JP3823028B2 - 磁気ヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は磁気ヘッド及び磁気記録再生装置に関するものである。わけても、本願発明はトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド及びこれを用いた磁気記録再生装置に関するものである。本願発明の磁気記録再生装置は電子計算機及び情報処理装置に用いて有用である。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録の高密度化に伴い、高感度な再生用磁気ヘッドが求められている。こうした用途に、現在その再生ヘッドとして異方性磁気抵抗(AMR)効果を利用した磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)が用いられている。このMRヘッドの感磁部の材料にはNiFeが用いられている。この材料の磁気抵抗変化率は約2%で、実現可能な記録密度は数Gb/in2である。さらに、最近では巨大磁気抵抗(GMR)効果を利用したスピンバルブ型磁気ヘッド(GMRヘッド)も製品に用いられ始めた。このGMRヘッドは、2つの強磁性層で非磁性金属層を挟んだ構造を有している。この構造では一方の強磁性層の磁化を固定させて2つの強磁性層の磁化方向のなす角度によって高い磁気抵抗変化率が得られる。GMRヘッドの抵抗変化率は約4〜5%で、数十Gb/in2クラスの記録も可能となった。しかし、今後更に記録密度を向上させるには、より大きな磁気抵抗変化率を有する磁気ヘッドが必要となる。
【0003】
このような高い磁気抵抗変化率を有する磁気抵抗効果センサとして、2つの強磁性層の間にトンネル障壁層が挟まれたトンネル磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果膜(TMR)が注目されている。このトンネル磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果膜は高密度記録を実現する上で好適と目されている。このTMRではFe膜の間にAl酸化膜が挟まれた構造で、室温で約18%の大きな抵抗変化率が得られたと報告されている。この報告としては、例えば、ジャーナル オヴ マグネティズム アンド マグネティック マテリアルズ(第139巻、231頁、1995年)を挙げることが出来る。また、特開平4−103014号公報には、一方の強磁性層に反強磁性層を接して強磁性層の磁化方向を固定させた、スピンバルブタイプのTMRを開示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、トンネル磁気抵抗効果膜を用いた磁気抵抗効果センサにおいて、バルクハウゼンノイズを抑制し、安定性のある磁気抵抗効果センサを提供することにある。以下、その背景を説明する。
【0005】
TMRの場合、従来知られている磁気抵抗効果素子が磁性膜の膜面内方向に電流を流すのに対して、膜厚方向に電流を流す構成を有している。この構成の実現には、従来とは異なる磁気ヘッド構造が必要になると考えられる。その反面TMRは、磁気的には、従来開発されているスピンバルブ構造と類似した2つの強磁性層を有しており、これらの強磁性層の磁気的制御は当然必要とされる。さらに、膜厚方向に電流が流れるために、素子の大きさで素子抵抗が決定されてしまう。
【0006】
例えば、従来の磁気抵抗効果素子と同様のハードバイアス構造では、磁区制御のための硬磁性膜を素子の周囲に配置する。この為、TMRでこの構造を用いた場合には、硬磁性膜に電流がリークしてしまい、TMRの感磁部に正確に電流を印加することが難しくなる。また、TMRの感磁部には極薄のトンネル障壁層が露出する事になる。従って、対向面の加工において2つの強磁性層との短絡を防ぐために、極めて困難な加工技術が要求される。さらに、トラック幅が0.5μm程度になってくると、素子の抵抗は数100〜数kΩと桁違いに大きくなってしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した従来の諸問題を解決するためには、従来の対向面に露出した構造ではなく、対向面から引っ込めた構造とする事が有効である。しかしながらその場合、TMRの感磁部の強磁性層に加えて、TMRに媒体対向面から磁束を導くための磁束ガイドの磁気的制御も当然必要となってくる。本願発明はこの問題を併せて解決するものである。
【0008】
本願発明の第1の形態で、基本となる形態は、磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜の膜厚方向に電流を流すための一対の電極と、記録媒体面からの磁束を前記磁気抵抗効果膜に導くための磁束ガイドを有し、前記磁気抵抗効果膜は強磁性層を含む自由層と、トンネル障壁層と、強磁性層を含む固定層と、前記固定層の磁化を固定する反強磁性層とを備えたトンネル型磁気抵抗効果膜であり、且つ前記トンネル型磁気抵抗効果膜の自由層及び前記磁束ガイド双方の磁区を併せ制御が可能なる磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0009】
本願発明の代表例は、前記トンネル磁気抵抗効果膜の自由層及び前記磁束ガイドの磁区を制御するために、前記自由層及び前記磁束ガイドにバイアスをかけるための磁区制御層を同一平面内に備えた形態である。
【0010】
