JP3825132B2 - 石炭灰の固化材及び固化方法 - Google Patents

石炭灰の固化材及び固化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭灰(フライアッシュ)の資材としての利用性を高めるために石炭灰を粒子状に固める石炭灰の固化材、及び石炭灰の固化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
国内の石炭火力発電所で発生する石炭灰(フライアッシュ)は、一部がフライアッシュセメントなどに利用されているにすぎず、大部分は海面埋め立てなどで処理されていることから、その再利用法が検討されている。
【0003】
石炭灰の資材としての利用性を高めるためには、一つに、石炭灰を固化、特に取り扱いやすい粒状化にすることが考えられる。
【0004】
例えば、特開平8―243527号公報に、石炭灰に、カルボキシル基を有する繰り返し単位を全繰り返し単位の2〜80モル%有する水溶性高分子及び水を混合して、石炭灰を粒状化する方法が開示されている。カルボキシル基を有する繰り返し単位を全繰り返し単位の2〜80モル%を有する水溶性高分子としては、アクリル酸又はその塩からなる繰り返し単位を含むアクリルアミド系重合体、メタクリル酸又はその塩からなる繰り返し単位を含むメタクリルアミド系重合体などがあり、その具体的実施例として、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムの共重合体が例示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリアクリルアミド、又はポリアクリル酸を塩の形で含む水溶性ポリマーは、水に溶解させると、曳糸性、凝集性が強力であるため、生成した石炭灰の粒子にも曳糸性、凝集性が表われ、長期間放置しておくと粒子同士がくっついたり、掬おうとするとその曳糸性により掬いにくくなってしまうという欠点がある。このため、結局、石炭灰の資材としての利用を制限することになる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ねばつきがなく、長期間放置していても粒子状を保持し、取り扱いやすい石炭灰の固化材、及び固化方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、石炭灰がアルカリ性であることに注目した結果、完成された。すなわち、本発明者らは、石炭灰の表面を酸で中和すると、石炭灰同士が凝集しやすくなるとともに、水溶性ポリマーとの親和性も増加することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の石炭灰の固化材は、水溶性ポリマーと、無機酸及び/又は有機酸とを含むことを特徴とする。前記水溶性ポリマーは、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を繰り返し単位とするポリマーであることが好ましい。また、必要に応じて、水硬性物質を含んでいてもよい。
【0009】
本発明に係る第1の石炭灰の固化方法は、水硬性物質を含んでいない固化材を用いる方法で、石炭灰に固化材及び水を混合することにより、石炭灰を粒状化することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第2の石炭灰の固化方法は、水硬性物質を含む固化材を用いる方法で、石炭灰に、水溶性ポリマー;無機酸及び/又は有機酸;並びに水を混合して石炭灰を粒状化した後、水硬性物質を添加混合することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る石炭灰の固化材は、水溶性ポリマーと、無機酸及び/又は有機酸とを主成分とする。
【0012】
ここで、本発明に用いられる水溶性ポリマーは、水溶性のポリマーであれば、その種類は特に限定せず、ノニオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーのいずれも用いることができる。ノニオン性水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル型ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等の第1級アミド型含有ポリマー;ポリビニルピロリドン等のラクタム含有ポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基含有ポリマー;ビーガム、ヒドロキシエチルセルロース等の天然のノニオン型水溶性ポリマー又はこれらの水溶性ポリマーを構成する単量体成分を2種以上含む共重合体などが挙げられる。
