JP3826482B2 - 動力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は過負荷時のトルクリミッターとしての機能および従動側機器のトルク変動吸収機能を併せ備えた動力伝達装置に関するもので、自動車用空調装置の冷凍サイクルの圧縮機駆動用動力伝達装置として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用空調装置に用いられる圧縮機では、サイクル冷却能力制御と圧縮機ロック時の駆動ベルト保護のため、圧縮機への動力伝達を断続する電磁クラッチを備えている。
しかし、0%容量近くまで可変容量できる圧縮機を用いる場合には、圧縮機の可変容量によりサイクル冷却能力を制御できるので、能力制御のためのクラッチ機構は不要となる。従って、圧縮機には、駆動ベルト保護のために、エンジンからの回転力(伝達トルク)が所定値に到達すると、動力伝達を遮断して駆動ベルトを保護する機構、つまりトルクリミッター機構のみがあればよい。
【0003】
そこで、 本出願人は先に、特開平8−135752号公報において、過負荷時のトルクリミッターとしての機能および従動側機器のトルク変動吸収機能を併せ備えた動力伝達装置を提案している。
この従来装置は、自動車のエンジン等の駆動源から動力が伝達されて回転する駆動側側回転部材と、圧縮機等の従動側機器に連結された従動側回転部材とを備えるとともに、この両回転部材の間を連結する連結機構を、弾性変形可能なゴム製の弾性部材、およびこの弾性部材を保持する保持部材にて構成して、駆動源からの回転力が所定値以内であるときは、弾性部材と保持部材とを回転方向に係止しながら圧着させることにより、弾性部材が保持部材に一体に保持されて、両回転部材の間を一体に連結する。
【0004】
これに対し、駆動源からの回転力が所定値以上に上昇する過負荷時には、弾性部材を変形させて、弾性部材表面と保持部材との間で滑りを発生させて、従動側回転部材と駆動側回転部材との間の連結を遮断させることができる。
このように、過負荷時には、弾性部材自身の変形により弾性部材と保持部材との一体保持関係が解除されることにより、駆動源と従動側機器との間の動力伝達を遮断して、過負荷時のトルクリミッター機能を発揮するものであって、過負荷運転の継続による駆動ベルトの損傷を未然に防止できる。
【0005】
しかも、トルクリミッター機能を発揮するための機構を、ゴムからなる弾性部材と保持部材との組合せで構成しているから、ゴムの衝撃吸収特性を活用して、圧縮機等の従動側機器のトルク変動を吸収することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記従来装置の製品化に向けて実際に試作して種々な使用環境の下で、トルクリミッター機能の評価を行ったところ、次のごとき問題が生じることが判明した。
すなわち、トルクリミッター機能の作動メカニズムとしては、過負荷時にゴムからなる弾性部材に大きな変形を生ぜしめ、これを起点として弾性部材表面と保持部材との間で滑りを発生させて弾性部材を磨耗させ、動力伝達を遮断するというものである。
【0007】
従って、トルクリミッター機能を良好に発揮させるためには、ゴムからなる弾性部材に過負荷時には必ず、所要の大きな変形を生ぜしめる必要があるが、装置の使用雰囲気温度が寒冷時のように極低温になると、弾性部材を構成するゴム材質が低温硬化を生じて、過負荷時に弾性部材が所要の大きな変形量を発生せず、その結果、トルクリミッターとしての作動トルクが上昇してしまい、所期の作動特性を満足できない場合が生じることが判明した。
【0008】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、トルク変動吸収作用を持ったゴム製の弾性部材を用いた連結機構により、過負荷時のトルクリミッター機能を発揮する動力伝達装置において、低温時においても、所期の作動トルクでトルクリミッター機能を確実に発揮できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1〜7記載の発明では、駆動側回転部材(3)と、従動側回転部材(6)の間を連結する連結機構に、弾性変形可能なゴム製の弾性部材(11)、およびこの弾性部材(11)を保持する第1、第2保持部材(8、10)を備え、
