JP3818749B2 - ねじ駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はねじ駆動装置に関し、とくにモータの回転子を構成するナットとねじ軸との間で回転運動を直線運動に変換するねじ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業機械の送り装置や位置決め装置には、回転運動を直線運動に変換するねじ駆動装置が多用され、ねじ部の精度がより高精度なものが要求されている。
従来、ねじ駆動装置はナットとモータの回転子とを一体に成形して、このナットの外周にケースに固定されたモータの固定子を配置する構成となっている。このようなねじ駆動装置に組み込まれるモータの回転子は、通常、脆性材料からなる焼結体である円筒状マグネットであり、ナットは合成樹脂で構成される場合が多い。このため、ねじ駆動装置の製造に際しては、円筒状マグネットを金型のキャビティ内に配置した状態で、ナットを構成する合成樹脂を射出成形するインサート成形によってナットと回転子とを一体に成形している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、円筒状マグネットの種類によってはヤング率の大きい場合もある。この場合、ナットを一体成形する際の成形圧力に耐えられなくなり、キャビティ内径と回転子外径との微少な隙間であっても、回転子の伸び特性が許容できず回転子が破損したりする問題が生じる。
【0004】
この金型キャビティ内径と回転子外径との間の微少な隙間は、インサート成形にとって回転子を金型内にスムーズに配置するために必須の事項である。このため、破損を抑えるためにナットの成形圧力を低く設定すると、ねじ部の精度が悪くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、簡便な手段により確実に回転子の破損を防止し得る構造を有するとともに、ねじ部の精度を向上させることのできるねじ駆動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るねじ駆動装置は、ねじ軸と螺合するナットをケースに回転自在に支持し、そのナットの外周にモータの回転子を、該回転子の外周にケースに固定されたモータの固定子をそれぞれ取付けてなるねじ駆動装置であって、該ナットとモータの回転子は、ナットの外径および/または回転子の内径に、固着強化部位を備え、合成樹脂からなる固着層によって固着されてなることを特徴とする。
【0007】
ここで、固着強化部位とは、ナットの外径および回転子の内径の少なくとも一方に形成される凹凸形状や部材であって、たとえば、固着層との回り止めあるいは抜け止めをいう。また、ナットは射出成形可能な合成樹脂からなり、より具体的には熱可塑性ポリイミド樹脂組成物からなることを特徴とする。さらに、固着層は射出成形可能な合成樹脂からなることを特徴とする。
【0008】
また、固着層はナットを形成する合成樹脂の溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する合成樹脂からなることを特徴とする。
ここで、合成樹脂の溶融粘度とは、たとえば、射出成形するときのシリンダーまたはノズルの温度において測定した粘度であり、その測定方法はとくに限定されない。
【0009】
本発明に係るねじ駆動装置は、ねじ軸またはナットのねじ山の表面に、摩擦係数の小さい被覆層が形成されていることを特徴とし、ねじ軸は非磁性鋼で形成されてなることを特徴とする。
この非磁性鋼からなるねじ軸のねじ面およびねじ面近傍の硬度が Hv 350 以上であることを特徴とする。ここで、ねじ面近傍とは、ねじ面の表面より少なくとも 1mm以内の厚さをいう。
さらに、ねじ軸またはナットのねじ山の一方を、断面が半円形の形状で形成し、他方のねじ山を、一方のねじ山とねじの進行方向に 2点で線接触する面で形成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るねじ駆動装置は、ナットとモータの回転子とを合成樹脂からなる固着層で一体に成形しているので、ナットの成形時に成形圧力を低く設定する必要がない。その結果、高精度なねじ山を有するねじ駆動装置が得られる。また、このような構造としたことにより、製造時に金型のキャビティー内壁面と回転子の間に隙間を有していても、回転子が破損することや表面に傷付きが発生することがないので、回転子と固定子とのギャップを狭くとれ電力効率のよいねじ駆動装置が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係るねじ駆動装置を図1により説明する。
図1は、本発明に係るねじ駆動装置の一例を示す断面図である。図1において、1はケース、2はナットであり、ナット2の外周面に回転子5が、ケース1の内周面に固定子6がそれぞれ取付けられ、この両者によりナット2を回転駆動するモータ4を構成している。
ナット2の両端部の外周面に、ケース1の内面とすベリ接触するラジアル軸受面7、7が形成されている。また、ナット2の中央部分に設けた段差の両端面には、ケース1の内側端面とすべり接触するスラスト軸受面8、8が形成されている。ナット2の内径には、ねじ山9が形成され、このねじ山9に、ねじ軸3のねじ谷10が螺合している。
