JP2023168882A - 電力貯蔵装置、電力貯蔵制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】直流き電システムにおける余剰回生電力の有効活用を図る。【解決手段】電力貯蔵装置1において、コントローラ100は、き電線70の電圧が所定の充電開始電圧より大きく、かつ蓄電池盤3の充電率が所定の運用範囲内にある場合、蓄電池盤3を充電してき電線70の電圧を充電開始電圧に近づけるように、電力変換器2に充電運転を実行させる。一方、き電線70の電圧が充電開始電圧以下であり、かつき電線70に流れる電流が所定の電流閾値より大きく、かつ蓄電池盤3の充電率が第二範囲内にある場合、蓄電池盤3を放電して整流システム50とともにき電線70に直流電流を出力するように、電力変換器2に放電運転を実行させる。【選択図】図1
Description
本発明は、直流き電システム向けの電力貯蔵装置および電力貯蔵制御方法に関する。
近年、世界の150を超える地域や国において、カーボンニュートラルに向けた社会システムへの移行が進んでいる。また、世界情勢の変化に伴い、液化天然ガスの価格高騰などの現象も起きている。これらの状況により、電力の需要家である電鉄事業においては、さらなる省エネルギー化が重要課題となっている。
上記の背景から、近年の電鉄システムでは、減速時の力学的エネルギーを電気エネルギー(回生電力)に変換してき電線に送電する回生運転機能を備えた鉄道車両が標準的に用いられるようになってきている。すなわち、減速中の車両が回生運転することで得られた回生電力を別の車両の加速エネルギーとして活用することにより、電鉄システム全体としての省エネルギーを実現することができる。この場合、車両の回生運転がなされる際には、その車両で得られた回生電力を加速エネルギーとして活用できる別の車両が近くに存在する必要がある。
しかしながら、回生運転機能を備えた鉄道車両を用いた場合であっても、回生運転を行う車両のそばに別の車両が常に存在するとは限らず、また存在した場合であっても、その車両が加速中とは限らない。そこで、さらなる回生電力の有効活用を目的として、他車両の加速電力(力行電力)で消費しきれなかった電力(余剰回生電力)を蓄電池に充電し、力行電力が発生した際に放電する電力貯蔵装置が考案および実用化されている。
上記の電力貯蔵装置に関する先行技術として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1では、変電所の出力電流を検出し、その検出結果に基づいて電力変換器を制御することにより、蓄電要素の充放電制御を行う技術が開示されている。
特許文献1では、整流器の出力電流と蓄電要素の充放電電流との合計電流を変電所の出力電流として検出し、この出力電流を所定の基準値と比較することで、き電側のエネルギー消費状態、すなわち車両の回生状態や力行状態を判断し、電力変換器の制御を行っている。しかしながら、このような充放電制御方法では、き電回路に余剰回生電力が発生していない状態でも、蓄電要素が充電される場合がある。そのため、余剰回生電力が発生したときに蓄電要素の充電率が高く、余剰回生電力を十分に充電できないおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、直流き電システムにおける余剰回生電力の有効活用を図ることを主な目的とする。
本発明による電力貯蔵装置は、充放電可能な蓄電要素と、前記蓄電要素とき電線の間で入出力される電力を双方向に変換して前記蓄電要素を充放電する電力変換器と、前記電力変換器の動作を制御し、前記蓄電要素を充電する充電運転または前記蓄電要素を放電する放電運転を前記電力変換器に実行させる制御回路と、を備え、前記き電線には、前記き電線に直流電流を出力可能な整流システムが接続されており、前記制御回路は、前記き電線の電圧が所定の充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が所定の運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器に前記充電運転を実行させ、前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が所定の電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が第二の範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記整流システムとともに前記き電線に直流電流を出力するように、前記電力変換器に前記放電運転を実行させる。
本発明による電力貯蔵制御方法は、充放電可能な蓄電要素とき電線の間で入出力される電力を双方向に変換して前記蓄電要素を充放電する電力変換器の動作を制御することで、前記蓄電要素に貯蔵される電力を制御する方法であって、前記き電線には、前記き電線に直流電流を出力可能な整流システムが接続されており、前記き電線の電圧が所定の充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が所定の運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器の動作を制御し、前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が所定の電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が第二の範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記整流システムとともに前記き電線に直流電流を出力するように、前記電力変換器の動作を制御する。
本発明による電力貯蔵制御方法は、充放電可能な蓄電要素とき電線の間で入出力される電力を双方向に変換して前記蓄電要素を充放電する電力変換器の動作を制御することで、前記蓄電要素に貯蔵される電力を制御する方法であって、前記き電線には、前記き電線に直流電流を出力可能な整流システムが接続されており、前記き電線の電圧が所定の充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が所定の運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器の動作を制御し、前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が所定の電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が第二の範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記整流システムとともに前記き電線に直流電流を出力するように、前記電力変換器の動作を制御する。
本発明によれば、直流き電システムにおける余剰回生電力の有効活用を図ることができる。
(第1の実施形態)
以下では、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
以下では、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力貯蔵装置を含むき電システムの構成図である。図1に示すように、本実施形態のき電システム30は、電力貯蔵装置1、遮断器40および整流システム50を備える。なお、き電システム30におけるこれらの構成要素は、例えば同一の変電所内に設けられる。
電力貯蔵装置1は、正極線41と負極線42の間に、整流システム50と電気的に並列に接続される。正極線41と負極線42は、遮断器40を介してき電線70とレール71にそれぞれ接続される。これにより、電力貯蔵装置1と整流システム50は、き電線70およびレール71とそれぞれ電気的に接続される。
レール71上を走行する鉄道車両80は、電力貯蔵装置1や整流システム50からき電線70とレール71を介して供給される直流電力により、加速エネルギーを得ることができる。また、減速時には、回生運転を行うことで得られた回生電力をき電線70側へ送電する機能を備える。なお、図1には一つの鉄道車両80のみを記載しているが、実際には複数の鉄道車両80がき電線70とレール71にそれぞれ接続されているものとする。以下では、この複数の鉄道車両80をまとめて説明する場合にも、単に「鉄道車両80」と称することとする。
電力貯蔵装置1において、遮断器40を介してレール71と接続される負極線42には電流検出器60が設けられている。電流検出器60は、負極線42に流れる電流を検出し、その検出結果を総合負極電流I_SSとしてコントローラ100に出力する。なお、電流検出器60により検出される総合負極電流I_SSは、電力貯蔵装置1および整流システム50がき電線70にそれぞれ出力する電流を合計したものに相当する。
整流システム50は、図示しない交流系統から変圧器51を介して交流電力を得て、その交流電力をサイリスタ整流器52で直流電力に変換する。具体的には、整流システム50からき電線70側へ送り出す電圧が一定の値となるようにサイリスタ整流器52の点弧角を制御することで、き電システム30の出力電圧を安定化する。
