JP3824066B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス転移温度(Tg)が高く、難燃性及び耐湿信頼性に優れ、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有しない硬化物を得ることができる、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び該樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在、半導体デバイスは樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流であるが、エポキシ樹脂が他の熱硬化性樹脂に比べ成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿性等に優れているため、エポキシ樹脂組成物で半導体装置を封止することが一般的である。
【0003】
しかしながら、これまで以上に半導体デバイスの作動環境も厳しくなってきている。自動車用電子部品分野においては、エンジン周りの電子制御化、システムモジュール化が検討されており、更なる高耐熱性、耐熱衝撃性の向上が要求されている。
【0004】
また、通信分野においては、携帯電話情報通信の高周波数化に伴い、低誘電化及び耐熱性向上が要求されている。このような要求をみたすため、従来のエポキシ樹脂と高耐熱樹脂の複合材料が検討されている。例えばマレイミド化合物をアルケニル基を介してエポキシ樹脂組成物中に取り込んだ熱硬化性樹脂が半導体封止用エポキシ樹脂組成物としても検討されている。
【0005】
更に、半導体デバイスは万が一の火災に備えて、半導体装置には難燃性が要求されている。
半導体封止用エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を高めるため、一般にハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されている。このハロゲン化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとの組み合わせは、気相においてラジカルトラップ、空気遮断効果が大きく、その結果、高い難燃効果が得られるものである。
【0006】
しかし、ハロゲン化エポキシ樹脂は燃焼時に有毒ガスを発生するという問題があり、また三酸化アンチモンにも粉体毒性があるため、人体、環境に対する影響を考慮すると、これらの難燃剤を樹脂組成物中に全く含まないことが好ましい。
【0007】
このような要求に対して、ハロゲン化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等の検討がなされてきている。しかし、Al(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物は難燃効果が低いため、難燃組成とするためには、エポキシ樹脂組成物中に水酸化物を多量に添加しなければならず、その結果組成物の粘度が上昇し、成形時にボイド、ワイヤー流れ等の成形不良が発生するという問題がある。一方、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤をエポキシ樹脂組成物に添加した場合、半導体装置が高温高湿条件にさらされると、リン系難燃剤が加水分解されてリン酸が生成し、このリン酸がアルミ配線を腐食させ、信頼性を低下させるという大きな問題があった。
【0008】
この問題を解決するため、例えば特許第2843244号公報には、赤リンの表面にSiXOY組成からなる被覆層で被覆した化合物を難燃剤として使用したエポキシ樹脂組成物が提案されているが、上記の耐湿信頼性は改善されていないのが現状である。また、例えば特開平10−259292号公報には、環状ホスファゼン化合物を、充填材を除く配合成分の合計量に対して、リン原子の量が0.2〜3.0重量%となる量を使用したエポキシ樹脂組成物も提案されているが、難燃性を得るためには相当量をエポキシ樹脂組成物に添加する必要があり、その場合は硬化性の低下並びに高温環境下での電気抵抗性低下を引き起こす等の問題点があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、臭素化エポキシ樹脂等の臭素化物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を含有せず、成形性に優れると共に、難燃性及び耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができる、半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物及び該樹脂組成物の硬化物で封止した半導体装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)無機充填材
(D)硬化促進剤
(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物
(F)分子中に1個以上のアルケニル基を有するフェノール化合物
(G)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン
R1 mR2 nSi(OR3)p(OH)qO(4-m-n-p-q)/2 (1)
