JPH11246943A - 高強度弁ばね及びその製造方法 - Google Patents

高強度弁ばね及びその製造方法

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JPH11246943A
JPH11246943A JP6411098A JP6411098A JPH11246943A JP H11246943 A JPH11246943 A JP H11246943A JP 6411098 A JP6411098 A JP 6411098A JP 6411098 A JP6411098 A JP 6411098A JP H11246943 A JPH11246943 A JP H11246943A
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valve spring
less
temperature
oil
tempering
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JP6411098A
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Inventor
Toshinori Aoki
利憲 青木
Masami Wakita
将見 脇田
Takayuki Sakakibara
隆之 榊原
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Chuo Hatsujo KK
Chuo Spring Co Ltd
Original Assignee
Chuo Hatsujo KK
Chuo Spring Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 最適の素材を選択した上、その後のばねの製
造工程を適切に組み合わせることにより、従来のものよ
りも耐疲労性、耐へたり性、耐遅れ破壊性を向上した弁
ばねを提供する。 【解決手段】 素材として、C:0.5〜0.8%(重
量比)、Si:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.
8%、Cr:0.7〜1.0%、Al:0.005%以
下、Ti:0.005%以下であって、最大非金属介在
物が15μmである鋼を使用する。オイルテンパー処理
の際、焼入れ加熱温度を950℃以上1100℃以下と
し、コイリング後、窒化処理を施す。望ましくは480
℃以上の高温で窒化処理を施す。素材に高シリコン鋼を
用いているため、焼戻し温度を高くすることができ、こ
のような高温窒化処理も可能となる。これにより、高い
表面硬さを得ることができ、耐疲労性、耐へたり性、耐
遅れ破壊性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に自動車用内燃
機関の弁ばねとして用いられる、耐疲労性・耐へたり性
及び耐遅れ破壊性に優れた高強度弁ばね及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の弁ばね用線材として、JIS
には弁ばね用オイルテンパー線(SWO-V:JIS G3561)、
弁ばね用クロムバナジウム鋼オイルテンパー線(SWOCV-
V:JISG3565)、及び、弁ばね用シリコンクロム鋼オイ
ルテンパー線(SWOSC-V:JIS G3566)等が規定されてい
るが、従来、耐疲労強度及び耐へたり性に優れるSWOSC-
Vが主に利用されてきた。
【0003】一方、環境保護及び資源保護の観点より、
自動車に対しては排気の清浄化及び燃費向上への努力が
常に要請されているが、これらに対して大きく寄与する
のが車体の軽量化であり、車体を構成する各部品につい
ても軽量化への努力がたゆまず続けられている。
【0004】このため、弁ばね用線材についても、疲労
強度を更に高め、へたりを低下させるための提案が種々
なされている。例えば、特開平8−176730号公報
では、重量%でC:0.5〜0.8%、Si:1.2〜
2.5%、Mn:0.4〜0.8%、Cr:0.7〜
1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物から成
り、不可避的不純物であるAl含有量が0.005%以
