JP3818760B2 - 感熱転写記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱転写記録媒体に関する。さらに詳しくは、基材の一方の面にインク層および接着層をこの順に設けた構成の感熱転写記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の感熱転写記録媒体としては、基材上に熱溶融性ないし熱軟化性のインク層を設けたものが一般的であるが、受像体との接着力をより高めるために前記インク層の上にさらに接着層を設けた構造のものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記構造の感熱転写記録媒体において、接着層の材料として受像体に対して充分な接着力を示すような材料、たとえば軟化点が60℃程度のポリエステル樹脂などを用いると、このような材料は常温でも少なからず接着力を有するものが多く、そのため感熱転写記録媒体をロール状に巻回して保存するばあいに、接着層が接触している基材の背面と接着し(一般にブロッキングといわれている)、印像形成装置での巻出しが困難となり、走行安定性が損なわれ、ひいては印像品質の低下を招くという問題があった。
【0004】
前記ブロッキングを防止するため接着層に無機粒子やワックス類などを添加することも知られているが、接着層への無機粒子やワックス類の添加は同時に受像体への接着力を低下させ、印像の耐擦過性の低下や脱落などを引き起すばあいがあった。
【0005】
さらに、ポリエチレンやポリプロピレンのような表面張力が比較的低い樹脂からなる受像体に対しては、接着層がワックス類や比較的極性の高いポリエステル系、ポリアミド系、セルロース系、フェノール系、アクリル系などの樹脂からなる感熱転写記録媒体では、充分な接着力がえられないという問題があった。
【0006】
本発明は前記の点に鑑みて、受像体に対して充分な接着力を示し、かつブロッキングを起こさない感熱転写記録媒体を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)基材の一方の面にインク層および接着層をこの順に設けた感熱転写記録媒体において、接着層が熱可塑性樹脂(A)からなるバインダーと該バインダー中に分散された熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物とからなり、その表面が該粒子状物に起因する凹凸を有する構造を有し、前記熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の少なくとも主要構成単位が同じであり、熱可塑性樹脂(A)、(B)が無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂または塩素化ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする感熱転写記録媒体に関する。
【0008】
さらに本発明は、(2)熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量が2万以上4万未満であり、熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量が4万以上であることを特徴とする前記(1)項記載の感熱転写記録媒体に関する。
【0009】
さらに本発明は、(3)無水マレイン酸付加率が1〜7重量%である無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする前記(1)、(2)項記載の感熱転写記録媒体に関する。
【0010】
さらに本発明は、(4)塩素付加率が10〜30重量%である塩素化ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする前記(1)、(2)項記載の感熱転写記録媒体に関する。
【0011】
さらに本発明は、(5)ポリエチレンやポリプロピレンのような表面張力が比較的低い樹脂からなる受像体用であることを特徴とする(1)〜(4)項記載の感熱転写記録媒体に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱転写記録媒体は、基材の一方の面にインク層および接着層をこの順に設けた感熱転写記録媒体であって、接着層が熱可塑性樹脂(A)からなるバインダーと該バインダー中に分散された熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物とからなり、その表面が該粒子状物に起因する凹凸を有する構造を有し、前記熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の少なくとも主要構成単位が同じであり、熱可塑性樹脂(A)、(B)が無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂または塩素化ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0014】