本願発明の別な例は、磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜の膜厚方向に電流を流すための一対の電極と、記録媒体面からの磁束を前記磁気抵抗効果膜に導くための磁束ガイドを備えた磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁気抵抗効果膜は強磁性層を含む自由層と、トンネル障壁層と、強磁性層を含む固定層と、前記固定層の磁化を固定する反強磁性層とを備えたトンネル型磁気抵抗効果膜であって、前記磁気抵抗効果膜が媒体面に露出しない位置に形成され、媒体面からとその対向面に伸びている前記磁束ガイドに接し、前記磁束ガイドにバイアス磁界を印加するための磁区制御層が積層されており、前記磁束ガイドを磁区制御することによって前記自由層も同時に磁区制御が可能な磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施の諸形態を説明するに先だって、本願発明の主な諸形態の概要を列挙する。
【0012】
本願発明の第1の形態で、基本となる形態は前述した。
【0013】
磁気抵抗効果センサの構成には、磁束ガイドの磁区制御を行う方法に大きく分けて2つの方法に大別される。それらは、いわゆるハード・バイアス構造と積層構造とである。しかし、本願発明がいずれの構造の磁気抵抗効果センサの場合にも適用出来ることは言うまでもない。
【0014】
本願発明の前提となるこれらの構造はこれまで知られたものであるが、簡潔にそれらの特徴を説明する。ハード・バイアス構造では、当該磁束ガイドの両端に磁区制御層を配置する方法、いわゆる磁束ガイド(ヨーク:yoke)と磁区制御層とが同じ面内に配置されている。この場合の磁区制御層は高抵抗を有する材料で構成される。従って、電流は所定の限られた領域にのみ流れる、即ち、所定のトンネル型磁気抵抗効果膜のみの領域に流れることとなる。他方、積層構造では、磁束ガイドと磁区制御層とが積層されている。この場合、磁束ガイドに磁区制御層を直接積層する方法、あるいは磁束ガイドに磁区制御層を中間層を介して積層する方法などがある。直接積層する場合、磁束ガイドと磁区制御層とが強磁性的に層間結合して、磁化の方向が平行に向いている。更に、磁束ガイドに磁区制御層を中間層を介して積層する場合、その中間層の設け方によって、2つの状態に分けられる。その第1は、磁束ガイドと磁区制御層とが強磁性的に層間結合して、磁化の方向が平行に向いている場合である。この構造は前記の積層型と類似するものである。あるいは、前記の積層型の一変形と言うことが出来る。第2は磁束ガイドと磁区制御層との端部で静磁結合している場合である。従って、この場合には、磁束ガイドと磁区制御層との各々の面内磁化の方向は反平行となっている。このように、前記積層構造の第1と第2の形態では、磁束ガイドと磁区制御層との磁化の方向の決定のされ方が異なっている。
【0015】
本願発明の骨子は、これらの諸構造によらず、磁束ガイドの磁区を制御することと、磁気抵抗効果膜の自由層をも併せて磁区制御を行う点にある。以下、その概念を説明する。
【0016】
図12は上述の各種形態を説明する概念図であり、磁束ガイドと磁区制御層の配置の諸例を示す断面を示している。断面は磁気抵抗素子の幅方向の断面である。図12は3つの代表的な形態の概念を示している。図12の(a)は磁束ガイドの両端に磁区制御層を配置する方法である。いわゆる磁束ガイド100の磁区制御層101とが同じ面内に配置されている。図12の(b)は磁束ガイド100と磁区制御層101とが積層されている例である。この場合、極めて薄い中間層を磁束ガイド100と磁区制御層101との間に挿入する場合もある。これらの例では、上述のように磁束ガイドと磁区制御層とが強磁性的に層間結合して、双方の磁化の方向104、105とが平行に向いている。一方、図12の(c)は磁束ガイド100と中間層108、磁区制御層101とが積層された例である。磁束ガイドと磁区制御層との端部102、103で静磁結合している場合である。この場合には、磁束ガイドと磁区制御層との各々の面内磁化の方向106、107は反平行となっている。
【0017】
一方、図13はTMRの磁区制御の骨子を説明するための断面図である。これらの関係においても、磁束ガイド100とTMR膜110とが直接積層されている場合(図13の(a))と、これらの間に中間層111が挿入されている場合(図13の(b))がある。しかし、いずれの場合も磁束ガイド100とTMR膜110との磁気的結合が存在する。従って、磁束ガイド100の磁区を制御することで、TMR膜中の自由層の磁区が制御される。こうして本願発明では、磁束ガイドの磁区をその磁区制御膜によって制御することで、TMR膜中の自由層の磁区が併せて制御される。
【0018】
以上の一般的説明を踏まえ、本願発明の更なる主な諸形態を列挙する。 本願発明の第2の形態は、磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜の膜厚方向に電流を流すための一対の電極と、記録媒体面からの磁束を前記磁気抵抗効果膜に導くための磁束ガイドを有し、前記磁気抵抗効果膜は強磁性層を含む自由層と、トンネル障壁層と、強磁性層を含む固定層と、前記固定層の磁化を固定する反強磁性層とを備えたトンネル型磁気抵抗効果膜であって、前記磁気抵抗効果膜の自由層にバイアス磁界を印加するための磁区制御層と、前記磁束ガイドにバイアス磁界を印加するための磁区制御層が同一平面内に形成されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。この第2の形態は、磁束ガイドの両端に磁区制御層が配置された方法である。
【0019】
第3の形態はより実際的なものである。即ち、この場合の磁気抵抗効果センサでは、前記磁気抵抗効果膜が媒体面に露出しない位置に形成され、媒体面からとその対向面に伸びている前記磁束ガイドに接し、前記磁気抵抗効果膜と磁束ガイドのトラック幅方向の両端部に磁区制御層が形成されている。
