JP3817209B2 - 表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いてステンレス溶鋼を鋳造する際、浸漬ノズルの吐出流を緩慢な流れにして気泡や介在物の少ない高品質の鋳片を製造することができる表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転炉や電気炉などの精錬炉で溶製されたステンレス溶鋼は、タンディッシュから浸漬ノズルを介して鋳型に鋳造され、鋳型による冷却とこの鋳型の下方に配置された冷却帯とにより冷却しながら連続して鋳造するいわゆる連続鋳造装置を用いて鋳片を製造する方法が採用されている。(引用文献1)、(引用文献2)しかし、ステンレス溶鋼(溶鋼)中の酸化物やスラグ等の介在物、あるいはモールドパウダー等は、鋳片の凝固過程で凝固殻(シェル)に補足されて鋳片の表面欠陥になったり、製品での表面疵や加工時の割れ等を発生させる要因になっている。
【0003】
また、溶鋼をタンディッシュからモールド(鋳型)に注入する場合、浸漬ノズルの内部に介在物が付着して注湯量が変動したり、ノズル詰まりによる注湯の中断などが生じる。この浸漬ノズルの内部への介在物の付着を防止するため、浸漬ノズルの内にアルゴンガスなどの不活性ガスを吹き込みながら鋳造を行っている。しかし、吹き込まれたアルゴンガスなどは、浸漬ノズルの吐出口から鋳型内に放出され、大小さまざまな直径の気泡を形成し、大きいものは浮上し、小さい微細な気泡が溶鋼の吐出流に随伴して鋳片の深部に侵入したり、凝固して厚みを増しつつある凝固シェル(凝固殻)に補足されて気泡性の欠陥を生じる。更に、吐出流に随伴する酸化物からなる介在物も同様に鋳片の深部に侵入し、凝固シェルに補足されたり、内部に集積帯を形成して表面あるいは内部欠陥の要因になる。
【0004】
この対策として、引用文献3に記載されているように、ステンレス溶鋼の鋳造に、垂直曲げ型の連鋳機を用いて、その鋳造条件を浸漬ノズルの吐出口の角度を上向き5°〜下向き35°とし、その浸漬深さをメニスカスから下方150〜300mmにして鋳型に注湯し、0.8〜1.8m/分の鋳造速度で鋳造を行うことにより、介在物やアルゴンガス気泡などに起因した欠陥を防止しながら高速鋳造による生産性の向上を図ることが提案されている。
【0005】
【引用文献】
(a)引用文献1(特公昭61−39144号公報)
(b)引用文献2(特開平3−174962号公報)
(c)引用文献3(特開平6−262302号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、引用文献3に記載された方法では、鋳造条件である浸漬ノズルの吐出口の形状は、浸漬ノズルの内側から外側に至る直径が同じ直径の円筒状で、且つ、上向き5度〜下向き35度の範囲を満たすようにしているため、吐出口の中央あるいは中央から下方に強い流れを有する溶鋼流(吐出流)が形成される。その結果、強い吐出流は、湯面変動やパウダーの巻き込みを招き、しかも、気泡や介在物がこの吐出流に随伴して鋳片の深部に侵入し、鋳片の品質を阻害する等の問題がある。
【0007】
更に、鋳造作業は、タンディツシュ内にステンレス溶鋼を注湯し、浸漬ノズルから鋳型に注湯を開始する直後以降の低速域と、注湯と引き抜きが安定した安定鋳造領域と、鋳造末期の低速域となる非定常の各領域が必ず生じる。この低速域となる鋳造初期や鋳造末期、あるいは鋳造中におけるブレークアウトや軽微な設備トラブル等の減速鋳造鋳造を行う非定常部では、浸漬ノズルからの溶鋼の吐出流が少なくなるため、溶鋼の吐出流による凝固シェルの内面のシェルウォシング効果が小さく、凝固シェルに気泡や介在物の補足が増加して鋳片の品質を悪化させるという問題がある。
【0008】
