JP3817909B2 - カミソリ刃の熱処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカミソリ刃の熱処理方法に関し、より詳しくは、電気かみそりに用いられるような、往復駆動されるカミソリ刃に特に好適な断面略コ字型となっているカミソリ刃の熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カミソリ刃は炭素鋼またはステンレス鋼などの焼き入れ可能な金属薄板を用いて、少なくとも刃の部分に焼き入れによる硬化処理を施しているが、刃以外の部分は他の部品等への取り付けの点から、硬度よりも靭性が必要になっている。
【0003】
このために、往復駆動される電気かみそりのカミソリ刃としてよく用いられている断面略コ字形のカミソリ刃、すなわち刃の部分に該当するスリットを形成したスリット片と、このスリット片の両端部に立設される側片とからなる断面略コ字型のカミソリ刃は、焼き入れ処理によって高硬度に形成した後、焼戻し処理によって刃以外の部分に靭性を付与している。
【0004】
また、特公平2−22126号公報には、図32に示されるようなカミソリ刃の熱処理方法が示されている。このカミソリ刃の熱処理方法では、平板状のカミソリ刃21における端部の刃21aの部分にのみレーザを照射して加熱することによって焼き入れ処理を行うにあたり、刃21aの部分以外は冷却板20の間に保持して焼き入れを行っている。刃21aの部分以外には焼き入れされないために、焼き入れ後の焼戻し処理が不要となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の焼き入れと焼戻しとを行う従来例にあっては、焼戻し処理によって刃の部分の硬度まで低下することがあり、刃の部分を十分に高硬度に形成できないことがある。
【0006】
また、特公平2−22126号公報の方法では、刃21aの部分が空中に開放されているので、この部分に種々の変形が焼き入れ工程で生じやすい
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、略コ字型のカミソリ刃におけるスリット片を十分に高硬度に形成するとともに、このカミソリ刃における両側片が十分な靭性を具備するものとすることができるカミソリ刃の熱処理方法の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1記載の発明は、髭を切断するスリット1aを有したスリット片1と、このスリット片1の両端部に立設される側片2とを有する断面略コ字型に金属薄板を加工してカミソリ刃材を形成し、このカミソリ刃材の両側片2,2を保治具3の間隔固定溝3aに差し込み保持させた状態で、スリット片1の部分を選択的に加熱して、焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。
【0009】
このようなカミソリ刃の熱処理方法では、両側片2,2を保治具3の間隔固定溝3aに保持しているので、スリット片1の形状が安定した状態に維持されて変形が生じにくく、スリット片1にのみ焼き入れ処理を適切に施すことができる。また、両側片2,2においては焼き入れ時の加熱処理の影響を受けにくい。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、導電性を有する材質でスライドヘッド4を形成し、このスライドヘッド4両端部をカミソリ刃材の両側片2,2内側におけるスリット片1側に接触させるとともに、スライドヘッド4を取り巻くようにカミソリ刃材の外側に高周波加熱コイル5を配し、この高周波加熱コイル5の発生する磁束6と、スライドヘッド4およびカミソリ刃材が形成する閉ループ8とが略直交するようにして、スライドヘッド4および高周波加熱コイル5を移動させながら、高周波加熱による焼き入れ処理をスリット片1の略全体に施すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、スライドヘッド4と高周波加熱コイル5とを移動させることによって、スリット片1の略全体を焼き入れ処理することができる。また、スライドヘッド4両端部をカミソリ刃材の両側片2,2内側におけるスリット片1側に接触させることで、両側片2,2とスライドヘッド4とが電気的に接続された閉ループ8を形成して、この閉ループ8と高周波加熱コイル5の発生する磁束6とを略直交させているので、閉ループ8に渦電流が発生しやすくなっており、この渦電流によってスリット片1が加熱されることになる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、高周波加熱コイル5の発生する磁束6に対して、スリット片1の面が略垂直になるようにカミソリ刃材を配置して、高周波加熱による焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、磁束6がスリット片1の面に略垂直なので、スリット1aの周囲に形成される閉ループ8に渦電流が発生し、スリット片1が加熱される。また、側片2にはその厚み方向に渦電流が発生することになるが、この渦電流は側片2の厚みが薄いために弱く、ほとんど発熱に寄与することはない。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、カミソリ刃材の両側片2,2外側に、高周波加熱コイル5と同方向の磁束を発生する打ち消しコイル7を配し、高周波加熱コイル5に流す電流に対して逆位相の電流を打ち消しコイル7に流して、高周波加熱による焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、打ち消しコイル7に高周波加熱コイル5と逆位相の電流を流すので、高周波加熱コイル5によって両側片2,2に発生する磁束が、打ち消しコイル7によって打ち消され、渦電流を発生させる磁束はスリット片1にのみ作用する。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、導電性の板材17をスリット片1に接触させて該板材17でスリット1aを覆い隠した状態で高周波加熱による焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、板材17に渦電流が発生しやすいので、この板材17が発熱し、この発熱によってスリット片1が加熱される。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、冷却時に、導電性の板材17を表裏に配してスリット片1を挟持加圧することを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、スリット片1の反り等の変形が矯正される。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明において、導電性の板材17として磁歪素子板を用い、この磁歪素子板を表裏に配してスリット片1を挟持し、この状態で高周波加熱コイル5に高周波電流を流して加熱した後、これらの二枚の磁歪素子板が上下方向からスリット片1を押さえ込んだ状態として、冷却時に高周波加熱コイル5に直流電流を流すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、冷却時に高周波加熱コイル5に直流電流が流されることによって、直流電流の強度に応じた一定強度の磁束が発生する。この一定強度の磁束を板材17である磁歪素子板が受けることによって、この磁歪素子板は押さえ込まれた方向に伸長しようとするので、スリット片1がこの磁歪素子板によって圧縮され、反り等の歪みが矯正される。つまり、高周波加熱コイル5に流される直流電流の強さを調整して、磁歪素子板による圧縮強度をコントロールすることができる。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片1と両側片2,2との連結部に電極板9をそれぞれ配して、スリット片1に対して一方の電極板9から他方の電極板9へと通電することによって加熱して、焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、スリット片1にのみ電流が流れて、スリット片1の部分が加熱される。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、電極板9におけるカミソリ刃との接触部を櫛歯状としておくことを特徴として構成している。このようなこのようなカミソリ刃の熱処理方法では、電極板9とカミソリ刃との接触圧を安定させることができ、均一な通電加熱を行うことができる。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項8記載の発明において、カミソリ刃における電極板9との接触部に突起を設けておくことを特徴として構成している。このようなこのようなカミソリ刃の熱処理方法では、電極板9とカミソリ刃との接触圧を安定させることができ、均一な通電加熱を行うことができる。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項8〜10のいずれかの項に記載の発明において、スリット片1を電極板で上下から加圧することを特徴として構成している。焼き入れと同時に反りの矯正を行うことができる。
