JP3817485B2 - 饋電電圧補償システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電気車に電力を供給する饋電回路の饋電電圧の変動を抑制する饋電電圧補償システムに係り、特に電気車の回生電力の授受を効率的に行うものである。
【0002】
【従来の技術】
現行の標準的な直流饋電回路では、饋電電圧の標準値をDC1500Vとし、列車の走行特性を考慮してその電圧変動範囲はDC1650V(+10%)からDC1125V(−25%)に収まるように計画されている。しかし、列車の運転状況(力行、惰行、制動状況)、列車種別(発電制動式、回生制動式)、列車編成長や複数列車の同一区間進入等により饋電電圧は大幅に変動する。
通常は、饋電電圧の低下対策が必要で、饋電変電所端でDC1650Vぐらいにして電圧降下分を考慮して高めに饋電している。饋電長が長い場合は、饋電区分所を設け隣の饋電変電所から並列給電して電圧降下対策をしている。
【0003】
図4は、例えば、特開平11−334420号公報に記載された直流饋電系統図で、饋電電圧対策として電気二重層キャパシタCによる蓄電装置を饋電電圧補償装置として饋電区分所に設置したものである。そして、今、この両端の饋電変電所による並列給電を重ねた形で簡略化した饋電系統の等価回路を図5に示す。
【0004】
図において、Esは饋電変電所電圧(1650V)を、Rsはこの内部抵抗(0.1Ω)を、RL1とRL2は饋電線の等価抵抗(0.04Ω/Km)を、Rtは列車を負荷とみた場合の等価抵抗(0.625Ω)を、Ecは饋電電圧補償装置の電圧(1650V)を、そしてRcはこの内部抵抗(0.1Ω)をそれぞれ示している。饋電線長を5Kmとし列車がその中間に在線していると仮定すれば、饋電変電所端、列車パンタ点及び饋電電圧補償装置端のそれぞれの電圧は図6に示した特性が得られる。
【0005】
ここでは、列車は負荷として作用している、即ち、力行中としているので、饋電変電所と饋電電圧補償装置とから列車に供給される電流によって列車の電圧が決まる。饋電電圧補償装置は予め饋電変電所からの電力により充電されているので、当初は、饋電電圧補償装置から大きな電流が列車に供給されるが、饋電電圧補償装置のキャパシタの放電に伴い、饋電電圧補償装置から供給される電流が低減し、その結果、列車の電圧も次第に低下していく。
【0006】
上述した定数における具体的な計算例では、列車の電圧は、当初、饋電電圧補償装置が存在しない場合に比較してDC170V程度高く補償されているが、走行につれて饋電電圧補償装置が放電し、20秒経過すると、補償電圧はDC110V程度に減少する。
【0007】
ところで、以上は列車が力行している場合であるが、列車が抑速や停止のために回生制動を作用させた場合は、その負荷になる力行中の他の列車が在線していないと、饋電線の電圧は列車の電力回生により上昇する。
この場合、饋電電圧補償装置はその充電動作で回生電力を吸収して電圧上昇を抑制するが、その値は初期の充電電圧(例えば、饋電変電所の送り出し電圧であるDC1650V)よりも高くなり、キャパシタの耐圧が脅かされることになる。
【0008】
この電圧を上昇させる要因の1つは、一般に列車運転では力行による電力消費の時間帯より惰行や制動を作用させる時間帯が長く、これが充電時間となりこの間に饋電電圧補償装置が変電所や列車(回生電力)により蓄電されること。更に別の要因は、列車の走行エネルギー損失が小さく、饋電変電所と饋電電圧補償装置の両方からの給電により力行で貯えられた運動エネルギーが、制動時にそのまま電力に変換されて饋電電圧補償装置に充電回生されるからである。
【0009】