一方、鋳造が安定している領域においても、鋳型に浸漬した浸漬ノズルの周辺部では、鋳型と浸漬ノズルとの隙間が狭くなり、溶鋼の流れに淀みを生じ、淀み部では、溶鋼が冷却され易く温度低下やシェルウォシング効果が低下し、凝固シェルの薄い部分(表層部)に介在物やアルゴンガス気泡の補足が増加する欠点がある。
【0009】
また、垂直曲げ型の連続鋳造装置を用いてステンレス溶鋼を鋳造して鋳片を製造する場合、引き抜き速度に相当するm/分を指標にすると、鋳型のサイズによって浸漬ノズルの吐出口からの溶鋼の吐出量が変化し、吐出流が変動する。そして、鋳型サイズの大きい場合では溶鋼の吐出流によるシェルウォシング効果が低下する傾向となる。一方、鋳型サイズの小さい場合では溶鋼の吐出流が強くなり、強い下向きの下降流の形成により、気泡や介在物が鋳片の深部に侵入して鋳片の品質を悪化させる等の問題がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、ステンレス溶鋼を鋳造する際に、浸漬ノズルからの溶鋼の吐出流を緩慢にして形成される下降流や上向き流を抑制し、メニスカスへの熱付与を良好にして、鋳片の表面に生じる気泡や介在物に起因する欠陥と、鋳片の内部の介在物欠陥を防止して品質に優れた鋳片を高速鋳造で安定して製造することができる高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法は、垂直部を有する曲げ型連続鋳造機を用いてタンディッシュ内の溶鋼を浸漬ノズルを介して鋳型に注湯する垂直曲げ連鋳機を用いたステンレス溶鋼の鋳造方法において、吐出口を浸漬ノズルの軸心に対して内側から外側に拡角にし、該吐出口は縦断面における吐出口上側は上向き角度を有して15度以下とし、吐出口下側は下向き角度を有して45度以下とし、更に当該浸漬ノズルを鋳型内に浸漬して溶鋼を注湯し、該注湯量を5.0トン/分以下にして鋳造する。
【0012】
この方法により、浸漬ノズルの吐出口を拡角にし、且つ、注湯する溶鋼量が5.0トン/分以下を満たすようにするので、溶鋼の吐出流が強くなるのを抑えて略均一流れにすることができ、溶鋼の吐出流によるパウダーの巻き込みや下向流に随伴して鋳片の深部に侵入する気泡や介在物を抑制することができる。
なお、注湯量が5トン/分を超えると、吐出口からの溶鋼の吐出流が強くなり、パウダーの巻き込みや下向流に随伴して鋳片の深部に侵入する気泡や介在物が増加して鋳片の品質を阻害する。
【0013】
ここで、前記浸漬ノズルの吐出口が浸漬ノズルの軸心に対して外側方向に上向き15度〜下向き45度の角度の範囲以内となる拡角の吐出口にすると良い。
これにより、浸漬ノズルからの吐出流が凝固シェルに当たり反転した上向き流あるいは下向流が強くなるのを抑えて緩慢な流れにすることができ、パウダーの巻き込みや湯面変動と、溶鋼に随伴した気泡や介在物が鋳片の深部に侵入するのを抑制することができ、鋳片の表層や内部に発生する欠陥を防止することができる。
【0014】
なお、浸漬ノズルの吐出口の角度が上向き15度が超えると、上向流が多くなり、この上向流によってパウダーの巻き込みが発生する。一方、吐出口の角度が下向き45度を超えると、下向流が多くなって溶鋼に随伴した気泡や介在物が鋳片の深部に侵入し、鋳片の表層や内部に気泡や介在物に起因した欠陥が生じ易くなる。この理由から上向き10度〜下向き35度にするとより好ましい。
浸漬ノズルの拡角の吐出口は、浸漬ノズルの軸心を基準にして内側から外側に広がりの角度を有するもので、例えば、ラッパ状の広がりを有するもの等を言う。
【0015】