【0020】
請求項12記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片1の表裏を電極板9,9で挟持して通電加熱するとともに、少なくとも冷却時にスリット片1を電極板9,9で加圧保持することを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、スリット片1にのみ電流が流れて、スリット片1の部分が加熱される。また、冷却時においてスリット片1が加圧保持されているので、反り等の歪みが矯正される。
【0021】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、電極板9として圧電素子板を用い、冷却時にこの圧電素子板に加圧用に制御された電圧をかけることを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、冷却時に加圧用に制御された電圧を受けて、圧電素子板が押さえ込まれた方向に伸長しようとするので、スリット片1がこの圧電素子板によって圧縮され、反り等の歪みが矯正される。つまり、圧電素子板にかけられる電圧を調整して、加圧力をコントロールすることができる。
【0022】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれかの項に記載の発明において、スリット片1の温度を測定してこの温度測定値をもとに加熱動作をフィードバック制御することを特徴として構成している。温度管理を行うことで安定した焼き入れを行うことができる。
【0023】
請求項15記載の発明は、請求項8〜13のいずれかの項に記載の発明において、印加電圧と電流とから通電部の抵抗値を求めて、この抵抗値からスリット片1の温度を推定し、この温度推定値をもとに加熱動作をフィードバック制御することを特徴として構成している。温度測定手段を必要とすることなく、温度管理を行って安定した焼き入れを行うことができる。
【0024】
請求項16記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片1と保治具3との間にレーザを遮る保護材10を入れた状態で、レーザをスリット片1に照射して加熱することにより焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、レーザが保護材10に遮られて、保治具3に当たりにくくなっているので、保治具3がレーザによって損傷しにくくなっている。
【0025】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の発明において、保護材10としてレーザの反射材を用いることを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、保護材10にて反射されたレーザがスリット片1の裏面に照射され、裏面側からも加熱される。
【0026】
請求項18記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片1の加熱を、レーザでスリット片1の桟部を順次融解させて行うことを特徴として構成している。いったん融解させてしまうために、スリット片1を高硬度のものとすることができる。
【0027】
請求項19記載の発明は、請求項18記載の発明において、レーザを照射して融解させる部分に少なくともニッケルかクロムの粉末を加えることを特徴として構成している。融解によるクロムやニッケルの分離を抑えることができるために錆びにくくすることができる。
【0028】
請求項20記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片にレーザの繰り返し照射を行うことを特徴として構成している。レーザ照射の繰り返し回数によって焼き入れ深さを簡便にかつ確実に調整することができる。
【0029】
請求項21記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片の歪部や変形部をレーザ照射で融解することを特徴として構成している。焼き入れと同時に歪や反りの矯正を行うことができる。
【0030】
請求項22記載の発明は、請求項1記載の発明において、スリット片の焼き入れ対象個所であるスリットの縁の近傍となる桟部中央をレーザ照射で融解させて、上記縁を加熱することを特徴として構成している。スリット片を融解させるとはいえ、エッジとなる部分の面粗さを小さくして切れ味をよくすることができる。
【0031】
請求項23記載の発明は、請求項2,3,4,5,8,16または17のいずれかに記載の発明において、冷却時にスリット片1を、厚さ方向に一定時間圧縮保持する工程を行うことを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、一定時間の圧縮保持工程によって、焼き入れによる歪みなどが矯正されたり、また、圧延されるなどして靭性が向上する。
【0032】
請求項24記載の発明は、請求項1〜23のいずれかに記載の発明において、保治具3内に冷却装置12を設け、この冷却装置12によって保治具3を冷却してスリット片1を焼き入れ処理することを特徴として構成している。このようなカミソリ刃の熱処理方法では、保治具3が冷却されることによって、側片2が熱処理時の加熱の影響を受けにくくなっている。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係るカミソリ刃の熱処理方法を、以下に添付図を参照して説明する。
【0034】
上記カミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を図1を参照して説明する。この図は同熱処理方法を示す説明図であり、(A)はこの熱処理方法にて製造されるカミソリ刃を斜視図として示し、(B)は保治具3にカミソリ刃材をセットした状態を斜視図として示している。
【0035】
この図1に示すように、この熱処理方法にて製造されるカミソリ刃は、髭を切断するスリット1aを有した長方形のスリット片1と、このスリット片1における長辺の両端部に立設される側片2,2とを有する断面略コ字型に金属薄板を加工して形成されている。金属薄板としては、焼き入れ加工が可能な炭素鋼またはステンレス鋼などのような材質が好ましく用いられ、腐食しにくく高硬度に焼き入れできる点でステンレス材が特に好ましく用いられる。
【0036】
また、このカミソリ刃は、外刃Xまたは内刃Yであって、外刃Xと、この外刃Xの内側に略ピッタリと嵌まり込んで摺動する内刃Yとは、セットにして使用される。スリット片1に形成されたスリット1aは略長方形の透孔であり、その短い辺が一列に連なるように、多数個がスリット片1の長手方向に並べて形成されている。このカミソリ刃は、通常、外刃Xが電気かみそりの本体側に固定され、内刃Yがスリット片1の長手方向すなわちスリット1aの短辺方向に摺動し、スリット1a内に入り込んだ髭を切断する。
【0037】
