JP2019154251A - 香味の良い顆粒状ココアの製造方法 - Google Patents

香味の良い顆粒状ココアの製造方法 Download PDF

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和哉 武田
Kazuya Takeda
和哉 武田
洋朗 米澤
Hiroaki Yonezawa
洋朗 米澤
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Abstract

【課題】溶解性に優れ、保存安定性が良く、カカオ本来の香味をより強く保持した顆粒状ココアの提供、及びその効率的な加工手段の提供。【解決手段】糖質を含んだ粉末を中心核として、ココアバターを含む原料のうち、ココアバター、カカオマス、チョコレートのいずれか1つ以上を投入し、前記糖質を前記ココアバターで含む原料で覆い、更に前記ココアバターの外殻層に前記ココアパウダーを付着させることを特徴とする前記顆粒状ココアの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は香味の良い顆粒状ココア及びその製造方法に関するものである。
ココアパウダーとは、カカオマスからココアバターを絞ったあと、細かく砕いて粉末状にしたものであり、ココアパウダーを湯やミルク等に分散したココア飲料は一般的に「ココア」と呼ばれ広く親しまれている。更に一般に販売されているインスタント粉末はココアパウダーに砂糖や乳製品を加え、飲みやすくした「調整ココア」として加工されている場合が多い。
上記のようなココアパウダーは油分を多く含んでおり、調整ココアの組成にした場合にもそのままお湯を注いだ場合にはダマができてしまい、うまく溶解・分散できないことがある。したがって、調整ココアは溶解性を高めるために顆粒状に造粒加工されることがある。このような形態にすることにより、利用者が家庭などで容易にココアを溶解・分散できるだけでなく、カップベンダー(カップ式自動販売機)などの機械設備でもココア飲料を提供することが可能である。
従来、顆粒状ココアの加工方法としては、流動層造粒を用いるのが一般的である。流動層造粒とは、リボンブレンダーなどの混合装置であらかじめ均一に混合した粉末原料を流動層造粒機に投入し、熱風で粉体を流動させながらバインダー液を噴霧して造粒する方法である。
しかしながら、一般的にこの方法で得られる造粒物は多孔質で嵩密度が低い。親水系原料である果汁や紅茶エキスなどを使用したインスタント粉末造粒品の場合には、前述の多孔質という特徴により水分が浸透しやすくなり、溶解を助ける作用となるため問題とならないが、油脂分の多いココアパウダーを原料に使用した場合には、溶解操作において液面に浮きやすくダマになりやすい傾向がある。更に、流動層造粒では、製造工程中に多量の熱風に曝されるため、ココアパウダーが本来有している芳醇な香りを損失し、商品価値を低下させてしまう大きな欠点があった。したがって、ココア本来の香味を有しながら、溶解性や保存性に優れた顆粒状ココアの開発が望まれてきた。
このような欠点を解決する手段として特許文献1には、ココアパウダーをココア原料とするか、又はココアパウダーにココアバター、カカオマスから選ばれる1種類以上を加えてココア原料とし、押し出し造粒法により風味の良い易溶解性の顆粒状ココアが開示されている。この方法によるとココアパウダーを熱風に曝すことがないため、ココアパウダー本来の風味を維持することができるが、造粒に適した開口径が0.5〜3.0mmであり、比較的大きな顆粒となるため、調整ココアの調製に際しては、香料などの微細原料と混合した際に、ココア造粒品とその他原料で分級が起こる懸念がある。また、一度溶解して造粒したあと冷却して固めるという当該方法ではチョコレートの調整のようにテンパリングができないため、ココア原料中の油脂結晶の構造が安定せず、保管中の温度で容易に溶解して固結を起こす懸念もあり、カップ自販機内での使用や家庭での長期保管に適さない可能性も想定される。
特許文献2に記載の顆粒状ココアは、少なくとも糖質を含む粉末原料を中心核として、水蒸気の凝縮により発生する凝縮水を利用して、その中心核の外殻層にココアパウダーを付着させ、顆粒状にすることにより製造されている。これにより得られた顆粒状ココアは、熱風に曝されないため、ココアパウダーが有している本来の香りが保持され、さらに加熱によるオフフレーバーの発生を抑制することができる。また、物性の点においては本手段により得られる造粒物は嵩密度が高いことから流動性に優れており、溶解性の点についても、糖質を中心核として外殻層にココアパウダーが付着している形態により、速やかに沈降して均一に分散させることができる。
しかしながら、特許文献2に記載の顆粒状ココアは中心核となる糖質に付着できるココアパウダーの量に制限がある。中心核となる糖質の表面積は限られていることから、外殻層のココアパウダー量を増やしていくと、ある量以上は付着できないため、微粉のココアパウダーによって流動性や溶解性が悪くなり、ココアパウダーの微粉末が凝集して固結しやすくなる。これを解決するために、噴霧する過熱水蒸気量を増やしていくことで、付着するココアパウダー量を多少増やすことができるが、糖質が溶けすぎて大きなダマができてしまったり、得られる造粒物の水分量が多くなってしまう現象が発生する。水分量が多すぎると追加で乾燥工程が必要となり、結局風味が失われることとなってしまう。したがって、特許文献2を改良した方法ではカカオ本来の香味をより強めることは不可能であった。