【0012】
ねじ軸3は、鋼表面に錆等による腐食の防止、もしくは腐食を抑える点から非磁性のステンレス鋼、アルミニウム合金鋼等の耐腐食性非磁性鋼や非鉄金属系非磁性鋼で形成することが好ましい。非磁性鋼であると、磁性化されにくいので、回転子などの磁石類の影響を受けにくい。これは、磁性化されていないことによりS極、N極がなく回転子5のS極、N極との互いの吸引力や反発力の影響がないため、ねじが停止しているときでも磁気力による不要な回転動の発生防止にもつながる。また、ねじ回転時にステッピング的な回転とならずトルク変動が少なく、滑らかな一定回転の回転動作となるため、非磁性鋼が好ましい。
さらに、ねじ軸のねじ面およびねじ面近傍の硬度が Hv 350 以上、好ましくは Hv 370 以上、より好ましくは Hv 380 以上とすることにより、ねじ軸の耐摩耗性が向上し、また滑らかな回転動作が得られる。具体的には、表面硬度 Hv が350 〜700 、好ましくは350 〜500 、より好ましくは370 〜500 である。 Hv 350 以上の表面硬度を得るために、ねじ軸3のねじ面は転造加工、冷間加工等で造ることが好ましい。なお、表面硬度の上限値は、金属材料の特性からおよそ Hv 950 程度である。また、磁性の評価基準のひとつである透磁率μ≦1.01の値を満足する非磁性鋼が好ましく、さらに透磁率が、たとえば、冷間加工率が 0〜50%の範囲、好ましくは 10 〜40%の範囲でも、たとえば 10 以下、好ましくは 1以下、より好ましくは 1×10-2〜 1×10-4の値を満足する非磁性鋼であることが好ましい。
このような非磁性鋼は、転造加工、冷間加工などによる磁性化の心配がないので、非磁性化のための熱処理を省略でき好ましい。非磁性鋼は、炭素、マンガン、ニッケル、クロム、また必要であれば、これらにケイ素、硫黄、銅、リン、窒素などから選ばれる少なくとも一種類以上の元素を含有し、そして好ましくはオーステナイト組織を有する鋼であれば、非磁性、じん性、加工性に優れ好ましいものといえる。これらは、高マンガン系、高ニッケル系およびこれらの中間の性質を有するものに大別される。このような非磁性鋼で被削性を有するものとして、たとえば大同ステンレス(株)社製の高硬度非磁性快削ステンレス鋼:DSH400Fなどを挙げることができる。
【0013】
ナット2の外周面と回転子5は合成樹脂からなる固着層11にて固着されている。この固着層に使用できる合成樹脂は、ナット2と回転子5とをともに固着することのできる合成樹脂であれば使用することができる。とくに脆性材料からなる焼結体である回転子5と、通常合成樹脂からなるナット2とを固着し一体化することのできる材料として、ナットを形成する合成樹脂の溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する合成樹脂であることが好ましい。なぜなら、固着層11の溶融粘度がナット2の溶融粘度より低い合成樹脂であると、ナット2と回転子5を射出成形によって固着層となる合成樹脂で一体化するときに、ナット2を形成する成形圧力より、低い成形圧力で射出することが可能なためである。ナット2の成形圧力より低い圧力で固着層11となる合成樹脂を射出成形すれば、固着層で一体に形成されたナット2に寸法変化は生じず、回転子5が破損することはないからである。
【0014】
なお、ナット2と回転子5との固着にあたり、ナットの外径および/または回転子5の内径に、固着強化部位となる固着層との回り止めあるいは抜け止め13を形成することが好ましい。回り止めあるいは抜け止めとしては、たとえば、ナットの外径を多角形にする、ナットの外径に突起を設けることなどがある。このような構造とすることにより、ナット2と回転子5との固着がより強固になる。
【0015】
ナット2、固着層11、回転子5のそれぞれの回り止めや、抜け止めの具体的な手段としては、それぞれの内周部、もしくは外周部分に凸状、もしくは凹状部を 1〜5 箇所、好ましくは、 2、3 箇所程度設ければ安定した固定を期待でき、小型部材でもスペースを取ることなく固定することができる。回転子5は、比較的脆弱な脆性材料であるので、図1に示すようにへこみ形状(抜け止め13)であることが好ましく、回転子5の抜け止め手段が突起形状であると、突起部分の折損等も予想される。また、抜け止め手段の突起部、もしくはへこみ部分の断面形状は、四角形などの多角形もしくは丸形状などいずれでもよいが、生産性、加工性など、容易に効率よく抜け止め部分を形成できるように丸形状が好ましい。
【0016】
なお、固着層11と回転子5間で固着樹脂層の固着・接着性が十分であれば、図4に示すように回転子5の回り止め、抜け止めなどの手段は省略することもできる。具体的に説明すると、図1に示す回転子5は、図4に示す回転子5のように、円環状でのみなる形状で、内周面、外周面に凹凸のない円筒部材に置き換えられたものであってもよく、すなわち、図1に示す抜け止め13がない状態の回転子5であってもよい。このようにすれば、たとえば射出成形時に回転子5に圧力がかかっても凹凸部を起点とした回転子5の破損を防止することができ、回転子5の機械的強度を低下させることがないので、この点からもこのような形状は有利でもある。
【0017】
