JP6131755B2 - 鋼部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼部材の製造方法に関し、さらに詳しくは、炭素鋼材料の一部に焼入れが施された鋼部材の製造方法に関する。
シートをはじめとした乗物に搭載される部品のように、高い機械的強度が要求される鋼製部材においては、その強度を高めるために、鋼材自体の強度を高めることが図られる。旧来は、部材全体を火炎等によって加熱し、焼入れを行うことで、強度の向上させることが一般的に行われてきた。しかし、近年では、部材の一部のみに焼入れを施し、強度を向上させることも行われている。例えば、特許文献1においては、成形後の鋼に対し、高周波誘導加熱によって、局所的あるいは全体的に加熱処理を行い、その後冷却することで、材料強度を向上させることが図られている。
特表2013−510044号公報
高周波誘導加熱を行う場合、使用する高周波誘導コイルの形状を工夫することで、対象物の一部分を、ある程度選択的に加熱することができる。しかし、加熱する領域や、加熱温度の分布等、その加熱条件を精密に制御することは難しい。また、高周波誘導加熱は、被加熱材料自体の発熱を原理とする内部加熱であるため、加熱温度およびその空間分布が材料の形状等に依存しやすい。これらの要因により、高周波誘導加熱を用いて、金属材料中の微小領域に対して、所望の機械的特性(硬さ、靱性等)が得られるように制御しながら、加熱を行うことは困難である。
また、高周波誘導加熱が内部加熱を原理とすることに起因し、高周波誘導加熱によって所望の温度まで対象物を加熱するには、長い時間を要し、加工速度を速くすることは困難である。例えば、厚さ1.0〜1.2mmの炭素鋼板を高周波誘導コイルに対して移動させながら焼入れを連続的に行う場合、焼入れの効果を得るのに必要な910℃程度まで加熱するためには、鋼板の移動速度を典型的には12mm/秒以下とする必要がある。
本発明が解決しようとする課題は、炭素鋼材料の一部の部位に対して、高い制御性をもって、かつ短時間で焼入れを行うことができる鋼部材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる鋼部材の製造方法は、炭素鋼材料にレーザー光を照射して加熱するレーザー加熱部と前記炭素鋼材料に水を接触させて冷却する水冷部とを並べて配置し、前記炭素鋼材料を前記レーザー加熱部および水冷部に対して相対的に移動させながら、前記炭素鋼材料の一部に、前記レーザー加熱部でレーザー光を照射した後、前記水冷部で水を接触させることを要旨とする。
ここで、前記炭素鋼材料の相対移動の方向と交差する方向に沿った前記水冷部の幅は、前記レーザー加熱部の幅よりも広いことが好ましい。
また、前記炭素鋼材料の相対移動の方向に沿った前記レーザー加熱部と前記水冷部との間の距離は、前記炭素鋼材料の相対移動の方向に沿った前記レーザー加熱部の長さ以下であるとよい。
そして、前記炭素鋼材料は、前記レーザー加熱部によってレーザー光の照射を受ける前に、予熱部おいて、前記レーザー加熱部よりもエネルギー密度が低いレーザー光の照射を受けることが好ましい。
上記発明にかかる鋼部材の製造方法によると、レーザー加熱部において、レーザー光を用いて炭素鋼材料の一部を加熱するので、所望の微小な領域に対して、空間的に高い均一性をもって、加熱条件を制御しながら、加熱を行うことができる。そして、レーザー加熱部において加熱された部位を、水冷部によって冷却するため、その部位に、微小な金属組織を形成し、高い強度および硬さと靱性をバランスよく兼ね備えさせることができる。これにより、強度や硬さ、靱性等の機械的特性を制御しながら、局所的に焼入れが施された鋼部材を製造することができる。また、レーザー光を用いることで、焼入れに必要な温度までの加熱を短時間で行うことができ、焼入れを短時間で完了することができる。
ここで、炭素鋼材料の相対移動の方向と交差する方向に沿った水冷部の幅が、レーザー加熱部の幅よりも広い場合には、レーザー光の照射によって熱影響を受けた部位を、広範囲に冷却することができる。