図7は、例えば、特開2001−206110号公報に記載された饋電電圧補償装置で、キャパシタを上述した過電圧から保護するため、饋電電圧補償装置の電気二重層キャパシタCと並列に過電圧保護回路を設けたものである。この過電圧保護回路において、OVはキャパシタCの電圧を検出する電圧検出手段としての過電圧検知器、SWは過電圧検知器OVで検出する電圧が饋電変電所の電圧(DC1650V)より高い所定の上限値(ここでは、例えば、DC1750Vに設定する)以上になったとき閉路されるスイッチ、RLはスイッチSWと直列に接続された負荷抵抗である。
【0010】
この場合、キャパシタCの電圧が上記上限値に達し、負荷抵抗RLを投入して回生電力をバイパスして電圧上昇を防止する。
図8は、図7に示す饋電系統で、列車を饋電変電所から饋電電圧補償装置側に走行させた場合の電圧補償特性を示す図である。図において、(A)は列車の速度と電動機の電流を示したもので、列車は起動、力行、惰行、抑速制動、惰行、再力行、惰行そして制動停止と代表的なランカーブを示している。電動機電流はプラス側は消費電流を、そして、マイナス側は回生電流を示している。
(B)は饋電変電所端電圧、列車パンタ点電圧および饋電電圧補償装置端の電圧をそれぞれ示している。(C)は同様の個所における電流特性を示している。
【0011】
図から判るように、抑速回生動作中の時間t1および制動回生動作中の時間t2において、饋電電圧補償装置の電圧が上限値DC1750Vに達し、スイッチSWが閉路して負荷抵抗RLによるバイパス動作が働いて電圧が低下している。これに伴い、列車や饋電変電所の電圧も過電圧保護回路のない場合に比較して低い値になっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の饋電電圧補償装置においては、饋電変電所の電圧より高い所定の上限値で負荷抵抗RLを投入する過電圧保護回路を備えたので、饋電系統における列車の負荷状況にかかわらず、饋電電圧補償装置に使用するキャパシタに必要な絶縁レベルが定まり合理的な経済設計が可能になるとともに、予測を越える過電圧の印加が防止され信頼性の高い饋電電圧補償装置が実現する。
【0013】
しかるに、給電効率の面から見ると、従来の方式はキャパシタの過電圧を負荷抵抗に電流をバイパスさせることで抑制するものであるので、給電電力の一部がこの抵抗損失に消費されることになり、その分、給電効率の低下が免れない。
既述したように、饋電回路の負荷である列車運転では、力行による電力消費の時間帯より惰行や制動を作用させる時間帯が長く、即ち、キャパシタの充電時間が長くなり、また、饋電変電所の送り出し電圧が高めに設定されていることもあり、結果として、饋電電圧補償装置のキャパシタが過電圧となって過電圧保護回路が動作する機会が多く、上述した負荷抵抗にバイパスさせる電流による電力損失が無視できないことになる。
【0014】
この発明は以上のような従来の問題点を解消するためになされたもので、無駄な電力損失がない、給電効率の良好な饋電電圧補償システムを得ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る饋電電圧補償システムは、所定の電圧を発生する電圧源を有する饋電変電所、この饋電変電所と接続され電気車を負荷とする饋電線からなる饋電回路、およびこの饋電回路に上記負荷と並列に接続され、上記饋電変電所からの電源電力または制動時の上記電気車からの回生電力により充電され、力行時の上記電気車に放電電力を供給するキャパシタからなり、上記饋電変電所から所定距離離反した位置で上記饋電回路に接続された饋電区分所に設置された饋電電圧補償装置を備えた饋電電圧補償システムにおいて、
上記キャパシタの電圧を検出する電圧検出手段、および上記キャパシタの電圧が所定の設定値以上となったとき、饋電電圧の変動許容下限値以上の範囲で上記饋電変電所の電圧を下げ上記キャパシタの電圧が上記設定値以下となるよう上記饋電変電所の電圧を制御する饋電変電所電圧制御手段を備えたものである。
【0016】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムの饋電変電所電圧制御手段は、饋電変電所を構成する変圧器に設けたタップ位置を切り換えることにより電圧を制御するものである。