また、ナット外周部分は 3〜 15 角形、好ましくは、 5〜 10 角形の多角形にするとよい。多角形の角数が少なすぎると、ナット部分の角度部分の肉厚を必要以上に多くするため、ねじ駆動装置を小型化しずらくなり、一方、角数が多すぎると、ナット回転時のナット2と固着樹脂層11との固定が十分でなくなり、また、角数を増やすための射出金型や、またナットの切削加工などの工数が増し効率的でない。このような理由から、ナット2の外周部分は、 6〜8 角形であることがとくに好ましい。
【0018】
以上は、主にねじの回転に対してラジアル方向の固定手段であるが、スラスト方向の固定手段について以下に述べる。
たとえば、図1に示すようにナット2の外周部の一部に段差部分を設け、固着層11の軸方向両端部分はフランジ形状とし固着樹脂層の両端部フランジ部の外周径は、回転子5の内周径よりも大きな径とし、固着樹脂層はナット2部材の段差部分面と回転子5のラジアル方向の両端面において、それぞれ密着もしくは微小な隙間を有して固定している手段を採用することができる。このようにすればナット2と回転子5とを容易に固定でき、また、固着樹脂層のフランジ形状両端面は、スラスト軸受面として利用することもできる。
【0019】
回転子の材質としては、ネオジム−鉄系焼結磁石などの希土類磁石、希土類・コバルト磁石やフェライト粉末またはハードフェライトからなるフェライト磁石やこれらのボンド系磁石等があり、具体的には、ネオジム−鉄系(Nd−Fe系)、ネオジム−鉄−ほう素系(Nd−Fe−B系)、サマリウム−コバルト系(Sm−Co系)、サマリウム−鉄−窒素系(Sm−Fe−N系)、サマリウム−鉄−コバルト−窒素系(Sm−Fe−Co−N系)等が挙げられ、いずれも脆性材料からなる。それらの物性としては、引張り強度が 5〜10kgf/mm2 程度で平均値で約 7〜8 kgf/mm2 程度、圧縮強度が約 5〜15kgf/mm2 程度で平均値で約 8〜13kgf/mm2 程度である。
【0020】
ナットとして使用できる合成樹脂の例としては、たとえば、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、芳香族系ポリアミド樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、芳香族系ポリエーテルエーテルケトン系樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のポリアリーレンサルファイド系樹脂、ポリシアノアリールエーテル系樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、射出成形可能な溶融フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂やアリル系不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、また、これら合成樹脂に各種配合剤を配合した樹脂組成物を挙げることができる。なお、芳香族系樹脂においては、全芳香族系樹脂であってもよい。
【0021】
これらの樹脂組成物の中で、とくに熱可塑性ポリイミド樹脂組成物が耐熱性、機械的強度、耐摩耗性および摺動特性に優れているため好ましい。また、他の樹脂を使用することもできる。たとえば、熱可塑性ポリイミド樹脂等の上述の樹脂群から選ばれる少なくとも 1種以上の機械的強度に優れた樹脂 50 〜 90 重量%と、必要ならば石油系や天然系の黒鉛、またはフェノール樹脂系、非フェノール樹脂系の原料を黒鉛化して得られる固定炭素量 97 %以上、 100%以下の黒鉛約 50 〜 10 重量%とからなる樹脂組成物 100重量部に、また、別に必要ならばフッ素系樹脂約 1〜 20 重量部と、また粉末状のフェノール系樹脂硬化物、たとえば、 300〜2800℃で熱処理したフェノール・ホルムアルデヒド系樹脂を出発原料とした硬化物、好ましくは前記樹脂を 800℃以上で焼成した、いわゆるガラス状カーボン系の粉粒物、約 5〜 30 重量部とを配合したものが好適である。
【0022】
黒鉛の固定炭素量が 97 %未満では、耐摩耗性、結晶化処理前後の成形品の収縮率ともに満足できる結果が得られない。また、黒鉛の配合量が 50 重量%を超えると樹脂組成物の溶融粘度が高くなって射出成形が困難となり 10 重量%未満では、耐摩耗性の改善効果が十分に得られない。さらに、フッ素系樹脂の配合量が約 1重量部未満の添加では、熱可塑性ポリイミド樹脂組成物に十分な摺動特性が付与されず、 20 重量部を超えると熱可塑性ポリイミド樹脂本体の機械的強度が損なわれる。また、フェノール系樹脂硬化物の配合量が 5重量部未満では、耐摩耗性の効果が得られず、 30 重量部を超えると、組成物の溶融粘度が高くなって射出成形が困難となるばかりか、摩耗係数を低減できない。このことは、熱可塑性ポリイミド樹脂のみならず、前述の合成樹脂群から選ばれる少なくとも 1種以上の機械的強度に優れた樹脂についても同様である。
【0023】
