JP3825790B2 - フレキシブルプリント基板の製法 - Google Patents

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Description

本発明は、フレキシブルプリント基板の製法に関するものである。
従来は、フレキシブルプリント基板は、ポリイミド樹脂フィルムの表面に接着剤を介して回路形成用の銅箔を積層した3層基材のものが用いられていた。しかしながら、近年、電子工業の進歩に伴い、高温に耐えるものに対する需要が高まってきているのに対し、上記3層基材のものは、接着剤の耐熱性が低い。そこで、接着剤の使用を取り止め、ポリイミド樹脂フィルムに無電解めっきを施すことにより導電化した後、回路形成用の銅めっきを施したものが提案されている。そして、上記無電解めっきとしては、無電解ニッケルめっきが賞用されている。その理由は、無電解ニッケルめっきがポリイミド(ポリイミド樹脂フィルム)との接着性に優れるからであり、また、フレキシブルプリント基板の実使用における長期の熱負荷時には、回路を形成する銅がポリイミド樹脂フィルム側に拡散移行して回路の接着力低下の原因となるが、無電解ニッケルめっきはその銅の拡散移行に対するバリア性に優れるからである。
しかしながら、無電解めっきは、溶液中で行われる湿式法であり、しかも、ポリイミドは、吸水性を示すため、上記無電解めっき処理では、ポリイミド樹脂フィルムが水分を吸収する。そして、ポリイミド樹脂フィルムに水分が存在した状態のフレキシブルプリント基板では、はんだ接合のような高温短時間の熱負荷時に、ポリイミド樹脂フィルム内の水分が膨張し、ポリイミド樹脂フィルムと無電解めっき層との接着力低下を引き起こす。
そこで、無電解めっきを施す場合には、通常、その無電解めっき後、銅めっきに先立って、加熱処理することが行われ(特許文献1,2参照)、ポリイミド樹脂フィルム内に含まれた水分を蒸発させている。
特開平1−295847号公報(請求項1) 特開平5−114779号公報(請求項1)
しかしながら、無電解めっき層がポリイミド樹脂フィルムの片面に形成される場合は、その裏面から水分を蒸発させることができるため、無電解めっき層をバリア性が発揮される厚みまで厚く設定できるが、両面に形成されている場合は、両面の無電解めっき層が妨げとなって水分の蒸発が困難となるため、無電解めっき層の厚みに制限がある。無電解めっき層が厚くできないと、上述した長期の熱負荷時の銅の拡散移行に対するバリア性に劣り、そのフレキシブルプリント基板が耐熱性に劣ったものとなる。一方、上記加熱処理を高温で行うと、ポリイミド樹脂フィルム内の水分が膨張し、ポリイミド樹脂フィルムと無電解めっき層との接着力が低下する。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ポリイミド樹脂フィルムの両面に無電解ニッケルめっきを施す場合でも、ポリイミド樹脂フィルム内に残存する水分量を低下させ、かつ、無電解ニッケルめっき層の厚みをバリア性が発揮される厚みまで厚くすることができるフレキシブルプリント基板の製法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明のフレキシブルプリント基板の製法は、ポリイミド樹脂フィルムの両面にニッケルめっき層を形成し、各ニッケルめっき層の表面に回路形成用の銅めっき層を形成する工程を備えたフレキシブルプリント基板の製法において、上記ニッケルめっき層の形成に先立って、ポリイミド樹脂フィルムの両面をプラズマ処理または短波長紫外線処理した後、アルカリ金属水酸化物を用いて表面処理し、その後、上記ニッケルめっき層の形成を2工程に分け、第1工程で、無電解ニッケルめっきにより、ポリイミド樹脂フィルムの各面に、厚みがそれぞれ0.01〜0.1μmの範囲の薄い第1のニッケルめっき層を形成した後、これを80〜150℃の範囲の加熱により乾燥させ、つぎに第2工程で、上記薄い第1のニッケルめっき層の表面に、無電解ニッケルめっきまたは電解ニッケルめっきにより第2のニッケルめっき層を形成し、ポリイミド樹脂フィルムの各面において、上記薄い第1のニッケルめっき層の厚みと第2のニッケルめっき層の厚みの合計がそれぞれ0.2〜1.0μmの範囲になるようにするという構成をとる。