(式中、R1はフェニル基、R2は炭素数1〜6の一価炭化水素基又は水素原子、R3は炭素数1〜4の一価炭化水素基を表し、m,n,p,qは、0≦m≦2.0、0≦n≦1.0、0≦p≦2.5、0≦q≦0.35、0.92≦m+n+p+q≦2.8を満足する数である。)
(H)下記平均組成式(2)で示されるホスファゼン化合物
【化2】
(但し、Xは単結合、又はCH2,C(CH3)2,SO2,S,O,及びO(CO)Oから選ばれる基、YはOH,SH又はNH2、R4は炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基,NH2,NR5R6並びにSR7から選ばれる基で、R5,R6,R7は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。d,e,f,nは、0≦d≦0.25n、0≦e<2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2n、3≦n≦1,000を満足する数を示す。)
を必須成分とし、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まない半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、成形性に優れると共に、難燃性、耐湿信頼性に優れる硬化物を得ることができ、また該エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置が、難燃性、耐湿信頼性に優れるものであることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、上記(A)〜(H)成分を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置を提供する。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、このように臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まないものである。一般に、エポキシ樹脂組成物中には、難燃性を達成するため、臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとが配合されているが、本発明のエポキシ樹脂組成物は、この臭素化エポキシ樹脂と三酸化アンチモンとを使用せずに、難燃規格であるUL−94、V−0を達成することができるものである。
【0013】
ここで、臭素化エポキシ樹脂あるいは三酸化アンチモンの代替として、従来からAl(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤等が検討されている。しかしこれらの公知の代替難燃剤は、特に高温において耐水性が弱く、難燃剤自身が溶解、分解して、抽出水中の不純物イオンを増加させるという共通の欠点があった。このため、臭素化物、アンチモン化合物を実質的に含まない従来の難燃性エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を長時間高温高湿下に放置すると、半導体装置のアルミ配線が腐食し耐湿信頼性が低下するという問題があった。
【0014】
本発明者らは、上記不都合を解決すべく鋭意検討を行った結果、難燃剤として、(G)平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、及び(H)平均組成式(2)で示されるホスファゼン化合物を使用した半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、前述のように抽出水中の不純物イオンを増加させることもなく、成形性に優れ、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができることを見出したものである。この場合、これら2種類の化合物は、いずれも耐水性が高く、抽出水中の不純物イオンを増加させる作用がないものである。しかし、これらの化合物をそれぞれ単独で使用した場合は、難燃効果が不十分であったり、エポキシ樹脂組成物の流動性が低下したり、あるいは硬化性が低下したりする不都合があったが、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、難燃剤として、(G)平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、及び(H)平均組成式(2)で示されるホスファゼン化合物を併用したことにより、それぞれの添加量を最小限に抑えることができるため、上述のような成形時の問題点もなく、しかも難燃性及び耐湿信頼性に特に優れた硬化物を得ることができるものである。
【0015】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する(A)エポキシ樹脂は特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。これらのうちでは、芳香環を含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