このようなナット2部材は、溶融粘度が高く射出圧力を、たとえば 500〜2500kgf/cm2 ( 5〜25kgf/mm2 )、添加剤等の組成配合によっては 800〜2000kgf/cm2 ( 8〜20kgf/mm2 )、組成物の種類によっては1000〜1600kgf/cm2 (10〜16kgf/mm2 )、保圧(射出保持圧力)を 500〜1000kgf/cm2 ( 5〜10kgf/mm2 )、組成物の種類によっては 700〜1000kgf/cm2 ( 7〜10kgf/mm2 )のように高い射出圧力条件により成形する。このような粘度の高い組成物を高い圧力下において成形することで、機械的強度、寸法精度に優れ、ボイドの少ないねじ成形体とすることができるため、ねじ山部の摩耗や折損のない樹脂製ねじを得ることができる。
【0024】
ここに用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂は、分子構造の繰り返し単位中に、熱的特性、機械的強度等に優れたイミド基が芳香族基を取り囲みながらも、熱などのエネルギーが加えられることにより適度な溶融特性を示すエーテル結合部分を複数個有する構造のイミド系樹脂がよく、機械的特性、剛性、耐熱性、射出成形性を満足させるため、エーテル結合部を繰り返し単位中に 2個有する熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましい。たとえば、芳香族エーテルジアミン類や芳香族エーテルジイソシアネート類等と、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の 1種以上の酸無水物またはその誘導体との反応により得られる樹脂を挙げることができる。
【0025】
具体的に、イミド基と芳香族基とを有する重合体の一例を(I)式に示す。
【化1】
(式中、Xは直結または炭素数 1〜 10 の炭化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基およびスルホン基からなる群より選ばれた基を表わし、R1 〜R4 は水素、低級アルキル基(炭素数 1〜5 )、低級アルコキシ基(炭素数 1〜5 )、塩素または臭素を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。Yは炭素数 2以上の脂肪族基、環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基からなる群から選ばれた 4価の基を表わす。)
【0026】
(I)式で示される熱可塑性ポリイミド樹脂は、たとえば、下記(II)式で示される芳香族エーテルジアミンと 1種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物の反応によって得られるポリアミド酸を脱水環化して得られる。
【化2】
(式中、Xは直結または炭素数 1〜 10 の炭化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基およびスルホン基からなる群より選ばれた基を表わし、R1 〜R4 は水素、低級アルキル基(炭素数 1〜5 )、低級アルコキシ基(炭素数 1〜5 )、塩素または臭素を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【0027】
このような熱可塑性ポリイミド樹脂のうち、市販品としては(I)式におけるR1 〜R4 が全て水素である三井東圧化学社製の商品名オーラム(AURUM)などを挙げることができる。その化学式を(III)式に示す。
【化3】
このようなポリイミド系樹脂は、イミド基もしくは芳香族環の少なくとも 1種類以上を有する点で、機械的強度が高く、また、エーテル結合を適度に有するため、成形時に望ましい溶融粘度となるため生産性効率の優れた射出成形が可能となるため好ましいものと言える。
【0028】
熱可塑性ポリイミド樹脂組成物に配合される黒鉛の形態は薄片状、鱗片状、球状、棒状等その形状は問わないが、低摩擦係数、耐摩耗性などの摺動特性を重視するのであれば、球状のものが好ましく、一方、摺動特性と生産性、価格等とで、平均して総合的に優れるものを選ぶのであれば、薄片状、鱗片状であっても十分である。このような黒鉛としては、たとえば、天然系、石油系ピッチ、コークス、タール、またフラン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂類等を原料として、たとえば約 800〜3000℃、原料によっては、約 1200 〜 2300 ℃の高温熱処理温度で焼成したものであればよい。熱処理温度が低すぎると、黒鉛の固定炭素量が十分に高くならず、一方、熱処理温度が高すぎると、黒鉛の昇華等などが発生して黒鉛の熱分解が急激に進行したり、また、そのような高温にするためのエネルギー効率等の点で無駄が生じたりするため好ましくない。
【0029】
このような黒鉛もしくは後述のフッ素系樹脂の平均粒径は、 1〜50μm 、好ましくは 1〜40μm 、さらに好ましくは 5〜25μm のものが望ましい。平均粒径が大きすぎると、樹脂組成物中での分散不良の原因となり、摺動特性も満足できない。平均粒径が小さすぎると、凝集の原因となり、結果としてやはり分散不良となる。このような理由から、黒鉛の平均粒径は 1〜20μm 、さらには 5〜15μm であることがより好ましい。
【0030】