このようなカミソリ刃は、たとえば、往復駆動される三枚刃構成の電気かみそりなどに好適に用いられ、長いくせ髭などもスリット1a内に入り込みやすいので、確実に切断されて剃り残しがない点で優れている。つまり、このようなカミソリ刃を中央に配し、その両側に、内刃が突出した刃片の集合体である一般的なカミソリ刃を配するのである。このような構成の電気かみそりであれば、両側に配される一般的なカミソリ刃で深剃りができるので、剃り残しなく、かつきれいに髭剃りを行うことができる点で優れている。
【0038】
なお、この図1に示すカミソリ刃は、コーナーが略直角に形成されているが、角がとれたU字型となった断面略コ字型のものであってもよく、また、スリット1aの形状または配列も、種々変形されてもよいものである。
【0039】
このような断面略コ字型のカミソリ刃にあっては、スリット片1の部分は硬度が高いことが必要であり、側片2においては取り付け孔2aなどが形成されて、電気かみそり本体に対する取り付け部となるので、靭性を有することが必要になっている。また、両側片2,2の間隔も取り付け精度を維持するために必要であり、スリット片1の平面度が高いことも切れ味と耐久性の点から必要である。
【0040】
この図1の(B)に示すように、この熱処理方法では、上記のスリット片1の硬化処理として、金属薄板を上記のようなカミソリ刃の形状に加工してカミソリ刃材を形成し、このカミソリ刃材の両側片2,2を保治具3の間隔固定溝3aに差し込み保持させた状態で、スリット片1の部分を加熱する。そして、一定の温度に加熱した後、急速に冷却して焼き入れ処理を施すようにしている。この場合の冷却は、エアー、窒素などの冷却流体の吹き付けまたは塩浴もしくは油浴などの浸潰などによって行うことができる。
【0041】
また、上記の保治具3における間隔固定溝3aの間隔は、略スリット刃1の幅、つまり側片2,2の間隔に適合するように形成されている。また、このような保治具3は、セラミックス材などのような熱膨張率の小さい材料を用いて形成されると、加熱による寸法変化が少なく、焼き入れ処理における加熱時の寸法精度を確保できるので特に好ましい。
【0042】
このような焼き入れ処理によれば、両側片2,2を保治具3の間隔固定溝3aに保持しているので、スリット片1の形状が安定した状態に維持されて変形が生じにくく、スリット片1にのみ焼き入れ処理を適切に施すことができる。また、スリット片1の部分を選択的に加熱する上に保治具3が持つ熱容量の点から両側片2,2は焼き入れ時の加熱処理の影響を受けにくい。したがって、熱処理による歪みを矯正するための焼戻し処理が不要になっており、略コ字型のカミソリ刃におけるスリット片1を、十分に高硬度に、かつ歪みの少ない平面に形成することができるとともに、このカミソリ刃における両側片2,2が十分な靭性を具備し、間隔が一定に保たれて形状精度の向上したものに形成される。
【0043】
以下、さらに詳細に、それぞれの図面を参照して、この実施の形態のカミソリ刃の熱処理方法に係る具体例を説明する。
【0044】
図2は上記熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)または(B)に工程中の異なる状態を斜視図として、(C)に断面図としてそれぞれ示している。なお、(A)または(B)では、保治具3を省略して描いている。
この熱処理方法では、導電性を有する材質でスライドヘッド4を形成し、このスライドヘッド4両端部をカミソリ刃材の両側片2,2内側におけるスリット片1側に接触させるとともに、スライドヘッド4を取り巻くようにカミソリ刃材の外側に高周波加熱コイル5を配し、この高周波加熱コイル5の発生する磁束6と、スライドヘッド4およびカミソリ刃材が形成する閉ループ8とが略直交するようにして、スライドヘッド4および高周波加熱コイル5を移動させながら高周波加熱による焼き入れ処理をスリット片1の略全体に施すようにしている。
【0045】
より具体的には、(A)に示すように、水平に配置された高周波加熱コイル5の中心部に、スライドヘッド4を保持棒4aの下端に取り付けて設け、スライドヘッド4両端部をカミソリ刃材の両側片2,2内側におけるスリット片1側に接触させつつ、この図の場合には、カミソリ刃材を下方から上方に移動させるようにしている。このスライドヘッド4の材質としては、導電性の良い銅が渦電流を発生させやすいのでより好ましい。
【0046】
また、(B)は上記移動途中の状態であって、この図に示すように、高周波加熱コイル5の発生する磁束6は垂直方向であり、(C)に示すような、スライドヘッド4と、カミソリ刃材におけるスリット片1および側片2の一部とが形成する閉ループ8は水平方向であるので、前記磁束6と直交している。
【0047】
つまり、磁束6に直交する方向に渦電流が発生するが、この渦電流は前記閉ループ8に発生しやすくなっており、この渦電流によってスリット片1が加熱されることになる。そして、この場合、スライドヘッド4をできるだけスリット片1に近接させることによって、渦電流は側片2のスリット片1に極めて近い一部を流れるのみとなるので、側片2はほとんど加熱されることがなく、スリット片1のみが選択的に加熱されることになる。そして、スライドヘッド4と高周波加熱コイル5とをカミソリ刃材に対して移動させることによって、スリット片1の略全体を焼き入れ処理することができるものである。また、スライドヘッド4を用いることによって、よりよく渦電流が発生し確実に加熱することができるようになっている。
【0048】
図3はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)にスリット片1の部分を平面図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、高周波加熱コイル5の発生する磁束6に対して、スリット片1の面が略垂直になるようにカミソリ刃材を配置して、高周波加熱による焼き入れ処理を施している。
【0049】
より具体的には、(A)に示すように、水平方向に巻かれた高周波加熱コイル5の中心部に、スリット片1が水平になるように配置するのである。このような配置によれば、(B)に示すように、磁束6がスリット片1の面に垂直なので、スリット1aの周囲に形成される閉ループ8に渦電流が発生して、スリット片1が加熱される。また、側片2にはその厚み方向に渦電流が発生することになるが、この渦電流は側片2の厚みが薄いために弱く、ほとんど発熱に寄与することのないものになっている。したがって、スリット片1のみが選択的に加熱されることになる。
【0050】
この方法における熱処理装置は、たとえば、保治具3を固定し、この保治具3に対して、カミソリ刃材を水平方向に移動して供給するとともに、高周波加熱コイル5を上下方向に移動自在とし、カミソリ刃材が保治具3にセットされた状態で、高周波加熱コイル5をカミソリ刃材の位置まで移動させ、高周波加熱を行うように構成することができる。
【0051】
図4はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)、(B)に工程途中の状態を斜視図として、(C)に工程途中における加熱時の状態を断面図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、上記図3に示した方法において、カミソリ刃材の両側片2,2外側に高周波加熱コイル5と同方向の磁束を発生する打ち消しコイル7を配し、高周波加熱コイル5に流す電流に対して逆位相の電流を打ち消しコイル7に流して、高周波加熱による焼き入れ処理を施している。
【0052】
打ち消しコイル7は、横方向を開口させた断面コ字型の芯材7aの垂直部に巻かれている。また、この打ち消しコイル7は、保治具3の両側に配置されており、この芯材7aの開口部内に保治具3の端部を納めるとともに、左右の打ち消しコイル7における芯材7a開口部間に、スリット片1を水平状態としたカミソリ刃材を保持できるようにしている。
【0053】
このように左右の打ち消しコイル7間にカミソリ刃材を保持した状態で、高周波加熱を行うと、高周波加熱コイル5と逆位相の電流が流される打ち消しコイル7による磁束が、両側片2,2に発生する高周波加熱コイル5による磁束を打ちすために、渦電流を発生させる磁束6はスリット片1にのみ作用する。したがって、スリット片1のみが渦電流で選択的に加熱される。