すなわち、本発明のフレキシブルプリント基板の製法では、まず、ポリイミド樹脂フィルムの両面をアルカリ金属水酸化物により表面処理するのに先立って、そのポリイミド樹脂フィルムの両面をプラズマ処理または短波長紫外線処理している。これにより、その表面処理を軽度にし、アルカリに弱いポリイミド樹脂フィルムに対する影響を少なくしている。さらに、その後に行われる表裏両面のニッケルめっき層の形成を2工程に分け、まず、ポリイミド樹脂フィルムの両面に、無電解ニッケルめっきにより厚みがそれぞれ0.01〜0.1μmの範囲の薄い第1のニッケルめっき層を形成している。このように第1のニッケルめっき層は、厚みが0.01〜0.1μmの範囲と薄いため、粒状に析出したニッケル粒子間に多数の微細孔が貫通した状態になっていると考えられる。このため、上記第1のニッケルめっき層がポリイミド樹脂フィルムの両面に形成されていても、その後の乾燥工程では、80〜150℃の範囲の低温の加熱により、ポリイミド樹脂フィルム内の水分が、通常、蒸気となって上記第1のニッケルめっき層の微細孔を通って蒸散するようになる。特に、この温度範囲(80〜150℃)の加熱では、ポリイミド樹脂フィルムと第1のニッケルめっき層との界面がより安定化し、両者間の接着力がより強固になる。さらに、その後の第2のニッケルめっき層の形成工程等では、上記第1のニッケルめっき層が、ポリイミド樹脂フィルムの水分吸収を防止する(水の状態では蒸気と比較して粒子が大きく、移行速度が小さいため、第1のニッケルめっき層で水の浸入が遮断される)。このため、作製されたフレキシブルプリント基板に高温短時間の熱負荷が加わっても、水分の急膨張によるポリイミド樹脂フィルムと第1のニッケルめっき層との接着力低下が防止されると考えられる。しかも、その第2のニッケルめっき層の形成により、第1のニッケルめっき層の厚みと第2のニッケルめっき層の厚みの合計を0.2〜1.0μmの範囲にすると、長期の熱負荷時の銅の拡散移行に対するバリア性に優れ、そのフレキシブルプリント基板が耐熱性に優れたものとなる。
本発明のフレキシブルプリント基板の製法によれば、ポリイミド樹脂フィルムの両面をプラズマ処理または短波長紫外線処理した後にアルカリ金属水酸化物を用いて表面処理しているため、その表面処理を軽度にすることができ、アルカリに弱いポリイミド樹脂フィルムに対する影響を少なくすることができる。しかも、その後、ポリイミド樹脂フィルムの両面に厚みが0.01〜0.1μmの範囲と薄い第1のニッケルめっき層を形成した後に乾燥させるため、ポリイミド樹脂フィルム内の水分の蒸発を、80〜150℃の範囲の低温の加熱により行うことができる。そして、この温度範囲(80〜150℃)の加熱では、ポリイミド樹脂フィルムと第1のニッケルめっき層との界面をより安定化させることができ、両者間の接着力をより強固にすることができる。さらに、その後の第2のニッケルめっき層の形成工程等では、上記第1のニッケルめっき層が、ポリイミド樹脂フィルムの水分吸収を防止するため、作製されたフレキシブルプリント基板に高温短時間の熱負荷が加わっても、水分の急膨張によるポリイミド樹脂フィルムと第1のニッケルめっき層との接着力低下が発生し難くなっている。しかも、上記第2のニッケルめっき層の形成により、第1のニッケルめっき層の厚みと第2のニッケルめっき層の厚みの合計を0.2〜1.0μmの範囲にしているため、長期の熱負荷時の銅の拡散移行に対するバリア性に優れ、そのフレキシブルプリント基板が耐熱性に優れたものとなる。
特に、上記薄い第1のニッケルめっき層の厚みが、ポリイミド樹脂フィルムの各面において、それぞれ0.01〜0.1μmの範囲に設定される場合には、ポリイミド樹脂フィルム内の水分の蒸発および第2のニッケルめっき層の形成工程における水分吸収の防止の効率がより向上する。
