JP3823762B2 - 継目無金属管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は継目無金属管の製造方法、より詳しくは傾斜ロール式の穿孔圧延機による穿孔圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
継目無金属管の製造方法として広く採用されているいわゆるマンネスマン製管法では、周知のように、所定の温度に加熱された中実の丸ビレット(以下、ビレットともいう)を素材とし、一対の主ロールとプラグを有する傾斜ロール式の穿孔圧延機(以下、ピアサという)に送給してその軸心部に孔を明けて中空素管を得る。次いで、得られた中空素管をそのまま、あるいは必要に応じて前記ピアサと同一構成のエロンゲータミルもしくはシェルサイザに通して拡径もしくは縮径して定径後、プラグミル、マンドレルミル等の後続する延伸圧延機で延伸圧延する。その後、ストレッチレデューサ、リーラ、サイザ等の仕上げ圧延機で磨管、形状修正およびサイジングを行う精整工程を経て製品管が製造される。
【0003】
図1は、上記の如きマンネスマン製管法の実施に用いられるピアサの一例を示す斜視図である。図示例のピアサは、被穿孔材料であるビレット4の送り線となるパスラインX−Xを挟んで互いに逆方向に傾斜させて対向配置された一対のバレル型の主ロール1、1を備え、この主ロール1、1と位相を90°異ならせて前記パスラインX−Xを挟んで対向配置された一対のディスクロール2、2を備えるとともに、パスラインX−X上に穿孔具としてのプラグ3を芯金5で支持して構成されている。プラグ3の先端は、主ロール1、1間が最短距離となるゴージ6と呼ばれる位置よりも圧延上流側に位置するように設置され、ゴージ6からの突き出し距離PLはプラグリードと呼ばれる。
【0004】
上記のように構成されたピアサにおいては、主ロール1、1がパスラインX−Xに対して傾斜角βを付与されて同一方向に回転している。このため、パスラインX−Xに沿って白抜き矢符方向に送給された丸ビレット4は、主ロール1、1間に噛み込んで後は螺進行移動し、プラグ3によりその軸心部に孔を明けられて中空素管となる。この間、ディスクロール2、2は、圧延中の丸ビレット4の案内部材の役目をすると同時に、プラグ3により穿孔された中空素管の主ロール1、1の対向方向と90°位相した方向への膨らみを抑制して外径形状を整える役目をなしている。また、このディスクロール2、2は、穿孔された中空素管との摺動を軽減して焼付きが発生しないように丸ビレット4の送り出し方向と同方向に回転駆動されている。
【0005】
なお、ピアサとしては、主ロール1、1の形状がコーン型で、そのロール軸心をパスラインX−Xに対して入側で近く、出側で遠くなるように配置することで上記の傾斜角βとは異なる交叉角γを付与した交叉型と称されるピアサもある(後述する図8および図10(a)参照)。また、いずれのピアサの場合も、ディスクロール2、2は、固定式のガイドシューと称されるプレート部材で代用される場合もある。
【0006】
ところで、近年、高合金鋼やステンレス鋼等の難加工性材料のマンネスマン製管がおこなわれるようになっており、上記のプラグ3には、使用寿命が長いという性能に加え、中空素管の内面に疵が発生するのを抑制し得るという性能が強く求められている。
【0007】
中空素管の内面疵を抑制する方法としては、例えば、特開昭57−168711号公報にも記載されているように、(a)マンネスマン破壊の抑制、(b)円周方向剪断歪みの抑制、が不可欠である。この(a)および(b)の現象は、ピアサ特有の現象で、これらを抑制しない限り、高合金鋼やステンレス鋼等の難加工性材料の高能率なマンネスマン製管はあり得ない。また、使用するプラグについても長寿命なことが要求される。
【0008】
しかし、上記の公報には、主ロールの傾斜角βと後述する交叉角γを調整することによって上記の(a)および(b)を抑制する方法が示されているにすぎず、プラグの長寿命化は勿論、プラグ自体に上記の(a)および(b)の抑制機能を持たせることは全く考慮されていない。
【0009】
高合金鋼やステンレス鋼等の難加工性材料の穿孔圧延に用いて長寿命なプラグとしては、特開平10−137818号公報に示される形状のプラグがある。しかし、この公報に示されるプラグは、図2に示すように、全体の形状が単純な砲弾形状のいわゆる2ゾーン型と称されるプラグであり、図中に示す各部寸法のうちのr、RおよびDのみの関係を、下記の(4) 〜(6) 式を満たす形状に規定したプラグでしかなく、プラグ自体に上記の(a)および(b)の抑制機能を持たせることは全く考慮されていない。
【0010】
