JP3820145B2 - トルクセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動パワーステアリング装置等に装備されるトルクセンサ等のように、回転軸に発生するトルクを検出するトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトルクセンサとしては、例えば、特開平10−160600号公報に記載されているようなものが開示されている。
即ち、この従来のトルクセンサは、検出コイルを包囲して磁界の磁路を形成するヨーク部材がハウジング側に装着固定されている。そして、トルクセンサにおいては、ヨーク部材(検出コイル)の位置決めに高い精度が求められ、かつ、使用中におけるずれを防止するため、ヨーク部材の外周面をハウジングの内周面に対して圧入することにより固定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ヨーク部材は検出コイルで形成された磁界の通る磁路を構成するものであるため、圧入時の荷重によりヨーク部材の内部応力が変化すると、その磁路特性が変化してしまい、これにより、トルク検出精度を低下させる虞があるといった問題点があった。
【0004】
本発明は、上述の従来の問題点に着目してなされたもので、ヨーク部材の内部応力を変化させることなしにハウジングへの組み付け固定を可能とすることにより、所望のトルク検出精度を得ることができるトルクセンサを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明請求項1記載のトルクセンサは、第1回転軸と第2回転軸との間に介装された弾性体と、前記第1回転軸側に固定されていて少なくとも軸方向一側面に円周方向所定間隔のもとに切欠部が複数形成された磁性材料よりなる被包囲部材と、該被包囲部材における切欠部が形成された側面と軸方向に対向する状態で前記第2回転軸側に固定されていて前記被包囲部材における切欠部に対応し軸方向に貫通する切欠部が円周方向所定間隔のもとに複数形成された導電性かつ非磁性材料よりなる包囲部材と、該包囲部材側に軸方向に対向する状態で設けられていて前記被包囲部材の切欠部および非切欠部と包囲部材の切欠部との重なり具合の変化をインピーダンス変化に基づいて検出することにより前記第1回転軸と第2回転軸との間に発生するトルクを検出する検出コイルと、該検出コイルを包囲状態で収容する磁性材料からなるヨーク部材と、前記被包囲部材、包囲部材、検出コイルおよびヨーク部材を収容すると共に前記検出コイルを収容したヨーク部材が固定されるハウジングと、を備えたトルクセンサにおいて、前記ヨーク部材が、前記包囲部材および被包囲部材と対向する面以外を包囲する断面門型の本体部と、該門型本体部における外周側の開口端縁部から外向きに突出していて前記ハウジングに固定される固定フランジ部とで構成されている手段とした。
【0006】
請求項2記載のトルクセンサは、請求項1記載のトルクセンサにおいて、前記ヨーク部材の本体部における固定フランジ部が突出された外周包囲部の肉厚が他の包囲部より厚く形成されている手段とした。
【0007】
請求項3記載のトルクセンサは、請求項1または2に記載のトルクセンサにおいて、前記包囲部材が前記被包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、前記ヨーク部材に収容された前記検出コイルが前記両包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、前記両ヨーク部材における両固定フランジ部相互間に該両固定フランジ部相互の軸方向間隔を決定するスペーサが介装された状態で両固定フランジ部が前記ハウジングに対して固定されている手段とした。
【0008】
請求項4記載のトルクセンサは、請求項3記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが非導電性部材で形成されている手段とした。
【0009】
請求項5記載のトルクセンサは、請求項3または4に記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが相互間に介装された前記両固定フランジ部の部分において皿ばねを介して軸方向に押圧された状態で前記両ヨーク部材が前記ハウジングに対して固定されている手段とした。