【0013】
アニオン性水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンのスルホン化物等のスルホン基含有ポリマー;アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース等の天然のアニオン性水溶性ポリマー若しくはこれらの水溶性ポリマーを構成する単量体成分を2種以上含む共重合体、又はこれらの金属塩などが挙げられる。
【0014】
カチオン性水溶性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン等のアミン型ポリマー;ポリビニルピリジン等のピリジン含有ポリマー;ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の第4級アンモニウム塩含有ポリマー;キトサン等の天然のカチオン性水溶性ポリマー、又はこれらの塩などが挙げられる。
【0015】
これらのうち、カルボキシル基を有するモノマーを重合して得られる水溶性ポリマー(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸/メタクリル酸共重合体など)又はこれらの塩は、安全で且つ粘ついた感じがなく、さらっとした粉末であることから好ましく用いられる。
【0016】
前記水溶性ポリマーの重量平均分子量は、5万〜5000万が好ましく、特に50万〜1000万であることが好ましい。一般に重量平均分子量が大きくなるほど、水溶液自体がねばつく傾向にあり、得られる石炭灰の固化物の粒子径が大きくなる傾向にある。また、重量平均分子量が1000万を超えると、水への溶解性が悪くなり、固化材として利用しにくくなる。
【0017】
このような水溶性ポリマーは、本発明の固化材において、主たる成分を構成している。そして、上記水溶性ポリマーは、粉体で用いてもよいし、水溶液の状態で用いてもよい。
【0018】
本発明に用いられる無機酸は、水に溶解してプロトンを放出できる無機化合物で、具体的には、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン含有酸素酸;硝酸、亜硝酸等の窒素含有酸素酸;硫酸、亜硫酸等の硫黄含有酸素酸;オルトモリブデン酸、メタモリブデン酸等のモリブデン含有酸素酸;タングステン酸等のタングステン含有酸素酸;塩酸、臭酸等のハロゲン酸;硫化水素;重硫酸ナトリウム、重硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の1つの水素原子がアルカリ金属に置換された2塩基酸;重硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム等の1つの水素原子がアンモニウムイオンに置換された2塩基酸などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる有機酸は、水に溶解してプロトンを放出できる有機化合物で、具体的には、ぎ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、オクチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;グリオキシル酸等のカルボニル基含有カルボン酸;酒石酸等の水酸基含有カルボン酸;ナフテン酸等の環状飽和カルボン酸;安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;チオ酢酸、チオ安息香酸、チオサリチル酸等のチオール基含有カルボン酸;ピコリン酸等のピリジン含有カルボン酸;無水酢酸、無水酪酸、無水プロピオン酸等のモノカルボン酸無水物;無水フタル酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価カルボン酸無水物;メタンスルホン酸、p―トルエンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。
【0020】
本発明の石炭灰の固化材において、上記無機酸又は有機酸が単独で含まれているもよいし、2種以上混合でふくまれていてもよい。また、無機酸と有機酸とを併用してもよい。
【0021】
本発明の石炭灰の固化材における上記無機酸及び/又は有機酸(以下、無機酸と有機酸とを区別することなくいうときは、単に「酸」という)の含有量は、水溶性ポリマー、酸の種類により異なり、特に限定しないが、石炭灰100重量部に対して0.01〜10重量部となる量が好ましい。なお、2種以上の酸を混合して用いる場合には、酸総量が上記範囲となるように、含有される。
