JP3824368B2 - トルクセンサ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば産業ロボットの減速機等として用いられる波動減速機構等において伝達されるトルクを検出するトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年産業ロボットは多用されているが、このロボットの制御において、関節部等のトルクを計測しこれを制御に利用することは、ロボットの制御性能を向上させる上で非常に有用である。また、計測トルクを用いて故障診断を行うようにすれば、安全性を向上させることができる。
このようなロボットに用いられる波動減速機構といった減速機等において生じる非線形摩擦はサーボ系の高速化、高精度化を阻害する要因の一つであり、この摩擦を検出トルクを用いて補償し、サーボ系の作動速度、精度を向上させることも考えられている。
【0003】
このように伝達トルクを計測することはロボットの制御等において非常に重要なことであり、従来から、種々の検出装置が用いられている。一例を挙げれば、歪ゲージを用いたトルク検出装置があり、この装置の場合には、例えば、波動減速機構のフレクスプラインの弾性変形を、歪ゲージを用いて検出してトルク検出が行われる。
【0004】
しかしながら、歪ゲージは衝撃等に弱いため、移動ロボット等のような関節部に衝撃がかかり易いものに用いるのが難しいという問題がある。
また、減速機構とは別体に構成されたトルクセンサを組み込んで用いることもあるが、このようなトルクセンサを用いるときには、新たに弾性要素を導入したり、ロボットの関節部の機構を変更しなければならない。ここで、弾性要素の追加は機構全体の剛性を低下させてロボットの性能を低下させるおそれがあるという問題があり、関節部の機構の変更は全体重量増加を招き、移動ロボット等の場合には駆動に必要なエネルギーが増加するという問題がある。
【0005】
このようなことから、本出願人は、特開平7−311102号に開示されているように、弾性体の表面に周方向に延びて接着され、この弾性体の弾性変形に応じてその磁気歪特性が変化する第1磁性体層と、この第1磁性体層上に重ねて配設され、磁気歪特性の変化を検出する平板状コイルと、この平板状コイルを覆って配設された第2磁性体層とから構成されるトルクセンサを発明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなトルクセンサの場合には、新たに弾性要素を追加したり、機構を変更したりする必要がなく、ひずみゲージを用いる必要もないのであるが、第1磁性体層が、接着剤を用いて弾性体の表面に接着されるものである場合には、この接着層により弾性体の弾性変形が第1磁性体層に伝わりにくくなり、正確な弾性変形の検出が難しいという問題が生じうる。すなわち、弾性体自体は伝達トルクに応じて弾性変形しても、接着剤層がこの変形の一部を吸収して第1磁性体層に伝達され、第1磁性体層の変形が小さくなり、トルク検出が不正確になるおそれがあるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みたもので、弾性体の弾性変形に正確に対応して磁性体が変形し、正確なトルク検出が可能なトルクセンサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的達成のため、本発明においては、入出力軸間に備えられた減速機構(例えば波動減速機構)を構成し出力軸と結合されて出力軸の側にトルク伝達可能でこのトルクを受けて弾性変形する略円筒状の弾性体にトルクセンサが設けられ、このトルクセンサが、弾性体の表面にスパッタリング、蒸着、溶射のうちのいずれか一つにより一体形成され、弾性体の弾性変形に応じてその磁気歪特性が変化する第1磁性体層と、第1磁性体層上に重ねて配設され磁気歪特性の変化を検出する平板状コイルと、平板状コイルを覆って配設された第2磁性体層とから構成される。さらに、第1磁性体層が弾性体の側面に略円盤状に形成され、第1磁性体層には第1磁性体層を構成する円盤の径方向中心を挟んで対称の位置に、円盤の周方向に対して左右対称の傾斜をもった一対のスリット列が複数個、円盤の同一円周上にそれぞれ離間して形成されており、平板状コイルは第1磁性体層のスリット列上に周方向に重ねて配設される。
【0009】
このような構成のトルクセンサは、減速機構等のトルク伝達部材(弾性体)の表面に第1磁性体層が一体形成される。このように第1磁性体層がトルク伝達部材の表面に一体形成されるため、弾性体の弾性変形がそのまま第1磁性体層に伝達され、第1磁性体層の磁気歪特性は伝達トルクに正確に比例して変化する。このため、本発明のトルクセンサでは非常に正確な伝達トルク検出が可能である。なお、このような第1磁性体層は、弾性体の表面にスパッタリング、蒸着、溶射のうちのいずれか一つにより一体に形成可能である。
【0010】
しかも、このトルクセンサは、2つの磁性体層と、これらに挟まれたプリント配線板から構成されており、厚さの薄い構成であるため、減速機構のトルク伝達部材(例えば、波動減速機構のフレクスプライン部材)の表面に直接設けることができ、減速機構を変更したり、新たな部品を追加することなく簡単に取り付けることが可能である。さらに、歪ゲージに比べて耐衝撃性能が高く、移動ロボットにのように衝撃が加わりやすい関節部等にも用いることが可能である。
【0011】
また、一対のスリット列の一方が円盤の周方向に対し右にほぼ45度の角度を有し、他方が円盤の周方向に対し左にほぼ45度の角度を有して設けられ、第1磁性体層の同一円周上において各々異なった角度を有するスリット列が交互に等間隔に並んで配設されるのが好ましい。
なお、第1磁性体層を、弾性体の表面に一定厚さを有して形成されたアモルファス層から形成し、この平面状アモルファス層に周方向に対し所定の傾斜角度を有した複数のスリットを周方向に並んで形成するのが好ましい。もしくは、第1磁性体層を、弾性体の表面に直線状平面形状を有して形成された複数の線状アモルファス層から形成し、この線状アモルファス層を周方向に対し所定の傾斜角度を有して周方向に並んで形成するのが好ましい。
【0012】