【0054】
図5はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に工程途中における加熱時の状態を断面図として、また、(C)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、前記図3に示した方法において導電性の板材17をスリット片1に接触させて、該板材17でスリット1aを覆い隠した状態で高周波加熱した後、冷却時に、導電性の板村17を表裏に配してスリット片1を挟持加圧している。この場合、導電性の板材17としては銅板を用い、この銅板の上下にはプレス圧力を加えることができるようになっている。高周波加熱時には加圧をほとんど行わず、冷却時に温度がある程度下がってから加圧を行うように操作している。
【0055】
高周波加熱時、すなわち、高周波加熱コイル5に電流を流しているときは、板材17に厚みがあって渦電流が発生しやすいので、この板材17が有効に発熱し、この発熱によってスリット片1が加熱される。
【0056】
また、(A)に示されるように、カミソリ刃材を略コ字型に形成する加工によってスリット片1に反り等の変形が発生していても、冷却時にスリット片1を挟持加圧することによって、前記変形が矯正される。また、カミソリ刃材としてステンレス材を用いている場合には、オーステナイトからマルテンサイトへ変態する前後の温度で、一定時間、冷却時の加圧を保持すると、焼き入れ時の歪みも矯正されるのでより好ましい。
【0057】
また、この図5において、導電性の板材17として磁歪素子板を用い、この磁歪素子板を表裏に配してスリット片1を挟持し、この状態で高周波加熱コイル5に高周波電流を流して加熱した後、これらの二枚の磁歪素子板を上下方向から押さえ込んだ状態として、冷却時に高周波加熱コイル5に直流電流を流す方法も好ましい具体例の一つである。磁歪素子板はニッケル、フェライトなどの材質で形成され、磁界をかけることによって伸縮する性質を有している。
【0058】
このような方法によれば、冷却時に高周波加熱コイル5に直流電流が流されることによって、一定強度の磁束が発生する。この一定強度の磁束を板材17である磁歪素子板が受けることによって、この磁歪素子板は押さえ込まれた方向に伸長しようとするので、スリット片1がこの磁歪素子板によって強力に圧縮され、反り等の歪みが確実に矯正される。この場合、高周波加熱コイルに流す直流電流の強さを調整して、磁歪素子板による圧縮強度を自由にコントロールすることができ、適切な強度の圧縮を容易に行うことができる利点がある。
【0059】
図6は高周波加熱コイル5を用いた熱処理の他の例を示しており、ここでは高周波加熱コイル5として、(A)に示すように、カミソリ刃材のスリット片1の各スリット1a間の桟部に対応する大きさと形状のものを用いている。各高周波加熱コイル5に電流を流せば、(B)に示すように、スリット片1の各スリット1a間の桟部に渦電流が流れてスリット片1の加熱がなされる。加熱が必要となる部分にのみ渦電流による加熱を行うことができる。
【0060】
図7はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に要部を平面図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、スリット片1と両側片2,2との連結部に電極板9,9をそれぞれ配して、スリット片1に対して一方の電極板9から他方の電極板9へと通電することによって加熱して、焼き入れ処理を施すことを特徴として構成している。
【0061】
この熱処理を行う装置は、固定された保治具3にカミソリ刃材を送ってセットする機構と、セットされたカミソリ刃材のスリット片1を挟持するように電極板9,9を移動させる機構とを具備している。また、カミソリ刃材を送る方向と、電極板9,9を移動させる方向とは直交するように形成されている。
【0062】
このようなカミソリ刃の熱処理方法では、スリット片1にのみ電流が流れるので、スリット片1の部分を選択的に加熱することができる。また、このスリット片1における導電路はスリット1aが存在するので細くなっており、抵抗が大きいため効果的に加熱され、この細い部分に対して焼き入れ処理を効率よく行うことができる。
【0063】
スリット片1と両側片2,2との連結部に接触させる電極板9は、図8に示すように、櫛歯状としておけば、電極板9とスリット片1との全体的な接触が安定するために、桟部全体に均一に電流を流すことができる。なお、櫛歯のピッチはスリット片1の桟部のピッチよりも大きくしておくのが好ましく、電極板9とスリット片1との全体的な接触が安定する範囲内で櫛歯の数を少なくしておくとよい。(B)は、桟部の間の1つ置きの部分に電極板9の櫛歯の部分が当接するようにして、各桟部に均一に電流を流すことができるようにしている。
【0064】
電極板9を櫛歯状とするのではなく、図9に示すように、スリット片1と両側片2,2との連結部に複数個の突起1bを突設して、この突起1bが電極板9に接触するようにしてもよい。図示例では、スリット1a間の桟部と同じ位置に突起1bを設けているが、突起1bが少ない方が電極板9とスリット片1との全体的な接触が安定するために、桟部全体に均一に電流を流すことが可能な範囲で突起1bの数は少なくするのがよい。
【0065】
ところで、電極板9,9を用いてスリット片1に通電を行う場合、定電圧電源を用いるのがコストの点で有利であるが、スリット片1の温度が上昇して抵抗値が高くなるとスリット片1に流れる電流が小さくなるために、温度を高くすることができない。これを避けるには電圧を高くするか、電極板9とスリット片1との接触圧を高くして接触抵抗を小さくすることになるが、これでは電圧を制御したり、接触圧を可変にする装置が必要となって、装置全体のコストが高くなってしまう。
【0066】
このために、図10に示すように、相互にねじ95で連結固定される高剛性の電極固定板94,94で両電極板9,9及びスリット片1を固定して電流を流すのが好ましい。スリット片1に電流を流すことでスリット片1の温度が上昇してその抵抗値が高くなっても、スリット片1が温度上昇に伴って膨張するために、電極板9とスリット片1との接触部の抵抗は小さくなることから、電源に対する全体の抵抗値は温度上昇に拘わらず一定となり、従って所要の発熱量を確保することができる。
【0067】
電極板9としては、図11に示すように、ローラ状のものを用いて、ばね90で両側から押しつけ、ローラ状の電極板9を転がせつつ、各桟部に順次電流を流すようにして加熱する。1つの桟部を加熱すれば電流を止めてその桟部を冷却して焼き入れを行い、次に電極板9を転がせて隣の桟部に通電して焼きを入れるということを繰り返すわけである。
【0068】
図12はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に工程途中における加熱時の状態を断面図として、また、(C)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、スリット片1の表裏を電極板9,9で挟持して通電加熱するとともに、少なくとも冷却時にスリット片1を電極板9,9で加圧保持するようにしている。
【0069】
このような方法によっても、スリット片1にのみ電流を流すことができるので、スリット片1の部分を加熱することができる。また、冷却時においてスリット片1が加圧保持されているので、反り等の歪みが矯正される。カミソリ刃材としてステンレス材を用いている場合には、オーステナイトからマルテンサイトへ変態する前後の温度で、一定時間、冷却時の加圧を保持すると、焼き入れ時の歪みも補正されるのでより好ましい。
【0070】
この図12において、電極板9として圧電素子板を用い、冷却時にこの圧電素子板に加圧用に制御された電圧をかける方法も、好ましい具体例の一つである。つまり、冷却時に加圧用に制御された電圧を受けて、圧電素子板が押さえ込まれた方向に伸長しようとするので、スリット片1がこの圧電素子板によって強力に圧縮され、反り等の歪みがより確実に矯正される。この場合、圧電素子板にかける電圧を調整して、加圧力を自在にコントロールすることができるので、歪みを矯正するのに十分適切な強度の加圧を容易に行うことができる利点がある。
