JP3822628B2 - インスタントココアの製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、ココアパウダーと乳原料とを含有し、湯を注ぐだけでココア飲料となるインスタントココアの製造法に関する。
ココアは、アルカリ処理した、あるいはアルカリ処理していないカカオマスより、カカオバターを圧搾分離したものを粉砕して得られるココアパウダーを、湯や牛乳で溶解して得られる栄養価の高い嗜好飲料として知られている。インスタントココアは、上記ココアパウダーを粉乳や糖類等の他の原料と予め混合しておき、湯や牛乳で溶かすだけでココアができるようにしたものである。
従来のインスタントココアの製法としては、(i)ココアパウダーと、全粉乳、脱脂粉乳などの乳原料と、砂糖などの糖類とを混合し、粉砕して製品としたもの、(ii)更に溶解性を高めるために、上記(i)の粉砕物を流動層造粒装置などにより造粒して製品としたもの、(iii)ココアパウダー、糖類などを温水に溶解し凍結乾燥して製品としたもの(特許文献1参照)などが知られていた。
特開平8−214780号公報
しかし、上記(i)、(ii)の方法では、ココアがカカオ種子の水不溶性の成分を含んでいるため、粉砕しても、温湯に溶解する際に舌のザラつきとして感じられる粒径の粒子が存在し、飲料として食したときに粉っぽさが感じられることがあった。また、上記(i)、(ii)のいずれの場合も、乳原料は、全粉乳、脱脂粉乳、クリーミングパウダーなど、必ず粉体の乳原料を使う必要があり、フレッシュな牛乳や、脱脂乳を原料とすることができず、乳製品本来の良好な風味を得ることができなかった。
また、上記(iii)の方法では、粉っぽさは改善できるものの、乳原料を加えると凍結乾燥が困難となるため、必要量の乳原料を加えることができなかった。このため、牛乳等を別に用意して、乳原料を含む水溶液に溶かす必要があり、湯を注ぐだけでできるというインスタント飲料の便利さが損なわれてしまう欠点があった。また、凍結乾燥物は、多孔質のブロック状となるため、粉末品と比べると重量の割に製品がかさばるという問題点もあった。
したがって、本発明の目的は、牛乳等を別に用意することなく、湯を注ぐだけでココア飲料となり、舌に感じるざらつきや粉っぽさが少なく、各成分がよくなじんでバランスのとれたマイルドで美味しいインスタントココアの製造法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、ココアパウダーを含む原料を、50〜70℃に加温した牛乳に、ココアパウダー10〜35重量部に対して牛乳30〜300重量部の配合比となるように添加して溶解し、スプレードライすることを特徴とするインスタントココアの製造法を提供するものである。
本発明によれば、ココアパウダーを含む原料を、50〜70℃に加温した牛乳に、ココアパウダー10〜35重量部に対して牛乳30〜300重量部の配合比となるように添加して溶解し、スプレードライすることにより、上記原料成分が融合して一体化した粒子が形成される。この粒子は、湯中に速やかに溶けて粒状に残らないので、飲食するときに舌のざらつきや粉っぽさを感じることがなく、入れたてのような良好な風味が得られる。また、本発明により得られるインスタントココアは、既に乳原料として牛乳が入っているので、牛乳等に溶かす必要がなく、湯を注ぐだけで簡単に美味しいココアを作ることができる。更に、乳原料として、乳原料本来の風味を保持している牛乳を用いるので、ココア製造のために1回くらいスプレードライしても、風味劣化は比較的少なく維持される。したがって、牛乳本来の風味が保持された美味しいココアが得られる。
本発明においては、前記スプレードライにより得られた粒子はほぼ球形をなし、その平均粒径が20〜100μmであることが好ましい。平均粒径が20μm未満では溶解性が悪いという問題があり、100μmを超えるとスプレードライ効率が落ち不経済であるという問題がある。
また、本発明においては、スプレードライした後、顆粒状に造粒して製品化することもできる。顆粒状にした場合には、水や湯に対する溶解性を更に高めて、ココアを迅速に作ることができる。