R≧−160r+12D ・・・・・・・・・・・ (4)
R≧18r+3.6D ・・・・・・・・・・・・ (5)
−20r+22D≧R≧90r−15D ・・・・ (6)
また、長寿命なプラグとしては、図3に示すように、曲率半径r、軸方向長さL1の先端部と曲率半径Rの円弧回転面である軸方向長さL3のワーク部との間に、外径d、軸方向長さL2の円柱状の平行部を形成し、この平行部と前記の先端部とからなる先端圧延部を形成したプラグもある(1970年発行のドイツ文献「Stahlrohrnerstellung(鋼管の製造)Neumann 著)。
【0011】
図3に示す形状のプラグの場合、先端圧延部のワーク部近傍部分に被穿孔材料が接触しない隙間が形成され、この隙間にプラグの内部に蓄積される熱が放出されるために先端部が溶損しにくく、長寿命になるとある。
【0012】
そこで、本発明者らは、図2に示す単純な砲弾形状のプラグと図3に示す形状のプラグとの使用比較試験をおこなった。その結果、図3に示す形状のプラグの方が、若干長寿命なこと、内面疵が発生しにくいこと、が確認されたが、噛み込み不良が生じやすく、生産性が低下するという問題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたもので、その課題は、図3に示す形状のプラグを用いる際、噛み込み不良が発生するのを防止するためにプラグリードを小さく、換言すればプラグ先端ドラフト率を大きくした場合にあっても、内面疵の発生原因である、上記の(a)マンネスマン破壊の抑制と(b)円周方向剪断歪みの抑制が図り得、内面疵の少ない製品を得ることが可能な継目無金属管の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、次の継目無金属管の製造方法にある。
【0015】
外径d(mm)が軸方向にわたり等径または外径dが軸方向後端に向かうに従って増大するテーパ角度の半角が2゜以下の軸方向長さL2(mm)の円柱状で、その先端面が曲率半径r(mm)、軸方向長さL1(mm)の球面状に形成された先端圧延部と、この先端圧延部に連続していて外径が軸方向後端に向かうに従って増大するように曲率半径R(mm)の円弧回転面で形成された軸方向長さL3(mm)のワーク部と、このワーク部に連続していて外径が軸方向後端の最大外径D(mm)に向かうに従って増大するようにテーパ角度2θ(゜)で形成されたテーパ円柱状の軸方向長さL4(mm)のリーリング部とを有するプラグを用い、外径BD(mm)の中実丸ビレットを傾斜ロール式の穿孔圧延機で穿孔圧延する継目無鋼金属管の製造方法であって、前記プラグとして、少なくとも前記の外径d、曲率半径R、軸方向長さL1、L2およびL3が下記の(1) 式、(2) 式および(3) 式を満たすものを用いる継目無金属管の製造方法。
【0016】
0.12≦d/D≦0.35 ・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
0.020≦(d/2BD)/(R/L3)≦0.046 ・・・ (2)
3d≧L1+L2≧0.5d ・・・・・・・・・・・・・・・・ (3)
上記の本発明では、傾斜ロール式の穿孔圧延機として、主ロールの形状がコーン型で、そのロール軸心とパスラインとの離間距離が入側で小さく、出側で大きい交叉型の傾斜ロール式穿孔圧延機を用いるのが望ましく、この場合には生産性が一段と向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を上記のように規定した理由について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
まず始めに、ピアサによる穿孔圧延において内面疵が発生する原因は、次のように考えられている。すなわち、プラグの先端よりも上流側のビレット軸心部にマンネスマン破壊が発生し、このマンネスマン破壊が主ロールとプラグによる肉厚加工時に生じる円周方向の剪断歪みを受けて変形成長して内面疵になる。
【0019】
そこで、本発明者らは、図3に示す形状のプラグを用いた場合におけるマンネスマン破壊の発生状況と円周方向の剪断歪みの程度を知るため、モデルミルを用いて種々の条件で穿孔圧延実験をおこなった。
【0020】
ここで、図3に示す形状のプラグは、図に示すように、外径dの軸方向長さL2の円柱状で、その先端面が曲率半径r、軸方向長さL1の球面状に形成された先端圧延部と、この先端圧延部に連続していて外径が軸方向後端に向かうに従って増大するように曲率半径Rの円弧回転面で形成された軸方向長さL3のワーク部と、このワーク部に連続していて外径が軸方向後端の最大外径Dに向かうに従って増大するようにテーパ角度2θで形成されたテーパ円柱状の軸方向長さL4のリーリング部とを有する。