【0017】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムの饋電変電所電圧制御手段は、饋電変電所を構成する整流装置に設けたスイッチング素子へのゲート信号により電圧を制御するものである。
【0018】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムは、所定の電圧を発生する電圧源を有する饋電変電所、この饋電変電所と接続され電気車を負荷とする饋電線からなる饋電回路、およびこの饋電回路に上記負荷と並列に接続され、上記饋電変電所からの電源電力または制動時の上記電気車からの回生電力により充電され、力行時の上記電気車に放電電力を供給するキャパシタからなる饋電電圧補償装置を備えた饋電電圧補償システムにおいて、
上記電気車が所定のダイヤで運行するときの上記饋電回路から見た負荷パターンが、所定の力行パターンと回生パターンとを所定の時間間隔で繰り返すものとみなし、
上記キャパシタの許容上限電圧をE1、饋電回路の変動許容下限電圧をE2、上記キャパシタが上記所定の回生パターンに基づく回生電力を充電したときの電圧上昇分をΔE1、上記キャパシタが上記所定の力行パターンに基づく力行電力を放電したときの電圧下降分をΔE2としたとき、
上記饋電変電所の電圧Esを、上記負荷パターンに基づき下式の範囲に設定するものである。
E1−ΔE1>Es>E2+ΔE2
【0019】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムは、キャパシタの電圧を検出する電圧検出手段、および上記キャパシタの電圧が許容上限値を越えたとき、上記キャパシタの電圧を上記許容上限値以下に制限する電圧制限手段を備えたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における饋電電圧補償システムの構成を示す図で、同図(A)はその機器構成図、同図(B)はその等価回路図である。図において、1および2は、饋電変電所3を構成する饋電変電所主機およびこの饋電変電所主機1を制御する主機制御装置である。4は饋電変電所3からの電力を列車5に給電する、饋電回路を構成する饋電線、6は、例えば、電気二重層キャパシタから構成される饋電電圧補償装置、7はこの饋電電圧補償装置6のキャパシタの電圧を検出する饋電電圧検出装置である。
この発明の特徴は、この饋電電圧検出装置7によるキャパシタ電圧検出値に基づき、饋電変電所3の送り出し電圧を変化させるための饋電電圧指令を主機制御装置2に送出するようにし、主機制御装置2は饋電変電所主機1から電圧フィードバック信号を入力しこれが饋電電圧検出装置7からの饋電電圧指令信号に一致するよう饋電変電所主機1の出力電圧を制御するようにした点にある。
【0021】
即ち、従来、饋電変電所3の出力電圧は、饋電線4での電圧降下を考慮して饋電線の標準電圧(1500V)より高い1650Vに設定固定されていたのに対し、本願発明では、饋電電圧補償装置6のキャパシタの電圧が所定の設定値以上となったとき、これを饋電電圧検出装置7が検出し饋電電圧指令を饋電変電所3に送出してその送り出し電圧を饋電電圧の変動許容下限値以上の範囲で下げることにより、饋電変電所3から饋電電圧補償装置6への必要以上の充電動作を回避し、キャパシタの過電圧を未然に防止して給電効率の向上を実現するわけである。
【0022】
図2は、饋電変電所3の電圧制御方式を示すもので、同図(A)は、饋電変電所主機1を構成する変圧器をタップ切り換え式のものとし、饋電電圧指令に基づきそのタップを切り換えて出力電圧を制御する。
交流電力を受電して変圧器により電圧調整し整流装置にて直流にした電力を平滑リアクトルと平滑コンデンサとで平滑直流電圧に変換し饋電線に給電する。