更に、前記浸漬ノズルの浸漬深さをメニスカスから下方に100〜350mmにして鋳型に注湯することができる。これにより、浸漬ノズルの吐出流による湯面変動やパウダーの巻き込み、あるいは気泡や介在物の鋳片深部への侵入を抑制することができる。なお、浸漬ノズルの浸漬深さが100mm未満になると、溶鋼の吐出流による湯面変動やパウダーの巻き込みが生じて鋳片の品質を阻害する。一方、浸漬深さが350mmを超えると、吐出流が反転して形成される下向き流が強くなり、この下向き流に随伴する気泡や介在物が増加して鋳片の品質を阻害する。
【0016】
また、前記浸漬ノズルの内径Dと吐出口の直径dの比が1.0〜1.5にすることが好ましい。これにより、吐出口からの溶鋼の吐出流速を低減でき、しかも、鋳造中における吐出流の偏流を抑制することができる。更に、吐出口に付着物が生成した場合、吐出流の偏流を小さくすることができる。
なお、浸漬ノズルの内径Dと吐出口の直径dの比(D/d)が1.0未満になると、吐出口が大きくなり過ぎ、吐出口の上方に溶鋼流の淀みが生じ、下向きの吐出流が増加し、この吐出流に随伴して気泡や介在物が鋳片の深部に侵入して鋳片の欠陥の要因になる。一方、鋳型内部での湯面近傍への熱供給が不足し、デッケルの発生が生じ易くなる。
【0017】
また、浸漬ノズルの内径Dと吐出口の直径dの比(D/d)が1.5超になると、吐出口が小さくなり過ぎて浸漬ノズル詰まりによる偏流が生じ易く、左右いずれかの吐出口により片寄る偏流が発生し易くなり、気泡や介在物の深部への侵入や上向き流に起因したパウダーの巻き込みや湯面変動等が生じ易くなる。
更に、吐出口を大きくするため、浸漬ノズルの内径Dが大きくすると、浸漬ノズルの全体が大きくなり、浸漬ノズル交換作業に支障を招き、耐火物のコストも高くなる。
【0018】
更に、前記浸漬ノズルの吐出口の外周の少なくとも50%以上が浸漬ノズルの軸心に対して外側方向に拡角の角度を有することが好ましい。これにより、吐出口の拡角を少なくとも50%以上にしているので、浸漬ノズルの吐出口の加工が容易になると共に、溶鋼の吐出流速を低減でき、しかも、鋳造中における吐出流の偏流を抑制でき、浸漬ノズルの直径が大きくなるのを抑制して使用する耐火物のコストを低減することができる。なお、外側方向に拡角の角度を有する範囲が吐出口の外周線の50%未満になると、吐出流の流れを緩慢にする効果が減少し、且つ、吐出口の詰りが発生した際に溶鋼の偏流が生じ易くなる。
【0019】
また、前記鋳型内に注湯された溶鋼を電磁攪拌することが好ましい。これにより、鋳型の内周に旋回する溶鋼流を形成して浸漬ノズル近傍の淀みを解消し、凝固シェルの内表面のシェルウォシング効果を高めて、凝固シェルの内表層に補足される気泡や介在物を除去し、品質の良好な表層を備えた鋳片を製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明の形態に係る高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置の説明図、図2は同浸漬ノズルの断面図、図3は浸漬ノズルの内径D/吐出口の内径dと成品不合発生指数の関係を表すグラフ、図4は注湯量と成品不合発生指数の関係を表すグラフである。図1に示すように、連続鋳造装置1は、ステンレス溶鋼(溶鋼)2を図しない取鍋から注湯して溜めるタンディッシュ3と、タンディッシュ3の下部に取り付けられた浸漬ノズル4を設けている。
【0021】
更に、浸漬ノズル4から注湯され、吐出口5から流出した溶鋼2を冷却して凝固シェル6を形成する鋳型7と、その鋳型7で冷却された内部が溶融状態の鋳片8を支持しながら鋳片に散水して鋳片を冷却する複数の散水ノズルを配置した支持セグメント9を備えており、鋳片8は冷却により凝固厚みを増しながら図示しないピンチロールにより所定の速度で引き抜きが行われる。鋳型7には、メニスカス(湯面)の上にパウダー10が添加されており、吐出口5から流出した溶鋼2の熱によりその一部が溶融層を形成し、鋳型7と凝固シェルの隙間に流入して潤滑を良好に行うようにしている。