また、上記薄い第1のニッケルめっき層の厚みと第2のニッケルめっき層の厚みの合計が、ポリイミド樹脂フィルムの各面において、それぞれ0.2〜1.0μmの範囲に設定される場合には、フレキシブル性を確保しつつ、長期の熱負荷時の回路の銅の拡散移行に対するバリア性をより確保することができる。
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明のフレキシブルプリント基板の製法の一実施の形態を示している。このフレキシブルプリント基板の製法は、ポリイミド樹脂フィルム1の両面をプラズマ処理または短波長紫外線処理した後、アルカリ金属水酸化物を用いて表面処理し、その後のニッケルめっき層2の形成を2工程に分け、その2工程の間に乾燥工程を入れる方法である。すなわち、第1工程で、上記表面処理したポリイミド樹脂フィルム1の両面に、無電解ニッケルめっきにより薄い第1のニッケルめっき層2aを形成した後、これを乾燥させ、つぎに第2工程で、上記薄い第1のニッケルめっき層2aの表面に、無電解ニッケルめっきまたは電解ニッケルめっきにより第2のニッケルめっき層2bを形成する。
より詳しく説明すると、上記表面処理に用いられるアルカリ金属水酸化物としては、特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等があげられる。また、上記表面処理に先立って、ポリイミド樹脂フィルム1の両面をプラズマ処理または短波長紫外線処理すると、アルカリ金属水酸化物による表面処理が効率的かつ均一に行われ、その表面処理を軽度(低いアルカリ濃度,低い処理温度,短い処理時間)にすることができる。これにより、アルカリに弱いポリイミド樹脂フィルム1に対する影響を少なくすることができる。
ついで、そのポリイミド樹脂フィルム1の両面に金属触媒を付与した後、還元剤を用いて還元処理する。上記金属触媒としては、特に限定されるものではなく、通常用いられるパラジウム,白金等があげられる。また、上記還元剤としては、特に限定されるものではなく、次亜リン酸ナトリウム,水素化ホウ素ナトリウム,ジメチルアミンボラン等があげられる。
つぎに、図1に示すように、そのポリイミド樹脂フィルム1の両面に無電解ニッケルめっきを施すことにより、上記薄い第1のニッケルめっき層2aを形成する。この無電解ニッケルめっきは、例えばアルカリニッケル液を用いて行われ、各面に形成される第1のニッケルめっき層2aの厚みは、通常、それぞれ0.01〜0.1μmの範囲に設定される。第1のニッケルめっき層2aの厚みが0.01μmよりも薄いと、第1のニッケルめっき層2aの形成が不充分であるため、第2のニッケルめっき層2bの形成の際に、ポリイミド樹脂フィルム1が水分を吸収し易くなる傾向にあり、0.1μmよりも厚いと、乾燥の際に、ポリイミド樹脂フィルム1内の水分の蒸発が困難になる傾向にあるからである。なかでも、好適には0.03〜0.06μmの範囲である。適度な厚みであるため、上記水分吸収の防止および水分蒸発の効率がバランスよく優れるとともに、第2のニッケルめっき層2bとの接着力が向上するからである。なお、上記第1のニッケルめっき層2aの厚みの設定は、無電解ニッケルめっきの処理時間やアルカリニッケル液の温度等を調整することにより行うことができる。
そして、上記アルカリニッケル液から取り出し、通常、温風吹き付けや乾燥機に入れる等して乾燥させる。この乾燥により、ポリイミド樹脂フィルム1内に含まれる水分を蒸発させる。この蒸発が可能となる理由は、ポリイミド樹脂フィルム1表面の第1のニッケルめっき層2aの厚みが薄く(通常、上記0.01〜0.1μmの範囲)、その第1のニッケルめっき層2aでは、図2の電子顕微鏡写真(6万倍)に示すように(図2では、約上半分が第1のニッケルめっき層2aを示し、約下半分がポリイミド樹脂フィルム1を示している)、粒状に析出したニッケル粒子間に多数の微細孔が貫通した状態になっているから、ポリイミド樹脂フィルム1内の水分は、通常、加熱により蒸気となって上記微細孔を通り外部に蒸散される。また、上記蒸発を短時間で完了させるために、上記乾燥の際の加熱は、80〜150℃の温風ないし雰囲気温度で行われる。