【0020】
第4の形態は、前記磁束ガイドが、前記磁気抵抗効果膜の媒体面側とその対向面側とに分離されている例である。
【0021】
第5の形態は、前記磁束ガイドが、前記磁気抵抗効果膜の媒体面側から対向面まで連続して形成されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0022】
第6の形態は、前記磁束ガイドと前期磁気抵抗効果膜の自由層との間に中間層が配置されており、前記磁束ガイドと前記自由層とが中間層を介して磁気的に結合されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0023】
第7の形態は、前記磁束ガイドが高抵抗軟磁性層からなる磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0024】
第8の形態は、前記磁気抵抗抵抗効果膜と前記磁束ガイドが絶縁層を介して形成されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0025】
第9の形態は、前記磁区制御層が前記磁気抵抗効果膜及び前記磁束ガイドに渡って形成されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0026】
第10形態は、前記磁区制御層が絶縁層を介して前記磁気抵抗効果膜及び前記磁束ガイドに渡って形成されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0027】
第11の形態は、前記磁区制御層が酸化物化合物を有してなる磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0028】
第12の形態は、既に触れた積層構造の形態の例である。この例の骨子は、前記磁気抵抗効果膜が媒体面に露出しない位置に形成され、媒体面からとその対向面に伸びている前記磁束ガイドに接し、前記磁束ガイドにバイアス磁界を印加するための磁区制御層が積層されている。この場合、前記磁束ガイドを磁区制御することによって前記自由層も同時に磁区制御されるのである。より具体的に構造を示せば、磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜の膜厚方向に電流を流すための一対の電極と、記録媒体面からの磁束を前記磁気抵抗効果膜に導くための磁束ガイドを備えた磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁気抵抗効果膜は強磁性層を含む自由層と、トンネル障壁層と、強磁性層を含む固定層と、前記固定層の磁化を固定する反強磁性層とを備えたトンネル型磁気抵抗効果膜であって、前記磁気抵抗効果膜が媒体面に露出しない位置に形成され、媒体面からとその対向面に伸びている前記磁束ガイドに接し、前記磁束ガイドにバイアス磁界を印加するための磁区制御層が積層されており、前記磁束ガイドを磁区制御することによって前記自由層も同時に磁区制御が可能な磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0029】
第13の形態は、前記第第12の形態の磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁束ガイドと磁気抵抗効果膜とが中間層を介して磁気的に結合している磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0030】
第14の形態は、前記第12及び第13の磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁束ガイドと磁区制御層とが中間層を介して積層されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0031】
上記の構造においては、前記磁束ガイドと磁区制御層とが磁気的に結合されている。従って、磁区制御層が磁束ガイドの磁区を制御することによって、併せて磁気抵抗効果膜の自由層の磁区を制御するものである。
【0032】
第15の形態は、前記第12から第14の磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁束ガイドが、前記磁気抵抗効果膜の媒体面側とその対向面側とに分離されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。本例はより実際的な形態である。
【0033】
第16の形態は、前記第12から第14に記載の磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁束ガイドが、前記磁気抵抗効果膜の媒体面側から対向面まで連続して形成されている磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0034】
第17の形態は、前記第12から第16の磁気抵抗効果センサにおいて、前記磁束ガイドが高抵抗軟磁性層を有してなる磁気抵抗効果センサを有することを特徴とする磁気ヘッドである。
【0035】
これまで列挙してきた各種磁気抵抗効果センサを再生素子として用いて、記録再生ヘッドを構成することが出来る。更に、こうした記録再生ヘッドを搭載して、磁気記録再生装置を構成することが出来る。これらの記録再生ヘッドあるいは磁気記録再生装置は、十分信号ノイズが小さい。従って、本願発明に係る記録再生ヘッドあるいは磁気再生記録装置は極めて安定した記録再生特性を得ることが出来る。
【0036】