【0071】
図13はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)または(C)に断面図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、スリット片1と保治具3との間にレーザを遮る保護材10を入れた状態で、レーザをスリット片1に照射して加熱することにより焼き入れ処理を施している。保護材10としては、レーザ吸収性の悪い材料である銅または銀などのシートなどを用いることができる。そして、表面を粗面化してレーザを拡散させるように形成するとより好ましい。
【0072】
また、この図の(C)に示すように、保護材10としてレーザの反射材を用いてもよい。このような反射材としては、表面平滑な銅などのシートが例示される。
【0073】
このようにしてレーザを照射すれば、レーザが保護材10に遮られて、保治具3に直接当たりにくくなっているので、保治具3がレーザによって損傷しにくく、経済的である。また、保護材10にて反射されたレーザがスリット片1の裏面に照射される場合には、裏面側からも加熱することができるために、熱処理を効率よく行うことができる。
【0074】
レーザを照射するにあたっては、単に温度を上げた後に急冷して焼き入れを施すのではなく、図14に示すように、レーザ照射でスリット片1のスリット1a間の桟部を融解させてしまってもよい。融解部Mとその周辺で温度差が生じ、融解部Mの冷却速度が増大するために、レーザ照射による融解後の凝固時に焼き入れがなされることになる。この場合、レーザを走査することで各桟部を順次融解させていくことで、レーザが裏面に貫通してもスリット片1そのものが形状変形してしまうことはなく、スリット1aの形状がくずれることもない。なお、レーザとしてはCO2レーザやYAGレーザが好適であり、またレーザ照射時に不活性ガスを吹き付けると、表面酸化による変色を防ぐことができる。
【0075】
桟部全体を融解させるのではなく、図15に示すように、刃先を構成することになるスリット1aの縁のみを融解させてもよい。この場合、刃先を高硬度にすると同時にスリット片1に靭性を持たせることができる。
【0076】
桟部を融解させる場合も、図16に示すように、桟部の表面のみを融解させるようにすれば、表面のみが焼き入れされたものとなるために、やはり靭性を確保することができる。また、この場合のレーザとしては、CO2レーザやYAGレーザのほか、エキシマレーザーを好適に用いることができる。
【0077】
ところで、レーザでスリット片1の一部を融解させてしまう場合、図17に示すように、スリット片1における融解させる部分に予めクロムまたはニッケルまたはこの両者の粉末P(粒径はφ50μmが好ましい)を薄く設置しておくとよい。レーザによってこれらの粉末Pも同時に融解させるのである。スリット片1を融解させる時、クロムまたは/およびニッケルの分離を抑えることができるために、錆びにくくすることができる。粉末Pの状態で設置するのではなく、水やアルコールといった溶液に粉末Pを混ぜて塗布するようにしてもよい。レーザとしては、CO2レーザやYAGレーザ、エキシマレーザーを好適に用いることができ、また不活性ガスを吹き付けながら融解させれば、表面酸化による変色を防ぐことができる。
【0078】
クロムやニッケル以外の金属を同時に融解させて合金化を図ってもよい。レーザクラッディングやレーザミキシングを行うのである。たとえばN2ガスを吹き付けながらチタン粉末を同時に融解させることで、TiNを形成することができる。
【0079】
いずれにしても、レーザ融解させた場合は、その後、スリット片1の表面は凹凸が生じることから、研削によってスリット片1の表面を平にするのが好ましい。図18はスリット1aの縁を融解させた後、5〜100μmほど研削することで表面を平にして、刃先のエッジを出しやすくしたものを示している。
【0080】
レーザによる焼き入れは、このほか、図19に示すように、桟部の中央部分のみを融解させ、熱伝導によって桟部全体を高温とすることで行うようにしてもよい。この場合、レーザスポット径をコントロールすることで、桟部の中央部分のみが融解してスリット1aの縁であるエッジ部分は融解させないようにする。エッジ部分は融解させないために、融解させる際にエッジのダレを注意しなくてもよくなる。
【0081】
融解させることなくレーザで焼き入れを行う場合には、桟部へのレーザの照射を複数回繰り返すものとし、この繰り返し回数によって焼き入れ深さをコントロールするようにするのが好ましい。繰り返し入熱を行うことにより、必要な焼き入れ深さを安定して得ることができる。この場合、スリット片1が融解しないエネルギー密度のレーザ照射を行うとともに入熱エネルギーを調整することで、最表面層のみを昇温して焼き入れすることができ、そしてレーザ照射を繰り返す際の熱伝導で深さ方向に焼き入れ領域を成長させることができる。この場合、YAGレーザのQスイッチ発振を用いることで、深さ方向の焼き入れ領域の微細管理が容易となる。
【0082】
たとえば、YAGレーザのQスイッチ発振のレーザマーカ(繰り返し1kHz以上、パワー10W以上、スキャン速度500mm/sec以下)を用いることで、図20に示すように、レーザ照射1回目で焼き入れ深さ約30μm(図中のイ)、レーザ照射2回目で焼き入れ深さ約50μm(図中のロ)、レーザ照射3回目で焼き入れ深さ約70μm(図中のハ)の焼き入れを行うことができる(材質によって焼き入れ深さが異なってくるのはもちろんであるが、約100μm程度の深さの熱処理が可能である)。
【0083】
また、レーザ照射を行う場合、局部的な融解をスリット片1に生じさせることで、スリット片1の歪や反りの矯正を行うことができる。図21はこの場合の一例を示しており、スリット片1の反りがある部分にレーザ照射を行って融解させ、この状態で金型等を用いて反りの矯正を行うのである。レーザ照射で焼き入れを行う時に歪矯正部分に対して選択的にレーザ照射エネルギーを増やすことで、焼き入れ処理と該矯正処理とを組み合わせることも可能である。
【0084】
図22はカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。この熱処理方法では、前述した種々の方法において、冷却時にスリット片1をプレス板11,11によって厚さ方向に一定時間圧縮保持する工程を行っている。一定時間圧縮保持によって、焼き入れによる歪みなどの矯正が行われ、また、圧延されるなどして靭性が向上する。
【0085】
この場合の圧延は、厚みを20〜30%程度減ずるようにすると靭性向上に効果的である。また、前記圧縮保持は、カミソリ刃材としてステンレス材を用いている場合においては、オーステナイトからマルテンサイトへ変態する前後の温度で行うことによって、焼き入れ時の歪みを矯正して、熱処理歪みを発生させることなく焼き入れ処理がなされるので好ましい。
【0086】
図23はスリット片1と両側片2,2との連結部に電極板9,9をそれぞれ配して、スリット片1に対して一方の電極板9から他方の電極板9へと通電することによって加熱して、焼き入れ処理を施す処理方法において、スリット片1をプレス板11,11によって厚さ方向に一定時間圧縮保持する工程を加えたものである。
【0087】
この場合のプレス板11,11による圧縮保持のタイミングは、図24に示すように、電極板9,9間の通電による加熱が終了してスリット片1の温度が下降する時点で行うようにすれば、プレス板11には電流が流れないために、プレス板11として導電性の材料を用いても支障が生じることはなく、安価な材料のプレス板11を用いることができる。
【0088】
図25に示すようなタイミング、すなわち電極板9,9間の通電中にプレス板11,11による加圧を開始するようにしてもよい。高温状態のスリット片1を加圧挟持することで矯正を行うことになるために、小さい加圧力でスリット片1の変形矯正を行うことができる。また、プレス板11をスリット片1に接触させると、プレス板11に熱を奪われて通電終了後のスリット片1の温度降下が急になりすぎて、焼き割れ等の原因となってしまう。このために、図示例のものにおいては、スリット片1の温度降下中に再度電極板9,9間の通電を行ってスリット片1に熱を与えることで、急冷を防いでいる。なお、この場合のプレス板11は非導電性材料のもの、たとえばセラミック製のものを用いる。
