JP3822797B2 - 被覆電線および電線被覆用テープ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は被覆電線および電線被覆用テープに関し、電線に対する電線被覆用テープの捲回作業の作業性が良く、また捲回後には電線被覆用テープがずれ動いたり、粘着剤が過剰量になることなく電線に確実に固定され、さらには電線被覆用テープを剥離して電線をばらすというばらし作業を容易かつ迅速に行おうとする。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車の電気系統に配索するために使用するワイヤーハーネスとして例えば図4および図5に示すような被覆電線が使用されている。
すなわち、複数本の電線aを集束し、その電線aの外周をポリ塩化ビニール樹脂のような合成樹脂ビニールにより形成される柔軟性を有するテープ基材cの片面にゴム系の粘着剤dを全面的に塗布した二層構造の電線被覆用テープbを用いて左右何れかの一面に重合部b1 ,b2 を設け、何れか他面を長手方向X′に順次位相をずらして捲回するという、ハーフ・ラップ巻きを採用することにより捲回し、収束された被覆電線を形成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4および図5に示すような上記従来の被覆電線は、ポリ塩化ビニール樹脂のような合成樹脂ビニールにより形成される柔軟性を有するテープ基材cの片面にゴム系の粘着剤dを全面的に塗布した電線被覆用テープbを用いて例えばハーフ・ラップ巻きを採用して複数本の電線aを集束し、その外周を被覆する。従って、テープ基材cの片面に全面的に塗布されている粘着剤dは、電線被覆用テープbの重合部b1 ,b2 相互と電線被覆用テープbとが電線aの外周に全面的に接触することになるのに応じて粘着される。このため、電線aは電線被覆用テープbの粘着剤dによる粘着性を強く受けるので、電線aの外周に電線被覆用テープbを捲回して行く場合の捲回作業がしずらく多くの時間と労力がかかり、捲回作業の作業性が非能率であった。また電線被覆用テープbの捲回後には、電線aの外周面に粘着剤dがのり移って電線被覆用テープb自体から粘着剤dが欠落するため、電線被覆用テープbの電線aに対する固定が不十分になったり、不用意に電線被覆用テープbがずれ動いてしまう。
また、一度電線被覆用テープbが被覆し、収束された電線aの集束を解いて個別に解体するといういわゆるばらし作業を行う場合に、電線aに対する電線被覆用テープbの剥離作業には多くの時間と労力がかかり、作業能率が低いものであった。しかも電線被覆用テープbは、テープ基材cに対して粘着剤dが全面的に塗布されたものであるので、テープ基材cに対する粘着剤dの占有率が大きいので、ばらし作業を行って収束された電線aから電線被覆用テープb自体を剥離した後に、粘着剤dの除去を行うのに多くの工程と労力が必要になるため、リサイクル性が悪かった。
【0004】
本発明は上記従来の欠点を解決し、電線に対する電線被覆用テープの捲回作業を行う場合の作業性を良くし、また捲回後には電線被覆用テープがずれ動いたり、粘着剤が過剰量になることなく電線を確実に固定でき、しかも電線被覆用テープを電線から剥離する時の剥離性が迅速かつ確実に行え、もって電線のばらし作業を効率的に行え、さらには構造簡単にして量産向きで製作コストおよび資材費が安価な被覆電線および電線被覆用テープを提供しようとする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、柔軟性を有するテープ基材の少なくとも片面に流動性を有する粘着剤を多孔性の被閉部材により被閉して前記テープ基材と被閉部材との間に前記孔から押出可能に滞留させた電線被覆用テープを用いて電線が被覆されることを特徴とするという手段を採用した。
【0006】
また本発明の請求項2に記載の発明は、柔軟性を有するテープ基材と、該テープ基材の少なくとも片面に流動性を有する粘着剤を滞留させるように被閉され、押圧力を付与することにより前記粘着剤が押出可能な多数の孔を有する多孔性の被閉部材とから成るという手段を採用した。
【0007】
また本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2においてテープ基材は、ポリエチレン樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂の何れかの熱可塑性の合成樹脂により形成されることを特徴とするという手段を採用した。
【0008】
また本発明の請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3の何れかに記載の発明において被閉部材は、多数の孔を開設した布帛、合成樹脂フィルム、またはメッシュ状の織布により形成されることを特徴とするという手段を採用した。
【0009】
また本発明の請求項5に記載の発明は、請求項2、請求項3、または請求項4の何れかにおいてテープ基材の被閉部材に対する対向面に粘着剤を滞留させる粘着剤溜凹部が形成されることを特徴とするという手段を採用した。
【0010】