サイリスタ整流器52は、上記のように交流電力を直流電力に変換することが可能であるが、直流電力を交流電力に逆変換することはできない。そのため、鉄道車両80により消費しきれない回生電力(余剰回生電力)が生じた場合には、余剰回生電力の行き場がなくなり、き電線70とレール71の間の電圧(き電線電圧)が上昇する。その結果、き電線電圧が所定の値を超えると、鉄道車両80は減速手段を回生運転から機械的ブレーキに徐々に切り替えることで、き電線における過電圧を回避する。しかしながら、この場合は回生運転によって運動エネルギーを電気エネルギーに変換する代わりに、機械的ブレーキによって運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、得られた熱エネルギーは回収されずに廃棄される。したがって、機械的ブレーキを多用することは余剰回生電力の有効活用の妨げとなる。
そこで、本実施形態の電力貯蔵装置1は、余剰回生電力が生じると、その電気エネルギーを蓄電池盤3内の組電池に充電することで保存しておき、鉄道車両80の加速時には、組電池から電力を放電して鉄道車両80に供給する。これにより、余剰回生電力の有効活用を実現するものである。
ここで、電力貯蔵装置1の構成を説明する。図1に示すように、電力貯蔵装置1は、組電池を有しており充放電可能な蓄電要素として機能する蓄電池盤3と、蓄電池盤3とき電線70の間で入出力される電力を双方向に変換して蓄電池盤3を充放電することにより、き電線70に対して双方向の電力融通を実現する電力変換器2と、電力変換器2の動作を制御し、蓄電池盤3を充電する充電運転または蓄電池盤3を放電する放電運転を電力変換器2に実行させる制御回路(コントローラ)100と、を備える。
電力変換器2の一端側は、き電線70に対して、整流システム50の直流出力と電気的に並列に接続される。電力変換器2の他端側は、蓄電池盤3に接続される。コントローラ100は、電力変換器2からそれぞれ得られるき電線70の電圧(き電線電圧)および蓄電池盤3の電流(電池電流)の検出値と、蓄電池盤3から得られる組電池の充電率と、整流システム50と電力貯蔵装置1の合成電流の検出値とに基づき、電力変換器2の制御信号であるゲート信号を生成し、電力変換器2に出力する。
電力変換器2の主回路構成を図3を用いて説明する。図3に示すように、電力変換器2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を用いて構成されるアーム23を有する。このアーム23に対して、整流システム50と並列にき電線70と接続される端子側(図3左側)には、リアクトル21とコンデンサ22が設けられており、蓄電池盤3と接続される端子側(図3右側)には、リアクトル24が設けられている。リアクトル21とコンデンサ22は、アーム23のスイッチング動作に起因するPWMノイズがき電線70側へ流出するのを抑制する目的で備えられ、またリアクトル24は、蓄電池盤3へ出力する電圧を平滑化する目的で備えられる。
アーム23は、例えば図15に示されるように、IGBTと該IGBTに逆並列に接続されたダイオードが2組直列に接続されて構成される、2レベル出力のアームである。き電線70側の正極端子P1は、コンデンサ22の正極およびリアクトル21に接続され、蓄電池盤3側の正極端子ACは、リアクトル24に接続される。なお、き電線70側の負極端子N1の電位と蓄電池盤3側の負極端子N2の電位とは共通であり、負極端子N1はコンデンサ22の負極に、負極端子N2は蓄電池盤3の負極にそれぞれ接続される。直列接続された2つのIGBT(IGBT1、IGBT2)を相補PWMによってデューティ比制御することにより、アーム23は、コンデンサ22の端子間電圧以下の任意の電圧を、蓄電池盤3側に出力することが可能となる。
図3の説明に戻ると、アーム23とリアクトル24は双方向の降圧DC-DCコンバータを構成する。このDC-DCコンバータの動作により、蓄電池盤3の所望の充放電を実現する。なお、本実施形態では図15に示したように、電力変換器2を2レベルのDC-DCコンバータとしているが、これは3レベルもしくはマルチレベルのDC-DCコンバータであっても良い。
電力貯蔵装置1において、電力変換器2からき電線70へと出力される直流電流は、リアクトル21と直列に接続された電流検出器25により検出され、その検出結果が電力貯蔵装置1の出力電流I_BESSとしてコントローラ100に出力される。また、コンデンサ22の両端電圧、すなわちき電線70の電圧は、電圧検出器26により検出され、その検出結果がき電線電圧V_LINEとしてコントローラ100に出力される。さらに、蓄電池盤3に流れる電流は、リアクトル24と直列に接続された電流検出器27により検出され、その検出結果が電池電流I_BATTとしてコントローラ100に出力される。コントローラ100は、これらの値に基づいて、電力変換器2を制御するためのゲート信号GateSigを生成する。
コントローラ100により生成されたゲート信号GateSigは、電力貯蔵装置1においてアーム23に入力される。このゲート信号GateSigに応じて、アーム23が備える2つのIGBT(IGBT1、IGBT2)が相補的にON、OFF制御される。これにより、蓄電池盤3の充放電電流(電池電流I_BATT)が所望の値に制御される。なお、電池電流I_BATTの具体的な制御方法については後述する。
蓄電池盤3の構成を図5を用いて説明する。図5に示すように、蓄電池盤3は、複数の蓄電池モジュールが多直列・多並列に接続されて構成された組電池31と、組電池31の電圧・電流を検出して組電池31の充電率SOCを算出するバッテリーマネージメントユニット32を有する。
組電池31の主回路は電力変換器2に接続され、組電池31の充放電電流は、図3に示した電力変換器2のアーム23が蓄電池盤3側に出力する電圧に応じて制御される。バッテリーマネージメントユニット32により算出された充電率SOCは、コントローラ100に入力され、コントローラ100が行う電力変換器2の動作モード選択および充放電指令値算出に用いられる。
次に、電力変換器2のコントローラ100の演算器構成について図2および図4を用いて説明する。
本発明の第1の実施形態に係るコントローラ100の演算器構成を図2に示す。図2に示すように、本実施形態のコントローラ100は、制御モード判定器101、充電開始電圧演算器102、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105、加算器106、電流制御器107の各演算器を有する。コントローラ100におけるこれらの演算器は、例えばコントローラ100が有するCPU(Central Processing Unit)が所定のプログラムを実行することにより実現される。なお、図2に示す各演算器の一部または全部を、CPU以外のデバイス、例えばGPU(Graphic Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いて実現してもよい。
コントローラ100には、電流検出器60から総合負極電流I_SSの検出値が入力される。また、図3に示した電力変換器2内の電流検出器25、電圧検出器26、電流検出器27から、電力貯蔵装置1の出力電流I_BESS、き電線電圧V_LINE、電池電流I_BATTの検出値がそれぞれ入力される。さらに、図5に示した蓄電池盤3内のバッテリーマネージメントユニット32から、組電池31の充電率SOCも入力される。
充電開始電圧演算器102は、充電率SOCに応じた充電開始電圧V_ABSを演算する。例えば充電開始電圧演算器102は、充電率SOCが所定の基準値以下であれば、予め設定された固定値を充電開始電圧V_ABSとして出力する。一方、充電率SOCが基準値より大きければ、その充電率SOCと基準値の差に比例した値を上記固定値に加算することで、充電開始電圧V_ABSをより高い値に補正する。これにより、充電率SOCが高くなるほど充電開始電圧V_ABSが高くなるようにして、蓄電池盤3の過充電を防ぐ。なお、充電開始電圧V_ABSの算出に用いる上記固定値は、例えば1500Vを定格電圧とするき電システム30においては、サイリスタ整流器52の出力指令よりも十分高く、かつ鉄道車両80が回生運転の絞り込みを開始するき電線電圧である1800Vよりも低い値に設定する必要がある。回生運転開始時のき電線電圧のオーバーシュートを勘案すると、充電開始電圧V_ABSの固定値は、例えば1550Vから1700Vの間で設定するのが好ましい。
制御モード判定器101は、コントローラ100に入力される総合負極電流I_SS、き電線電圧V_LINEおよび充電率SOCと、充電開始電圧演算器102により求められた充電開始電圧V_ABSとに基づき、電力貯蔵装置1の制御モードを判定する。この制御モード判定器101により判定された制御モードに応じて、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105による電流指令値演算がそれぞれ有効化、またはゼロにリセットされる。なお、制御モード判定器101による制御モード判定方法の詳細については後述する。