下、同Ti含有量が0.005%以下である鋼に焼入れ
加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ焼
戻しを施したオイルテンパー線が、高強度弁ばね用とし
て提案されている(請求項1)。この公報では更に、素
材鋼にV:0.05〜0.15%を含有させたオイルテ
ンパー線(請求項2)、それに加えてMo:0.05〜
0.5%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05
〜0.15%のうち少なくとも1種以上を含有させたオ
イルテンパー線(請求項3)が提案されている。また、
同一出願人に係る特開平9−71843号公報では、同
様の成分量を含有する鋼を用い、焼入れ焼戻し後の残留
γ(オーステナイト)を体積比で1〜5%とした高靱性
ばね用オイルテンパー線を提案している(請求項1、
2)。この公報ではまた、焼入れ焼戻し後において、粒
子径が0.05μm以上である炭化物の組織内密度が、
組織観察写真上で5ケ/μm2以下であるとしたオイル
テンパー線も提案し(請求項3、4)、これらの組み合
わせでもよいとしている(請求項5、6)。そして、そ
の具体的製造方法として、請求項1、2、5、6の場合
には焼入れ焼戻し工程における焼戻しを加熱速度150
℃/sec以上で450〜600℃に加熱し、加熱開始
から水等の冷媒を用いた冷却開始までの時間を15秒以
内とすること、請求項3、4、5、6の場合には、焼入
れ加熱を加熱速度150℃/sec以上で1100℃以
下でT(℃)=500+750・C(炭素量)+500
・V(バナジウム量)で決まる温度以上の範囲に加熱
し、加熱開始から水又は油による冷却開始までの時間を
15秒以内とすること、等を開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来提案され
ているものの多くは素材としての鋼か、せいぜい上記の
ような線材(オイルテンパー線)段階までであり、最終
製品である弁ばねを製造する段階まで、高疲労強度・耐
へたり性を実現するための方策を規定したものはなかっ
た。しかし、いかに良好な素材を用いたとしても、その
後の製造工程が不適切であれば素材の性能が十分に発揮
されないばかりか、弁ばねの製造自体を困難にし、場合
によっては逆に疲労強度や耐へたり性を悪化させる危険
性がある。
【0006】本発明はこのような課題を解決するために
成されたものであり、その目的とするところは、最適の
素材を選択した上、その後のばねの製造工程を素材に応
じた適切なものとすることにより、従来のものよりも疲
労強度を向上した弁ばねを提供することにある。具体的
には、素線の最大剪断応力がτ=60±51kgf/mm2
なるような繰り返し負荷に対して5×107回以上の耐
久回数を有する高強度弁ばねを提供するものである。ま
た、本発明では、遅れ破壊に対する耐性をも考慮して、
その特性の向上も図っている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に成された本発明に係る高強度弁ばねは、 i)重量比にしてC:0.5〜0.8%、Si:1.2
〜2.5%、Mn:0.4〜0.8%、Cr:0.7〜
1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物から成
り、不可避的不純物であるAl含有量が0.005%以
下、同Ti含有量が0.005%以下であって、最大非
金属介在物が15μmである鋼に、 ii)焼入れ加熱温度を950℃以上1100℃以下とし
て焼入れ・焼戻しを施したオイルテンパー線を素材とし
て使用し、 iii)コイリング後、窒化処理を施した、ことを特徴と
するものである。
【0008】ここで、上記i)の素材鋼は更に、V:
0.05〜0.15%、Mo:0.05〜0.5%、
W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15
%のうち1種以上を含有してもよい。
【0009】また、上記ii)の焼入れ焼戻し後のオイル
テンパー線において、残留オーステナイトが体積率で1
〜5%となるようにするとよい。
【0010】同様に、上記ii)の焼入れ焼戻し後のオイ
ルテンパー線において、粒子径が0.05μm以上であ