特開2005−341873号公報 特開2016−93179号公報
従来の技術で顆粒状ココアを調整した場合、上記のような問題がある。従って本発明の目的は、溶解性に優れ、保存安定性が良く、カカオ本来の香味をより強く保持した顆粒状ココアの提供、およびその効率的な加工手段を提供することである。
本発明者らは試行錯誤の結果、少なくとも糖質を含む粉末原料が撹拌されている状況下に水蒸気を導入した後に、カカオマスやチョコレート等のココアバターを含む原料を投入して粉末原料に対して油脂分を絡ませ、次いでココアパウダーを投入して撹拌接触させてコーティング造粒することで、従来よりも多くのココアパウダーを外殻に付着させ、なおかつカカオ本来の香味を強化させながらも、保管中の加温で外側に油脂分が染み出さないようにできることを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)(A) 糖質を含む粉末原料、
(B)ココアバターを含む原料のうちココアバター、カカオマス、チョコレートのいずれか1つ以上、
(C)ココアパウダー、
を含有し、次の工程1〜3を順次行うことを特徴とする顆粒状ココアの製造方法。
(工程1)容器内で(A)と(B)が撹拌されている状況下に水蒸気を導入する工程、
(工程2)工程1の(A)の周りに(B)が付着されたものに、(C)を投入して撹拌接触させることでコーティング造粒する工程
(2)次の工程1´〜3´を順次行うことを特徴とする顆粒状ココアの製造方法。
(工程1´)容器内で(A)が撹拌されている状況下に水蒸気を導入する工程、
(工程2´)加温された(A)が撹拌されている状況下に(B)を投入し、(A)の外殻層に(B)を付着させる工程、
(工程3´)工程2´の(A)の周りに(B)が付着されたものに、(C)を投入し、撹拌接触させることでコーティング造粒する工程
(3)(A)を中心核とし、その周りに(B)を付着させた外殻層を、更に(C)でコーティングされたことを特徴とする顆粒状ココア。
(4)(3)に記載の顆粒状ココアのうち、含有重量比率〔(B)/(A)〕が3.8〜30かつ含有重量比率〔(C)/(A)〕が3.0〜20であり、造粒後水分量が3.0%未満であることを特徴とする顆粒状ココア。
(5)前記(3)又は(4)に記載の顆粒状ココアを含有する調整ココア。
本発明の方法によれば、極めて僅かな水分量で造粒物を調製できるため、長時間熱風に曝されることなく造粒が完了できる。したがって、ココアパウダーが有している本来の香りが保持され、さらに加熱によるオフフレーバーの発生を抑制することができる。また、中心核となる糖質を、ココアバターを含む原料で覆うことにより結着力を高め、従来の顆粒状ココアよりも多くのココアパウダーを外殻層に付着させることができる。溶解性の点においては、糖質を中心核として外殻層にココアパウダーが付着している形態により、速やかに沈降して均一に分散させることができるため、溶解時の操作性に優れている。さらに、保存安定性の点においては、顆粒の最外殻が製造工程中に熱のかかっていないココアパウダーでコーティングされていることから、ココアバター、カカオマス及びチョコレートが内部から溶け出しにくくなるため、高温環境下でも適切な流動性を維持することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の顆粒状ココアは、少なくとも糖質を含む粉末原料を中心核として、その周りにココアバターを含む原料を付着させて、さらにその外殻にココアパウダーでコーティングして、顆粒状に加工されたものである。本発明においてコーティング造粒とは、核となる原料の外殻に他の原料を付着させること、他の原料で覆うこと、他の原料を纏わせること、他の原料でコーティングすることの何れかを目的とした工程を指す。
<糖質>
本発明に使用することの出来る糖質は、ショ糖や乳糖などの二糖類、ブドウ糖、果糖などの単糖類、エリスリトールやマルチトールなどの糖アルコール、オリゴ糖などから選ばれた1種又は2種以上を併用して使用できる。本発明では、少なくともこれらの糖質を含む粉末原料を造粒物の中心核とすることで良好な顆粒を調製することができ、前記した糖質のうちでは粒子径が0.2〜1.2mm程度の結晶状のものが好適である。また、ショ糖に一部ココアパウダーを配合したココアプレパレーションからも本発明の顆粒状ココアを調製することができる。この場合、糖質に対するココアの含有率は好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。ココアの含有率が多すぎる場合にはココアパウダーのみの顆粒物が生成される可能性が高くなり、所望される効果が期待できない。
<ココアバターを含む原料>
本発明に使用することの出来るココアバターを含む原料は、カカオ豆由来のココアバターを含むものであり、ココアバター、カカオマス、スイートチョコレート、ビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートなどから選ばれた1種又は2種以上を併用して使用できる。カカオ本来の香りを強くさせる目的であれば、カカオマスを使用することが最も適している。ココアバターとカカオマスはともにカカオ分100%であるが、ココアバターは油分が100%であり、固形植物油脂として様々な食品への油脂感の追加に使用されることが多い。したがって、市販されているココアバターは追加する側の食品の邪魔をしないように脱臭や脱色の処理が加えられていることがあり、香りというよりは油由来のコクを得たい場合に適している。