また本発明の請求項6に記載の発明は、請求項2、請求項3、請求項4、または請求項5の何れかにおいて粘着剤は、ゴム系の粘着剤により形成されることを特徴とするという手段を採用した。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の具体例を図面を参照して説明する。
図1ないし図3は本発明の一実施態様を示し、1は電線被覆用テープであり、この電線被覆用テープ1は柔軟性を有するテープ基材2と、該テープ基材2の少なくとも片面(電線被覆用テープ1との対向面)に流動性を有する粘着剤3を滞留させるように被閉し、押圧力を付与することにより前記粘着剤3が押出可能になる多数の多孔性の被閉部材4とから成る三層構造に形成される。
【0012】
テープ基材2は、例えばポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂の何れかの熱可塑性の合成樹脂により形成され、電線5に捲回されるものなので柔軟性に富んだものが使用される。2aはテープ基材2の被閉部材4に対する対向面に形成された粘着剤溜凹部であり、この粘着剤溜凹部2aは内部に粘着剤3を滞留させるためのものである。そして、この粘着剤溜凹部2a内に滞留されている粘着剤3は使用時に例えばドラムに捲回されている電線被覆用テープ1を所望長さ引き出して切断する場合に図3の矢印Fに示す方向にテープ基材2に押圧力を付与することにより前記粘着剤3が被閉部材4の多数の孔4aから外部へ押出されて粘着性を発揮する。この際、図3の矢印Fに示す方向への電線被覆用テープ1に対する押圧個所は電線被覆用テープ1に対して全体に及んで行うようにしてもよいし、または粘着剤3によって粘着を行う所望個所だけを選んで行ってもよい。また粘着剤溜凹部2a内に滞留される粘着剤3の収容量は適当量に調整される。しかも孔4aの大きさや設置個数は、粘着剤溜凹部2a内に滞留される粘着剤3の硬軟度、電線被覆用テープ1の不使用時における粘着剤滞留凹部2a内への滞留性、また電線被覆用テープ1の使用時における孔4aからの押出量の多少に鑑み適度のものが選定される。
【0013】
また粘着剤3は、ゴム系、例えば合成ゴムとしてのブチルゴムが使用される。
【0014】
また電線5は所望複数本を集束して外周に電線被覆用テープ1を被覆するようなものが使用される。
【0015】
本発明の一実施態様は以上の構成からなり、本実施態様の電線被覆用テープ1を用いて被覆電線を形成するには、先ず所望複数本の電線5を一まとめにする。
その後、ドラムに捲回されている電線被覆用テープ1を電線5の外周に例えばハーフ・ラップ巻きを採用することによって長手方向Xに螺旋状に捲回して行く点は従来の捲回方法と同様である。
【0016】
しかしながら本実施態様では、電線被覆用テープ1の捲回作業を行う場合に、電線被覆用テープ1を所望長さ引出して所望複数本が収束された電線5の外周に捲回すると、この電線被覆用テープ1のテープ基材2と被閉部材4との間、例えばテープ基材2の被閉部材4に対する対向面に形成される粘着剤溜凹部2a内には流動性を有する粘着剤3が滞留されているので、柔軟性を有するテープ基材2に図3の矢印Fに示す方向に押圧力を付与すると、粘着剤3は例えばメッシュ状の織布からなる被閉部材4に設けられている多数の孔4aから外部に押し出され、粘着性を発揮する。
【0017】
この際、テープ基材2に対する矢印F方向への押圧力が略一定であり、しかも粘着剤溜凹部2a内に収容されている粘着剤3の収容量が略一定であると考えると、被閉部材4に設けられる多数の孔4aの大きさや設置個数は、粘着剤溜凹部2a内に滞留される粘着剤3の硬軟度を加減することにより適当に押出量が調整され、電線5へ確実に固定するようになる。
【0018】
そして、被閉部材4に設ける多数の孔4aから押し出される粘着剤3はテープ基材2に対して従来の電線被覆テープのようにテープ基材の裏面に粘着剤が全面的に塗布され、過剰量になるのとは異なり粘着剤3は電線5の外周に点接触して粘着性を発揮するため、電線被覆用テープ1の重合部1a,1b相互、および電線5の外周に強固に固定することができ、電線被覆用テープ1のずれ動きは防止される。それから、電線被覆用テープ1はカッタを用いて使用長さが切断される。
【0019】
また前述のように、粘着剤3は被閉部材4に設けた多数の孔4aから使用時に押し出されて電線被覆用テープ1の重合部1a,1b相互、および電線5の外周に点接触して粘着性を発揮して電線被覆用テープ1は固定されるので、一度電線被覆用テープ1が捲回されて被覆された電線5の集束を解いて個別に解体するといういわゆるばらし作業を行う場合に、電線5に対する電線被覆用テープ1の剥離作業に多くの時間と労力とを必要とせずに迅速かつ円滑に電線5から電線被覆用テープ1を剥離し、電線5のばらし作業を行うことができる。
【0020】
しかも、電線5のばらし作業後は、電線被覆用テープ1は被閉部材4に設けた多数の孔4aから粘着剤3が押し出されて点在することになり、従来の電線被覆用テープのように粘着剤が過剰量にはならないので、電線被覆用テープ1を回収してから、粘着剤3の除去作業を行うのが簡単かつ確実になる。そして、被閉部材4と分離されるテープ基材2を廃棄処分にすることなくリサイクルして資源の有効活用が簡便に行える。
【0021】