磁気抵抗型再生ヘッド自体の基本構成は通例のもので十分である。即ち、その代表的形態は、磁性体からなる下部磁気シールド、下部層間絶縁膜、磁気抵抗効果により磁界を検出する磁気抵抗型素子及び上部層間絶縁膜及び磁性体からなる上部磁気シールドが、基板上に形成されている。
【0037】
図10に本願発明の係る磁気記録再生ヘッドの主要部の斜視図を示す。図10の例に即して述べれば、磁気ディスク53摺動面に対向して磁気記録再生ヘッドが配される。尚、図中の64は磁気ディスクの記録媒体での磁気記録の状態をモデルとして示す。スライダ61は基板を構成し、この上部に磁気抵抗効果素子が配置される。即ち、下部磁気シールド65に磁気抵抗効果膜(TMR膜)13が搭載される。そして、絶縁膜67を介して、下部磁気コア66が配される。再生ヘッド13は第1のシ−ルド67と第2のシ−ルド膜65の間に挟まれており、周囲からの漏洩磁界を遮断して、目標直下の情報のみを再生しやすくした構造となっている。尚、この下部磁気コア66は上部磁気シールドならびに電極を兼ねた役割を有している。更に、励磁コイル63を挟んで上部磁気コア(記録ヘッド)62が配される。第1の磁極66、絶縁膜、および第2の磁極(記録磁極)62が積層された一方の面が摺動面を構成する。前記の絶縁膜が記録ギャップを構成する。
【0038】
図7に本願発明の係る磁気記録再生装置の例の概略説明図を示す。情報が記録された磁気ディスク53がスピンドル・モータ54によって回転させられる。この磁気ディスク53の摺動面に対向してスライダ55が配される。このスライダ55に磁気記録再生部が内蔵されている。そして、この磁気記録再生部等は信号処理部57によって制御されている。信号処理部57には例えばデータ再生及び復号系あるいは機構制御系等の電気制御系等が納められている。機構制御系やスライダ等はアクチュエータ56に接続されている。尚、こうした磁気記録再生装置の信号処理、回転制御等の電気系は基本的に従来の技術を用いて十分である。ここではその詳細な説明は省略する。
【0039】
実施の形態1
図1は第1の実施例である磁気抵抗効果センサ20の主要部の斜視図である。図1に示すように、基板10上に、下部磁気シールド膜11、下部ギャップ膜12、トンネル磁気抵抗効果膜(以下、この膜をTMR膜(Tunneling Magnetoresistive Layer)と称す)13、磁束ガイド14、磁区制御膜15、上部ギャップ膜16、及び上部磁気シールド膜兼下部磁気コア17が順次形成される。通例、図に示されるように、上部磁気シールド膜17及び下部磁気シールド膜11は、それぞれ引き出し電極端子部18を有しており、TMR膜13の膜厚方向に電流を流すための電極を兼ねている。この磁気抵抗効果センサの断面の詳細は図2Aおよび図2Bに示される。
【0040】
磁気抵抗効果センサの方位を、トラック幅方向101、素子高さ方向102、磁気ヘッド駆動方向103と定義すると、図中の線A及び線Bでの断面はそれぞれ、素子高さ方向102及びトラック幅方向101に平行な断面を示している。図2Aは上記磁気抵抗効果センサ20の素子高さ方向102に平行な断面図を、図2Bはトラック幅方向101に平行な断面図を示す。図11は磁気抵抗効果センサ20の平面図である。 基板10上に下部磁気シールド膜11、下部ギャップ膜12が所望の形状に形成されている。下部ギャップ膜12上の一部には、浮上面から離れた位置にTMR膜13が配置されている。そして、このTMR膜13の端部に乗り上げて1組の磁束ガイド14が、浮上面側から素子高さ方向(102)に伸びて配置されている。
磁束ガイド14は媒体からの磁束をTMR膜13に誘導する軟磁性膜である。
このTMR膜13は、具体的には例えば、下側から順に下地膜21、反強磁性膜22、第1の強磁性膜(固定層と称する)23、トンネル障壁層24、第2の強磁性膜(自由層と称する)25を有して構成されている。自由層25と固定層23の面内磁化は、外部磁界が印加されていない状態でお互いに対して90度傾いた方向に向けられている。固定層23は反強磁性膜22によって、好ましい方向に磁化が固定されている。この面内磁化が固定されているという意味で、前記第1の強磁性膜23は固定層と称される。一方、媒体から磁束ガイド14を通る磁界により、自由層25の磁化は自由に回転する。そして、この磁化の回転により抵抗変化が生じて、当該素子の出力が発生する。この面内磁化が自由に回転するという意味で、前記第2の強磁性膜25は自由層と称される。
【0041】
図11に見られるように、TMR膜13の摺動方向に沿った両側部には磁区制御膜15が、TMR膜13の摺動面200に交差する方向の両側部には磁束ガイド14が配置されている。
【0042】
本実施の形態では、TMR膜13に流れる電流が磁束ガイド14及び磁区制御膜15にリークしないために、いずれもTMR膜13よりも高抵抗でなければならない。
【0043】
図2Bに示されるように、TMR膜13と磁束ガイド14とのトラック幅方向101の両脇には、両端部に乗り上げるようにそれぞれ磁区制御膜15が配置されている。磁区制御膜15は、磁束ガイド14及び自由層25の磁区の発生を抑制するために、バイアス磁界を加える強磁性膜である。
【0044】
TMR膜13、及びこれに一部重畳されて形成されている磁束ガイド14、及び磁区制御膜15の上には、上部ギャップ膜16、及び上部磁気シールド膜17が形成されている。前記上部ギャップ膜16は、貫通孔19の部分でのみTMR膜13と接している。この貫通孔19の両側は前記磁束ガイド14、及び前記磁区制御膜15で構成されている。前記下部磁気シールド膜11及び上部磁気シールド膜17は、それぞれ引き出し電極端子部18を有している。この電気端子の接続により、電流の印加および再生出力の検出を行う。電極端子部18に電流を流すと、電流は貫通孔19をとおってTMR膜13にのみ流れる。