本発明に使用するカカオマスは、カカオ豆から外皮を取り除き、摩砕して、ペースト状にしたものをいう。使用するカカオ豆の由来に特に制限されるものではなく、種類としては例えばクリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種などが挙げられ、産地としては、ガーナ産、コートジボワール産、エクアドル産、ベネズエラ産などが挙げられる。これらは単独もしくは混合して用いても良い。また、本発明に使用するチョコレートは、いわゆるカカオ豆を原料として出来るチョコレート類であればその形態は問わない。つまりは、カカオ分に対し、糖類、乳製品、他の食用油脂、香料を加えたミルクチョコレートであっても、乳製品を含まないスイートチョコレートやビターチョコレートであっても、更にはココアバターと乳製品等からなるホワイトチョコレートであっても効果を得ることができる。
<ココアバター代用油脂>
本発明は、ココアバターを含む原料として、ココアバター代用油脂を使用することもできる。ココアバター代用油脂は、ココアバター類似脂、ココアバター代替脂、ココアバター代用脂などから選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。ココアバター類似脂はパーム油中融点分別脂、サル脂、コクム脂、シア脂及びそれらの分別油脂が挙げられる。ココアバター代替脂は大豆油、菜種油、パーム油等を硬化して固体化することにより得られ、ココアバターに代替することができる。ココアバター代用脂は、一部の植物油脂を硬化して得られる油脂で、ココアバターとの相溶性がなく、ラウリン系脂肪酸の含量が高い油脂である。これらの油脂の物性は、各温度の個体脂含量(固体脂含量曲線)により確認できる。ココアバター代用油脂はココアバターと同じように、固体脂含量は30℃以下で高値を示し、30℃以上で急激に低値となり、35℃以上ではさらに低値となる。つまり、ココアバターを使用しなくても、固体脂含量曲線の傾きが急である特徴とする油脂を含む原料であっても効果を得ることができる。
本発明に使用するココアバターを含む原料中の油分は、油分が25%以上であることが望ましい。カカオマス、ブラックチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートには各々約55%、35%、30%、25%の油分が含まれており、油脂含量はソックスレー法で容易に測定が可能である。チョコレート様の香味を付加するためには、ココアバター単独よりもカカオマスを使用する方が優れている。ココアバターを含む原料中の油脂量は、目的とする香味により適宜決定すれば良いが、ココアバターを含む原料量に対する重量比率で25〜100%が好ましく、30〜55%がより好ましく、35〜55%が最も好ましい。油分が少ない場合、ココアバターを含む原料中の油分が溶けて、中心核となる粉末原料に付着させるのに長時間高温に曝す必要があり、カカオ由来の香味が乏しくなる。
<ココアパウダー>
本発明に使用するココアパウダーは、カカオマスから所定の油分になるまで脂肪分を除き、粉砕し微細化したものをいう。一般的に流通しているものには、含有油脂分10%前後のローファットココアと含有油脂分20%前後であるハイファットココアが主流であるが、本発明の顆粒状ココアにはいずれのココアパウダーを使用することができる。また、油脂分が非常に少ない脱脂ココアを含め、油脂分率にかかわらず粉末状のココアパウダー全般に適用が可能である。なお、ハイファットココアは濃厚な風味を有する反面、一般的な流動層造粒機では、強い凝集性のため、造粒加工が困難とされてきたが、本発明の造粒方法では問題なく加工可能である。
本発明の顆粒状ココアには上記の糖質、ココアバターを含む原料、ココアパウダー以外に必要に応じて全粉乳、脱脂粉乳、クリーミングパウダーなどの乳原料のほか、高甘味度甘味料、アミノ酸、増粘剤、香料、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料などの副原料を1種又は2種以上配合しても良い。これらは、糖質と共に顆粒物の中心核としても、ココアパウダーと共に外殻層としても良いし、造粒後に添加、混合しても構わない。前記副原料の配合により、嗜好性や安定性を高めることができる。
本発明の顆粒状ココアの製造方法では、水蒸気が原料媒体に接触した際に、粉体表面に生じる均一な凝縮水を結着力として利用すること、及びココアバターやカカオマスの粘度を利用することにより、従来よりも多くのココアパウダーを外殻層に付着できることを特徴とする。本発明の製造方法では撹拌槽内に糖質、ココアバターを含む原料、ココアパウダーと原料を順次投入することにより、ココアパウダー同士の造粒が抑制され、優先的にココアバターを含む原料を覆った糖質を中心核として、その外殻層にココアパウダーが付着した顆粒を調整することが可能となる。また、外殻層を製造中に熱のかかっていないココアパウダーが覆うことにより、カカオ由来の油脂が溶け出しにくくなり、高温環境下でも適切な流動性を維持することができることを特徴とする。