この第1、第2保持部材(8、10)のいずれか一方のみに、弾性部材(11)を保持する歯部(8c、10d)を、両保持部材(8、10)の円周方向に所定間隙(D)隔てて複数設け、
両保持部材(8、10)の他方は、前記弾性部材(11)を保持する部分(10a、8f)が筒状に繋がった形状になっており、
回転駆動源からの回転力が所定値以内であるときは、弾性部材(11)と両保持部材(8、10)とを回転方向に係止しながら圧着させることにより、弾性部材(11)が両保持部材(8、10)の間を一体に連結し、
回転力が所定値以上に上昇する過負荷時には、複数の歯部(8c、10d)を塑性変形させて、弾性部材(11)と両保持部材(8、10)との係止状態を解除することにより、駆動側回転部材(3)と従動側回転部材(6)との間の連結を遮断することを特徴としている。
【0010】
これによると、過負荷時には、第1、第2保持部材(8、10)のいずれか一方のみに設けた複数の歯部(8c、10d)の塑性変形を利用して、動力伝達を遮断できるから、ゴムからなる弾性部材の変形を利用して、動力伝達を遮断する従来技術のように、ゴムの低温効果によりトルクリミッター作動トルクが増大するという不具合が発生せず、極低温時でも、所定トルクにて確実に動力伝達を遮断することができる。
【0011】
請求項2記載のように弾性部材(11)は円周方向に複数に分割して配置することができる。
また、請求項3記載の発明では、円周方向に複数に分割された弾性部材(11)に対応する部位のみに複数の歯部(8c、10d)を形成することを特徴としている。
【0012】
これによれば、歯部(8c、10d)の体格が小さくなり、歯部(8c、10d)の質量が小さくなるので、高速回転時に歯部(8c)が受ける遠心力が小となり、遠心力による歯部(8c、10d)の変形といった悪影響を抑制できる。
また、請求項4記載の発明のように、複数の歯部(8c、10d)に軽量化のための穴部(21)を形成すれば、歯部(8c、10d)の質量がより一層小さくなって、遠心力の影響をさらに低減できる。
【0013】
また、請求項5記載の発明のように、弾性部材(11)の周囲を覆うカバー部材(22、23)を設ければ、弾性部材(11)に水やオイル等が付着するのを防止でき、これらの付着に起因する、弾性部材(11)の劣化、動力伝達不良等の不具合を防止できる。
そして、本発明の歯部(8c、10d)は、請求項6に記載のように第1保持部材(8)に形成したり、請求項7に記載のように第2保持部材(10)に形成することができる。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図3において、1は自動車用空調装置の冷凍サイクルの冷媒を圧縮する圧縮機(従動側機器)、2は圧縮機1のフロントハウジングであり、その中心部には円筒状突出部2aが一体に突出している。3は駆動側プーリで、図示しないベルトを介して自動車エンジンから回転力を受けて回転するものである。このプーリ3は多重Vベルトが係合される多重V溝部3aを外周部に持っている。
【0016】
本例では、プーリ3は鉄系金属にて断面コの字形状からなる2重円筒形状に形成されている。プーリ3の内周円筒部3bはベアリング4を介して円筒状突出部2a上に回転自在に支持されており、本例では、駆動側プーリ3により駆動側回転部材を構成している。
5は圧縮機1の回転軸で、フロントハウジング2の円筒状突出部2a内に同心状に配置されている。6は従動側回転部材をなすハブで、鉄系金属にてフランジ部6aを有する円筒状に形成されている。このハブ6の円筒部6bは円筒状突出部2aの内周側に空隙を介在して配置され、回転軸5に対してスプライン結合により回り止めして結合されている。そして、ボルト7を回転軸6にねじ込むことにより、ハブ6の内周鍔状部6cを回転軸5の端面に締めつけて、ハブ6を回転軸5に対して軸方向に固定している。このようにして、ハブ6と回転軸5は一体に回転可能に結合されている。
【0017】