上記エポキシ樹脂は、加水分解性塩素が1,000ppm以下、特に500ppm以下であり、ナトリウム及びカリウムはそれぞれ10ppm以下とすることが好ましい。加水分解性塩素が1,000ppmを超えたり、ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。なお、本発明においては臭素化エポキシ樹脂は配合されない。
【0017】
本発明に用いる(B)硬化剤も特に限定されるものではない。一般的な硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0018】
上記硬化剤は、エポキシ樹脂と同様に、ナトリウム及びカリウムをそれぞれ10ppm以下とすることが好ましい。ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。
【0019】
ここで、エポキシ樹脂、硬化剤の配合量は特に制限されないが、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に配合される(C)無機充填材としては、通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。
【0021】
これら無機充填材の平均粒径や形状及び無機充填材の充填量は特に限定されないが、難燃性を高めるためには、エポキシ樹脂組成物中に、成形性を損なわない範囲で可能な限り多量に充填させることが好ましい。この場合、無機充填材の平均粒径、形状として、平均粒径5〜30μmの球状の溶融シリカが特に好ましく、また、(C)成分の無機充填材の充填量は、(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、(H)成分の総量100重量部に対し、400〜1,200重量部、特に500〜1,000重量部とすることが好ましい。
【0022】
なお、無機充填材は、樹脂と無機充填材との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0023】
また、本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるため、(D)硬化促進剤を用いる。この硬化促進剤は、硬化反応を促進させるものであれば特に制限はなく、例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどのリン系化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7などの第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物等を使用することができる。一方、後述する(E)、(F)成分のマレイミド化合物とアルケニルフェノール化合物の硬化促進剤としては、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物のようなラジカル開始剤を用いることができる。
【0024】
(D)成分の硬化促進剤の配合量は有効量であるが、上記リン化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物等のエポキシ樹脂と硬化剤(フェノール樹脂)との硬化反応促進用の硬化促進剤は、(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、(H)成分の総量100重量部に対し0.1〜5重量部、特に0.5〜2重量部とすることが好ましい。一方、ラジカル開始剤の場合は同総量100重量部に対し0.5〜5重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0025】
本発明に用いる(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物の構造としては特に限定されるものではなく、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド等でよい。マレイミド化合物の添加量としては特に制限されない。エポキシ樹脂組成物中にマレイミド化合物が占める割合が高ければ高いほどTgは上昇する。しかしながら、(E)成分は、(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、(H)成分の合計量100重量%に対し、60重量%より多くなると流動性が低下し、ワイヤー流れ等成形不良を起こす。またマレイミド化合物の融点が160℃以上であるため、溶融混練り等も困難となる。半導体封止材特性のバランス面から30〜60重量%、特に50重量%付近が好ましい。
【0026】
(F)分子中に1個以上のアルケニル基を有するフェノール化合物としては、o,o’−ジアリル−ビスフェノールA、o,o’−ジ(1−プロペニル)−ビスフェノールA、o−アリルフェノールノボラック樹脂、o−(1−プロペニル)フェノールノボラック樹脂、トリスo−アリルフェノールアルカン型フェノール樹脂、トリスo−(1−プロペニル)フェノールアルカン型フェノール樹脂等が挙げられる。マレイミド基を含む化合物との反応性を考慮すると、o,o’−ジ(1−プロペニル)−ビスフェノールA、o−(1−プロペニル)フェノールノボラック樹脂、o−(1−プロペニル)フェノールアルカン型フェノール樹脂等、1−プロペニル基を含有することが望ましい。
【0027】