弾性体がトルクを受けて弾性変形するときに、この弾性体の表面における磁気歪は周方向に対して45度の方向において最大となり、磁気透磁率変化もこの方向において最大となる。このため、周方向に対して所定の傾斜角度、例えば、45度の角度を有した複数のスリットもしくは線状アモルファス層を周方向に並べて形成すれば、形状的な異方性効果が加わって弾性変形時における磁気透磁率変化が増幅されて表れるため、トルク検出をより正確に行うことができる。
また、上記構成のトルクセンサにおいて、第1磁性体層の同一円周上には、小円形内に整列した複数のスリット列が周方向にそれぞれ等間隔に並んで形成され、平板状コイルが、励磁コイルパターンが形成された励磁用プリント配線板と、検出コイルパターンが形成された検出用プリント配線板とが重ねて配設されたものからなり、励磁用プリント配線板に、第1磁性体層に重ねて配設されたときにスリット列に重なる位置に、渦巻き状に成形された複数の励磁コイルパターンが形成され、検出用プリント配線板に、第一磁性体層に重ねて配設されたときにスリット列および励磁コイルパターンに重なる位置に、渦巻き状に成形された複数の検出コイルパターンが形成されているのが好ましい。
【0013】
さらに、弾性体の弾性変化に伴って磁気歪特性を変化させる第1磁性体層に設けられた一対のスリット列の一方が周方向に対して右にほぼ45度の角度をもって形成され、他方が周方向に対して左にほぼ45度の角度をもって形成され、第一の磁性体層の同一円周上に異なった角度を有するスリット列を交互に等間隔に並べて配設し、検出コイルを、この一方の角度を有するスリット列に対向する第一の検出コイル層と他方の角度を有するスリット列に対向する第二の検出コイル層とに分割して構成することが望ましい。
【0014】
弾性体がトルクを受けて弾性変形するとき、この弾性体の表面における磁気歪は周方向に対して45度の方向において最大となり、透磁率変化もこの方向において最大となるため、前述したように、周方向に対して45度の角度を有した複数のスリット列を同一円周上に並べて形成すれば、形状的な異方性効果が加わって弾性変形時における透磁率変化が増幅して現れる。従って、スリット列をこの方向に設けることにより、トルク検出をより正確に行うことができる。
【0015】
さらに、上記構成のトルクセンサにおいて、複数の検出コイルパターンが、円盤の周方向に対して左右いずれかのうち一方に傾斜した第1のスリット列(例えば、実施形態におけるSA,SC,SE)が形成された第1磁性体層の部位に生じた弾性変形による引張応力に対応して生じた磁気歪特性の変化を検出する第1の検出コイル層と、円盤の周方向に対して左右いずれかのうち他方に傾斜した第2のスリット列(例えば、実施形態におけるSB,SD,SF)が形成された第1磁性体層の部位に生じた弾性変形による圧縮応力に対応して生じた磁気歪特性の変化を検出する第2の検出コイル層とから構成されるのが好ましい。
弾性変形時に第1磁性体層の表面には圧縮応力および引張応力が相反する方向に生じるため、上記のように左右それぞれ45度の角度を有するスリット列を交互に等間隔に配設すれば、第一の検出コイル層によって検出される誘導起電力と、第二の検出コイル層によって検出される誘導起電力とが絶対値として同一の出力値となり、かつ、正負逆に出力されるため、両起電力の差を検出することによりトルク検出をより正確に行うことができる。
【0016】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。
本発明に係るトルクセンサを備えた波動減速機構の一例を図1に示している。この機構は、内歯サーキュラースプライン1aが形成されたほぼ円筒状の支持ケース1とこの支持ケース1に結合されたフランジカバー2とに囲まれた空間内に、以下の部材をベアリング8a,8bにより回転自在に支持して構成される。なお、これら支持ケース1およびフランジカバー2は通常、固定保持される。波動減速機構は入力軸3の回転を非常に大きな減速比(数十から百数十といった非常に大きな減速比)で減速して出力軸13に伝達する機構であるが、この機構そのものは従来から公知であるので、この機構自体の説明は簡単に行う。
【0017】
入力軸3はベアリング8aを介してフランジカバー2により回転自在に支持されており、一端が外方に突出し、他端に楕円盤カム5が結合されている。この楕円盤カム5の外周に沿って複数の押圧ボール6aを等間隔で配設してウェーブジェネレータ6が構成されている。一方、出力軸13はベアリング8bを介して支持ケース1により回転自在に支持されるとともに、一端が支持ケース1の側面から外方に突出し、他端が支持ケース2内に配設されたフレクスプライン部材10に結合されている。
【0018】
フレクスプライン部材10は、弾性材料から形成された部材で、先端部に外歯フレクスプライン11を有するとともに、この外歯フレクスプライン11と出力軸13とを結合する円盤状底壁12aを有した薄肉円筒状のカップリング部12を有して構成される。外歯フレクスプライン11の内周面に沿ってウェーブジェネレータ6が位置するとともに、この外歯フレクスプライン11は内歯サーキュラースプライン1aと噛合する位置にある。
【0019】
ウェーブジェネレータ6において、楕円盤カム5はその楕円形状に対応してボール6aを外周方向に押し上げ、フレクスプライン11は楕円形に弾性変形される。このとき、フレクスプライン11における楕円の長軸に対応する部分が最も外周側に押し出されるように変形し、フレクスプライン11は180度離れた2箇所において内歯サーキュラースプライン1aと噛合する。
【0020】
以上の構成の波動減速機構において、入力軸3が回転駆動されるとこれに結合されたウェーブジェネレータ6(楕円盤カム5)が一緒に回転され、フレクスプライン11と内歯サーキュラースプライン1aとの噛合位置がこの回転とともに回転移動する。ここで、内歯サーキュラースプライン1aの歯数に対してフレクスプライン11の歯数が1〜数枚少なく形成されており、上記のように入力軸3の回転に応じて噛合位置が回転移動すると、入力軸3が1回転したときにフレクスプライン部材10はこの相違歯数分だけ回転する。すなわち、入力軸3の一回転に対して出力軸13はフレクスプライン11の1〜数枚の歯数分しか回転されず、非常に大きな減速比で回転が伝達される。