充電側電圧制御器103は、き電線電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABSより大きくなった場合に、蓄電池盤3を充電してき電線電圧V_LINEを充電開始電圧V_ABSに近づけるように、電力変換器2に対する電流指令値の演算を行う。具体的には、例えば充電側電圧制御器103は、制御モード判定器101により電流指令値演算が有効化されると、き電線電圧V_LINEと充電開始電圧V_ABSの偏差を算出し、その偏差を入力とするPI制御演算を行うことで、き電線電圧V_LINEの上昇を抑制する電流指令値を算出する。なお、制御モード判定器101により充電側電圧制御器103の電流指令値演算がリセットされると、充電側電圧制御器103においてPI演算器の内部変数の値がクリアされ、それと同時に、充電側電圧制御器103の出力はゼロとなる。
充電率制御器104は、蓄電池盤3を充放電して充電率SOCが予め設定された所定の目標値に近づくように、電力変換器2に対する電流指令値の演算を行う。具体的には、例えば充電率制御器104は、制御モード判定器101により電流指令値演算が有効化されると、充電率SOCと所定の充電率目標値の偏差を算出し、その偏差に比例演算を行うことで、充電率SOCを目標値に近づける電流指令値を算出する。なお、制御モード判定器101により充電率制御器104の電流指令値演算がリセットされると、充電率制御器104の出力はゼロとなる。
ここで、鉄道車両80を力行運転させる電力がき電線70に十分存在しない場合に、充電率制御器104が上記の充電率制御を実施してもき電線電圧V_LINEが過度に上昇することを回避するには、充電率制御器104から出力される電流指令値を低い値に制限することが望ましい。例えば、充電率制御を実施する際の電力貯蔵装置1の入出力電力が電力貯蔵装置1の定格容量の数%未満に制限されるように、充電率制御器104により算出される電流指令値に対してリミッタを施すことが考えられる。また、余剰回生電力が生じたときに蓄電池盤3において充電余力が十分に残りつつ、なおかつ充電率SOCの値が過度に低下して蓄電池盤3内の蓄電池が劣化するのを避けるためには、充電率目標値を0%から100%の範囲内で適切な値に、例えば10%~40%の間で設定するのが望ましい。
整流器サポート演算器105は、整流システム50と電力貯蔵装置1の出力電流を合わせた総合負極電流I_SSと、充電率SOCに基づいて、電流指令値演算を行う。なお、整流器サポート演算器105による電流指令値演算方法の詳細については後述する。
加算器106は、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105のそれぞれで算出された電流指令値を合計し、電力変換器2が蓄電池盤3を充放電させるときの電流指令値を算出する。
電流制御器107は、加算器106から出力される電流指令値に電池電流I_BATTが一致するように、電力変換器2に対するゲート信号GateSigのデューティを算出し、このデューティに応じたゲート信号GateSigを生成する。そして、生成したゲート信号GateSigを電力変換器2のアーム23が有する各IGBTへ出力することで、電力変換器2の動作を制御し、電力変換器2に充電運転または放電運転を実行させる。
続いて、本発明の特徴である、整流器サポート演算器105および制御モード判定器101の詳細について説明する。
整流器サポート演算器105には、総合負極電流I_SSと、充電率SOCと、制御モード判定器101による制御モードの判定結果が入力される。制御モード判定器101により電流指令値演算が有効化されると、整流器サポート演算器105は、電力貯蔵装置1が整流システム50とともにき電線70に直流電力を出力し、これによって鉄道車両80の力行運転に必要な電流の一部を電力貯蔵装置1から供給すべく、総合負極電流I_SSおよび充電率SOCに基づいて電流指令値を算出する。そして、算出した電流指令値を加算器106に出力する。なお、制御モード判定器101により整流器サポート演算器105の電流指令値演算がリセットされると、整流器サポート演算器105の出力はゼロとなる。
整流器サポート演算器105の具体的な演算ブロックを、図4を用いて説明する。図4に示すように、整流器サポート演算器105は、乗算器1051、最大値算出器1052、可変リミッタ1053、最小値算出器1054、切り替えスイッチ1055を有する。
乗算器1051は、総合負極電流I_SSに固定ゲインK1を乗算した積を算出する。最大値算出器1052は、乗算器1051により算出された総合負極電流I_SSと固定ゲインK1の積をゼロと比較し、いずれか大きい方の値を最小値算出器1054に出力する。
可変リミッタ1053は、充電率SOCに基づく放電電流のリミット値を算出し、最小値算出器1054に出力する。具体的には、充電率SOCが所定の基準充電率SOC2以下のときには、ゼロを放電電流のリミット値として出力し、充電率SOCがSOC2+Δ(Δ>0)の場合は、所定の放電電流最大値を放電電流のリミット値として出力する。また、充電率SOCが上記の基準充電率SOC2からSOC2+Δの間にあるときは、その充電率SOCの値に対してゼロと上記放電電流最大値の間を線形補完した値を、放電電流のリミット値として出力する。
最小値算出器1054は、可変リミッタ1053と最大値算出器1052の出力のうちいずれか小さい方の値を、電流指令値I_ref3として切り替えスイッチ1055に出力する。切り替えスイッチ1055は、制御モード判定器101による制御モードの判定結果に応じて、整流器サポート演算器105が有効化されたときには電流指令値I_ref3を選択して出力し、リセットされたときにはゼロを出力する。
本実施形態のコントローラ100では、整流器サポート演算器105が上記構成を有することにより、鉄道車両80が力行する際に、蓄電池盤3を放電して整流システム50とともにき電線70に直流電流を出力し、き電システム30から鉄道車両80への出力電流の一部を電力貯蔵装置1から出力することが可能となる。また、蓄電池盤3の充電率SOCが所定の基準充電率SOC2近傍まで低下した際には、蓄電池盤3からの放電電流を徐々に制限しながら、基準充電率SOC2以下での放電を停止することが可能となる。これにより、き電線70側への擾乱を抑制しつつ、蓄電池盤3の過放電を回避することができる。
なお、上記基準充電率SOC2は、前述の充電率制御器104における充電率制御時の充電率目標値の設定と同様に、0%から100%の範囲内で適切な値に、例えば10%~40%の間に設定することが望ましい。
本発明の第1の実施形態に係る制御モード判定器101の制御モード判定方法について、図7の演算フローを用いて以下に説明する。
制御モード判定器101は、総合負極電流I_SS、き電線電圧V_LINE、充電率SOCおよび充電開始電圧V_ABSを入力とし、これらに基づいて図7の演算フローに示す演算処理を行うことにより、電力貯蔵装置1の制御モードとして、下記4種類の制御モードのいずれかを選択する。
(1)第一制御モード(MODE=1):蓄電池盤3の充電によりき電線電圧V_LINEの安定化を行う充電側電圧制御モード
(2)第二制御モード(MODE=2):蓄電池盤3の放電によりき電システム30から鉄道車両80に供給する負荷電流の一部を担う整流器サポートモード
(3)第三制御モード(MODE=3):充電率SOCを所定の目標値に近づけるように蓄電池盤3の充電もしくは放電を行う充電率制御モード
(4)第四制御モード(MODE=4):電力変換器2の動作を停止して運転条件成立を待つ待機モード
(1)第一制御モード(MODE=1):蓄電池盤3の充電によりき電線電圧V_LINEの安定化を行う充電側電圧制御モード
(2)第二制御モード(MODE=2):蓄電池盤3の放電によりき電システム30から鉄道車両80に供給する負荷電流の一部を担う整流器サポートモード
(3)第三制御モード(MODE=3):充電率SOCを所定の目標値に近づけるように蓄電池盤3の充電もしくは放電を行う充電率制御モード
(4)第四制御モード(MODE=4):電力変換器2の動作を停止して運転条件成立を待つ待機モード
4種類の制御モードのいずれかを選択すると、制御モード判定器101は、その選択結果を示す出力信号MODEを、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105、電流制御器107に出力する。充電側電圧制御器103は、MODE=1で有効化され、それ以外ではリセットされる。整流器サポート演算器105は、MODE=2で有効化され、それ以外ではリセットされる。充電率制御器104は、MODE=3で有効化され、それ以外ではリセットされる。電流制御器107は、MODE=4でリセットされてゲート信号GateSigの出力を抑制し、それ以外では、電池電流I_BATTが加算器106から出力される電流指令値と一致するように、電力変換器2に対するゲート信号GateSigを生成する。
図7の演算フローに示す演算処理では、制御モード判定器101は、まずステップS101において、き電線電圧V_LINEと充電開始電圧V_ABSを比較し、V_LINE>V_ABSの条件判定を行う。ステップS101の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS102へ進み、偽であれば(False)、ステップS103へ進む。