アルケニル基を有するフェノール化合物の添加量としては特に限定されないが、マレイミド基1モルに対して0.1〜1.0モル、特に好ましくは0.2〜0.5モルが望ましい。
【0028】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、更に(G)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを配合する。
R1 mR2 nSi(OR3)p(OH)qO(4-m-n-p-q)/2 (1)
(式中、R1はフェニル基、R2は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基等の一価炭化水素基(但し、フェニル基を除く)又は水素原子、R3は炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基等の一価炭化水素基を表し、m,n,p,qは、0≦m≦2.0、0≦n≦1.0、0≦p≦2.5、0≦q≦0.35、0.92≦m+n+p+q≦2.8を満足する数である。)
【0029】
本発明の樹脂組成物が良好な難燃性を示す理由は定かではないが、上記平均組成式(1)のシリコーン化合物を含む本発明の樹脂組成物を燃焼させた場合、アルコキシ基の酸化分解架橋によりオルガノシロキサンと特に芳香環を含むエポキシ樹脂が結合して燃焼部周辺に固定され、更にオルガノシロキサンに高含有率で含まれるフェニル基は特に芳香環を含むエポキシ樹脂との間で、各々が持つ芳香環相互のカップリングにより不燃性のSi−Cセラミック層を容易に形成し、高い難燃効果を発現すると考えられる。この難燃化機構が有効に働くために好ましいアルコキシ基含有率は、オルガノシロキサンの平均組成式中のp、即ちSi原子1モルに対するアルコキシ基のモル数が、好ましくは0.42〜2.5である。0.42未満では架橋性が低すぎて燃焼部周辺に固定化され難いため、また、2.5を超えると低分子量なオルガノシロキサンしか得られず、燃焼時に固定化される前に熱で気化することによる損失率が高くなるため、いずれの場合も難燃化効果が低下してしまう場合がある。更に好ましいアルコキシ基含有率は、Si原子1モルに対し0.5〜2.3モルである。
【0030】
平均組成式中のR3は好ましくは炭素数1〜4のアルキル基から選ばれ、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル基であり、炭素数5以上のアルキル基はアルコキシ基としての反応性が低く、難燃化効果が期待できない。
【0031】
一方、オルガノシロキサンに含まれるシラノール基も反応性が低く、難燃性に殆ど寄与することはないが、保存安定性の面や加工性の面から、オルガノシロキサン平均組成式におけるqの値で0.35以下が好ましい。
【0032】
上述の難燃化機構が有効に働くために必要なもう一つの要素であるフェニル基含有率については、平均組成式のm、即ちSi原子1モルに対するフェニル基のモル数で好ましくは0.5〜2.0である。0.5未満だとフェニル基が少なすぎて難燃化効果が得られない場合がある。2.0を超えるとフェニル基含有率は十分に高いが、嵩高いフェニル基が一つのSi上に密集した構造を多く含むため、立体障害が大きくポリオルガノシロキサン分子の空間的自由度が低下し、芳香環相互のカップリングによる難燃化機構が作用するのに必要な芳香環同士の重なりが困難になり、難燃化効果を低下させる。より好ましいmの値は0.6〜1.8である。
【0033】
Si−C結合でSiに結合する置換基はフェニル基以外の置換基R2を含んでもよい。この置換基は難燃化効果と直接関係がないため、含有量が多くなれば逆効果となるが、適量含有させることで、嵩高いフェニル基含有率の高いオルガノシロキサン分子の立体障害を緩和して空間的な自由度を向上させ、フェニル基同士の重なりを容易にして難燃化効果を高める方向に働く場合もある。この効果を期待できるR2の含有率は、平均組成式のnの値で1.0以下である。好ましくは平均組成式中のm+nに対するnの比率n/(m+n)で0〜0.3の範囲であり、0.3を超えては相対的なフェニル基含有率が低下して難燃化効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0034】
R2は炭素数1〜6の一価炭化水素基及び水素原子であり、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル、プロペニル、ブテニル基などのアルケニル基が挙げられる。特にメチル基、ビニル基が、立体障害緩和の点からも工業的にも好ましい。
【0035】
本発明の(G)成分のオルガノポリシロキサンは、下記式(3)
R8SiX3 (3)
(但し、式(3)中のR8はR1又はR2と同じ有機基を表し、Xは−OH、−OR9、又はシロキサン残基を表し、一つのSi原子に結合している三つのXのうち少なくとも一つはシロキサン残基を含む。)
で表されるシロキサン単位を50モル%以上含有していることが好ましい。この三官能性シロキサン単位は、三次元的な架橋構造を形成してオルガノシロキサン分子構造を強固にすることで樹脂的性質を付与し、エポキシ樹脂組成物への分散性、加工性を向上させる。また、単官能性や二官能性シロキサン単位を多く含む直線的な分子構造のオルガノシロキサンは、燃焼時に起きるシロキサン結合の熱による再配列で揮発性低分子量シロキサンを形成して系外へ逃げ易いのに対し、架橋反応性の高い三官能性シロキサン単位を多く含むオルガノシロキサンは、更に高分子量化して系内に止まり、難燃化に寄与する。三官能性シロキサン単位が50モル%未満ではこれらの効果が小さくなることがあり、より好ましくは三官能性シロキサン単位を60モル%以上含むオルガノシロキサンで高い難燃化効果が発現される。