また、フッ素系樹脂としては、耐熱性、摺動性、射出金型からの離型性等に優れた四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましく、とくに四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が好ましい。
【0031】
パーフルオロ系フッ素樹脂は、骨格である炭素の周囲を全てフッ素で囲まれたもの、もしくは微量の酸素を介して全てフッ素で取り囲まれているために安定しており、低摩擦係数、非粘着性、耐熱性、耐薬品性などの点で優れている。このような、フッ素系樹脂をナット樹脂組成物中に所定量配合することで、ナットに摺動性が付与され、たとえば射出成形からのナット部材のねじり抜き取り性が容易にもなり、また、少ない駆動力でナット2を回転、駆動することもでき、これにより回転子5、固定子6をも小型化することができる。このように、ナット2もしくはねじ軸3のような摺動部材にフッ素系重合体を添加したり、また、塗布したりすることによって、効率よくねじを駆動、回転させることができる。
【0032】
上述のナットを形成する合成樹脂の溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する合成樹脂で、固着層に使用できる合成樹脂の例としては、たとえば、ナットに前述の熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を用いた場合は、612ナイロン、610ナイロン、46ナイロン、66ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、3ナイロン、6ナイロン、芳香族ナイロン、共重合ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから製造されるフェノキシ樹脂、内部可塑化ポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0033】
具体的に固着用樹脂について説明すると、このような固着用樹脂は、たとえば、JIS K 7210に基づく試験法、もしくは、これに準ずる測定法等により粘度を測定することもできるが、この方法に準じた射出成形時のシリンダーまたはノズルの温度において測定した粘度であってもよく、測定方法はいずれであってもよい。たとえば、溶融樹脂の剪断速度が102 〜104 sec-1、好ましくは103 〜104 sec-1のときに、溶融粘度が 50 〜200 Pa・s 、好ましくは、 100〜150 Pa・s のように比較的溶融粘度の低い樹脂材であれば、射出成形時に、大きな充填圧力をかけなくても、金型のキャビティ内へ樹脂が充填されやすい。
【0034】
このため、脆性な回転子5と剛性のある樹脂製ナット2とを射出圧力をたとえば、 100〜1300kgf/cm2 ( 1〜13kgf/mm2 )、好ましくは 100〜800 kgf/cm2 ( 1〜8 kgf/mm2 )、より好ましくは 100〜500 kgf/cm2 ( 1〜5 kgf/mm2 )に設定し、保圧をたとえば、 100〜500 kgf/cm2 ( 1〜5 kgf/mm2 )、好ましくは 100〜 300kgf/cm2 ( 1〜3 kgf/mm2 )に設定して射出により固着しても回転子5は破損されにくいことが考えられる。
なお、ナット2部材、回転子5部材ともに共通して、前述の圧力が低すぎると、ボイド、ひけ等の発生原因となり、圧力が高すぎると、バリやクラッキング、クレージング等の発生原因となることが考えられる。
さらに、上記各々の圧力を回転子5の引っ張り強度、もしくは圧縮強度よりも低い圧力下において射出成形することがより望ましいと考えられる。このようにして溶融粘度の低い固着用樹脂材にて回転子5の機械的強度よりも低い圧力下において、固着樹脂層を射出により形成することにより、脆弱な回転子5は成形圧力によって破損することなく、効率よく、一体成形体を形成することができるようになる。
【0035】
そのような固着用樹脂材の一例としてポリアミド系樹脂で具体的に説明する。ポリアミド系樹脂は、分子構造中において、主鎖にアミド結合(−NHCO−)を含む線状重合体であり結晶性樹脂である。そのため、機械的特性に優れ、耐衝撃性もまたよい。そして−NHCO−により親水性を有するので吸水性はあるが、これにより耐衝撃性、柔軟性は増加する。そのような特性であるため、比較的脆性材料の回転子5と剛直な樹脂材からなるナット2等を射出成形法によって固着しても、回転子5にはクラックなどの破損は発生しずらいと考えられる。このような理由から、たとえば、標準品などで、伸びが 1〜 300%の固着用樹脂、好ましくは 3〜200 %のポリアミド系樹脂が好ましいと考えられる。伸び率が小さすぎると、柔軟性に期待できず、大きすぎると機械的強度、剛性が低下する。
【0036】
またこのようなアミド結合(−NHCO−)を主鎖に有する樹脂は吸水性があるので、寸法精度もそれと共に変化する。そのため、吸水率は少ないほうが、回転子5とナット2とを長期間安定して固着固定する上で有利であり、たとえば標準品で吸水率が 0.1〜1 %、好ましくは 0.1〜0.5 %( 24 時間)であるものが好適である。
