JP3822241B2 - 耐擦傷性の板ガラス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐擦傷性がきわめて高いガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスは本質的に脆い材料であり、特に使用時に発生する微小な表面傷によってその強度が低下し、そこに力が加わると、微小傷を端緒とするクラックが伸展して破壊に至る。
したがって、ガラスの耐久性を上げるために、表面のハードコーティングなどで、表面の耐擦傷性を向上しようとする試みは古くから行われている。これらの技術は、本質的にガラスそのものの脆さを改善する試みではない。したがって、表面のコーティングが磨耗、劣化などにより除去されてしまえば、その効果は発現されないという問題がある。
一方、現在もっとも汎用されているソーダライムシリカガラスは、歴史的にも推移があるが、一般的には以下のような組成を有する。
【0003】
SiO2 66〜75重量%、
MgO 0〜5重量%、
CaO 7〜12重量%、
Na2O 12〜20重量%、
2O 0〜3重量%、
Al23 0〜4重量%。
【0004】
ソーダライムシリカガラスにおいて、組成と硬度との関係については、研究は多くない。一般的な認識としては、シリカの含有量を多くすると、硬度が上がること、CaOでNa2Oを置換するとネットワークの結合性が上がり、強度が向上すること、Al23の添加が強度および硬度の向上に役立つこと、などがある程度である。
【0005】
さらに表面の傷のつきやすさに対応する擦傷硬度については、実際のガラスの強度を決定するうえで重要ではあるが、必ずしもビッカース硬度との相関性が良くない。これは、耐擦傷性が、硬度に関係する因子であるのみならず微細クラックの発生と伸展による試料からのガラス片の脱離や摩擦熱によって影響を受けるためと考えられる。
ソーダライムシリケート系のガラスにおいて、従来の認識に基づき、単純に硬度を上げるためにシリカの成分比を多くすると、熔解しにくくなるため、生産性の良い熔融法による生産ができなくなる。
【0006】
比較的シリカの成分比の高いガラスが、米国特許第3,811,853号明細書に例示されている。しかし、これらのガラスは分解性の容器用に限られており、通常のガラスとして用いるのに十分な耐水性を有していない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ガラスそのものの脆さを改善し、実使用時の外力による傷の発生を防ぐとともに、耐擦傷性が高いわりには熔融が比較的容易で、割れにくいガラスの提供にある。また、上記特性に加えて、従来のソーダライムシリケートガラスと遜色のない耐久性(特に耐水性)を有するガラスを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、本質的に、以下の成分
SiO25.5〜85.5(重量%)、
23 0.5〜5 (重量%)、
SiO2+B23 76〜88 (重量%)、
MgO 1〜9 (重量%)、
CaO 0〜8 (重量%)、
MgO+CaO 1〜9 (重量%)、
R'2O 10〜23 (重量%)、
MgO+CaO+R'2O 11〜24(重量%)、
Al23 0〜5 (重量%)、
(MgO+CaO)/R'2O(重量比) 0.以下、
(ただし、R’はLi,Na,Kから選ばれた少なくとも1種)からなり、
MgOの含有量がCaOの含有量より多く、
室温で測定される密度が2.43g/cc以下とされることを特徴とする耐擦傷性のガラスである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者は、多種のソーダライムシリカガラスについてその組成と耐擦傷性の関係を詳細に検討し、その結果前述のガラス組成範囲内において、その密度が2.43g/cc以下のガラス(通常のソーダライムシリカガラスの密度は2.49〜2.52g/cc程度)とすることによって、従来のソーダライムシリカガラスに比べてきわめて傷がつきにくくなることを見いだした。
すなわち、本発明はソーダライムシリカガラスにおいて、密度が耐擦傷性と密接な関係にある因子であり、また、その制御がある組成範囲内において可能であること、および、特定の組成範囲と密度とを満足するガラスが耐久性を備えるとともに比較的熔融しやすく、かつ耐擦傷性に優れていることを見いだしたことに基づく。すなわち、下記実施例に示すとおり、その組成を最適化すれば、比較的熔融しやすく、耐久性を備え、かつ通常のソーダライムシリカガラスに比べて傷の発生荷重が5倍以上高く、実際の強度も大きく向上したガラスが得られる。
【0010】
次に本発明のガラスの組成範囲について説明する。