【0022】
また、鋳型7の外部には、鋳型内の溶鋼2を攪拌する電磁攪拌装置11a、11bを備えている。浸漬ノズル4は、図2に示すように、浸漬ノズルの下部に左右対称に二つの吐出口5を有し、この吐出口5の角度Qが浸漬ノズル4の軸心xに対して上15°〜下向き45°の範囲以内の条件を満たすようにし、しかも、軸心xに対して内側から外側に直径を大きくした拡角状、あるいはラッパ状に形成されている。この浸漬ノズルへのアルゴンガスの供給は、図示しない浸漬ノズル4の上方に配置される上ノズルから吹き込まれる。
【0023】
次に、本発明に形態に係る高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法について連続鋳造装置を用いて説明する。
ステンレス溶鋼(溶鋼)2をタンディッシュ3に注湯し、タンディッシュ3内の溶鋼2が20〜25トン程度溜まつた時点で、取鍋から注湯を継続しながらタンディッシュ3の底部に取り付けた浸漬ノズル4から鋳型7への注湯を開始する。そして、鋳型7内に所定の溶鋼が注湯された時点で、一旦1分間程度ホールドし、十分に凝固シェルを形成した後、ダミーバーの引き抜きを開始しながら溶鋼2を鋳型7に注湯を行い、溶鋼2のメニスカスが鋳型7の上端より下100mm程度の位置まで上昇させて鋳造を行う。
【0024】
この鋳型7への注湯は、浸漬ノズルの吐出口を拡角にし、且つ、注湯する溶鋼量が5.0トン/分以下を満たすようにするので、溶鋼の吐出流が強くなるのを抑えて吐出流を緩慢な流れにすることができ、良好な吐出流の形成により、溶鋼の吐出流によるパウダーの巻き込みや下向流に随伴して鋳片の深部に侵入する気泡や介在物を抑制することができる。この注湯量は、5トン/分より多くなるとまた、吐出口からの溶鋼の吐出流が強くなり過ぎ、パウダーの巻き込みや下向流に随伴して鋳片の深部に侵入する気泡や介在物が増加して鋳片の品質を阻害する。
【0025】
更に、浸漬ノズルの吐出口の拡角は、浸漬ノズルの軸心に対して外側方向に上向き15度〜下向き45度の角度の範囲以内で、その吐出口の外周の少なくとも50%の領域が拡角の吐出口となるようにすることができ、その浸漬深さ(L)を100〜350mmにすることにより、浸漬ノズルからの吐出流が均一で緩慢な流れになり、しかも、凝固シェルに当たり反転した上向き流あるいは下向流が強くなるのを抑えることができ、パウダーの巻き込みや湯面変動と、溶鋼に随伴した気泡や介在物が鋳片の深部に侵入するのを抑制することができ、鋳片の表層や内部に発生する欠陥を防止することができる。
【0026】
図2は本実施の形態に用いた浸漬ノズルであり、吐出口は、浸漬ノズル4の軸心xに対し、内側から外側方向に吐出口の全外周を拡角したラッパ状にした場合であり、且つ、その角度Qを上向き15度〜下向き45度の範囲にしたものを用いた。浸漬ノズルの本体の直径(内径)Dと吐出口の直径dの比であるD/dが1.0〜1.5となるようにし、浸漬ノズルの内部を通過した溶鋼が吐出口から鋳型内部に流出する溶鋼流を均一で緩慢な流れにすることができ、鋳型内への溶鋼流の偏流を解消し、溶鋼流がメニスカスへ過剰に作用するのを抑制して、湯面の変動やデッケルの生成を防止する。
【0027】
しかも、過剰な下向き流の形成を抑制することにより、気泡や介在物が鋳片の深部に侵入するのを抑制して鋳片の表面および内部欠陥を防止することができる。ここで、浸漬ノズルの吐出口の角度が上向き15度が超えると、上向流が強くなり、この上向流によってパウダーの巻き込みが発生する。一方、吐出口の角度が下向き45度を超えると、下向流が強くなって溶鋼に随伴した気泡や介在物が鋳片の深部に侵入し、鋳片の表層や内部に気泡や介在物に起因した欠陥が生じ易くなる。
【0028】