また、同図(B)は、整流装置の整流素子をゲート付のスイッチング素子で構成し、饋電電圧指令に基づきゲート信号を変化させることで出力電圧を制御する。素子にサイリスタを使う場合は、交流の位相角の制御により直流電圧を制御する。IGBTの場合は、変調周波数によりPWM制御され、直流電圧の平滑化が容易となる。
これ以外に、饋電変電所主機として、ダイオード整流器とサイリスタ整流装置とを組み合わせ(通常、両者を直列接続する)、電圧固定分をダイオード整流器で、調整分をサイリスタ整流装置で分担させる構成のものとしてもよい。
【0023】
図3は、図1に示す饋電系統で、列車を饋電変電所から饋電電圧補償装置側に走行させた場合の電圧補償特性を示す図である。図において、(A)は列車の速度と電動機の電流を示したもので、列車は起動、力行、惰行、抑速制動、惰行、再力行、惰行そして制動停止と代表的なランカーブを示している。電動機電流はプラス側は消費電流を、そして、マイナス側は回生電流を示している。
(B)は饋電変電所端電圧、列車パンタ点電圧および饋電電圧補償装置端の電圧をそれぞれ示している。(C)は同様の個所における電流特性を示している。
なお、饋電回路の各定数は、従来技術で説明した図8の場合と同一である。
【0024】
実施の形態1では、饋電電圧補償装置6のキャパシタの電圧が1650V(饋電電圧標準値1500V+10%)以上となると饋電変電所3の出力電圧を1200Vに下げるよう制御するものとしている。図3の場合、時間0で列車が力行に入る前に、先行列車の制動回生動作で補償装置の電圧が1650Vになり、饋電電圧指令に基づき変電所の出力電圧が1200Vに下げられている。
時間0では、饋電線、列車は、補償装置(キャパシタ)により1650Vの電圧が印加されている。また、変電所では1650Vと1200Vとの電圧差をその整流器がブロックする状態となっている。
ここで、列車が力行動作を開始し電動機電流が流れると、列車へはもっぱら補償装置から電流が供給され(キャパシタが放電し)、補償装置の電圧が下降していく。列車、変電所は、饋電線での電圧降下分が加わり更に電圧が下降する。変電所では、整流器のブロック電圧が減少していくのみで電流は流れない。
【0025】
時間t1で、変電所への印加電圧が出力電圧1200Vまで下降すると、整流器が順方向動作で電流を出力し、以後、列車へは補償装置と変電所の両者から給電される。
時間t2で列車が惰行動作に移行すると、補償装置では、そのキャパシタの内部抵抗Rcでの電圧降下がなくなりその分電圧が上昇シフトする。
時間t3で列車が抑速動作に移行すると、その回生エネルギーによりキャパシタが充電され補償装置の電圧が上昇する。抑速動作が終了する時間t4では約1500Vに達している。列車、変電所の電圧は、饋電線での電圧降下分が加わり約1600Vとなっている。
時間t5で列車が再び力行動作に入ると、列車、変電所の電圧は急降下し、列車へは補償装置と変電所の両者から給電される状態となる。
今回の計算例では、力行動作が終わる時間t6での変電所電圧が、約1160Vとなっており、許容下限電圧1125V(饋電電圧標準値1500V−25%)を確保できる値となっている。
その後、列車は時間t7で抑速制動動作に移行し、キャパシタは再び充電され補償装置の電圧は、時間t8の時点で約1530Vに達している。
【0026】
以上のように、この発明の実施の形態1の饋電電圧補償システムにおいては、負荷抵抗でバイパスするという、電力損失を伴うキャパシタ過電圧保護手段を適用することなく、饋電変電所の電圧を制御することでキャパシタの電圧をその許容範囲内に収めることができ、給電効率が向上する。
【0027】
なお、図3の例では、補償装置の電圧が1650V以上になると変電所の出力電圧を1650Vから1200Vに下げるようにしたが、この電圧制御の具体的な設定内容は、適用する饋電系統の饋電回路の特性、列車容量、列車密度等を考慮して決定することになる。