ステップS102では、制御モード判定器101は、充電率SOCが蓄電池盤3の運用範囲内にあるか否かを判定する。ここでは、所定の運用上限値SOC_Hと運用下限値SOC_Lにより規定される充電率の範囲を蓄電池盤3の運用範囲として設定し、この運用範囲に対して、SOC_L<SOC<SOC_Hの条件判定を行う。ステップS102の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS108へ進み、偽であれば(False)、ステップS109へ進む。
ステップS103では、制御モード判定器101は、総合負極電流I_SSと所定の電流閾値I_THを比較し、I_SS>I_THの条件判定を行う。ステップS103の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS104へ進み、偽であれば(False)、ステップS105へ進む。なお、電流閾値I_THは、総合負極電流I_SSの検出誤差や鉄道車両80の補器の動作などによって電力貯蔵装置1の動作モード切替が不安定になることを回避するためのマージンに相当する。この電流閾値I_THは、鉄道車両80の力行時において、電力貯蔵装置1が整流器サポートモードを速やかに実施し、蓄電池盤3の放電によりき電システム30から鉄道車両80に供給する負荷電流の一部を担うことができるように、整流システム50の定格電流よりも低い値、例えば該定格電流の数%程度の値に選定することが望ましい。
ステップS104では、制御モード判定器101は、充電率SOCが蓄電池盤3の運用範囲内のうち所定の範囲内にあるか否かを判定する。ここでは、運用下限値SOC_Lよりも大きい前述の基準充電率SOC2と運用上限値SOC_Hにより規定される充電率の範囲(以下、「第二範囲」と称する)に対して、SOC2<SOC<SOC_Hの条件判定を行う。ステップS104の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS110へ進み、偽であれば(False)、ステップS106へ進む。
ステップS105では、制御モード判定器101は、ステップS104と同様の条件判定を行う。ステップS105の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS111へ進み、偽であれば(False)、ステップS107へ進む。
ステップS106では、制御モード判定器101は、充電率SOCが蓄電池盤3の運用範囲内のうち前述の第二範囲とは異なる所定の範囲内にあるか否かを判定する。ここでは、前述の基準充電率SOC2よりも小さい所定の充電率SOC3と運用下限値SOC_Lにより規定される充電率の範囲(以下、「第三範囲」と称する)に対して、SOC_L<SOC<SOC3の条件判定を行う。ステップS106の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS112へ進み、偽であれば(False)、ステップS113へ進む。
ステップS107では、制御モード判定器101は、ステップS106と同様の条件判定を行う。ステップS107の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS111へ進み、偽であれば(False)、ステップS109へ進む。
ステップS102の条件判定結果が真である場合、ステップS108において、制御モード判定器101は、制御モードの判定結果をMODE=1に設定し、電力貯蔵装置1の制御モードを充電側電圧制御モードに切り替える。
ステップS102またはステップS107の条件判定結果が偽である場合、ステップS109において、制御モード判定器101は、制御モードの判定結果をMODE=4に設定し、電力貯蔵装置1の制御モードを待機モードに切り替える。
ステップS104の条件判定結果が真である場合、ステップS110において、制御モード判定器101は、制御モードの判定結果をMODE=2に設定し、電力貯蔵装置1の制御モードを整流器サポートモードに切り替える。
ステップS105またはステップS107の条件判定結果が真である場合、ステップS111において、制御モード判定器101は、制御モードの判定結果をMODE=3に設定し、電力貯蔵装置1の制御モードを充電率制御モードに切り替える。
ステップS106の条件判定結果が真である場合、ステップS112において、制御モード判定器101は、制御モードの判定結果をMODE=3に設定し、電力貯蔵装置1の制御モードを充電率制御モードに切り替える。
ステップS106の条件判定結果が偽である場合、ステップS113において、制御モード判定器101は、制御モードの判定結果をMODE=4に設定し、電力貯蔵装置1の制御モードを待機モードに切り替える。
ステップS108~S113のいずれかで制御モードの判定結果をMODE=1~4のいずれかに設定したら、ステップS114において、制御モード判定器101は、次の演算トリガまで待機する。次の演算トリガを受信したらステップS101へ戻り、図7の演算フローを再開する。これにより、図7の演算フローに従った演算処理を所定の演算周期ごとに実行し、制御モードの判定を行う。
上記の制御モード判定を制御モード判定器101において実施することにより、図8に示す電力貯蔵装置1の動作マップが実現される。ここで、図8の横軸は充電率SOC、縦軸はき電線電圧V_LINEをそれぞれ表し、太線は充電開始電圧V_ABSを示している。また、充電率SOCが前述の運用下限値SOC_L、所定値SOC3、所定値SOC2および運用上限値SOC_Hとなる位置を一点破線でそれぞれ示している。これらの一点鎖線と充電開始電圧V_ABSで区切られた各領域により、電力貯蔵装置1の各制御モードが定義される。図8では、各領域に対応する制御モードを、変数MODEの値でそれぞれ示している。
本実施形態に係る電力貯蔵装置1の動作例を、図6に示す各グラフを用いて説明する。図6では、上から順に、以下の6種類のグラフを示している。
(1)鉄道車両80がき電線70から受電する車両電流の時間変化例
(2)き電線電圧V_LINEの時間変化例
(3)整流システム50からき電線70に出力される電流I_RECの時間変化例
(4)電力貯蔵装置1の出力電流I_BESSの時間変化例
(5)充電率SOCの時間変化例
(6)制御モード判定器101による制御モードの判定結果を表す出力信号MODEの時間変化例
(1)鉄道車両80がき電線70から受電する車両電流の時間変化例
(2)き電線電圧V_LINEの時間変化例
(3)整流システム50からき電線70に出力される電流I_RECの時間変化例
(4)電力貯蔵装置1の出力電流I_BESSの時間変化例
(5)充電率SOCの時間変化例
(6)制御モード判定器101による制御モードの判定結果を表す出力信号MODEの時間変化例
また、図6の各グラフでは、図1のように一つの鉄道車両80のみがき電回路上に存在し、鉄道車両80の回生電力を消費する力行車両は存在しない状況を想定して、上記各変数の時間変化例を示している。
時刻t1で鉄道車両80が加速を開始すると、これに伴って、車両電流が力行側である正の電流となる。このとき、制御モード判定器101の出力信号はMODE=2であるため、電力貯蔵装置1は整流器サポートモードで動作し、整流システム50および電力貯蔵装置1から鉄道車両80へ車両電流が供給される。また、電力貯蔵装置1では、蓄電池盤3の放電に伴って充電率SOCが低下する。
時刻t2において、充電率SOCがSOC2+Δまで低下すると、電力貯蔵装置1ではコントローラ100の整流器サポート演算器105内にある可変リミッタ1053により、蓄電池盤3の放電電流が所定の放電電流最大値に制限される。これにより、電力貯蔵装置1からの出力電流I_BESSが減少を開始する。このとき、鉄道車両80に流れる車両電流は変わらないため、出力電流I_BESSの減少を補填する形で、整流システム50からの出力電流I_RECが増加する。
時刻t3において、充電率SOCが基準充電率SOC2まで低下すると、制御モード判定器101の出力信号がMODE=2からMODE=4に変化する。これにより、電力貯蔵装置1の制御モードが整流器サポートモードから待機モードへと切り替えられ、電力貯蔵装置1は電力変換器2の動作を停止して待機する。このとき、時刻t2から時刻t3の間で充電率SOCに応じて蓄電池盤3の放電電流を制限していたことにより、時刻t3で電力変換器2の動作を停止しても、き電線70側への急峻な電力変動は発生しない。そのため、き電回路への擾乱を回避することができる。
時刻t4で鉄道車両80が加速を終了すると、車両電流がゼロになり、これに伴って整流システム50の出力電流I_RECもゼロとなる。
時刻t5で鉄道車両80が回生運転を開始すると、回生電力によって鉄道車両80内のフィルタコンデンサが充電されることで、フィルタコンデンサの両端電圧が上昇し、それに伴ってき電線電圧V_LINEが上昇する。き電線電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABSを上回ると、電力貯蔵装置1では、制御モード判定器101の出力信号がMODE=4からMODE=1に変化する。これにより、電力貯蔵装置1の制御モードが待機モードから充電側電圧制御モードへと切り替えられ、電力貯蔵装置1は蓄電池盤3の充電によるき電線電圧V_LINEの電圧制御を開始する。これにより、き電線電圧V_LINEの安定化が図られるとともに、余剰回生電力の充電が可能となる。