8は鉄系の金属にてカップ状にプレス成形された第1保持部材(カップ部材)であり、その底面部8aは図2、4に示すように4角形状に成形されている。そして、底面部8aの中心寄りの部分に、図4に示すように円周方向に等間隔で開けた4個のリベット挿入穴8eが開けてある。このリベット挿入穴8eおよびハブ6のフランジ部6aの挿入穴にリベット9を挿入して、このリベット9によりハブ6のフランジ部6aに底面部8aの中心寄りの部分を一体に連結している。底面部8aの中心部にはボルト7が挿通できるように貫通穴8bが開けてある。
【0018】
第1保持部材8は、その4角形状の底面部8aの外周角部にプーリ3に向かって軸方向に延びる歯部8cを一体成形している。この歯部8cは図3、4に示すようにその中央部に内周方向に突出する突部8dを有している。また、歯部8cは後述の弾性部材11と同数設けられ、弾性部材11の設置部分だけに設けられるから、歯部8c相互の間には、十分な間隙Dが設けられている。
【0019】
一方、10はリング状の第2保持部材で、図5に示すように円筒部10aと、この円筒部10aの軸方向一端から半径方向の外方に延びるフランジ部10bとを有するリング状の板形状に鉄系金属にて成形されている。円筒部10aの外周面上には、ゴムからなる弾性部材11が円周方向の4箇所に等間隔で分割配置されており、焼きつき接着等の手段で弾性部材11は円筒部10a上に固着されている。
【0020】
弾性部材11は歯部8cの突部8dが嵌合する凹部11aを有する山形の形状に成形されている。そして、この弾性部材11の半径方向の厚さは歯部8cと第2保持部材10の円筒部10aとの間隙より所定量大きく設定してあるので、弾性部材11は歯部8cと円筒部10aとの間に圧着するようにして嵌合保持される。この嵌合保持状態では、図3に示すように歯部8cの突部8dと弾性部材11の凹部11aとが噛み合い、係止されるので、弾性部材11と第1保持部材8との間の回転方向の係止力を高めることができる。
【0021】
なお、上記弾性部材11のゴム材質としては、自動車の使用環境温度範囲(−30°C〜120°)に対して、トルク伝達およびトルク変動吸収の面で優れた特性を発揮するゴムを用いることが好ましく、具体的には、塩素化ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴムがよい。
第2保持部材10のフランジ部10bには円周方向に等間隔で配置した4個のリベット挿入穴10cが開けてある。このリベット挿入穴10cおよびプーリ3の挿入穴にリベット12を挿入して、このリベット12により第2保持部材10をプーリ3に一体に結合している。これにより、プーリ3の回転を第2保持部材10から弾性部材11を介して第1保持部材8に伝達するようにしてある。
【0022】
なお、図1では圧縮機1の具体的構造の図示を省略しているが、圧縮機1は一般に連続可変容量タイプとして知られているもので、例えば斜板型、ワッブル型のように往復動ピストンのストロークをピストン駆動機構の斜板の傾斜角度を変化させて、圧縮機吐出容量を0%〜100%の間で連続的に可変するものであり、この容量可変により冷凍サイクルの蒸発器冷却能力を制御できる。
【0023】
従って、この連続可変容量タイプの圧縮機1の使用により、動力伝達を断続するための電磁クラッチを圧縮機1に装備する必要がなくなる。
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。
まず、圧縮機1の正常運転時について述べると、自動車エンジンのクランクプーリの回転は図示しないベルトによりプーリ3に伝達され、このプーリ3と一体に第2保持部材10が回転する。
【0024】
そして、弾性部材11が第2保持部材10と第1保持部材8の歯部8cとの間において半径方向に圧縮され、この両部材8c、10に圧着することにより、第2保持部材10と第1保持部材8との間が弾性部材11を介して一体に連結されている。その結果、圧縮機1の正常運転時には、プーリ3の回転が第2保持部材10から、弾性部材11、第1保持部材8、ハブ6を経て、さらには圧縮機1の回転軸5へと伝達され、圧縮機1が作動する。
【0025】
ここで、4個の歯部8cのうち1個の歯部8cに作用する力を図6に基づいて説明すると、先ず、プーリ3側からの駆動力による力FT は、FT の接線方向の分力Fに回転軸5の中心Oからの距離Lをかけたトルクの4倍が駆動トルクTとつり合うことになるから、次の数式1が成り立つ。