本発明の顆粒状ココアの製造方法に利用できる設備は、粉体を運動させるための転動ないし撹拌する機構を備えた容器に水蒸気を導入できるものであれば良く、従来の撹拌造粒機や転動造粒機に水蒸気導入機構を追加することでも対応が可能である。なお、容器内部には粉体の回転方向に対して直交する方向にも回転する羽根を供えるものが好ましく、この羽根の作用により大きな塊の発生を防ぎ、造粒物の大きさを均一にすることができる。このような機能を備えた装置としては、有限会社G−Labo(現 株式会社エヌピーラボ)の「過熱水蒸気渦流混合システムSSSMGS型」を例示することができ、本発明の製造方法に好適に利用することが可能である。本装置の場合、円筒状の容器の内部の底面側に水平回転する羽根(アジテーター)を有し、この羽根の回転運動により容器中へ投入した粉体が渦流状に転動される。さらに、容器内部の側面には垂直回転する羽根(チョッパー)を有し、この羽根は造粒時に粒体のサイズを均一にする整粒効果があるため、本発明の製造方法において都合が良い。
本発明の顆粒状ココアの製造方法では前記装置の中で転動状態にある粉末原料(中心核となる原料)に対して、水蒸気を導入し接触させる。この際、粉末原料の温度は導入する水蒸気の温度以下であることが好ましい。これは本製造方法が水蒸気と粉末原料との温度差により生じる凝縮水を利用するためであり、水蒸気と接触した粉末原料の表面には凝縮水による僅かな層が発生し、この凝縮水の層を介して粉体同士の結着力を生み出すことができる。水蒸気を導入する際の粉末原料の温度は、製造効率や品質の観点から、5〜70℃が好ましく、より好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは15〜40℃である。中心核となる粉末原料は、予め別の装置で予備加熱して温度調節しておいても良いし、造粒に用いる容器内で粉末原料を転動させながら、容器内に温風を導入したり、温度調節用のジャケットを利用して容器外部から加熱したりして粉末原料の温度を調節しても良い。粉末原料の温度を一定に調整することにより、品質の安定化が期待できる。
造粒容器に導入する水蒸気は、容器への入り口付近で蒸気状態を保っていれば良く、加熱した高温の水蒸気(いわゆる過熱水蒸気)も利用することができる。本発明の製造方法における導入水蒸気温度は75〜170℃が好ましく、より好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜130℃である。なお、中心核となる粉末原料が熱溶解性を有する場合には高温の水蒸気を採用することにより、凝縮水の結着力に加え、表面を融解状態とすることにより結着力を増強することも可能である。
水蒸気を導入する際の容器温度については、中心核となる粉末原料より高いことが好ましい。造粒容器の表面温度を粉末原料より高く設定することにより、水蒸気を導入した際に容器の内表面で凝縮水発生が低減され、ココアパウダーを投入して粉末原料表面に付着させる次工程で容器内面にココアパウダーが直接的に付着することを抑制することができる。一方、過度に高い温度では粉末原料への熱負荷が高くなり、風味の劣化や損失の原因となる。したがって装置表面温度は粉末原料との温度差が+5〜100℃であることが好ましく、より好ましくは+10〜80℃、さらに好ましくは+20〜60℃である。装置表面の具体的な温度としては30〜140℃が好ましく、より好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは50〜90℃である。
水蒸気の導入量は目的とするココアバターを含む原料及びココアパウダーの付着量に応じて増減させることが好ましい。一般的な条件として水分負荷率(粉末原料の総重量に対する導入水分量の総重量比率)は0.10〜6.60%であることが好ましく、より好ましくは0.28〜4.40%、さらに好ましくは0.28〜2.20%、最も好ましくは0.28〜1.10%である。水蒸気量が少ない場合には結着力が低下するため、顆粒の形成が不十分となり、粒度が不均一になるほか、製造後にココアパウダーが脱落する原因となる可能性がある。一方、過剰である場合には造粒物同士がさらに結合して粒度が不均一になったり、装置への付着量が増加して歩留りが低下する原因となるほか、乾燥工程時の熱負荷により風味が損失したりする原因となるため好ましくない。水蒸気の導入量は水蒸気流量と導入時間との関係から設定することが可能である。
本発明の製造方法では前記の水蒸気導入工程に次いで、ココアバターを含む原料を投入して中心核となる粉末原料の表面に付着させる。ココアバターを含む原料の形状はブロック状、ペレット状、フレーク状等どのような形状でも良い。しかし形状が大きければ、溶けて糖質を覆うのに時間を要するため、ペレット状またはフレーク状のものが好ましい。ココアバターを含む原料の投入量は、目的とする組成により適宜決定すれば良いが、一般的な配合比は原料全体の合計量に対する重量比率で3.0〜12.5%が好ましく、5.0〜11.0%がより好ましく、7.0〜10.0%が最も好ましい。中心核となる粉末原料に対してココアバターを含む原料の配合量が多すぎる場合には、各表面に付着しきれなくなり、ココアバターを含む原料同士が造粒され、大粒の粒子が発生する。