加熱の温度が80℃を下回ると、加熱の効率が悪化する傾向にあり、150℃を上回ると、ポリイミド樹脂フィルム1内の水分が一度に気化して膨張し、ポリイミド樹脂フィルム1と第1のニッケルめっき層2aとの接着力が低下する傾向にあるからである。特に、上記加熱(80〜150℃の範囲)を行うと、ポリイミド樹脂フィルム1と第1のニッケルめっき層2aとの界面をより安定化させることができ、両者間の接着力をより強固にすることができる。また、乾燥に要する時間は、乾燥時の温度にもより、特に限定されないが、通常、0.5〜24時間程度である。
つぎに、図3に示すように、上記薄い第1のニッケルめっき層2aの表面に、第2のニッケルめっき層2bを形成する。この第2のニッケルめっき層2bの形成は、無電解ニッケルめっきまたは電解ニッケルめっきにより行われる。このうち、無電解ニッケルめっきを行う場合は、上記第1のニッケルめっき層2aの形成と同様にして行われるが、めっき温度は、40℃以上に設定されることが好ましい。40℃を下回ると、アルカリニッケル液等のニッケルめっき液の反応性が低下するため、無電解ニッケルめっき層(第2のニッケルめっき層2b)が形成され難いからである(ただし、第1のニッケルめっき層2aの形成は、厚みが薄くてもよいため、40℃を下回ってもよい。)。一方、電解ニッケルめっきを行う場合は、ワット浴,スルファミン酸浴等を用いて行われる。そして、上記第2のニッケルめっき層2bの形成の際には、いずれのめっきを行う場合でも、上記第1のニッケルめっき層2aが、水粒子の通過を遮断し、ポリイミド樹脂フィルム1の水分吸収を防止する。また、上記第1のニッケルめっき層2aの表面に、上記第2のニッケルめっき層2bを形成することにより、ニッケルめっき層(第1のニッケルめっき層2aと第2のニッケルめっき層2bとの積層体)2の厚みを厚くすることができる。このニッケルめっき層2の厚みは、特に限定されないが、フレキシブル性を確保しつつ、長期の熱負荷時の回路の銅の拡散移行に対するバリア性を確保できる観点から、ポリイミド樹脂フィルム1の各面において、それぞれ0.2〜1.0μmの範囲に設定される。
なお、上記のように、第2のニッケルめっき層2bの形成に先立って、第1のニッケルめっき層2aの表面を乾燥させると、一般に、その表面には酸化皮膜が形成され、その酸化皮膜が、後に形成される層(この実施の形態では、第2のニッケルめっき層2b)と第1のニッケルめっき層2aとの間の剥離の原因となるため、上記酸化皮膜を除去するために活性化処理を要するが、本発明では、上記第1のニッケルめっき層2aの表面乾燥後は、上記酸化皮膜を除去する活性化処理を施すことなく、引き続いて、第2のニッケルめっき層2bを形成しても、これら第1のニッケルめっき層2aと第2のニッケルめっき層2bとの間で剥離が発生しない。この理由は、明確ではないが、第1のニッケルめっき層2aが薄く、下地の触媒が部分的に露出しており、これを起点に第2のニッケルめっき層2bが析出し、強固に結合するためと考えられる。ただし、必要に応じて、上記酸化皮膜の除去を確実にするために、活性化処理を施してもよい。この活性化処理には、例えば、塩酸,硫酸,フッ化水素酸等が用いられる。
このようにして、第2のニッケルめっき層2bが形成された後は、その表面に、例えば図4に示すように、銅めっき層3が形成される。そして、エッチング等により回路が形成され、フレキシブルプリント基板が作製される。上記回路形成は、サブトラクティブ工法でもセミアディティブ工法でもよい。
上記銅めっき層3の形成は、特に限定されないが、例えば、つぎのようにして形成することができる。すなわち、まず、上記第2のニッケルめっき層2bの表面を乾燥させる。この乾燥によりその表面には、酸化皮膜が形成される。ついで、上記第2のニッケルめっき層2bと後に形成する銅めっき層3との剥離を防止するために、その酸化皮膜を活性化処理により除去する。この活性化処理には、例えば、塩酸,硫酸,フッ化水素酸等が用いられる。その後、電解銅めっき浴に浸け、回路形成用の銅めっき層3を形成する。この電解銅めっき浴としては、例えば、硫酸銅めっき浴等があげられる。