SiO2はガラスの網目構造を形成する主成分である。これが少なすぎると、相対的に非架橋酸素量が増えて、網目構造が弱くなるとともに、密度が上昇してクラック伝播が容易となるため、強度自体が低くなる。また、多すぎると、熔融性が悪くなり、熔融法によって均質なガラスを得ることが困難となる。本発明では、ガラス全体に対して75.5〜85.5重量%とする。また、82重量%以下、特に80重量%以下とすると、バーナー加熱などの大規模設備による熔融法での生産が容易になるため非常に好ましい。
【0011】
23は、ガラスの熔融を容易にする成分であり、本発明では、0.5〜5重量%含有させる。B23は耐擦傷性について、特異な挙動を示す成分であり、上記範囲外ではいずれも耐擦傷性が低下する傾向がある。好ましい含有量は、0.5〜4重量%であり、特に好ましい含有量は0.5〜3.5重量%である。
SiO223とはいずれもガラスのネットワークフォーマーであり、その合量は、76〜88重量%とされる。適当な熔融性を確保するためには、85重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは、84重量%以下である。
【0012】
MgOおよびCaOは熔解性の改善および化学的耐久性の改善に必須な成分である。MgOとCaOとの合量は、耐アルカリ性等の化学的耐久性を与えるために1重量%以上が必要であり、十分な耐擦傷性を得るために9重量%以下であることが必要である。
向としては元素番号の小さいものの含有量を多くしたほうが耐擦傷性が改善される。かかる観点で、CaよりはむしろMgを多くすることが必要である。したがって、MgOを必須成分と、具体的には、MgOを1〜9重量%、CaOを0〜8重量%とすることが好ましい。好ましくは、MgOとCaOとの合量として8.5重量%以下、1.5重量%以上、具体的には、MgOを1〜8.5重量%、CaOを0〜7.5重量%である。
【0013】
R'2O(R'はLi,Na,Kから選ばれた少なくとも1種)は熔融性の改善のために10重量%以上が必須であり、また、結晶化を起こさず、耐化学薬品性を保つために23重量%以下であることが必要である。熔融性をより改善するためには、11.5重量%とすることが好ましい。また、耐化学薬品性をより改善するためには、22重量%以下であることが好ましい。具体的には、Na2Oを10〜22重量%、K2Oを0〜10重量%、Li2Oを0〜10重量%とすることが好ましい。特に耐薬品性を要する用途では、R'2Oは合量で、21重量%以下であることが好ましく、具体的には、Na2Oを10〜21重量%、K2Oを0〜10重量%、Li2Oを0〜10重量%とすることが好ましい。
MgOとCaOとR'2の合量は、11〜24重量%とする。MgO+CaO+R'2Oが11重量%より少ないと、熔融性に難があり、24重量%より多いと、高い耐擦傷性が得られにくい。高い耐擦傷性を得るためには、より好ましくは23重量%以下、もっとも好ましくは22重量%以下である。
【0014】
MgO、CaO、R'2Oの組成比は耐擦傷性に大きく影響する。各成分の具体的な働きは詳細には未解明であるが、後記実施例で明らかになるように、本発明においては、MgOとCaOとの合量よりもR'2Oを添加する方が耐擦傷性は改善される。少なくともこの結果は従来の強度に対する認識とは一致しない。この観点から、本発明では、重量比(MgO+CaO)/R'2Oは0.以下とすることが必要である。なお、MgOとCaOとR'2合量がより好ましい範囲に制限される場合は、重量比(MgO+CaO)/R'2Oを所定の値にするために、MgO、CaO、R'2Oのそれぞれの範囲が自動的に制限される場合がある。
【0015】
Al23は、少量の添加によりガラスの化学耐久性を著しく向上して、均一なガラスを製造できる。相分離を抑えるために1重量%以上をガラスに含有させることが非常に好ましい。また、過度の添加は、耐擦傷性の劣化を引き起こすため、5重量%以下、好ましくは4重量%以下とされる。
本発明でいう、「本質的」とは、SiO2,Al23,B23MgO,CaO,R'2Oからなる上記の主成分がガラス全体の96重量%以上を占めることをいう。他に微量成分として、ガラス全体の均質化、着色、赤外線透過能および紫外線透過能の制御の目的で、Fe,Ni,Se,Co,Ceなどを添加できる。
【0016】
また、より均質なガラスをより容易に製造するために、公知の清澄剤も添加できる。かかる清澄剤としては、SO3,Cl,As23,Sb23などがある。
また、ZnOを適宜本発明の効果を損しない範囲で、MgO,CaOに対して置換できる。さらに、SrO,BaOなども本発明の効果を損しない範囲で、かつガラス全体に対して、0.5重量%未満含有することができる。
【0017】
