JP3588411B2 - ステンレス鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、割れ感受性の高いステンレス鋼の連続鋳造方法に係り、更に詳しくは、鋳片の表面欠陥及び内部欠陥を低減して、鋳片の無手入れ化を促進することができると共に、普通鋼並みの高い生産性を得ることができるステンレス鋼の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、製鉄所では一基の連鋳機を用いて普通鋼や高炭素鋼、ステンレス鋼など種々の鋼材を混在生産している。ところが、ステンレス鋼は割れ感受性の高い鋼材であるため、低速鋳造を余儀なくされ、この結果、大量生産する際の連鋳機の生産能力を低下させている。また、低速鋳造をしても鋳片の表層に表面割れや表面疵などの表面欠陥が発生し、グラインダー等による研削処理が必要であるなど、手入れ負荷率が高くなって、更に連鋳機の生産能力を低下させている。
【0003】
そして、このような鋳片の表面欠陥あるいは内部欠陥の発生を抑制するための方法として、例えば以下の(1) 〜(3) に示すような方法が知られている。
(1) 特開平7−88597号公報には、150℃以上の温度で加熱炉に投入するステンレスであって、垂直曲げ連鋳機を用いて鋳片を未凝固状態で曲げ、未凝固状態あるいは完全凝固状態以後で矯正加圧を行う方法が記載されている。
(2) 特開昭59−191547号公報には、鋳型振動のストロークが4〜9mm、鋳型振動数が80〜150cpmとなる鋳造条件で、1300℃における粘度が1.9〜2.7ポイズのパウダーを鋳型内の溶鋼面に投入して鋳片を鋳造するフェライト系ステンレス鋼の連続鋳造法が記載されている。
(3) 特開平6−262302号公報には、浸漬ノズルの吐出孔の角度を上向き5゜から下向き35゜の範囲にして、吐出孔をメニスカスから150〜300mm下方の位置に設定して鋳造する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記(1) 〜(3) の方法では以下のような問題点があった。
(1) 特開平7−88597号公報の方法では、垂直曲げ型の連鋳機を使用するので介在物の浮上が促進されるものの、鋳片を未凝固状態あるいは完全凝固状態以後で矯正加圧を行うために内部割れ等の欠陥が増加するという課題があった。
また、連続鋳造初期における凝固殻の生成に伴うパウダーの巻き込みの発生や鋳型壁と凝固殻との相互運動に伴う表面疵の発生を効果的に抑制する手段がなく、凝固後の鋳片の手入れ負荷が大きくなる。
(2) 特開昭59−191547号公報の鋳型振動のストローク、鋳型振動数、及びパウダー粘度を特定範囲に調整する方法では、パウダーの鋳型壁近傍部分への巻き込みによる表面疵に対しては有効となるが、高速鋳造化に伴って生成する溶鋼中介在物の浮上を促進させる効果はなく、同様な条件下では鋳片の表面割れ欠陥の発生や鋳片の内部欠陥の発生を抑制することが困難である。
(3) 特開平6−262302号公報の浸漬ノズルの吐出孔の角度、及び吐出孔の位置を規定することにより介在物の浮上を促進して内部欠陥を防ぐ方法では、特に鋳造後期の鋳片の曲げあるいは曲げ戻し等の矯正操作を調整する手段がないために、この矯正操作に伴って生じる表面割れ欠陥と内部割れの発生を効果的に防止することができない。
ここで、図18〜図23を参照して、連続鋳造される鋳片に発生する表面欠陥及び内部欠陥との関係について詳細に説明する。
図18に示すように、図示しないタンディッシュから浸漬ノズル101を介して鋳型100内へ溶鋼107を注湯する際、この鋳型100中に、図中、矢印で示すような上、下向きの溶鋼流103、104が発生する。
【0005】
上向きの溶鋼流103に注目すると、低速鋳造ならば、図19に示すように鋳片108の凝固シェル105の内面にアルミナなどの酸化物系非鉄介在物102が付着して、いわゆる表層介在物と称される表面欠陥が発生し、一方、高速鋳造であれば、浸漬ノズル101から吐出される溶鋼量の増加に伴う上向きの溶鋼流103の流速増加によって、この酸化物系非鉄介在物102がシェルウォッシングされて、上方へ押し流される。
【0006】
ところが、この上向きの溶鋼流103の流速が速過ぎると、この除去された酸化物系非鉄介在物102が溶鋼107の中央部に深く沈み込んで、この酸化物系非鉄介在物102の比重が、溶鋼107の比重より小さくても、湯面近傍に浮上することができず、そのまま、溶鋼107の凝固に巻き込まれて、いわゆる内部介在物と称される内部欠陥が発生するという問題がある。