なお、前述の伸びは、たとえば、ASTM D638、前述の吸水率は、たとえば、ASTM D570により測定できるが、そのような測定方法に限定されるものではなく、いずれの測定法であってもよい。また、このような重合体よりなる成形体の表面硬度は比較的大きく、耐摩耗性があり、また、低摩耗係数で自己潤滑性も有するので、摺動特性も有しており、滑り軸受材などとしての摺動材としてもまた好適である。なお、摺動特性を向上させるため、固着用樹脂材 100重量部あたり、前述のポリイミド系樹脂へ所定量添加する理由と同様に 1〜50重量部のフッ素系重合体や、また機械的強度を向上させる目的として、 1〜100 重量部、好ましくは 10 〜 50 重量部のガラス繊維等の強化繊維類等の少なくとも 1種類以上の充填材を固着用樹脂組成物に添加、配合してもよい。
【0037】
ここで、強化繊維類の形態は、繊維径 0.1〜50μm 、繊維長 0.001〜10mm、好ましくは繊維径 1〜25μm 、繊維長 0.01 〜1 mmであればよい。繊維径、繊維長が細すぎたり、短すぎたりすると機械的強度が向上されにくく、一方、繊維径、繊維長が太すぎたり、長すぎたりすると相手摺動材の摩耗の進行が早くなると考えられるため好ましくない。
【0038】
以上の内容を満足するポリアミド系重合体として、たとえば式(IV)に示されるようなポリアミド612樹脂などを例示することができる。
【化4】
また、以上のようなポリアミド612樹脂としては、デュポン社製商品名、ザイテルFE5382等を挙げることができる。
【0039】
固着層の層厚は、回転子とナットとを回転子の破損などを生じることなく一体成形することのできる厚さであればよい。その厚さは、たとえば 0.3〜5mm 、好ましくは 0.5〜3mm であればよい。層厚が薄すぎると、固着、接着性に期待できず、厚すぎるとねじ駆動装置を小型化できない。
【0040】
本発明に係るねじ駆動装置は、上述のナットのねじ山の表面あるいはねじ軸の表面に摩擦係数の小さい被覆層を被覆することにより、摺動抵抗を小さく、かつ安定した摺動特性が得られる。好適な被覆層としては、ポリフルオロアルキル重合体(PFAE)やフルオロポリエーテル重合体などの含フッ素重合体が好ましい。
ここで、ポリフルオロアルキル重合体とは、たとえば、CF3 (CF2 )7 −、H(CF2 )6 −、CF2 Cl (CF2 )11−、(CF3 )2 CF(CF2 )7 −、CF2 Cl (CF3 )CF(CF2 )7 −などのポリフルオロアルキル基を有する重合体であり、フルオロポリエーテル重合体は、一般式、−Cx F2x−O−(x は 1〜4 の整数)で示される単位を主要構造単位とし、数平均分子量が 1000 〜50000 の重合体である。このような含フッ素重合体は軸受材料に対して親和性の高い官能基、たとえばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、スルホン基、エステル基等を含有しているものが好ましい。
【0041】
具体的には、以下の式(V)に示すように、末端にイソシアネート基を有するパーフルオロ系ポリエーテル重合体(PFPE)がナット2などの基材と付着性に優れ、また、前述のフッ素系樹脂の添加と同様に、基材付着後のフルオロポリエーテル重合体の非粘着性や摺動特性に優れており、またこのような被覆層の形成は容易でもあり、摺動性、価格などに平均して総合的に優れるため好ましい。
【化5】
(式中、m、nは整数を表わす。)
このようなものとして、モンテフルロス社製商品名:フォンブリンZ−DISOC(数平均分子量約 2000 )などを挙げることができる。
【0042】
このような、含フッ素重合体を高フッ化有機溶媒に 0.1〜10重量%、効果的な薄層や、また液の歩留まり性、価格等を考慮すれば 1〜5 重量%の濃度になるように希釈してナット2、もしくはねじ軸3のような、少なくとも一方の摺動部材の摺動面に塗布する。塗布方法は、塗布液の歩留まりがよく効率的な浸漬塗布法(ディッピング)や、塗膜の厚みを精度よく形成できる霧化塗布法(スプレー)などを適宜選択することができる。
塗布後、自然乾燥もしくは生産性効率をあげるため、乾燥と薄層や基材の熱処理とを兼ねて、たとえば、50〜 350℃、好ましくは、50〜 280℃の温度で、 1〜 24 時間、好ましくは 1〜6 時間程度の加熱処理を施してもよい。このようにして、形成される塗布層の厚さは 0.001〜 30 μm 、好ましくは、0.01〜 10 μm の厚さであればよい。層の厚さが薄すぎると良好な摺動特性を長期間維持することが困難となり、厚すぎると、ナット2とねじ軸3との隙間寸法精度の管理が困難となり、円滑なねじの回転動作となりにくい。
【0043】
つぎに、ねじ山の形状について図2および図3により説明する。
図2に示すように、ナット2のねじ山9は断面が半円形の形状で形成され、これに対してねじ軸3のねじ谷10は、ナット2のねじ山9に対して対称に傾斜する 2つの傾斜面10a、10bで形成されており、ねじ山9とねじ谷l0はねじの進行方向に 2点で線接触している。
このようなねじ駆動装置においては、ケース1を固定した状態でナット2を回転させると、ねじ軸3が軸方向に移動する。逆に、ねじ軸3を固定した状態でナット2を回転させると、ナット2とケース1が直線移動する。