本発明の製造方法では核の表面にココアバターを含む原料を付着させた後に、ココアパウダーを投入し、造粒物の外殻層にココアパウダーを付着させる。ココアパウダーの投入量は目的とする組成により適宜決定すれば良いが、一般的な配合比としては原料全体の合計量に対する重量比率で30〜50%である。本発明の製造方法で得られる顆粒状ココアにおいて、溶解特性及び保存安定性に優れ、カカオ本来の香味を従来の方法よりも強くさせるためには、顆粒状ココア中のココアバターを含む原料/糖質を含む粉末原料の含有重量比率が3.8〜30であることが好ましく、より好ましくは3.8〜14.0、さらに好ましくは3.8〜9.0、最も好ましくは3.8〜6.0である。さらに顆粒状ココア中のココアパウダー/糖質を含む粉末原料の含有重量比率が3.0〜20であることが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0、さらに好ましくは3.0〜7.5、最も好ましくは3.0〜5.0である。中心核を覆うココアバターを含む原料に対してココアパウダーの配合量が多すぎる場合には、付着しない微粉状態のココアパウダーが多く発生し、流動性及び溶解性が悪くなる。また、ココアパウダーの配合量が少なすぎる場合には、ココアパウダーがココアバターを含む原料を完全に覆うことができず、カカオ由来の油分が染み出しやすくなり、高温環境下での保存安定性が悪くなる。
前記の水蒸気を導入する工程及びココアパウダーを投入して付着させる工程では、造粒容器内で粉体全体が絶えず運動する程度に攪拌力を調節するのが好ましい。このような状態にすることで、粒度の均一性を高めることができ、歩留りの向上にも効果がある。攪拌の速度については使用する装置の構成によるため一概に規定することはできないが、ココアパウダーの付着が不均一となったり、大粒の顆粒物の形成が多く認められたりするような場合には、攪拌量の過不足が原因であるため、攪拌速度と攪拌時間を調節することが好ましい。
本発明の製造方法では、造粒工程に次いで必要に応じて乾燥を行う。本発明の製造方法では、粉体に対して僅かな水分負荷率で造粒効果が得られるため、造粒工程終了時の水分含量が製品として所望する水分含量を下回る場合も有り、その場合には乾燥工程を設けずにそのまま製品として取り扱うこともできる。乾燥が必要とされる場合には、造粒に使用した容器内で攪拌しながら熱風を導入して乾燥するのが作業性の点で好ましいが、別途流動層装置などに移して乾燥しても良い。最終的な造粒物中の水分含量が高い場合には、微生物の繁殖や固結の原因となるため、水分含量は3%以下にするのが好ましい。
また、乾燥工程終了後、または乾燥工程を設けない場合には造粒工程後には粉体の温度が上昇しているため、必要に応じ冷却することが好ましい。冷却することで、風味の劣化が最小限に抑えられ、安定した品質の顆粒物を得ることができる。冷却操作は造粒に使用した容器内で攪拌しながら冷風ないし常温の風を導入して粉体温度を下げるのが作業性の点で好ましいが、別途、流動層冷却装置などの冷却装置に移して冷却しても良い。
上記の操作で得られた顆粒物は、大きさ、重力、形状、色調、比重、などを利用した、ふるい選別機、風力選別機、色調や大きさの画像処理による選別機、重力分級機分離装置などを利用する従来技術により、粒度を一定範囲に調整しても良く、この操作を加えることで、微粉や過度に造粒された粒子を除去し、均一な顆粒物を得ることができる。
なお、本発明の顆粒状ココアには必要に応じて全粉乳、脱脂粉乳、クリーミングパウダーなどの粉乳のほか、高甘味度甘味料、アミノ酸、増粘剤、香料、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料などの副原料の1種又は2種以上を造粒後に混合して均質化することにより、品質の安定性や嗜好性を高めた調整ココア組成物を調製することができる。混合には、ナウターブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、コンテナブレンダー、スクリューブレンダーなど一般的な装置を使用しても良いし、造粒機の攪拌機構を利用して混合しても良い。
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
≪試験例1≫
本発明の顆粒状ココアと従来技術による顆粒状ココアの比較試験を行った。
〈実施例1〉
以下の条件で本発明の実施例1の顆粒状ココアを調製した。
・造粒装置:過熱水蒸気過流混合システム SSSMGS−12(有限会社G−Labo製)
・原料:グラニュー糖T.T.G.A(東洋精糖製)、カカオマスQM−B(大東カカオ製)、ハイファットココアパウダー PG22(油脂分22%、明治製)
・操作:造粒装置のジャケット温度を60℃に調整し、グラニュー糖を1.5kg投入した。次いで、アジテーター回転数150rpm、チョッパー回転数500rpmにて撹拌しながら、ヒーターで150℃に加熱した過熱水蒸気を、水蒸気流量2kg/hで30秒間導入した(水分量として16.6g)。この条件において水蒸気出口付近の温度(導入蒸気温度)は100℃であった。水蒸気導入終了直後にカカオマス0.3kgを投入し、継続して60秒間撹拌した。所定の時間撹拌後、アジテーター回転数500rpm、チョッパー回転数2500rpmに設定変更し、撹拌を継続しながらハイファットココアパウダーを1.2kg投入し、更に30秒間撹拌し、排出後に目開き1.41mmの篩で大粒になった粒子を取り除き、本発明実施例1の顆粒状ココア2.33kgを得た。