また、図3の説明では触れていないが、補償装置の電圧が、例えば、1200V以下になると、一旦1200Vに下げた変電所の電圧を再び1650Vに復帰させるようにしてもよい。この場合、より大きな負荷変動に対しても、各部の電圧を適正な範囲に収めることができる利点がある。
更に、上記した例では、変電所の電圧を、1650Vから1200Vに1ステップで下げるようにしたが、2ないし3ステップで順次下げるようにしてもよい。また、補償装置の電圧検出値に応じて変電所の電圧を制御するようにしてもよい。
【0028】
更にまた、補償装置と変電所の両者の電圧を検出し、補償装置の電圧はキャパシタの耐圧許容上限値以下となるように、変電所の電圧は列車への饋電許容下限値以上となるよう変電所の電圧を制御するようにしてもよい。
【0029】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、饋電電圧補償装置6に饋電電圧検出装置7を設け、キャパシタの電圧が所定の設定値以上となったとき饋電変電所3の電圧を下げるようにしてキャパシタの過電圧を未然に防止するようにした。
しかるに、饋電回路から見た負荷パターンが、所定の力行パターンと回生パターンとを所定の時間間隔で繰り返すものとみなせる程度に、列車の運行ダイヤが想定できる場合は、饋電変電所3の電圧を下げてキャパシタの過電圧を未然に防止するという点では先の形態1と同様の考え方であるが、キャパシタの電圧を現実に検出する手段を特に設けることなく、予め想定した負荷パターンに基づき饋電変電所3の電圧を設定することが可能となる。
この実施の形態2では、予め想定した負荷パターンに基づき饋電変電所3の電圧を設定する方式の饋電電圧補償システムについて説明する。
【0030】
想定する各条件を以下のように設定する。
E1:饋電変電所のキャパシタの許容上限電圧(例えば、饋電電圧上限値1650+100=1750Vに設定する。)
E2:饋電回路の許容下限電圧(例えば、饋電電圧標準値1500V−25%=1125Vに設定する。)
Es:設定すべき饋電変電所の電圧
Eg1=Σ{I(t)・V(t)}:列車の加速するためのエネルギー
但し、I(t)は電流、V(t)は電圧を示す。
Eg2=Σ{Fr(t)・S(t)}:列車の走行時の損失エネルギー
Fr(t)=K1・W+K2・v(t)・W+K3・v(t):列車の走行抵抗
但し、S(t)は走行距離、K1、K2、K3は定数、Wは列車重量、v(t)は列車走行速度を示す。
【0031】
ここで想定する負荷パターンにおいては、饋電電圧補償装置のキャパシタの電圧は、定常時は饋電変電所の電圧Esと一致し、この状態から列車の回生パターンに基づく回生電力を充電して電圧がΔE1上昇し、また、定常状態から列車の力行パターンに基づく力行電力を放電して電圧がΔE2下降すると考える。
電圧上昇分ΔE1と回生エネルギーEg3との間には次式が成立する。
Figure 0003817485
但し、Cはキャパシタの静電容量を示す。
(1)式より、ΔE1はEsの関数となるが、このΔE1はキャパシタの上限電圧を制限するために考慮するものであるので、上式で、Es+ΔE1=E1と置いて下式により求めるのが適当である。
Figure 0003817485
【0032】
次に、電圧下降分ΔE2と力行エネルギーEg1との間には次式が成立する。Eg1=0.5・C・(Es−(Es−ΔE2)) (3)式(3)式より、ΔE2はEsの関数となるが、このΔE2は饋電電圧の下限電圧を確保するために考慮するものであるので、上式で、Es−ΔE2=E2と置いて下式により求めるのが適当である。
Figure 0003817485
【0033】
(2)式および(4)式から、饋電変電所の電圧Esは下式の範囲で設定すれば、キャパシタの電圧を許容値以下に収めることができ、同時に、饋電電圧もその下限値以上に保つことができる。
E1−ΔE1>Es>E2+ΔE2 (5)式
また、以下のようにも表現できる。
√{E1−2Eg3/C}>Es>√{E2+2Eg1/C} (6)式
【0034】
実施の形態3.