ここで、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の少なくとも主要構成単位が同じであるとの概念は、つぎのことを意味する。構成単位とは通常繰り返し単位を意味する。単独重合体のばあいは、構成単位(繰り返し単位)は1種だけであり、これが主要構成単位である。たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステルまたはポリエステル(1種のジカルボン酸と1種のジオールからなるもの)などで重合度の異なるものは樹脂(A)と樹脂(B)に該当する。また共重合体(3成分以上の縮重合体などを含む)のばあい、主要構成単位(繰り返し単位)が2種以上あることになる。たとえば塩素化ポリプロピレンのばあい、プロピレン単位と塩素化プロピレン単位が主要構成単位であり、この2種の構成単位からなり、重合度や塩素付加率が異なるものは樹脂(A)と樹脂(B)に該当する。また樹脂(A)と樹脂(B)は少なくとも主要構成単位が同じであればよく、この点から、ポリプロピレン系樹脂のばあい、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とは、共重合体中のコモノマー単位が量的または質的にわずかであれば、両者は、主要構成単位としてのプロピレン単位が同じであるから、樹脂(A)と樹脂(B)に該当するものである。
【0015】
前記構成によるときは、ロール状に巻回して保存するばあいは、熱可塑性樹脂(B)の粒子状物が接着層の表面から突出し、接着層の表面と基材の背面との接触面積が減少されるためブロッキングが防止される。一方、熱転写時には、バインダーとしての熱可塑性樹脂(A)が軟化して受像体に対する接着力を示すわけであるが、熱可塑性樹脂(A)と少なくとも主要構成単位が同じ熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物もある程度軟化して接着力を示すため、従来例のごとく粒子状物による接着力の阻害が生じず、良好な転写性がえられる。
【0016】
また、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とは少なくとも主要構成単位が同じで、相互の親和性が大きいため、バインダーとしての熱可塑性樹脂(A)を溶剤に溶解し、熱可塑性樹脂(B)の粒子状物を添加して接着層用塗工液を調製するばあいに、熱可塑性樹脂(B)の粒子状物の塗工液中での分散性が良好で、分離したり沈降したりしにくく、そのため粒子状物が均一に分散された接着層がえられ、さらに熱転写時にも熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とが軟化し、部分的に相溶するため、印像にボイドや白抜けなどが生じないという利点がある。
【0017】
さらに、本発明の感熱転写記録媒体は、ポリエチレンやポリプロピレンのような表面張力が比較的低い樹脂からなり、従来の感熱転写記録媒体を用いる熱転写によりえられる印像が接着しにくい受像体に対しても有効である。たとえば、接着層のバインダーとしてポリプロピレン系樹脂を用い、粒子状物として主要構成単位が同じポリプロピレン系樹脂を用いることによって、ポリエチレンやポリプロピレンからなる受像体に対しても良好な熱時接着力がえられる。
【0018】
本発明においては、前記のごとく、接着層のバインダーとしての熱可塑性樹脂(A)と粒子状物を構成する熱可塑性樹脂(B)とに、少なくとも主要構成単位が同じものを使用する。
【0019】
そのため、接着層の形成の際に、熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物の粒子形態がそのまま保持される手段が採られる。このような手段としては、たとえばつぎのものがあげられる。
【0020】
(1)熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との間に、接着層用塗工液の溶剤に対する溶解性の差異をもたせ、熱可塑性樹脂(A)は該溶剤に容易に溶解し、熱可塑性樹脂(B)は該溶剤に溶解せずまたは難溶性であり、粒子形態を保持するようにする。
【0021】
溶解性に差異をもたせる手段としては、分子量、結晶化度などの違いが利用できる。たとえば、熱可塑性樹脂(A)として平均分子量が小さく、熱可塑性樹脂(B)として平均分子量が大きいものを用いる。また熱可塑性樹脂(A)として結晶化度の小さいものを用い、熱可塑性樹脂(B)として結晶化度の大きいものを用いる。
【0022】
(2)熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との間に、接着層用塗工液の溶剤に対する溶解性の差異がないばあいであっても、たとえば、熱可塑性樹脂(A)を溶剤中で熱時溶解後冷却して溶液をえ、熱可塑性樹脂(B)を常温下で該溶剤中で粉砕し、分散させて分散液をえ、これらを混合してえられた塗工液を用いるなどの手段を採ることができる。
【0024】
ポリエチレンやポリプロピレンなどの比較的表面張力の低いものからなる受像体に対しても良好な接着力を示す接着層をえようとするばあいは、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)として、ポリプロピレン系樹脂を用いるのが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては変性ポリプロピレン樹脂が使用できる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂に極性基を導入したものが、印像性能や塗工液溶剤への溶解性の差異をもたせやすいため好ましく、この点から塩素化ポリプロピレン樹脂や無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂がとくに好適である。
【0026】