【0022】
また、本発明の固化材において、上記酸が溶液である場合はそのままで含有されていてもよいし、水で希釈した水溶液として含有されていてもよい。無機酸又は有機酸が粉末の場合には、粉末のまま使用してもよいし、水に溶解させて水溶液の状態で含有されていてもよい。
【0023】
また、上記水溶性ポリマーと酸とは、▲1▼予め均一に混合された状態で固化材を構成していてもよいし、▲2▼両者が混合されずに別々の容器に収容された状態で固化材を構成していて、使用直前に混合、あるいは使用時に順次石炭灰に添加するようにしてもよい。
【0024】
本発明にかかる石炭灰の固化材は、水溶性ポリマーと、無機酸及び/又は有機酸とからのみ構成されていてもよいし、さらに第3の構成物質として水硬性物質を含んでいてもよい。固化材に水硬性物質が含まれる場合には、高強度の石炭灰の固化物が得られるので、強度を要求される資材用の粒状石炭灰の製造に用いることができる。
【0025】
ここで、本発明に用いられる水硬性物質としては、公知の各種セメント、各種石灰、石膏が挙げられる。例えば、各種セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等のポルトランドセメントとの混合セメント;アルミナセメント、超早強セメント、ジェットセメント等の特殊セメントが挙げられる。各種石灰としては、生石灰、消石灰などが挙げられる。各種石膏としては、半水石膏、無水石膏などが挙げられる。これらのセメント、石灰、又は石膏は単独で添加してもよいし、併用してもよい。
【0026】
固化材の構成物質として水硬性物質が含まれている場合、固化材の他の構成物質(水溶性ポリマー及び酸)と水硬性物質とが別々の容器に収容されていて、他の構成物質と石炭灰とを混合した後、水硬性物質を添加混合することになる。
【0027】
本発明の固化材において水硬性物質が含まれいてる場合、水硬性物質の含有量は、石炭灰100重量部に対して、水硬性物質が1〜30重量部となる量が好ましく、上記範囲のうち、生成される固化物の強度に応じて適宜選択すればよい。但し、石炭灰100重量部に対する水硬性物質の量が30重量部を超えると、固化物の強度が下がることがあり、また、経済的にも好ましくない。
【0028】
次に、本発明の固化物を用いて石炭灰を固化する方法について説明する。
【0029】
はじめに、水硬性物質が含まれていない固化材を用いる場合の固化方法(固化方法(A))について説明する。固化材が主として水溶性ポリマーと酸とから構成される場合には、石炭灰に、固化材及び水を添加して混合する。
【0030】
固化材の添加量は、石炭灰100重量部に対して、水溶性ポリマー0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部となり、且つ酸が0.01〜10重量部となるような量である。
【0031】
また、水の添加量は、石炭灰100重量部に対して、10〜200重量部、好ましくは20〜80重量部となる量である。固化材にすでに水が含まれている場合には、固化材に含まれている水量との合計量が上記範囲となる量を添加することになる。水の添加量が10重量部未満では、石炭灰は粉末状態からたいした変化が認められず、200重量部を上まわると、スラリー状となって、十分硬化しないからである。
【0032】
水と固化材との添加順序は特に限定しない。例えば、▲1▼まず、水と石炭灰とを混合した後、固化材を添加混合してもよいし、▲2▼予め固化材と水とを混合してなる水溶液状の固化材として石炭灰に添加混合してもよいし、▲3▼あるいは石炭灰と固化材とを均一に混合した後、その混合物に水を添加してもよい。これらのうち均一な混合が容易な▲1▼又は▲2▼の方法が好ましい。
【0033】
混合方法は特に限定しないが、一般に、原料を回転しながら混合できる攪拌機や混合機等の機械、例えばモルタルミキサー、ホバート型ミキサー、2軸の混練ミキサーなどの混合機を用いて行えばよい。
【0034】
以上のようにして、石炭灰に、水及び水溶性ポリマー及び酸を添加混合すると、まず石炭灰の表面電荷が固化材に含まれる無機酸又は有機酸によって中和される。すなわち、石炭灰は、二酸化けい素、酸化アルミニウム、酸化鉄等のアルカリ性化合物で構成されることから、水溶液中で、酸により中和されることになる。酸により中和された石炭灰、すなわち、表面が改質された石炭灰は、疎水性が増大して、石炭灰同士が凝集しやすくなるとともに、固化材に含まれる水溶性ポリマーとの親和性も増大して、水を含んだ形で凝集し、粒状になる(粒状化)。