図示した上記実施態様ではテープ基材2に設ける粘着剤溜凹部2a内に粘着剤3を滞留させる場合を代表的に説明したけれども、テープ基材2と被閉部材4との間に粘着剤3を滞留させる方法はこれに限ることなく、例えば粘着剤3の滞留量に応じて被閉部材4を緩みをもたせて閉止するようにすることも本発明の適用範囲である。
【0022】
また図示する上記実施態様では被閉部材4は、多数の孔4aが設けられたメッシュ状の織布が用いられているが、これに限ることなく孔4aから流動性の粘着剤3を押し出すためには多数の孔4aが開設された布帛や合成樹脂フィルムを用いることもできる。
【0023】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の発明は、柔軟性を有するテープ基材の少なくとも片面に流動性を有する粘着剤を多孔性の被閉部材により被閉して前記テープ基材と被閉部材との間に前記孔から押出可能に滞留させた電線被覆用テープを用いて電線が被覆され、また本発明の請求項2に記載の発明は、柔軟性を有するテープ基材と、該テープ基材の少なくとも片面に流動性を有する粘着剤を滞留させるように被閉され、押圧力を付与することにより前記粘着剤が押出可能な多数の孔を有する多孔性の被閉部材とから成るので、電線に対する電線被覆用テープの捲回作業の作業性が良くなり、また電線に捲回後は電線被覆用テープがずれ動いたり、粘着剤が過剰量になることなく電線を確実に固定することができ、しかも電線被覆用テープを電線から剥離する時の剥離性が迅速かつ確実に行え、また電線のばらし作業を効率的に行え、さらには構造が簡単にして量産向きであるため製作コストおよび資材費は安価になる。
【0024】
また本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2においてテープ基材は、ポリエチレン樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂の何れかの熱可塑性の合成樹脂により形成されることを特徴とするので、一度使用に供してそのまま廃棄することなく回収後にリサイクルすることができ、資源を有効活用することができる。
【0025】
また本発明の請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3の何れかにおいて被閉部材は、多数の孔を開設した布帛、合成樹脂フィルム、またはメッシュ状の織布により形成されることを特徴とするので、テープ基材との間に流動性を有する粘着剤を容易かつ確実に滞留することができるとともに使用時に押圧力をテープ基材に付与することにより多数の孔から円滑かつ迅速に粘着剤を押し出すことができる。
【0026】
また本発明の請求項5に記載の発明は、請求項2、請求項3、または請求項4の何れかにおいて、テープ基材の被閉部材に対する対向面に粘着剤を滞留させる粘着剤溜凹部が形成されることを特徴とするので、所望量の粘着剤をテープ基材と被閉部材との間に滞留することができる。
【0027】
また本発明の請求項6に記載の発明は、請求項2、請求項3、請求項4、または請求項5の何れかにおいて、粘着剤は、ゴム系の粘着剤により形成されることを特徴とするので、粘着性は良好であり、しかも安価に多量に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆電線の第1実施態様を示す半断面図である。
【図2】同じく本実施態様で使用する電線被覆用テープを幅方向に切断した状態を示す拡大断面図である。
【図3】同じく電線被覆用テープの使用時の拡大断面図である。
【図4】従来の被覆電線を示す半断面図である。
【図5】同じく従来の電線被覆用テープを幅方向に切断した状態の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 電線被覆用テープ
2 テープ基材
2a 粘着剤溜凹部
3 粘着剤
4 被閉部材
5 電線

Claims (6)

  1. 柔軟性を有するテープ基材の少なくとも片面に流動性を有する粘着剤を多孔性の被閉部材により被閉して前記テープ基材と被閉部材との間に前記孔から押出可能に滞留させた電線被覆用テープを用いて電線が被覆されることを特徴とする被覆電線。
  2. 柔軟性を有するテープ基材と、該テープ基材の少なくとも片面に流動性を有する粘着剤を滞留させるように被閉され、押圧力を付与することにより前記粘着剤が押出可能な孔を有する多孔性の被閉部材とから成る電線被覆用テープ。
  3. テープ基材は、ポリエチレン樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂の何れかの熱可塑性の合成樹脂により形成されることを特徴とする請求項2に記載の電線被覆用テープ。
  4. 被閉部材は、多数の孔を開設した布帛、合成樹脂フィルム、またはメッシュ状の織布により形成されることを特徴とする請求項2または請求項3の何れかに記載の電線被覆用テープ。
  5. テープ基材の被閉部材に対する対向面に粘着剤を滞留させる粘着剤溜凹部が形成されることを特徴とする請求項2、請求項3、または請求項4の何れかに記載の電線被覆用テープ。
  6. 粘着剤は、ゴム系の粘着剤により形成されることを特徴とする請求項2、請求項3、請求項4、または請求項5の何れかに記載の電線被覆用テープ。
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