時刻t6において、鉄道車両80が回生運転を終了すると、電力貯蔵装置1では、制御モード判定器101の出力信号がMODE=1からMODE=3に変化する。これにより、電力貯蔵装置1の制御モードが充電側電圧制御モードから充電率制御モードへと切り替えられ、電力貯蔵装置1は蓄電池盤3の充電率制御を行う。このとき、前述のように充電率制御における電力貯蔵装置1の入出力電力を低い値に(例えば電力貯蔵装置1の定格容量の数%)制限しておくことにより、鉄道車両80の補機が消費する電力の一部を、充電率制御用の電力として電力貯蔵装置1から鉄道車両80に供給することが可能となる。
時刻t7において鉄道車両80が再度加速を開始すると、電力貯蔵装置1では、制御モード判定器101の出力信号がMODE=3からMODE=2に変化する。これにより、時刻t1から時刻t2の間と同様に、電力貯蔵装置1は整流器サポートモードで動作し、時刻t5からt6で蓄電池盤3に充電した余剰回生電力を、力行用電力の一部として鉄道車両80に供給することが可能となる。
時刻t8で鉄道車両80が加速を終了すると、車両電流がゼロになり、これに伴って整流システム50の出力電流I_RECもゼロとなる。このとき、充電率SOCが基準充電率SOC2よりも大きいため、制御モード判定器101の出力信号がMODE=2からMODE=3に変化する。これにより、電力貯蔵装置1の制御モードが再び充電率制御モードへと切り替えられ、時刻t6から時刻t7の間と同様に、電力貯蔵装置1は蓄電池盤3の充電率制御を行う。
上記のように、本実施形態によれば、サイリスタ整流器52によりき電される直流き電システム30において、電力貯蔵装置1の蓄電要素である蓄電池盤3を余剰回生電力の充電に備えてあらかじめ放電しておくことができる。また、余剰回生電力が発生した場合には、き電線70より吸収した回生電力を蓄電池盤3に充電しておき、鉄道車両80の力行時には蓄電池盤3に蓄積された電力を放電することで、余剰回生電力の有効活用を実現することができる。さらに、蓄電池盤3の放電時には、整流器サポート演算器105が有する可変リミッタ1053の機能により、充電率SOCに応じて放電電流を制限することができる。これにより、蓄電池盤3の過放電を回避するとともに、き電回路への急峻な擾乱も回避することができる。
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)電力貯蔵装置1は、充放電可能な蓄電要素である蓄電池盤3と、蓄電池盤3とき電線70の間で入出力される電力を双方向に変換して蓄電池盤3を充放電する電力変換器2と、電力変換器2の動作を制御し、蓄電池盤3を充電する充電運転または蓄電池盤3を放電する放電運転を電力変換器2に実行させる制御回路(コントローラ)100とを備える。き電線70には、き電線70に直流電流を出力可能な整流システム50が接続されている。コントローラ100は、き電線70の電圧V_LINEが所定の充電開始電圧V_ABSより大きく(ステップS101:True)、かつ蓄電池盤3の充電率SOCが所定の運用範囲内にある場合(ステップS102:True)、電力貯蔵装置1の制御モードを充電側電圧制御モードに設定することで(ステップS108:MODE=1)、蓄電池盤3を充電してき電線70の電圧V_LINEを充電開始電圧V_ABSに近づけるように、電力変換器2に充電運転を実行させる。一方、き電線70の電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABS以下であり(ステップS101:False)、かつき電線70に流れる電流I_SSが所定の電流閾値I_THより大きく(ステップS103:True)、かつ蓄電池盤3の充電率SOCが第二範囲内にある場合(ステップS104:True)、電力貯蔵装置1の制御モードを整流器サポートモードに設定することで(ステップS110:MODE=2)、蓄電池盤3を放電して整流システム50とともにき電線70に直流電流を出力するように、電力変換器2に放電運転を実行させる。このようにしたので、直流き電システム30における余剰回生電力の有効活用を図ることができる。
(2)コントローラ100は、電力変換器2および整流システム50からき電線70にそれぞれ出力される直流電流を合わせた総合電流の検出値である総合負極電流I_SSを取得し、取得した総合負極電流I_SSに基づいてき電線70に流れる電流を求める。このようにしたので、き電線70に流れる電流を正確に求めることができる。
(3)コントローラ100は、整流器サポートモードで電力変換器2に放電運転を実行させる際に、整流器サポート演算器105により、蓄電池盤3の充電率SOCおよびき電線70に流れる電流I_SSに基づいて電流指令値I_ref3を算出する。この電流指令値I_ref3を用いて、電力変換器2からき電線70に出力される直流電流である出力電流I_BESSの大きさを制御する。このようにしたので、その後に電力変換器2の動作を停止したときに、き電線70側への急峻な電力変動が発生するのを防止し、き電回路への擾乱を回避することができる。
(4)コントローラ100は、き電線70の電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABS以下であり(ステップS101:False)、かつき電線70に流れる電流I_SSが電流閾値I_TH以下であり(ステップS103:False)、かつ蓄電池盤3の充電率SOCが第二範囲内にあるか(ステップS105:True)、もしくは第二範囲よりも低い第三範囲内にある場合(ステップS107:True)、または、き電線70の電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABS以下であり(ステップS101:False)、かつき電線70に流れる電流I_SSが電流閾値I_THより大きく(ステップS103:True)、かつ蓄電池盤3の充電率SOCが第三範囲内にある場合(ステップS106:True)、電力貯蔵装置1の制御モードを充電率制御モードに設定することで(ステップS111、S112:MODE=3)、蓄電池盤3を充放電して蓄電池盤3の充電率SOCを所定の目標値に近づけるように、電力変換器2に充電運転または放電運転を実行させる。このようにしたので、鉄道車両80が力行運転と回生運転のいずれも行っていない場合や、蓄電池盤3の充電率SOCが低い場合に、蓄電池盤3の充電率SOCを一定の範囲内に維持することができる。
(5)コントローラ100は、蓄電池盤3を充電してき電線70の電圧V_LINEを充電開始電圧V_ABSに近づけるように電力変換器2を制御する第一制御モード(MODE=1:充電側電圧制御モード)と、蓄電池盤3の充電率SOCおよびき電線70に流れる電流I_SSに基づいて放電電流指令としての電流指令値I_ref3を算出し、算出した電流指令値I_ref3に基づいて蓄電池盤3を放電するように電力変換器2を制御する第二制御モード(MODE=2:整流器サポートモード)と、蓄電池盤3を充放電して蓄電池盤3の充電率SOCを所定の目標値に近づけるように電力変換器2を制御する第三制御モード(MODE=3:充電率制御モード)と、電力変換器2の動作を停止する第四制御モード(MODE=4:待機モード)とを有する。そして、き電線の電圧V_LINE、蓄電池盤3の充電率SOCおよびき電線70に流れる電流I_SSの少なくとも一つに基づいて、図7の演算フローにより、第一制御モード、第二制御モード、第三制御モードまたは第四制御モードのいずれかを選択する。このようにしたので、き電回路の状態に応じて適切な制御モードを選択し、電力変換器2の動作制御を行うことができる。
(6)上記の第二範囲の下限値である基準充電率SOC2は、蓄電池盤3の充電率SOCで、例えば10%から40%の間に設定されることとしてよい。このようにすれば、整流器サポートモードから他の制御モードへの切替を適切なタイミングで行い、その結果、余剰回生電力の充電に備えて蓄電池盤3の充電率SOCを適切な値に維持しておくことができる。
なお、以上説明した本発明の第1の実施形態では、図1に示したように、遮断器40を介してレール71と接続される負極線42に電流検出器60を設け、この電流検出器60により、負極線42に流れる総合負極電流I_SSを検出する例を説明したが、負極線42側でなく正極線41側に電流検出器60を設けてもよい。また、本発明の第1の実施形態では、整流システム50と電力貯蔵装置1の合成出力電流である総合負極電流I_SSを検出可能な位置に電流検出器60が備えられる構成を示したが、他の位置に電流検出器60を設けてもよい。他の位置に電流検出器60を設けた場合の変形例を図9、10を参照して以下に説明する。
例えば図9の変形例に示すように、電流検出器60が整流システム50の出力電流のみを検出する位置に設置される場合、電力貯蔵装置1は、第1の実施形態で説明したコントローラ100に替えて、コントローラ100aを有する。コントローラ100aは、電力変換器2からき電線70に出力される直流電流の検出値、すなわち第1の実施形態で説明した電力貯蔵装置1の出力電流I_BESSと、整流システム50からき電線70に出力される直流電流I_RECの検出とを取得し、取得した各直流電流の検出値に基づいてき電線70に流れる電流値を求める。この電流値を総合負極電流I_SSの代わりに用いて、電力変換器2の動作を制御する。