また、前記と同様、この流速の速い上向きの溶鋼流103によって、湯面に浮遊するパウダー106が、溶鋼107の中央部に深く沈み込んで、そのまま溶鋼107の凝固時に巻き込まれて、内部介在物が発生するという問題がある。
【0007】
一方、下向きの溶鋼流104に着目すると、前記と同様、浸漬ノズル101から吐出される溶鋼量の増加に伴う下向きの溶鋼流104の流速増加によって、溶鋼107中の酸化物系非鉄介在物102が、溶鋼107中に深く沈み込んで、そのまま溶鋼107の凝固に巻き込まれて、内部介在物が発生するという問題がある。
また、通常、連続鋳造では、浸漬ノズル101の内面に付着する酸化物系非鉄介在物102を除去するため、この浸漬ノズル101やタンディッシュノズルからArガスなどの不活性ガスを吹き込んでいる(図18参照)。
【0008】
ところが、この不活性ガス(又はその気泡)も、前記と同様、上、下向きの溶鋼流103、104によって、低速鋳造であれば、鋳片108の表層にいわゆるArガス気泡と称される空孔からなる表面欠陥を発生し、高速鋳造であれば、鋳片108の内部にやはりArガス気泡と称される内部欠陥を発生するという問題がある。
また、連鋳機の二次冷却帯では、通常、図20に示すように、鋳片108の引き抜き方向に沿って、剛性の高い大径ロール112を複数配設すると共に、この鋳片108の引き抜き方向に沿って隣り合う大径ロール112の間から鋳片108に向かって冷却水を噴射する図示しないスプレーノズルを配設している。
【0009】
このため、図示するように、鋳片108の引き抜き方向に沿って隣り合う大径ロール112の間で、鋳片108の凝固シェル105が、溶鋼107の静圧によって外側に膨らむ、いわゆるバルジングが発生すると共に、このバルジングに伴って鋳片108の凝固シェル105に、図20中、矢印で示すような引張応力がかかって内部割れ109と称される内部欠陥が発生するという問題がある。
【0010】
また、通常、鋳片108の短辺側の鋳片支持が短過ぎる場合、図21に示すように、鋳片108の短辺側が丸く膨らむバルジングが生じると共に、鋳片108のコーナー部が、放熱が激しく過冷却されていることによって、このバルジングに伴って、鋳片108の凝固シェル105に、図21に示すようなコーナー縦割れ110と称される表面欠陥が発生するという問題がある。
更に、鋳片108のコーナー部が過冷却された後、延びの小さい凝固組織となるため、連鋳機の二次冷却帯の矯正部における引張応力によって、図21に示すようなエッジ割れ113と称される表面欠陥が発生するという問題がある。
【0011】
また、連鋳機の二次冷却帯の矯正部では、図22に示すように上、下一対のピンチロール114によって、鋳片108を直線状に矯正している。ところが、この矯正によって、図22中、矢印で示すような引張応力が生じて内部割れ115と称される内部欠陥が発生するという問題がある。
更に、ステンレス鋼は普通鋼に比べて凝固収縮率が大きいため、図23に示すように、鋳片108と鋳型100間にエアーギャップ111を生じ易い。このため凝固シェル105の形成速度が遅くなって、前述したバルジングやこのバルジングに伴う表面欠陥、内部欠陥等を引き起こすという問題がある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高速鋳造条件下で問題となる鋳片の表面欠陥、及び内部欠陥の発生を抑制して、生産性の高い操業を行うことのできるステンレス鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、溶鋼を冷却する鋳型と該鋳型から引き抜かれる鋳片を冷却する二次冷却帯とを備えた連鋳機を用いてステンレス鋼を製造するステンレス鋼の連続鋳造方法において、タンディッシュから浸漬ノズルを介して前記鋳型内へ前記溶鋼を注湯しつつ、該浸漬ノズル及び/又はタンディッシュノズルを介して該鋳型内へ不活性ガスを20L/min以下の流量で吹き込むと共に、オッシレーション振動させる前記鋳型のtN(sec)値を0.25以下とし、且つ該鋳型内の湯面レベルの変動幅を10mm以内として、グリッド及び/又はサポートロールを用いて該鋳型の下端から連続して0.6〜2mとなる範囲の前記鋳片の短辺側を支持し、前記鋳型の下端から前記鋳片の完全凝固位置までの少なくとも一部領域において前記鋳片の板厚を1.3〜5%の縮小率で狭めながら、前記溶鋼を0.8〜1.6m/minの鋳造速度で連続鋳造する。
【0014】
請求項2記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯の少なくとも1つの冷却ゾーンで前記鋳片の板幅方向両端部への注水を停止状態に維持する。