塩素化ポリプロピレン樹脂や無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用いるばあい、分子量の差で塗工液の溶剤に対する溶解性の差異をもたせるためには、熱可塑性樹脂(A)用として重量平均分子量が2万以上4万未満のもの、熱可塑性樹脂(B)として重量平均分子量が4万以上のものを用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂(A)用としての塩素化ポリプロピレン樹脂や無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が2万より小さいと、常温下でも粘着性を示すためブロッキングを防止するのが困難であり、一方4万以上になると塗工液の溶剤に対する溶解性が低く、好ましくない。また熱可塑性樹脂(B)用としての塩素化ポリプロピレン樹脂や無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が4万より小さいとブロッキング防止効果が小さいと共に、塗工液の溶剤に部分的に溶解し、粒子同士が癒着し、ゲル化を起しやすくなる。塗工液溶剤に対する溶解性の差をもたせるためには、熱可塑性樹脂(A)用と熱可塑性樹脂(B)用との重量平均分子量の差が2万以上あるのが好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)として、塩素化ポリプロピレン樹脂を用いるばあい、塩素付加率が10〜30重量%の範囲のものが好ましい。ここで、塩素付加率は塩素化ポリプロピレン樹脂の全量に対する付加された塩素の量の割合(重量%)をいう。塩素付加率が前記範囲未満では、熱可塑性樹脂(A)として用いるばあいの接着力が充分に発揮されず、一方前記範囲を超えると熱可塑性樹脂(B)として用いるばあいのブロッキング防止効果が小さい。
【0028】
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)として、塩素化ポリプロピレン樹脂を用いるばあい、塩素付加率が10〜30重量%の範囲であって、かつ重量平均分子量が前記条件を満足するものを用いるのが好ましい。
【0029】
なお、塩素付加率が等しく、平均分子量に差異がない塩素化ポリプロピレン樹脂を熱可塑性樹脂(A)、(B)として使用するばあいでも、結晶化度が異なりさえすれば、塗工液用溶剤に対する溶解性の差異をもたせることができる。
【0030】
また熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用いるばあい、無水マレイン酸付加率が1〜7重量%の範囲のものが好ましい。ここで、無水マレイン酸付加率は変性ポリプロピレン樹脂の全量に対する付加された無水マレイン酸の量の割合(重量%)をいう。無水マレイン酸付加率が前記範囲未満では、熱可塑性樹脂(A)として用いるばあいの接着力が充分に発揮されず、一方前記範囲を超えると熱可塑性樹脂(B)として用いるばあいのブロッキング防止効果が小さい。
【0031】
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用いるばあい、無水マレイン酸付加率が1〜7重量%の範囲であって、かつ重量平均分子量が前記条件を満足するものを用いるのが好ましい。
【0032】
なお、無水マレイン酸付加率が等しく、平均分子量に差異がない無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を熱可塑性樹脂(A)、(B)として使用するばあいでも、結晶化度が異なりさえすれば、塗工液用溶剤に対する溶解性の差異をもたせることができる。
【0034】
なお、転写感度の点から、バインダーとしての熱可塑性樹脂(A)は軟化点が50〜90℃の範囲のものが好ましい。熱可塑性樹脂(B)の軟化点はとくに制限されないが、熱転写時に熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物の一部が軟化して接着力を示すのが好ましい点から、軟化点が90〜130℃の範囲のものが好ましい。
【0035】
このように本発明においては、接着層のバインダーとしての熱可塑性樹脂(A)と、粒子状物の構成材料としての熱可塑性樹脂(B)とに、少なくとも主要構成単位が同じ熱可塑性樹脂を用いるとの構成によって、熱可塑性樹脂(A)として、熱転写時に受像体に対して充分な接着力を有し、転写感度も良好であるもの(ただし常温下でのブロッキングは生じやすい)を用い、一方熱可塑性樹脂(B)として、熱転写時に熱可塑性樹脂(A)の接着力を阻害しない程度の接着力を有し、かつ常温下でのブロッキングを防止する効果の大きなものを用いることができ、それによって熱転写時に受像体に対する充分な接着力を有し、かつ常温下でのブロッキングは充分に防止しうる感熱転写記録媒体がえられる。
【0036】
接着層の塗布量(乾燥塗布量をいう、以下同様)は、0.1〜5g/m2、なかんづく0.1〜2.0g/m2の範囲が好ましい。塗布量が前記範囲より少ないと接着力が充分でなく転写性が劣る傾向がある。一方塗布量が前記範囲より多いと転写感度が劣る傾向がある。
【0037】
熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物が接着層の表面から突出するようにするため、粒子状物の平均粒径は0.1μm以上、なかんづく1μm以上であるのが好ましい。一方、粒子状物の平均粒径が大きすぎると、転写性が劣る傾向にあるから、50μm以下、なかんづく20μm以下であるのが好ましい。
【0038】
また接着層中における粒子状物の含有量は、少なすぎるとブロッキング防止効果が乏しくなり、多すぎると接着力が低下するから、0.1〜80重量%、なかんづく5〜60重量%の範囲が好ましい。
【0039】
接着層には、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。