る炭化物の組織内密度が、組織観察写真上で5ケ/μm
2以下となるようにするとよい。
【0011】上記iii)の窒化処理は、従来の弁ばねに
施していたものと同様の温度で行なってもよいが、本発
明の場合、480℃以上で行ない、表面硬さをHv90
0以上とすることにより、より高強度の弁ばねとするこ
とができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の高強度弁ばねではまず、
素材鋼のシリコン含有量を従来の弁ばね用シリコンクロ
ム鋼オイルテンパー線(SWOSC-V)よりも高く、1.2
〜2.5%とした。シリコンはフェライト及びマルテン
サイト中に固溶してそれらを強化するとともに、マルテ
ンサイト相の焼戻し時の[フェライト+炭化物]への分
解を遅らせる作用を有する。つまり、オイルテンパー処
理時の相分解温度を高温側にシフトさせるため、同じ引
張強さを得るための焼戻し温度を従来よりも高くするこ
とができる。焼戻し温度の上昇は、転位の回復を促進
し、組織を安定化する。これは、疲労亀裂の起点を発生
し難くすることから、時間疲労強度を上げ、且つ疲労限
度を上昇させる。また、遅れ破壊強度をも向上させる。
【0013】焼戻し温度の上昇は、弁ばね使用時の温度
上昇による組織変化を防止し、転位の移動を困難にす
る。これは、耐へたり性の向上にも寄与する。
【0014】次に、窒化処理は高温で行なうほど窒素の
鋼中への侵入が容易となり、高い表面硬さを得ることが
できることは十分理解されているが、窒化処理の温度が
オイルテンパー処理の焼戻し温度を越えると、線材の内
部硬さが低下して、疲労強度や耐へたり性に悪影響を及
ぼす。このため、従来、窒化処理温度を上げることは不
可能と考えられていた。本発明では、上記の通り、シリ
コンの強化作用により焼戻し温度を上げることが可能と
なった。これにより、窒化処理温度を同様に上げること
が可能となり、表面硬さの上昇、すなわち、疲労強度の
向上が可能となった。これはまた、耐へたり性の向上に
も寄与する。
【0015】上記の基本的な思想の下、本発明では上記
特開平8−176730号及び特開平9−71843号
で提案されたオイルテンパー線を素材として採用するこ
ととした。従って、その成分及び組織限定条件は同公報
の記載を借りて以下に説明する。
【0016】C:0.5〜0.8重量% Cは鋼線の強度を高めるために必須の元素であるが、
0.5%未満では十分な強度が得られず、逆に0.8%
を越えると靱性が低下し、さらに鋼線の疵感受性が増大
し、信頼性が低下するためである。
【0017】Si:1.2〜2.5重量% Siは上記の通りフェライト及びマルテンサイトの強度
を向上させ、耐へたり性を向上させるのに有効な元素で
ある。1.2%未満ではその十分な効果が無く、逆に
2.5%を越える場合は冷間加工性を低下させるととも
に熱間加工性や熱処理による脱炭を助長するからであ
る。
【0018】Mn:0.4〜0.8重量% Mnは鋼の焼入性を向上させ、鋼中のSを固定してその
害を阻止するが、0.4%未満ではその効果がなく、逆
に0.8%を越えると靱性が低下するためである。
【0019】Cr:0.7〜1.0重量% CrはMn同様、鋼の焼入れ性を向上させ、かつ熱間圧
延後のパテンティング処理により靱性を付与し、焼入れ
した後、焼戻し時の軟化抵抗性を高め、高強度化するの
に有効な元素である。0.7%未満ではその効果が少な
く、逆に1.0%を越えると炭化物の固溶を抑制し,強
度の低下を招くとともに、焼入れ性の過度の増大となっ
て靱性をもたらすためである。
【0020】V:0.05〜0.15重量% Vは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる
元素であるが、0.05%未満ではその効果が少ない。
また、0.15%を越えると焼入れ加熱時に炭化物を多
く形成し、靱性の低下をまねくからである。
【0021】Mo:0.05〜0.5重量% Moは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させ
る元素であるが、0.05%未満ではその効果は少な
く、また0.5%を越えると焼入れ加熱時に炭化物を多
く形成し、靱性の低下をまねくからである。
