JP3821643B2 - 素子基板および表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置の電子源基板ならびに該電子源基板を用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子として熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型(以下、FE型という)、金属/絶縁層/金属型(以下,MIM型という)や表面伝導型電子放出素子等がある。FE型の例としては「W.P.Dyke&W.W.Dolan,“Field emission”,Advance in Electron Physics,8 89(1956)」あるいは「C.A.Spindt,“Physical Properties of thin-film field emission cathodes with molybdenium”J.Appl.Phys.,475248(1976)」等が知られている。MIM型の例としては「C.A.Mead,“The Tunnel-emission amplifier”,J.Appl.Phys.,32 646(1961)」等が知られている.
【0003】
表面伝導型電子放出素子型の例としては、「M.I.Elinson,Radio Eng.Electron Phys.,1290(1965)」等がある。表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等によるSnO2薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの(「G.Dittmer:“Thin SolidFilms”,9 317(1972)」),In2O3/SnO2薄膜によるもの(「M.Hartwell and C.G.Fonstad:“IEEETrans.ED Conf.”,519(1975)」),カーボン薄膜によるもの(「荒木久 他:真空,第26巻,第1号,22頁(1983)」)等が報告されている。
【0004】
これらの表面伝導型電子放出素子の典型的な素子構成として前述のM.Hartwellの素子構成を図17に示す。図17において1は基板、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部で、導電性薄膜4は、H型形状のパターンに、スパッタで形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成される。なお、図中の素子電極間隔Lは、0.5〜1mm、Wは、0.1mmで設定されている。
【0005】
従来、これらの表面伝導型電子放出素子においては、電子放出を行う前に導電性薄膜4に対して予め通電フォーミングと呼ばれる通電処理を施すことによって電子放出部5を形成するのが一般的である。通電フォーミングとは導電性薄膜4の両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧例えば1V/分程度を印加通電し、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成することである。尚、電子放出部5は導電性薄膜4の一部に亀裂が発生しその亀裂付近から電子放出が行われる。前記通電フォーミング処理をした表面伝導型電子放出素子は、導電性薄膜4に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより電子放出部5より電子を放出せしめるものである。
【0006】
このような表面伝導型放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、大面積にわたって多数素子を配列形成できる利点がある。そこで、この特徴を活かした荷電ビーム源、表示装置等の応用研究がなされている。多数の表面伝導型電子放出素子を配列形成した例としては、後述するように、梯型配置と呼ぶ並列に表面伝導型電子放出素子を配列し、個々の素子の両端を配線(共通配線とも呼ぶ)で、それぞれ結線した行を多数行配列した電子源があげられる(例えば、特開昭64−31332号公報,特開平1−283749号公報,特開平2−257552号公報等)。また、特に、表示装置等の画像形成装置においては、近年、液晶を用いた平板型表示装置がCRTに替わって普及してきたが、自発光型でないためバックライトを持たなければならない等の問題点があり、自発光型の表示装置の開発が望まれてきた。自発光型表示装置としては、表面伝導型放出素子を多数配置した電子源と電子源より放出された電子によって、可視光を発光せしめる蛍光体とを組み合わせた表示装置である画像形成装置があげられる(例えば、USP(米国特許)第5066883号明細書)。
【0007】
しかしながら、表面伝導型電子放出素子の上記従来例による製造方法では、真空成膜と半導体プロセスにおけるフォトリソグラフィ・エッチング法を多様するものであり、大面積にわたって素子を形成するには、工程数も多く、電子源基板の生産コストが高いといった欠点がある。
【0008】
このような課題に対して、本発明者は、上述のような表面伝導型電子放出素子の素子部の導電性薄膜を形成するにあたり、USP3060429号,USP3298030号,USP3596275号,USP3416153号,USP3747120号,USP5729257号等において知られるようなインクジェット液滴付与手段によって、真空成膜法とフォトリソグラフィ・エッチング法によらずに、安定的に歩留まり良くかつ低コストで形成することができるのではないかと考えた。
【0009】
しかしながら、いわゆるインクを紙に向けて飛翔、記録を行うインクジェット記録の場合は、記録紙を数10枚から数100枚カセットにセットし、紙をインク噴射ヘッドに対向する位置に、紙搬送機構によって順次送ることによって、印写を行うことが可能であり、何ら問題は生じないが、導電性薄膜となる元素あるいは化合物を含有する溶液を飛翔させ、基板上に付与して、表面伝導型電子放出素子の素子部の導電性薄膜を形成してなる電子源基板を製作するにあたっては、基板が紙のような薄いシート状ではなく、単純に紙と同じように扱うわけにはいかない。例えば、このような電子源基板を製作する場合には、電子源基板の製造装置に基板を着脱する必要があるが、上述のように、単純に紙搬送、セットする場合とは違い、このような基板を着脱する際に特有の問題が存在する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
(発明の目的)
本発明は、上述のごとき表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置の素子基板ならびに素子基板を用いた画像表示装置に関するものであり、
その目的は、素子基板製作時に素子基板製造装置への着脱をしやすくした素子基板を提供すること、及び、該素子基板に形成された電子放出素子を用いた画像表示装置を提案することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、
第1に、素子基板製造装置の基板保持台に載置し、基板上に素子を形成してなる素子基板であって、該素子基板は、420mm×300mm〜3500mm×1800mmの大きさを有し、該基板上の1対の電極間に導電性薄膜の材料を含有する溶液の液滴が噴射付与され、前記導電性薄膜による素子が複数個形成されるとともに、前記素子が形成される領域の面の裏面に深さを前記基板の厚さの50分の1〜5分の1とし、幅を前記深さとほぼ同程度にした溝を設けるとともに、該溝を前記基板の端部まで設けるようにしたものである。
【0016】
第2に、上記第1の素子基板において、前記溝は、前記基板形成時に同時に形成されるようにしたものである。
【0017】
第3に、上記第1の素子基板において、前記溝は、前記基板の裏面に2次的な加工を施して形成されるようにしたものである。
【0018】
第4に、上記第1乃至第3のいずれか1の素子基板において、前記溝が、複数設けられているようにしたものである。
【0019】
第5に、上記第1乃至4のいずれか1の素子基板において、前記素子は、1対の素子電極間に導電性薄膜の材料を含有する溶液の液滴を噴射付与することによって形成される電子放出素子であるようにしたものである。
【0020】
第6に、上記第5の素子基板と、該素子基板に対向して配置され、蛍光体を搭載したフェースプレートとを有するような画像表示装置を提供するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施形態を示す。なお、本発明の表面伝導型電子放出素子の基本的な構成は平面型である。
図1は、本発明の製造装置によって形成される電子源基板の1例を示す図であるが、ここでは簡略化して、1つの平面型表面伝導型電子放出素子の構成を模式的に示している。実際には後述するように、このような平面型表面伝導型電子放出素子はマトリックス配置された素子群である。
【0025】