【0021】
この波動減速機構におけるフレクスプライン部材10の円盤状底壁12aの外側面に、このフレクスプライン部材10を介して伝達されるトルクを検出するトルクセンサ20が配設されている。このトルクセンサ20の上には保護カバー15が取り付けられている。なお、フレクスプライン部材10を保護カバー15を外した状態で図2に示している。
【0022】
本例のトルクセンサ20は、図3に示すように、中央に開口を有するドーナッツ型円盤状に形成され、このトルクセンサ20を構成する励磁コイルを励磁したり、検出コイルの誘導起電力を検出したりする処理回路30がトルクセンサ20に接続されている。
【0023】
このトルクセンサ20をフレクスプライン部材10に取り付けた状態を図4に示している。トルクセンサ20は、これを構成するフレクスプライン部材10の円盤状底壁12aの外側面に一体形成された第1磁性体層22を有する。この第1磁性体層22は、アモルファスになりやすい、すなわちアモルファス形成能の高い材料(例えば、Fe−Si−B,Fe−Co−Si−B等)を用いてスパッタリング、蒸着、溶射等の処理を行って、円盤状底壁12aの表面にアモルファス層を形成して作られる。
【0024】
この第1磁性体層22の上には、励磁コイルパターン23a,23bが形成された励磁用プリント配線板23と、検出コイルパターン24a,24bが形成された検出用プリント配線板24とが重ねて配設され、この上に、アモルファスシートもしくはアモルファス合金シートからなる第2磁性体層25a,25bが配設されている。
【0025】
第1磁性体層22は、図5に示すように、中央に円状開口22cを有した円盤状のアモルファス層からなり、周方向に整列した複数のスリット22a,22bが2列にリング状に並んで形成されている。図示のように、内周側スリット22aおよび外周側スリット22bはそれぞれ、周方向に対して45度傾いて形成されており、しかも、内周側スリット22aは周方向に対して左側に45度傾き、外周側スリット22bは周方向に対して右側に45度傾いて形成されている。なお、内周側スリット22aを右側に45度傾け、外周側スリット22bを左側に45度傾けてもよい。
【0026】
なお、前述のように第1磁性体層22はスパッタリング、蒸着、溶射などにより形成されるのであるが、このときにスリット部分にマスキングを施して上記スリット22a,22bを形成することができる。また、全体に一様なアモルファス層を形成したのち、スリット部に当たる部分をエッチングにより除去してスリット22a,22bを形成しても良い。
【0027】
励磁用プリント配線板23は、図6に示すように、絶縁材料性フレキシブルプリント基板23eの表面に、内周側に位置するとともに時計回り方向に形成された第1励磁コイルパターン23aと、外周側に位置するとともに反時計回り方向に形成された第2励磁コイルパターン23bとが形成されて作られている。図において、各コイルパターン23a,23bはそれぞれ約二周するように形成されているが、もっと多くの巻数のコイルパターンをそれぞれ形成しても良い。
【0028】
なお、図4においてはコイルパターン22a,22bを模式的に断面円形に示しているが、実際はプリント基板の上に形成された導電材料パターンである。また、図6において、実線のコイルパターンはフレキシブルプリント基板23eの表面に形成され、破線のコイルパターンは裏面に形成されている。なお、間に絶縁層を介して両コイルパターンを表面もしくは裏面に多層に形成してもよい。
【0029】
第1励磁コイルパターン23aの外周端と第2励磁コイルパターン23bの内周端が接続されるとともに、第1励磁コイルパターン23aの内周端と第2励磁コイルパターン23bの外周端がそれぞれ励磁用コネクタ部23cに接続されており、励磁用コネクタ部23c以外のコイルパターンは絶縁コーティングされている。励磁用コネクタ部23cは露出しており、これらコネクタ部23c間に電流を流せば、第1および第2励磁コイルパターン23a,23bを流れる電流により、図4に矢印P,Qで示す磁界が発生する。このとき、両コイルパターン23a,23bの巻方向が反対なので、両磁界P,Qも反対方向の磁界となる。
【0030】
検出用プリント配線板24は、図7に示すように、絶縁材料性フレキシブルプリント基板24eの表面に、内周側に位置して時計回り方向に形成された第1検出コイルパターン24aと、外周側に位置して反時計回り方向に形成された第2検出コイルパターン24bとが形成されて作られている。この検出用プリント配線板24においても、各コイルパターン24a,24bの巻数をもっと多くしても良く、実線のコイルパターンがフレキシブルプリント基板23eの表面に形成され、破線のコイルパターンが裏面に形成される。なお、第1検出コイルパターン24aは第1検出用コネクタ部23cに繋がり、第2検出コイルパターン24bは第2検出用コネクタ部23dに繋がる。
【0031】
上記両プリント配線板23,24が第1磁性体層22の上に重ねられた状態で、第1励磁コイルパターン23aおよび第1検出パターン24aはともに内周側スリット22aの上に重なり、第2励磁コイルパターン23bおよび第2検出パターン24bはともに外周側スリット22bの上に重なる。
【0032】
そして、内周側に位置する第2磁性体層25aは第1励磁コイルパターン23aおよび第1検出パターン24aを覆うリング状に形成され、これらの上に重ねて取り付けられる。同様に、外周側に位置する第2磁性体層25bは第2励磁コイルパターン23bおよび第2検出パターン24bを覆うリング状に形成され、これらの上に重ねて取り付けられる。
これら第2磁性体層25a,25bは励磁用コネクタ部23c間に電流を流して図4に示す磁界P,Qを発生されるとき誘磁体としての役目を果たし、第1および第2励磁コイルパターン23a,23bの周りに磁界P,Qを明瞭に発生させる。
【0033】
第1磁性体層22はフレクスプライン部材10の円盤状底壁12aの外側面に一体に形成されているため、フレクスプライン部材10を介してトルク伝達がなされるときにフレクスプライン部材10がこのトルクを受けて弾性変形すると、第1磁性体層22もそのまま一緒に変形し、この変形により第1磁性体層22の磁気歪特性が変化して透磁率が変化する。このように透磁率が変化すると、磁界P,Qの強度が変化するので、第1および第2検出コイルパターン24a,24bに生じる誘導起電力の変化を第1および第2コネクタ部24c,24dから取り出して検出すれば、透磁率の変化を検出することができる。