上記銅めっき層3の形成は、他の方法でもよく、例えば、まず、上記第2のニッケルめっき層2bの表面が湿潤した状態のまま水洗し、さらに、その水洗の水で湿潤した状態のまま、電解銅めっき浴に浸け、電解銅めっきする。この電解銅めっき浴としては、ピロリン酸銅めっき浴が好ましい(形成される銅めっき層の厚みを薄くしても、厚みの均一性に優れるからである。)。これにより、厚み0.1〜1.0μm程度の薄い銅めっき層(図示せず)を形成する。ついで、その表面に、回路形成用の厚い銅めっき層(図示せず)を形成する。この厚い銅めっき層は、電解銅めっきにより形成することができるが、この電解銅めっきには、例えば、硫酸銅めっき浴,ピロリン酸銅めっき浴等を用いることができる。このような方法では、上記第2のニッケルめっき層2bの表面が湿潤した状態のまま上記薄い銅めっき層が形成されるため、上記第2のニッケルめっき層2bの表面に酸化皮膜が形成されない。このため、上記活性化処理を行わなくても、第2のニッケルめっき層2bと銅めっき層3との間で剥離が発生することはない。また、上記薄い銅めっき層を形成した後は、その表面を乾燥させ保管しておき、その後で、必要時に必要量取り出して、必要な厚みまで厚い銅めっき層を形成することもできる。このことから、サブトラクティブ工法,セミアディティブ工法の両方に使用できる。
このように、本発明のフレキシブルプリント基板の製法によれば、ポリイミド樹脂フィルム1の両面に、まず、薄い第1のニッケルめっき層2aを形成した後、これを乾燥させ、つぎに、上記薄い第1のニッケルめっき層2aの表面に、第2のニッケルめっき層2bを形成しているため、上記乾燥が容易となるとともに、第2のニッケルめっき層2bの形成の際に、ポリイミド樹脂フィルム1の水分吸収を防止することができ、しかも、ニッケルめっき層2の厚みを厚くすることができる。その結果、作製されたフレキシブルプリント基板では、ポリイミド樹脂フィルム1内に水分が殆どなく、高温短時間の熱負荷時でも、ポリイミド樹脂フィルム1の膨張およびポリイミド樹脂フィルム1と無電解めっき層との接着力低下が発生し難くなっている。しかも、厚いニッケルめっき層2により、長期の熱負荷時の銅の拡散移行に対するバリア性に優れ、そのフレキシブルプリント基板は耐熱性に優れたものとなっている。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
〔実施例1〕
下記に示すようにして、フレキシブルプリント基板を作製した。
〔表面処理〕
まず、20cm×20cmのポリイミド樹脂フィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100EN)を、紫外線表面改質装置(センエンジニアリング社製)にセットし、上記ポリイミド樹脂フィルムの両面を短波長紫外線処理した。このとき、短波長紫外線照度を15mW/cm2 、出力を200W、処理時間を30秒とした。つづいて、50g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、上記ポリイミド樹脂フィルムの両面を25℃で2分間表面処理した。
〔触媒付与および還元処理〕
上記表面処理したポリイミド樹脂フィルムの両面を、OPC−50インデューサー(奥野製薬工業社製)にて40℃で5分間処理することにより、触媒付与を行った後、OPC−150クリスター(奥野製薬工業社製)にて25℃で5分間処理することにより、還元処理を行った。
〔薄い第1のニッケルめっき層の形成〕
つづいて、アルカリニッケル液(奥野製薬工業社製、TMP−化学ニッケル)にて40℃で0.5分間無電解ニッケルめっきを行い、ポリイミド樹脂フィルムの各面に、厚み0.01μmの第1のニッケルめっき層をそれぞれ形成した。
〔乾燥〕
その後、乾燥オーブンにて100℃で30分間乾燥を行った後、乾燥オーブンから取り出した。
〔第2のニッケルめっき層の形成〕