【0021】
なお、実験には鉛快削鋼のビレットを用いた。また、マンネスマン破壊の程度は、図4に示すように、穿孔圧延を途中止めし、得られた材料(符号4の部分がビレット、7の部分が中空素管)を縦割りしてプラグ先端直前のマンネスマン破壊MCの発生程度を調査した。さらに、円周方向の剪断歪みの程度は、図5に示すように、放電加工によってビレット4の半径線上3箇所にピン4aを埋め込み、穿孔圧延して得られた中空素管7の横断面を酸洗後観察して3箇のピン4aの位置を確認することにより、円周方向の剪断歪量(rθ/t)を調査した。
【0022】
図6と図7は、上記の調査結果を要約して示す図である。すなわち、図6は、図3に示すプラグの形状を特定するために本発明者らが創出した無次元量のパラメータ値の1つである「(d/2BD)/(R/L3)」を横軸、円周方向剪断歪量(rθ/t)およびマンネスマン破壊MCの大きさを縦軸に採って示す図である。
【0023】
また、図7は、1つのプラグのプラグリードPL、換言すればプラグ先端ドラフト率PDR(%)を種々変化させた場合における結果を示し、プラグ先端ドラフト率PDRを横軸、円周方向剪断歪量(rθ/t)およびマンネスマン破壊MCの大きさを縦軸に採って示す図である。
【0024】
なお、プラグの形状は、上記のパラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」が小さいと尖頭化し、大きいと鈍頭化する。
【0025】
また、上記のプラグリードPLとは、図8に示すように、コーン型の主ロール8のゴージ6の位置からプラグ3の先端までの距離のことであり、プラグ先端ドラフト率PDR(%)とは、ビレット4の外径BDとプラグ3の先端位置における主ロール8、8間の最短距離ROPとを用い、式「{(BD−ROP)/BD}×100(%)」で定義される値のことである。なお、図8中のROは、ゴージ6の位置における主ロール8、8間の最短距離である。
【0026】
図6に明らかなように、マンネスマン破壊MCは、パラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」が小さいほど抑制される傾向にある。その理由は、プラグ3の形状が尖頭化すると、ビレット4に対するプラグ3からの軸方向反力が低下し、ビレット4の前進速度が増すため、ビレット4が主ロール8(1)に噛み込んでからプラグ3の先端に達するまでの時間が短縮されて回転鍛造回数が減少し、マンネスマン破壊MCが生じにくくなるためである。
【0027】
ところが、円周方向剪断歪量(rθ/t)は、上記のパラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」が大きいほど抑制される傾向にある。その理由は、次の通りである。
【0028】
図9は、プラグ3の軸方向各部の回転周速度と主ロール1(8)の軸方向各部の回転周速度との関係を示す図である。この図からわかるように、上記のパラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」を小さくすると、肉厚圧下がおこなわれるゴージ6までの間のプラグ3のワーク部における主ロールとプラグ3との回転周速度差が大きくなり、これに伴って円周方向剪断歪量(rθ/t)も大きくなる。これに対し、パラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」を大きくすると、両者の回転周速度差が小さくなり、これに伴って円周方向剪断歪量(rθ/t)も小さくなるためである。
【0029】
また、図9から明らかなように、バレル型の主ロール1の回転周速度は、ゴージ6の位置が最大で、入側と出側に向かう従って減少する。これに対し、コーン型の主ロール8の回転周速度は、入側から出側に向かって増大するため、両者の回転周速度差は主ロールがコーン型の場合の方が小さくなる。
【0030】
したがって、上記のパラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」が同じプラグの場合、コーン型の主ロールを備えたピアサを用いれば、円周方向剪断歪みがより顕著に抑制される。
【0031】
なお、プラグ3と主ロール1(8)との回転周速度差を小さくする方法には、図9中に二点鎖線で示すように、プラグリードPL(前述の図8参照)を大きく、換言すればプラグ先端ドラフト率PDRを小さくする方法がある。そして、この場合には、ビレット4が主ロール1(8)に噛み込んでからプラグ3の先端に到達するまでの距離が短縮されるので、マンネスマン破壊MCが抑制される。
【0032】