図1(A)は、本発明による電子源基板の一例を説明するための平面図、図1(B)はそのB−B線断面図である。図1において、1は基板、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。基板1としては、石英ガラス,Na等の不純物含有量を低減させたガラス,青板ガラス,SiO2を表面に堆積させたガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板等を用いることができる。素子電極2,3の材料としては、一般的な導電材料を用いることができ、例えば、Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属あるいは合金,Pd,As,Ag,Au,RuO2,Pd−Ag等の金属あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体,In2O3−SnO2等の透明導電体,ポリシリコン等の半導体材料等から適宜選択される。
【0026】
素子電極2,3間の間隔Lは好ましくは数千Åないし数百μmの範囲であり、より好ましくは、素子電極2,3間に印加する電圧等を考慮して1μmないし100μmの範囲である。素子電極2,3の長さWは電極の抵抗値および電子放出特性を考慮して、数μmないし数百μmであり、また、素子電極2,3の膜厚dは、100Åないし1μmの範囲である。尚、図1に示した構成に限らず、基板1上に導電性薄膜4、素子電極2,3の電極を順に形成させた構成にしてもよい。
【0027】
図2は、図1の構成の平面型表面伝導型電子放出素子の製造方法を説明するための図で、図2(A)は基板1に素子電極2,3を形成した図、図2(B)は素子電極2,3に導電性薄膜4を形成した図、図2(C)は該導電性薄膜4に電子放出部5を形成した図である。
導電性薄膜4としては、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜が特に好ましく、その膜厚は素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極2,3間の抵抗値および後述する通電フォーミング条件等によって、適宜設定されるが、好ましくは、数Åないし数千Åで、特に好ましくは、10Åないし500Åである。その抵抗値は、Rsが10の2乗ないし10の7乗Ωの値である。なお、Rsは厚さがt、幅がwで長さが1の薄膜の抵抗Rを、R=Rs(1/w)とおいたときに現われる値で、薄膜材料の抵抗率をρとすると、Rs=ρ/tで表される。ここでは、フォーミング処理について通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処理はこれに限られるものではなく、膜に亀裂を生じさせて高抵抗状態を形成する方法であればいかなる方法でも良い。
【0028】
導電性薄膜4を構成する材料としては、Pd,Pt,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W,Pb等の金属,PdO,SnO2,In2O3,PbO,Sb2O3等の酸化物,HfB2,ZrB2,LaB6,CeB6,YB4,GdB4等の硼化物,TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物,TiN,ZrN,HfN等の窒化物,Si,Ge等の半導体,カーボン等の中から適宜選択される。
【0029】
ここで述べる微粒子膜とは複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接、あるいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体として島状を形成している場合も含む)をとっている。微粒子の粒径は、数Åないし1μmであり、好ましくは、10Åないし200Åである。
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る表面伝導型電子放出素子を形成した電子源基板の製造装置について述べる。
図3は、本発明の電子源基板の製造装置の一実施例を説明するための図で、図中、11は噴射ヘッド、12はキャリッジ、13は基板保持台、14は平面型表面伝導型電子放出素子群を形成する基板、15は導電性薄膜の材料を含有する溶液の供給チューブ、16は信号供給ケーブル、17は噴射ヘッドコントロールボックス、18はキャリッジ2のX方向スキャンモータ、19はキャリッジ12のY方向スキャンモータ、20はコンピュータ、21はコントロールボックス、22(22X1,22Y1,22X2,22Y2)は、基板位置決め/保持手段である。この場合は、基板保持台13に置かれた基板14の前面を噴射ヘッド1がキャリッジ走査により移動し、導電性薄膜材料を含有する溶液を噴射付与する例である。
【0031】
噴射ヘッド11は、任意の液滴を定量吐出できるものであれば如何なる機構でも良く、特に数10ng程度の液滴を形成できるインクジェット方式の機構が望ましい。インクジェット方式としては、圧電素子を用いたピエゾジェット方式、ヒータの熱エネルギを利用して気泡を発生させるバブルジェット方式、あるいは荷電制御方式(連続流方式)等いずれのものでも構わない。
【0032】
図4は、図3の場合と違い、吐出ヘッドユニット31(図3での噴射ヘッド11)と電子基板25(図3では電子源基板14)の相対移動を行う際に、電子源基板35側を移動させる例である。
図5は、図4の装置の吐出ヘッドユニット31を拡大して示した概略構成図である。図4,図5において、31は吐出ヘッドユニットで、該吐出ヘッドユニット31はヘッドアライメント制御機構31a、ヘッドアライメント微動機構31b、インクジェットヘッド31c、検出光学系31dよりなる。32は制御コンピュータ、33はインクジェットヘッド駆動・制御機構、34は画像識別機構、35は電子源基板、36はXY方向走査機構、37は位置検出機構、38は位置補正制御機構、39は素子電極、40は液滴、41は液滴着弾位置である。
【0033】
吐出ヘッドユニット31の液滴付与装置(インクジェットヘッド31c)としては、図3の場合と同様に、インクジェット方式の機構が望ましく、圧電素子を用いたピエゾジェット方式、ヒータの熱エネルギを利用して気泡を発生させるバブルジェット方式、あるいは荷電制御方式(連続流方式)等いずれのものでも構わない。
【0034】
以下、上記電子源基板35側を移動させる装置の構成を説明する。
図4において、36はXY方向走査機構であり、その上に電子源基板35が載置してある。電子源基板35上の表面伝導型電子放出素子39は、図1のものと同じ構成であり、単素子としては、図1に示したのと同様、基板1、素子電極2,3、導電性薄膜(微粒子膜)4よりなっている。この電子源基板35の上方に液滴を付与する吐出ヘッドユニット31が位置している。本実施例では、吐出ヘッドユニット31は固定で、電子源基板35がXY方向走査機構36により任意の位置に移動することで吐出ヘッドユニット31と電子源基板35との相対移動が実現される。
【0035】
次に、図5により吐出ヘッドユニット31の構成を説明する。31dは電子源基板35上の画像情報を取り込む検出光学系であり、液滴40を吐出させるインクジェットヘッド31cに近接し、検出光学系31dの光軸31d1および焦点位置と、インクジェットヘッド31cによる液滴40の着弾位置41とが一致するよう配置されている。この場合、検出光学系31dとインクジェットヘッド31cとの位置関係はヘッドアライメント微動機構31bとヘッドアライメント制御機構31aにより精密に調整できるようになっている。また、検出光学系31dには、CCDカメラとレンズとを用いている。
【0036】
再度、図4に戻る。34は検出光学系31dで取り込まれた画像情報を識別する画像識別装置であり、画像のコントラストを2値化し、2値化した特定コントラスト部分の重心位置を算出する機能を有している。具体的には、(株)キーエンス製の高精度画像認識装置、VX−4210を用いることができる。これによって得られた画像情報に電子源基板35上における位置情報を与える手段が位置検出機構37である。これには、XY方向走査機構36に設けられたリニアエンコーダ等の測長器を利用することができる。また、これらの画像情報と電子源基板35上での位置情報をもとに、位置補正を行なうのが位置補正制御機構38であり、この機構によりXY方向走査機構36の動きに補正が加えられる。また、インクジェットヘッド制御・駆動機構33によってインクジェットヘッド31cが駆動され、液滴40が電子源基板35上に塗布される。以上に説明した各制御機構は、制御コンピュータ32により集中制御される。
【0037】
なお、以上の説明においては、吐出ヘッドユニット31は固定で、電子源基板35がXY方向走査機構36により任意の位置に移動することで吐出ヘッドユニット31と電子源基板35との相対移動を実現しているが、図3に示したように、電子源基板35を固定とし、吐出ヘッドユニット31がXY方向に走査するような構成としてもよいことはいうまでもない。特に、200mm×200mm程度の中画面〜2000mm×2000mmあるいはそれ以上の大画面の画像形成装置の製作に適用する場合には、後者のように電子源基板35を固定とし、吐出ヘッドユニット31が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0038】