更に、その浸漬深さ(L)が100mmよりも浅くなると、吐出流による湯面変動やパウダーの巻き込み増加し、一方、350mmを超えて深くなると、下向流が強くなって溶鋼に随伴した気泡や介在物が鋳片の深部に侵入する。
これ等の理由から、上向き10度〜下向き30度にし、浸漬深さを150〜300mmにするとより好ましい。なお、浸漬ノズルの拡角の吐出口は、浸漬ノズルの軸心を基準にして、内側から外側に拡角状の広がりを形成したものであれば良く、浸漬ノズル本体は、一般に用いられている分割型やタンディッシュに取り付けた一体型のものを用いることができる。
【0029】
また、連続鋳造では、鋳造を開始してから定常速度に到達するまでの間、あるいは、1.2〜5トン/分以下の定常の鋳造速度で鋳造中において、パウダー10の潤滑不良や湯面変動等によってブレークアウトの危険性がある場合では、注湯量を限りなく少なくするか、又は0.6トン/分未満の注湯量であり、一方、連々鋳造(鍋交換を行い連続して鋳造を行う)等の場合には、取鍋の交換時間のとの関係から浸漬ノズル4からの注湯量を極端に低くした鋳造を行う必要がある。
【0030】
一方、定常の鋳造速度で鋳造中であっても、浸漬ノズル4の吐出口5の左右の溶鋼2の流れに偏流を生じることがあり、この吐出流によって鋳型7内の流動が不安定になり、特に、浸漬ノズル4が浸漬された近傍では、浸漬ノズル4と内壁との隙間が狭くなっているため、この部位での溶鋼2の流れが低下し、鋳片8の幅方向での均一な流れが得られず、流動の変動に起因する淀みが発生する等いずれにおいても鋳片8の品質の阻害が懸念される。
【0031】
従って、より品質の優れた鋳片を製造するには、鋳型7内に形成されるメニスカスより下方近傍200〜350mmの範囲のいずれかに、電磁攪拌装置11a、11bに通電して鋳型4の内周壁を旋回する溶鋼2の流れを形成する。この溶鋼2の流れは、凝固シェルの内表面を溶鋼2の流れで洗浄することができ、気泡や介在物が補足されるのを防止して、気泡や介在物の少ない良好な凝固シェルを形成することができる。
【0032】
更に、浸漬ノズル4にアルゴンガスを吹き込むことも可能であり、その場合、浸漬ノズル4の上方に配置した上ノズルから吹き込むアルゴンガスを吹き込むことができ、その量は、4NL/分以下で行われ、浸漬ノズル4の内部に介在物が付着するのを抑制し、鋳型7内の溶鋼2中に混入した介在物の浮上を促進することができる。このアルゴンガスの吹き込み量が4NL/分を超えて多くなると、アルゴンガス気泡が増加し、凝固シェル6に補足される気泡も増加して鋳片8の品質を阻害する。
【0033】
また、本実施の形態では、カーボン、シリカのいずれか、あるいは両方の含有量をゼロ又は5質量%未満にした浸漬ノズル、あるいはドロマイト成分(CaO−MgOが主成分)系等の難付着性浸漬ノズルを用いることができる。この難付着性浸漬ノズルの場合は、浸漬ノズルの内面に介在物の付着が少なく、吐出口5の詰まりが生じないので、アルゴンガスの吹き込みを行わない鋳造が可能になり、アルゴンガスに起因する気泡欠陥を防止することができるため、より好ましい結果が得られる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明の一実施の形態に係る高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法の実施例について説明する。
厚み250mm、幅1200mmの鋳型に、吐出口の大きさ60Фを拡角の吐出口にし、浸漬ノズルの内径D/吐出口の直径を所定の範囲にした浸漬ノズルをメニスカスより下方250mmとなるように浸漬し、電磁攪拌装置(MD−EMS)に0.4Mwの出力を付与した場合と電磁攪拌を行わない場合について鋳造を行った。その結果、図3に示すが浸漬ノズルと吐出口の直径D/dを1.0〜1.5とした範囲では、拡角の吐出口にすることによる吐出流の緩慢な形成による効果により成品不合発生指数が良好であり、電磁攪拌装置(MD−EMS)を併用することにより成品不合発生指数がさらに大幅に改善され、良品質の鋳片を製造することができる。更に、浸漬ノズル吐出口の拡角の有無、吐出口の拡角の角度の異なる浸漬ノズルを鋳型内に浸漬し、溶鋼を注湯しながら鋳造した場合と、電磁攪拌(MD−EMS)を併用した場合について実施した。