しかし、プラグ先端ドラフト率PDRを小さくすると、ビレット4が噛み込み不良を起こしやすくなり、噛み込み不良を起こしたビレット4を除去するために圧延停止を余儀なくされ、生産性が低下する。
【0033】
ところが、図3に示す形状のプラグの各部寸法のうち、dがDの0.35倍以下、L1+L2がdの0.5倍以上で、かつ、RとL3が上記のパラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」で0.046以下を満たす形状にすると、プラグ先端ドラフト率PDRを、図2に示した単純な砲弾形状プラグの場合の限界値以上に小さくしても噛み込み不良が発生せず、マンネスマン破壊と円周方向剪断歪が従来以上に抑制されて内面疵のない中空素管を圧延停止を伴うことなく高い生産性で製造可能なことが判明した。
【0034】
ただし、dをDの0.12倍未満にすると、先端圧延部が溶損しやすくなってプラグ寿命が低下すること。L1+L2をdの3倍超にする先端圧延部が変形しやすくなるのに加え、プラグ全体の長さが長くなりすぎて正常な設定ができなくなること。RとL3が上記のパラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」で0.020未満になる形状にすると、図2に示した単純な砲弾形状プラグ以上の円周方向剪断歪の抑制効果が得られないことも判明した。
【0035】
よって、本発明では、ビレット4の外径をBDとした時、図3に示す形状のプラグの各部寸法のうち、少なくとも前記の外径d、曲率半径R、軸方向長さL1、L2およびL3とが、下記の(1) 式、(2) 式および(3) 式を満たす形状のプラグを用いることとした。
【0036】
0.12≦d/D≦0.35 ・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
0.020≦(d/2BD)/(R/L3)≦0.046 ・・・ (2)
3d≧L1+L2≧0.5d ・・・・・・・・・・・・・・・・ (3)
なお、長さがL1+L2の先端圧延部を構成する先端球面の曲率半径rは、0.5d(L1=r)とするのが最も好ましいが、必ずしもr=0.5dとする必要はなく、r>0.5dであってもよい。ただし、rをあまり大きくすると、その先端面が平滑面に近くなり、ビレット4に対するプラグ3からの軸方向反力が増してビレット4の前進速度が遅くなって回転鍛造回数が増加し、マンネスマン破壊MCが生じやすくなるので、rの上限は大きくともr=d程度に留めるのが望ましい。
【0037】
また、外径d、軸方向長さL2の円柱状部分は、必ずしも軸方向にわたり等径である必要はなく、改削と熱処理を繰り返して再使用することを考慮し、外径dの軸方向の先端から後端に向かうに従って増大するテーパ角度の半角が2゜以下のテーパ円柱状とするようにしてもよい。
【0038】
【実施例】
各部の寸法が表1示す値の図2に示す形状のプラグ1種類(表1中の代符F)と図3に示す形状のプラグ7種類(表1中の代符F以外)を準備するとともに、いずれのロールも、ゴージ部の外径が410mm、傾斜角βを0゜、交叉角γを後述する各角度に設定した状態において、主ロールの入側面とパスラインX−Xに平行な直線とがなす角度である入側面角と、主ロールの出側面とパスラインX−Xに平行な直線とがなす角度である出側面角が、ともに3.5゜の4種類(バレル型1種類、コーン型3種類)を準備した。
【0039】
図10は、準備した4種類の主ロールを示す図で、同図(a)はバレル型、同図(b)はコーン型である。なお、具体的な寸法の値の記載は省略したが、コーン型の主ロールの入側径DFと出側径DRは、後述する交叉角γ(5゜、10゜および15゜)毎に異なる径にしてある。
【0040】
準備したプラグと主ロールは、モデルミルにセットし、外径70mm、長さ300mmの18%Cr−8%Ni−1%Nbのオーステナイト系ステンレス鋼からなるビレットを1250℃に加熱し、外径74mm、肉厚5.8mm、長さ930mmの中空素管を得る穿孔圧延試験をおこなった。
【0041】
その際、主ロールの傾斜角βは全て10°とし、コーン型の主ロールの交叉角γはそれぞれ5゜、10゜、15゜とした。また、プラグ先端ドラフト率PDRは、3%、4%、5%、6%、7%の5段階に変化させた。その時の主ロール間の最短距離ROとROP、およびプラグリードPL(いずれも図8参照)の設定寸法を表2に示す。
【0042】
なお、上記18%Cr−8%Ni−1%Nb鋼は、熱間加工性が相当に劣悪なオーステナイト系ステンレス鋼のなかでも特に熱間加工性の劣悪なものである。試験の結果は、表3に示すとおりである。すなわち、本発明で規定する条件を満たすプラグ(代符B〜D)を用いた場合には、プラグ先端ドラフト率PDRを3%と低くしても、噛み込み不良は起こらず、しかも内面疵のない中空素管が得られている。