基板サイズが200mm×200mm程度以下の場合には、液滴付与のための吐出ヘッドユニットを200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプとし、吐出ヘッドユニットと基板の相対移動を直交する2方向(X方向、Y方向)に行うことなく、1方向のみ(例えばX方向のみ)に相対移動させて行うことも可能であり、また、量産性も高くすることができるが、基板サイズが200mm×200mm以上の場合には、そのような200mmの範囲をカバーできるラージアレイマルチノズルタイプの吐出ヘッドユニットを製作することは技術的/コスト的に実現困難であり、本発明のように、吐出ヘッドユニット31が直交するX、Yの2方向に走査するようにし、溶液の液滴の付与をこのような直交する2方向に順次行うようにする構成としたほうがよい。
【0039】
液滴40の材料には、先に述べた導電性薄膜となる元素あるいは化合物を含有する水溶液、有機溶剤等を用いることができる。例えば、導電性薄膜となる元素あるいは化合物がパラジウム系の例としては、酢酸パラジウム−エタノールアミン錯体(PA−ME),酢酸パラジウム−ジエタノール錯体(PA−DE),酢酸パラジウム−トリエタノールアミン錯体(PA−TE),酢酸パラジウム−ブチルエタノールアミン錯体(PA−BE),酢酸パラジウム−ジメチルエタノールアミン錯体(PA−DME)等のエタノールアミン系錯体を含んだ水溶液,また,パラジウム−グリシン錯体(Pd−Gly),パラジウム−β−アラニン錯体(Pd−β−Ala),パラジウム−DL−アラニン錯体(pd−DL−Ala)等のアミン酸系錯体を含んだ水溶液、さらには、酢酸パラジウム・ビス・ジ・プロピルアミン錯体の酢酸ブチル溶液等を挙げることができる。
【0040】
上述の液滴40を吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)31により所望の素子電極部に付与する際には、付与すべき位置を検出光学系31dと画像識別装置34とで計測し、その計測データ、吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)31の吐出口面と基板35の距離、両者の相対移動速度に基づいて補正座標を生成し、この補正座標通りに電子源基板35と吐出ヘッドユニット(噴射ヘッド)31とを相対移動せしめながら液滴を付与する。検出光学系31dとしては、CCDカメラ等とレンズを組み合わせたものを用い、画像識別装置34としては、市販のもので画像を2値化しその重心位置を求めるもの等を用いることができる。
【0041】
以上の説明より明らかなように、本発明の電子源基板は,導電性薄膜となる元素あるいは化合物を含有する溶液をインクジェットの原理で空中を飛翔させ、基板上に液滴として付与して製作されるものであり、本発明の電子源基板は、前述のように、石英ガラス,Na等の不純物含有量を低減させたガラス,青板ガラス,SiO2を表面に堆積させたガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板である。
【0042】
ところで、このような基板を、図3あるいは図4に示した電子源基板製造装置に位置決め、設置、取り外し等を行う際に、電子源基板の裏面が基板保持台に密着して基板をはずしたり、動かしたりすることができなくなることがよく起きていた。そして、それを無理にはずそうとして、基板を破損させたり、作業者が怪我をするということもよく起きていた。
【0043】
この密着の原因は、電子源基板の裏面と該電子源基板の保持台との間がある種の真空状態になることによって起きるものであり、例えば、精密測定に使用されるブロックゲージを2枚くっつける(リンギングという)場合と同じような原理である。
これを避けるためには、基板裏面と基板保持台との間が真空状態にならないようにすればよい。
【0044】
図6は、その一例を説明するための図で、図6(A)は、本発明による電子源基板の裏面平面図、図6(B)は、図6(A)のB−B線断面図で、図示の例では、電子源基板35(又は14)の表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の裏面に物理的な線状形状を設けている。より具体的には、この線状形状は裏面平面に対して落ち込んだ形状35bであるとともに、基板の端部まで設けられている。ここでは、縦横それぞれ3本の落ち込んだ形状(凹状形状)35aの線状形状を設けた例を示している。
【0045】
つまり、このように落ち込んだ形状(凹状形状)35aの線状形状が、基板の端部から空気導入チャネルの役割をなし、基板裏面と電子源基板製造装置の基板保持台との間に空気を導入するので、両者の間に空気層を形成でき、真空状態にならないようにできる。
【0046】
図7は、図6の変形例であり、上述のごとき落ち込んだ線状形状35aの断面をV字形状35a1としたものである。また、縦3本だけの線状形状である。本発明では、このような線状形状が基板の端部から空気導入チャネルの役割をなすものであればよく、断面形状は特に指定しない。
【0047】
上述のごとき線状形状は、本発明の電子源基板製作用基板の裏面にダイシングソー等によって、2次的な加工によって形成され、その断面形状はダイシングブレードの形状によって、V字状,U字状,凹形状(矩形形状)など、任意に形成でき、いずれも適用可能である。さらに簡易的な2次的な加工法としては、ダイヤモンドカッター等の簡単な工具で、ライン状に溝加工を行うだけでもよい。なお、上記のようなダイシングソー等による機械的な2次的な形成方法とは別に、例えば、基板としてガラスを使用する場合には、エッチングによって化学的な加工法により2次的に形成することも可能である。
【0048】
本発明では、上述ように、電子源基板の裏面に落ち込んだ(凹状)形状の物理的な線状形状を設ける場合に、ダイヤモンドカッター等の簡単な工具あるいは機械装置によって、ライン状に溝加工を行うだけ、あるいは化学的な2次的な加工法で簡単に実現できるので、加工コストが低く抑えられ、安価な電子源基板を製作できる。
【0049】
本発明のさらに他の例として、例えば、基板材料としてAl2O3(アルミナ)、SiC等のセラミックスを使用する場合には、焼成前にあらかじめこのような溝ができるようにしておいて、それを焼成することによって、このような線状形状と基板を同時に形成することも可能である。また、このようなセラミックスだけではなく、上述のようなガラスを基板材料とする場合にも、基板外形のプレス形成時に同時にそのような物理的な線状形状を形成することもできる。すなわち、本発明では、基板を形成する際に同時加工(形成)によって、線状形状(溝)を設けるようにしたので、加工コストが低く抑えられ、安価な電子源基板を製作できる。
【0050】
なお、上述のような線状形状は、1本だけでは効果が少なく、複数本設けることにより、その効果は大となる。より好適には、複数本設けるとともに、図6に示したように、互いに交差するように設けるようにするとよい。ただし、必ずしも直角に交差する必要はない。
【0051】
また、図6,図7に示した例では、線状形状35aが基板外形線と平行である例を示しているが、これも必ずしもそのように平行にする必要はなく、外形線に対してある角度を持ったものであってもよい。また、図6,図7では、すべて直線形状を線状形状としたが、これも曲線であってもよい。ただし、溝状の線状形状の場合(溝ではない例も後述する。)、その溝が空気導入チャネルとして効果的に作用するためには、溝状の線状形状の端部が基板の端部まで形成されていることは必須である。
【0052】
なお、線状溝形状ののサイズであるが、深さ、幅とも、ほぼ同じ程度になるようにすればよい。しかし、あまり深さが浅すぎると空気導入チャネルの役割を果たしにくくなるので、注意が必要である。また、逆に深すぎる場合には、その部分で応力集中が起きるため、基板が破損しやすくなるので注意が必要である。
【0053】
本発明では、上述の点に鑑み、溝深さを検討した。使用した基板は、パイレックスガラスであり、裏面を0.05sのほぼ鏡面状態に仕上げ、その面にダイヤモンドカッターで、溝深さを変えた線状形状を製作した。基板保持台に相当する部分は、0.05sのほぼ鏡面状態に仕上げられたSUS340の基板とし、その上での基板のセットしやすさ(設置時の滑りやすさ)を検討したものである。使用した基板は、厚さ2mm,4mm,10mmの3種類であり、それぞれ、420mm×300mm,1200mm×800mm,3500mm×1800mmの大きさとし、図6に示したように縦横とも各3本ずつの矩形溝をほぼ均等に配置するような形で形成した。表1〜表3に溝深さを変えて実験した結果を示すが、溝幅は溝深さと同じとした。
【0054】