本発明のガラスでは、室温で測定される密度が2.43g/cc以下とされる。発明者はソーダライムシリケート系のガラスにおいて、密度が、耐擦傷性に極めて密接な関係を有することを発見した。発明者の得た知見によると、上記の組成範囲で、室温で測定される密度が2.43g/cc以下となると耐擦傷性が極めて高くなる。
なお、本発明において、ガラスの脆さ(耐擦傷性)の指標としてはローンらによって提案された脆さ指標値Bを使用する(B.R.Lawn and D.B.Marshall,J.Am.Ceram.Soc.,62[7-8]347-350(1979))。ここで、脆さ指標値Bは材料のビッカース硬さHVと破壊靭性値KCから式(1)により定義される。
B=HV/KC (1)
【0018】
この脆さの指標をガラスに適用する際の大きな問題は破壊靭性値KCが正確に評価しにくいことである。そこで、本発明者は、いくつかの手法を検討した結果、ビッカース圧子を押し込んだときにガラス表面に残る圧子の痕の大きさと痕の四隅から発生するクラックの長さとの関係から脆さを定量的に評価できることを見いだした。その関係は式(2)により定義される。ここで、Pはビッカース圧子の押し込み荷重であり、a,cはそれぞれ、第2図に示したように、ビッカース圧痕の対角長および四隅から発生するクラックの長さ(圧子の痕を含む対称な2つのクラックの全長)である。
c/a=0.0056B2/31/6 (2)
各種ガラスの表面に打ち込んだビッカース圧痕の寸法と式(2)を用いれば、ガラスの脆さを簡単に評価できる。
【0019】
第3図は、こうして測定した脆さ指標値Bとサンドブラストによる摩耗量との関係を示す。脆さ指標値Bと、サンドブラストによる摩耗量とは非常に強い相関関係にあり、脆さ指標値が耐擦傷性の大変よい指標になっていることがわかる。以下の本明細書においては、式(2)の式を用いて求めた脆さ指標値Bを使用する。
【0020】
以上により、本発明における好ましいガラスは、具体的には、本質的に以下のような組成からなり、MgOの含有量がCaOの含有量より多く、室温で測定される密度が2.43g/cc以下となるものである。ここで、MgO,CaO,(MgO+CaO)の上限値は(MgO+CaO)とR'2Oとの合量および比によって自動的に決まる値の小数点第2位を4捨5入した値である。
【0021】
SiO25.5〜85.5(重量%)、
23 0.5〜5 (重量%)、
SiO2+B23 76〜88 (重量%)、
MgO 1〜8. (重量%)、
CaO 0〜7. (重量%)、
MgO+CaO 1〜8.5 (重量%)、
Na2O 10〜22 (重量%)、
2O 0〜10 (重量%)、
Li2O 0〜10 (重量%)、
R'2O 10〜22 (重量%)、
Al23 1〜5 (重量%)
(MgO+CaO)/R' 2 O(重量比) 0.5以下
【0022】
特にSiO2の含有量が80重量%を超える場合には、本質的に下記のような組成範囲で、高い耐擦傷性と非常に良好な耐水性を両立させることができる。ここで、MgO,CaO,(MgO+CaO)の上限値は(MgO+CaO)とR'2Oとの合量および比によって自動的に決まる値の小数点第2位を4捨5入した値である。
【0023】
SiO2 80超〜85.5 (重量%)、
23 0.5〜5 (重量%)、
SiO2+B23 80.5超〜88 (重量%)、
MgO 1〜6.9 (重量%)、
CaO 0〜5.9 (重量%)、
MgO+CaO 1〜6.9 (重量%)、
Na2O 10〜17.5未満(重量%)、
2O 0〜7.5未満 (重量%)、
Li2O 0〜7.5未満 (重量%)、
R'2O 10〜17.5未満(重量%)、
Al23 1〜5 (重量%)
(MgO+CaO)/R' 2 O(重量比) 0.5以下
【0024】
一方で、上記組成においては、SiO2の含有量が80重量%以下の場合に比べて熔融性は劣り、比較的高温の条件で熔融する必要がある。比較的低温で熔融可能であって、かつ十分な耐水性と耐擦傷性とを得ることができるならば、もっとも好ましい。この観点で好ましい組成の1つは本質的に下記のようなものである。ここで、MgO,CaO,(Mg+CaO),R'2Oの上限値は(MgO+CaO)とR'2Oとの合量および比によって自動的に決まる値の小数点第2位を4捨5入した値である。
【0025】
SiO25.5〜80 (重量%)、
23 0.5〜5 (重量%)、
SiO2+B23 76〜85 (重量%)、
MgO 1〜8. (重量%)、
CaO 0〜7. (重量%)、
MgO+CaO 2〜8.5 (重量%)、
Na2O 10〜17 (重量%)、
2O 0〜10 (重量%)、
Li2O 0〜10 (重量%)、
R'2O 10〜19.2(重量%)、
Al23 1〜5 (重量%)、
(MgO+CaO)/R'2O(重量比) 0.2〜0.