また、炭素鋼材料の相対移動の方向に沿ったレーザー加熱部と水冷部との間の距離が、炭素鋼材料の相対移動の方向に沿ったレーザー加熱部の長さ以下である場合には、レーザー照射によって加熱された部位を迅速に冷却できるので、焼入れ組織の粗大化を抑制して、炭素鋼の靱性を高く維持することができる。また、周辺の部位への熱の拡散を小さく抑えることができる。
そして、炭素鋼材料が、レーザー加熱部によってレーザー光の照射を受ける前に、予熱部おいて、レーザー加熱部よりもエネルギー密度が低いレーザー光の照射を受ける場合には、予熱部において、ある程度まで炭素鋼を加熱してから、レーザー加熱部でさらに加熱することで、焼入れを高い効率で行うことができる。
本発明の一実施形態にかかる鋼部材の製造方法を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。 上記製造方法によって部分焼入れを施した乗物用シートのサイドフレームの一例を示す斜視図である。 上記製造方法によって部分焼入れを施した乗物用シートのスライドレールの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はA−A断面図である。 引張強度および伸びの評価に使用した試験片の形状を示す平面図である。 部分焼入れを施した炭素鋼材料の表面のSEM像であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は比較例1のものである。
以下、本発明の一実施形態にかかる鋼部材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
<部分焼入れの方法>
本製造方法は、炭素鋼材料の一部に部分焼入れを施し、鋼部材を製造するものである。図1に、この部分焼入れの方法を模式的に示す。
図1(a)に示すように、被加工物である炭素鋼材料10が、加工進行方向Mに沿って移動されながら、部分焼入れを受ける。部分焼入れは、レーザー光1と、冷却水2とを用いて行われる。レーザー光1と冷却水2は、炭素鋼材料10の加工進行方向Mに沿って、並べて配置されている。加工進行方向Mに対して前方にレーザー光1が配置され、後方に冷却水2が配置されている。つまり、加工進行方向Mに沿って移動する炭素鋼材料10は、レーザー光1の照射を受けた後に、冷却水2と接触する。なお、以降においても、前後の方向は、加工進行方向Mに対する前後方向として規定する。
レーザー光1が炭素鋼材料10の表面を照射する領域であるレーザー照射部3の幅方向(加工進行方向Mに略直角に交差する方向)中央の位置と、冷却水2が炭素鋼材料10の表面に接触する領域である水冷部4の幅方向中央の位置が揃えられている。そして、レーザー照射部3の後端部と水冷部4の前端部は、所定の距離dだけ離れた位置に配置されている。
レーザー照射部3は、後方に配置されたレーザー加熱部3Aと、前方に配置された予熱部3Bよりなる。レーザー加熱部3Aは、予熱部3Bに比べて高いエネルギー密度を有し、また大きな面積を占めている。レーザー加熱部3Aは、焼入れ効果を得るために、照射された炭素鋼材料10の部位を十分にオーステナイト状態とできるだけのエネルギー密度を有する。具体的には、短時間で炭素鋼材料10を910℃程度まで加熱できることが好ましく、例えば、1775W/cm以上のエネルギー密度を有していることが好ましい。また、例えばレーザー加熱部3Aの幅a1が13mm、加工進行方向Mに沿った長さb1が10mmの場合に、レーザー加熱部3Aの出力は3〜4kWであることが好ましい。レーザー加熱部3Aの長さb1は、炭素鋼材料10の一部位がレーザー加熱部3Aを通過する間に十分な焼入れ効果を得られる程度に長いものであることが好ましく、レーザー加熱部3Aのエネルギー密度にも依存するが、上記のようなエネルギー密度を有する場合には、長さb1が10mm以上であることが好ましい。
