JP3820460B2 - 加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼、高強度ボルトおよび高強度ボルトの製造方法。 - Google Patents

加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼、高強度ボルトおよび高強度ボルトの製造方法。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼、耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の燃量低減等を目的とした各部品の軽量化に伴い、部品の締結用ボルトの分野においても、高強度化の要請がますます強くなってきた。また、ボルトにおいては高強度化ばかりでなく、製造段階でのコストを低下するために冷間加工性がよく、さらに熱処理を簡素化することができるものが要請されるようになってきた。
従来、冷間加工性と耐遅れ破壊性を満足させる発明として特開平11−293401号があるが、耐遅れ破壊性については十分でなく、更なる改善が要求されていた。
また、ボルトの高強度化を図るために合金添加量を増して焼入れ硬さを上げたり、焼戻し軟化抵抗を高めたりすることが一般的であった。例えば特開平6−158170号に記載された発明では、MoやVを添加して高温焼戻しによる二次硬化を利用してボルトの高強度化を達成している。
【0003】
しかし、一般に鋼中の合金元素の増加は、ボルト用素材の硬さの上昇を招くため、ボルト形状への冷間加工が困難になる。その冷間加工性を改善するためには軟化させる必要があるが、軟化させるためには10時間以上の処理時間を要する球状化焼なましを行う必要があるので、コストが高くなるという問題点がある。特に、引張強さが1300MPaを超える高強度ボルトの製造にあたっては、「線材圧延→球状化焼なまし→冷間伸線→球状化焼なまし→ボルト頭部ヘッダーの成形」のように、2回の球状化焼なまし工程が必要であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、圧延後球状化焼なましをしなくても冷間加工でボルト頭部ヘッダーを成形することができるとともに、調質後の引張強さが1300MPaを超え、更に耐遅れ破壊性にも優れた高強度ボルト用鋼、調質後の引張強さが1300MPaを超え、耐遅れ破壊性にも優れた高強度ボルトおよびその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、高強度ボルトに用いる鋼の成分組成および熱処理条件等について研究したところ、高強度ボルト用鋼のCrを1.20%以下にすると球状化焼なましをしなくても冷間加工でボルト頭部ヘッダーを成形することができること、Crを低下することによる焼入性の低下はBを添加して補えばよいこと、MoおよびVを含有させることにより耐遅れ破壊性が改善されること、Tiを含有させることにより、高温焼入れにおいても結晶粒の粗大化が防止できること、上記鋼は575℃以上の高温焼戻しをすることによりMoおよびVの炭窒化物の析出による二次硬化をするので、ボルトに成形後焼入れおよび575℃以上の高温焼戻しを施せば1300MPa以上の引張強さが得られ、かつ耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトを製造することができること等の知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づいて発明をされたものである。
【0006】
すなわち、本発明の冷間加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼においては、C:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、更に必要に応じてNb:0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるものとすることである。
【0007】
さらに、本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトにおいては、成分組成をC:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、更に必要に応じてNb:0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるものとすることである。
【0008】
また、本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトの製造方法においては、C:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、更に必要に応じてNb:0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を素材とし、当該素材を冷間成形した後880℃以上の温度で焼入れを施し、575℃以上の温度で焼戻しを施すことである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の冷間加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼、耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法において成分組成を上記のように特定した理由を説明する。