また、本発明においては、ココアパウダーを含む原料を、50〜70℃に加温した牛乳に溶解した後、ホモゲナイザーで均質化してから、スプレードライすることがより好ましい。ホモゲナイザーで均質化することにより、原料成分がより均質化して融合した粒子を形成することができ、湯に溶解させたときの均一性や舌のざらつきも顕著に少なくすることができる。
更に、本発明においては、ココアパウダーと糖類とを含む原料を、牛乳に添加して溶解することが好ましい。これによって湯を注ぐだけで、甘みも付与されたココアを簡単に作ることができる。
本発明によれば、ココアパウダーを含む原料を、50〜70℃に加温した牛乳に、ココアパウダー10〜35重量部に対して牛乳30〜300重量部の配合比となるように添加して溶解し、スプレードライすることにより、上記原料成分が融合して一体化した粒子からなる粉末を形成し、この粉末を必要に応じて更に造粒することにより、インスタントココアを得るようにしたので、湯に溶かしてココア飲料としたときに、速やかに溶けて粒状に残らず、飲食するときに舌のざらつきや粉っぽさを感じることがない。また、各原料成分がよくなじんでバランスがよく、入れたてのような良好な風味が得られる。更に、本発明のインスタントココアは、既に乳原料として牛乳が入っているので、湯を注ぐだけで簡単に美味しいココア飲料を作ることができる。
本発明において、原料のココアパウダーは、例えば、クリーナーでカカオ豆を選別し、セパレータで豆をくだいて皮などを取り除き、リアクターでアルカリ剤を加えて反応させ、ロースターで焙焼し、グラインダーで磨砕して得られたカカオマスを、ココアプレスで搾油してココアバターを分離し、ココアミルで粉砕して細かい粒子にすることによって製造される。なお、アルカリ剤による反応を行わない場合もある。
乳原料としては、乳本来の風味を保持している牛乳が使用されるが、牛乳と粉乳とを併用してもよい。全粉乳、脱脂粉乳などの粉乳を用いる場合には、粉乳を予め温水等に溶かしておき、その溶液にココアパウダー等を添加、混合して溶解させるか、あるいは牛乳等にココアパウダーを添加するときに一緒に混合することが好ましい。
糖類は、牛乳に溶かしてココアを作るときに、各自の好みに応じて好きなだけ添加できるように、予め添加しないものであってもよいが、湯を注ぐだけで手軽に飲食できるようにするという点では、最初から添加しておいた方がよい。糖類としては、砂糖、乳糖などの二糖類、ぶどう糖、果糖などの単糖類、水飴、デキストリンなどの澱粉加水分解物の他、それらの還元物、例えば還元澱粉加水分解物、ソルビット、マルチットなどの還元糖類などから選ばれた1種又は2種以上が好ましく使用される。
その他の原料としては、例えば澱粉類、油脂、乳化剤、安定剤、食塩、香料、香辛料、ナッツペースト、コーヒー、その他の調味成分等が使用できる。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどが好ましく使用できる。
上記のような原料からなる好ましい配合の一例としては、例えば、牛乳30〜300 重量部、ココアパウダー10〜35重量部、全粉乳、脱脂粉乳などの粉乳0〜25重量部、砂糖0〜25重量部、乳糖などの他の糖類5〜25重量部、食塩0〜0.5 重量部、乳化剤0〜2部からなる配合が挙げられる。
本発明では、まず、加温した牛乳に、ココアパウダー、粉乳、糖類、その他の原料を加えて溶解させる。牛乳は、予め50〜70℃程度に加温しておくことが好ましく、それによってココアパウダー等の溶解性を高めることができる。
こうして原料を溶解した後、好ましくはホモゲナイザーを通して均質化し、更に60〜95℃に加熱してスプレードライする。スプレードライの条件は、通常の条件でよく、例えば、熱風温度150〜270℃、排風温度80〜130℃で行うことが好ましい。また、スプレードライするときの溶液の糖度は、Bx10〜60とすることが好ましい。上記溶液の糖度がBx10よりも少ない場合は、効率的でないという問題があり、Bx60よりも多い場合は、スプレードライしにくいという問題がある。