【0022】Nb:0.05〜0.15重量% Nbは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させ
る元素であるが、0.05%未満ではその効果が少な
い。また、0.15%を越えると焼入れ加熱時に炭化物
を多く形成し、靱性の低下をまねくからである。
【0023】Al、Ti:0.005重量%以下 これらはいずれも高融点非金属介在物であるAl23
TiOを形成する。これらの介在物は硬質で、鋼線表面
直下に存在した場合、疲労強度を著しく低下させる。こ
のため、不可避的不純物とはいえ、いずれも0.005
%以下とした。原料において、これら不純物濃度が低い
ものを用いればよい。
【0024】焼入れ加熱温度:950℃以上1100℃
以下 焼入れ加熱温度によって焼入れ時のV等の固溶量が決ま
り、温度が高いほど固溶量も大きい。950℃未満では
V等の固溶量が小さくなり、炭化物が多く析出する。ま
た、1100℃において本発明におけるV、W、Nbは
そのほとんどがFe中に固溶していると考えられるの
で、1100℃を越えても靱性の向上、軟化抵抗の増大
は認められないからである。
【0025】窒化処理:480℃以上、表面硬さHv9
00以上 窒化処理はオイルテンパー処理後に行われるため、オイ
ルテンパー処理時の焼戻し温度を越えることはできな
い。従来のオイルテンパー線では焼戻し温度が最高でも
450℃以下であったため、窒化処理も必然的にその温
度以下とせざるを得なかった。しかし、本願発明に係る
高強度弁ばねでは、前記の通り素材に高シリコン鋼を使
用したため、オイルテンパー時の焼戻し温度を高くする
ことができた。これにより、窒化処理も480℃以上と
いう高温で行うことが可能となったものである。
【0026】あらゆる化学処理は一般に高温になればな
るほど活性化される。窒化処理の場合、このように高温
で行うことにより、窒素(N)がより鋼中に侵入しやす
くなり、ばねの表面を更に硬くすることが可能となる。
480℃以下の温度では本発明が目標とする表面硬さを
得ることができないためであり、また、表面硬さHv9
00以下でも目標とする疲労強度を得ることができない
ためである。
【0027】残留オーステナイト(γ):1〜5体積率
% 焼戻しマルテンサイト中に存在する残留オーステナイト
相は鋼の靱性を向上させるが、体積率1%未満ではその
効果がなく、5%を越えるとばね使用中のマルテンサイ
ト変態によりへたり量が増える危険性があるからであ
る。
【0028】粒子径0.05μm以上の炭化物の組織内
密度:5ケ/μm2以下 粒子径0.05μm以上の炭化物は組織内に存在する
と、ばね成形時等において破壊の起点となり得る。この
存在密度が組織観察写真上で5ケ/μm2を越えると靱
性が著しく低下するからである。
【0029】これらの残留オーステナイト量及び/又は
炭化物量の規定は、次のような熱処理方法により実現す
ることが望ましい。
【0030】焼入れ焼戻し工程における焼入れ加熱に関
しては、加熱速度150℃/sec以上で、1100℃
以下でT(℃)=500+750・C+500・Vで決
まる温度以上(ただし、950℃以上)の範囲に加熱
し、加熱開始から水又は油による冷却開始までの時間を
15秒以内とする。
【0031】冷却開始までの時間を15秒以内としなけ
れば結晶粒が粗大化し、靱性が劣化し、加熱速度が15
0℃/sec以下であれば冷却開始までの15秒間で十
分な炭化物の固溶ができない。また、加熱温度が110
0℃以上であれば結晶粒粗大化による靱性劣化や脱炭が
起こり、T(℃)=500+750・C+500・V以
下であれば、十分な炭化物の固溶ができない。
【0032】焼入れ焼戻し工程における焼戻し加熱に関
しては、加熱速度150℃/sec以上で、450℃〜
600℃に加熱し、加熱開始から水等の冷媒を用いた冷
却開始までの時間を15秒以内とする。
【0033】加熱速度を150℃/sec、冷却開始ま
での時間を15秒以内としなければ、残留オーステナイ
ト相が体積率1%未満に消失してしまうためである。
【0034】
【実施例】以下に、従来より一般に広く用いられている
シリコンクロム鋼オイルテンパー線(SWOSC-V)にバナ
ジウムを少量添加した鋼を比較材として、本発明に係る
高強度弁ばねの特性を実験結果により明らかにする。実
験に用いた発明材及び比較材の化学組成を図1に示す。