【0034】
このようにして検出した透磁率の変化はフレクスプライン部材10の弾性変形に比例するため、この透磁率の変化に基づいてフレクスプライン部材10を介して伝達されるトルクを演算して求めることができる。なお、フレクスプライン部材10はウェーブジェネレータ6により楕円形状に弾性変形されるため、第1磁性体層22の磁気歪特性はこの弾性変形の影響も受けるのであるが、楕円形状の弾性変形は全周にわたって磁気歪特性を平均すれば、零となるため、実際には伝達トルクのみを検出することが可能である。
【0035】
このように、本発明のトルクセンサは第1磁性体層22の透磁率の変化を検出してトルクを検出するものであるが、第1磁性体層22の透磁率の変化が最大となる方向、すなわち、周方向に対して45度傾いた方向にスリット22a,22bを形成している。図5に示すように、フレクスプライン部材10にトルクTが作用すると内周側のスリット22aが形成された部分には矢印Aで示すようにスリット22aの方向に圧縮力が作用し、外周側のスリット22aが形成された部分には矢印Bで示すようにスリット22bの方向に引っ張り力が作用する。このとき、スリット22a,22bにより形状的な異方性効果を得て第1磁性体層22における透磁率変化を増幅させることができ、トルクの検出精度がより高くなる。
【0036】
なお、本例においては、図5に示すように、第1磁性体層22はフレクスプライン部材10の底壁12aの外側面に一体形成された円盤状のアモルファス層からなり、この円盤状のアモルファス層に斜めにスリット22a,22bを形成しているが、これと逆の関係のアモルファス層により第1磁性体層を形成しても良い。すなわち、スリット22a,22bの部分に線状のアモルファス層を形成しても良い。
【0037】
以上のようにして透磁率変化を検出する装置、すなわち、図3に示した処理回路30について図8を参照して説明する。
この回路30は交流電源31を有しており、この交流電源31からの交流電流が励磁用コネクタ部23cを介して第1および第2励磁コイルパターン23a,23bに流されてこれらが励起される。これにより、この電流に対応して互いに反対方向となる磁界P,Qが図4に示すように、これらコイルパターン23a,23bの周りに発生する。
【0038】
この磁界P,Qは、第1および第2検出コイルパターン24a,24bに相互誘導起電力を発生させ、この相互誘導起電力が第1および第2コネクタ部24c,24dを介してブリッジ回路32a,32bに取り出される。ここで、磁界P,Qの方向が逆なので、誘導起電力は一方がプラスで他方がマイナスの値となり、これがブリッジ回路32a,32bを介して両者の差に該当する電圧として検出端子33から取り出される。
【0039】
以上まとめると、波動減速機構の入力軸3の回転が減速されて出力軸13に伝達されるとき、フレクスプライン部材10を介してトルク伝達がなされるので、この伝達トルクの大きさに応じてフレクスプライン部材10が弾性変形する。このため、第1磁性体層22の透磁率が変化し、磁界P,Qの強さが変化し、検出端子33において検出される電圧も変化する。この電圧変化から透磁率の変化を演算し、フレクスプライン部材10を介して伝達されるトルクの大きさを求めることができる。
【0040】
次に、本発明に係るトルクセンサの第2実施例を図9〜図11を参照しながら説明する。このトルクセンサ50は、図9(A)に示すように、フレクスプライン部材10のカップリング部12における円筒状外周面に沿って設けられており、カバー16(図10参照)により覆われて保護されている。このトルクセンサ50は、図9(B)に示すように、カップリング部12の外周面に対応する円筒状に形成され、処理回路30が接続されている。
【0041】
このトルクセンサ50をフレクスプライン部材10に取り付けた状態を図10に示しており、アモルファス層からなる第1磁性体層52はカップリング部12の外周面に一体形成されている。第1磁性体層52の上には、励磁コイルパターン53a,53bが形成された励磁用プリント配線板53と、検出コイルパターン54a,54bが形成された検出用プリント配線板54とが重ねて配設され、さらに、この上に、アモルファスシート製の第2磁性体層55a,55bが配設されている。
【0042】
第1磁性体層52には、図11に示すように、周方向に延びて整列した複数のスリット52a,52bがそれぞれ周方向に対して45度傾いて2列に形成されている。図示のようにトルクTが作用したときに発生する圧縮力Aの方向と平行になるように左側スリット52aは周方向に対して左に45度傾いて形成され、引っ張り力Bの方向と平行になるように右側スリット52bは周方向に対して右に45度傾いて形成されている。なお、左側スリット52aを右に45度傾け、右側スリット52bを左に45度傾けてもよい。
【0043】
励磁用プリント配線板53は、絶縁材料性フレキシブルプリント基板の表面に2列に並んで第1および第2励磁コイルパターン53a,53bが互いに反対方向に巻くように形成されて作られている。このため、第1および第2励磁コイルパターン53a,53bに電流を流せば、図11に矢印P,Qで示す磁界が発生する。このとき、両コイルパターン53a,53bの巻方向が反対なので、両磁界P,Qも反対方向の磁界である。
検出用プリント配線板54は、絶縁材料性フレキシブルプリント基板の表面に2列に並んで第1および第2検出コイルパターン54a,54bが互いに反対方向に巻くように形成されて作られている。
【0044】
上記両プリント配線板53,54が第1磁性体層52の上に重ねられた状態で、第1励磁コイルパターン53aおよび第1検出パターン54aはともに左側スリット52aの上に重なり、第2励磁コイルパターン53bおよび第2検出パターン54bはともに右側スリット52bの上に重なる。
そして、左側に位置する第2磁性体層55aは第1励磁コイルパターン53aおよび第1検出パターン54aの上に重ねて取り付けられ、同様に、右側に位置する第2磁性体層55bは第2励磁コイルパターン53bおよび第2検出パターン54bの上に重ねて取り付けられる。