つづいて、上記アルカリニッケル液にて40℃で6分間無電解ニッケルめっきを行い、各第1のニッケルめっき層の表面に第2のニッケルめっき層を形成し、ポリイミド樹脂フィルムの各面において、ニッケルめっき層の厚みをそれぞれ0.3μmとした。その第2のニッケルめっき層を形成した後、その表面を乾燥させた。
〔活性化処理〕
ついで、トップ酸(奥野製薬工業社製)の100g/リットル水溶液を用いて25℃で1分間活性化処理した。
〔回路形成用の銅めっき層の形成〕
つづいて、硫酸銅めっき浴にて電流密度2A/dm2 で50分間電解銅めっきを行い、厚み20μmの回路形成用の銅めっき層を形成した。
〔実施例2〕
上記実施例1の第1のニッケルめっき層の形成において、無電解ニッケルめっきを1分間行い、厚み0.05μmの第1のニッケルめっき層を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
〔実施例3〕
上記実施例1の第1のニッケルめっき層の形成において、無電解ニッケルめっきを2分間行い、厚み0.1μmの第1のニッケルめっき層を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
〔実施例4〕
上記実施例2の第2のニッケルめっき層の形成において、アルカリニッケル液を用いた無電解ニッケルめっき代えて、下記のようなワット浴にて、電流密度1A/dm2 で1分間電解ニッケルめっきを行った。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
〔ワット浴の液組成,pH,温度〕
硫酸ニッケル :250g/リットル
塩化ニッケル : 45g/リットル
ほう酸 : 40g/リットル
ピット防止剤(奥野製薬工業社製、アクナH) : 2ml/リットル
一次光沢剤(奥野製薬工業社製、Mu−2) : 5ml/リットル
pH:4.2
温度:50℃
〔実施例5〕
上記実施例1において、第2のニッケルめっき層の形成後、その表面がアルカリニッケル液で湿潤した状態のまま水洗し、その後、その表面が水で湿潤した状態のまま、ピロリン酸銅浴に浸けた。そして、電流密度1A/dm2 で電解銅めっき(55℃×2分間)を行い、厚み0.2μmの薄い銅めっき層を形成した。その後、硫酸銅めっき浴にて厚み20μmの回路形成用の銅めっき層を形成した。この実施例5では、上記実施例1における活性化処理を行わなかった。
〔比較例1〕
上記実施例1において、第1のニッケルめっき層の厚みを0.3μmとし、第2のニッケルめっき層は形成しなかった。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
なお、実施例1〜5および比較例1において、ニッケルめっき層の厚みは、つぎのようにして求めた。すなわち、ニッケルめっき層を形成した後、その一部を切断し、その断面を電子顕微鏡(日立製作所製、走査電子顕微鏡S−4100)により拡大視察(6万倍)を行い、直接厚みを測定した。そして、この測定をそれぞれ任意の10点の位置で行い、その平均値を採用した。
このようにして得られた実施例1〜5および比較例1の各銅めっき基板から1cm×5cmの帯状に切り取ったものに対して、引張試験機(オリエンテック社製)を用い、銅めっき層の引き剥がしにて180°ピール強度測定を初期と高温短時間の熱負荷後と長期の熱負荷後とで行った。ここで、初期とは、熱負荷をかける前のものが対象となっており、高温短時間の熱負荷後とは、上記各銅めっき基板から5cm×5cmに切り取ったものを、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬した(高温短時間の熱負荷)後、そこから上記1cm×5cmに切り取ったものが対象となっており、長期の熱負荷後とは、上記各銅めっき基板から5cm×5cmに切り取ったものの片面の金属層(第1および第2のニッケルめっき層ならび銅めっき層)を塩化銅エッチングにより除去し、150℃×168時間のオーブン加熱を行った(長期の熱負荷)後、そこから上記1cm×5cmに切り取ったものが対象となっている。そして、これらの結果を下記の表1に表記した。なお、上記長期の熱負荷において、その対象となるものの片面の金属層を除去した理由は、その金属層の除去により、露出したポリイミド樹脂フィルム面から酸素を透過させるためである。すなわち、酸素を透過させることにより、ポリイミド樹脂フィルムとニッケルめっき層との界面にて、その透過させた酸素と、銅めっき層からニッケルめっき層を経て拡散移行した銅とを結合させて酸化銅からなる脆弱層を形成することで接着力を促進的に低下させている。