【0036】
式(3)のR8はR1又はR2と同じであり、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル、プロペニル、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。特にフェニル基、メチル基、ビニル基が工業的に好ましい。
【0037】
式(3)中のXは−OH、−OR9、又はシロキサン残基を表し、一つのSi原子に結合しているXのうち少なくとも一つはシロキサン残基を含んでいなければならない。なお、シロキサン残基、シロキサン結合とは、−O−(Si≡)を示す(但し、括弧内のSi≡は隣接するSi原子と結合していることを示す)。また、R9は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0038】
(G)成分のオルガノポリシロキサン中には、三官能性シロキサン単位以外の構成単位として、特性に影響を与えない範囲で二官能性シロキサン単位、単官能性シロキサン単位、四官能性シロキサン単位を含有してもよい。特に四官能性シロキサン単位は三次元的な架橋構造を形成してオルガノポリシロキサン分子構造を強固にすることや、高い架橋反応性が高分子量化を促して系内に止まり難燃化に寄与する。一方、この四官能性シロキサン単位の含有率が多くなると、エポキシ樹脂への分散性が低下するので、好ましい含有率は50モル%以下である。
【0039】
また、(G)成分であるオルガノポリシロキサンの平均重合度は、2.5〜20量体であることが好ましい。重合度は難燃化効果を決める重要な因子であり、この重合度範囲のオルガノシロキサンは、溶融混合時によく分散し、また燃焼時における熱で溶融して移動し燃焼部周辺に集まることもできる。また、この動き易さはフェニル基の重なりを容易にすることでも難燃化に効果を向上させる。平均重合度が2.5未満の低分子量オルガノシロキサンでは、燃焼時における熱による気化で難燃化効果が低下してしまい、20を超えると燃焼時の動き易さがなくなり難燃化効果が低下し、またエポキシ樹脂への分散性が悪くなることがある。より好ましくは、平均重合度で2.5〜15量体であり、更に好ましくは平均分子量で410以上2,000未満の範囲をも満たすことがよい。
【0040】
このようなオルガノポリシロキサンは公知の方法で製造できる。例えば、上記のシロキサン単位を形成し得るオルガノクロロシランに、全てのクロル基と反応する過剰のアルコールと水を反応させてアルコキシ基含有オルガノシランを形成し、減圧ストリップ等の方法で未反応アルコール、水及び反応副生物である塩化水素を除去して目的物を得る。目標のアルコキシ基含有率や平均分子量のものを調製するには、反応させるアルコールと水の量を調整して行う。水は目標の平均分子量が達成される理論量とし、アルコールは目標のアルコキシ基量を達成する理論量より過剰にすれば目標の構造に近いオルガノポリシロキサンが得られる。
【0041】
上記のシロキサン単位を形成し得るアルコキシシランが入手できれば、目標の平均分子量が達成できる理論量の水を加えて部分加水分解縮合反応させる方法も可能である。この場合は、反応を促進する触媒として、酸、塩基、有機金属化合物を添加することが望ましい。副生したアルコールは常圧蒸留や減圧ストリップにより除去して目的物を得る。より保存安定性を高める必要がある場合は、添加した反応触媒を中和等の方法により除去してもよい。いずれの方法においても、ゲルの発生や分子量分布の広がりを抑制する目的で有機溶剤を配合することも可能である。
【0042】
本発明における(G)成分であるオルガノポリシロキサンの添加量は、(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、(H)成分の合計量100重量%に対して2〜20重量%が好ましい。2重量%未満では難燃性を十分に付与することができず、20重量%を超えると成形時の粘度が高くなり、また成形品の外観や強度に悪影響を与える場合がある。
【0043】
本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、(H)下記平均組成式(2)で示されるホスファゼン化合物を使用するものである。
【化3】
(但し、Xは単結合、又はCH2,C(CH3)2,SO2,S,O,及びO(CO)Oから選ばれる基、YはOH,SH又はNH2、R4は炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基,NH2,NR5R6並びにSR7から選ばれる基で、R5,R6,R7は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。d,e,f,nは、0≦d≦0.25n、0≦e<2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2n、3≦n≦1,000を満足する数を示す。)
【0044】