【0035】
次に、さらに水硬性物質が含まれている固化材を用いる場合の固化方法(固化方法(B))を説明する。
【0036】
固化方法(B)においても、石炭灰100重量部に対する水溶性ポリマー及び酸の添加量は固化方法(A)の場合と同様である。
【0037】
石炭灰100重量部に対する水硬性物質の添加量は、1〜30重量部である。水硬性物質の添加量が30重量部を上まわると、粒子同士も凝集させて、塊状にしてしまうからである。
【0038】
水硬性物質は、水と反応して硬化する性質があることから、石炭灰を粒状化させた後、混合する必要がある。従って、固化方法(B)は、まず石炭灰と水溶性ポリマーと酸と水とを、上記方法(A)により混合した後、該混合物表面をまぶすように、水硬性物質を上記量だけ添加する方法である。
【0039】
すなわち、固化方法(B)では、酸及び水溶性ポリマーの作用により、石炭灰が水を含んだ状態で粒状化しているところに、水硬性物質を添加混合することになる。従って、水硬性物質が、各粒状石炭灰中に含まれている水と反応して硬化し、各石炭灰粒子が硬く、強度的に優れた粒子となる。
【0040】
なお、本発明の固化方法(A)、(B)のいずれにおいても、生成される石炭灰の粒子径は、使用する固化材の種類(水溶性ポリマー及び/又は酸の種類、水溶性ポリマーの分子量、水硬性物質の有無など)、固化材の添加量及び水の量により異なり、これらを調整することによって、砂状から砂利状にまで適宜選択することができる。
【0041】
本発明の方法により粒状に固化された石炭灰は、各粒子がさらさらとした感じで、長時間放置していても粒子同士が凝集して塊状になることもなく、種々の骨材等に利用しやすくなる。さらに、水硬性物質を添加した場合に得られる粒状石炭灰は、水硬性物質の硬化作用により、高硬度で、強度的にも優れている。よって、ある程度の強度を要求される用途の骨材にも使用可能となる。
【0042】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
【0043】
実施例1:
固化材として、重量平均分子量が200万で粒子径0.03〜0.3mmのポリアクリル酸ソーダ6.6g(石炭灰に対して0.2重量%に相当)、及び硫酸(10%水溶液)3gの混合溶液を用いた。
【0044】
釣り針状のフック型攪拌翼を備えたプラネタリ式混合機(西日本試験機製作所)に、石炭灰3.3kgと水1.7kgを仕込み、160rpmで攪拌した。この状態では、流動性のある高粘度のスラリーであった。
【0045】
この石炭灰のスラリーに、上記固化材を少しづつ添加混合し、細粒化した。得られた石炭灰粒子は粒子径が0.3〜5mmの範囲で、平均粒子径は1mmであった。
【0046】
実施例2〜4、および参考例1:
石炭灰及び水の仕込み量、固化材に含まれている水溶性ポリマーの種類、分子量及び添加量、並びに酸の種類及び含有量の少なくともいずれか1つを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、石炭灰の粒子を得た。得られた石炭灰粒子の性状、及び平均粒子径は表1に示す通りである。
【0047】
実施例6〜7、および参考例2:
用いた固化材は、表1に示す水溶性ポリマー及び酸の他、表2に示す水硬性物質を表2に示す量だけ含有するものを用いた。
【0048】
まず、実施例1と同じようにして、石炭灰及び水を表1に示す量だけ仕込み、混合攪拌した。次いで、水溶性ポリマー及び無機酸の混合液を少しづつ添加混合して細粒化した。続いて、表2に示す水硬性物質を表2に示す量だけ少しづつ添加混合した。得られた石炭灰粒子の性状、及び平均粒子径は表1に示す通りである。
【0049】
なお、表1及び表2において、石炭灰、水、水溶性ポリマー、水硬性物質の添加量の単位はいずれもgである。また、固化材において、硫酸及び硝酸は10%水溶液の状態で含有されており、含有量も水溶液状態での量が示されている。一方、亜硫酸水素ナトリウム、重硫酸ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムについては、固化材において粉末の状態で含有されいる。
【0050】
【表1】
Figure 0003825132
【0051】
【表2】
Figure 0003825132
【0052】
比較例1:
実施例1で調製した石炭灰3.3kg及び水1.7kgの混合液に、10%の硫酸水溶液のみを添加混合した。硫酸添加前と同様にスラリー状であった。
【0053】
比較例2、3:
石炭灰と水の仕込み量を表3に示すように変更した石炭灰水溶液に、表3に示す水溶性ポリマーのみを表3に示す量だけ添加し、実施例1と同様にプラネタリ式混合機を用いて混合した。表3に示すように、いずれも塊状となった。
【0054】
比較例4、5;
石炭灰及び水を実施例1と同様の量だけ仕込み、実施例1と同様にして混合攪拌した。次いで、表3に示す水溶性ポリマーを添加混合した後、表3に示す水硬性物質を添加した。表3に示すように、いずれも塊状となった。
【0055】
なお、表3において、石炭灰、水、水溶性ポリマー、水硬性物質の添加量の単位はいずれもgである。
【0056】
【表3】
Figure 0003825132
【0057】
表3からわかるように、石炭灰と水との混合液に酸を添加しただけでは、石炭灰は硬化又は凝集せず、スラリー状の溶液になるだけであった(比較例1参照)。一方、石炭灰と水の混合液に水溶性ポリマーを添加しただけでは粒子全体が凝集して塊状となってしまい、取り扱い不便であった(比較例2、3参照)。さらに、水溶性ポリマーと水硬性物質とを添加混合した場合にも、全体が塊状となった(比較例4、5参照)。
【0058】
一方、表1に示すように、無機酸又は有機酸と、水溶性ポリマーとで構成される固化材を用いた場合には、いずれも粒子状の石炭灰が得られた(実施例1〜4)。特に、実施例1と比較例2とから、酸と水溶性ポリマーとの併存により粒状とすることができることがわかる。なお、酸は水溶液として添加しても、粉末で添加しても特に違いは認められなかった(実施例1、2と実施例4との比較参照)。
【0059】
水硬性物質を添加した場合、水溶性ポリマー(ポリアクリル酸ソーダ)が存在していても酸の不在下では塊状となるのに対し、予め酸及び水溶性ポリマーが併存していると塊状とならないことがわかる(比較例5と実施例6との比較)。
【0060】
また、実施例1と実施例2とから、水溶性ポリマーの組成、酸の種類が同じであっても、水溶性ポリマーの分子量、酸の添加量によって、粒径が異なることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る石炭灰の固化材は、水溶性ポリマーとともに酸を含んでいるので、曳糸性、凝集性が高い水溶性ポリマーの存在下であっても、石炭灰が取り扱いやすい粒子状として得られる他、生成される粒子自体もさらさらした感じで、凝集したりすることなく、長時間放置しても、粒子状を維持することができる。
【0062】
また、本発明にかかる固化材において、水溶性ポリマー及び酸の種類、及び量をかえることにより、生成される石炭灰粒子の大きさを用途等に応じて変えることができる。
【0063】
さらに、水硬性物質を含有している固化材では、高強度な石炭灰粒子を得ることができる。
【0064】
また、本発明の石炭灰の固化方法によれば、本発明の固化材及び水との添加混合により、容易に石炭灰を粒状化することができる。
【0065】
本発明の固化方法により得られる粒状石炭灰は、有機酸又は無機酸の作用により石炭灰の表面が改質され、粒子内の石炭灰との親和性が増大していることから、水溶性ポリマー単独で認められた曳糸性、凝集性が抑制されているので、石炭灰粒子として、さらっとした感じで、粒子同士が曳糸性を示すことなく取り扱い性がよい。さらに、水硬性物質を添加した場合に得られる粒状石炭灰は、高硬度、高強度で、強度を要求される骨材等の用途にも用いることができる。

Claims (6)

  1. カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を繰り返し単位とし、重量平均分子量が50万〜1000万である水溶性ポリマーと、無機酸及び/又は有機酸とを含むことを特徴とする石炭灰の固化材。
  2. さらに水硬性物質を含む請求項に記載の石炭灰の固化材。
  3. 石炭灰に、請求項1に記載の固化材及び水を混合することにより、石炭灰を粒状化することを特徴とする石炭灰の固化方法。
  4. 石炭灰に、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を繰り返し単位とし、重量平均分子量が50万〜1000万である水溶性ポリマー;無機酸及び/又は有機酸;並びに水を混合して石炭灰を粒状化した後、水硬性物質を添加混合することを特徴とする石炭灰の固化方法。
  5. 石炭灰100重量部に対する前記無機酸及び/又は有機酸の添加量を0.01〜10部とする請求項3又は4に記載の石炭灰の固化方法。
  6. 石炭灰100重量部に対する前記水硬性物質の添加量を1〜30重量部とする請求項4又は5に記載の石炭灰の固化方法。
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