先の実施の形態2においては、予め列車の負荷パターンを予想し、その条件を前提に、列車や饋電回路の特性に基づき饋電変電所の電圧Esを(5)(6)式の範囲に設定することで、キャパシタの過電圧未然防止と、饋電電圧の下限電圧確保を実現した。
しかるに、現実の饋電系統に適用する場合、種々の要因により予想した負荷パターンからのずれが避けられない。従って、実際に設定する電圧Esは、これらのずれも考慮に入れ上式を満足する範囲内で適当な値に決める必要がある。
【0035】
この場合、電圧Esを上式の範囲内の比較的高い領域の値に設定すると、現実の負荷パターンが予想値からずれても饋電電圧の下限値確保の達成度は高まるが、キャパシタの過電圧未然防止の要請の実現度は低下することになる。
反対に、電圧Esを上式の範囲内の比較的低い領域の値に設定すると、現実の負荷パターンが予想値からずれてもキャパシタの過電圧未然防止の達成度は高まるが、饋電電圧の下限値確保の要請の実現度は低下する。
【0036】
実施の形態3は、以上の点を考慮したもので、図示は省略するが、従来の図7で説明した、過電圧保護装置を饋電電圧検出装置に設け、電圧Esとしては、例えば、上式の範囲内の比較的高い領域の値に設定するものである。
この場合、電圧Esは上式の範囲内に設定しているので、実際の負荷パターンが予想値に近いときは、実施の形態2で説明したとおり、キャパシタの過電圧未然防止と饋電電圧下限値確保が達成されるのは勿論であるが、実際の負荷パターンが予想値からずれても、電圧Esを上記範囲内の比較的高い領域の値に設定することで饋電電圧下限値確保が実現できないという確率が低くなり、また、負荷パターンのずれでキャパシタへの電圧が一時高電圧となる可能性が生じても過電圧保護装置が動作することでキャパシタへの過電圧印加は確実に阻止され、キャパシタの信頼性が確保される。
【0037】
以上のように、この実施の形態3の饋電電圧補償システムにおいては、過電圧保護装置を設けているので、当然ながら、キャパシタの過電圧保護は確実になされ、また、過電圧保護装置は設けているが、その動作頻度は従来の場合と比較して低いので、その負荷抵抗で消費される電力損失は軽微なレベルに留まるという利点がある。
【0038】
なお、上記各実施の形態では、直流饋電回路に適用した場合について説明したが、交流饋電回路にも適用することができる。例えば、DC/ACコンバータを用い、このDC/ACコンバータを介して直流キャパシタを交流饋電回路に接続するようにすれば、上記した形態例と同等の効果を奏することは言うまでもない。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る饋電電圧補償システムは、所定の電圧を発生する電圧源を有する饋電変電所、この饋電変電所と接続され電気車を負荷とする饋電線からなる饋電回路、およびこの饋電回路に上記負荷と並列に接続され、上記饋電変電所からの電源電力または制動時の上記電気車からの回生電力により充電され、力行時の上記電気車に放電電力を供給するキャパシタからなり、上記饋電変電所から所定距離離反した位置で上記饋電回路に接続された饋電区分所に設置された饋電電圧補償装置を備えた饋電電圧補償システムにおいて、
上記キャパシタの電圧を検出する電圧検出手段、および上記キャパシタの電圧が所定の設定値以上となったとき、饋電電圧の変動許容下限値以上の範囲で上記饋電変電所の電圧を下げ上記キャパシタの電圧が上記設定値以下となるよう上記饋電変電所の電圧を制御する饋電変電所電圧制御手段を備えたので、無駄な電力損失を伴うことなくキャパシタへの過電圧印加を未然に防止することができ、給電効率の高い饋電電圧補償システムが実現する。
【0040】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムの饋電変電所電圧制御手段は、饋電変電所を構成する変圧器に設けたタップ位置を切り換えることにより電圧を制御するものであるので、電圧制御が具体的円滑になされる。
【0041】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムの饋電変電所電圧制御手段は、饋電変電所を構成する整流装置に設けたスイッチング素子へのゲート信号により電圧を制御するものであるので、電圧制御が具体的速やかになされる。
【0042】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムは、所定の電圧を発生する電圧源を有する饋電変電所、この饋電変電所と接続され電気車を負荷とする饋電線からなる饋電回路、およびこの饋電回路に上記負荷と並列に接続され、上記饋電変電所からの電源電力または制動時の上記電気車からの回生電力により充電され、力行時の上記電気車に放電電力を供給するキャパシタからなる饋電電圧補償装置を備えた饋電電圧補償システムにおいて、