レーザー加熱部3Aを形成するレーザー光源の種類は特に限定されるものではないが、上記のように高い出力を得られるレーザーとして、半導体レーザーを用いることが好適である。また、レーザー光源から発せられたレーザー光1を所定の大きさと形状を有するレーザー加熱部3Aとして炭素鋼材料10の表面に導くには、複数の光学レンズ等が複合されてなるレーザー加工ヘッドを用いることが好ましい。
予熱部3Bは、必ずしも設けられなければならないものではないが、レーザー加熱部3Aによって焼入れ効果が得られるような高温まで炭素鋼材料10の部位を加熱する前に、ある程度の高温にまでその部位を予め加熱しておく役割を果たす。このように、予熱部3Bで予熱を行ってから、レーザー加熱部3Aにおいて本加熱を行うことで、室温から本加熱を行う場合よりも、高い加熱効果を得ることができ、炭素鋼材料10に対する焼入れ効果を高めることができる。予熱部3Bのエネルギー密度はレーザー加熱部3Aのエネルギー密度の60〜70%であることが好ましい。また、例えば予熱部3Bの幅a2が10mm、長さb2が5mmの場合に、予熱部3Bの出力は500W程度であることが好ましい。予熱部3Bの長さb2は、十分な予熱効果を得られる程度に長いものであることが好ましく、予熱部3Bのエネルギー密度が上記のような範囲にあり、レーザー加熱部3Aの長さb1が10mm以上である場合には、5mm以上であることが好ましい。予熱の効率を高めるために、予熱部3Bとレーザー加熱部3Aは接していることが好ましいが、予熱部3Bで与えられた熱の本加熱前における放熱が問題にならない程度であれば、両者の間に間隔が設けられてもかまわない。
予熱部3Bは、レーザー加熱部3Aと同種のレーザー光源を用いて形成されても、異種の光源を用いて形成されてもよい。簡便性の観点から、予熱部3Bとレーザー加熱部3Aを同種のレーザー光源から形成することが好ましく、さらには、単一のレーザー光源を用いて、単一のビームスポット内にエネルギー密度に分布を形成することで、予熱部3Bおよびレーザー加熱部3Aとすることが好ましい。このようなエネルギー密度の分布は、上記のようなレーザー加工ヘッドを用いれば、簡単に形成することができる。
水冷部4は、レーザー加熱部3Aにおいて加熱された炭素鋼材料10に水を接触させることで冷却し、炭素鋼材料10にマルテンサイト状態を形成する。水冷部4へ水の供給を行う手段は、レーザー照射部3での加熱を妨げず、かつ部分焼入れを行う部位以外の炭素鋼材料10の部位への水の付着が問題にならない程度に、冷却水2を局所的に炭素鋼材料10に接触させられれば、どのようなものであっても構わない。例えばノズルを用いる構成を例示することができる。冷却水2の温度は25〜30℃であることが好ましい。また、水冷部4の幅a3は、レーザー加熱部3Aの幅a1よりも広いことが好ましい。レーザーを用いることで、局所的に加熱を行うことができるとはいえ、レーザー照射部3よりも広い範囲が加熱の影響を受ける可能性があり、レーザー照射部3よりも広い幅領域にわたって水冷部4で冷却することで、レーザー照射部3およびその周辺領域への熱影響を高確度に解消することができる。好ましくは、水冷部4の幅a3は、レーザー加熱部3Aの幅a1の1.5〜2倍程度であることが好ましい。
さらに、レーザー加熱部3Aによって加熱された炭素鋼材料10の部位を水冷部4で迅速に冷却することで、炭素鋼材料10の金属組織を微細に形成し、炭素鋼材料10の靱性(伸び)を高く維持することができる。この意味で、水冷部4とレーザー加熱部3Aの間の距離dは短い方が好ましく、目安としては、レーザー加熱部3Aの長さb1以下であることが好ましい。水冷部4とレーザー加熱部3Aの間の距離dを短くすることで、部分焼入れを行う部位の周辺への熱の拡散による熱影響を低く抑えることができるという効果もある。