【0035】
その結果、図4に示すように吐出口の拡角を行わず従来の吐出口にした浸漬ノズルを用いた場合(×)では、注湯量の如何にかかわらず成品不合発生指数が0.4以上となり、バラツキも大きくなり悪い結果となった。しかし、吐出口を拡角にし、浸漬ノズルのD/dを1.0〜1.5の範囲にして鋳造を行った場合(○)では、成品不合発生指数を0.3以下にすることができ、品質の良好な鋳片を製造することができた。
【0036】
更に、吐出口を外周が50%の拡角にし、浸漬ノズルのD/dを1.0〜1.5の範囲にして鋳造を行った場合(▲)でも成品不合発生指数を0.25以下にすることができ、品質の良好な鋳片を製造することができた。また、吐出口を拡角にし、浸漬ノズルのD/dを1.0〜1.5の範囲にし、鋳型内の溶鋼を電磁攪拌(MD−EMS)を行い鋳造した場合(●)では、表面及び内部欠陥の発生が無く、成品不合の発生を安定して防止した鋳片を製造することができ、この鋳片を加工した鋼材の品質も良好であった。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の範囲である。
例えば、鋳型に配置する電磁攪拌装置は、鋳型内の溶鋼を攪拌する電磁攪拌装の他に、鋳片の支持セグメントに配置して、未凝固の溶鋼を攪拌することもできる。更に、浸漬ノズルの吐出口は、円形あるいは四角形や長方形などの矩形状のものを用いることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1〜6記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法においては、垂直部を有する曲げ型連続鋳造機を用いてタンディッシュ内の溶鋼を浸漬ノズルを介して鋳型に注湯する垂直曲げ連鋳機を用いたステンレス溶鋼の鋳造方法において、吐出口を浸漬ノズルの軸心に対して内側から外側に拡角にした浸漬ノズルを鋳型内に浸漬して注湯し、該注湯量を0.6〜5.0トン/分にして鋳造するので、溶鋼の吐出流が強くなるのを抑えて鋳型の幅方向における溶鋼の流れを均一にして、溶鋼の吐出流によるパウダーの巻き込みや下向流に随伴して鋳片の深部に侵入する気泡や介在物を抑制することができ、鋳片の品質を良好にすることができる。
【0039】
特に、請求項2記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法においては、ノズルの吐出口が浸漬ノズルの軸心に対して外側方向に上向き15度〜下向き45度の角度の範囲以内の拡角にするので、吐出流を緩慢な流れにすることができ、しかも、吐出口の詰まりに起因する溶鋼の吐出流の偏流を抑制して表面及び内部欠陥の発生の無いより良品質の鋳片にすることができる。
【0040】
請求項3記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法においては、浸漬ノズルの浸漬深さをメニスカスから下方に100〜350mmにして鋳型に注湯するので、浸漬ノズルの吐出流による湯面変動やパウダーの巻き込み、あるいは気泡や介在物の鋳片深部への侵入を抑制し、鋳片の品質を向上することができる。