評価結果で、○は、ガラス基板と擬似基板保持台であるSUS340の基板との密着が起こらなかった場合であり、×は、密着が発生したもの、或いは、溝深さが深すぎて、ガラス基板の機械的強度が低下して、実験中のわずかの振動、運搬等により破損してしまった場合である。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
以上の結果より、溝深さの下限については、溝深さdは、厚さtの50分の1までにすべきであり、それより小さいと、基板が密着してしまうことがわかる。また、上限については、溝深さdは、厚さtの5分の1までにすべきであり、それより大きいと、基板が破損しやすくなって実用に供しないことがわかる。
【0059】
次に、線状形状の他の例として、溝ではなく裏面平面に対して突き出した形状の例について説明する。
図8は、図6に示した線状溝凹形状を線状凸形状35bとしたものであり、このように裏面平面に対して突き出した形状とすることにより、基板を基板保持台から浮かせて、基板と基板支持台との間に薄い空気層を形成するようにしたので、基板が基板保持台に密着してしまうという不具合は皆無である。この突き出した形状のものについても、その断面形状は、図8に示すように矩形35bであってもよいし、あるいは、図9に示すように三角形状35b1であってもよいし、更には、半円形状などどのようなものでもよい。
【0060】
また、上述のごとき突き出した形状の線状形状を有する基板は、前述の溝形状の線状形状を形成する場合の、基板を同時に形成する方法と同類の方法によって容易に形成できる。すなわち、基板材料としてAl2O3(アルミナ),SiC等のセラミックスを使用する場合には、焼成前にあらかじめこのような突き出した形状ができるようにしておいて、それを焼成することによって、このような線状形状と基板を同時に形成することができる。また、このようなセラミックスだけではなくガラスを基板材料とする場合にも、基板外形のプレス形成時に同時にこのような突き出した形状ができるようにして形成することもできる。
【0061】
このような、突き出した形状の線状形状の場合も、前述の溝形状の線状形状を形成する場合と同様に、基板を形成する際に同時加工(形成)によって、線状形状を設けることができるので、加工コストが低く抑えられ、安価な電子源基板を製作できる。
【0062】
次に、このような突き出した形状の線状形状とする場合に特有の問題について図9を用いて説明する。本発明は、大画面のディスプレイに使用される大型サイズ(300mm×300mmあるいはそれ以上)の電子源基板に適用されるが、このように基板サイズが大きくなるとその平面度を高精度に維持することも大きな課題となる。しかしながら、完全に高精度の基板を得ることは困難であり、どうしても、図9に示すように、ある程度のそり35c等が発生する。
【0063】
本発明では、上記の点に鑑み、そり35cが出るのはやむをえないことであるとし、本発明の突き出した形状の線状形状35bの高さを、そのそり35c、あるいは基板裏面の平面度より大となるようにしている。
【0064】
図9は、それを説明するための図であり、基板裏面が全体に凹状にそっており(35c)、平面度が出ていない例を示している。しかしながら、図9の三角形状の突き出した線状形状35b1の高さを、このそり(平面度)35cより大とすれば、たとえ、基板の平面度が出ていなくても、その三角形状の突き出した線状形状により、基板を浮かせることができるので、基板と基板保持台の間に有効に薄い空気層を形成でき、基板が基板保持台に密着してしまうという不具合は皆無とすることができる。
【0065】
以上の説明より、本発明の電子源基板は、その元になる基板の裏面に線状形状を設け、基板と基板保持台の間に薄い空気層を形成し、基板が基板保持台に密着してしまうことによる不具合は皆無とし、電子源基板製作時に電子源基板製造装置へ基板をセットしたり、はずしたりする際に、基板が電子源基板製造装置の基板保持台に密着して動かなくなってしまうというようなことをなくし、また密着状態になることを回避できるので、電子源基板製造の効率向上、破損事故をなくすことが実現できるものであるが、このような基板に上記のような手段によって導電性薄膜の材料を含有する溶液の噴射を行い、表面伝導型電子放出素子群のパターン付与を行った後、本発明では以下に説明するようなフォーミング処理によって、電子放出部5を形成する。
【0066】
図1,図2において、電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性薄膜4の膜厚、膜質、材料等、あるいはフォーミング処理条件等に依存したものとなる。電子放出部5の内部には、1000Å以下の粒径の導電性微粒子を含む場合もある。この導電性微粒子は、導電性薄膜4を構成する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものとなる。電子放出部5およびその近傍の導電性薄膜4には、炭素あるいは炭素化合物を含む場合もある。
【0067】
次に、上記導電性薄膜4に施すフォーミング処理方法の一例として通電処理による方法を説明する。素子電極2,3間に、図示しない電源を用いて、通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造の変化した電子放出部5が形成される。すなわち、通電フォーミングによれば導電性薄膜4に局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造変化した部位が形成され、この部位が電子放出部5となる。
【0068】
図10は、通電フォーミングの電圧波形の例を示す図であるが、電圧波形はパルス波形が好ましく、パルス波高値が一定の電圧パルスを連続的に印加する場合(図10(A))と、パルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合(図10(B))とがある。まず、パルス波高値が一定電圧とした場合(図10(A))について説明する。
【0069】
図10(A)におけるT1およびT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μs〜10ms、T2を10μs〜100msとし、三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は表面伝導型電子放出素子の形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、数秒ないし数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波など所望の波形を用いても良い。
【0070】
図10(B)におけるT1およびT2は、図10(A)に示したものと同様であり、三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば、0.1Vステップ程度ずつ増加させることができる。
【0071】
通電フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2中に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することができる。例えば、0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時に通電フォーミングを終了させる。
通電フォーミングを終了した素子に活性化工程と呼ぶ処理を施すことが望ましい。活性化処理を施すことにより、素子電流If,放出電流Ieが著しく変化する。
【0072】
活性化工程は、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を廃棄した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。このときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン,アルケン,アルキンの脂肪族炭化水素類,芳香族炭化水素類,アルコール類,アルデヒド類,ケトン類,アミン類,フェノール,カルボン酸,スルホン酸等の有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタン,エタン,プロパンなどCnH2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン,プロピレンなどCnH2n+2等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン,トルエン,メタノール,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アセトン,メチルエチルケトン,メチルアミン,エチルアミン,フェノール,蟻酸,酢酸,プロピオン酸等緒が使用できる。この処理により雰囲気中に存在する有機物質から炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If,放出電流Ieが著しく変化する。活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら行う。なお、パルス幅,パルス間隔,パルス波高値などは適宜設定される。