上記式(2)のホスファゼン化合物を添加した本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、赤リン、リン酸エステル等のリン系難燃剤を添加したエポキシ樹脂組成物と比較して、熱水抽出特性に優れ、耐湿信頼性に特に優れる硬化物を得ることができる。また、上記式(2)のホスファゼン化合物を本発明のオルガノポリシロキサンと併用することにより、更に高い難燃効果を得ることができる。式(2)において、nは3〜1,000であるが、より好ましい範囲は3〜10である。合成上特に好ましくはn=3である。
【0045】
d,e,fの比率は、0≦d≦0.25n、0≦e<2n、0≦f≦2n、2d+e+f=2nである。0.25n<dでは、ホスファゼン化合物の分子間架橋が多いため、軟化点が高くなり、エポキシ樹脂中に相溶しにくく、期待される難燃効果が得られない。
e,fの比率は、0≦e<2n、0≦f≦2nであるが、難燃性と硬化性、高温保管時の電気抵抗性を高いレベルで両立するためには0.67n≦e≦1.33n、0.67n≦f≦1.33nが望ましい。
【0046】
X,Y,R4は上記の通りであり、R4は電子供与性の基である。
電子供与基の置換がない場合、Yの求核性が低下するため、エポキシ基との反応性が低くなる。そのため、式(2)のホスファゼン化合物の添加量を増やした場合、硬化性の低下、高温時の電気抵抗性の低下が生じる。また硬化性が悪いと熱分解し易いため、難燃性も低下する。
なお、Xが単結合である場合、
【化4】
で表される。
また、R4が炭素数5以上のアルキル基、アルコキシ基において、炭素数が増加すると難燃性が低下する。従ってメチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基が望ましい。
【0047】
また、(H)成分であるホスファゼン化合物の添加量は、(A)、(B)、(E)、(F)、(G)、(H)成分の合計量100重量%に対し、2〜20重量%が好ましい。添加量が2重量%未満では十分な難燃効果が得られない場合があり、また20重量%を超えると、流動性の低下を引き起こす場合がある。
【0048】
本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、本発明の目的及び効果を発現できる範囲内に限って、他の難燃剤、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の無機化合物を添加することもできる。但し、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物は配合されない。
【0049】
本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、カルナバワックス、高級脂肪酸、合成ワックス等のワックス類、カーボンブラック等の着色剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を添加配合することができる。
【0050】
本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサ−等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。
【0051】
このようにして得られる本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、各種の半導体装置の封止用に有効に利用でき、この場合、封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物の成形温度は150〜180℃で30〜180秒、後硬化は150〜260℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【0052】
【発明の効果】
本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、成形性に優れると共に、難燃性及び耐湿信頼性に優れた硬化物を得ることができる。しかも、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモンをエポキシ樹脂組成物中に含有しないので、人体、環境に対する悪影響もないものである。
また、本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、難燃性、耐湿信頼性に優れたものであり、産業上特に有用である。
【0053】
【実施例】
以下、ホスファゼン化合物、オルガノポリシロキサンの合成例、及びエポキシ樹脂組成物の実施例と比較例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、式中のMeはメチル基である。
【0054】
[合成例A]
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム8.6g(214mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール19.8g(211mmol)のTHF75ml溶液を滴下した。30分撹拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.0g(34.5mmol)のTHF75ml溶液を滴下し、18時間加熱還流を行った。溶媒を減圧留去し、メタノールを加え析出した結晶をメタノール、水で洗浄し、白色結晶を23.8g得た。
【化5】
【0055】
[合成例B]