これら第2磁性体層55a,55bは磁界P,Qを発生されるとき誘磁体としての役目を果たす。
【0045】
このトルクセンサ50を用いても、これに繋がる処理回路30によりフレクスプライン10にトルクが加わったときに生じる第1磁性体層52の透磁率変化を検出することができ、このトルクを正確に検出することができる。なお、処理回路30は図8に示すものであり、既に説明している。
【0046】
以上においては励磁コイルと検出コイルとを重ねて配設し、励磁コイルを通電励磁することにより検出コイルに相互誘導作用により生じる相互誘導起電力を検出して透磁率変化の検出ひいてはトルクの検出を行う例を説明した。しかしながら、本発明はこのような相互誘導作用を利用するものに限られず、自己誘導作用を利用してトルク検出を行うことも可能である。
【0047】
自己誘導作用を利用するトルクセンサは、第1磁性体層と第2磁性体層との間に1枚のみのプリント配線板が配設されて構成される。なお、第1磁性体層および第2磁性体層は上記実施例のものと同じである。
第1磁性体層62には、上述の励磁用プリント配線板22,52と同様に、2列に並んで且つ周方向に対して45度傾いた複数のスリット62a,62bが形成されている。そして、プリント配線板63にはそれぞれスリット62a,62bと対向するコイルパターン63a,63bが形成されている。
【0048】
これらコイルパターン63a,63bは、図12に示すように、処理回路70に接続される。この処理回路70においては、交流電源71からの交流電流がコイルパターン63a,63bに流されてこれらが励起される。これにより、この電流に対応して互いに反対方向となる磁界P,Qがこれらコイルパターンの周りに発生する。このとき、電流変化に応じて自己誘導起電力がこれらコイルパターン63a,63bに発生する。この自己誘導起電力が加算器72を介して端子73から取り出されるようになっている。
【0049】
このような状態で、フレクスプライン部材にトルクが加わって弾性変形し、第1磁性体層62の透磁率が変化すると、このコイルパターン63a,63bに発生する自己誘導起電力も変化する。このため、端子73から取り出された自己誘導起電力に基づいてフレクスプライン部材を介して伝達されるトルクを演算して求めることができる。
【0050】
次に、本発明の第3実施例に係るトルクセンサ120について説明する。このトルクセンサ120は、図13に示すように、中央に開口を有するドーナッツ型円盤状に形成され、このトルクセンサ120を構成する励磁コイルを励磁する発振回路140と、検出コイルの誘導起電力を検出する信号処理回路130がトルクセンサ120に接続されている。
【0051】
このトルクセンサ120をフレクスプライン部材10に取り付けた状態を図14に示している。このトルクセンサ120においては、カップリング部12の円盤状底壁(ダイヤフラム部)12aの表面にアモルファス層からなる第1磁性体層122を一体形成している。この第1磁性体層122の上には、励磁コイルパターンが形成された励磁用プリント配線板123と、検出コイルパターンが形成された検出用プリント配線板124とが重ねて配設され、この上に、アモルファス合金シートからなる第2磁性体層125が配設されている。
【0052】
第1磁性体層122は、図15に示すように、中央に円状の開口122cを有した円盤状に形成されており、第一磁性体層122の同一円周上には、小円形内に整列した複数のスリット列(SA,SB,SC……、SF)が周方向にそれぞれ等間隔に並んで形成されている。図示のように、このスリット列は第一磁性体層122の回転中心軸を中心に点対称とした一対のスリット列(例えばSAとSD)を一組として、複数組をそれぞれ等間隔に配設し、しかも、一方のスリット列SAは周方向に対して右側に45度傾き、他方のスリット列SDは周方向に対して左側に45度傾いて形成されている。なお、スリット列SAを左側に、スリット列SDを右側に傾斜させてもよい。また、スリット対の数は図示のように3個とは限られず、いくつであってもよい。実際はもっと多くのスリット対を等間隔に配設して構成されている。
【0053】
励磁用プリント配線板123は、図16に示すように、絶縁材料性フレキシブルプリント基板123dの表面であって、第一磁性体層122に重ねてフレクスプライン部材10のダイヤフラム部12aに配設されたときに、前記スリット列SA、SB、……SFに重なる位置に、時計方向回り(反時計方向でもかまわない)に渦巻き状に成形された複数の励磁コイルパターンRA、RB、……RFが形成されて作られている。そして、これらの励磁コイルパターンRA,RB、……、RFはコイルに流れる電流方向が互いに同一となるように、一のコイルパターンの終端と隣接した次のコイルパターンの始端とが接続されて作られている。コイルの巻き数は特に限定されるものではなく、発生させるべき磁束数等によって決められるべきものである。
【0054】
最初のコイルパターン(図16の例ではRD)の始点と最終のコイルパターン(図16の例ではRC)の終点は通電励磁用の発振回路140に接続されている。これらのコイルパターンは発振回路140および信号処理回路130との接続部分を除いては全て絶縁コーティングされており、これらコイルパターンに電流を流せばこの電流により電磁誘導された磁界が図14に示す方向に交番磁界Pとして発生する。この磁界は円形電流により発生するため、その円形部の中心を通過するように集束した磁界となる。
【0055】
検出用プリント配線板124も励磁用プリント配線板123と同様に、図17に示すように、絶縁材料性フレキシブルプリント基板124dの表面であって、第一磁性体層122に重ねてフレクスプライン部材10のダイヤフラム部12aに配設されたときに、前記複数のスリット列SA、SB、……、SFおよびそれぞれの励磁コイルパターンRA、RB……、RFに重なる位置に、渦巻き状に成形されたコイルパターンが前記スリット列の数と同数だけ形成されて作られている。
【0056】