C:0.32〜0.42%
Cは、熱処理によって所要の強度を得るために有効であるので、そのために含有させる元素である。引張強さを1300MPa以上にするためには0.32%以上含有させる必要があるが、多くなると冷間加工性および耐遅れ破壊性が劣化するので、上限を0.42%とする。
【0010】
Si:0.15%以下
Siは、オーステナイト域に加熱すると粒界酸化を助長し、酸化された部分を起点として遅れ破壊をもたらすとともに、圧延後の線材の硬さを高めて冷間加工性を劣化させる元素であるので、低いほうが望ましく、その上限を0.15%とする。
【0011】
Mn:0.40%以下
Mnは、鋼溶製時の脱酸剤であり、また焼入れ性を向上させるので、それらのために含有させる元素であるが、Siと同様にオーステナイト域に加熱すると粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性が劣化するとともに、圧延後の線材の硬さを高めて冷間加工性を劣化させるので、その上限を0.40%、好ましくは0.30%とする。
【0012】
P:0.015%以下
Pは、オーステナイト域に加熱するとオーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させて耐遅れ破壊性を劣化させるので、その含有量を0.015%以下とする。
S:0.008%以下
Sは、Pと同様にオーステナイト域に加熱するとオーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させて耐遅れ破壊性を劣化させるとともに、MnSを形成して耐遅れ破壊性を劣化させるので、その含有量を0.008%以下とする。
【0013】
Cr:0.35〜1.20%
Crは、焼入性を向上させるので、そのために含有させる元素である。その効果を得るためには0.35%以上含有させる必要があるが、多くなるとオーステナイト域に加熱した場合粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性が劣化するとともに、圧延後の線材の硬さを高めて冷間加工性を低下させるので、その上限を1.20%、好ましくは0.95%とする。なお、0.35〜1.20%の範囲であっても、ボルトの寸法等に応じてその添加量を調整するほうが好ましい。
【0014】
Mo:0.70〜1.00%
Moは、焼入性を向上させるとともに、結晶粒の微細化およびオーステナイト粒界の強度向上に寄与し、更に焼戻し時に十分な二次硬化および良好な耐遅れ破壊性を得ることができる、すなわち、575℃を上回る焼戻し温度においても1300MPa以上の高強度および優れた耐遅れ破壊性を得ることができるので、それらのために含有させる元素である。それらの効果を得るためには0.70%以上含有させる必要があるが、多くなると効果が飽和するのみならず、巨大な一次炭化物が晶出し、焼入れ時に残存して靱性を低下させるので、その上限を1.00%とする。
【0015】
V:0.05〜0.25%
Vは、Moと同様に焼戻し時に十分な二次硬化および耐遅れ破壊性を得ることができるので、それらのために含有させる元素である。それらの効果を得るためには0.05%以上含有させる必要があるが、多過ぎると巨大な一次炭化物が晶出し、焼入れ時に残存して二次硬化に寄与するV固溶量が飽和するので、その上限を0.25%とする。
【0016】
Ti:0.12〜0.22%
Tiは、焼戻し時の二次硬化に寄与するMoおよびVを焼入れ時に十分溶け込ますためには880℃以上の高温焼入れが必要であるが、一方において結晶粒の粗大化を招くので、これを抑えるために必要な元素である。すなわち、微細な炭化物を形成し、結晶粒の微細化に寄与するので、それらのために必要な元素である。その効果を得るには0.12%以上含有させる必要があるが、多くなり過ぎても効果が飽和するので、その上限を0.22%、好ましくは0.20%とする。
【0017】
Nb:0.10%以下
Nbは、微細な炭・窒化物を形成し、結晶粒の微細化に寄与し、また耐遅れ破壊性の向上に寄与するので、それらのために必要な元素であるが、0.10%を超えて含有しても効果が飽和するので、その上限を0.10%とする。このNbは、AlNやTiCによる結晶粒微細化効果が不十分な場合、Nb(C,N)を析出させ、その析出物を利用するために含有させるものである。
【0018】
Al:0.005〜0.035%
Alは、Nと結合してAlNを形成して結晶粒を微細化し、靱性を向上させるので、そのために含有させる元素である。その効果を得るためには0.005%以上含有させる必要があるが、多過ぎると地疵となるAl2 3 の大型介在物を生成し、疲労破壊の起点になるので、その上限を0.035%とする。
【0019】
N:0.010%以下
Nは、AlやNbと結合してAlNやNb(C,N)を形成して結晶粒を微細化し、靱性を向上させるので、そのために含有させる元素であるが、Nが多量にあると溶湯中で優先的にTiと結合して粗大なTiNを形成し、これが靱性の低下を招くので、その上限を0.010%以下とする。
【0020】
B:0.0005〜0.0030%
Bは、焼入性の向上に寄与するとともに、焼入れ時にオーステナイト粒界に優先して析出し、PやS等の遅れ破壊強度を劣化させる元素の偏析を防止する効果があるので、それらのために含有させる元素である。それらの効果を得るには0.0005%以上含有させる必要があるが、多量に含有させても効果が飽和するのでその上限を0.0030%とする。
【0021】
次に、焼入れ温度を880℃および焼戻し温度を575℃以上にする理由について説明する。