【0045】
次に各種の材料の例を具体的に説明する。
【0046】
下部磁気シールド膜11自体は通例の材料を用いて十分であるが、これに適した材料をかかげれば、CoNbZr等のCo系非晶質合金、NiFe合金、FeAlSi合金あるいはCoNiFe合金などをあげることが出来る。下部磁気シールド膜11の膜厚は概ね1〜5μmである。上部磁気シールド膜17自体は通例の材料を用いて十分であるが、これに適した材料をかかげれば、NiFe合金やCoNiFe合金の他、強磁性膜と酸化物との多層膜や、BやPなどの半金属を含む強磁性合金膜などをあげることが出来る。この上部磁気シールド膜17は記録磁気ヘッドの下部コアを兼用することが出来る。
【0047】
下部ギャップ膜12は、TMR膜13の下地膜となるので、TMR膜13の特性が安定かつ高抵抗変化量となるよう、その表面は平滑かつ清浄面であることが望ましい。下部ギャップ膜12に適した材料をかかげれば、例えば、Ta、Nb、Ru、Mo、Pt、Ir、あるいはこれらの元素を含む合金、またはW、Cu、Alとの合金、さらに異なる元素からなる多層構造、などをあげることが出来る。前記異なる元素からなる多層構造の一例は、例えばTa/Pt/Ta、Ta/Cu/Taである。前記各種元素の積層を用いることが出来ることは言うまでもない。
【0048】
また下部ギャップ膜12として、前記列挙した元素、例えば、Ta、Nb、Ru、Mo、Pt、Ir、あるいはこれらの元素を含む合金、またはW、Cu、Alとの合金、さらに異なる元素からなる多層構造と、強磁性材料との積層構造を用いることも出来る。この例は例えばTa/NiFeである。この下部ギャップ膜12の膜厚は概ね3nm〜30nmである。通例、下部磁気シールド膜11と上部磁気シールド膜17の間隔によって、この下部ギャップ膜12の膜厚は所望に設定される。上部ギャップ膜16は、上記下部ギャップ膜12と同種の材料か、或いはAu、Alなどで形成される。 下地膜21は反強磁性膜22の結合磁界を大きくするためのものである。下地膜21に適した材料の例をかかげれば、Ta、NiFeあるいはこれらの積層膜Ta/NiFeなどをあげることが出来る。
【0049】
反強磁性膜22に適した材料の例をかかげれば、MnIr、MnPt、FeMn、CrMn系合金、MnPtPd、NiMn系合金などをあげることが出来る。
【0050】
固定層23及び自由層25は、NiFe合金、Co合金、CoFe合金、CoNiFe合金のいずれかの強磁性からなる単層構造か、もしくは上記強磁性膜の多層構造、などで形成される。前記強磁性膜の多層構造は複数層、例えば2層あるいは3層などを用いることが出来る。前記強磁性膜の多層構造の例は例えばCoFe/NiFe、あるいはCoFe/NiFe/CoFeなどである。又、前記強磁性膜の多層構造として、強磁性膜と非磁性層との積層構造をも用いることが出来る。強磁性膜と非磁性層との積層構造の例は、例えばCo/Ru/Co、CoFe/Ru/CoFeなどである。これら強磁性膜の諸多層構造は界面での拡散防止、異方性分散の抑制のために有効である。下地膜21の膜厚は概ね3nm〜10nm、反強磁性膜22は概ね2nm〜25nm、固定層23及び自由層25は概ね1nm〜10nmである。
【0051】
トンネル障壁層24の例は、各種絶縁物層、例えば、酸化物層、或いは窒化物層、これらの諸材料の積層膜等を用いることが出来る。トンネル障壁層24の例をかかげれば、例えばAl−O、Si−O、Ta−O等の単層膜あるいはこれらの材料の積層膜等で強磁性膜を挟んだ積層構造をあげることが出来る。この積層構造の具体例は、例えばAl−O/Co/Al−Oである。これらの諸酸化物の作製方法は、直接形成してもよいし、酸素雰囲気中あるいはプラズマにより酸化させてもよい。例えば、その一例は金属膜、例えばAl膜を形成し酸化させるのである。トンネル障壁層24の膜厚は概ね0.5nm〜3.0nmと極薄である。
磁束ガイド14は上部ギャップ膜16から流れる電流が下部ギャップ膜12にリークしないようにする領域である。磁束ガイド14に適した材料をかかげれば、高抵抗な軟磁性膜、例えば強磁性材と絶縁材との多層構造をあげることが出来る。強磁性材と絶縁材との多層構造の例をあげれば、CoFe/Al2O3/CoFe、あるいはCoFe/SiO2/CoFeなどをあげることが出来る。磁束ガイド14の膜厚は概ね5nm〜15nmとする。前記高抵抗な軟磁性膜の例を掲げれば、MnZnFe2O3、NiZnFe2O3、FeSiO、CoAlOなどである。更にはこれらの積層膜をも用いることが出来る。
【0052】
磁区制御膜15も上記磁束ガイド14と同様、上部ギャップ16から流れる電流が下部ギャップ膜12にリークしないようににする領域である。磁束ガイド14に適した材料をかかげれば、高抵抗の材料、例えばFe2O3、Fe3O4、NiO、CoOなどをあげることが出来る。磁束ガイド14の膜厚は概ね10nm〜30nmである。
【0053】
次に上記磁気抵抗効果センサ20の作製方法を説明する。
【0054】
まず、基板10上にスパッタリング法あるいはメッキ法により下部磁気シールド膜11を形成した後、下部ギャップ膜12をスパッタリング法で形成する。下部ギャップ膜12の表面をイオンクリーニングした後、スパッタリング法でTMR膜13の下地膜21、反強磁性膜22、固定層23、及びトンネル障壁層14を形成するための膜を順に連続で形成する。その後、真空を破らずに数十Torrの酸素雰囲気中で数十分自然酸化させて、トンネル障壁層24を作製する。さらに、この上部に、自由層25を形成する。こうして、本願発明に係わるTMR膜13が形成される。
【0055】