【0026】
Na2Oが17重量%を超えると、耐水性が低下する傾向がある。具体的には、ガラスを熱水にさらしたときのナトリウム溶出量が多くなる。また、重量比(MgO+CaO)/R'2Oが0.2未満になると、相対的に(MgO+CaO)のR'2Oに対する比率が減るため、やはり、耐水性が低下する傾向がある。
より良好な耐水性を得るためには、必須ではないが、Na2OをK2Oに置換して、K2Oを0.5重量%以上含有せしめることが非常に効果的である。MgOをCaOに置換して、CaOを0.5重量%以上含有せしめることにも効果が認められる。
比較的低温で熔融可能であって、かつ十分な耐水性と耐擦傷性とを得ることができるもう1つの好ましい組成は本質的に下記のようなものである。ここで、MgO,CaO,(MgO+CaO)の上限値は(MgO+CaO)とR'2Oとの合量および比によって自動的に決まる値の小数点第2位を4捨5入した値である。
【0027】
SiO25.5〜80 (重量%)、
23 0.5〜5 (重量%)、
SiO2+B23 76〜85 (重量%)、
MgO 1〜8. (重量%)、
CaO 0〜7. (重量%)、
MgO+CaO 1〜8.5(重量%)、
Na2O 5〜19.5(重量%)、
2O 0〜10 (重量%)、
Li2O 0〜10 (重量%)、
2O+Li2O 2.5〜11 (重量%)、
R'2O 10〜22 (重量%)、
Al23 1〜5 (重量%)
(MgO+CaO)/R' 2 O(重量比) 0.5以下
【0028】
この組成においては、K2O+Li2Oが2.5重量%未満であると、耐水性が低下するおそれがある。耐水性向上のため、MgOをCaOに置換して、CaOを0.5重量%以上含有せしめることに効果があるのは、上記の場合と同様である。
かくして、得られる本発明のガラスは、典型的には、脆さ指標値Bが6000m-1/2以下、好ましくは、5800m-1/2以下である。
また、粘性が100ポアズとなる温度は好ましくは1800℃以下、より好ましくは、1680℃以下である。
本発明のガラスは、熔融性を相当に備えるため、各種の製造方法が適用できる。すなわち、常法にしたがって目標組成になるように各原料を調合し、これを1450〜1650℃に加熱してガラス化する。次いでこの熔融ガラスを清澄した後、所定の形状に成形され、徐冷され、商品となる。
【0029】
下表には本発明のガラス(例1、2、4、8〜10、12〜18、21〜37)および比較例(例38〜45)として検討した38種類のガラス組成が記載されている。
各組成になるように、原料粉体200gを白金製の坩堝に投入後、1450〜1650℃、大気中にて4時間撹拌しながら加熱熔解した。すべてほぼ均一なガラスが得られる。均一に熔解した各組成のガラスは、カーボンの型に流し込んで約10cm角で厚さ5mmの板に成形、冷却した。得られたガラスは490〜570℃においてアニールを施し歪みを除去した後、切断、研磨し、2cm角で厚さ4mmの試料とした。
表には、同ガラスの密度、脆さ指標値、熔融性の指標としての、粘性が100ポイズとなる温度(T at log η=2)および10000ポイズとなる温度(T at log η=4)を示す。
【0030】
脆さ指標値は以下のように測定した。研磨して鏡面を出した試料はさらに研磨による表面残留応力を除去するためにガラスの歪点温度より若干上の温度に加熱(100℃/hr)し、保持(3hr)後、徐冷(60℃/hr)する。こうして表面の熱および加工歪みをほぼ完全に除去した状態にてその脆さを測定する。脆さの測定にはビッカース硬さ試験器を使用した。同装置により、ガラス表面に10個の圧痕を打ち込み、その圧痕の四隅から発生するクラックの平均の長さとビッカース圧子の押し込み荷重により式(1)、式(2)を用いて、脆さ指標値Bを算出した。押し込み荷重は5kgfとた。
密度ρは、試料の乾燥重量と水中での重量からアルキメデス法により算出した。測定にはμgまで測定できる高精度の秤を使用し、有効数字5桁まで計算したのち最後の桁を四捨五入して4桁とした。
【0031】
表に記載した本発明の実施例においては、すべて、脆さ指標値Bが6000m-1/2以下となっており、高い耐擦傷性を有する。また、ガラスの密度と脆さは良い相関を示し、密度が低下するにしたがい脆さ指標値も低下する、すなわち傷が付きにくくなっていることがわかる。
【0032】
例1、2、4、8〜10、12は、Na2Oを10〜17重量%とし、(MgO+CaO)/R'2Oを0.2〜0.としている。また、例13〜例31では、K2OもしくはLi2Oの少なくともいずれか一方を含有し、K2O+Li2Oが2.5〜11重量%となるようにしている。さらに、例32〜例37はSiO2が80重量%を超えるものである。