そして、これらのコイルパターン(KA,KB,KC……、KF)は、一のコイルパターンの終端と一つおいて隣接する他のコイルパターンの始端とが接続され、それぞれ第一の検出コイル層124aと第二の検出コイル層124bとを形成して構成されている。これらの検出用コイルパターンの巻き方向は時計方向(cw)および反時計方向(ccw)の何れであってもよいが、少なくとも、同一の検出コイル層に含まれるコイルパターンの巻き方向は同一でなければならない。なお、各コイルパターンの巻き数を各コイルパターンが同一である限り、もっと多くしても良く、図17に示された巻数に限定されるものではない。
【0057】
第一の検出コイル層24aの最初のコイルパターン(図17の例ではKE)の一端は基準電位に接続され、最後のコイルパターン(図17の例ではKC)の終端が差動増幅回路の一端に接続され(例えば、プラス側入力)、第二の検出コイル層124bの最初のコイルパターンの一端は前記と同じ基準電位に接続され、最後のコイルパターンの終端は差動増幅器の他端(例えば、マイナス側入力)に接続されている(図19参照)。これらの検出コイル層124a,124bも接続部分を除いては全て絶縁コーティングされており、前記磁界の変化に対して誘導電流が流れるようになっている。
【0058】
上述した両プリント配線板123、124が第一磁性体層122の上に重ねられた状態で第一磁性体層122上に形成されたスリット列SA、励磁コイルパターンRAおよび検出コイルパターンKAが重なり、また、スリット列SB、励磁コイルパターンRBおよび検出コイルパターンKBが重なる。これら全てのスリット列と各コイルパターンの対応関係を表す表を図18に示す。
【0059】
第2の磁性体層125は励磁用プリント配線板123および検出用プリント配線板124を覆うリング状に形成され、これらの上に重ねて取り付けられる。この第2の磁性体層125は本発明の必須の構成要件ではないが、励磁コイル層123aに交流電流を流して図14に示す磁界Pを発生させるときの磁束路としての役割を果たす。従って、第2磁性体層125が存在する場合には漏れ磁束が少なくなり、第一磁性体層122を通過する磁束数の減少を抑えて、弾性変形に対する磁界の強さの変化を大きくでき、透磁率変化の検出精度を高めることができる。
【0060】
ここで、フレクスプライン部材10を介してトルク伝達がなされるときにフレクスプライン部材10がこのトルクを受けて弾性変形すると、第一磁性体層122も一緒に変形し、この変形により第一磁性体層122の磁気歪特性が変化して透磁率が変化する。このように透磁率が変化すると図14に示す磁界Pの強さが変化するので検出コイル層124a,124bに生じる誘導起電力を検出すれば透磁率の変化を検出することができる。
【0061】
本発明のトルクセンサ120では透磁率変化の最大となる方向、すなわち第一磁性体層122の周方向に対して45度傾いた方向にスリット列SA、SB、SC……、SFを形成しており、このスリット列によって形状的な異方性効果を得て第一磁性体層122における透磁率変化を増幅させている。そして、図15に示すように、周方向に対し右に45度傾斜するスリット列SA,SC,SEと左に45度傾斜するスリット列SB,SD,SFとが交互に等間隔に配置しているため、フレクスプライン部材10にトルクTが図示方向に作用すると、スリット列SA,SC,SEが形成された第一磁性体層122の部分には矢印U(図15の拡大図に示す)で示す方向に引張力が作用し、スリット列SB,SD,SFが形成された第一磁性体層22の部分には矢印V(図15の拡大図に示す)で示す方向に圧縮力が作用する。しかも、これらの引張力および圧縮力は第一磁性体層122の中心からの距離が等しい部分に生じたものであり、等しい応力に応じて生じたものであることから、全て絶対値の等しいものである。
【0062】
このような応力によって第一磁性体層122の透磁率変化を検出する装置、すなわち、図13の信号処理回路130について図19を参照して説明する。この回路160は発振回路141を有しており、この発振回路141からの交流電流が励磁コイル123aに供給されて、励磁コイル層123a周辺に図14に示すようなコイルパターンの中心に集束するような磁界Pを発生させる。なおこのとき、各コイルパターンRA等は同一方向の磁界を発生させるため、発生した磁界が第一磁性体層122の内部で互いに干渉し合うことはない。
【0063】
この磁界Pは第一磁性体層122および第二磁性体層125の内部を磁束路とした交番磁界であり、検出コイルパターンKA、KB等とも鎖交して生じている。従って、発生した磁界が変化する度に第一および第二の検出コイル層124a、124bに相互誘導起電力が発生する。さらに、第一磁性体層122の変形による磁気歪特性の変化によって、第一磁性体層122の透磁率が変化するため、この磁界は透磁率に変化に従ってその強さを変化させることになる。この磁界の変化は検出コイル層124a、124bの相互誘導起電力の変化として検出することが可能である。
【0064】
ところで、第一磁性体層122の透磁率の変化は、弾性変形が引張力による場合と圧縮力による場合とで異なり、従って、応力が零の状態を基準とすると両者において正負逆の信号として検出することが可能である。このため、本発明では、検出コイル層を、スリット列SA,SC,SEが形成された第一磁性体層122の部位に生じた応力に対応して生じる透磁率変化を磁界の変化として検出する第一の検出コイル層124aと、スリット列SB,SD,SFが形成された第一磁性体層122の部位に生じる応力に対応して生じた透磁率変化を磁界の変化として検出する第2の検出コイル群124bとに分割して構成している。
【0065】
このように検出コイルを分割して構成すると、図20に示すように、第一の検出コイル層124aから検出される誘導起電力の変化分が正の信号として検出されるときには第二の検出コイル層124bから検出される誘導起電力の変化分は負の信号となり、また、第一の検出コイル層124aから検出される誘導起電力の変化分が負の信号として検出されるときには第二の検出コイル層124bから検出される誘導起電力は変化分は正の信号となる。しかもその絶対値はトルクのかかる方向に左右されず、同一である(図20の直線(a)、(b))。従って、両検出コイル層124a、124bの出力を差動増幅器131のそれぞれの入力に接続すれば透磁率の変化を両者の差に該当する電圧として取り出すことができる(図20の曲線(c))。