本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトの製造方法は、MoやV系炭化物の析出による二次硬化を利用するものである。この二次硬化を十分に得るためには880℃以上の高温によりMoとVを十分に溶け込ます必要がある。さらに、これらの炭化物を析出させて十分な二次硬化を得るためには575℃以上で焼戻しをする必要がある。焼戻し温度が650℃以上になると、軟化が始まり、1300MPa以上の強度が得られないので、650℃以下が好ましい。
【0022】
本発明の冷間加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼の製造方法の一例は、この種の鋼の通常の方法で溶製した後造塊し、分塊鍛造又は分塊圧延で鋼片にした後、熱間圧延により線材とし、その後例えば810〜890℃で1時間保持した後徐冷する焼なましを施すことにより冷間成形が可能な硬さレベルまで軟化することである。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって説明する。
実施例1
下記表1に示す成分組成の本発明例および比較例の鋼をそれぞれ溶製した後造塊し、各鋼を直径10mmの線材に圧延した。本発明例および比較例 No.16と17(SCM440)を除く比較例の鋼の線材は、圧延後830〜870℃で1時間保持して徐冷する焼なましを施した。また上記比較例 No.20と21は、760℃で10時間保持して徐冷する球状化焼なましを施した。
焼なまし又は球状化焼なまし線材の断面硬さを表2に示す。冷間伸線はボルト軸部の寸法公差を確保するために行うが、ここでは10mmの線材を皮膜処理後、8.5mmまで途中で焼なまし又は球状化焼なましを施すことなく伸線した。途中で断線したり、硬化して引き抜けなかったものを冷間伸線否とし表2中に×で標記した。
【0024】
【表1】
Figure 0003820460
【0025】
次に、伸線をした線材を引張試験片(縮小JIS4号試験片)および遅れ破壊試験片(曲げ型促進試験片で、直径6mm、環状切欠底直径4mm、切欠半径0.1mmR)に加工し、各試験片に対して1000〜1500MPaとなるように880℃〜950℃で焼入れし、表2に示すような温度で焼戻しをする調質をした。このようにして製作した各試験片を用いて引張特性および下記方法で遅れ破壊特性を調べた。その結果を表2に示す。
【0026】
遅れ破壊試験は、上記曲げ型促進試験片を使用して片持曲げ荷重を負荷し、0.1N−HCl水溶液を試験片の切欠部に滴下しながら破断するまでの時間を測定した。各試験片の遅れ破壊特性は、静曲げ強度(σSB)に対する30時間後の遅れ破壊強度(σ30hr)との比、すなわち遅れ破壊強度比σ30hr/σSBで表した。
【0027】
【表2】
Figure 0003820460
【0028】
表2の結果によると、本発明例の高強度ボルト用鋼は、いずれも冷間伸線において途中で断線したり、硬化して引き抜けなかったものがないので、加工性に優れており、また遅れ破壊強度比も0.74〜0.77の範囲に入っており、耐遅れ破壊性に優れていることが分かる。
これに対して、C又はSi含有量が本発明より高い比較例 No.7と8の鋼は、冷間伸線において途中で断線又は硬化して引き抜くことは不可能となり、冷間加工性が低いことを示している。
【0029】
PおよびS含有量が本発明より高い比較例 No.9の鋼は、遅れ破壊強度比が0.34であり、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
Cr又はMo含有量が本発明より高い比較例 No.10と11の鋼は、冷間伸線において途中で断線又は硬化して引き抜くことが困難であり、冷間加工性が低いことを示している。
V含有量が本発明より高い比較例 No.12の鋼は、遅れ破壊強度比が0.50であり、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
Ti含有量が本発明より低い比較例 No.13の鋼およびP,AlおよびN含有量が本発明より高い比較例 No.14の鋼は、高強度ボルトに要求される耐力比0.9を確保できず、粒度番号6.5以下の粗粒であり、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
【0030】
B含有量が本発明より低い比較例 No.15の鋼は、遅れ破壊強度比が0.61であり、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
C,Cr,Mo,VおよびTi含有量が本発明より低く、Mn含有量が本発明より高い比較例 No.16の鋼(特開平11−293401号の発明のもの)は、粒度番号4.5の粗粒であり、遅れ破壊強度比が0.37であり、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
C,Mo,VおよびTi含有量が本発明より低く、Mn含有量が本発明より高い比較例 No.17の鋼およびMo含有量が本発明より低い比較例 No.18の鋼(いずれも特開平11−293401号の発明のもの)は、遅れ破壊強度比が0.55と0.59であり、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
CおよびTi含有量が本発明より低い比較例 No.19の鋼(特開平11−293401号の発明のもの)は、焼戻し温度が高いため、引張強さおよび耐力が低く、また遅れ破壊強度比も0.71であり、耐遅れ破壊性も良くなかった。