【0033】
一方、例38〜例45は本発明の範囲外の例を示している。特に、例39、例40、例45は、本発明と同様に比較的多量のSiO2を含むが、耐擦傷性としては不満足な例である。すなわち、単純にSiO2の含量を増やしても、本発明のような著しい耐擦傷性の向上は認められない場合があることがわかる
【0034】
表1
Figure 0003822241
【0035】
表2
Figure 0003822241
【0036】
表3
Figure 0003822241
【0037】
表4
Figure 0003822241
【0038】
表5
Figure 0003822241
【0039】
表6
Figure 0003822241
【0040】
表7
Figure 0003822241
【0041】
第1図は、ほぼ同様の組成で、SiO2をB23に置換した効果を示す図である。図のA,B,C点は、下表のような組成と特性を示すものである。
【0042】
表8
Figure 0003822241
【0043】
23の添加は、熔融性の向上に役立つとともに、適量の添加が、耐擦傷性の向上に役立つことがわかる。
【0044】
また、別に一部のガラスにつき、耐水性判断の指標として、50mm×50mm×5mmの試料を両面研磨後(側面は、ダイヤモンドソーのアズカット面)、99℃の蒸留水に3時間浸漬した際の、Na2Oの溶出量をμg/cm2を単位として測定した。このNa2Oの溶出量は5μg/cm2未満であれば、十分な耐水性を有していると考えられる。結果を下表に示す。
【0045】
表9
Figure 0003822241
【0046】
【発明の効果】
本発明のガラスは熔融法によって生産性よく製造できるとともに、これを使用することにより実使用時の表面傷による透明性の悪化、強度低下等を低減でき、その結果商品の寿命を格段に伸ばし、またその信頼性を大幅に改善できる。
また、本発明のガラスは密度が低いために、それを用いた製品の軽量化をもたらすという効果も有する。
本発明のガラスは本質的に傷が発生しにくいため、表面に特段の処理を施すことなく高い耐久性を有する。また、熔融性にも優れることから、広範に応用できる。特に板ガラスとして極めて適したものである。
【0047】
た、軽くて傷がつきやすいという特徴から、現在高価なサファイアガラス等が用いられている時計のカバーガラスとしても、本発明のガラスは好適である。また、ガラスの破損の多くが小さい傷に起因していることから、傷がつきにくい本発明のガラスは、割れにくくなる。したがって、割れた場合に危険であるような、照明器具のカバー、鏡等にも適する。
【0048】
また、本発明のガラスは水槽用のガラスとしても適している。水槽は、割れた場合に中の水が割れたガラスとともに一斉に流れ出して非常に危険であるだけでなく、中に入れる石、その他の器具等により傷がついた場合、透明性が損なわれてしまうという問題もあるため、傷がつきにくく、割れにくい本発明のガラスは好適である。また、傷により透明性が低下して、視認性の悪化を招いてしまうような電気、ガス、水道等、屋外で用いられるメーター類のカバーガラスとしても好適である。
【0049】
また、机上の全面または一部にガラスをおいた場合、カッターによる切断作業、コンピュータのマウスとの繰り返しの接触、その他様々な要因によってガラスに傷がつき、美観の悪化、破損へとつながることがある。本発明の耐擦傷性ガラスはこのような用途にも好適である。また、通常のガラスに比べて軽いという点からも、日常生活において使いやすいということができる。
【0050】
様々な異物との接触により、傷がつきやすいバーコードリーダ、複写機の窓材としても本発明のガラスは好適である。
また、細かい傷が少数はいっただけでも製品の欠陥となりうる液晶、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイ基板用ガラス、およびそれらのカバーガラスとしても、本発明のガラスは好適である。ガラスの洗浄中、または次の工程への輸送中などに傷がつくことを防止でき、製品の歩留まり向上をもたらす
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図はB23の添加効果を示すグラフである。
【図2】第2図は本発明における脆さの定義を説明する説明図である。