〈比較例1〉
以下の条件で比較例1の顆粒状ココアを調製した。
・造粒装置:過熱水蒸気過流混合システム SSSMGS−12(有限会社G−Labo製)
・原料:グラニュー糖T.T.G.A(東洋精糖製)、ハイファットココアパウダー PG22(油脂分22%、明治製)
・操作:造粒装置のジャケット温度を60℃に調整し、グラニュー糖1.8kg投入した。次いで、アジテーター回転数150rpm、チョッパー回転数500rpmにて撹拌しながら、ヒーターで150℃に加熱した過熱水蒸気を、水蒸気流量2kg/hで60秒間導入した(水分量として30.0g)。この条件において水蒸気出口付近の温度(導入蒸気温度)は100℃であった。所定の時間撹拌後、アジテーター回転数500rpm、チョッパー回転数2500rpmに設定変更し、撹拌を継続しながらハイファットココアパウダーを1.2kg投入し、ヒーターで150℃に加熱した過熱水蒸気を、水蒸気流量2kg/hで20秒間導入した(水分量として10.0g)。更に60秒間撹拌し、排出後に目開き1.41mmの篩で大粒になった粒子を取り除き、本発明比較例1の顆粒状ココア2.56kgを得た。
〈比較例2〉
以下の条件で比較例2の顆粒状ココアを調製した。
・造粒装置:過熱水蒸気過流混合システム SSSMGS−12(有限会社G−Labo製)
・原料:グラニュー糖T.T.G.A(東洋精糖製)、ハイファットココアパウダー PG22(油脂分22%、明治製)
・操作:造粒装置のジャケット温度を60℃に調整し、グラニュー糖1.5kg投入した。次いで、アジテーター回転数150rpm、チョッパー回転数500rpmにて撹拌しながら、ヒーターで150℃に加熱した過熱水蒸気を、水蒸気流量2kg/hで50秒間導入した(水分量として27.7g)。この条件において水蒸気出口付近の温度(導入蒸気温度)は100℃であった。所定の時間撹拌後、アジテーター回転数500rpm、チョッパー回転数2500rpmに設定変更し、撹拌を継続しながらハイファットココアパウダーを1.5kg投入し、ヒーターで150℃に加熱した過熱水蒸気を、水蒸気流量2kg/hで24秒間導入した(水分量として13.3g)。更に60秒間撹拌し、排出後に目開き1.41mmの篩で大粒になった粒子を取り除き、本発明比較例1の顆粒状ココア2.28kgを得た。
実施例1、比較例1及び2で得られた顆粒状ココアについて、以下の方法で評価を行った。
<溶解特性評価試験>
溶解特性については以下の方法で評価した。
〔沈降性〕
熱湯100gを入れた200mlビーカーに造粒物の検体20gをそっと浮かべ、完全に水没するまでにかかる時間を測定した。
評価点:
5点;0〜5秒
3点;6〜10秒
1点;11秒以上
〔溶解性〕
上記「沈降性」試験終了後、スパーテルで1秒間に2回の強さで20秒撹拌した後、速やかに60メッシュ(目開き250μm)の篩に通し、篩上の溶け残りを目視評価した。
評価点:
5点;全量、ほぼ全量溶解
3点;一部溶け残りあり
1点;溶け残りが多い
<安定性評価試験>
安定性については以下の方法で評価した。(安定性とは保存安定性を示す。)
〔安定性〕
円柱形のガラス製瓶(直径40mm、高さ750mm)に40ml容量分の粉末を入れ、55℃の恒温機内に1日間保管した後、恒温機から取り出し、常温まで冷ました。瓶を30秒かけて反転させ、その際の粉末の様子を評価した。
評価点:
〔反転中の粉末の様子(流動性)〕
5点;反転するとスムーズに崩れる
4点;反転するとゆっくりと(最後に一気に)崩れる
3点;反転すると崩れるが、固結が一部残る
2点;反転しても崩れず、そのままの形で滑り落ちる
1点;反転しても崩れず、そのまま滑り落ちない
〔反転後の粉末の様子(固結性)〕
5点;固結なし
4点;一部固結、脆い固結
3点;半分程度固結
2点;かなりの割合で固結
1点;全体に固結
〔反転後の瓶底面への付着(湿り気)〕を目視観察した。
5点;瓶への付着ほとんどなし
3点;瓶への付着少しあり
1点;瓶への付着多い
<香味評価>
実施例1、比較例1及び2で得られた調整ココア顆粒について、20gを約90℃の熱湯140mlに溶解してココア飲料を調製し、5名のパネラーで香味評価した。
<総合評価>
良好;溶解性、安定性がともに平均点が4.0以上
可;溶解性、安定性がともに平均点が3点以上、
不可;溶解性、安定性のいずれかが平均点3点未満
<結果>
実施例1、比較例1及び2で得られた調整ココア顆粒について、上記方法で評価した結果を表1に示した。
表1に示した結果より、本発明実施例1の顆粒状ココアは従来の技術により得られる顆粒(比較例1及び2)と比較してココアパウダーの微粉末量(顆粒状ココア5.0gのうち、60メッシュ(目開き250μm)を通った粉末量)が少なく、多くのココアパウダーを付着できるにもかかわらず、優れた溶解性及び安定性を有していることが認められた。溶解性に関して実施例1は沈降性に優れ、速やかにほぼ全量が溶解した。一方、比較例1及び2は沈降するまでの時間が長く、ココアの凝集が発生した。また、保存安定性に関して実施例1は高温環境下でも流動性を保ち、固結や湿り気は発生しなかったが、比較例1及び2ではココアの微粉が認められ、ココア粒子が圧縮された固結及び瓶底面への付着が発生した。香味に関して実施例1、比較例1及び2を比較したところ、実施例1はカカオのビター感、ロースト感を強く感じ、呈味に関しては、後半(後味)にチョコレート様の濃厚さが感じられ、とても濃度感があったのに対し、比較例1及び2はカカオの香味は感じられたものの、実施例1のような濃度感は感じられなかった。また、顆粒形成が不十分であり、ココアパウダーの微粉が多いため、溶解性が乏しく、また実施例1よりも濃度感が少なく、ざらつきが感じられた。また、実施例1の顆粒状ココアは、顆粒の形成もしっかりとされており、ココア粒子のざらつきを感じることはなかった。