【0010】
請求項6記載のトルクセンサは、請求項3〜5のいずれかに記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが相互間に介装された前記両固定フランジ部の部分において軸方向に介装されたベース部材を介して軸方向に押圧された状態で前記両ヨーク部材が前記ハウジングに対して固定されている手段とした。
【0011】
【作用】
この発明請求項1記載のトルクセンサでは、上述のように構成されるため、ハウジングに対するヨーク部材の固定が、包囲部材および被包囲部材と対向する面以外を包囲する断面門型の本体部の外周側の開口端縁部から外向きに突出する固定フランジ部において行われるもので、これにより、ヨーク部材における磁界の磁路を構成する本体部の内部応力を変化させることなしにハウジングへの組み付け固定が可能となるため、所望のトルク検出精度を得ることができる。
【0012】
請求項2記載のトルクセンサは、請求項1記載のトルクセンサにおいて、前記ヨーク部材の本体部における固定フランジ部が突出された外周包囲部の肉厚が他の包囲部より厚く形成されることで、ヨーク部材の本体部における磁界の磁路を確保し、これにより、固定フランジ部側への磁束の漏れを防止することができる。
【0013】
請求項3記載のトルクセンサは、請求項1または2に記載のトルクセンサにおいて、上述のように、前記包囲部材が被包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、前記ヨーク部材に収容された検出コイルが両包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられたものであって、前記両ヨーク部材における両固定フランジ部相互間に該両固定フランジ部相互の軸方向間隔を決定するスペーサが介装された状態で両固定フランジ部が前記ハウジングに対して固定されることで、両ヨーク部材(検出コイル)相互間の位置関係を維持した状態での組み付けが可能となり、これにより、両ヨーク部材(検出コイル)相互間のクリアランス管理を容易に行うことができる。
【0014】
請求項4記載のトルクセンサは、請求項3記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが非導電性部材で形成されることで、両検出コイル間における磁束の影響を遮断しつつ、両ヨーク部材(検出コイル)相互間のクリアランス管理を容易に行うことができる。
【0015】
請求項5記載のトルクセンサは、請求項3または4に記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが相互間に介装された両固定フランジ部の部分において皿ばねを介して軸方向に押圧された状態で両ヨーク部材をハウジングに対して固定するようにしたことで、皿ばねを介装するだけで、ヨーク部材における磁界の磁路を構成する本体部の内部応力を変化させることなしにハウジングへの組み付け固定を容易に行うことができる。
また、皿ばねの付勢力により両ヨーク部材(検出コイル)の位置ずれを防止することができる。
【0016】
請求項6記載のトルクセンサは、請求項3〜5のいずれかに記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが相互間に介装された両固定フランジ部の部分において軸方向に介装されたベース部材を介して軸方向に押圧された状態で両ヨーク部材がハウジングに対して固定されることで、ハウジング自体を設計変更することなしに、ベース部材を変更するだけでハウジング(包囲部材および被包囲部材)に対するヨーク部材(検出コイル)の軸方向取り付け位置を変更することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明の実施の形態の構成を図1〜8に基づいて説明する。
【0018】
図1は、発明の実施の形態のトルクセンサが適用される電動パワーステアリング装置を示す全体概略図であり、この図に示すように、ステアリングホイールSWを手動で回転させると、回転軸Sの回転がラックR&ピニオンPによりラックRの直線運動に変換され、これにより、左右の前輪TL、TRの向きを変更(操舵)することができる。また、ピニオンPを電動モータMにより減速ギヤGを介し回転可能に構成することにより、前記手動による操舵力の補助が行われるようになっている。