【0035】これらの両供試材は、共に真空溶解炉で溶
製した後、熱間鍛造、熱間圧延により6.5mm径の線材
(素線)とした。この素線からφ3.2mmオイルテンパー
線を得るまでの工程は図2に示す通りである。オイルテ
ンパー処理は各供試材により異なり、それぞれ図3に示
す条件で行った。オイルテンパー線の状態における両供
試材の引張強さ及び絞りは図4の通りであった。
【0036】こうして得たオイルテンパー線より、図5
に示す諸元を有する弁ばねを成形した。その後、図6に
示す条件で窒化処理を施した。発明材は、窒化温度を従
来同様の450℃と、更に高温とした480℃で行なっ
たが、図7に示す通り、窒化温度を高くすることにより
表面硬さが上がり、また、硬化深さも大きくなってい
る。なお、高温窒化処理により内部硬さはやや下がって
いるが、それでも、480℃窒化処理材の内部硬さは比
較材の通常窒化処理材のそれとほぼ同等であり、窒化深
さも比較材とほぼ同等となっている。従って、本発明材
は内部強度を同等に保持したまま、表面硬さを従来より
も上昇させることが可能となっている。なお、同等の内
部硬さを得るために比較材よりも高い温度で窒化処理を
施していることから、耐へたり性に関して、従来よりも
安定性に優れていることが予想される。これらの特性に
ついては後述する。
【0037】窒化後、従来と同様の方法でショットピー
ニングを行い、実際に使用される弁ばねと同じ状態とし
た。
【0038】こうして作製した弁ばねについて、疲労強
度、耐へたり性及び遅れ破壊強度について試験した結果
を図8〜図10により説明する。
【0039】図8は、450℃で窒化を行なった発明材
の弁ばねに対して、ばね素線表面の剪断応力がτ=60
±51kgf/mm2となるような応力振幅を繰り返し負荷を
付与したときの、折損までの回数(耐久回数)をプロッ
トしたグラフである。図8に示す通り、450℃の窒化
処理をしたものでも比較材よりも良好な疲労強度を示し
ており、本発明材では、τ=60±51kgf/mm2でB1
0寿命(全試験片中の10%が折損する繰り返し回数)
が5×107回以上、という目標が達成されている。
【0040】また、τ=70±60kgf/mm2という厳し
い条件で同様に耐久試験を行なった結果、図9に示す通
り、発明材はいずれの窒化温度でも比較材よりも良好な
疲労強度を示しており、特に、窒化温度を480℃とし
たときの発明材のB10寿命は2.5×107回以上と
なっており、このような高負荷条件下でも本発明に係る
弁ばねは十分実用に耐えることが証明された。
【0041】図10は、表面の最大剪断応力がτ=90
kgf/mm2となるような固定負荷を付与した状態で、供試
弁ばねを120℃の雰囲気下に置き、48時間放置した
後の残留剪断歪γを測定した結果のグラフである。発明
材は比較材よりもはるかに良好な耐へたり性を示してい
る。
【0042】図11は、遅れ破壊特性を評価した試験の
結果を示すものである。すなわち、弁ばねにコイリング
した後に生成する残留応力の値を種々に変化させ、各応
力値においてクラック(割れ)が発生するまでの時間を
測定した結果を表わすグラフである。本発明材は、クラ
ック発生時間が比較材よりも遙かに長くなっていること
がわかる。
【0043】
【発明の効果】本発明に係る高強度弁ばねでは、まず、
素材鋼のシリコン含有量を高くして、そのフェライト及
びマルテンサイトに対する固溶強化、及び、マルテンサ
イト相の焼戻し時の[フェライト+炭化物]への分解を
遅らせる作用を利用した。すなわち、オイルテンパー処
理時の相分解温度を高温側にシフトさせ、転位の回復を
促進し、組織を安定化させた。焼戻し温度の上昇は、ま
た、高温窒化処理を可能とし、表面硬さの上昇を可能と
した。これらの作用により、疲労強度の向上が可能とな
った。焼戻し温度の上昇は、一方、弁ばね使用時の温度
上昇による組織変化も防止し、転位の移動を困難にす
る。これは、耐へたり性の向上にも大きく寄与するもの
となった。このような素材特性を有するオイルテンパー
線に、本発明ではそれにふさわしい窒化処理を施すこと
により、それらの有利な素材特性を最大限に生かした高
強度弁ばねを作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 供試材の化学組成。
【図2】 オイルテンパー線までの製造工程。