【0089】
図26はローラ状の電極板9,9を用いてスリット片1を通電加熱する場合にプレス板11,11による加圧を行う方法を示しており、図中で上型となるプレス板11にはスリット1a間の各桟部に対応した大きさのものを、下型となるプレス板11にはスリット片1の全長に対応した大きさのものを用いる。そして、電極板9,9間の通電で順次加熱していく桟部の冷却中に各桟部をプレス板11,11で順次挟持して焼き入れ歪及び変形の矯正を行う。下型となるプレス板11の平面度を出しておくことにより、各桟部を個別に矯正するものの、スリット片1全体の反り変形を抑えることができる。
【0090】
図27は保治具3内に冷却装置12を設け、この冷却装置12によって保治具3を冷却してスリット片1を焼き入れ処理する方法を示している。この図の例では冷却装置12として冷却流体の流路を設けており、冷却流体としてエアーまたは水などを流すようにしている。保治具3が冷却されることによって、側片2が熱処理時の加熱の影響をさらに受けにくくなるものであり、側片2が焼き入れされて脆くなることがなく、この側片2の靭性が確保されて取り付け強度が向上する利点がある。
【0091】
図28はスリット片1の加熱後の(B)に示すような温度プロフィールになるような冷却を行うにあたり、冷却ガスをスリット片1の一部にノズルCGから吹き付けることで、スリット片1に故意に温度分布の差を発生させて、スリット片1の一部に焼き入れ歪を故意に生じさせるようにしたものを示している。このようにすることで、スリット片1全体の変形を所望の平面度となるようにすることができる。なお、図ではスリット片1の加熱を電極板9,9で行っているものを示しているが、これに限るものではないことはもちろんである。
【0092】
スリット片1の加熱や加熱後の冷却はスリット片1の温度測定を行ってフィードバック制御するようにしてもよい。図29の(A)は温度測定個所Sの例を示している。フィードバック制御にあたり、加熱を高周波加熱コイル5で用いるものにおいては、高周波加熱コイル5に供給する電流値や周波数を制御すればよく、(B)に示すように、加熱中にスリット片1(の桟部)の温度を測定して、この測定値と目的とする温度とを比較し、目的とする温度となるように電流または周波数を制御することで、焼き入れ硬度を安定させることができる。温度測定には放射温度計のような非接触式のもの、熱電対のような接触式のもののいずれを用いてもよい。
【0093】
図30は加熱を電極板9,9で行う場合にスリット片1の温度を非接触式温度計Tで測定して、この測定値が(B)に示すような所要の温度プロフィールに一致するように通電加熱用の電源の電圧または電流をフィードバック制御する場合を示している。制御系としてはPID制御などを好適に用いることができる。
温度測定はスリット片1の一部のみでもよいが、数カ所の温度を測定したほうがスリット片1全体の温度を所望の温度にすることが可能であり、数カ所で温度測定する場合、その平均をとってフィードバックするほか、各温度に重み付けを行い、重みを考慮した値をフィードバックしてもよい。
【0094】
図31は加熱を電極板9,9で行う場合において、温度測定手段を用いることなく、スリット片1の温度プロフィールを所望のプロフィールにすることが可能としたものを示しており、電極板9,9への印加電圧と電流とから通電部(スリット片1)の抵抗値を求めて、この抵抗値によってスリット片1の温度を推定し、この温度推定値をもとにフィードバック制御することで(C)に示すような所望の温度プロフィールとなるように温度管理を行う。
【0095】
抵抗値に基づく温度の推定は、各材料に対する抵抗値と温度との関係のデータベースを用いても、あるいは予め抵抗値と温度の関係を測定しておいて(B)に示すその測定結果を用いてもよい。
【0096】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、両側片を保治具の間隔固定溝に保持してスリット片の部分を選択的に加熱して焼き入れしているので、スリット片の形状が安定した状態に維持されて変形が生じにくく、スリット片にのみ焼き入れ処理が適切に施される。また、両側片においては焼き入れ時の加熱処理の影響を受けにくくなっている。
【0097】
したがって、この方法によれば、熱処理による歪みを矯正するための焼戻し処理が不要となるので、略コ字型のカミソリ刃におけるスリット片を、十分に高硬度に、かつ歪みの少ない平面に形成することができるとともに、このカミソリ刃における両側片が十分な靭性を具備し、間隔が一定に保たれて形状精度が向上し、電気かみそりなどの装置本体への取り付けが確実に行われるカミソリ刃が得られる。
【0098】
請求項2記載の発明では、両側片とスライドヘッドとが電気的に接続されて閉ループが形成される。そして、このような閉ループには、高周波加熱による渦電流が流れやすいので、この閉ループを形成しているスリット片の部分を選択的に確実に加熱することができる。つまり、スライドヘッドを用いることによって、スリットがあって渦電流を発生させにくくなっているスリット片に、よりよく渦電流を発生させることができ、確実にスリット片の加熱を行うことができる。
【0099】
請求項3記載の発明では、磁束がスリット片の面に略垂直なので、スリットの周囲に形成される閉ループに渦電流が発生し、スリット片の部分が加熱される。また、側片にはその厚み方向に渦電流が発生することになるが、この渦電流は側片の厚みが薄いために弱く、ほとんど発熱に寄与することがない。したがって、スリット片の部分を選択的に確実に加熱することができる。
【0100】
請求項4記載の発明では、打ち消しコイルに高周波加熱コイルと逆位相の電流を流すことによって、両側片に発生する高周波加熱コイルによる磁束を打ち消すことができる。したがって、渦電流を発生させる磁束はスリット片にのみ作用して、スリット片に選択的に渦電流を発生させ、このスリット片の部分のみを確実に加熱することができる。
【0101】
請求項5記載の発明では、板材に渦電流を発生させることによって、この板材に接触しているスリット片の部分を選択的に加熱することができる。この場合、比較的厚みのある板材を用いるようにすると、薄いスリット片を直接加熱するよりも、渦電流が発生しやすく加熱が容易になっている。
【0102】
請求項6記載の発明では、板材による挟持加圧によって、スリット片の反り等の変形を冷却時に矯正することができ、スリット片の形状精度を向上させることができる。
【0103】
請求項7記載の発明では、冷却時に高周波加熱コイルに直流電流を流すことによって発生する一定強度の磁束を磁歪素子板が受けて伸長しようとするので、スリット片がこの磁歪素子板によって挟まれて強力に圧縮されることになる。このような圧縮力を冷却時に受けるスリット片は反り等の歪みが矯正されるので、形状精度を向上させたカミソリ刃を得ることができる。この時、高周波加熱コイルに流す直流電流の強さを調整することで、磁歪素子板による圧縮強度を自由にコントロールすることができるために、適切な強度の圧縮を容易に行うことができる。
【0104】
請求項8記載の発明では、スリット片にのみ電流を流すことができるので、スリット片の部分のみを確実に、選択的に通電加熱することができる。
【0105】
請求項9記載の発明では、電極板とカミソリ刃との接触圧を安定させることができ、均一な通電加熱を行うことができる。
【0106】
請求項10記載の発明では、電極板とカミソリ刃との接触圧を安定させることができ、均一な通電加熱を行うことができる。
【0107】
請求項11記載の発明では、スリット片を上下から加圧するために、焼き入れと同時に反りの矯正を行うことができる。
【0108】
請求項12記載の発明では、スリット片の部分のみを選択的に通電加熱することができるとともに、冷却時においてスリット片が加圧保持されるので、反り等の歪みが矯正され、形状精度を向上させることができる。
【0109】