【0019】
また、前記電動モータMは、手動による操舵力を検出するトルクセンサTSからの信号に基づいて、車載のコントロールユニットECUに組み込まれたマイコンによりその駆動制御が行われ、これにより、手動による操舵力の補助制御が行われる。なお、同図において、Ryはフェールセーフ用のリレー、Bは車載のバッテリである。
【0020】
次に、前記電動パワーステアリング装置におけるトルクセンサTSの構成を、図2〜8に基づいて説明する。
図2は、車両用電動パワーステアリング装置のトルクセンサTSを示す縦断面図、図3は同分解斜視図であり、両図において、1はハウジング、2は入力軸(第2回転軸)、3は出力軸(第1回転軸)、4はトーションバー(弾性体)、5は被包囲部材、6はトルク検出側包囲部材、7は温度補償側包囲部材、8はトルク検出用コイル(検出コイル)、9は温度補償用コイル(検出コイル)、10はスペーサ、11はベース部材、12は皿ばね、13は出力軸側ウォームホイール、14はモータ軸側ウォームシャフトを示す。
【0021】
さらに詳述すると、前記ハウジング1は、前記トルクセンサTS部分が主に収容される上部ハウジング110と、前記減速ギヤG部分が主に収容される中央ハウジング120と、ラックR&ピニオンP部分が主に収容される下部ハウジング130とに分割形成されていて、それぞれ軸方向に組み付けることにより1つのハウジング1が構成されるようになっている。
【0022】
即ち、中央ハウジング120の上部に備えた大径部120a内に上部ハウジング110の下端開口縁部110aを挿入すると共に、フランジ部110bを中央ハウジング120の開口部上端面に当接係止させた状態とし、この状態で、ボルト等により上部ハウジング110と中央ハウジング120とが締結固定される。
【0023】
また、下部ハウジング130の上端部に備えた大径部130a内に中央ハウジング120の下部に備えた小径部120bを装着すると共に、大径部130aの上端面を中央ハウジング120における環状段部120cに当接係止させた状態とし、この状態で、ボルト等により中央ハウジング120と下部ハウジング130とが締結固定されるようになっている。
【0024】
前記入力軸2および出力軸3は、前記各ハウジング110、120、130内に軸受けベアリング1a、1b、1cを介してそれぞれ回転自在に支持された状態で、同軸に配置されている。
【0025】
前記トーションバー4は、前記入力軸2の軸心穴2a内に回転可能に挿入され、その一端が軸心穴2aの奥側で入力軸2に対しピン2bで固定される一方、もう一端側は出力軸3の軸心穴3aにスプライン結合されている。
【0026】
そして、前記入力軸2には、ステアリングホイールSWが連結されていて、このステアリングホイールSWの操舵力が、入力軸2、トーションバー4、および、出力軸3を経由し、出力軸3の下端に設けられたラックR&ピニオンPによりラックRの直線運動に変換され、左右の前輪TL、TRに伝達されるようになっている。
【0027】
前記被包囲部材5は、前記トルク検出用コイル8および温度補償用コイル9で発生する磁界の磁路を構成するものであり、このためステンレス等の磁性材料で焼結加工により形成され、上部ハウジング110内において出力軸3の上端部(入力軸2側端部)に本体部31とは環状段部32を形成して設けられた小径部33の外周に圧入結合されている。(図5参照)
【0028】
この被包囲部材5は、図4にその詳細斜視図を示すように、その中心部に前記小径部33に圧入結合するための結合穴50を有する略円盤状に形成されると共に、その外周側には非切欠部52を残し、円周方向所定間隔のもとに軸方向に貫通する切欠部51が複数(この発明の実施の形態では8個)形成されている。そして、前記結合穴50の内周面(圧入結合面)には被包囲部材5の焼結加工時にセレーション50aが一体に形成されている。
【0029】
図2、3に戻り、前記トルク検出用コイル8は、インピーダンス変化に基づいて入力軸2と出力軸3との間に作用するトルクを検出するためのもので、被包囲部材5の入力軸2側の面と軸方向に対面する状態で、その下面以外を包囲するヨーク部材80を介して上部ハウジング110側に固定されていて、被包囲部材5およびヨーク部材80を磁路とする磁界を発生させる。