【0040】
接着層は、溶剤中に熱可塑性樹脂(A)が溶解され、熱可塑性樹脂(B)の粒子状物が分散された形態の塗工液をインク層上に塗布、乾燥することによって形成できる。
【0041】
本発明におけるインク層としては熱溶融性ないし熱軟化性(あるいは熱不溶融性)のビヒクルと着色剤とからなる従来から知られている感熱転写性インク層がとくに制限なく使用できる。前記ビヒクルとしては従来から知られているものがとくに制限なく使用でき、熱可塑性樹脂および/またはワックス類を主体とするものがあげられる。
【0042】
前記熱可塑性樹脂(エラストマーを含む)としては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酪酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−アクリルアミド共重合体、エチレン−N−メチロールアクリルアミド共重合体、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体などの塩化ビニル系(共)重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アセトフェノン−ホルムアルデヒド樹脂、セルロース系樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、石油系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂などがあげられる。これら樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記ワックス類としては、たとえばラノリン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;酸化ワックス、合成エステルワックス、低分子量ポリエチレン、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体ワックス、ウレタン化ワックス、フィッシャートロプシュワックス、合成石油ワックスなどの合成ワックスなどがあげられる。これらワックス類は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記着色剤としてはカーボンブラックをはじめとして、この種の感熱転写性インク層で一般に使用されている有機、無機の着色顔料、染料などが使用できる。着色剤のインク層中における含有量は20〜60重量%程度が適当である。
【0045】
インク層には、前記成分以外に、必要に応じポリイソシアナートなどの硬化剤、可塑剤、界面活性剤、顔料分散剤、帯電防止剤などを適宜配合することができる。
【0046】
インク層は、前記ビヒクル成分を適宜の溶剤に溶解し、これに着色剤、必要により他の配合剤を添加した塗工液を基材上に塗布、乾燥することによって形成できる。ホットメルト塗工法によって形成することもできる。
【0047】
インク層の塗布量は、転写感度、印像濃度の点から、0.1〜5g/m2程度が適当である。
【0048】
本発明においては、必要に応じ、基材とインク層との間にワックス類を主成分とする離型層を設け、転写感度を向上するようにしてもよい。
【0049】
本発明の感熱転写記録媒体における基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、その他この種のインクリボンの基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。またコンデンサーペーパーのような高密度の薄い紙を使用してもよい。基材の厚さは通常1〜10μm程度であり、熱拡散を小さくして解像度を高める点からは1〜6μmの範囲が好ましい。
【0050】
本発明の感熱転写記録媒体を、サーマルヘッドを備えた印像形成装置で使用するばあいは、基材の背面(サーマルヘッドに摺接する側の面)にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ニトロセルロース樹脂、あるいはこれらによって変性された、たとえばシリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂などの各種の耐熱性樹脂、あるいはこれら耐熱性樹脂に滑剤を混合したものなどからなる、従来から知られているスティック防止層を設けてもよい。
【0051】
本発明の感熱転写記録媒体は、熱転写用の熱源としてサーマルヘッド以外のものを用いるばあいにも適用でき、たとえば熱源としてレーザーなども使用できる。
【0052】
【実施例】
つぎに実施例をあげて本発明をより具体的に説明する。
【0053】
参考例1
片面にシリコーン樹脂からなるスティック防止層を形成した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのスティック防止層と反対側の面に、下記組成のインクをホットメルト塗工して塗布量2.0g/m2のインク層を形成した。
【0054】
Figure 0003818760
【0055】
前記インク層上に下記組成の接着層塗工液をグラビア塗工し、乾燥して塗布量1.0g/m2の接着層を形成し、感熱転写記録媒体をえた。
【0056】
Figure 0003818760
【0057】
実施例2
参考例1において、接着層塗工液として下記組成のものを使用した以外は参考例1と同様にして感熱転写記録媒体をえた。
【0058】
Figure 0003818760
【0059】
実施例3
参考例1において、接着層塗工液として下記組成のものを用いたほかは参考例1と同様にして感熱転写記録媒体をえた。