【0026】
【数1】
FT =T/(4LCOSθ)
次に、回転に伴う遠心力Fe は、1個の歯部7bの質量をm、回転角速度をω、回転軸中心0から歯部7bの重心位置までの距離をrとすると、次の数式2で表すことができる。
【0027】
【数2】
Fe =mrω2
この2つの力により第1保持部材8には、その平板状の底面部8aを回転軸5の軸方向に曲げようとする曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは、上記駆動力による力FT および遠心力Fe の作用点と平板状の底面部8aとの間の距離をそれぞれLT 、Le とすると、次の数式3で表すことができる。
【0028】
【数3】
M=FT LT +Fe Le
圧縮機1の正常運転時では、上記曲げモーメントMによる応力が平板状の底面部8aの降伏応力を越えないように、第1保持部材8が設計されているので、第2保持部材10と第1保持部材8との間を弾性部材11を介して一体に連結する状態が維持される。
【0029】
なお、圧縮機1の正常運転時には、ゴム製の弾性部材11は圧縮機1の作動による捩じり振動を吸収しているため、通常20Nm程度の負荷トルクが弾性部材11に作用しているが、その際、弾性部材11は上記程度の負荷トルクでは僅少な変形を起こすのみであり、第1、第2の保持部材8、10間の連結状態は維持される。そして、圧縮機1への動力伝達系にゴム製の弾性部材11を介在することにより、圧縮機1の正常運転時におけるトルク変動吸収効果を良好に発揮できる。その結果、圧縮機振動の低減等の効果を発揮でき、圧縮機周囲の環境への騒音低減を図ることができる。
【0030】
一方、圧縮機1がロックすると、過大な負荷トルクが第1保持部材8、弾性部材11、および第2保持部材10からなる連結機構に加わり、負荷トルクが予め設定した所定値(トルクリミッター作動トルク:例えば、70Nm)に到達すると、前記した曲げモーメントMによる応力が平板状底面部8aの降伏応力を越えので、底面部8aは図7に示すようにリベット9による固定部を支点として軸方向左側への塑性変形を起こし、弾性部材11と歯部8cの嵌合状態(噛み合い状態)が外れ、回転軸5への動力伝達が遮断される。すなわち、上記連結機構がトルクリミッターの機能を果たす。そのため、エンジンの補機駆動システムにおいて、駆動用ベルトの損傷といった重大故障の発生を未然に防止できる。
【0031】
しかも、第1保持部材8の平板状底面部8a、歯部8cの塑性変形により連結機構がトルクリミッター機能を果たしているから、使用雰囲気温度が寒冷時のように極低温になって、弾性部材11を構成するゴム材質が低温硬化を生じても、トルクリミッター機能を所定の作動トルクにて確実に発揮できる。つまり、極低温時でもトルクリミッター作動トルクの上昇を招くことなく、所定トルクにてトルクリミッター機能を発揮できる。
【0032】
ところで、圧縮機がロックした場合のような過負荷時にだけ、弾性部材11と歯部8cとの噛み合い状態を外すためには、遠心力Fe の影響が少なく、所定の駆動力FT で変形するよう歯部8cの形状を適切に設定する必要がある。
例えば、図8に示すように歯部8cをその周方向の全周で繋げた場合は、歯部8cの強度が過大となり、圧縮機1がロックしても第1保持部材8が塑性変形しないので、トルクリミッター機能を得ることができない。
【0033】
次に、図9に示すように歯部8cに幅の狭いスリット20を設けた場合には、歯部8cの強度を下げることはできるが、歯部8cに弾性部材11との噛み合い部以外の部分が存在し、歯部8cの質量mが図4に示す本実施形態の形状に比して増大するので、高回転域において遠心力の影響が増大する。そのため、圧縮機1がロックしていなくても、第1保持部材8が塑性変形して、動力伝達を遮断してしまう。
【0034】
そこで、上記点に鑑みて、本実施形態では、図4に示すように、歯部8cの形状を複数に分割した弾性部材11と噛み合う所だけを残し不要な所をすべて削除して、軽量化を図って、遠心力の影響を小さくしている。
従って、図4に示す本実施形態の形状によると、歯部8cに作用する遠心力を大幅に低減できるので、圧縮機1がロックした場合のような過負荷時のみに、第1保持部材8が塑性変形し、弾性部材11と歯部8cとの噛み合いを外すことができる。