【0030】
前記ヨーク部材80は、図5に要部拡大断面図を示すように、前記被包囲部材5と対向する下面以外を包囲する断面門型の本体部を構成する上面包囲部80a、内周包囲部80b、外周包囲部80c、および、該外周包囲部80cの下端開口端縁部から外向きに突出された固定フランジ部80dとで構成されている。そして、固定フランジ部80dが突出される外周包囲部80cは、固定フランジ部80d方向への磁束の漏れを防止するためにその肉厚が上面包囲部80aおよび内周包囲部80bの肉厚より厚めに形成されている。
【0031】
前記温度補償用コイル9は、前記トルク検出用コイル8でトルクを検出する際に温度変化に基づく検出値の変動を修正するためのもので、被包囲部材5の出力軸3側の面と軸方向に対面する状態で、その上面以外を包囲するヨーク部材90を介して上部ハウジング110側に固定されていて、被包囲部材5およびヨーク部材90を磁路とする磁界を発生させる。
【0032】
前記ヨーク部材90は、図5に要部拡大断面図を示すように、前記被包囲部材5と対向する上面以外を包囲する断面門型の本体部を構成する下面包囲部90a、内周包囲部90b、外周包囲部90c、および、該外周包囲部90cの上端開口端縁部から外向きに突出された固定フランジ部90dとで構成されている。そして、固定フランジ部90dが突出される外周包囲部90cは、固定フランジ部90d方向への磁束の漏れを防止するためにその肉厚が上面包囲部90aおよび内周包囲部90bの肉厚より厚めに形成されている。
【0033】
前記スペーサ10は、トルク検出用コイル8側のヨーク部材80と温度補償用コイル9側のヨーク部材90との軸方向間隔を決定するために介装されるもので、非導電性部材である合成樹脂材料(PPS)で円筒状に形成され、その内側上部にはヨーク部材80における固定フランジ部80dを軸方向において位置決め係止する環状段部10aが形成され、内側下部にはヨーク部材90における固定フランジ部90dを位置決め係止する環状段部10bが形成されている。即ち、両環状段部10a、10b相互間の軸方向長さでトルク検出用コイル8と温度補償用コイル9との軸方向位置関係が決定されるようになっている。
【0034】
また、前記スペーサ10の上端内周面と下端内周面にはヨーク部材80およびヨーク部材90を周方向において位置決め係止する軸方向突条10c、10dが形成される一方、両固定フランジ部80d、90dの外周面には軸方向突条10c、10dが係合する切欠部80e、90eが形成されている。なお、この両切欠部80e、90eは、両各コイルハーネス8a、9aの突出方向を周方向において一致させた状態で周方向に一致する位置に形成される一方、前記両軸方向突条10c、10dも周方向において一致する位置に形成されている。
【0035】
前記ベース部材11は、その下端フランジ部11aを中央ハウジング120における大径部120aの内側に形成された係止段部120d上に係止させた状態で組み込まれるもので、その上端小径円筒部11bの内側にヨーク部材90における本体部を収容する環状凹部11cが形成されている。そして、前記小径円筒部11bが前記スペーサ10の下端開口部から挿入され、その上端面にヨーク部材90の固定フランジ部90dを当接係止させた状態で組み付けられる。即ち、このベース部材11の軸方向長さにより、中央ハウジング120(ハウジング1)とトルク検出用コイル8および温度補償用コイル9との軸方向位置関係が決定されることになる。
【0036】
そして、前記小径円筒部11bの外周面には、スペーサ10の軸方向突条10dが係合する切欠部11dが形成されている。なお、この切欠部11dに軸方向突条10dが係合した状態で、コイルハーネス9aの突出位置とベース部材11に形成されたハーネス引き出し溝11eとが周方向において一致するようになっている。
【0037】
前記スペーサ10の外周面には、位置決め用に突起10eが形成される一方、この突起10eと径方向に対向する上部ハウジング110の内周面には前記突起10eが係合する軸方向係合溝110cが形成されている。そして、この軸方向係合溝110cに突起10eを係合させた状態において、前記コイルハーネス8a、9aの突出方向と上部ハウジング110の一側に形成された配線ボックス110eとが一致するようになっている。