【0073】
炭素あるいは炭素化合物とは、グラファイト(単結晶、多結晶の両者を指す)、非晶質カーボン(非晶質カーボンおよび非晶質カーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を含むカーボン)であり、その膜厚は500Å以下にするのが好ましく、より好ましくは、300Å以下である。このようにして作成した電子放出素子は、安定化処理を行うことが好ましい。この処理は真空容器内の有機物質の分圧が、1×10-8Torr以下、望ましくは、1×10-10Torr以下で行うのが良い。真空容器内の圧力は、10-6〜10-7Torr以下が好ましく、特に、1×10-8Torr以下が好ましい。
【0074】
真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。さらに、真空容器内を排気するときには、真空容器全体を過熱して真空容器内壁や電子放出素子に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱した状態での真空排気条件は、80〜200℃で5時間以上が望ましいが、特に、この条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により変化する。
【0075】
なお、上記有機物質の分圧測定は質量分析装置により質量数が10〜200の炭素と水素を主成分とする有機分子の分圧を測定し、それらの分圧を積算することにより求められる。安定化工程を経た後、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することができる。このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが安定する。
【0076】
次に本発明の画像形成装置について述べる。
画像形成装置に用いる電子源基板の電子放出素子の配列については種々のものが採用できる。まず、並列に配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数個配置し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向(列方向と呼ぶ)で電子放出素子の情報に配置した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子からの電子を制御駆動する梯子状配置のものがある。これとは別に、電子放出素子をX方向およびY方向に行列状に複数個配置し、同じ行に配置された複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配置された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げられる。このようなものは、所謂、単純マトリックス配置である。まず、単純マトリックス配置について以下に詳述する。
【0077】
図11は、本発明の電子放出素子を複数個マトリックス状に配置して得られる電子源基板を説明するための図で、図11において、71は電子源基板、72はX方向配線、73はY方向配線、74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。m本のX方向配線72は、DX1、DX2、・・・・・・DXmからなり、Y方向配線73はDY1、DY2、・・・・・・DYnのn本の配線よりなる。また、多数の表面伝導型素子74にほぼ均等な電圧が供給されるように材料、膜厚、配線幅が適宜設定される。これらm本のX方向配線72とn本のY方向配線73間は図示しない層間絶縁層により電気的に分離されてマトリックス配線構成する(m、nは共に正の整数)。
【0078】
層間絶縁層(図示せず)はX方向配線72を形成した基板71の全面域は一部の所望の領域に形成される。X方向配線72とY方向配線73はそれぞれ外部端子として引き出される。更に表面伝導型放出素子74の素子電極(図示せず)がm本のX方向配線72およびn本のY方向配線73と結線75によって電気的に接続されている。配線72と配線73を構成する材料、結線75を構成する材料および一対の素子電極を構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なっても良い。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0079】
X方向配線72は、X方向に配列する表面伝導型放出素子74の行を入力信号に応じて走査するための走査信号を印加するための走査信号発生手段(図示せず)と電気的に接続されている。一方、Y方向配線73は、Y方向に配列する表面伝導型放出素子74の各列を入力信号に応じて変調するための変調信号を印加するための変調信号発生手段(図示せず)と電気的に接続されている。更に、表面伝導型電子放出素子74の各素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給されるものである。これにより、単純なマトリックス配線だけで個別の素子を選択して独立に駆動可能になる。
【0080】
次に図12,図13および図14を用いて、上述のようにして作成した単純マトリックス配置の電子源を用いた画像形成装置について、説明する。図12は画像形成装置の表示パネルの基本構成図であり、図13はこれに用いられる蛍光膜を示す。図14はNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路のブロック図を示すとともに、その駆動回路を含む画像形成装置を表す。
【0081】
図12において、71は電子放出素子74を基板上に作製した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリアプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタルバック85等が形成されたフェースプレート、82は支持枠であり、リアプレート81、支持枠82およびフェースプレート86を、フリットガラス等を塗布し、大気中あるいは窒素中で400〜500度で10分以上焼成することで封着して外囲器88を構成する。なお、図12において、74は図1の電子放出素子に相当する。72,73は表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線およびY方向配線である。
【0082】
外囲器88は、上述の如くフェースプレート86、支持枠82、リアプレート81で構成したが、リアプレート81は主に電子源基板71の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基板71自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート81は不要であり、電子源基板71に直接支持枠82を封着し、フェースプレート86,支持枠82,電子源基板71にて外囲器88を構成しても良い。また、さらには、フェースプレート86,リアプレート81間に、スペーサーとよばれる耐大気圧支持部材を設置することで大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器88にすることもできる。
【0083】
図13は、蛍光膜を示す模式図で、蛍光体はモノクロームの場合は蛍光体のみからなるが、カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリックスなどと呼ばれる黒色導電材91とで構成される。ブラックストライプ、ブラックマトリックスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84における外光反射によるコントラストの低下を抑制することである。ブラックストライプの材料としては、通常良く用いられている黒鉛を主成分とする材料だけでなく、導電性があり、光の透過および反射が少ない材料であればこれに限るものではない。
【0084】
本発明では、上述のようなマトリックス化された蛍光体のストライプの方向、あるいはマトリックスの互いに直交する2方向を、前述の電子放出素子群の互いに直交する2方向とそれぞれが互いに平行になるようにし、かつ各電子放出素子に蛍光体が一致するように位置決め、積層して、画像表示装置を構成している。このような構成の画像表示装置は、互いのマトリックスの方向およびその位置が一致しているため、非常に高画質な画像表示装置を実現できる。
【0085】
ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法としては、モノクローム,カラーによらず沈澱法や印刷法が用いられる。また、蛍光膜84(図12)の内面側には通常、メタルバック85が設けられる。メタルバック85は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート86側へ鏡面反射することにより輝度を向上すること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用すること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージからの蛍光体の保護等の役割を有する。メタルバック85は蛍光膜84の作製後、蛍光膜84の内面側表面の平滑化処理(通常、フィルミングと呼ばれる)を行い、その後Alを真空蒸着等で堆積することで作製できる。フェースプレート86には、更に蛍光膜84の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電極(図示せず)を設けてもよい。
【0086】
前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはならず、十分な位置合わせを行う必要がある。この十分な位置合わせを行うために、本発明では、前述のように、電子放出素子に対向する位置に蛍光体を配置するとともに、それぞれのマトリックスの互いに直交する2方向とがそれぞれ互いに平行であるようにしている。このような構成の高精度な画像表示装置を得るためには、蛍光体基板も、本発明の電子源基板と同様な位置決め手法をとることが望ましい。
【0087】
図12に示した画像形成装置は、具体的には以下のようにして製造される。
外囲器88は前述の安定化工程と同様に、適宜加熱しながらイオンポンプ,ソープションポンプなどのオイルを使用しない排気装置により排気管(図示せず)を通して排気し、10-7Torr程度の真空度の有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止される。外囲器88の封止後の真空度を維持するためにゲッター処理を行う場合もある。これは外囲器88の封止を行う直前あるいは封止後に抵抗加熱あるいは高周波加熱等の加熱法により、外囲器88内の所定の位置(図示せず)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、蒸着膜の吸着作用により、例えば、1×10-5Torrないし1×10-7Torrの真空度を維持するものである。
【0088】
次に、図14を参照して、単純マトリックス配置型基板を有する電子源を用いて構成した上記表示パネルを駆動してNTSC方式のテレビ信号に基づきテレビジョン表示を行うための駆動回路の概略構成を説明する。図14において、101は画像表示パネル、102は走査回路、103は制御回路、104はシフトレジスタ、105はラインメモリ、106は同期信号分離回路、107は変調信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0089】
以下、各部の機能を説明するが、まず、表示パネル101は端子Dox1ないしDoxmおよび端子Doy1ないしDoynおよび高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続している。このうち端子Dox1ないしDoxmには表示パネル101内に設けられている電子源、すなわち、M行N列の行列状にマトリックス配線された表面伝導型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動してゆくための走査信号が印加される。一方、端子Doy1ないしDoynには前記走査信号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各素子の出力電子ビームを制御するための変調信号が印加される。また高圧端子Hvには直流電圧源Vaより、例えば、10kVの直流電圧が供給されるが、これは表面伝導型電子放出素子より出力される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与するための加速電圧である。
【0090】
次に、走査回路102について説明する。同回路は内部にM個のスイッチング素子を備えるもので(図中、S1ないしSmで模式的に示している)、各スイッチング素子は直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0V(グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル101の端子Dox1ないしDoxmと電気的に接続するものである。S1ないしSmの各スイッチング素子は制御回路103が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するものだが、実際には、例えば、FETのようなスイッチング素子を組み合わせることにより構成することが可能である。なお、前記直流電圧源Vxは前記表面伝導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう設定されている。
【0091】
制御回路103は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作を整合させる働きをもつものである。次に説明する同期信号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基づいて各部に対してTscan,TsftおよびTmryの各制御信号を発生する。
【0092】
同期信号分離回路106は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から同期信号成分と輝度信号成分とを分離するための回路であり、周波数分離(フィルター)回路を用いれば構成できるものである。同期信号分離回路106により分離された同期信号は良く知られるように垂直同期信号と水平同期信号よりなるが、ここでは説明の便宜上Tsync信号として図示した。一方、前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号と表すが、同信号はシフトレジスタ104に入力される。
【0093】
シフトレジスタ104は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのものであり、制御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて動作する。すなわち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ104のシフトクロックであると言い換えても良い。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子N素子分の駆動データに相当する)のデータはId1ないしIdnのN個の並列信号としてシフトレジスタ104より出力される。
【0094】
ラインメモリ105は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶するための記憶装置であり、制御回路103より送られる制御信号Tmryにしたがって適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記憶された内容は、Id1ないしIdnとして出力され変調信号発生器107に入力される。
【0095】
変調信号発生器107は、前記画像データId1ないしIdnの各々に応じて表面伝導型電子放出素子の各々を適切に駆動変調するための信号源であり、その出力信号は端子Doy1ないしDoynを通じて表示パネル101内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0096】
前述したように、本発明に関わる電子放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。すなわち、前述したように、電子放出には明確なしきい値電圧Vthがあり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。また、電子放出しきい値以上の電圧に対しては素子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化していく。なお、電子放出素子の材料や構成、製造方法を変えることにより電子放出しきい値電圧Vthの値や印加電圧に対する放出電流の変化の度合いが変わる場合もあるが、いずれにしても以下のようなことがいえる。
【0097】
すなわち、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出しきい値以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが電子放出しきい値以上の電圧を印加する場合には電子ビームが出力される。その際、第一には、パルスの波高値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を制御することが可能である。第二には、パルスの幅Pwを変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御することが可能である。