請求項4記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法においては、前記浸漬ノズルの内径Dと吐出口の直径dの比が1.0〜1.5にするので、吐出口からの溶鋼の吐出流速を低減でき、しかも、鋳造中における吐出流の偏流を抑制することができ、吐出流の偏流に起因する鋳片の欠陥を防止することができる。
【0041】
請求項5記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法においては、前記浸漬ノズルの吐出口の少なくとも50%以上が浸漬ノズルの軸心に対して外側方向に拡角の角度を有するので、吐出口の拡角を少なくとも50%以上にしているので、溶鋼の吐出流速を低減して鋳造中における吐出流の偏流を抑制でき、浸漬ノズルの全体の強度が低下するのを防止することができる。
請求項6記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法においては、鋳型内に注湯された溶鋼を電磁攪拌するので、鋳型の内周に旋回する溶鋼流を形成して浸漬ノズル近傍や凝固シェルの内表面のシェルウォシング効果を高め、凝固シェルに補足される気泡や介在物を除去し、品質の良好な表層を備えた鋳片を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置の説明図である。
【図2】連続鋳造装置に用いる浸漬ノズルの断面図である。
【図3】浸漬ノズルの内径D/吐出口の内径dと成品不合発生指数の関係を表すグラフである。
【図4】注湯量と成品不合発生指数の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
1 連続鋳造装置
2 ステンレス溶鋼(溶鋼)
3 タンディッシュ
4 浸漬ノズル
5 吐出口
6 凝固シェル
7 鋳型
8 鋳片
9 支持セグメント
10 パウダー
11a、11b 電磁攪拌装置
D 浸漬ノズルの内直径
d 吐出口の内直径
Claims (5)
- 垂直部を有する曲げ型連続鋳造機を用いてタンディッシュ内の溶鋼を浸漬ノズルを介して鋳型に注湯する垂直曲げ連鋳機を用いたステンレス溶鋼の鋳造方法において、吐出口を浸漬ノズルの軸心に対して内側から外側に拡角にし、該吐出口は縦断面における吐出口上側は上向き角度を有して15度以下とし、吐出口下側は下向き角度を有して45度以下とし、更に当該浸漬ノズルを鋳型内に浸漬して溶鋼を注湯し、該注湯量を5.0トン/分以下にして鋳造することを特徴とする表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1記載の高品質ステンレス鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズルの浸漬深さをメニスカスから下方に100〜350mmにして鋳型に注湯することを特徴とする表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1又は2記載の表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズルの内径Dと吐出口の直径dの比が1.0〜1.5にすることを特徴とする表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズルの吐出口の外周の少なくとも50%以上が浸漬ノズルの軸心に対して外側方向に拡角の角度を有することを特徴とする表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面及び内部欠陥の発生を防止するステンレス鋳片の連続鋳造方法において、前記鋳型内に注湯された溶鋼を電磁攪拌することを特徴とするステンレス溶鋼の連続鋳造方法。
Priority Applications (1)
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