【0038】
前記固定フランジ部80dと上部ハウジング110の内部の軸方向中間部に形成された環状段部110dとの間に皿ばね12を介装させた状態で中央ハウジング120に対する上部ハウジング110の組み付けおよびボルト等による締結固定が行われることにより、皿ばね12の付勢力により両ヨーク部材80、90(トルク検出用コイル8、温度補償用コイル9)の位置ずれを防止し、軸方向位置関係を維持させた状態でハウジング1への組み付けが行われる。
【0039】
前記トルク検出側包囲部材6は、内周側円筒部60を入力軸2側に固定した状態で、前記被包囲部材5とトルク検出用コイル8との間に介装されている。そして、このトルク検出側包囲部材6には、図6(底面図)、図7(図6のVII- VII線における断面図)、図8(斜視図)にその詳細を示すように、前記被包囲部材5における切欠部51および非切欠部52の数に対応し軸方向に貫通する窓部(切欠部)61が円周方向所定間隔のもとに複数(この発明の実施の形態では8個)形成されている。なお、各窓部61周方向幅が被包囲部材5の非切欠部52と同一幅に形成されている。
【0040】
即ち、トルク検出側包囲部材6の窓部61および非切欠部62と前記被包囲部材5の切欠部51および非切欠部52との重なり具合の変化をインピーダンス変化に基づいて検出することにより入力軸2と出力軸3との間に発生するトルクを検出するためのものであり、このため、トルク検出側包囲部材6はアルミニウム等の導電性かつ非磁性材料で形成されている。
【0041】
前記温度補償用包囲部材7は、前記被包囲部材5と温度補償用コイル9との間に介装されるもので、その内周側は出力軸3側には固定されないフリーの状態で温度補償用包囲部材7の外周に形成される外筒部73とトルク検出側包囲部材6の外筒部63とが互いに軸方向に延長され一体に連結することにより、トルク検出側包囲部材6と一体に回動するように構成されている。
【0042】
そして、図6に示すように、トルク検出側包囲部材6の窓部61と温度補償側包囲部材7の窓部71とが回動角で22.5度ずれた状態に配置されると共に、入力軸2側に回転力が加わっていないトルク値0の状態で、トルク検出側包囲部材6の各窓部61と温度補償側包囲部材7の各窓部71との間における各非切欠部62、72の幅が被包囲部材5の各非切欠部52の周方向幅と同一幅に形成された状態となっており、この幅部分に被包囲部材5の各非切欠部52が丁度軸方向に重なる状態に配置されている。
【0043】
また、温度補償側包囲部材7は、図8に示すように、各窓部71の軸心側がそれぞれ軸心穴74と連通する切り欠き状に形成されることにより、前記被包囲部材5が軸方向に通過可能となっている。
【0044】
次に、この発明の実施の形態のトルクセンサTSの作用・効果を説明する。 この発明の実施の形態のトルクセンサTSは、上述のように構成されるため、トルク0の状態では、トルク検出側包囲部材6および温度補償側包囲部材7の非切欠部62、72により、それぞれ磁界が完全に遮断された状態となっており、このため、トルク検出用コイル8および温度補償用コイル9で検出されるインピーダンス値の差は略0(トルク値0)となっている。
【0045】
次に、トルク値0の状態から、入力軸2側に回転力が作用すると、入力軸2の回転力がトーションバー4を介して出力軸3側に伝達される際に、トルク量に応じてトーションバー4が捻じれることで、被包囲部材5とトルク検出側包囲部材6とが相対回動し、これにより、被包囲部材5の各非切欠部がトルク検出側包囲部材6の各窓部61側と重なる方向に相対回動するため、相対回動量に応じトルク検出用コイル8で検出されるインピーダンス値が変化する一方、これとは逆に、被包囲部材5の各非切欠部が温度補償側包囲部材7の各非切欠部72と重なる方向に相対回動するため、インピーダンス値の差が略0を中心としてインピーダンス値が互いにプラスとマイナスの逆方向に変化することになる。
【0046】