こうしてスプレードライすることによって得られた粉末の粒子は、顕微鏡観察をすると、各原料成分が融合してほぼ球形をなしており、その平均粒径は約20〜100μmの範囲となっている。このため、ココアパウダー、粉乳、糖類等を単に混合してできている従来のインスタントココアに比べて、外観、手ざわりの上からも明らかに滑らかで細かい粉末となっている。
本発明では、上記粉末を更に適当な大きさに造粒して顆粒状にしてもよく、それによって、湯に対する溶解性を更に高めることができる。造粒方法としては、公知の各種の方法が採用できるが、特に流動層造粒法や、攪拌造粒法が好ましく用いられる。
本発明のインスタントココアは、上記スプレードライした粉末、又は該粉末を造粒した顆粒のみからなるものでもよいが、これらに更に砂糖等の糖類、香料などを添加して製品化することもできる。あるいは、スプレードライした粉末に、糖類、香料などを添加して、これらを造粒して製品化することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、以下の実施例において、「部」は「重量部」を意味する。
実施例1
60℃に加熱した牛乳200部(乳固形分として23.6部)に、ココアパウダー(カカオバター22〜24%)16部、乳糖10部、食塩0.1部、乳化剤0.2部を加え、ミキサーで10分間攪拌混合した。これを150kg/cm2でホモゲナイザー処理し均質化した。
この溶液を90℃でまで加温し、熱風温度230℃、排風温度110℃の条件でスプレードライして乾燥粉末を得た。この乾燥粉末55部に、砂糖40部を加えて混合し、本発明のインスタントココアを得た。
このインスタントココア20gを100mlの熱水に溶解したところ、粉っぽさ、ざらつきのないフレッシュなミルク感がするバランスのとれたマイルドで美味しい入れたて風味のココア飲料ができた。
実施例2
60℃に加熱した牛乳100部(乳固形分として11.8部)に、ココアパウダー(カカオバター22〜24%)15部、全粉乳4部、脱脂粉乳5部、砂糖5部、乳糖8部、食塩0.1部を加え、ミキサーで10分間攪拌混合した。これを150kg/cm2でホモゲナイザー処理し均質化した。
この溶液を熱風温度230℃、排風温度110℃の条件でスプレードライして乾燥粉末を得た。この乾燥粉末を流動層造粒機にて造粒し、乾燥した。この粉末60部に、砂糖35部を加えて混合し、本発明のインスタントココアを得た。
このインスタントココア20gを100mlの熱水に溶解したところ、粉っぽさ、ざらつきのないフレッシュなミルク感がするバランスのとれたマイルドでおいしい入れたて風味のココア飲料ができた。
実施例3
60℃に加熱した牛乳100部(乳固形分として11.8部)に、ココアパウダー(カカオバター10〜12%)17部、全粉乳8部、生クリーム2部、食塩0.1部、乳化剤0.3部を加え、ミキサーで10分間攪拌混合した。これを150kg/cm2でホモゲナイザー処理し均質化した。
この溶液を熱風温度230℃、排風温度110℃の条件でスプレードライして乾燥粉末を得た。この粉末55部に、砂糖40部を加えて混合し、この混合粉末を流動層造粒機にて造粒し、乾燥して、本発明のインスタントココアを得た。
このインスタントココア20gを100mlの熱水に溶解したところ、粉っぽさ、ざらつきのないフレッシュなミルク感がするバランスのとれたマイルドでおいしい入れたて風味のココア飲料ができた。
比較例1
ココアパウダー(カカオバター22〜24%)16部、全粉乳24.3部、乳糖10部、食塩0.1部、砂糖44.3部を十分混合した後、粉砕機を通して粉砕し、インスタントココアを得た。
このインスタントココア20gを100mlの熱水に溶解したところ、実施例1、2及び3で得たココアに比べて粉っぽさが多く、マイルド感に欠けるインスタントココアであった。
比較例2
ココアパウダー(カカオバター22〜24%)16部、全粉乳24.3部、乳糖10部、食塩0.1部、砂糖44.3部を十分混合した後、粉砕機を通して粉砕した。こうして得られた粉末を流動層造粒機にて造粒し、乾燥して、インスタントココアを得た。
このインスタントココア20gを100mlの熱水に溶解したところ、実施例1、2及び3で得たココアに比べて粉っぽさが多く、マイルド感に欠けるインスタントココアであった。