上記電気車が所定のダイヤで運行するときの上記饋電回路から見た負荷パターンが、所定の力行パターンと回生パターンとを所定の時間間隔で繰り返すものとみなし、
上記キャパシタの許容上限電圧をE1、饋電回路の変動許容下限電圧をE2、上記キャパシタが上記所定の回生パターンに基づく回生電力を充電したときの電圧上昇分をΔE1、上記キャパシタが上記所定の力行パターンに基づく力行電力を放電したときの電圧下降分をΔE2としたとき、
上記饋電変電所の電圧Esを、上記負荷パターンに基づき下式の範囲に設定するものであるので、特別の電圧検出手段、電圧制御手段を要することなく、簡便安価に給電効率の向上が実現する。
E1−ΔE1>Es>E2+ΔE2
【0043】
また、この発明に係る饋電電圧補償システムは、キャパシタの電圧を検出する電圧検出手段、および上記キャパシタの電圧が許容上限値を越えたとき、上記キャパシタの電圧を上記許容上限値以下に制限する電圧制限手段を備えたので、給電効率を大きく低下させることなく、キャパシタの過電圧保護が確実になされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1における饋電電圧補償システムの構成を示す図である。
【図2】 饋電変電所電圧制御手段の具体例を示す図である。
【図3】 図1の饋電電圧補償システムを適用した場合における、列車走行時の電圧補償特性を示す図である。
【図4】 従来の饋電電圧補償システムを適用した直流饋電系統を示す図である。
【図5】 図4を簡略化した等価回路を示す図である。
【図6】 図5の回路で列車の負荷電流が流れたときの各部の電圧特性を示す図である。
【図7】 キャパシタの過電圧保護を実現する、従来の饋電電圧補償システムを示す図である。
【図8】 図7の饋電電圧補償システムを適用した場合における、列車走行時の電圧補償特性を示す図である。
【符号の説明】
1 饋電変電所主機、2 主機制御装置、3 饋電変電所、4 饋電線、
5 列車、6 饋電電圧補償装置、7 饋電電圧検出装置。

Claims (5)

  1. 所定の電圧を発生する電圧源を有する饋電変電所、この饋電変電所と接続され電気車を負荷とする饋電線からなる饋電回路、およびこの饋電回路に上記負荷と並列に接続され、上記饋電変電所からの電源電力または制動時の上記電気車からの回生電力により充電され、力行時の上記電気車に放電電力を供給するキャパシタからなり、上記饋電変電所から所定距離離反した位置で上記饋電回路に接続された饋電区分所に設置された饋電電圧補償装置を備えた饋電電圧補償システムにおいて、
    上記キャパシタの電圧を検出する電圧検出手段、および上記キャパシタの電圧が所定の設定値以上となったとき、饋電電圧の変動許容下限値以上の範囲で上記饋電変電所の電圧を下げ上記キャパシタの電圧が上記設定値以下となるよう上記饋電変電所の電圧を制御する饋電変電所電圧制御手段を備えたことを特徴とする饋電電圧補償システム。
  2. 饋電変電所電圧制御手段は、饋電変電所を構成する変圧器に設けたタップ位置を切り換えることにより電圧を制御することを特徴とする請求項1記載の饋電電圧補償システム。
  3. 饋電変電所電圧制御手段は、饋電変電所を構成する整流装置に設けたスイッチング素子へのゲート信号により電圧を制御することを特徴とする請求項1記載の饋電電圧補償システム。
  4. 所定の電圧を発生する電圧源を有する饋電変電所、この饋電変電所と接続され電気車を負荷とする饋電線からなる饋電回路、およびこの饋電回路に上記負荷と並列に接続され、上記饋電変電所からの電源電力または制動時の上記電気車からの回生電力により充電され、力行時の上記電気車に放電電力を供給するキャパシタからなる饋電電圧補償装置を備えた饋電電圧補償システムにおいて、
    上記電気車が所定のダイヤで運行するときの上記饋電回路から見た負荷パターンが、所定の力行パターンと回生パターンとを所定の時間間隔で繰り返すものとみなし、
    上記キャパシタの許容上限電圧をE1、饋電回路の変動許容下限電圧をE2、上記キャパシタが上記所定の回生パターンに基づく回生電力を充電したときの電圧上昇分をΔE1、上記キャパシタが上記所定の力行パターンに基づく力行電力を放電したときの電圧下降分をΔE2としたとき、
    上記饋電変電所の電圧Esを、上記負荷パターンに基づき下式の範囲に設定することを特徴とする饋電電圧補償システム。
    E1−ΔE1>Es>E2+ΔE2
  5. キャパシタの電圧を検出する電圧検出手段、および上記キャパシタの電圧が許容上限値を越えたとき、上記キャパシタの電圧を上記許容上限値以下に制限する電圧制限手段を備えたことを特徴とする請求項4記載の饋電電圧補償システム。
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