窒素雰囲気下、室温にてヘキサクロロトリホスファゼン13.0g(37.0mmol)、ヒドロキノン36.9g(335mmol)、シクロヘキサン150mlの混合物中に、ピリジン32.4g(410mmol)を滴下した。22時間加熱還流後、デカンテーションにより得られた下層の黄色シロップ状物を80%酢酸80mlに溶解し、水500mlに移して結晶を得た。その結晶をメタノールに溶かし、水に移して結晶を得た。この操作を水が中性になるまで繰返し、白色結晶を16.5g得た。
【化6】
【0056】
[合成例C]
窒素雰囲気下、室温にてヘキサクロロトリホスファゼン25.5g(73mmol)、メチルヒドロキノン121.8g(733mmol)、シクロヘキサン900mlの混合物中に、γ−ピコリン68.3g(733mmol)を滴下した。4時間加熱還流後、デカンテーションにより得られた下層の黄色シロップ状物を80%酢酸160mlに溶解し、水500mlに移して結晶を得た。その結晶をメタノールに溶かし、水に移して結晶を得た。この操作を水が中性になるまで繰返し、淡茶色結晶を68.2g得た。
【化7】
【0057】
[合成例D]
窒素雰囲気下、室温にてヘキサクロロトリホスファゼン12.0g(35.0mmol)、メチルヒドロキノン25.8g(155mmol)、フェノール14.6g(155mmol)、シクロヘキサン150mlの混合物中に、ピリジン30.0g(380mmol)を滴下した。16時間加熱還流後、デカンテーションにより得られた下層の黄色シロップ状物を80%酢酸80mlに溶解し、水500mlに移して結晶を得た。その結晶をメタノールに溶かし、水に移して結晶を得た。この操作を水が中性になるまで繰返し、白色結晶を22.8g得た。
【化8】
【0058】
[合成例E]
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム4.8g(119mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール10.2g(108mmol)、4,4’−スルホニルジフェノール0.45g(1.8mmol)のTHF50ml溶液を滴下した。30分撹拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.5g(36.0mmol)のTHF50ml溶液を滴下後、5時間加熱還流を行った。そこに、別途0℃で水素化ナトリウム5.2g(130mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール11.2g(119mmol)のTHF50ml溶液を滴下し、更に19時間加熱還流した。溶媒を減圧留去後、クロロベンゼンを加えて溶解し、5%NaOH水溶液200ml×2、5%硫酸水溶液200ml×2、5%炭酸水素ナトリウム水溶液200ml×2、水200ml×2で抽出を行った。溶媒を減圧留去し、黄褐色結晶を20.4g得た。
【化9】
【0059】
[合成例F]
窒素雰囲気下、0℃で水素化ナトリウム4.6g(114mmol)をTHF50mlに懸濁させ、そこにフェノール9.7g(104mmol)、4,4’−スルホニルジフェノール0.40g(1.7mmol)のTHF50ml溶液を滴下した。30分撹拌後、ヘキサクロロトリホスファゼン12.5g(36.0mmol)のTHF50ml溶液を滴下後、5時間加熱還流を行った。溶媒を減圧留去後、シクロヘキサン150ml、メチルヒドロキノン57.3g(345mmol)を加え、そこにピリジン27.3g(345mmol)を滴下した。18時間加熱還流した後、デカンテーションにより得られた下層の黄色シロップ状物を80%酢酸80mlに溶解し、水500mlに移して結晶を得た。その結晶をメタノールに溶かし、水に移して結晶を得た。この操作を水が中性になるまで繰返し、茶褐色結晶を25.8g得た。
【化10】
【0060】
[合成例G]
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1lフラスコにフェニルトリクロロシラン211g(1モル)とトルエン143gを仕込み、オイルバスで内温40℃にまで加熱した。滴下ロートにメタノール64g(2モル)を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、アルコキシ化反応中に発生する塩化水素ガスを系外へ除去しながら反応を進めた。滴下終了後、更に内温40℃で撹拌を1時間続けて熟成した。次に滴下ロートに水12g(0.7モル)を仕込み、フラスコ内へ撹拌しながら1時間で滴下し、加水分解縮合反応中に発生する塩化水素ガスを系外へ除去しながら、反応を進めた。滴下終了後、更に内温40℃で撹拌を1時間続けて熟成し、引き続き減圧蒸留によりトルエン、過剰分のメタノール、未反応の水、塩化水素を除去して、液状のメトキシ基含有ポリオルガノシロキサン151gを得た。
得られたオルガノポリシロキサンは、R1 mR2 nSi(OR3)p(OH)qO(4-m-n-p-q)/2で表すと、m=1.0、n=0、n/(n+m)=0でSi原子上のSi−C結合で結合した有機置換基は100モル%がフェニル基であり、p=1.5で、R3=メチル基、q=0.2、三官能性シロキサン単位を100モル%含み、外観は無色透明液体で、平均重合度3(平均分子量は500)であった。
【0061】
[実施例1〜5、比較例1〜7]