そこで、トルク検出用コイル8で検出されるプラス方向のインピーダンス値と、温度補償用コイル9で検出されたマイナス方向のインピーダンス値との差分値を検出することにより、常に温度補償された状態のトルク値を検出することができると共に、トルク検出用コイル8と温度補償用コイル9でそれぞれ検出される両インピーダンス値の差分値として大きな値が得られるため、トルク検出精度を高めることができる。
【0047】
また、この発明の実施の形態のトルクセンサでは、ハウジング1に対する両ヨーク部材80、90の固定が、両包囲部材6、7および被包囲部材5と対向する面以外を包囲する断面門型の本体部における外周包囲部80c、90c側の開口端縁部から外向きに突出する固定フランジ部80d、90dにおいて行われるようにしたため、両ヨーク部材80、90における磁界の磁路を構成する本体部の内部応力を変化させることなしにハウジング1への組み付け固定が可能となり、これにより、所望のトルク検出精度を得ることができるようになるという効果が得られる。
【0048】
また、前記両ヨーク部材80、90の本体部における固定フランジ部80d、90dが突出された外周包囲部80c、90cの肉厚を他の包囲部より厚く形成したことで、両ヨーク部材80、90の本体部における磁界の磁路を確保することができ、これにより、固定フランジ部80d、90d側への磁束の漏れを防止することができるようになる。
【0049】
また、前記両ヨーク部材80、90における両固定フランジ部80d、90d相互間に該両固定フランジ部80d、90d相互の軸方向間隔を決定するスペーサ10を介装した状態で両固定フランジ部80d、90dをハウジング1に対して固定するようにしたことで、両ヨーク部材80、90(トルク検出用コイル8と温度補償用コイル9)相互間の位置関係を維持した状態での組み付けが可能となり、これにより、両ヨーク部材80、90(トルク検出用コイル8と温度補償用コイル9)相互間のクリアランス管理を容易に行うことができるようになる。
【0050】
また、前記スペーサ10を非導電性部材である合成樹脂材料で形成したことで、トルク検出用コイル8と温度補償用コイル9との間における磁束の影響を遮断しつつ、両ヨーク部材80、90(トルク検出用コイル8と温度補償用コイル9)相互間のクリアランス管理を容易に行うことができるようになる。
【0051】
また、前記両ヨーク部材80、90を、スペーサ10が相互間に介装された両固定フランジ部80d、90dの部分において皿ばね12およびベース部材11を介して軸方向に押圧された状態でハウジング1に対して固定するようにしたことで、皿ばね12を介装するだけで、両ヨーク部材80、90における磁界の磁路を構成する本体部の内部応力を変化させることなしにハウジング1への組み付け固定を容易に行うことができるようになると共に、皿ばね12の付勢力により両ヨーク部材80、90(トルク検出用コイル8、温度補償用コイル9)の位置ずれを防止することができるようになる。
【0052】
また、前記スペーサ10が相互間に介装された両固定フランジ部80d、90dの部分において軸方向に介装されたベース部材11を介して軸方向に押圧した状態で両ヨーク部材80、90をハウジング1に対して固定するようにしたことで、ハウジング1自体を設計変更することなしに、ベース部材11を変更するだけで、ハウジング1、両包囲部材6、7および被包囲部材5に対する両ヨーク部材80、90(トルク検出用コイル8、温度補償用コイル9)の軸方向取り付け位置を容易に変更することができるようになる。
【0053】
以上発明の実施の形態を図面により説明したが、具体的な構成はこれらの発明の実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、発明の実施の形態では、入力軸2側に包囲部材を設け、出力軸3側に被包囲部材を設けたが、逆であってもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明請求項1記載のトルクセンサでは、前記ヨーク部材が、前記包囲部材および被包囲部材と対向する面以外を包囲する断面門型の本体部と、該門型本体部における外周側の開口端縁部から外向きに突出していて前記ハウジングに固定される固定フランジ部とで構成されている手段としたことで、ヨーク部材における磁界の磁路を構成する本体部の内部応力を変化させることなしにハウジングへの組み付け固定が可能となるため、所望のトルク検出精度を得ることができるようになるという効果が得られる。