この駆動においては、ナット2のねじ山9とねじ軸3のねじ谷10は 2点で線接触し、これにナット2を形成する合成樹脂とナット2もしくはねじ軸3を被覆したPFAE層、PFPE層もしくはPTFE樹脂層12の潤滑性が加わることにより、ねじ山9とねじ谷10の摺接部分の摩擦抵抗は極めて小さなものとなる。このため、ねじ山9とねじ谷10の摺動時に生じるトルクが大幅に低減され、ボールねじを用いた場合と同様にトルク変動の少ない円滑な駆動力伝達を行うことができる。
【0044】
図3はねじ山の他の実施例を示す。この例では、ねじ軸3のねじ谷10を、ナット2のねじ山9の曲率半径R1 よりも大きく、かつ中心が互いに偏心する曲率半径R2 、R2 を備えた 2つの円弧面10c、10dで形成している。このようにねじ谷10をゴシック形状としても、ねじ山9とねじ谷10を 2点で線接触させることができ、駆動力伝達時のトルク損失を小さくすることができる。
また、上述の場合は、ナットのねじ山を半円形の形状に形成したが、逆にねじ軸のねじ山を半円形に形成し、ナットのねじ山をそれに線接触する面で形成してもよい。
【0045】
そしてまた、本発明のねじ部形状は、図1に示すように、ナット2のねじ山の断面は半円径の形状で、これに対するねじ軸3のねじ谷10は、ナット2のねじ山に対して、対称に傾斜する二つの傾斜面で形成される。本発明に係るねじは、図1に示されるようなすべりねじであって、ねじ山9とねじ谷10はねじの進行方向に二点で線接触するようなねじに限らず、たとえば、ミニチュアねじ、メートル並目ねじ、メートル細目ねじ、ユニファイ並目ねじ、ユニファイ細目ねじ、29度台形ねじ、30度台形ねじ(メートル台形ねじ)等の台形ねじや、また、丸形ねじ、テイ型ねじ、ノコ型ねじ、三角ねじ、角ねじなどの角形ねじであったり、また、一条ねじ、もしくは複数条の数条ねじであってもよく、あらゆるねじ形状に適用することができる。
【0046】
【実施例】
実施例および比較例で使用した材料を一括して以下に示す。
(1)回転子:ネオジウムー鉄系焼結磁石(引張り強度 7.6kgf/mm2 、圧縮強度 11 kgf/mm2 )
(2)ナット:熱可塑性ポリイミド樹脂(三井東圧化学社製商品名、オーラム#450、射出成形温度約 400〜430 ℃、 420℃における溶融粘度 300〜500 Pa・s 、射出圧力 1500 kgf/cm2 、保圧 1500 から 800kgf/cm2 の間で調整) 65 重量%に、黒鉛 20 重量%、フッ素系樹脂 3重量%、フェノール系樹脂硬化物 12 重量部からなる熱可塑性ポリイミド樹脂組成物
(3)固着層:612ナイロン樹脂、デュポン社製商品名、ザイテルFE5382(ガラス繊維 33 重量%混入)、射出成形条件は、射出圧力を 200kgf/cm2 、保圧を 200から 100kgf/cm2 の間で調整した。なお、射出成形温度約 230〜290 ℃、 250℃における溶融粘度 70 〜180 Pa・s 、固着層の厚さ約 0.4〜1 mmである。
(4)ねじ軸:非磁性ステンレス鋼(大同ステンレス(株)社製、DSH400F(透磁率:μ≦1.01)およびSUS303)
(5)被覆層:フルオロポリエーテル重合体、モンテフルロス社製商品名、フォンブリンZ一DISOC
【0047】
上述の材料を用いて、表1に示す組み合わせによりねじ駆動装置を作製した。まず、射出成形金型にネオジウムー鉄系焼結磁石よりなる回転子と、その内部にナットを挿入する。ナットの外径は 6角形とした。ついで実施例1ないし実施例3においては612ナイロン樹脂を、比較例1においては熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を回転子とナットとの隙間に充填する。固着樹脂が固化した後、成形体を金型より取り出し回転子とナットの一体成形品を得る。なお、固着樹脂として熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を用いた比較例1においては射出成形金型内において回転子が破損した。
【0048】
つぎに、実施例3においてはフルオロポリエーテル重合体を高フッ化有機溶媒として HCFC225(旭硝子社製、アサヒクリーン AK-225 )溶媒に 3重量%の濃度となるように溶解してナットのねじ部に浸漬塗布した。浸漬塗布後 70 ℃で 1時間、120 ℃で 3時間加熱乾燥した。塗布後の層の厚さは 1μm 以下であった。
【0049】
ねじ軸は、非磁性ステンレス鋼を切削加工し、ねじ面は転造加工した。転造加工後のねじ面表面近傍の硬度は、実施例2、実施例3および比較例1で用いたSUS303が Hv 368 〜 Hv 373 であり、実施例1で用いたDSH400Fが Hv 387 〜 Hv 401 であった。
最後に、全体を組み立てねじ駆動装置を得た。
【表1】
【0050】
得られたねじ駆動装置について評価試験を行った。その結果を表2に示す。実施例および比較例の評価項目および評価方法を以下に示す。なお、本測定に使用した試験体は各n=5で行った。
(1)回転子の破損率:射出成形後、回転子にクラックが入っているかを顕微鏡で観察し、クラックが入っている確率を調査する。
(2)回転子の固着強度:ナットを固定した状態で回転子に径方向ヘ力を加える。このときに回転子がナットから剥がれたときのねじりトルクを測定する。
(3)ナットおよびねじ軸ねじ面の摩耗量:ナットを 120℃の潤滑油(出光社製、商品名T−40)中で固定し、ねじ軸をサーボモータに接続して図6に示すパターンで 2500 万サイクル作動させた。作動後のナットの摩耗量を測定する。