【0066】
このようにして検出した透磁率変化に対応する電圧はフレクスプライン部材10の弾性変形に比例するため、この電圧に基づいてフレクスプライン部材10を介して伝達されるトルクを演算して求めることができる。なお、フレクスプライン部材10はウェーブジェネレータ6により楕円形状に弾性変形されるため、第1磁性体層122の磁気歪特性はこの弾性変形の影響も受けるのであるが、楕円形状の弾性変形は全周にわたって磁気歪特性を平均すれば零となるものである。従って、検出コイル層124aのコイルパターンの数を増やすか若しくは第一磁性体層122に相互に傾斜方向の異なるスリット列を左右対称に構成していけば同じく平均して零となり、実際には伝達トルクのみを検出することができる。
【0067】
以上においては、励磁用プリント配線板123と検出用プリント配線板124を重ねて配設し、励磁コイル層123aの通電により発生する磁界を検出コイル層124a,124bに生じる相互誘導起電力として検出して透磁率変化の検出ひいてはトルクの検出を行う実施例を説明した。しかしながら、本発明はこのような相互誘導作用によるものに限られず、自己誘導作用を利用してトルク検出を行うことも可能である。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のトルクセンサによれば、トルク伝達可能でこのトルクを受けて弾性変形する弾性体の表面に、弾性体の弾性変形に応じてその磁気歪特性が変化する第1磁性体層を周方向に延びて一体に形成しているので、弾性体の弾性変形がそのまま第1磁性体層に伝達され、第1磁性体層の磁気歪特性は伝達トルクに正確に比例して変化する。このため、本発明のトルクセンサでは非常に正確な伝達トルク検出が可能である。
【0069】
しかも、このトルクセンサは、2つの磁性体層と、これらに挟まれたプリント配線板から構成されており、厚さの薄い構成であるため、減速機構のトルク伝達部材(例えば、波動減速機構のフレクスプライン部材)の表面に直接設けることができ、減速機構を変更したり、新たな部品を追加することなく簡単に取り付けることが可能である。さらに、歪ゲージに比べて耐衝撃性能が高く、移動ロボットにのように衝撃が加わりやすい関節部等にも用いることが可能である。
【0070】
また、上記構成のトルクセンサにおいて、第1磁性体層が弾性体の側面に略円盤状に形成され、第1磁性体層には第1磁性体層を構成する円盤の中心を挟んで対称の位置に、円盤の周方向に対して左右対称の傾斜をもった一対のスリット列が複数個、円盤の同一円周上にそれぞれ離間して形成されており、平板状コイルは第1磁性体層のスリット列上に重ねて配設されるのが好ましい。また、一対のスリット列の一方が円盤の周方向に対し右にほぼ45度の角度を有し、他方が円盤の周方向に対し左にほぼ45度の角度を有して設けられ、第1磁性体層の同一円周上において各々異なった角度を有するスリット列が交互に等間隔に並んで配設されるのが好ましい。
なお、第1磁性体層を、弾性体の表面に一定厚さを有して形成されたアモルファス層から形成し、この平面状アモルファス層に周方向に対し所定の傾斜角度を有した複数のスリットを周方向に並んで形成するのが好ましい。もしくは、第1磁性体層を、弾性体の表面に直線状平面形状を有して形成された複数の線状アモルファス層から形成し、この線状アモルファス層を周方向に対し所定の傾斜角度を有して周方向に並んで形成するのが好ましい。
【0071】
弾性体がトルクを受けて弾性変形するときに、この弾性体の表面における磁気歪は周方向に対して45度の方向において最大となり、磁気透磁率変化もこの方向において最大となる。このため、周方向に対して所定の傾斜角度、例えば、45度の角度を有した複数のスリットもしくは線状アモルファス層を周方向に並べて形成すれば、形状的な異方性効果が加わって弾性変形時における磁気透磁率変化が増幅されて表れるため、トルク検出をより正確に行うことができる。
【0072】
さらに、弾性体の弾性変化に伴って磁気歪特性を変化させる第1磁性体層に設けられた一対のスリット列の一方が周方向に対して右にほぼ45度の角度をもって形成され、他方が周方向に対して左にほぼ45度の角度をもって形成され、第一の磁性体層の同一円周上に異なった角度を有するスリット列を交互に等間隔に並べて配設し、検出コイルを、この一方の角度を有するスリット列に対向する第一の検出コイル層と他方の角度を有するスリット列に対向する第二の検出コイル層とに分割して構成することが望ましい。
【0073】
弾性体がトルクを受けて弾性変形するときに、この弾性体の表面における磁気歪は周方向に対して45度の方向において最大となり、磁気透磁率変化もこの方向において最大となる。このため、周方向に対して所定の傾斜角度、例えば、45度の角度を有した複数のスリットもしくは線状アモルファス層を周方向に並べて形成すれば、形状的な異方性効果が加わって弾性変形時における磁気透磁率変化が増幅されて表れるため、トルク検出をより正確に行うことができる。
また、上記構成のトルクセンサにおいて、第1磁性体層の同一円周上には、小円形内に整列した複数のスリット列が周方向にそれぞれ等間隔に並んで形成され、平板状コイルが、励磁コイルパターンが形成された励磁用プリント配線板と、検出コイルパターンが形成された検出用プリント配線板とが重ねて配設されたものからなり、励磁用プリント配線板に、第1磁性体層に重ねて配設されたときにスリット列に重なる位置に、渦巻き状に成形された複数の励磁コイルパターンが形成され、検出用プリント配線板に、第一磁性体層に重ねて配設されたときにスリット列および励磁コイルパターンに重なる位置に、渦巻き状に成形された複数の検出コイルパターンが形成されているのが好ましい。
【0074】
さらに、上記構成のトルクセンサにおいて、複数の検出コイルパターンが、円盤の周方向に対して左右いずれかのうち一方に傾斜した第1のスリット列(例えば、実施形態におけるSA,SC,SE)が形成された第1磁性体層の部位に生じた弾性変形による引張応力に対応して生じた磁気歪特性の変化を検出する第1の検出コイル層と、円盤の周方向に対して左右いずれかのうち他方に傾斜した第2のスリット列(例えば、実施形態におけるSB,SD,SF)が形成された第1磁性体層の部位に生じた弾性変形による圧縮応力に対応して生じた磁気歪特性の変化を検出する第2の検出コイル層とから構成されるのが好ましい。