その後、前記TMR膜の上部にレジスト膜を所望形状に形成し、次いでイオンミリングによりTMR膜13を所定の形状に加工する。TMR膜13の表面を軽くイオンクリーニングした後、レジストを剥がさずに磁束ガイド14をスパッタリング法あるいはメッキ法で形成し、レジストを除去する。この工程、即ち、いわゆるリフトオフ法によって、所望形状のTMR膜13および磁束ガイド14用の膜が形成される。さらにTMR膜13及び磁束ガイド14上にレジストを所定の形状に形成し、磁区制御膜15をスパッタリング法で加工し、レジストをリフトオフする。上部ギャップ膜16をスパッタリング法あるいは蒸着法により形成する。最後に上部磁気シールド膜17をスパッタリング法或いはメッキ法により形成して、図2に示すような磁気抵抗効果センサ20が完成する。
【0056】
また、本実施例では、TMR膜13は下側から順に下地膜21、反強磁性膜22、第1の強磁性膜(固定層)23、トンネル障壁層24、第2の強磁性膜(自由層)25と積層されている。しかし、このTMR膜は、下側から第2の強磁性層(自由層)25、トンネル障壁層24、第1の強磁性層(固定層)23、反強磁性層22と反対に積層することも可能である。ただしこの場合、下地層21は自由層25の磁気特性を向上するための目的で形成される。また、磁束ガイド14は自由層25に隣接させなければならないため、TMR膜13の下側に形成する。
【0057】
上記磁気抵抗効果センサ20を用いて再生ヘッドを作製し、再生特性を測定した。その結果、良好で安定な再生出力が得られ、バルクハウゼンノイズなどのノイズや、ベースラインシフト等の波形歪みも見られなかった。なお再生信号の上下非対称性は±5%程度であり,実用上問題にならないレベルであった。
【0058】
実施の形態2
図3A及び図3Bは、各々第2の実施例である磁気抵抗効果センサ30の断面図である。図3Aは素子高さ方向102に平行な断面図を、図3Bはトラック幅方向101に平行な断面図を示す。これらの断面図は、図1に磁気抵抗効果センサの断面の切り方を示したものと同様である。図3A及び図3Bの構成において、図2A及び図2Bと同じ層及び膜については同じ記号を付している。
【0059】
図3A及び図3Bの磁気抵抗効果センサ30が、図2A及び図2Bの磁気抵抗効果センサ20と異なるのは、磁束ガイド14の上下あるいはどちらか一方に絶縁膜31が形成されていることである。従って、以下の説明では、異なる諸点のみ説明し、他の部材の説明は省略する。その他の構造、材料選択などは実施の形態1に述べたものと同様に構成して十分である。
【0060】
このような構造では、磁束ガイド14を通して上部ギャップ膜16から下部ギャップ膜12への電流のリークが防止することが出来る。この為、本例においては、磁束ガイド14は、必ずしも高抵抗の材料で形成される必要はない。したがって、磁束ガイド14として、NiFe合金、CoNiFe合金、FeSiAl合金などの金属、合金材料を用いることもできる。絶縁膜31の材料として、Al2O3、SiO2、あるいはAl2O3とSiO2の混合体などが好適な材料である。絶縁膜31の膜厚は耐圧を考えて少なくとも10nm以上必要である。
実施の形態3
図4A及び図4Bは、各々第2の実施例である磁気抵抗効果センサ30の断面図である。図4Aは素子高さ方向102に平行な断面図を、図4Bはトラック幅方向101に平行な断面図を示す。これらの断面図は、図1に磁気抵抗効果センサの断面の切り方を示したものと同様である。図4A及び図4Bの構成において、図2A及び図2Bと同じ層及び膜については同じ記号を付している。
【0061】
図4A及び図4Bの磁気抵抗効果センサ32が図2の磁気抵抗効果センサ20と異なるのは、磁区制御膜15の上下あるいはどちらか一方に絶縁膜33が形成されていることである。従って、以下の説明では、異なる諸点のみ説明し、他の部材の説明は省略する。その他の構造、材料選択などは実施の形態1に述べたものと同様に構成して十分である。
【0062】
このような構造では、磁区制御膜15を通して上部ギャップ膜16から下部ギャップ膜12への電流のリークが防止することが出来る。この為、本例においては、磁区制御膜15は、必ずしも高抵抗の材料で形成される必要はない。磁区制御膜15の材料として、MnIr、MnPt、FeMn、CrMn系合金、MnPtPd、NiMn系合金等の反強磁性材料か、あるいはCoCrPt合金等の硬磁性材料などを用いることができる。この場合、これらの結合磁界及び保持力を大きくするために磁区制御膜15の下に下地膜34を形成してもよい。下地膜34にはTa、Nb、Ru、Hf、NiFe、Crまたこれらの積層構造、例えばTa/NiFeを用いる。絶縁膜33の材料はAl2O3、SiO2、あるいはAl2O3とSiO2の混合体などが好適な材料である。下地膜34の膜厚は2nm〜10nm、絶縁膜33の膜厚は耐圧を考えて少なくとも10nm以上必要である。
【0063】
実施の形態4
図5A及び図5Bは、各々第4の実施例である磁気抵抗効果センサ35の断面図である。図5Aは素子高さ方向に平行な断面図を、図5Bはトラック幅方向に平行な断面図を示す。これらの断面図は、図1に磁気抵抗効果センサの断面の切り方を示したものと同様である。図5A及び図5Bの構成において、図2A及び図2Bと同じ層及び膜については同じ記号を付している。
【0064】
図5A及び図5Bの磁気抵抗効果センサ35が図2の磁気抵抗効果センサ20と異なるのは、磁束ガイド14がTMR膜13の媒体面からその対向面に連続して伸びており、TMR膜13の自由層26と磁束ガイド14との間に中間層36が形成されていることである。この場合、磁束ガイド14と自由層26は中間層36を介して強磁性的あるいは反磁性的に結合されている。本例では、中間層36には膜厚0.5nm〜1nmのRuを用いた。
【0065】