請求項3記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1又は2記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記鋳型の鋳造壁面に深さ1m当たり1.1〜1.4%の割合で縮小するテーパーを設けている。
【0015】
請求項4記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯に沿って前記鋳型の下端から4m以内を通過する前記鋳片に、前記二次冷却帯の全冷却水量の40%以上の冷却水を吹き付ける。
請求項5記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯を通過する前記鋳片の板幅方向両端部にエアーを吹き付ける。
請求項6記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯の矯正部及び/又はその近傍を通過する前記鋳片の圧縮鋳造を行う。
【0016】
請求項7記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯の湾曲部を通過する未凝固状態の前記鋳片の少なくとも一カ所を電磁攪拌する。
請求項8記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記二次冷却帯の水平部における少なくとも1つの冷却ゾーンの注水を停止状態に維持する。
請求項9記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記連鋳機を経た前記鋳片の板幅方向両端部を保温及び/又は加熱する。
請求項10記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記鋳型内に供給される溶鋼の鋳造量が2.0T/min以上である。
請求項11記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法において、前記連鋳機が湾曲型連鋳機である。
【0017】
ステンレス鋼には、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系等のステンレスを挙げることができる。
二次冷却帯を備えた連鋳機として具体的には、図8に示すような垂直曲げ型連鋳機Bや、図9に示すような湾曲型連鋳機Aを挙げることができる。
不活性ガスとしてはArガスなどを挙げることができる。その流量(吹き込み量ともいう)は20L/min以下とし、好ましくは2〜20L/min、さらに好ましくは3〜10L/minとするのが望ましい。
これは、不活性ガスの流量が3L/min未満になると、即ち、不活性ガスの流量が少な過ぎると、不活性ガスによる酸化物系非鉄介在物の浮上促進を図ることができなくなったり、浸漬ノズル内に酸化物系非鉄介在物が付着し易くなったり、或いは、この付着物の断続的な剥離等が生じて連鋳操業が不安定になったりする傾向が現れ、特に2L/min未満になるとその傾向が著しくなるからである。
逆に、不活性ガスの流量が20L/minを超えると、即ち、不活性ガスの流量が多過ぎると、鋳型内の湯面で不活性ガスが破泡する、いわゆるボイルが生じ易くなって、溶鋼の湯面に浮遊するパウダーの巻き込み又は不活性ガス気泡が鋳片の表層にトラップされて表面疵の原因となる傾向が現れるからである(図10〜図12参照)。
【0018】
tN値とは、オッシレーション振動する鋳型と溶鋼との相互運動を評価するための評価指数であり、鋳造速度V(m/分)、鋳型の振動幅s(mm)及び鋳型の振動数f(サイクル/分)の値を用いて下式から求められ、正の範囲で定義される値(単位は秒(sec)、以下同じ)である。
tN=(60/(π・f))・cos-1(V/(π・s・f))
このtN値が0.25を超えると、鋳型壁と初期凝固殻との相対運動が不適性な状態となって、鋳片の面状に生じるオッシレーションマークの深さ(つめの深さ)が増して表面疵に起因する表面欠陥の発生率が増えるので好ましくない(図10、11参照)。
【0019】
ステンレス鋼の連続鋳造方法において、湯面レベルの変動幅を10mm以内に制御することが以下の理由から望ましい。
湯面レベルの変動幅が10mm(±5mm)より大きくなると、パウダーの巻き込みや初期凝固のつめの形成が不安定となり、鋳片表層への介在物の噛み込みや介在物のトラップが発生し、表面欠陥が増加する。更に鋳造速度、振動数、振動幅等の鋳造因子の制御範囲が大きくなるために前記鋳型壁と初期凝固殻との相対運動の適正化を図ることが困難になる(図10〜12参照)。