【0035】
図10は図4の本実施形態の形状によるものと、図9に示す比較品との効果の相違を示す計算値であり、冷凍サイクルの圧力条件は運転中で最も高負荷な状態を想定し、吐出圧力3MPa、吸入圧力0.4MPaとしている。実線は本実施形態の第1保持部材8に作用する最大応力を表し、一点鎖線は図9の比較品の第1保持部材8に作用する最大応力を表し、破線はその最大応力のうち、駆動力FT による応力を表している。
【0036】
図10より、図9の比較品では圧縮機回転数が7000rpm 以上の高回転域になると、第1保持部材8に作用する最大応力が第1保持部材8の降伏応力(本例では、20kgf/cm2 )を越えてしまい、第1保持部材8の塑性変形が起こる。
これに対し、本実施形態では圧縮機回転数が10000rpm の高回転になるまで最大応力が第1保持部材8の降伏応力以下となるので、第1保持部材8が高回転域でも塑性変形することがなく、動力伝達を維持できる。
【0037】
一方、圧縮機1がロックした場合には、ベルトの伝達能力から駆動力は先の計算に用いた駆動力の約3倍になることが分かっており、第1保持部材8の最大応力は低回転域から第1保持部材8の降伏応力を越えるため、第1保持部材8は塑性変形し、動力伝達を遮断する。
(第2実施形態)
図11は第2実施形態を示すものであり、第1実施形態の第1保持部材8の歯部8cにそれぞれ複数(図示の例では4個)の貫通穴21を形成することにより、歯部8cを一層軽量化して遠心力の影響をさらに低減することができる。
【0038】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、歯部8cが弾性部材11の外周面を覆うだけで、弾性部材11の側面部を覆っていないので、使用条件によっては弾性部材11に水やオイル等が付着して、弾性部材11が劣化するとか、第1保持部材8と弾性部材11との噛み合いによるトルク伝達に支障を来すことがある。
【0039】
そこで、第3実施形態では図12、図13に示すように、カップ状に成形された金属または樹脂製のカバー部材22を設け、このカバー部材22の底面部22aをリベット9にてハブ8に固定するとともに、カバー部材22により弾性部材11の周囲を覆うようにしている。これにより、弾性部材11に水やオイル等が付着するのを防止して、弾性部材11の劣化等の不具合を防止できる。22cはリベット9の挿入穴である。
【0040】
(第4実施形態)
図14は第4実施形態を示すもので、本実施形態では、カバー部材23を円筒状に形成し、このカバー部材23のフランジ部23aをリベット12にてプーリ3に固定するとともに、円筒部23bにて第1保持部材8の歯部8cの外周側を覆うようにしたものである。本実施形態でも、カバー部材23により水やオイル等が弾性部材11の周囲に侵入するのを防止して、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
(第5実施形態)
図15、図16は第5実施形態を示すもので、第1〜第4実施形態では、第1保持部材8に形成した歯部8cの変形によりトルクリミッター機能を発揮するようにしているが、第5実施形態では第2保持部材10に歯部10dを形成し、この歯部10dの変形によりトルクリミッター機能を発揮するようにしている。
【0042】
すなわち、第2保持部材10に円筒部10aを設ける代わりに、円筒部10aと同様に、フランジ部10bの内周部から軸方向に延びる円弧状の歯部10dを弾性部材11と同数(図15に図示の例では4個)形成する。4個の歯部10d相互の間には、所定のトルクリミッター作動トルクにて歯部10dが変形するように、十分大きな間隔Dが設定されている。そして、この歯部10dの外周上にゴムからなる弾性部材11が焼きつき接着等の手段で固着されている。
【0043】
一方、第1保持部材8では歯部8cを設ける必要がなくなるので、歯部8cの代わりに円筒状に繋がった円筒部8fを形成している。この円筒部8fには弾性部材11の凹部11aと噛み合う突部(図示せず、第1実施形態の歯部8cの突部8dに相当)が設けてある。
