JP3820870B2 - オイルパン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の底部に取り付けられるオイルパンに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関(以下、エンジンとも言う)では、各摺動部の潤滑性を維持するために、潤滑油が各摺動部に供給されるようになされている。潤滑油は、エンジンの下部に取り付けられたオイルパンの内部に貯留されており、これがオイルポンプによってストレーナを介して吸い上げられてエンジン各部に供給され、最終的に再度オイルパンに戻される。潤滑油はこのようにしてエンジンの内部を循環される。なお、潤滑油にはエンジンの冷却効果もあり、エンジンの各部を循環して温度が高くなった潤滑油は、オイルパンにおいて冷却される。
【0003】
オイルパンは、エンジンのシリンダブロック下部に取り付けられ、ストレーナが内部に配されるのが一般的である。ここで、上方のエンジン各部に潤滑油を供給するためのストレーナ通路を、部品点数削減などを考慮してオイルパンの本体(鍋状の部分)と一体化させたものも考えられている。このようなものとしては、実開平2-141619号公報や実開昭63-6005号公報に記載のものなどがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した公報に記載のオイルパンは、鉄板によって形成されたオイルパン本体に対して鉄板を溶接するなどしてストレーナ通路を形成させているため、製造上コストの高いものとなっている。このような構造とするのは、材質が鉄板であるため、複雑な構造を実現するには別部品を溶接する必要が生じるからである。また、上述した公報に記載のオイルパンなどは、ストレーナ通路が本体の底面部に形成されているが、潤滑油の流れを充分に考慮したものとはなっていない。特に、オイルパンの深さが浅い場合などは、オイルの流れが阻害されるようであると、潤滑油を確実にエンジン各部に循環させることができなくなるおそれも生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、安価かつ容易に製造することができると共に、潤滑油を確実に循環させることのできるオイルパンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、潤滑油を貯留するために内燃機関の下部に取り付けられるオイルパンにおいて、成形型を用いて製造された本体と本体の成形時に本体に対して一体的に成形された筒状部と、筒状部の内部に形成されたストレーナ通路と、筒状部の側方に形成された少なくとも一つの還流通路とを有しており、ストレーナ通路は、本体の底面部に傾斜して配置され、還流通路は、ストレーナ通路に沿って傾斜して形成されており、その通路幅が上方から下方に向けて拡張されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ストレーナ通路の内径が下方から上方に向けて拡張されており、ストレーナ通路の上側延長線上に成形用型抜取用の開口部が配置され、かつ、この開口部が閉塞部材によって閉塞されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、還流通路が、ストレーナ通路の両側方に形成されており、その双方の還流通路の通路幅が、それぞれ下方に行くにつれて拡張されていることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のオイルパンの一実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1〜図8に、本発明のオイルパンを示す、図1は平面図、図2は底面図、図3は正面図、図4は背面図、図5は図1におけるA-A線断面図、図6は図1におけるB-B線断面図、図7及び図8は斜視図である。図に示されるオイルパン1は、図3や図4に示されるような状態で内燃機関(エンジン)の下部に取り付けられて使用されるので、オイルパン1の各部を説明するに際して、この状態を基準として「上部」や「下部」などの語を用いることとする。なお、エンジンが車輌等に搭載される際に僅かに傾けられる場合もある。
【0010】
本実施形態のオイルパン1は、鋳型を用いた鋳造によって製造されている。また、その素材は放熱性に優れるアルミ合金であり、潤滑油(以下、オイルとも言う)の冷却効率がよく、エンジンの冷却効性能にも優れている。また、鋳型(成形型)を用いて全体を一度に製造することができ、製造が容易で製造効率に優れている。さらに、製造工程が簡素になるため、製造コストを低減することもできる。
【0011】