比較例3
ココアパウダー(カカオバター22〜24%)52部、砂糖48部を混合し、これに水を加え、固形分含量が18%の懸濁液とした。この懸濁液を攪拌しながら92℃まで加熱して澱粉を糊化した後、ホモゲナイザーを用いて80kg/cm2で均質化処理をし、次いで40℃まで冷やしてから、モールドに充填し、凍結乾燥して固形ココアを得た。
この固形ココア12gを100mlの温かい牛乳に溶解したところ、粉っぽさの少ない、こくのある美味しいミルクココアだった。
試験例1
実施例1、2、3及び比較例1、2で得たそれぞれのココアについて、20人のパネラーによる官能試験を行った。
風味の評価は、とてもおいしい…5点、おいしい…4点、普通…3点、あまりおいしくない…2点、全くおいしくない…1点とし、20人のパネラーの平均点で示した。
また、粉っぽさ、ざらつきの評価については、全く感じない…−2、ほとんど感じない…−1、どちらともいえない…0、やや感じる…+1、非常に感じる…+2とし、20人のパネラーの平均値で示した。この結果を表1に示す。
上記表1に示されるように、実施例1、2、3のココアの方が、比較例1、2のココアに比べて、風味が明らかに良好であり、粉っぽさ、ざらつきも明らかに少ないことがわかる。
試験例2
(1)実施例1において原料溶液をスプレードライして得た乾燥粉末、(2)実施例2において原料溶液をスプレードライし、更に得られた乾燥粉末を流動層造粒機で造粒した粉末、(3)比較例1において原料を混合し、粉砕機で破砕して得られた粉末、(4)比較例3において原料溶液を凍結乾燥して得た固形ココアのそれぞれについて、150倍における顕微鏡写真をとり、これを図1〜4に示した。
図1に示すように、実施例1のスプレードライした粉末は、粒子の中にココアパウダー、乳成分、糖類などが均一にとり込まれ、きれいな球状になっていることがわかる。また、その平均粒径は20〜100μmで粒子サイズもバラつきが少ない。
図2に示すように、実施例2の、スプレードライした粉末を造粒した粉末は、ココアパウダー、粉乳、糖類などの粉体が造粒により互いにくっつき、大きな粒子を形成している。粒子の形は不定形で平均粒径は100〜450μmとバラつきが大きい。
図3に示すように、比較例1の、原料を混合し、粉砕して得た粉末は、ココアパウダー、粉乳、糖類などの粒子が粉砕されて単に分散しており、粒子の形は不定形で、平均粒径は40〜130μmである。
図4に示すように、比較例3の凍結乾燥して得た固形ココアは、多孔質なブロック状をなし、上記図1〜3とは、性状が異なるものである。
実施例1において、原料溶液をスプレードライして得た乾燥粉末の150倍の顕微鏡写真である。 実施例2において、原料溶液をスプレードライし、更に得られた乾燥粉末を流動層造粒機で造粒した粉末の150倍の顕微鏡写真である。 比較例1において、原料を混合し、粉砕機で破砕して得られた粉末の150倍の顕微鏡写真である。 比較例3において、原料溶液を凍結乾燥して得た固形ココアの150倍の顕微鏡写真である。

Claims (5)

  1. ココアパウダーを含む原料を、50〜70℃に加温した牛乳に、ココアパウダー10〜35重量部に対して牛乳30〜300重量部の配合比となるように添加して溶解し、スプレードライすることを特徴とするインスタントココアの製造法。
  2. 前記スプレードライにより得られた粒子がほぼ球形をなし、その平均粒径が20〜100μmである請求項1記載のインスタントココアの製造法。
  3. スプレードライした後、顆粒状に造粒する請求項1又は2記載のインスタントココアの製造法。
  4. 前記ココアパウダーを含む原料を、牛乳に添加して溶解した後、この溶液をホモゲナイザーで均質化してから、スプレードライする請求項1〜3のいずれか1つに記載のインスタントココアの製造法。
  5. ココアパウダーと糖類とを含む原料を、牛乳に添加して溶解する請求項1〜4のいずれか1つに記載のインスタントココアの製造法。
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