本発明の変形例に係るコントローラ100aの演算器構成を図10に示す。例えば図10に示すように、コントローラ100aは、第1の実施形態で説明した制御モード判定器101、充電開始電圧演算器102、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105、加算器106、電流制御器107の各演算器に加えて、加算器108をさらに有する。加算器108は、電力変換器2内の電流検出器25で検出された電力貯蔵装置1の出力電流I_BESSと、電流検出器60で検出された整流システム50の出力電流I_RECとを加算し、その演算結果を制御モード判定器101と整流器サポート演算器105へ出力する。制御モード判定器101および整流器サポート演算器105では、加算器108の出力を総合負極電流I_SSの代わりに用いて、第1の実施形態で説明した演算処理をそれぞれ実行する。これにより、図9に示した変形例においても第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記第1の実施形態および変形例では、整流システム50と電力貯蔵装置1がき電システム30として同一の変電所内に設置される構成を説明したが、電力貯蔵装置1が整流システム50と同一き電区間に存在し、かつき電線70に流れる電流、または整流システム50からき電線70に出力される電流の検出値をコントローラ100、100aが取得することができれば、整流システム50と電力貯蔵装置1が別々の場所に設置されてもよい。この場合でも、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、き電線70に流れる電流または整流システム50からき電線70に出力される電流の検出値は、電気的配線によりコントローラ100、100aへ伝達されても良いし、光もしくは無線通信等によって伝達されても良い。
また、上記第1の実施形態および変形例では、整流システム50における整流器52はサイリスタ整流器としたが、ダイオード整流器であっても良い。この場合、充電開始電圧V_ABSは、交流系統の電圧変動を鑑みて、該ダイオード整流器を有する整流システム50の無負荷時出力電圧よりも高い値に設定することが望ましい。このようにしても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第2の実施形態)
以下では、本発明の第2の実施形態を図面を用いて説明する。以下の説明では、第1の実施形態と同じ構成や演算機能を示す要素には同じ符号を割り当てており、これらの要素については、特に必要のない限り説明を省略する。
以下では、本発明の第2の実施形態を図面を用いて説明する。以下の説明では、第1の実施形態と同じ構成や演算機能を示す要素には同じ符号を割り当てており、これらの要素については、特に必要のない限り説明を省略する。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る電力貯蔵装置を含むき電システムの構成図である。図11に示すように、本実施形態のき電システム30は、電力貯蔵装置1b、遮断器40および整流システム50bを備える。本実施形態と第1の実施形態との差は、整流システム50bが遮断器53を備えており、サイリスタ整流器52が遮断器53を介して正極線41と負極線42に接続されている点と、整流システム50bの運転状態を表す運転状態信号SR_STATEが整流システム50bから電力貯蔵装置1bへ出力され、電力貯蔵装置1bのコントローラ100bに入力される点である。なお、運転状態信号SR_STATEは、例えば遮断器53の接点情報であり、電力貯蔵装置1bの図示しない信号インターフェースを介してコントローラ100bに入力される。
本実施形態において、電力貯蔵装置1bのコントローラ100bは、整流システム50bから入力された運転状態信号SR_STATEに基づき、整流システム50bの運転状態を取得する。そして、整流システム50bが動作している場合と停止している場合とで、電力変換器2の制御を切り替える。具体的には、電力貯蔵装置1bは、整流システム50bが正常運転しているときには、前述の第1の実施形態で説明した余剰回生電力の充電と整流器サポート運転を実施する。一方、整流システム50bが運転を停止した場合は、き電線70の電圧が過度に低下しないように、蓄電池盤3の放電運転を実施する。これにより、き電電圧の安定化に貢献することができる。
本実施形態では、例えば運転状態信号SR_STATEは1または0で表され、整流システム50bが正常運転をしており遮断器53が閉状態の場合は運転状態信号SR_STATEが1となり、整流システム50bが運転を停止しており遮断器53が開状態の場合は運転状態信号SR_STATEが0となるものとする。本構成により、メンテナンスや故障などによって整流システム50bが運転を停止し、これに応じて遮断器53が解放されると、運転状態信号SR_STATEが0となることで、電力貯蔵装置1は整流システム50bの停止を検出することができる。
本発明の第2の実施形態に係るコントローラ100bの演算器構成を図12に示す。図12に示すように、本実施形態のコントローラ100bは、第1の実施形態で説明した図2のコントローラ100と比べて、制御モード判定器101、充電開始電圧演算器102、加算器106の代わりに制御モード判定器101b、充放電開始電圧演算器102b、加算器106bをそれぞれ備える点と、放電側電圧制御器109をさらに備える点とが異なる。
充放電開始電圧演算器102bは、充電率SOCに応じた充電開始電圧V_ABSおよび放電開始電圧V_DISCを算出する。充電開始電圧V_ABSについては、第1の実施形態で説明したのと同様に算出したものを、充電側電圧制御器103および制御モード判定器101bに出力することができる。また、放電開始電圧V_DISCについては、例えば充放電開始電圧演算器102bは、充電率SOCが前述の基準充電率SOC2以上であれば、予め設定された固定値を放電開始電圧V_DISCとして出力する。一方、充電率SOCが基準充電率SOC2より小さければ、その充電率SOCと基準値の差に比例した値を上記固定値から減算することで、放電開始電圧V_DISCをより低い値に補正する。これにより、充電率SOCが低くなるほど放電開始電圧V_DISCが低くなるようにして、蓄電池盤3の過放電を防ぐ。充放電開始電圧演算器102bは、こうして算出した放電開始電圧V_DISCを放電側電圧制御器109および制御モード判定器101bに出力する。
制御モード判定器101bは、総合負極電流I_SS、き電線電圧V_LINE、充電率SOCおよび充電開始電圧V_ABSに加え、さらに運転状態信号SR_STATEに基づき、電力貯蔵装置1bの制御モードを判定する。これにより、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105に加えて、さらに放電側電圧制御器109による電流指令値演算がそれぞれ有効化、またはゼロにリセットされる。
放電側電圧制御器109は、き電線電圧V_LINEが放電開始電圧V_DISCより小さくなった場合に、蓄電池盤3を放電してき電線電圧V_LINEを放電開始電圧V_DISCに近づけるように、電力変換器2に対する電流指令値の演算を行う。具体的には、例えば放電側電圧制御器109は、制御モード判定器101bにより電流指令値演算が有効化されると、き電線電圧V_LINEと放電開始電圧V_DISCの偏差を算出し、その偏差を入力とするPI制御演算を行うことで、き電線電圧V_LINEの低下を抑制する電流指令値を算出する。なお、制御モード判定器101bにより放電側電圧制御器109の電流指令値演算がリセットされると、放電側電圧制御器109においてPI制御器の内部変数の値がクリアされ、それと同時に、放電側電圧制御器109の出力はゼロとなる。
加算器106bは、充電側電圧制御器103、放電側電圧制御器109、充電率制御器104、整流器サポート演算器105のそれぞれで算出された電流指令値を合計し、電力変換器2が蓄電池盤3を充放電させるときの電流指令値を算出する。
本発明の第2の実施形態に係る制御モード判定器101bの制御モード判定方法について、図13の演算フローを用いて以下に説明する。
図13の演算フローに示す演算処理では、制御モード判定器101bは、まずステップS201において、運転状態信号SR_STATEを確認し、SR_STATE=1の条件判定を行う。ステップS201の条件判定結果が真である場合(True)、すなわち整流システム50bが正常に動作している場合は、第1の実施形態で説明した図7のステップS101~S113と同様の処理を行い、その後ステップS214へ進む。一方、ステップS201の条件判定結果が偽である場合(False)、すなわち整流システム50bが停止している場合は、ステップS202へ進む。