【0098】
したがって、入力信号に応じて電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等があげられ、電圧変調方式を実施するには、変調信号発生器107として、一定の長さの電圧パルスを発生するが入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いる。またパルス幅変調方式を実施するには、変調信号発生器107としては、一定の波高値の電圧パルスを発生するが、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる。
【0099】
シフトレジスタ104やラインメモリ105はデジタル信号式のものでもアナログ信号式のものでも差し支えなく、要は画像信号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行われればよい。
【0100】
デジタル信号式のものを用いる場合には、同期信号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化する必要があるが、これは同期信号分離回路106の出力部にA/D変換器を備えれば可能である。また、これと関連してラインメモリ105の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発生器107に用いられる回路が若干異なったものとなる。
【0101】
まず、デジタル信号の場合について述べる。電圧変調方式においては変調信号発生器107には、例えば、よく知られるD/A変換回路を用い、必要に応じて、増幅回路などを付け加えればよい。また、パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器107は、例えば、高速の発振器、発振器が出力する波数を計数する計数器(カウンタ)、および、計数器の出力値とラインメモリ105の出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いることにより構成できる。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を表面伝導型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付け加えてもよい。
【0102】
次に、アナログ信号の場合について述べる。電圧変調方式においては変調信号発生器107には、例えば、よく知られるオペアンプなどを用いた増幅回路を用いればよく、必要に応じて、レベルシフト回路などを付け加えてもよい。またパルス幅変調方式の場合には、例えば、よく知られた電圧制御型発振回路(VCO)を用いればよく、必要に応じて、表面伝導型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付け加えてもよい。
【0103】
以上に述べたような構成を有する画像表示装置において、表示パネル101の各電子放出素子には、容器外端子Dox1ないしDoxm、Doy1ないしDoynを通じ、電圧を印加することにより、電子放出させるとともに、高圧端子Hvを通じ、メタルバック85あるいは透明電極(図示せず)に高圧を印加して電子ビームを加速し、蛍光膜84に衝突させ、励起・発光させることで画像を表示することができる。
【0104】
以上に述べた構成は、表示等に用いられる好適な画像形成装置を作製する上で必要な概略構成であり、例えば、各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限られるものではなく、画像形成装置の用途に適するよう適宜選択する。また、入力信号例として、NTSC方式をあげたが、これに限るものでなく、PAL、SECAM方式などの諸方式でもよく、また、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式でもよい。
【0105】
次に、図15,図16を参照して梯子型配置電子源基板および画像表示装置について説明する。図15において、110は電子源基板、111は電子放出素子、112のDx1〜Dx10は電子放出素子111に接続した共通配線である。電子放出素子111は、基板110上に、X方向に並列に複数個配置される。これを素子行と呼ぶ。この素子行を複数個基板上に配置し、電子源基板が構成している。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動させることができる。すなわち、電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を印加し、電子ビームを放出させない素子行には電子放出しきい値以下の電圧を印加すればよい。また、各素子行間の共通配線Dx2〜Dx9、例えば、Dx2,Dx3を同一配線とするようにしても良い。
【0106】
図16は、上述のごとき梯子型配置の電子源を備えた画像形成装置におけるパネル構造を示す図で、図16において、120はグリッド電極、121は電子が通過するための空孔、122は、Dox1、Dox2・・・・・・Doxmよりなる容器外端子、123はグリッド電極120と接続されたG1、G2、・・・・・・Gnからなる容器外端子、124は各素子行間の共通配線を同一配線とした電子源基板である。なお、図12,図14と同一の符号は同一の部材を示す。前述の単純マトリックス配置の画像形成装置(図1)との違いは、電子源基板110とフェースプレート86の間にグリッド電極110を備えているか否かである。
【0107】
グリッド電極120は、表面伝導型放出素子から放出された電子ビームを変調するためのものであり、梯子型配置の素子行と直交して設けられたストライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の開口121が設けられている。グリッドの形状や設置位置は図15に示したものに限定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。容器外端子122およびグリッド容器外端子123は、図示しない制御回路と電気的に接続されている。
【0108】
本画像形成装置では、素子行を1列ずつ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これにより、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像を1ラインずつ表示することができる。これによればテレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システム、コンピュータ等の表示装置の他、感光性ドラム等で用いて構成された光プリンタとしての画像形成装置としても用いることもできる。
【0109】
【発明の効果】
請求項1に対応した効果
表面伝導型電子放出素子群を形成された電子源基板において、表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の裏面に物理的な線状形状を設けたので、裏面と電子源基板製造装置の基板保持台との間に薄い空気層を形成でき、電子源基板製作時に電子源基板製造装置へ基板をセットしたり、はずしたりする際に、基板が電子源基板製造装置の基板保持台に密着して動かなくなってしまうというようなことが皆無となった。よって、基板の着脱、あるいは位置決め等による移動がスムーズに行えるようになり、基板製造効率を大幅に向上できるようになった。
【0110】
特に、基板サイズが、例えば、100mm×100mm程度の小さい場合には、このような不具合(密着して動きにくくなる不具合)が生じても、その不具合はそれほど大きな力を必要とせず、簡単に解除できたが、本発明がより効果的に適用される大型サイズ(300mm×300mmあるいはそれ以上)の基板の場合は、いったん密着状態になると、簡単に解除できなくなり、あるいは解除しようとしている間に基板を破損したりするという事故が起こったりしていた。このような大型サイズの基板に対して、本発明のように、裏面に物理的な線状形状を設け、裏面と電子源基板製造装置の基板保持台との間に薄い空気層を形成することにより、密着状態になることを回避でき、電子源基板製造の効率向上、破損事故をなくすことが実現できる。
【0111】
更に、前記線状形状は、裏面平面に対して落ち込んだ形状であるとともに、その線状形状は、基板の端部まで設けるようにしたので、落ち込んだ(凹状)形状の線状形状が、空気を通す流路となり、基板の端部から、裏面と電子源基板製造装置の基板保持台間に、空気が通じるようになり、これにより、裏面と電子源基板製造装置の基板保持台間が密着状態になることを回避でき、電子源基板製作時に電子源基板製造装置へ基板をセットしたり、はずしたりする際に、基板が電子源基板製造装置の基板保持台に密着して動かなくなってしまうというようなことが皆無となった。