第5実施形態では、圧縮機1の正常運転時には、第2保持部材10の円弧状の歯部10dが図16の破線位置に保持されて、第1保持部材8の円筒部8fの突部と弾性部材11の凹部11aとの噛み合い状態が保持されるので、駆動側の第2保持部材10から弾性部材11を介して、従動側の第1保持部材8に回転が伝達される。
【0044】
しかし、圧縮機1がロックすると、過大な負荷トルクが第1保持部材8、第2保持部材10および弾性部材11からなる連結機構に加わる。ここで、第1保持部材8において弾性部材11を支持する円筒部8fは円筒状に繋がった強度の高い形状であるから、円筒部8fの変形は起こらない。そのため、円筒部8fが弾性部材11に対する固定支持部材となる。
【0045】
これに反し、第2保持部材10では弾性部材11を支持する歯部10dが弾性部材11の大きさに対応した円弧状の形状であって、歯部10d相互の間には十分大きな間隔Dが設定されているから、円筒部10fに比して変形が発生しやすい形状となっている。
そして、円筒部8fが弾性部材11の固定支持部材となるため、弾性部材11から歯部10dに対して半径方向内方への曲げモーメントが作用する。
【0046】
そのため、負荷トルクが所定値に達すると、この負荷トルクによる曲げモーメントにより歯部10dが図16の破線位置から実線位置へと半径方向内方へ変形する。この結果、歯部10dに固着された弾性部材11が円筒部8fより開離し、弾性部材11と円筒部8fとの噛み合い状態が外れ、駆動側の弾性部材11から従動側の第1保持部材8へのトルク伝達が遮断される。
【0047】
なお、第5実施形態では、第2保持部材10に設けた歯部10dが第1保持部材8の円筒部8fおよび弾性部材11の内周側に位置するので、歯部10dに作用する遠心力は、圧縮機1のロック時(過負荷時)にトルクリミッター機能を妨げる方向に作用する。従って、歯部10dも前述の第1保持部材8の歯部8cと同様に複数に分割した弾性部材11の設置部位のみに設けて体格を小さくしたり、図11に示す貫通穴21を形成することにより、歯部10dを一層軽量化して遠心力の影響をさらに低減することが好ましい。
【0048】
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態では、ハブ6のフランジ部6aに、別体で成形した第1保持部材8の底面部8aをリベット9により一体に連結しているが、ハブ6のフランジ部6aに第1保持部材8を一体成形することも可能である。
また,これとは逆にプーリ3を多重V溝部3aと、V溝部以外の部分との2つに分割し、この多重V溝部3aと、それ以外の部分とを溶接等により一体に接合してもよい。
【0049】
また、上記した第1〜第4実施形態では、第1保持部材8の歯部8cを弾性部材11の外周側に配置し、第2保持部材10の円筒部10aを弾性部材11の内周側に配置して、過負荷時には、第1保持部材8の歯部8cを軸方向並びに半径方向外方へ塑性変形させる構成としているが、第1保持部材8の歯部8cを弾性部材11の内周側に配置し、第2保持部材10の円筒部10aを弾性部材11の外周側に配置して、過負荷時には、第1保持部材8の歯部8cを第5実施形態の歯部10dと同様に半径方向内方へ塑性変形させる構成としてよい。
【0050】
また、第5実施形態において、第2保持部材10の歯部10dを第1保持部材8の円筒部8fの外周側に配置するとともに、第2保持部材10の歯部10dの内周側と第1保持部材8の円筒部8fの外周側との間に弾性部材11を配置して、過負荷時には第2保持部材10の歯部10dを半径方向外方に変形させて、トルクリミッター機能を発揮するようにしてもよい。
【0051】
また、弾性部材11を第2保持部材10側に固着せずに、第1保持部材8側に固着することもできる。
また、本発明は自動車空調用圧縮機に限らず、種々な用途に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】第1実施形態による第1保持部材の斜視図である。
【図5】第1実施形態による第2保持部材の斜視図である。
【図6】図1の要部拡大断面図である。
【図7】第1実施形態におけるトルクリミッター作動状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の比較品による第1保持部材の斜視図である。