請求項13記載の発明では、冷却時に加圧用に制御された電圧を受けて、圧電素子板が押さえ込まれた方向に伸長しようとするので、スリット片がこの圧電素子板によって圧縮され、反り等の歪みが矯正される。この場合、圧電素子板にかける電圧を調整して、加圧力を自在にコントロールすることができるので、歪みを矯正するのに十分適切な強度の加圧を容易に行うことができる。
【0110】
請求項14記載の発明では、スリット片の温度を測定値をもとに加熱動作をフィードバック制御するために、スリット片の温度管理を行うことができ、安定した焼き入れを行うことができる。
【0111】
請求項15記載の発明では、印加電圧と電流とから通電部の抵抗値を求めて、この抵抗値からスリット片1の温度を推定し、この温度推定値をもとに加熱動作をフィードバック制御するために、温度測定手段を必要とすることなく、温度管理を行って安定した焼き入れを行うことができる。
【0112】
請求項16記載の発明では、レーザを保護材で遮って保治具を保護することができるので、保治具を損傷することなくレーザ加熱による焼き入れ処理を適確に行うことができる。
【0113】
請求項17記載の発明では、保護材にて反射されたレーザによってスリット片の裏面側を加熱することができるので、レーザ加熱を効率よく行うことができる。
【0114】
請求項18記載の発明では、スリット片をいったん融解させてしまうために、スリット片を高硬度のものとすることができる。
【0115】
請求項19記載の発明では、レーザを照射して融解させる部分に少なくともニッケルかクロムの粉末を加えるために、融解によるクロムやニッケルの分離を抑えることができ、錆びにくくすることができる。
【0116】
請求項20記載の発明では、レーザ照射の繰り返し回数によって焼き入れ深さを簡便にかつ確実に調整することができる。
【0117】
請求項21記載の発明では、スリット片の歪部や変形部をレーザ照射で融解するために、焼き入れと同時に歪や反りの矯正を行うことができる。
【0118】
請求項22記載の発明では、スリット片の焼き入れ対象個所の近傍であるスリットの縁の近傍となる桟部中央をレーザ照射で融解させて、上記縁を加熱することから、スリット片を融解させるとはいえ、エッジとなる部分の面粗さを小さくして切れ味をよくすることができる。
【0119】
請求項23記載の発明では、一定時間の圧縮保持によって、焼き入れによる歪みなどを矯正するとともに、スリット片が圧延されるなどして、靭性も向上する。また、この圧縮保持のタイミングを金属材料の組織の変態が起きる温度以上にすることによって、前記焼き入れによる歪みの矯正などをより効果的に行うこともできる。
【0120】
請求項24記載の発明では、保治具が冷却されることによって、側片が熱処理時の加熱の影響を受けにくく、この側片が焼き入れされて脆くなることがなく、この側片2の靭性が確保されて取り何け強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るカミソリ刃の熱処理方法を示す説明図であり、(A)はこの熱処理方法にて製造されるカミソリ刃を斜視図として示し、(B)は保治具にカミソリ刃材をセットした状態を斜視図として示している。
【図2】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)または(B)に工程中の異なる状態を斜視図として、(C)に断面図としてそれぞれ示している。
【図3】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)にスリット片の部分を平面図としてそれぞれ示している。
【図4】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)、(B)に工程途中の状態を斜視図として、(C)に工程途中における加熱時の状態を断面図としてそれぞれ示している。
【図5】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に工程途中における加熱時の状態を断面図として、(C)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図6】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を平面図として、(B)に渦電流の流れを平面図としてそれぞれ示している。
【図7】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に要部を平面図としてそれぞれ示している。
【図8】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に要部を平面図としてそれぞれ示している。
【図9】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に要部を平面図としてそれぞれ示している。
【図10】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、工程途中の状態を平面図として示している。
【図11】同上のカミソリ刃の熱処理方法における一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に要部を平面図としてそれぞれ示している。
【図12】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に工程途中における加熱時の状態を断面図として、(C)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図13】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)または(C)に断面図としてそれぞれ示している。
【図14】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に要部を平面図としてそれぞれ示している。
【図15】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、要部を平面図として示している。
【図16】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に要部を平面図として、(B)に側面図としてそれぞれ示している。
【図17】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、要部を側面図として示している。
【図18】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に要部を断面図として、(B)及び(C)に拡大断面図としてそれぞれ示している。
【図19】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に要部を平面図として、(B)に断面図としてそれぞれ示している。
【図20】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図で要部を断面図として示している。
【図21】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に要部を側面図として、(B)に平面図としてそれぞれ示している
【図22】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図23】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に断面図としてそれぞれ示している。
【図24】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図として、(B)に通電加熱と加圧のタイミングをグラフ図としてそれぞれ示している。
【図25】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図として、(B)に通電加熱と加圧のタイミングをグラフ図としてそれぞれ示している。
【図26】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に側面図として、(C)に断面図としてそれぞれ示している。
