、従来技術では、リミットレベルを設けているために、‘1’側で波形歪みを生じていた(図6)。
【0044】
なお、本発明は、言うまでもなく、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、受光素子11は、PINフォトダイオードに限らず、APDでもよい。FET41の代わりにバイポーラ・トランジスタを用いてもよい。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る光受信回路によれば、光信号を光電流に変換する受光素子と、受光素子で変換された光電流を増幅するプリアンプと、受光素子で変換された光電流の大きさを検出する入力レベル検出回路と、入力レベル検出回路で検出された光電流の大きさに応じてプリアンプの入力端の直流バイアス電圧を変化させるバイアス調整回路とを備えたことにより、例えば過大な光信号が受光素子に照射されたため、光電流の波形の一部が正常に増幅できる範囲の上限を越えそうになっても、直流バイアス電圧が自動的に減少するので、出力波形の歪みを抑えることができる。
【0046】
このとき、プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を、光電流の大きさに応じて固定ではなく変化させるので、光電流が大きすぎても、正常に増幅できる範囲内に光電流の波形を効果的に収めることができ、これによりダイナミックレンジを広くできる。また、あまり大きくない光電流が流れても、必要なだけ直流バイアス電圧を変化させるので、過剰に制御してしまうことがないことにより、応答速度を向上できる。
【0047】
更に、光電流の大きさに応じて、受光素子の逆方向バイアス電圧を変えるのではなく、プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を変えるため、雪崩増倍機能を伴わない受光素子にも、APDの飽和領域での動作にも適用できる。また、光電流の制御に比べて、直流バイアス電圧の制御は極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光受信回路の一実施形態を示す回路図である。
【図2】 図1の光受信回路の動作を示す波形図である。
【図3】 図1の光受信回路の動作を示す波形図である。
【図4】 光受信回路の第一従来例を示す回路図である。
【図5】 光受信回路の第二従来例を示す回路図である。
【図6】 従来の一般的な光受信回路の動作を示す波形図である。
【図7】 図4の光受信回路の動作を示す波形図である。
【図8】 図4の光受信回路の動作を示す波形図である。
【符号の説明】
10 光受信回路
11 受光素子
20 プリアンプ
21 増幅器
22 抵抗器
23 コンデンサ
30 入力レベル検出回路
31 抵抗器
32 増幅器
40 バイアス調整回路
41 FET
42 インダクタ
P 光信号
Ip 光電流
Vb 直流バイアス電圧
Vdc1,Vdc2 直流電源電圧
Claims (5)
- 光信号を光電流に変換する受光素子と、この受光素子で変換された光電流を増幅するプリアンプと、を備えた光受信回路において、
前記受光素子で変換された光電流の大きさを検出する入力レベル検出回路と、この入力レベル検出回路で検出された光電流の大きさに応じて前記プリアンプの入力端の直流バイアス電圧を変化させるバイアス調整回路とを更に備え、
このバイアス調整回路は、前記光電流の波形の最大値が正常に増幅できる範囲の上限値に一致するように、前記光電流が増加すれば前記直流バイアス電圧を減少させ、前記光電流が減少すれば前記直流バイアス電圧を増加させる、
ことを特徴とする光受信回路。 - 前記入力レベル検出回路は、前記光電流が流れる抵抗器と、この抵抗器の両端の電圧を増幅する増幅器とを備えた、
請求項1記載の光受信回路。 - 前記バイアス調整回路は、
前記増幅器の出力電圧がゲートに印加される電界効果トランジスタと、この電界効果トランジスタのソース及びドレインの一方に一端が接続された交流信号遮断用のインダクタとの直列回路からなり、
前記電界効果トランジスタのソース及びドレインの他方に直流電源電圧が印加されるとともに、前記インダクタの他端に前記プリアンプの入力端が接続され、又は、前記電界効果トランジスタのソース及びドレインの他方に前記プリアンプの入力端が接続されるとともに、前記インダクタの他端に直流電源電圧が印加された、
請求項2記載の光受信回路。 - 前記バイアス調整回路は、
前記増幅器の出力電圧がベースに印加されるバイポーラ・トランジスタと、このバイポーラ・トランジスタのエミッタ及びコレクタの一方に一端が接続された交流信号遮断用のインダクタとの直列回路からなり、
前記バイポーラ・トランジスタのエミッタ及びコレクタの他方に直流電源電圧が印加されるとともに、前記インダクタの他端に前記プリアンプの入力端が接続され、又は、前記バイポーラ・トランジスタのエミッタ及びコレクタの他方に前記プリアンプの入力端が接続されるとともに、前記インダクタの他端に直流電源電圧が印加された、
請求項2記載の光受信回路。 - 前記プリアンプは、入力端及び出力端を有する増幅器と、この増幅器の入力端と出力端との間に接続された帰還用の抵抗器と、前記増幅器の出力端に接続された直流信号遮断用のコンデンサとを備えた、
請求項1乃至4のいずれかに記載の光受信回路。
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