【図9】本発明の別の比較品による第1保持部材の斜視図である。
【図10】第1保持部材に作用する応力と圧縮機回転数との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態による第1保持部材の斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図13】第3実施形態によるカバー部材の斜視図である。
【図14】本発明の第4実施形態を示す縦断面図である。
【図15】本発明の第5実施形態における第2保持部材を示す斜視図である。
【図16】本発明の第5実施形態における要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…フロントハウジング、3…プーリ(駆動側回転部材)、
5…回転軸、6…ハブ(従動側回転部材)、8…第1保持部材、8c…歯部、
10…第2保持部材、11…弾性部材、22、23…カバー部材。
Claims (7)
- 回転駆動源からの回転力を受けて回転する駆動側回転部材(3)と、
従動側機器(1)の回転軸(5)に連結された従動側回転部材(6)と、
前記両回転部材(3、6)の間を連結するように配設され、弾性変形可能なゴム製の弾性部材(11)、およびこの弾性部材(11)を保持する保持部材(8、10)からなる連結機構とを備え、
前記保持部材は、前記従動側回転部材(6)に連結された第1保持部材(8)と、前記駆動側回転部材(3)に連結された第2保持部材(10)とから構成されており、
前記第1保持部材(8)および前記第2保持部材(10)のいずれか一方のみに、前記弾性部材(11)を保持する歯部(8c、10d)を、前記両保持部材(8、10)の円周方向に所定間隙(D)隔てて複数設け、
前記両保持部材(8、10)の他方は、前記弾性部材(11)を保持する部分(10a、8f)が筒状に繋がった形状になっており、
前記回転力が所定値以内であるときは、前記弾性部材(11)と前記両保持部材(8、10)とを回転方向に係止しながら圧着させることにより、前記弾性部材(11)が前記両保持部材(8、10)の間を一体に連結し、
前記回転力が所定値以上に上昇する過負荷時には、前記複数の歯部(8c、10d)を塑性変形させて前記弾性部材(11)と前記両保持部材(8、10)との係止状態を解除することにより、前記駆動側回転部材(3)と前記従動側回転部材(6)との間の連結を遮断することを特徴とする動力伝達装置。 - 前記弾性部材(11)は、円周方向に複数に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
- 前記複数の弾性部材(11)に対応する部位のみに前記複数の歯部(8c、10d)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
- 前記複数の歯部(8c、10d)に軽量化のための穴部(21)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
- 前記弾性部材(11)の周囲を覆うカバー部材(22、23)を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
- 前記歯部(8c)は、前記弾性部材(11)の内外周のいずれか一方の面と噛み合うように、前記第1保持部材(8)に形成されており、
前記第2保持部材(10)には、前記弾性部材(11)の内外周の他方の面を保持する部分(10a)が備えられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の動力伝達装置。 - 前記歯部(10d)は、前記弾性部材(11)の内外周のいずれか一方の面と噛み合うように、前記第2保持部材(10)に形成されており、
前記第1保持部材(8)には、前記弾性部材(11)の内外周の他方の面を保持する部分(8f)が備えられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
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