従って、以下の説明では、異なる諸点のみ説明し、他の部材の説明は省略する。その他の構造、材料選択などは実施の形態1に述べたものと同様に構成して十分である。
【0066】
実施の形態5
図6A及び図6Bは、各々第4の実施例である磁気抵抗効果センサ37の断面図である。図6Aは素子高さ方向に平行な断面図を、図6Bはトラック幅方向に平行な断面図を示す。これらの断面図は、図1に磁気抵抗効果センサの断面の切り方を示したものと同様である。図6A及び図6Bの構成において、図2A及び図2Bと同じ層及び膜については同じ記号を付している。
【0067】
図6A及び図6Bに示した磁気抵抗効果センサ37では、磁区制御膜15の上部に磁束ガイド14が積層されている。又、TMR膜13の媒体面からその対向面に連続して伸びて形成されている。ここで、磁束ガイド14は磁区制御膜15上に直接形成されてもよいし、結合を調整するための第1の中間層38を介して形成されてもよい。
【0068】
また、TMR膜13の自由層26と磁束ガイド14との間に第2の中間層36を形成することも可能である。この場合、磁束ガイド14と自由層26は中間層36を介して磁気的に結合されている。この構成では、磁区制御膜15が磁束ガイド14の磁区を制御することで、同時に自由層26の磁区も制御出来る。
【0069】
実施の形態6
図8は実施の形態6の磁気抵抗効果センサの斜視図である。
【0070】
基板40上に下地膜41、保護膜42、TMR膜43、第1の磁束ガイド44、磁区制御膜45、絶縁ギャップ膜48、第2の磁束ガイド49が形成されている。下地膜41と第2の磁束ガイド49は、それぞれ引き出し電極端子部50を有している。この引き出し電極端子部50はTMR膜43の膜厚方向に電流を流すための電極を兼ねている。
【0071】
磁気磁気抵抗効果センサの方位を、トラック幅方向101、素子高さ方向102、磁気ヘッド駆動方向103と定義すると、図中のA及びBはそれぞれ、素子高さ方向102及びトラック幅方向101に平行な断面を示している。
【0072】
図9Aは、上記磁気抵抗効果センサ39の素子高さ方向102に平行な断面図を、図9Bはトラック幅方向101に平行な断面図を示す。
【0073】
本例では、基板40上に下地膜41が所定の形状に形成されている。下地膜41上には、浮上面から離れた位置にTMR膜43が配置されている。この例では、TMR膜43の端部に乗り上げないように保護膜42が形成されている。TMR膜43の構成は図2に示すTMR膜13と同じ構成である。
【0074】
更に、第1の中間層46、第1の磁束ガイド44、第2の中間層47及び磁区制御膜45が下から順に形成され、TMR膜43の上に浮上面側から素子高さ方向102に連続して伸びて配置されている。 第1の磁束ガイド44は媒体からの磁束をTMR膜43に誘導する軟磁性膜であり、第1の中間層46を介してTMR膜43と磁気的に結合している。磁区制御膜45は、磁束ガイド14及びTMR膜の自由層25の磁区の発生を抑制するために、バイアス磁界を加える強磁性膜であり、第2の中間層47によってその大きさを変える。TMR膜43、磁束ガイド44、磁区制御膜45の上には、これらを囲むように絶縁ギャップ膜48が配置されている。さらに絶縁ギャップ膜48の上に、第2の磁束ガイド49が配置されてる。第1の磁束ガイド44と第2の磁束ガイド49は、浮上面と反対側51で接している。また、第2の磁束ガイド49と下地膜41はそれぞれ引き出し電極端子部50を有しており、電気端子の接続により、電流の印加および再生出力の検出を行う。これらの電極端子部50に電流を流すと、第2の磁束ガイド49から接続部51を通って第1の磁束ガイド44、TMR膜43の膜厚方向にへ流れる。
【0075】
次に各種の材料を説明する。
【0076】
下地膜41は、TMR膜43の特性が安定かつ高抵抗変化量となるよう、その表面は平滑かつ清浄面であることが望ましく、実施例1(図2)の下部ギャップ膜12と同種の材料で形成される。この下地膜41の膜厚は3〜30nmである。
【0077】
第1及び第2の磁束ガイド44、49は電極を兼ねているので、低抵抗な軟磁性膜、例えばNiFe合金、CoNiFe合金、FeSiAl合金で形成される。膜厚は5〜20nmである。保護膜42および絶縁ギャップ膜48は、Al2O3、SiO2、Al2O3・SiO2で形成される。膜厚は耐圧を考えて少なくとも20nm以上必要である。その他第1及び第2の中間層46、47、磁区制御膜45、TMR膜43は、実施例1〜5で説明したものと同種の材料で形成される。
【0078】
本実施例では、下側から順に下地膜41、TMR膜43、第1の磁束ガイド44、絶縁ギャップ膜46、第2の磁束ガイドと積層されているが、逆に積層することも可能である。また、本実施例では、第2の磁束ガイド49に電極端子部50が配置されているが、第1の磁束ガイド44に設けてもよい。さらに、本実施例のように第1及び第2の2つの磁束ガイドにより形成されている磁気抵抗効果センサでは、第1及び第2の磁束ガイドの両方を磁区制御してもよい。
【0079】
本実施例では、磁区制御膜45と磁束ガイド44が積層された構造であるが、実施例1〜4で示された構造を実施例6に適用することもできる。
【0080】
上記磁気抵抗効果センサ39を用いて再生ヘッドを作製し、再生特性を測定した。その結果、良好で安定な再生出力が得られ、バルクハウゼンノイズなどのノイズや、ベースラインシフト等の波形歪みも見られなかった。なお再生信号の上下非対称性は5%程度であり,実用上問題にならないレベルであった。
【0081】
実施の形態7