下記の表1において、ポリイミド樹脂フィルム内の残存水分率は、上記実施例1〜5および比較例1の各銅めっき基板から50mm×50mmに切り取ったものを、微細(2mm×2mm)に裁断し、電気炉にて250℃で30分間加熱を行い、その加熱前後の重量変化を水分率として算出した。
上記表1の結果より、実施例1〜5の銅めっき基板は、比較例1と比較すると、ポリイミド樹脂フィルム内の残存水分率が低いことがわかる。また、接着力については、初期および長期の熱負荷後は、実施例1〜5と比較例1とは、同程度であるが、高温短時間の熱負荷後は、実施例1〜5の方が比較例1よりも大きいことがわかる。そして、これらのことから、ニッケルめっき層の厚みが上記表1の厚み(0.3μm:長期の熱負荷時の銅の拡散移行に対するバリア性が確保できる厚み)であれば、ニッケルめっき層の形成を1工程で行っても(比較例1)、2工程に分けて行っても(実施例1〜5)、接着信頼性を有することがわかる。しかし、1工程で上記厚み(0.3μm)にすると(比較例1)、ポリイミド樹脂フィルム内の水分の蒸発が困難になり、高温短時間の熱負荷後の接着力に悪影響を及ぼすことがわかる。
また、実施例2の銅めっき基板を、集束イオンビーム(日立ハイテクノロジーズ社製、FB−2100)を用いて断面出しを行い、透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、HD−2000)を用いて上記断面を15万倍にして観察を行った。その透過電子顕微鏡写真を図5に示す。この写真から、ポリイミド樹脂フィルムの表面に、第1のニッケルめっき層,第2のニッケルめっき層および銅めっき層が順に積層されているのが確認できる。
本発明のフレキシブルプリント基板の製法の一実施の形態を示す説明図である。 上記フレキシブルプリント基板の製法における第1のニッケルめっき層を示す電子顕微鏡写真(6万倍)である。 上記フレキシブルプリント基板の製法を示す説明図である。 上記フレキシブルプリント基板の製法を示す説明図である。 実施例2の銅めっき基板の断面における第1のニッケルめっき層,第2のニッケルめっき層および銅めっき層の積層状態を示す透過電子顕微鏡写真(15万倍)である。
符号の説明
1 ポリイミド樹脂フィルム
2a 第1のニッケルめっき層
2b 第2のニッケルめっき層
3 銅めっき層

Claims (1)

  1. ポリイミド樹脂フィルムの両面にニッケルめっき層を形成し、各ニッケルめっき層の表面に回路形成用の銅めっき層を形成する工程を備えたフレキシブルプリント基板の製法において、上記ニッケルめっき層の形成に先立って、ポリイミド樹脂フィルムの両面をプラズマ処理または短波長紫外線処理した後、アルカリ金属水酸化物を用いて表面処理し、その後、上記ニッケルめっき層の形成を2工程に分け、第1工程で、無電解ニッケルめっきにより、ポリイミド樹脂フィルムの各面に、厚みがそれぞれ0.01〜0.1μmの範囲の薄い第1のニッケルめっき層を形成した後、これを80〜150℃の範囲の加熱により乾燥させ、つぎに第2工程で、上記薄い第1のニッケルめっき層の表面に、無電解ニッケルめっきまたは電解ニッケルめっきにより第2のニッケルめっき層を形成し、ポリイミド樹脂フィルムの各面において、上記薄い第1のニッケルめっき層の厚みと第2のニッケルめっき層の厚みの合計がそれぞれ0.2〜1.0μmの範囲になるようにすることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製法。
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