【図3】第3図は脆さ指標値Bとサンドブラストによる摩耗量との関係を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 本質的に、以下の成分
    SiO25.5〜85.5(重量%)、
    23 0.5〜5 (重量%)、
    SiO2+B23 76〜88 (重量%)、
    MgO 1〜9 (重量%)、
    CaO 0〜8 (重量%)、
    MgO+CaO 1〜9 (重量%)、
    R'2O 10〜23 (重量%)、
    MgO+CaO+R'2O 11〜24(重量%)、
    Al23 0〜5 (重量%)、
    (MgO+CaO)/R'2O(重量比) 0.以下
    (ただし、R’はLi,Na,Kから選ばれた少なくとも1種)からなり、
    MgOの含有量がCaOの含有量より多く、
    室温で測定される密度が2.43g/cc以下とされることを特徴とする耐擦傷性のガラス。
  2. 本質的に、以下の成分からなる請求項1記載の耐擦傷性のガラス。
    SiO25.5〜85.5(重量%)、
    23 0.5〜5 (重量%)、
    SiO2+B23 76〜88 (重量%)、
    MgO 1〜8. (重量%)、
    CaO 0〜7. (重量%)、
    MgO+CaO 1〜8.5 (重量%)、
    Na2O 10〜22 (重量%)、
    2O 0〜10 (重量%)、
    Li2O 0〜10 (重量%)、
    R'2O 10〜22 (重量%)、
    Al23 1〜5 (重量%)
    (MgO+CaO)/R' 2 O(重量比) 0.5以下
  3. 本質的に、以下の成分からなる請求項1記載の耐擦傷性のガラス。
    SiO2 80超〜85.5(重量%)、
    23 0.5〜5 (重量%)、
    SiO2+B23 80.5超〜88 (重量%)、
    MgO 1〜6.9 (重量%)、
    CaO 0〜5.9 (重量%)、
    MgO+CaO 1〜6.9 (重量%)、
    Na2O 10〜17.5未満(重量%)、
    2O 0〜7.5未満(重量%)、
    Li2O 0〜7.5未満(重量%)、
    R'2O 10〜17.5未満(重量%)、
    Al23 1〜5 (重量%)
    (MgO+CaO)/R' 2 O(重量比) 0.5以下
  4. 本質的に、以下の成分からなる請求項1記載の耐擦傷性のガラス。
    SiO25.5〜80(重量%)、
    23 0.5〜5(重量%)、
    SiO2+B23 76 〜85(重量%)、
    MgO 1〜8.(重量%)、
    CaO 0〜7.(重量%)、
    MgO+CaO 2〜8.5(重量%)、
    Na2O 10〜17(重量%)、
    2O 0〜10(重量%)、
    Li2O 0〜10(重量%)、
    R'2O 10〜19.2(重量%)、
    Al23 1〜5(重量%)、
    (MgO+CaO)/R'2O(重量比) 0.2〜0.
  5. 本質的に、以下の成分からなる請求項1記載の耐擦傷性のガラス。
    SiO25.5〜80 (重量%)、
    23 0.5〜5 (重量%)、
    SiO2+B23 76〜85 (重量%)、
    MgO 1〜8.(重量%)、
    CaO 0〜7.(重量%)、
    MgO+CaO 1〜8.5(重量%)、
    Na2O 5〜19.5(重量%)、
    2O 0〜10 (重量%)、
    Li2O 0〜10 (重量%)、
    2O+Li2O 2.5〜11 (重量%)、
    R'2O 10〜22 (重量%)、
    Al23 1〜5 (重量%)
    (MgO+CaO)/R' 2 O(重量比) 0.5以下
  6. 脆さ指標値Bが6000m-1/2以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の耐擦傷性のガラス。ここで、B=HV/KC(HVはビッカース硬さ、KCは破壊靭性値)である。
  7. 粘性が100ポアズとなる温度が1800℃以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の耐擦傷性のガラス。
  8. 粘性が100ポアズとなる温度が1800℃以下であることを特徴とする請求項6記載の耐擦傷性のガラス。
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