【図27】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す斜視図である。
【図28】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図29】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に温度測定位置を平面図として、(B)に温度制御の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図30】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図31】同上のカミソリ刃の熱処理方法の一つの具体例を示す説明図であり、(A)に工程途中の状態を斜視図として、(B)に温度と抵抗の関係をグラフ図として、(C)にカミソリ刃材の加熱温度の経時変化をグラフ図としてそれぞれ示している。
【図32】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 スリット片
1a スリット
2 側片
3 保治具
3a 間隔固定溝
4 スライドヘッド
5 高周波加熱コイル
6 磁束
7 打ち消しコイル
8 閉ループ
9 電極板
10 保護材
11 冷却装置

Claims (24)

  1. 髭を切断するスリットを有したスリット片と、このスリット片の両端部に立設される側片とを有する断面略コ字型に金属薄板を加工してカミソリ刃材を形成し、このカミソリ刃材の両側片を保治具の間隔固定溝に差し込み保持させた状態で、スリット片の部分を選択的に加熱して焼き入れ処理を施すことを特徴とするカミソリ刃の熱処理方法。
  2. 導電性を有する材質でスライドヘッドを形成し、このスライドヘッド両端部をカミソリ刃材の両側片内側におけるスリット片側に接触させるとともに、スライドヘッドを取り巻くようにカミソリ刃材の外側に高周波加熱コイルを配し、この高周波加熱コイルの発生する磁束と、スライドヘッドおよびカミソリ刃材が形成する閉ループとが略直交するようにして、スライドヘッドおよび高周波加熱コイルを移動させながら高周波加熱による焼き入れ処理をスリット片の略全体に施すことを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  3. 高周波加熱コイルの発生する磁束に対して、スリット片の面が略垂直になるようにカミソリ刃材を配置して、高周波加熱による焼き入れ処理を施すことを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  4. カミソリ刃材の両側片外側に、高周波加熱コイルと同方向の磁束を発生する打ち消しコイルを配し、高周波加熱コイルに流す電流に対して逆位相の電流を打ち消しコイルに流して、高周波加熱による焼き入れ処理を施すことを特徴とする請求項3記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  5. 導電性の板材をスリット片に接触させて該板材でスリットを覆い隠した状態で高周波加熱による焼き入れ処理を施すことを特徴とする請求項3記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  6. 冷却時に、導電性の板材を表裏に配してこの板材でスリット片を挟持加圧することを特徴とする請求項5記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  7. 導電性の板材として磁歪素子板を用い、この磁歪素子板を表裏に配してスリット片を挟持し、この状態で高周波加熱コイルに高周波電流を流して加熱した後、これらの二枚の磁歪素子板が上下方向からスリット片を押さえ込んだ状態となるように、冷却時に高周波加熱コイルに直流電流を流すことを特徴とする請求項5記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  8. スリット片と両側片との連結部に電極板をそれぞれ配して、スリット片に対して一方の電極板から他方の電極板へと通電することによって加熱して、焼き入れ処理を施すことを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  9. 電極板におけるカミソリ刃との接触部を櫛歯状としておくことを特徴とする請求項8記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  10. カミソリ刃における電極板との接触部に突起を設けておくことを特徴とする請求項8記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  11. スリット片を電極板で上下から加圧することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  12. スリット片の表裏を電極板で挟持して通電加熱するとともに、少なくとも冷却時にスリット片を電極板で加圧保持することを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  13. 電極板として圧電素子板を用い、冷却時にこの圧電素子板に加圧用に制御された電圧をかけることを特徴とする請求項12記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  14. スリット片の温度を測定してこの温度測定値をもとに加熱動作をフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  15. 印加電圧と電流とから通電部の抵抗値を求めて、この抵抗値からスリット片の温度を推定し、この温度推定値をもとに加熱動作をフィードバック制御することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  16. スリット片と保治具との間にレーザを遮る保護材を入れた状態で、レーザをスリット片に照射して加熱することにより焼き入れ処理を施すことを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  17. 保護材としてレーザの反射材を用いることを特徴とする請求項16記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  18. スリット片の加熱を、レーザでスリット片の桟部を順次融解させて行うことを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  19. レーザを照射して融解させる部分に少なくともニッケルかクロムの粉末を加えることを特徴とする請求項18記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  20. スリット片にレーザの繰り返し照射を行うことを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  21. スリット片の歪部や変形部をレーザ照射で融解することを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  22. スリット片の焼き入れ対象個所であるスリットの縁の近傍となる桟部中央をレーザ照射で融解させて、上記縁を加熱することを特徴とする請求項1記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  23. 冷却時にスリット片を、厚さ方向に一定時間圧縮保持する工程を行うことを特徴とする請求項2,3,4,5,8,16または17のいずれか1項に記載のカミソリ刃の熱処理方法。
  24. 保治具内に冷却装置を設け、この冷却装置によって保治具を冷却してスリット片を焼き入れ処理することを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載のカミソリ刃の熱処理方法。
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