【0060】
Figure 0003818760
【0061】
実施例4
参考例1で用いたフィルム基材の片面に下記組成の離型層組成物をホットメルト塗工して塗布量1.0g/m2の離型層を形成した。
【0062】
Figure 0003818760
【0063】
前記離型層上に下記組成のインク層塗工液をグラビア塗工し、乾燥して塗布量2.0g/m2のインク層を形成した。
【0064】
Figure 0003818760
【0065】
前記インク層上に実施例3と同じ接着層を形成して感熱転写記録媒体をえた。
【0066】
比較例1
参考例1において、接着層塗工液として下記組成のものを使用したほかは参考例1と同様にして感熱転写記録媒体をえた。
【0067】
Figure 0003818760
【0068】
比較例2
参考例1において、接着層塗工液として下記組成のものを用いたほかは参考例1と同様にして感熱転写記録媒体をえた。
【0069】
Figure 0003818760
【0070】
比較例3
参考例1において、接着層塗工液として下記組成のものを使用したほかは参考例1と同様にして感熱転写記録媒体をえた。
【0071】
Figure 0003818760
【0072】
前記でえられた各感熱転写記録媒体について下記の試験を行なった。結果を表1に示す。
【0073】
(1)転写性
バーコードプリンター(テック(株)製B−30)で下記印字条件下にバーコードを印字し、えられたバーコード印像をバーコードリーダーにより読み取り、下記基準で評価した。
【0074】
印字条件
印字エネルギー:±0V(プリンター設定値)
印字速度:2インチ/秒
受像体:ポリプロピレン(PP)フィルムまたはアクリルコート紙
評価基準
○……読み取り可能で、見た目にも鮮明な印字である。
△……読み取り可能で、見た目にやや精細さに欠ける印字である。
×……読み取り不可能。
【0075】
(2)印像固着強度
前記(1)でえられた印字物上にセロハンテープを2kg/cm2の加圧下に貼り付け、ついで引き剥した後の印像をバーコードリーダーにより読み取り、下記基準で評価した。なお、転写性の評価が×であるものは、本試験は行なわなかった。
【0076】
評価基準
○……読み取り可能。
△……読み取り困難であるが、セロハンテープ側よりも受像体側の方にインク
が多く残っている。
×……受像体側よりもセロハンテープ側の方にインクが多く移っている。
【0077】
(3)耐擦過性
前記(1)でえられた印字物を荷重200g/cm2下に綿布で所定回数擦った後の印像をバーコードリーダーにより読み取り、下記基準で評価した。なお、転写性の評価が×であるものは、本試験は行なわなかった。
【0078】
評価基準
○……50回の擦りで読み取り可能。
△……50回の擦りで読み取り不可能であるが、20回の擦りでは読み取り可
能。
×……20回の擦りで読み取り不可能。
【0079】
(4)耐ブロッキング性
各感熱転写記録媒体(長さ300m)を直径34mmのコアに巻取り、50℃、85%RHの条件下で96時間放置したのち、下記基準で評価した。
【0080】
評価基準
○……ブロッキングが起きない。
×……ブロッキングが起きる。
【0081】
【表1】
Figure 0003818760
【0082】
【発明の効果】
本発明の感熱転写記録媒体は、受像体に対して充分な接着力を示し、転写性よく耐擦過性の良好な印像を与え、かつブロッキングを生じることがない。とくに、接着層のバインダーおよび粒子状物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂または塩素化ポリプロピレン樹脂を用いるとポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどの受像体に対しても良好な接着力を示す。

Claims (5)

  1. 基材の一方の面にインク層および接着層をこの順に設けた感熱転写記録媒体において、接着層が熱可塑性樹脂(A)からなるバインダーと該バインダー中に分散された熱可塑性樹脂(B)からなる粒子状物とからなり、その表面が該粒子状物に起因する凹凸を有する構造を有し、前記熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の少なくとも主要構成単位が同じであり、熱可塑性樹脂(A)、(B)が無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂または塩素化ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする感熱転写記録媒体。
  2. 熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量が2万以上4万未満であり、熱可塑性樹脂(B)の重量平均分子量が4万以上であることを特徴とする請求項1記載の感熱転写記録媒体。
  3. 無水マレイン酸付加率が1〜7重量%である無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1、2記載の感熱転写記録媒体。
  4. 塩素付加率が10〜30重量%である塩素化ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1、2記載の感熱転写記録媒体。
  5. ポリエチレンやポリプロピレンのような表面張力が比較的低い樹脂からなる受像体用であることを特徴とする請求項1〜4記載の感熱転写記録媒体。
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