表1,2に示す成分を熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。これらの組成物につき、次の(i)〜(vii)の諸特性を測定した。結果を表1,2に示す。
(i)スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で測定した。
(ii)ゲル化時間
組成物のゲル化時間を175℃熱板上で測定した。
(iii)ガラス転移温度
175℃,6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で10×4×50mmの棒を成形し、260℃,4時間ポストキュアーした。その後動的粘弾性スペクトルにより、測定周波数5Hz時のガラス転移温度を求めた。
(iv)高温電気抵抗特性
175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で70φ×3mmの円板を成形して180℃,4時間ポストキュアーした。その後、150℃雰囲気下で体積抵抗率を測定した。
(v)難燃性
UL−94規格に基づき、1/16インチ厚の板を、成形条件175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒で成形し、180℃,4時間ポストキュアーしたものの難燃性を調べた。
(vi)耐湿性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を成形条件175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒で成形し、180℃,4時間ポストキュアーした。このパッケージを140℃/85%RHの雰囲気中−5Vの直流バイアス電圧をかけて500時間放置した後、アルミニウム腐食が発生したパッケージ数を調べた。
(vii)高温保管信頼性
アルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを30μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を成形条件175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒で成形し、180℃,4時間ポストキュアーした。このパッケージを200℃雰囲気中500時間放置した後、発煙硝酸で溶解、開封し、金線引張り強度を測定した。引張り強度が初期値の70%以下となったものを不良とした。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
*1 エポキシ樹脂
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:EOCN1020−55(日本化薬製、エポキシ当量200)
*2 硬化剤
フェノールノボラック樹脂:DL−92(明和化成製、フェノール性水酸基当量110)
*3 マレイミド基含有化合物
ビスマレイミド:BMI−70(ケイアイ化成製)
*4 アルケニル基含有フェノール化合物
o−(1−プロペニル)フェノールノボラック樹脂:1PP−1(群栄化学製)*5 オルガノポリシロキサン化合物:合成例G
*6 ホスファゼン化合物:合成例A〜F
*7 無機充填材:球状溶融シリカ(龍森製、平均粒径20μm)
*8 硬化触媒:トリフェニルホスフィン(北興化学製)
*9 離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製)
*10 カーボンブラック:デンカブラック(電気化学工業製)
*11 シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業製)
【0065】
表1,2の結果より、本発明の半導体封止用難燃性エポキシ樹脂組成物は、高Tgかつ難燃性、信頼性に優れた硬化物を得ることができ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置は、耐熱性、難燃性、耐湿性、高温保管信頼性に優れるものである。しかもBr化エポキシ樹脂、三酸化アンチモンを樹脂組成物中に含有しないので、人体・環境に対する悪影響がないものである。
Claims (2)
- 下記(A)〜(H)成分を必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)無機充填材
(D)硬化促進剤
(E)分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物
(F)分子中に1個以上のアルケニル基を有するフェノール化合物
(G)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン
R1 mR2 nSi(OR3)p(OH)qO(4-m-n-p-q)/2 (1)
(式中、R1はフェニル基、R2は炭素数1〜6の一価炭化水素基又は水素原子、R3は炭素数1〜4の一価炭化水素基を表し、m,n,p,qは、0≦m≦2.0、0≦n≦1.0、0≦p≦2.5、0≦q≦0.35、0.92≦m+n+p+q≦2.8を満足する数である。)
(H)下記平均組成式(2)で示されるホスファゼン化合物
- 請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。
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