(4)ねじ効率:図4に示すように、各実施例および比較例のナット2に対応する試験用の雌ねじ14を、有効径 6.2mm、ピッチ 2.4mm、リード 2.4mmの各実施例および比較例の回転子5に対応する雄ねじ(SUS303製またはDSH400F製、切削加工後、ねじ面は転造加工)15(軸15a付き)に嵌めた。そして、図5に示すようなねじ効率測定装置にこれら雌ねじ14と雄ねじ15を取り付けて摩擦トルクM(gf-cm )を測定し、これを下記に示すねじ効率の算出式に代入してねじ効率ηを求めた。
η=R・Q・tanβ/M
tanβ=n・p/π・d
ここで、Rはねじ軸有効径/2 を、Qは軸方向荷重を、nは条数を、pはピッチを、dは有効径を、Mは摩擦トルクをそれぞれ示す。
【0051】
図5に示すねじ効率測定装置について概要を説明する。
試験用の雌ねじ14は、軸付きの雄ねじ15を保持した状態で保持筒16と一体に固定されており、保持筒16は、伝導べルト17を介してモータ18により回転動力が伝えられて 2rpm で回転する。この際、雄ねじ15には 1kgの重り19によって軸方向荷重が垂直下向きに負荷されているので、ねじ面同士の摩擦抵抗によるトルクMが、板ばね20の歪みとして現れることとなる。このトルクMは、図外のストレインアンプに繋がったストレインゲージ21により測定される。なお、板ばね20の端部は、直交状に点接触する一対のローラ22により上下左右に移動自在である。
【0052】
【表2】
【0053】
表2から明らかなとおり、実施例1ないし実施例3はナットの寸法変化が非常に小さく、回転子の破損がない。さらに、回転子の固着強度およびねじ効率において満足できる値になっている。ナットねじ山に含フッ素重合体をコーティングした実施例3はねじ効率が非常に高くなった。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係るねじ駆動装置は、ナットの外周に取付けられるモータの回転子が合成樹脂からなる固着層にて固着されているので、回転子を破損することなく、かつ高精度なねじ山を保つことができる。さらに、前工程や後工程を必要としないためコストの上昇を抑えることができる等、生産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るねじ駆動装置の断面図である。
【図2】図1に示すナットとねじ軸のねじ山の拡大断面図である。
【図3】図1に示すナットとねじ軸のねじ山の他の拡大断面図である。
【図4】ねじ効率測定用試験品の断面図である。
【図5】ねじ効率測定装置を示す図である。
【図6】ナットの摩耗量を測定するための作動パターンを示す図である。
【符号の説明】
1 ケース
2 ナット
3 ねじ軸
4 モータ
5 回転子
6 固定子
7 ラジアル軸受面
8 スラスト軸受面
9 ねじ山
10 ねじ谷
11 固着層
13 抜け止め
Claims (9)
- ねじ軸と螺合するナットをケースに回転自在に支持し、そのナットの外周にモータの回転子を、該回転子の外周に前記ケースに固定されたモータの固定子をそれぞれ取付けてなるねじ駆動装置であって、前記ナットと前記モータの回転子は、前記ナットの外径および/または前記回転子の内径に固着強化部位を備え、合成樹脂からなる固着層によって固着されてなることを特徴とするねじ駆動装置。
- 前記ナットは射出成形可能な合成樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のねじ駆動装置。
- 前記固着層は射出成形可能な合成樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のねじ駆動装置。
- 前記固着層は前記ナットを形成する合成樹脂の溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する合成樹脂からなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のねじ駆動装置。
- 前記ねじ軸またはナットのねじ山の表面が摩擦係数の小さい被覆層からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のねじ駆動装置。
- 前記ねじ軸が非磁性鋼であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のねじ駆動装置。
- 前記非磁性鋼からなるねじ軸のねじ面およびねじ面近傍の硬度が Hv 350 以上であることを特徴とする請求項6記載のねじ駆動装置。
- 前記ねじ軸または前記ナットのねじ山の一方を、断面が半円形の形状で形成し、他方のねじ山を、前記一方のねじ山とねじの進行方向に 2点で線接触する面で形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載のねじ駆動装置。
- 前記ナットが熱可塑性ポリイミド樹脂組成物で形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項記載のねじ駆動装置。
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