このようなレーザー照射部3と水冷部4を用い、炭素鋼材料10を加工進行方向Mに移動させながらレーザー照射と水冷を連続的に行うことで、レーザー照射と水冷を受けた部分において、炭素鋼材料10が焼入れを受ける。図1において、焼入れを行いたい被焼入れ部5全体が、レーザー照射部3によるレーザー照射と水冷部4における水冷とを受けるように炭素鋼材料10を移動させれば、炭素鋼材料10全体のうち、この被焼入れ部5に、選択的に焼入れを施すことができる。
このように、焼入れを受けた部分において、焼入れを受ける前よりも強度および硬さが上昇される。炭素鋼材料10の一部にのみ、このような焼入れを施すことで、その部分だけ、強度および硬さが向上された鋼部材を得ることができる。さらに、レーザー照射による加熱を受けた部位が、加熱された直後に水冷を受けることで、加熱による金属組織の粗大化が抑制され、それにより、炭素鋼材料10の靱性(伸び)が高い値に維持される。
特許文献1に示されるように、ある程度空間を規定した部分焼入れは、高周波誘導加熱によっても行うことができる。しかし、高周波誘導加熱は、内部加熱を原理としているため、加熱される部位を厳密に制御することは困難である。一方、レーザー加熱を利用する場合には、レーザー光のエネルギーを被加熱部材に与えて加熱を行う外部加熱であるうえ、光学レンズ等を使用することでビームスポットを小さく絞り、さらにはビーム形状を所望の形状に設計することが容易であるので、加熱を行う空間を微細に制御しながら、部分焼入れを行うことができる。また、レーザー光の出力強度や照射時間を制御することで、焼入れの程度も容易に制御することができる。これらにより、焼入れを施す空間を精度よく制限し、それ以外の部位への熱影響の伝播を最小限に抑えるとともに、焼入れを行った部位の硬さ、靱性等の特性をよく制御することが可能となっている。
また、レーザー加熱においては、外部加熱を原理とすることに加え、大強度のレーザー光源が利用可能であることにより、必要な温度までの加熱に要する時間を短くすることができ、被加工部材である炭素鋼材料10を高速で移動させながら、焼入れを施すことができる。昇温に要する時間は、炭素鋼材料10の形状やレーザー光1のエネルギー密度にもよるが、例えば、板厚が1.0〜1.2mmの炭素鋼板に対し、幅a1が13mm、長さb1が10mm、出力が3〜4kWのレーザー加熱部3Aを用いて、焼入れに必要な910℃まで加熱を行う場合、25mm/秒以上の速度で、炭素鋼材料10を加工進行方向Mに移動させることができる。
上記のように、レーザー光を用いて、よく制御された条件で部分焼入れを行うことで、ある部材のうち、特に高い強度や硬さが要求される部位に対して選択的に、焼入れによって強度や硬さを向上させることができる。例えば、ある連続した鋼部材のうち、一部の部位においては高い材料強度が要求されるが、その他の部位においてはそれほど高い材料強度が要求されないような場合に、鋼部材全体を、それほど材料強度が高くない材料で形成しておき、高い材料強度が要求される部位にのみレーザー光を用いて部分焼入れを行い、その部位のみ材料強度を向上させることができる。一般に、強度の高い炭素鋼材料ほど価格が上昇するので、鋼部材全体を安価な比較的低強度の材料で形成し、必要な部分のみレーザーを用いた焼入れによって材料強度を高めることで、要求される材料強度を充足しながら、材料コストを抑えることができる。
例えば、440MPaの引張強度を有する冷間圧延材であるSPC440材(硬さ:Hv150)、あるいは590MPaの引張強度を有する冷間圧延材であるSPC590材(硬さ:Hv200)に対して、上記のようにレーザーを用いて部分焼入れを施すことによって、一部の部位において、980MPaの引張強度を有するSPC980材(硬さ:Hv300)に相当する強度と硬さを得ることができる。
上記のようなレーザー光を用いた部分焼入れは、レーザー照射部3および水冷部4の形状および加工進行方向Mさえ適切に設定すれば、どのような炭素鋼材料に対しても適用することができる。図1のように、板状の炭素鋼材料に部分焼入れを施してから、所望の形状に炭素鋼材料を加工してもよいし、所望の形状に加工された炭素鋼材料に対して、部分焼入れを施してもよい。一般に、材料強度が低い状態の方が、プレス加工、曲げ加工等の機械加工を行いやすいので、加工を容易にする観点からは、加工後に部分焼入れを行う後者の方法の方が好適である。