【0055】
請求項2記載のトルクセンサでは、請求項1記載のトルクセンサにおいて、前記ヨーク部材の本体部における固定フランジ部が突出された外周包囲部の肉厚が他の包囲部より厚く形成されている手段としたことで、ヨーク部材の本体部における磁界の磁路を確保し、これにより、固定フランジ部側への磁束の漏れを防止することができるようになる。
【0056】
請求項3記載のトルクセンサでは、請求項1または2に記載のトルクセンサにおいて、前記包囲部材が前記被包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、前記ヨーク部材に収容された前記検出コイルが前記両包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、前記両ヨーク部材における両固定フランジ部相互間に該両固定フランジ部相互の軸方向間隔を決定するスペーサが介装された状態で両固定フランジ部が前記ハウジングに対して固定されている手段としたことで、両ヨーク部材(検出コイル)相互間の位置関係を維持した状態での組み付けが可能となり、これにより、両ヨーク部材(検出コイル)相互間のクリアランス管理を容易に行うことができるようになる。
【0057】
請求項4記載のトルクセンサでは、請求項3記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが非導電性部材で形成されている手段としたことで、両検出コイル間における磁束の影響を遮断しつつ、両ヨーク部材(検出コイル)相互間のクリアランス管理を容易に行うことができるようになる。
【0058】
請求項5記載のトルクセンサでは、請求項3または4に記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが相互間に介装された前記両固定フランジ部の部分において皿ばねを介して軸方向に押圧された状態で前記両ヨーク部材が前記ハウジングに対して固定されている手段としたことで、皿ばねを介装するだけで、ヨーク部材における磁界の磁路を構成する本体部の内部応力を変化させることなしにハウジングへの組み付け固定を容易に行うことができるようになる。
また、皿ばねの付勢力により両ヨーク部材(検出コイル)の位置ずれを防止することができるようになる。
【0059】
請求項6記載のトルクセンサでは、請求項3〜5のいずれかに記載のトルクセンサにおいて、前記スペーサが相互間に介装された前記両固定フランジ部の部分において軸方向に介装されたベース部材を介して軸方向に押圧された状態で前記両ヨーク部材が前記ハウジングに対して固定されている手段としたことで、ハウジング自体を設計変更することなしに、ベース部材を変更するだけでハウジング(包囲部材および被包囲部材)に対するヨーク部材(検出コイル)の軸方向取り付け位置を変更することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態のトルクセンサが適用された電動パワーステアリング装置を示す全体概略図である。
【図2】発明の実施の形態のトルクセンサを示す縦断面図である。
【図3】発明の実施の形態のトルクセンサを示す分解斜視図である。
【図4】発明の実施の形態のトルクセンサにおける被包囲部材を示す斜視図である。
【図5】発明の実施の形態のトルクセンサを示す要部拡大断面図である。
【図6】発明の実施の形態のトルクセンサにおける両包囲部材を示す平面図である。
【図7】図6の VII−VII 線における縦断面図である。
【図8】発明の実施の形態のトルクセンサにおける両包囲部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
B バッテリ
ECU コントロールユニット
G 減速ギヤ
R ラック
Ry リレー
M 電動モータ
P ピニオン
S 回転軸
SW ステアリングホイール
TL 左前輪
TR 右前輪
TS トルクセンサ
1 ハウジング
1a ベアリング
1b ベアリング
1c ベアリング
110 上部ハウジング
110a 下端開口縁部
110b フランジ部
110c 軸方向係合溝
110d 環状段部
110e 配線ボックス
120 中部ハウジング
120a 大径部
120b 小径部
120c 環状段部