【0031】
Cr含有量が本発明より高く、Mo含有量が本発明より低く、かつV,TiおよびBを含有しないJISのSCM440の鋼で、焼戻し温度が本発明の高強度ボルトの製造方法の温度と同じである比較例 No.20の鋼は、焼戻し温度が高いため、引張強さおよび耐力が低く、高強度ボルト用鋼として適していないことを示している。
また、上記比較例 No.20と同じJISのSCM440の鋼で、本発明の高強度ボルトの製造方法の焼戻し温度より低い普通の温度で焼戻しをした比較例 No.21の鋼は、焼戻し温度が適していたため、引張強さおよび耐力が高かったが、遅れ破壊強度比が0.36であり、耐遅れ破壊性が良くなかった。
【0032】
成分組成が本発明の範囲(鋼種 No.B)の鋼で、焼戻し温度が本発明より低い比較例 No.22と23の鋼は、加工性、引張強さおよび耐力には問題がなかったが、遅れ破壊強度比が0.59と0.42であり、耐遅れ破壊性が良くなかった。
これら2つの結果から、成分組成が本発明の範囲(鋼種 No.BとE)の鋼でも焼戻し温度が本発明より低いと、耐遅れ破壊性が良くならないことが分かる。
【0033】
実施例2
表3に示す成分組成を有する本発明例および比較例の鋼をいずれも直径22mmの線材に圧延し、M10フランジ付き六角ボルトに加工した後、925℃から焼入れ後、600℃または625℃で焼戻しを施し(但し、比較例W(比較例28)についてのみ、焼入れ温度850℃、焼戻し温度460℃)、13T強度域に調質した後に硬さ、引張強度、下記方法で遅れ破壊特性を試験し、その結果を下記表4に示す。なお、比較例Wは、JISのSCM440である。
遅破壊試験は、上記ボルトを治具に取付けて、各ボルトが弾性限界に達する降伏点にて締付け、15質量%の塩酸水溶液に2分間浸漬した後、洗浄、乾燥し、24時間大気中に放置させるサイクルを1サイクルとし、これを14サイクルまで継続した時の、各鋼種5本の中の破損ボルト数比較にて行った。
【0034】
【表3】
Figure 0003820460
【0035】
【表4】
Figure 0003820460
【0036】
表4の結果によると、本発明例のボルトは、いずれも5本中1本も破損が生じなかことから、比較例のボルトに対して良好を耐遅れ破壊特性を示していることが分かる。
【0037】
【発明の効果】
本発明の高強度ボルト用鋼は、上記成分組成にするとともに、焼入れおよび焼戻し温度を適正にすることにより引張強さおよび耐力が高く、加工性が良く、さらに耐遅れ破壊性が良くなるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の高強度ボルトは、引張強さおよび耐力が高いとともに、耐遅れ破壊性が良いという優れた効果を奏する。また、本発明の高強度ボルトの製造方法は、上記成分組成ならびに焼入れおよび焼戻し温度にすることにより引張強さおよび耐力が高いとともに、耐遅れ破壊性が優れた高強度ボルトを製造することができるという優れた効果を奏する。

Claims (6)

  1. 質量%で(以下同じ)、C:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする冷間加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼。
  2. C:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Nb:0.10%以下、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする冷間加工性および耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼。
  3. C:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト。
  4. C:0.32〜0.42%、Si:0.15%以下、Mn:0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下、Cr:0.35〜1.20%、Mo:0.70〜1.00%、V:0.05〜0.25%、Ti:0.12〜0.22%、Nb:0.10%以下、Al:0.005〜0.035%、N:0.010%以下およびB:0.0005〜0.0030%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト。
  5. 上記請求項3記載の耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトの製造方法において、上記請求項3に記載した成分組成の鋼を素材とし、当該素材をボルト形状に冷間成形した後880℃以上の温度で焼入れを施し、575℃以上の温度で焼戻しを施すことを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトの製造方法。
  6. 上記請求項4記載の耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトの製造方法において、上記請求項4に記載した成分組成の鋼を素材とし、当該素材をボルト形状に冷間成形した後880℃以上の温度で焼入れを施し、575℃以上の温度で焼戻しを施すことを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトの製造方法。
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