ステップS202では、制御モード判定器101bは、き電線電圧V_LINEと充電開始電圧V_ABSを比較し、V_LINE>V_ABSの条件判定を行う。ステップS202の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS203へ進み、偽であれば(False)、ステップS204へ進む。
ステップS203では、制御モード判定器101bは、充電率SOCが蓄電池盤3の運用範囲内にあるか否かを判定する。ここでは図7のステップS102と同様に、運用上限値SOC_Hと運用下限値SOC_Lにより規定される充電率の範囲を蓄電池盤3の運用範囲として設定し、この運用範囲に対して、SOC_L<SOC<SOC_Hの条件判定を行う。ステップS203の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS208へ進み、偽であれば(False)、ステップS209へ進む。
ステップS204では、制御モード判定器101bは、き電線電圧V_LINEと放電開始電圧V_DISCを比較し、V_LINE<V_DISCの条件判定を行う。ステップS204の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS205へ進み、偽であれば(False)、ステップS206へ進む。
ステップS205では、制御モード判定器101bは、ステップS203と同様の条件判定を行う。ステップS205の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS210へ進み、偽であれば(False)、ステップS211へ進む。
ステップS206では、制御モード判定器101bは、図7のステップS106と同様に、前述の第三範囲に対してSOC_L<SOC<SOC3の条件判定を行う。ステップS206の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS212へ進み、偽であれば(False)、ステップS207へ進む。
ステップS207では、制御モード判定器101bは、図7のステップS104と同様に、前述の第二範囲に対してSOC2<SOC<SOC_Hの条件判定を行う。ステップS207の条件判定結果が真であれば(True)、ステップS212へ進み、偽であれば(False)、ステップS213へ進む。
ステップS203の条件判定結果が真である場合、ステップS208において、制御モード判定器101bは、制御モードの判定結果をMODE=1に設定し、電力貯蔵装置1bの制御モードを充電側電圧制御モードに切り替える。
ステップS203の条件判定結果が偽である場合、ステップS209において、制御モード判定器101bは、制御モードの判定結果をMODE=4に設定し、電力貯蔵装置1bの制御モードを待機モードに切り替える。
ステップS205の条件判定結果が真である場合、ステップS210において、制御モード判定器101bは、制御モードの判定結果をMODE=5に設定し、電力貯蔵装置1bの制御モードを放電側電圧制御モードに切り替える。この放電側電圧制御モードでは、放電側電圧制御器109を有効化し、充電側電圧制御器103、充電率制御器104、整流器サポート演算器105をリセットする。これにより、コントローラ100bにおいて、放電側電圧制御器109からの電圧指令値に応じて電力変換器2の動作を制御し、蓄電池盤3を放電させることで、き電線電圧V_LINEの安定化を行うようにする。
ステップS205の条件判定結果が偽である場合、ステップS211において、制御モード判定器101bは、制御モードの判定結果をMODE=4に設定し、電力貯蔵装置1bの制御モードを待機モードに切り替える。
ステップS206またはステップS207の条件判定結果が真である場合、ステップS212において、制御モード判定器101bは、制御モードの判定結果をMODE=3に設定し、電力貯蔵装置1bの制御モードを充電率制御モードに切り替える。
ステップS207の条件判定結果が偽である場合、ステップS213において、制御モード判定器101bは、制御モードの判定結果をMODE=4に設定し、電力貯蔵装置1bの制御モードを待機モードに切り替える。
ステップS108~S113またはS208~S213のいずれかで制御モードの判定結果をMODE=1~5のいずれかに設定したら、ステップS214において、制御モード判定器101bは、次の演算トリガまで待機する。次の演算トリガを受信したらステップS201へ戻り、図13の演算フローを再開する。これにより、図13の演算フローに従った演算処理を所定の演算周期ごとに実行し、制御モードの判定を行う。
上記の制御モード判定を制御モード判定器101bにおいて実施することにより、整流システム50bが正常に動作している場合は、第1の実施形態で説明した図8の動作マップが電力貯蔵装置1bにおいて実現される。一方、整流システム50bが運転を停止している場合は、図14の動作マップが電力貯蔵装置1bにおいて実現される。ここで、図14の横軸は充電率SOC、縦軸はき電線電圧V_LINEをそれぞれ表し、太線は充電開始電圧V_ABSと放電開始電圧V_DISCを示している。また、充電率SOCが運用下限値SOC_L、所定値SOC3、所定値SOC2および運用上限値SOC_Hとなる位置を一点破線でそれぞれ示している。これらの一点鎖線と充電開始電圧V_ABS、放電開始電圧V_DISCで区切られた各領域により、電力貯蔵装置1bの各制御モードが定義される。図14では、各領域に対応する制御モードを、変数MODEの値でそれぞれ示している。
上記のように、本実施形態によれば、サイリスタ整流器52によりき電される直流き電システム30において、電力貯蔵装置1bの蓄電要素である蓄電池盤3を余剰回生電力の充電に備えてあらかじめ放電しておくことができる。また、余剰回生電力が発生した場合には、き電線70より吸収した回生電力を蓄電池盤3に充電しておき、鉄道車両80の力行時には蓄電池盤3に蓄積された電力を放電することで、余剰回生電力の有効活用を実現することができる。さらに、蓄電池盤3の放電時には、整流器サポート演算器105が有する可変リミッタ1053の機能により、充電率SOCに応じて放電電流を制限することができる。これにより、蓄電池盤3の過放電を回避するとともに、き電回路への急峻な擾乱も回避することができる。これら第1の実施形態と同様の効果に加えて、さらに、整流システム50が動作している場合と停止している場合とで電力貯蔵装置1bの制御モードを切り替えることで、整流システム50bの運転停止時においても、蓄電池盤3の放電によりき電線電圧の過度な低下を抑制することができる。これにより、き電線電圧の安定化により一層寄与することができる。
また、本発明の第2の実施形態によれば、整流システム50bが動作している場合に(ステップS201:True)、コントローラ100bは、第1の実施形態と同様に電力変換器2の制御を行う。また、整流システム50bが停止している場合に(ステップS201:False)、コントローラ100bは、き電線70の電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABSより大きく(ステップS202:True)、かつ蓄電池盤3の充電率SOCが運用範囲内にある場合(ステップS203:True)、電力貯蔵装置1bの制御モードを充電側電圧制御モードに設定することで(ステップS208:MODE=1)、蓄電池盤3を充電してき電線70の電圧V_LINEを充電開始電圧V_ABSに近づけるように、電力変換器2bに充電運転を実行させる。一方、き電線70の電圧V_LINEが充電開始電圧V_ABSよりも低い所定の放電開始電圧V_DISCより小さく(ステップS204:True)、かつ蓄電池盤3の充電率SOCが運用範囲内にある場合(ステップS205:True)、電力貯蔵装置1bの制御モードを放電側電圧制御モードに設定することで(ステップS210:MODE=5)、蓄電池盤3を放電してき電線70の電圧V_LINEを放電開始電圧V_DISCに近づけるように、電力変換器2bに充電運転を実行させる。このようにしたので、直流き電システム30における余剰回生電力の有効活用を図りつつ、整流システム50bの運転停止時にはき電線電圧の安定化を図ることができる。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。また、各実施形態や変形例は任意に組み合わせて実施することも可能である。
上記の実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1,1b:電力貯蔵装置
2:電力変換器
3:蓄電池盤
21,24:リアクトル
22:コンデンサ
23:アーム
25,27:電流検出器
26:電圧検出器
30:き電システム
31:組電池
32:バッテリーマネージメントユニット
40:遮断器
41:正極線
42:負極線
50,50b:整流システム
51:変圧器
52:サイリスタ整流器
60:電流検出器
70:き電線
71:レール
80:鉄道車両
100,100a,100b:制御回路(コントローラ)
101,101b:制御モード判定器
102:充電開始電圧演算器
102b:充放電開始電圧演算器
103:充電側電圧制御器
104:充電率制御器
105:整流器サポート演算器