120d 係止段部
130 下部ハウジング
130a 大径部
2 入力軸(第2回転軸)
2a 軸心穴
2b ピン
3 出力軸(第1回転軸)
3a 軸心穴
31 本体部
32 環状段部
33 小径部
4 トーションバー(弾性体)
5 被包囲部材
50 結合穴
50a セレーション
51 切欠部
52 非切欠部
6 トルク検出側包囲部材
61 窓部(切欠部)
62 非切欠部
63 外筒部
7 温度補償側包囲部材
70 内筒部
71 窓部(切欠部)
72 非切欠部
73 外筒部
74 軸心穴
8 トルク検出用コイル(検出コイル)
8a コイルハーネス
80 ヨーク部材
80a 上面包囲部
80b 内周包囲部
80c 外周包囲部
80d 固定フランジ部
80e 切欠部
9 温度補償用コイル(検出コイル)
9a コイルハーネス
90 ヨーク部材
90a 下面包囲部
90b 内周包囲部
90c 外周包囲部
90d 固定フランジ部
90e 切欠部
10 スペーサ
10a 環状段部
10b 環状段部
10c 軸方向突条
10d 軸方向突条
10e 突起
11 ベース部材
11a 下端フランジ部
11b 小径円筒部部
11c 環状凹部
11d 切欠部
11e ハーネス引き出し溝
12 皿ばね
13 出力軸側ウォームホイール
14 モータ軸側ウォーム
Claims (6)
- 第1回転軸と第2回転軸との間に介装された弾性体と、
前記第1回転軸側に固定されていて少なくとも軸方向一側面に円周方向所定間隔のもとに切欠部が複数形成された磁性材料よりなる被包囲部材と、
該被包囲部材における切欠部が形成された側面と軸方向に対向する状態で前記第2回転軸側に固定されていて前記被包囲部材における切欠部に対応し軸方向に貫通する切欠部が円周方向所定間隔のもとに複数形成された導電性かつ非磁性材料よりなる包囲部材と、
該包囲部材側に軸方向に対向する状態で設けられていて前記被包囲部材の切欠部および非切欠部と包囲部材の切欠部との重なり具合の変化をインピーダンス変化に基づいて検出することにより前記第1回転軸と第2回転軸との間に発生するトルクを検出する検出コイルと、
該検出コイルを包囲状態で収容する磁性材料からなるヨーク部材と、
前記被包囲部材、包囲部材、検出コイルおよびヨーク部材を収容すると共に前記検出コイルを収容したヨーク部材が固定されるハウジングと、
を備えたトルクセンサにおいて、
前記ヨーク部材が、前記包囲部材および被包囲部材と対向する面以外を包囲する断面門型の本体部と、該門型本体部における外周側の開口端縁部から外向きに突出していて前記ハウジングに固定される固定フランジ部とで構成されていることを特徴とするトルクセンサ。 - 前記ヨーク部材の本体部における固定フランジ部が突出された外周包囲部の肉厚が他の包囲部より厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
- 前記包囲部材が前記被包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、
前記ヨーク部材に収容された前記検出コイルが前記両包囲部材の軸方向両端面とそれぞれ対向する状態で設けられ、
前記両ヨーク部材における両固定フランジ部相互間に該両固定フランジ部相互の軸方向間隔を決定するスペーサが介装された状態で両固定フランジ部が前記ハウジングに対して固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトルクセンサ。 - 前記スペーサが非導電性部材で形成されていることを特徴とする請求項3に記載のトルクセンサ。
- 前記スペーサが相互間に介装された前記両固定フランジ部の部分において皿ばねを介して軸方向に押圧された状態で前記両ヨーク部材が前記ハウジングに対して固定されていることを特徴とする請求項3または4に記載のトルクセンサ。
- 前記スペーサが相互間に介装された前記両固定フランジ部の部分において軸方向に介装されたベース部材を介して軸方向に押圧された状態で前記両ヨーク部材が前記ハウジングに対して固定されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のトルクセンサ。
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