【0043】
これに対して、本発明で規定する条件を満たさないプラグ(代符A、E、G)および図2に示した2ゾーン型のプラグ(代符F)を用いた場合には、プラグ先端ドラフト率PDRが3%ではいずれも噛み込み不良が起こっており、プラグによってはプラグ先端ドラフト率PDRを4%以上に大きくしても噛み込み不良が起こっている。また、(1) 式と(2) 式を満たさないプラグ(代符H)は、いずれの条件においても先端が溶損している。
【0044】
さらに、本発明で規定する条件を満たすプラグ(代符B〜D)を用いた場合、主ロールがバレル型で交叉角γが0゜のピアサでは、内面疵が発生しないプラグ先端ドラフト率PDRの最大値は6%であるが、本発明で規定する条件を満たさないプラグを用いた場合の最大値は4%と低い。また、主ロールがコーン型で交叉角γが5゜のピアサでは、内面疵が発生しないプラグ先端ドラフト率PDRの最大値は7%であるが、本発明で規定する条件を満たさないプラグを用いた場合の最大値は5%と低く、この傾向は交叉角γが大きいピアサほど顕著である。これに対して、2ゾーン型のプラグを用いた場合の内面疵が発生しないプラグ先端ドラフト率PDRは、交叉角γが10゜と15゜のピアサにおける5%のみである。
【0045】
【表1】
【表2】
【表3】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ビレットの噛み込み不良を生じさせることなく、マンネスマン破壊と円周方向剪断歪を大幅に抑制し得る。このため、内面疵の少ない内面品質が良好な製品を高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピアサの一例を示す斜視図である。
【図2】全体の形状が単純な砲弾形状の2ゾーン型プラグの一例を示す図である。
【図3】本発明で用いるプラグの形状を示す図である。
【図4】マンネスマン破壊の調査方法を説明するための図である。
【図5】円周方向剪断歪の調査方法を説明するための図である。
【図6】図3に示すプラグの形状を特定する無次元量パラメータ値「(d/2BD)/(R/L3)」とマンネスマン破壊および円周方向剪断歪との関係を示す図である。
【図7】プラグ先端ドラフト率PDRとマンネスマン破壊および円周方向剪断歪との関係を示す図である。
【図8】プラグリードとプラグ先端ドラフト率PDRを説明するための図である。
【図9】主ロールの回転周速度とプラグの回転周速度との関係を示す図である。
【図10】実施例で用いた主ロールの形状と寸法を示す図である。
【符号の説明】
1:バレル型の主ロール、
2:ディスクロール、
3:プラグ、
4:ビレット、
5:芯金、
6:ゴージ、
7:中空素管、
8:コーン型の主ロール、
Claims (2)
- 外径d(mm)が軸方向にわたり等径または外径dが軸方向後端に向かうに従って増大するテーパ角度の半角が2゜以下の軸方向長さL2(mm)の円柱状で、その先端面が曲率半径r(mm)、軸方向長さL1(mm)の球面状に形成された先端圧延部と、この先端圧延部に連続していて外径が軸方向後端に向かうに従って増大するように曲率半径R(mm)の円弧回転面で形成された軸方向長さL3(mm)のワーク部と、このワーク部に連続していて外径が軸方向後端の最大外径D(mm)に向かうに従って増大するようにテーパ角度2θ(゜)で形成されたテーパ円柱状の軸方向長さL4(mm)のリーリング部とを有するプラグを用い、外径BD(mm)の中実丸ビレットを傾斜ロール式の穿孔圧延機で穿孔圧延する継目無鋼金属管の製造方法であって、前記プラグとして、少なくとも前記の外径d、曲率半径R、軸方向長さL1、L2およびL3が下記の(1) 式、(2) 式および(3) 式を満たすものを用いることを特徴とする継目無金属管の製造方法。
0.12≦d/D≦0.35 ・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
0.020≦(d/2BD)/(R/L3)≦0.046 ・・・ (2)
3d≧L1+L2≧0.5d ・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) - 傾斜ロール式の穿孔圧延機として、主ロールの形状がコーン型であり、そのロール軸心とパスラインとの離間距離が入側で小さく、出側で大きい交叉型の傾斜ロール式穿孔圧延機を用いることを特徴とする請求項1に記載の継目無金属管の製造方法。
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