なお、部分焼入れを行った部位に対して、靱性の向上等を目的として、適宜焼き戻しを行ってもよい。また、部分焼入れを行った部位と、周囲の部分焼入れを行っていない部位との間で特性を滑らかに変化させること等を目的として、部分焼入れ後に適宜熱処理を行ってもよい。
また、上記実施形態においては、レーザー照射部3と水冷部4を固定し、これらに対して炭素鋼材料10を移動させたが、炭素鋼材料10を固定し、レーザー照射部3と水冷部4を移動させるようにしてもよい。
<部分焼入れを行う鋼部材の例>
上記のように、ある鋼部材の一部のみ材料強度を高めたい場合に、種々の鋼部材に対して、上記実施形態にかかる部分焼入れを適用することができる。以下に、例として、乗物用シートを構成する部材の場合を挙げる。
(サイドフレーム)
図2に乗物用シートのサイドフレーム20を示す。サイドフレーム20は、シートの背もたれ部の幅方向両側に配置され、背もたれ部と着座部を結合する部材である。サイドフレーム20全体の中で、乗物の進行方向前方及び後方に配置される前後端縁部21,21にのみ、レーザー光を用いた部分焼入れが施されている。図2では、部分焼入れを施される箇所を、クロスハッチングで示している。
サイドフレーム20においては、前方衝突時や後方衝突時等に、全体の中で前後端縁部21,21に特に大きな荷重が印加され、前後端縁部21,21に応力が集中する。そこで、前後端縁部21,21に部分焼入れを施すことでこの部位の強度および硬さを向上させ、応力が集中しても材料の破壊を起こりにくくすることができる。上記のように、サイドフレーム20全体をSPC440材またはSPC590材を用いて構成し、前後端縁部21,21の強度と硬さをSPC980材に相当するレベルにまで向上させれば、前後端縁部21,21およびそれ以外の部位の両方において、乗物用シートとしての要求を満たす強度と硬さを達成することができる。
(スライドレール)
図3に、乗物用シートのスライドレール30を示す。スライドレール30は、長尺上のロアレール31とアッパーレール32よりなる。ロアレール31は、乗物の床面に固定され、アッパーレール32には、シート本体が固定される。アッパーレール32がロアレール31に対して長尺方向に摺動することで、シート本体が床面に対してスライド運動することができる。
ロアレール31は、断面略コの字形に形成され、側面を構成する立上面31a,31aに連続して、内側に曲げ返された内側曲げ返し部31b,31bを有する。アッパーレール32も、断面略コの字形に形成され、側面を構成する垂下面32a,32aに連続して、外側に曲げ返された外側曲げ返し部32b,32bを有する。アッパーレール32の外側曲げ返し部32b,32bがロアレール31の立上面31a,31aと内側曲げ返し部31b,31bの間に挿入されることにより、ロアレール31とアッパーレール32が係合している。ロアレール31の立上面31a,31aおよび内側曲げ返し部31b,31bの内側面と、アッパーレール32の外側曲げ返し部32b,32bの外側面とに挟まれた領域には、ボールベアリングを収容可能な上部摺動空間33a,33aと、下部摺動空間33b,33bが形成されている。上部摺動空間33a,33aおよび下部摺動空間33b,33bには、ロアレール31とアッパーレール32の間の摺動が滑らかに行われるように、ボールベアリング(不図示)が配置される。
ここで、ロアレール31およびアッパーレール32の上部摺動空間33a,33aおよび下部摺動空間33b,33bに面する部位、つまりロアレール31において立上面31a,31aと底面31cの間の部位の内側、および立上面31a,31aと内側曲げ返し部31b,31bの間の部分の内側、そしてアッパーレール32におけるそれらに対向する部位に、レーザー光を用いた部分焼入れが施されている。図3では、部分焼入れが施されている部位を、クロスハッチングで示している。なお、図3では、分かり易いように、部分焼入れが施される部位を盛り上げて示しているが、実際には、これらの部位は、周囲の部位と面一に連続している。