弾性変形時に第1磁性体層の表面には圧縮応力および引張応力が相反する方向に生じるため、上記のように左右それぞれ45度の角度を有するスリット列を交互に等間隔に配設すれば、第一の検出コイル層によって検出される誘導起電力と、第二の検出コイル層によって検出される誘導起電力とが絶対値として同一の出力値となり、かつ、正負逆に出力されるため、両起電力の差を検出することによりトルク検出をより正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトルクセンサが用いられる波動減速機構を示す断面斜視図である。
【図2】この機構を構成するフレクスプライン部材およびこれに取り付けられたトルクセンサを示す斜視図である。
【図3】トルクセンサおよび処理回路を示す斜視図である。
【図4】フレクスプライン部材に取り付けられたトルクセンサを示す断面図である。
【図5】トルクセンサを構成する第1磁性体層の平面図である。
【図6】トルクセンサを構成する励磁用プリント配線板の平面図である。
【図7】トルクセンサを構成する検出用プリント配線板の平面図である。
【図8】処理回路を示す電気回路図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るフレクスプライン部材およびこれに取り付けられたトルクセンサを示す斜視図(A)およびトルクセンサおよび処理回路を示す斜視図(B)である。
【図10】このフレクスプライン部材に取り付けられたトルクセンサを示す断面図である。
【図11】トルクセンサを構成する第1磁性体層の平面図である。
【図12】処理回路の異なる例を示す電気回路図である。
【図13】本発明の第3の実施例に係るトルクセンサ部の構成を表す斜視図である。
【図14】フレクスプライン部材に取り付けられた第3実施例に係るトルクセンサを示す断面図である。
【図15】このトルクセンサを構成する第一磁性体層の平面図およびスリット部の拡大図である。
【図16】このトルクセンサを構成する励磁用プリント配線板の平面図である。
【図17】このトルクセンサを構成する検出用プリント配線板の平面図である。
【図18】フレクスプライン部材に取り付けらたトルクセンサのスリット列とコイルパターンとの重ね合わせ状態を表す表である。
【図19】信号処理回路を示す電気回路図である。
【図20】本発明にかかるトルクセンサよって検出される誘導起電力対トルクの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 支持ケース
6 ウェーブジェネレータ
10 フレクスプライン部材
21,51 カーボンクロスシート
22,52 第1磁性体層
23,53 励磁用プリント配線板
24,54 検出用プリント配線板
30,50 処理回路

Claims (5)

  1. 入出力軸間に備えられた減速機構を構成し前記出力軸と結合されて前記出力軸の側にトルク伝達可能でこのトルクを受けて弾性変形する略円筒状の弾性体に設けられて前記トルクを検出するトルクセンサであって、
    前記弾性体の表面にスパッタリング、蒸着、溶射のうちのいずれか一つにより一体形成され、前記弾性体の弾性変形に応じてその磁気歪特性が変化する第1磁性体層と、
    この第1磁性体層上に重ねて配設され前記磁気歪特性の変化を検出する平板状コイルと、
    この平板状コイルを覆って配設された第2磁性体層とから構成され、
    前記第1磁性体層が前記弾性体の側面に略円盤状に形成され、
    前記第1磁性体層には前記第1磁性体層を構成する円盤の径方向中心を挟んで対称の位置に、前記円盤の周方向に対して左右対称の傾斜をもった一対のスリット列が複数個、前記円盤の同一円周上にそれぞれ離間して形成されており、
    前記平板状コイルは前記第1磁性体層のスリット列上に周方向に重ねて配設されていることを特徴とするトルクセンサ。
  2. 前記一対のスリット列の一方が前記円盤の周方向に対し右にほぼ45度の角度を有し、他方が前記円盤の周方向に対し左にほぼ45度の角度を有して設けられ、前記第1磁性体層の同一円周上において各々異なった角度を有する前記スリット列が交互に等間隔に並んで配設されていることを特徴とする請求項に記載のトルクセンサ。
  3. 前記第1磁性体層の同一円周上には、小円形内に整列した複数の前記スリット列が周方向にそれぞれ等間隔に並んで形成され、
    前記平板状コイルが、励磁コイルパターンが形成された励磁用プリント配線板と、検出コイルパターンが形成された検出用プリント配線板とが重ねて配設されたものからなり、
    前記励磁用プリント配線板に、前記第1磁性体層に重ねて配設されたときに前記スリット列に重なる位置に、渦巻き状に成形された複数の励磁コイルパターンが形成され、
    前記検出用プリント配線板に、前記第1磁性体層に重ねて配設されたときに前記スリット列および前記励磁コイルパターンに重なる位置に、渦巻き状に成形された複数の検出コイルパターンが形成されていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のトルクセンサ。
  4. 前記複数の検出コイルパターンが、前記円盤の周方向に対して左右いずれかのうち一方に傾斜した第1のスリット列が形成された前記第1磁性体層の部位に生じた弾性変形による引張応力に対応して生じた前記磁気歪特性の変化を検出する第1の検出コイル層と、
    前記円盤の周方向に対して左右いずれかのうち他方に傾斜した第2のスリット列が形成された前記第1磁性体層の部位に生じた弾性変形による圧縮応力に対応して生じた前記磁気歪特性の変化を検出する第2の検出コイル層とから構成されていることを特徴とする請求項に記載のトルクセンサ。
  5. 前記第1磁性体層に形成された前記スリット列の代わりに、直線状平面形状を有する線状アモルファス層列が前記スリット列の形成された位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトルクセンサ。
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