106,106b:加算器
107:電流制御器
109:放電側電圧制御器
1051:乗算器
1052:最大値算出器
1053:可変リミッタ
1054:最小値算出器
1055:切り替えスイッチ
2:電力変換器
3:蓄電池盤
21,24:リアクトル
22:コンデンサ
23:アーム
25,27:電流検出器
26:電圧検出器
30:き電システム
31:組電池
32:バッテリーマネージメントユニット
40:遮断器
41:正極線
42:負極線
50,50b:整流システム
51:変圧器
52:サイリスタ整流器
60:電流検出器
70:き電線
71:レール
80:鉄道車両
100,100a,100b:制御回路(コントローラ)
101,101b:制御モード判定器
102:充電開始電圧演算器
102b:充放電開始電圧演算器
103:充電側電圧制御器
104:充電率制御器
105:整流器サポート演算器
106,106b:加算器
107:電流制御器
109:放電側電圧制御器
1051:乗算器
1052:最大値算出器
1053:可変リミッタ
1054:最小値算出器
1055:切り替えスイッチ
Claims (11)
- 充放電可能な蓄電要素と、
前記蓄電要素とき電線の間で入出力される電力を双方向に変換して前記蓄電要素を充放電する電力変換器と、
前記電力変換器の動作を制御し、前記蓄電要素を充電する充電運転または前記蓄電要素を放電する放電運転を前記電力変換器に実行させる制御回路と、を備え、
前記き電線には、前記き電線に直流電流を出力可能な整流システムが接続されており、
前記制御回路は、
前記き電線の電圧が所定の充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が所定の運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器に前記充電運転を実行させ、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が所定の電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が第二の範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記整流システムとともに前記き電線に直流電流を出力するように、前記電力変換器に前記放電運転を実行させる、電力貯蔵装置。 - 請求項1に記載の電力貯蔵装置であって、
前記制御回路は、前記電力変換器および前記整流システムから前記き電線にそれぞれ出力される直流電流を合わせた総合電流の検出値を取得し、取得した前記総合電流の検出値に基づいて前記き電線に流れる電流を求める、電力貯蔵装置。 - 請求項1に記載の電力貯蔵装置であって、
前記制御回路は、前記電力変換器から前記き電線に出力される直流電流の検出値と、前記整流システムから前記き電線に出力される直流電流の検出値とを取得し、取得した各直流電流の検出値に基づいて前記き電線に流れる電流を求める、電力貯蔵装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電力貯蔵装置であって、
前記制御回路は、前記電力変換器に前記放電運転を実行させる際に、前記蓄電要素の充電率および前記き電線に流れる電流に基づいて、前記電力変換器から前記き電線に出力される直流電流の大きさを制御する、電力貯蔵装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電力貯蔵装置であって、
前記制御回路は、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が前記電流閾値以下であり、かつ前記蓄電要素の充電率が前記第二の範囲内にあるか、もしくは前記第二の範囲よりも低い第三の範囲内にある場合、または、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が前記電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が前記第三の範囲内にある場合、
前記蓄電要素を充放電して前記蓄電要素の充電率を所定の目標値に近づけるように、前記電力変換器に前記充電運転または前記放電運転を実行させる、電力貯蔵装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電力貯蔵装置であって、
前記制御回路は、
前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように前記電力変換器を制御する第一の制御モードと、
前記蓄電要素の充電率および前記き電線に流れる電流に基づいて放電電流指令を算出し、算出した前記放電電流指令に基づいて前記蓄電要素を放電するように前記電力変換器を制御する第二の制御モードと、
前記蓄電要素を充放電して前記蓄電要素の充電率を所定の目標値に近づけるように前記電力変換器を制御する第三の制御モードと、
前記電力変換器の動作を停止する第四の制御モードと、を有し、
前記き電線の電圧、前記蓄電要素の充電率および前記き電線に流れる電流の少なくとも一つに基づいて、前記第一の制御モード、前記第二の制御モード、前記第三の制御モードまたは前記第四の制御モードのいずれかを選択する、電力貯蔵装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電力貯蔵装置であって、
前記制御回路は、前記整流システムの運転状態を取得し、前記整流システムが動作している場合と停止している場合とで前記電力変換器の制御を切り替える、電力貯蔵装置。 - 請求項7に記載の電力貯蔵装置であって、
前記整流システムが動作している場合に、前記制御回路は、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が前記運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器に前記充電運転を実行させ、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が前記電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が前記第二の範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記整流システムとともに前記き電線に直流電流を出力するように、前記電力変換器に前記放電運転を実行させ、
前記整流システムが停止している場合に、前記制御回路は、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が前記運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器に前記充電運転を実行させ、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧よりも低い所定の放電開始電圧より小さく、かつ前記蓄電要素の充電率が前記運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記き電線の電圧を前記放電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器に前記放電運転を実行させる、電力貯蔵装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電力貯蔵装置であって、
前記第二の範囲の下限値は、前記蓄電要素の充電率で10%から40%の間に設定される、電力貯蔵装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電力貯蔵装置であって、
前記充電開始電圧は、前記整流システムの無負荷時出力電圧よりも高い値に設定される、電力貯蔵装置。 - 充放電可能な蓄電要素とき電線の間で入出力される電力を双方向に変換して前記蓄電要素を充放電する電力変換器の動作を制御することで、前記蓄電要素に貯蔵される電力を制御する方法であって、
前記き電線には、前記き電線に直流電流を出力可能な整流システムが接続されており、
前記き電線の電圧が所定の充電開始電圧より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が所定の運用範囲内にある場合、前記蓄電要素を充電して前記き電線の電圧を前記充電開始電圧に近づけるように、前記電力変換器の動作を制御し、
前記き電線の電圧が前記充電開始電圧以下であり、かつ前記き電線に流れる電流が所定の電流閾値より大きく、かつ前記蓄電要素の充電率が第二の範囲内にある場合、前記蓄電要素を放電して前記整流システムとともに前記き電線に直流電流を出力するように、前記電力変換器の動作を制御する、電力貯蔵制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022080249A JP2023168882A (ja) | 2022-05-16 | 2022-05-16 | 電力貯蔵装置、電力貯蔵制御方法 |
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