ロアレール31およびアッパーレール32のボールベアリングと接触する部位には、ボールベアリングからの圧痕が形成されやすい。しかし、上記のように、ボールベアリングと接触する上部摺動空間33a,33aおよび下部摺動空間33b,33bに面する部位に部分焼入れを施し、表面を硬くしておくことで、これらの部位に圧痕を形成されにくくし、滑らかな表面を維持することができる。これにより、ロアレール31とアッパーレール32の間の滑らかな摺動を、長期間に亘って維持することが可能となる。この場合にも、ロアレール31およびアッパーレール32全体をSPC440材またはSPC590材を用いて構成し、上部摺動空間33a,33aおよび下部摺動空間33b,33bに面する上記特定部位の硬さをSPC980材に相当するレベルにまで向上させれば、スライドレール全体として十分な材料強度を享受しながら、ボールベアリングとの接触部において、圧痕の形成防止に必要な硬さを得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
[試料片の作製]
(実施例)
Hv152の硬さを有するSPC440材(板厚:0.75mm)を20mm×150mmの長方形に切り出し、鋼板片を得た。出力が4kWの半導体レーザーのビームを19mm×5mmの長方形に成形し、レーザー加熱部を形成した。このレーザー加熱部と、水冷部(水温:25〜30℃、大きさ:30mm×2mm)を、所定の距離dだけ離して配置した。ここで、レーザー加熱部および水冷部の長辺を、鋼板片の移動方向に沿うように配置した。そして、上記鋼板片を25mm/秒の速度で移動させながら、レーザー加熱部と水冷部をこの順に通過させた。レーザー照射と水冷は、鋼板片上の幅19mm×長さ120mmの範囲にわたって行った。レーザー加熱部と水冷部の間の距離dは、実施例1で10mm、実施例2で20mmとした。
(比較例)
実施例に用いたのと同様の鋼板片に対し、実施例と同じ条件で、レーザー加熱部によるレーザー照射を行い、比較例1にかかる試料片を得た。ただし、実施例の場合とは異なり、水冷部による水冷を行わず、室温における空冷のみとした。
[試験方法]
(硬さの評価)
実施例および比較例にかかる各試料片のレーザー照射を行った部位に対して、試料片の板幅方向(短辺方向)の硬さを測定した。測定は、マイクロビッカース硬さ試験機を用いて行った。
(引張強度の評価)
実施例および比較例にかかる各試料片を用い、レーザー照射を行った部位を中央に配置して、図4のような試験片を作成した。そして、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、引張強度を測定した。
(伸びの評価)
実施例および比較例にかかる各試料片を用い、上記引張強度試験と同様の試験片を作成し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、破断伸びを計測した。
(金属組織の評価)
実施例および比較例にかかる各試料片について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、表面の観察を行った。
[結果と考察]
実施例および比較例にかかる各試料片について得られた、硬さ、引張強度、伸びの測定結果を表1に示す。また、得られたSEM像を図5に示す。
レーザー照射を行う前の鋼板片はHv152の硬さ、440MPa(公称値)の引張強度を有していたので、比較例および実施例のいずれの場合にも、硬さおよび引張強度が、レーザー照射を経ることで向上している。これは、レーザー照射によって鋼が焼入れを受けたためである。