【図3】 オイルテンパー処理条件。
【図4】 オイルテンパー線の引張特性。
【図5】 弁ばね諸元。
【図6】 窒化処理条件。
【図7】 窒化後の表面硬さ分布。
【図8】 耐久試験結果(その1)。
【図9】 耐久試験結果(その2)。
【図10】 熱間締め付け試験結果。
【図11】 遅れ破壊試験結果。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比にしてC:0.5〜0.8%、S
    i:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.8%、C
    r:0.7〜1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的
    不純物から成り、不可避的不純物であるAl含有量が
    0.005%以下、同Ti含有量が0.005%以下で
    あって、最大非金属介在物が15μmである鋼に、焼入
    れ加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ
    ・焼戻しを施したオイルテンパー線を素材として使用
    し、コイリング後、窒化処理を施したことを特徴とする
    高強度弁ばね。
  2. 【請求項2】 素材鋼が更に、V:0.05〜0.15
    %、Mo:0.05〜0.5%、W:0.05〜0.1
    5%、Nb:0.05〜0.15%のうち1種以上を含
    有する請求項1記載の高強度弁ばね。
  3. 【請求項3】 焼入れ焼戻し後のオイルテンパー線にお
    いて、残留オーステナイトが体積率で1〜5%である請
    求項1又は2記載の高強度弁ばね。
  4. 【請求項4】 焼入れ焼戻し後のオイルテンパー線にお
    いて、粒子径が0.05μm以上である炭化物の組織内
    密度が、組織観察写真上で5ケ/μm2以下である請求
    項1〜3のいずれかに記載の高強度弁ばね。
  5. 【請求項5】 窒化処理を480℃以上で行ない、表面
    硬さをHv900以上とした請求項1〜4のいずれかに
    記載の高強度弁ばね。
  6. 【請求項6】 重量比にしてC:0.5〜0.8%、S
    i:1.2〜2.5%、Mn:0.4〜0.8%、C
    r:0.7〜1.0%を含有し、残部Fe及び不可避的
    不純物から成り、不可避的不純物であるAl含有量が
    0.005%以下、同Ti含有量が0.005%以下で
    あって、最大非金属介在物が15μmである鋼に、焼入
    れ加熱温度を950℃以上1100℃以下として焼入れ
    ・焼戻しを施したオイルテンパー線をコイリングした
    後、窒化処理を施すことを特徴とする高強度弁ばねの製
    造方法。
  7. 【請求項7】 素材鋼が更に、V:0.05〜0.15
    %、Mo:0.05〜0.5%、W:0.05〜0.1
    5%、Nb:0.05〜0.15%のうち1種以上を含
    有する請求項6記載の高強度弁ばねの製造方法。
  8. 【請求項8】 焼入れ処理において、加熱速度150℃
    /sec以上で、1100℃以下でT(℃)=500+
    750・C(炭素量%)+500・V(バナジウム量
    %)で決まる温度以上(ただし、950℃以上)の範囲
    に加熱し、加熱開始から水又は油による冷却開始までの
    時間を15秒以内とする請求項6又は7に記載の高強度
    弁ばねの製造方法。
  9. 【請求項9】 焼戻し処理において、加熱速度150℃
    /sec以上で、450℃〜600℃に加熱し、加熱開
    始から水等の冷媒を用いた冷却開始までの時間を15秒
    以内とする請求項6〜8のいずれかに記載の高強度弁ば
    ねの製造方法。
  10. 【請求項10】 表面硬さがHv900以上となるよう
    に、窒化処理を480℃以上で行なう請求項6〜9のい
    ずれかに記載の高強度弁ばねの製造方法。
JP6411098A 1998-02-27 1998-02-27 高強度弁ばね及びその製造方法 Pending JPH11246943A (ja)

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