オイルパン1は全体がほぼ長方形の底面を有する鍋状の本体2を有している。本体2の上端縁には外側に向けてフランジが形成されており、このフランジに複数のボルト孔が穿孔されている。エンジンのクランクケース下部には、このボルト孔を用いて結合される。
【0012】
本体2の底面3は斜めに傾斜しており、上方から滴下する潤滑油を下方に集めるようにされている。本実施形態では、この底面3が立設壁部4によって二分割されている。底面3の最も下方には孔部5が形成されており、この下方には図示されない椀状の別部材が取り付けられ、オイル溜まりを形成する。この図示されない椀状の部分は、車輌が走行中に路面上の突起と接触するなどして破損する場合もあり、別部品として交換を容易にしてある。
【0013】
この孔部5には、ストレーナ通路6の下端が開口されている。この下端には、オイル中の不純物を濾過する図示されない別部材(上述した椀状の部分と一体化される場合もある)が取り付けられる。ストレーナ通路6は、上述した傾斜する底面3に沿って配設された筒状部7の内部に形成されている。筒状部7はオイルパン1の鋳造時(成形時)に上述した本体2を含むオイルパン1全体と一体的に形成される。筒状部7は、筒状であるため、オイルパン1全体の剛性や強度を向上させる役割もある。
【0014】
筒状部7は傾斜する底面3に沿って配設されているため、その内部に形成されるストレーナ通路6も傾斜しており、その上端は上方に向けて開口されている。オイルパン1がエンジンの下部に取り付けれられると、このストレーナ通路6の上端部近傍にオイルポンプが位置し、ストレーナ通路6を介して上述したオイル溜まりに貯留されているオイルが吸い上げられてエンジン各部に供給される。
【0015】
ストレーナ通路6は、図5に示されるように、A-A剪断面上でクランクした形状に形成されている。また、ストレーナ通路6の内径は、下方から上方に向けて拡張されている。本実施形態では、ストレーナ通路6の形状は円形であるが、円形である必要はない。断面形状が円形でない場合、内径が拡張されているとは、その断面形状の面積が増加されていると言うことである。
【0016】
このストレーナ通路6の上端部近傍には、上述した上方に向けて開口された端部の他に、通路延長線上に開口部8が形成されている(図5参照)。しかし、この開口部8は、閉塞部材9によって閉塞されている。上述したように、オイルパン1は鋳型によって製造される。本実施形態における鋳型の主要部分は二つに分割されており、この二つの主要部分は、図5中黒色の矢印によって示されるように、上方及び下方に向けてそれぞれ移動される。二つの鋳型主要部を上下方向に開くことによって、製造後のオイルパン1を取り出すことができる。
【0017】
しかし、このような型開きを行う場合、ストレーナ通路6の上端部及び下端部近傍の上下方向にほぼ垂直な部分は成就した二つの鋳型主要部によって成形できるが、中央部の傾斜する部分は成形できない。そこで、図5中白色の矢印によって示される方向にスライドさせることができる棒状部を鋳型の一部として構成しておけば、オイルパン1の製造後にこの棒状部を引き抜けば、ストレーナ通路6を容易に成形することができる。このとき、棒状部を引き抜く部分に上述した開口部8が形成される。
【0018】
オイルパン1の使用時には開口部8は必要ないので、開口部8は閉塞部材9によって閉塞される。逆に言えば、オイルパン1にこのような開口部8を形成させることによって、そのオイルパン1の製造を容易にすることができる。さらに、上述した棒状部を引き抜きやすいように、棒状部先端側の外径を基端側外径よりも小さくしておく。いわゆる、「抜き角」を付けておく。この結果、ストレーナ通路6の内径が下方から上方に向けて拡張される。逆に言えば、ストレーナ通路6の内径が下方から上方に向けて拡張されることによって、鋳型の棒状部を抜きやすくしてオイルパン1の製造を容易にすることができる。
【0019】
さらに、ストレーナ通路6(筒状部7)の両側方には、オイルを下方に導くための還流通路10がそれぞれ形成されている。そして、上述したようにストレーナ通路6の内径を下方から上方に向けて拡張されることに伴って、この各還流通路10の通路幅が下方に行くにつれて拡張されている。図1に示されるように、下方の通路幅x1,x2は、それぞれ上方の通路幅y1,y2よりも広い(x1>x2,y1>y2)。
【0020】
このようにすることによって、上方から滴下するオイルを円滑に下方のオイル溜まりに集めることができる。なぜなら、オイルは、還流通路10全体の上方から滴下・流下する(例えば、図1中のα部やβ部から)ので、還流通路10を流れるオイル量は、その上方よりも下方の方が多くなる。そこで、このような流れを円滑に流すには、還流通路10の通路幅を、下方ほど広くなるように形成することが非常に効果的である。特に、壁面側(α部やβ部側)は壁面を伝って流下するオイルがあるため、このような構造としておくことは非常に有用である。