以上の結果より、本発明の顆粒状ココアの製造方法は従来の技術である顆粒状ココアの製造方法に比べ、溶解性及び安定性を維持したまま、多くのカカオ原料を利用することができるため、カカオ由来の香味をより強く保持することができる優れた製造方法であることが確認された。
≪試験例2≫
実施例1をベースとして、カカオマス(ココアバターを含む原料)の比率は固定し、グラニュー糖、ハイファットココア(ココアパウダー)の配合比率を実施例2〜6、比較例3〜6で検証した。各実施例の条件と結果を表2に示した。
試験例2の結果より、原料の配合比率の違いにより溶解性及び安定性に影響することが確認された。比較例3及び4はカカオマスに対してココアパウダーの量が少なく、カカオマスを十分に覆いきれなかったため、安定性評価試験において油分が染み出し、顆粒が固結した。比較例5及び6はカカオマスに対してグラニュー糖の量が少なく、ココアパウダーの量が多いため、中心核となるグラニュー糖が少なく、カカオマスとココアパウダーの混合顆粒や、ココアパウダー単体の微粉が多く発生し、溶解特性評価試験ではココアパウダーの凝集が発生し、水が浸み込みにくくなり、溶解性が悪くなった。安定性評価試験では、カカオマスとココアパウダーの混合顆粒からの油分の染み出しや、ココア粒子の圧縮による固結及び瓶底面への付着が確認された。実施例2〜6の配合比率においては、溶解時のココアパウダーの凝集や、高温環境保存後の油分の染み出し及びココア粒子の圧縮による固結などの問題事項は認められず、適切な溶解性及び安定性を保持することが確認された。本実施例の結果より、適切な溶解性及び安定性を保持するため、原料全体の10%をカカオマスとしたときに、適切な溶解性及び保存安定性を得るためには、中心核となるグラニュー糖が全体原料の重量比率40〜60%、外殻を覆うココアパウダーが全体原料の重量比率30〜50%の配合比率に設定することが必要である。
≪試験例3≫
実施例1をベースにとして、ハイファットココア量(ココアパウダー)を固定し、グラニュー糖とカカオマス(ココアバターを含む原料)の配合比率を実施例7〜11、比較例7〜9で検証した。各実施例の条件と結果を表3に示した(なお表中には実施例4、比較例1及び2を再掲した)。
試験例3の結果より、原料の配合の違いにより溶解性、安定性及び香味に影響することが確認された。比較例7は良いカカオ香味であったが、溶解特性において良好な結果は得られなかった。実施例7は良いカカオ香味であり、適切な溶解性及び安定性を有した顆粒を得ることができた。実施例7〜11は、比較例1及び2と異なり、濃度感が得られるためココアパウダーのざらつきは感じられなかった。実施例4はざらつきを感じることはなかったが、カカオの香味は比較例1及び2と同等であった。以上のことから、適切な溶解性及び安定性を有する顆粒を形成するためには、カカオマスを2重量%以上必要であり、より好ましい香味を得るためにはカカオマス4重量%以上が必要である。比較例8は官能評価において良好な結果であったが、ココアパウダーがカカオマスを十分に覆いきれていなかったために、顆粒からの油分が染み出しやすくなり、高温環境下においては固結しやすい状態であった。比較例9はカカオマスの量が多く、撹拌槽内で塊となり、顆粒を形成させることは出来なかった。
≪試験例4≫
実施例1をベースとして、水蒸気導入量(水分負荷率)の影響を実施例12〜16、比較例10〜11で検証した。各実施例の条件と結果を表4に示した(なお表中には実施例5を再掲した)。
試験例4の結果より、原料に対し、水蒸気導入量(水分負荷率)は0%〜4.40%の範囲でいずれも造粒加工が可能であった。しかし、水分導入量0%では、溶解特性において、凝集が発生することが認められた。これは、ココアの付着力が弱くなったか、溶解した時の水の浸透が悪くなったため、発生したと考えられる。そのため、良好な溶解性を得るためには、少なくとも水蒸気を導入する必要であることが認められた。水蒸気導入量(水分負荷率)4.40%を超える範囲である比較例10では問題なく造粒できる範囲であるが容器への付着により歩留がやや低くなった。また、水蒸気導入量が増えるに従い、造粒後の水分量が高くなることが認められ、微生物増殖の可能性が低い水分量3.0%未満にするためには、水蒸気導入量(水分負荷率)は6.6%未満が好ましい。水分量が高くなり、少なくするためには乾燥工程が必要となる。熱負荷によるカカオ由来の香味が低下することを避けるためには、乾燥工程を必要としない水蒸気導入量を設定することが好ましい。水蒸気導入量(水分負荷率)8.80%である比較例11は、水蒸気量が多いためグラニュー糖が溶けてしまい、顆粒を形成させることができなかった。
≪試験例5≫
実施例7をベースとして、原料投入工程の影響を実施例17で検証した(なお表中には実施例5を再掲した)。