図7は本発明を適用した磁気抵抗効果センサ20を備えた磁気ディスク装置の概略を表したものである。スピンドルモータ54により高速回転する金属又はガラス円盤等の磁気ディスク53の表面にはCoCrPt系合金膜からなる記録媒体が、例えばスパッタ法により堆積されている。この装置では、ディスクの回転にともなう空気流を受けて浮上するセラミックスのチップ(スライダ)55上に形成された薄膜磁気ヘッドを用いて記録媒体上にディジタル信号を記録・再生することが出来る。薄膜磁気ヘッドの例はNiFe系合金の磁極とCuのコイルからなる誘導型記録ヘッドと、実施例1記載のヨーク型磁気ヘッドからなる。
【0082】
さらに上記セラミックスのチップは可動式アームに取り付けられており、アームはボイス・コイル・モータを備えたアクチュエータ56によって実質的に半径方向に移動できるようになっている。したがって薄膜磁気ヘッドはほぼディスク全面にアクセスすることが可能である。また,記録媒体上には記録信号の他にトラック位置を指定するサーボ信号があり,再生ヘッドが再生したサーボ信号をアクチュエータにフィードバックすることによってヘッドの位置決めを閉ループ制御で高精度におこなうことができる。また、再生信号やサーボ信号を処理したり機構系の制御をおこなうデータ信号記録・再生系57及び電気回路系58も備えている。本装置では、先に開示した薄膜磁気ヘッドを用いることにより、高い記録密度を達成することができた。その結果小型かつ大容量の装置を実現することができた。
【0083】
また、ここではディスクを1枚持つ装置を開示したが、複数枚のディスクを持つ装置でも同様の効果が得られることは明らかである。
【0084】
【発明の効果】
本願発明により、トンネル磁気抵抗効果膜を用いたヨーク型の磁気抵抗効果センサにおいて、バルクハウゼンノイズを抑制し、安定性のある磁気抵抗効果センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第1の例に係る磁気抵抗効果センサの斜視図である。
【図2】図2Aは本発明第1の例に係る磁気抵抗効果センサの高さ方向の断面図であり、図2Bは本発明第1の例に係る磁気抵抗効果センサのトラック幅方向の断面図である。
【図3】図3Aは本発明第2の例に係る磁気抵抗効果センサの高さ方向の断面図であり、 図3Bは本発明第2の例に係る磁気抵抗効果センサのトラック幅方向の断面図である。
【図4】図4Aは本発明第3の例に係る磁気抵抗効果センサの高さ方向の断面図であり、 図4Bは本発明第3の例に係る磁気抵抗効果センサのトラック幅方向の断面図である。
【図5】図5Aは本発明第4の例に係る磁気抵抗効果センサの高さ方向の断面図であり、 図5Bは本発明第4の例に係る磁気抵抗効果センサのトラック幅方向の断面図である。
【図6】図6Aは本発明第4の例に係る磁気抵抗効果センサの高さ方向の断面図であり、 図6Bは本発明第4の例に係る磁気抵抗効果センサのトラック幅方向の断面図である。
【図7】図7は本発明による磁気記録再生装置の構成を例示する図である。
【図8】図8は本発明による磁気抵抗効果センサの別な例の斜視図である。
【図9】図9Aは本発明に係る別な例の磁気抵抗効果センサの高さ方向の断面図であり、 図9Bは本発明に係る別な例の磁気抵抗効果センサのトラック幅方向の断面図である。
【図10】図10は本発明による磁気記録再生装置の構成を示す斜視図である。
【図11】図11は本発明の第1の例に係る磁気抵抗効果センサの平面図である。
【図12】図12は磁束ガイドと磁区制御層の配置の諸例を示す断面図である。
【図13】図13はTMRの磁区制御の骨子を説明する断面図である。
【符号の説明】
13、43・・トンネル磁気抵抗効果膜、25・・強磁性膜(自由層)、24・・トンネル障壁層、23・・強磁性膜(固定層)、22・・反強磁性膜、21、34、42・・下地膜、10、40・・基板、11・・下部磁気シールド膜、12・・下部ギャップ膜、14、44、49・・磁束ガイド、15、45・・磁区制御膜、16・・上部ギャップ膜、17・・上部磁気シールド膜、18、50・・電極端子部、19・・貫通穴、31、33・・絶縁膜、36、38、46、47・・中間層、48・・絶縁ギャップ膜、42・・保護膜、20、30、32、35、37、39・・磁気抵抗効果センサ、52・・磁気記録再生装置、53・・磁気ディスク、54・・スピンドルモータ、55・・スライダ、56・・アクチュエータ、57・・信号処理回路。
Claims (3)
- 第1の磁性層と第2の磁性層とが非磁性トンネル障壁層を介して形成されている磁気抵抗効果膜と、
前記磁気抵抗効果膜の膜厚方向に電流を流すための一対の電極と、
外部磁界によりその磁化方向が変化して前記外部磁界を前記第1の磁性層へ導く磁束ガイドと、
前記磁気抵抗効果膜及び磁束ガイドのトラック幅方向の両端部に形成され、且つ前記磁気抵抗効果膜の両端部に磁気的に接続するよう配置され、前記磁気抵抗効果膜の前記第1の磁性層及び前記磁束ガイドの磁区を併せて制御する磁区制御層と、
前記磁束ガイドの厚み方向の上面又は下面の少なくとも一方に配置され、前記磁気抵抗効果膜に接している絶縁層とを有し、
前記磁気抵抗効果膜と磁束ガイドとの間に形成された中間層を備え、
前記磁束ガイドは、前記磁気抵抗効果膜の媒体面側から対向面側に連続して配置されており、
前記第1の磁性層は、前記磁束ガイドの磁化の方向に応じてその磁化の方向が変化することを特徴とする磁気ヘッド。 - 前記磁区制御層が高抵抗材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド。
- 更に、前記磁気抵抗効果膜を磁気的に分離する一対の磁気シールドを有し、前記磁気シールドには電極端子が接続されていることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の磁気ヘッド。
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