更に、落ち込み深さ並びに幅を最適化したことにより、その物理的な線状形状に起因(応力集中)する基板の破損を回避できるようになった。
【0113】
請求項2に対応した効果
表面伝導型電子放出素子群を形成された電子源基板を製作するための基板において、表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の裏面に、落ち込んだ(凹状)形状の物理的な線状形状を設ける場合に、例えば、セラミックを基板材料とする場合には、基板焼成時に同時にそのような物理的な線状形状を同時に焼成したり、あるいは、ガラスを基板材料とする場合には、基板外形のプレス形成時に同時にそのような物理的な線状形状を形成するなどして、基板を形成する際に同時加工(形成)によって、線状形状を設けるようにしたので、加工コストが低く抑えられ、安価な電子源基板を製作できるようになった。
【0114】
請求項3に対応した効果
表面伝導型電子放出素子群を形成された電子源基板を製作するための基板において、表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の裏面に、落ち込んだ(凹状)形状の物理的な線状形状を設ける場合に、ダイヤモンドカッター等の簡単な工具、あるいは機械装置によって、ライン状に溝加工を行うだけで実現できるので、加工コストが低く抑えられ、安価な電子源基板を製作できるようになった。
【0115】
請求項4に対応した効果
表面伝導型電子放出素子群を形成された電子源基板を製作するための基板において、表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の裏面に、落ち込んだ(凹状)形状の物理的な線状形状を複数設けるようにしたので、基板サイズが大型(300mm×300mmあるいはそれ以上)のものであっても、基板裏面と電子源基板製造装置の基板保持台間に、より効果的に空気が通じるようになる(=複数あるから)、あるいは裏面基板裏面を電子源基板製造装置の基板保持台からより効果的に浮かせて置くことができるようになり(=複数あるから)、基板裏面と電子源基板製造装置の基板保持台間が密着状態になることを回避でき、電子源基板製作時に電子源基板製造装置へ基板をセットしたり、はずしたりする際に、基板が電子源基板製造装置の基板保持台に密着して動かなくなってしまうというようなことが皆無となった。よって、基板の着脱、あるいは位置決め等による移動がスムーズに行えるようになり、基板製造効率を大幅に向上できるようになった。
【0117】
請求項5に対応した効果
基板に形成される素子は、1対の素子電極間に導電性薄膜の材料を含有する溶液の液滴を噴射付与することによって形成される電子放出素子としたので、簡単な製作原理によって、表面伝導型電子放出素子基板を製作できるようになった。
【0118】
請求項6に対応した効果
素子基板製作時に素子基板製造装置へ基板をセットしたり、はずしたりする際に、基板が素子基板製造装置の基板保持台に密着して動かなくなってしまうというようなことがなく、よって、基板の着脱、あるいは位置決め等による移動がスムーズに行え、基板製造効率が大変高いものである。よって、製造時に非常に作業効率の向上が図れるため、低コストな素子基板が得られるというメリットがある。したがって、このような、低コストな素子基板を画像表示装置に使用するようにしたので、低コストの画像表示装置が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る平面型表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式的平面図および断面図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係る表面伝導型電子放出素子の製造方法を示す模式図である。
【図3】 本発明の一実施形態に係る表面伝導型電子放出素子の製造装置方法を示す構成図である。
【図4】 本発明が適用される液滴付与装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】 図4に示した液滴付与装置の吐出ヘッドユニットの概略構成図である。
【図6】 本発明の一実施形態に係る表面伝導型電子放出素子を形成するための基板の裏面平面図及び断面図で、基板の裏面に落ち込んだ形状の線状形状を示す図である。
【図7】 図6に示した実施形態の変形実施形態に係る表面伝導型電子放出素子を形成するための基板の裏面平面図及び断面図で、基板の裏面の落ち込んだV字状の線状形状を形成した図である。
【図8】 本発明の他の実施形態に係る表面伝導型電子放出素子を形成するための基板の裏面平面図及び断面図で、該基板の裏面に突き出した形状の線状形状を形成した図である。
【図9】 本発明の他の実施形態に係る表面伝導型電子放出素子を形成するための基板で、基板の裏面の平面度より突き出した形状の線状形状の高さが大であることを説明する図である。
【図10】 本発明の一実施形態に係る表面伝導型電子放出素子の製造に際して採用できる通電フォーミング処理における電圧波形例を示す模式図である。
【図11】 本発明を適用しうるマトリックス配置型電子源基板例を示す模式図である。
【図12】 本発明を適用しうるマトリックス配置型電子源基板による画像形成装置の表示パネル例を示す模式図である。
【図13】 本発明を適用しうる蛍光膜を示す模式図である。
【図14】 画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に応じて表示パネルの表示を行うための駆動回路のブロック図である。
【図15】 本発明を適用しうる梯子配置型電子源基板を示す図である。
【図16】 本発明を適用しうる梯子配置型電子源基板による画像形成装置の表示パネルを示す模式図である。
【図17】 従来の電子放出素子の模式図である。
【符号の説明】
1…基板、2,3…素子電極、4…導電性薄膜、5…電子放出部、11…噴射ヘッド、12…キャリッジ、13…基板保持台、14…平面型表面伝導型電子放出素子群を形成する基板、15…導電性薄膜の材料を含有する溶液の供給チューブ、16…信号供給ケーブル、17…噴射ヘッドコントロールボックス、18…キャリッジ12のX方向スキャンモータ、19…キャリッジ12のY方向スキャンモータ、20…コンピュータ、21…コントロールボックス、22(22X1,22Y1,22X2,22Y2)…基板位置決め/保持手段、31…吐出ヘッドユニット、32…制御コンピュータ、33…インクジェットヘッド駆動・制御機構、34…画像識別機構、35…電子源基板、36…XY方向走査機構、37…位置検出機構、38…位置補正制御機構、39…素子電極、40…液滴、41…液滴着弾位置、71…電子源基板、72…X方向配線、73…Y方向配線、74…表面伝導型電子放出素子、75…結線、76…高圧端子、81…リアプレート、82…支持枠、83…ガラス基板、84…蛍光膜、85…メタルバック、86…フェースプレート、88…外囲器、91…黒色部材、92…蛍光体、101…表示パネル、102…走査回路、103…制御回路、104…シフトレジスタ、105…ラインメモリ、106…同期信号分離回路、107…変調信号発生器、Vx,Va…直流電圧源、110…電子源基板、111…電子放出素子、112…電子放出素子を配線するための共通配線、120…グリッド電極、121…空孔、122…容器外端子、123…グリッド容器外端子、124…電子源基板。
Claims (6)
- 素子基板製造装置の基板保持台に載置し、基板上に素子を形成してなる素子基板であって、該素子基板は、420mm×300mm〜3500mm×1800mmの大きさを有し、該基板上の1対の電極間に導電性薄膜の材料を含有する溶液の液滴が噴射付与され、前記導電性薄膜による素子が複数個形成されるとともに、前記素子が形成される領域の面の裏面に深さを前記基板の厚さの50分の1〜5分の1とし、幅を前記深さとほぼ同程度にした溝を設けるとともに、該溝を前記基板の端部まで設けたことを特徴とする素子基板。
- 前記溝は、前記基板形成時に同時に形成されることを特徴とする請求項1に記載の素子基板。
- 前記溝は、前記基板の裏面に2次的な加工を施して形成されることを特徴とする請求項1記載の素子基板。
- 前記溝が、複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の素子基板。
- 前記素子は、1対の素子電極間に導電性薄膜の材料を含有する溶液の液滴を噴射付与することによって形成される電子放出素子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の素子基板。
- 請求項5の素子基板と、該素子基板に対向して配置され、蛍光体を搭載したフェースプレートとを有することを特徴とする画像表示装置。
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