しかし、比較例1においては、硬さおよび引張強度の向上がわずかであるのに対し、実施例1、2においては、これらの値が大きく向上している。このことは、レーザー照射後に水冷を行っていない比較例1のSEM像(図5(c))と比較して、水冷を行った実施例1、2のSEM像(図5(a)、(b))において、緻密で微細な組織が観察されていることと対応していると考えられる。つまり、レーザー照射によって加熱を受けた鋼を急冷することで、微小なマルテンサイト組織が形成され、鋼の硬さと強度が著しく向上されていると解釈される。
実施例1と実施例2を比較すると、レーザー加熱部と水冷部の間の距離dが長い実施例2の方が、硬さと引張強度において一層優れる反面、伸びにおいて劣っている。また、SEM像を比較すると、図5(a)の実施例1の場合の方が、図5(b)の実施例2の場合よりも、微細な組織が形成されている。このことは、レーザー加熱部と水冷部の間の距離が離れている場合には、レーザー照射を受けた部分が長い時間高温の状態に保たれ、焼入れが進行することで、硬さと引張強度の向上が進む一方で、金属組織が粗大化し、これによって伸びが低下することを示している。
乗物用部品等の種々の鋼部材を製造するに際し、硬さおよび引張強度を向上させることとともに、伸びを高い水準に維持することも要求される。つまり、硬さおよび引張強度と伸びがバランスよく両立されることが求められる。この点において、実施例2の試料片よりも、実施例1の試料片の方が好適であり、目安として、レーザー加熱部と水冷部の間の距離がレーザー加熱部の長さ(この場合は19mm)以下であることが好ましい。なお、乗物用シートにおいて、サイドフレームの前後端縁部のように荷重が集中的に印加される部位や、スライドレールのボールベアリングが当接する部位のように摺動が起こる部位においては、SPC980材に相当する硬さおよび引張強度が得られることが求められ、伸びもSPC980材に匹敵することが望ましい。SPC980材は、おおむねHv200の硬さと12〜13%の伸びを有している。上記実施例1にかかる試料片は、このSPC980材よりも高い引張強度と硬さを有し、しかも近い値の伸びを達成しており、硬さおよび引張強度と伸びとの間に良好なバランスが得られていると言える。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 レーザー光
2 水冷部
3 レーザー照射部
3A レーザー加熱部
3B 予熱部
10 炭素鋼材料
20 サイドフレーム
21 前後端縁部
30 スライドレール
31 ロアレール
32 アッパーレール
33a 上部摺動空間
33b 下部摺動空間
M 加工進行方向

Claims (3)

  1. 炭素鋼材料にレーザー光を照射して加熱するレーザー加熱部と前記炭素鋼材料に水を接触させて冷却する水冷部とを並べて配置し、前記炭素鋼材料を前記レーザー加熱部および水冷部に対して相対的に移動させながら、前記炭素鋼材料の一部に、前記レーザー加熱部でレーザー光を照射した後、前記水冷部で水を接触させ
    前記炭素鋼材料が前記レーザー加熱部によってレーザー光の照射を受ける前に、予熱部おいて、前記レーザー加熱部よりもエネルギー密度が低いレーザー光を前記炭素鋼材料に照射することを特徴とする鋼部材の製造方法。
  2. 前記炭素鋼材料の相対移動の方向と交差する方向に沿った前記水冷部の幅は、前記レーザー加熱部の幅よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の鋼部材の製造方法。
  3. 前記炭素鋼材料の相対移動の方向に沿った前記レーザー加熱部と前記水冷部との間の距離は、前記炭素鋼材料の相対移動の方向に沿った前記レーザー加熱部の長さ以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼部材の製造方法。
JP2013154421A 2013-07-25 2013-07-25 鋼部材の製造方法 Expired - Fee Related JP6131755B2 (ja)

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