試験例5の結果より、カカオマスをグラニュー糖と同時投入した場合でも問題なく造粒加工でき、溶解性、保存安定性及び香味も十分に満足できるレベルであることが確認された。グラニュー糖とカカオマスが同時撹拌されている状況下に過熱水蒸気を投入するため、カカオマスを溶かす時間が短縮されるため、全体の造粒時間が短くなる。得られる顆粒状ココアは実施例5と同等であり、カカオマスを投入する工程は、どちらでも問題がないことが認められた。
≪試験例6≫
カカオマス以外の原料としてココアバター(大東カカオ株式会社、デオドライズドココアバター)、ブラックチョコレート(株式会社ロッテ、ガーナブラックチョコレート)、ミルクチョコレート(株式会社ロッテ、ガーナミルクチョコレート)、ホワイトチョコレート(株式会社ロッテ、ガーナホワイトチョコレート)を使用して、顆粒状ココアを調製し溶解性、保存安定性及び官能評価で検討した。各原料を使用した顆粒状ココアは表3の実施例5の製造条件をベースとして、同配合比率で実施例18〜21を作成した(なお表中には実施例5を再掲した)。
試験例6の結果より原料の違いで粉体物性の異なる顆粒状ココアは観察されなかった。チョコレートに含まれる香料の影響が官能評価に見られ、使用するチョコレートの風味を持つ顆粒状ココアを得ることができた。ココアバターは脱臭処理をしたものが多く、香りの面ではカカオマスやチョコレートのような特徴的な香りは観察されなかったが、油分の多い顆粒状ココアが得られ、濃度感のある風味が特徴的であった。
≪試験例7≫
実施例1の顆粒状ココアを用いて、以下に示す配合で各原料をビニール袋に入れ、均一になるまで5分間振り混ぜ、本発明実施例22の飲料用調整ココア組成物を調製した。
実施例22:飲料用調整ココア組成物
1.実施例1の顆粒状ココア 1500g
2.ショ糖 350g
3.クリーミングパウダー 300g
4.食塩 20g
5.カルボキシメチルセルロース 10g
6.香料 10g
7.微粒二酸化ケイ素 3g
8.ステビア抽出物 2g
得られた調整ココア組成物について、業務用ディスペンサーを用いた吐出試験を行った。試験には富士電機製カップ式自動販売機FRM283Fを使用し、調整ココア組成物1.0kgをサーバーに投入して、一回当たり18.0gずつを50回吐出させ、吐出重量を測定することにより装置適性を評価した。その結果、試験操作中の吐出重量は安定的に推移し、吐出部の詰まりなどの不具合は発生しなかったことから、本発明の調整ココア組成物の優れた自販機適性が確認された。
本発明の顆粒状ココアの製造方法によれば、従来の調製手段と比較して濃厚で風味に優れ、且つ溶解安定性や保存安定性が良好な調整ココアの提供が可能であるため、家庭で手軽に本格的なココア飲料を調製できるほか、カップベンダーなどの業務用のディスペンサーにおいても幅広く利用することが可能である。

Claims (5)

  1. 次の原料(A)、(B)、(C):
    (A)糖質を含む粉末原料、
    (B)ココアバターを含む原料のうちココアバター、カカオマス、チョコレートのいずれか1つ以上、
    (C)ココアパウダー、
    を原料として、次の工程1〜3を順次行うことを特徴とする顆粒状ココアの製造方法。
    (工程1)容器内で(A)と(B)が撹拌されている状況下に水蒸気を導入する工程、
    (工程2)工程1の(A)の周りに(B)が付着されたものに、(C)を投入して撹拌接触させることでコーティング造粒する工程
  2. 次の原料(A)、(B)、(C):
    (A)糖質を含む粉末原料、
    (B)ココアバターを含む原料のうちココアバター、カカオマス、チョコレートのいずれか1つ以上、
    (C)ココアパウダー、
    を原料として、次の工程1´〜3´を順次行うことを特徴とする顆粒状ココアの製造方法。
    (工程1´)容器内で(A)が撹拌されている状況下に水蒸気を導入する工程、
    (工程2´)加温された(A)が撹拌されている状況下に(B)を投入し、(A)の外殻層に(B)を付着させる工程、
    (工程3´)工程2´の(A)の周りに(B)が付着されたものに、(C)を投入し、撹拌接触させることでコーティング造粒する工程
  3. 次の原料(A)、(B)、(C):
    (A)糖質を含む粉末原料、
    (B)ココアバターを含む原料のうちココアバター、カカオマス、チョコレートのいずれか1つ以上、
    (C)ココアパウダー
    を含有し、(A)を中心核とし、その周りに(B)を付着させた外殻層を、更に(C)でコーティングされたことを特徴とする顆粒状ココア。
  4. 請求項3に記載の顆粒状ココアのうち、含有重量比率〔(B)/(A)〕が3.8〜30かつ含有重量比率〔(C)/(A)〕が3.0〜20であり、造粒後水分量が3.0%未満であることを特徴とする顆粒状ココア。
  5. 請求項3又は4に記載の顆粒状ココアを含有する調整ココア。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS5492660A (en) * 1977-12-29 1979-07-23 Nissin Sugar Mfg Production of instant cocoa
JP2015202079A (ja) * 2014-04-15 2015-11-16 三井農林株式会社 顆粒状ココアの製造方法

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