【0021】
特に、エンジンが搭載される車輌のコンセプトにもよるが、エンジンの高さを低く抑える必要がある場合などは、オイルパンの高さも低くされることとなる。このような場合は、オイルパンの深さが浅くなるため、オイルの流れを充分に考慮しておかないと、オイルが円滑に潤滑されないような場合も生じ得る。オイルが円滑に潤滑されないと、オイルポンプが空気を吸い込んでしまったり、各摺動部の摩擦抵抗が増大するなどの問題が生じる。このような場合に、上述した構造は非常に有用である。
【0022】
さらに、オイルパンの深さが浅いような場合は、オイルパン上方に位置するクランクシャフトのバランスウェイトなどの回転する部分との干渉を防止しなくてはならないが、上述した構造は、ストレーナ通路6をオイルパン1の底面3に沿って配置するため、このような干渉を防止する上からも都合がよい。
【0023】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上述したオイルパン1は、鋳型を用いた鋳造によって製造された。オイルパンの製造には、鋳造が一般的であるが、必ずしも鋳造でなければならないというわけではない。成形型を用いた製造法であればどのような製造法でも構わない。また、オイルパン1の素材も、上述したアルミ合金に限定されることはなく、金属以外の素材を用いてもよい。
【0024】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、全体を成形型によって製造するので、安価かつ容易に製造することができる。このとき、ストレーナ通路が本体の底面部に一体的に形成されるので、内燃機関内部の可動部などとの干渉を防止することができる。さらに、ストレーナ通路が内部に形成される筒状部がオイルパン全体の剛性及び強度の向上に寄与する。さらにまた、還流通路の通路幅が上方から下方に向けて拡張されているので、潤滑油を円滑に下方に集めることができ、潤滑油の円滑な循環に寄与することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、このような成形型抜取用の開口部(オイルパンの使用時には閉塞部材によって閉塞されている)が設けられ、かつ、ストレーナ通路の内径が下方から上方に向けて拡張されているので、成形型を用いた製造時により容易にストレーナ通路を形成でき、製造を容易にすることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、下方の通路幅が拡張されている還流通路を筒状部の両側方に形成させることによって、潤滑油をより円滑に下方に集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオイルパンの一実施形態の平面図である。
【図2】本発明のオイルパンの一実施形態の底面図である。
【図3】本発明のオイルパンの一実施形態の正面図である。
【図4】本発明のオイルパンの一実施形態の背面図である。
【図5】図1におけるA-A線断面図である。
【図6】図1におけるB-B線断面図である。
【図7】本発明のオイルパンの一実施形態の斜視図である。
【図8】本発明のオイルパンの一実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
1…オイルパン、2…本体、3…底面、4…立設壁部、5…孔部、6…ストレーナ通路、7…筒状部、8…(成形用型抜取用の)開口部、9…閉塞部材、10…還流通路。
Claims (3)
- 潤滑油を貯留するために内燃機関の下部に取り付けられるオイルパンにおいて、
成形型を用いて製造された本体と、前記本体の成形時に前記本体に対して一体的に成形された筒状部と、前記筒状部の内部に形成されたストレーナ通路と、前記筒状部の側方に形成された少なくとも一つの還流通路とを有しており、
前記ストレーナ通路は、前記本体の底面部に傾斜して配置され、
前記還流通路は、前記ストレーナ通路に沿って傾斜して形成されており、その通路幅が上方から下方に向けて拡張されていることを特徴とするオイルパン。 - 前記ストレーナ通路の内径が下方から上方に向けて拡張されており、前記ストレーナ通路の上側延長線上に成形用型抜取用の開口部が配置され、かつ、この開口部が閉塞部材によって閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルパン。
- 前記還流通路が、前記ストレーナ通路の両側方に形成されており、その双方の前記還流通路の通路幅が、それぞれ下方に行くにつれて拡張されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオイルパン。
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