【0020】
図2に示すように鋳片の短辺側を支持するサポートロールやグリッドを配置する場合、二次冷却帯に沿って鋳型の下端から下方に向かって連続して0.6〜2mの範囲内、好ましくは鋳型の下端から0.8〜1.2mとなる範囲に配置する、即ち最下端に配置されるサポートロール又はグリッドの位置と鋳型の下端位置との間の距離Lの範囲を0.6〜2m好ましくは0.8〜1.2mとなるように設定することが好ましい。
これは、鋳型の下端から0.6m未満の範囲内にだけサポートロールやグリッドを配置すると、鋳片の短辺側の支持が短過ぎて、バルジングやこのバルジングに起因するコーナー縦割れやエッジ割れが発生する傾向が現れるからである。
逆に鋳型の下端から2mを超えてサポートロールやグリッドを配置すると、例えばサポートロールを配置していた場合、このサポートロールが熱変形を生じて、強冷却された鋳片を強く押圧し、この結果、コーナー縦割れやエッジ割れ等の表面欠陥が生じる傾向が現れる。
【0021】
ステンレス鋼の鋳造速度は0.8m/min〜1.6m/minとするのが望ましい。これは、鋳造速度が0.8m/min未満になると不活性ガスの流量等にも依るが、鋳片に表面欠陥が発生する傾向が現れるからである(図10〜図15参照)。逆に、鋳造速度が1.6m/minを超えると、鋳片に内部欠陥が発生する傾向が顕著になるからである。
【0022】
圧縮鋳造とは、鋳片を冷却ゾーンの矯正部に配置された矯正ロールで矯正する際、この矯正ロールより上流側の駆動ロールと、この矯正ロールより下流側の駆動ロールの回転速度を変更させることで、矯正部付近の鋳片に圧縮力を付与させるような鋳造操作をいう。これにより、内部割れを発生する鋳片の部分に圧縮力を付与することにより内部割れの発生及び拡大等を防止することができる。
【0023】
ステンレス鋼の鋳造量は2.0〜4.5T/min、好ましくは2.5〜4.5T/minとするのが望ましい。これは、鋳造量が2.0T/min未満になると、不活性ガスの流量等にも依るが、酸化物系非鉄介在物や、ピンホール(又は不活性ガス気泡という)、表面割れ等の表面欠陥が発生する傾向が現れるからである。逆に、鋳造量が4.5T/minを超えると、内部の介在物や内部割れ等の内部欠陥が発生する傾向が現れ著しくなるからである(図11参照)。
【0024】
鋳型の鋳型壁のテーパーの縮小率は、この鋳型の深さ1m当たり1.1〜1.4%、好ましくは1.2〜1.4%とするのが望ましい。
これは、鋳型壁のテーパーの縮小率(又は鋳型のテーパー率という)が1.2%未満になると鋳型壁と鋳片との間にエアーギャップが発生し易くなって、コーナー縦割れが発生する傾向が現れ、特に1.1%未満になるとその傾向が著しくなるからである。
逆に、鋳型のテーパー率が1.4%を超えると鋳片を押圧し過ぎて、凝固シェルが破れてブレークアウトが発生する傾向が現れるからである。
【0025】
また、二次冷却帯の湾曲部において、該二次冷却帯に沿って鋳型の下端(0m)から4m(好ましくは0〜3.5m)の範囲内の冷却水量は、二次冷却帯の全冷却水量の40〜65%、好ましくは50〜65%とするのが望ましい。
これは、この部位の冷却水量が全冷却水量の50%未満になると、鋳片を強冷却することができず、鋳片の凝固シェルの厚さが薄くなってバルジングが発生する傾向が現れ、特に40%未満になるとその傾向が著しくなるからである。
逆に、この部位の冷却水量が全冷却水量の65%を超えると、鋳片が過冷却されて、矯正部でのエッジ割れなどが発生する傾向が現れる。
【0026】
凝固する鋳片の等軸晶の比率を60%以上とすることで製品のリジング欠陥の発生を防止できるが、このために少なくとも1カ所以上の領域で電磁攪拌を行いデンドライトの先端を溶かしたような等軸晶結晶組織とする。特に湾曲型連鋳機では2段階の電磁攪拌を行うことが好ましい(図9参照)。
【0027】
本願発明者等はステンレス鋼を連続鋳造する方法について、鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。以下、その結果について説明する。
(1)表層介在物指数と鋳造速度との関係について
図10に示すように、1)特別の対策をしない場合(×)、2)Arガスを適正量(20L/min以下)吹き込んだ場合(☆)、3)tN値を0.25以下とした場合(○)、4)湯面レベルの変動幅を10mm以内とした場合(●)について検討した結果、いずれも鋳造速度が上昇するにつれてシェルウォッシング効果が大きくなり、その結果、表層介在物指数が減少することが確認された。
なお、前記1)は、従来の操業条件により得られる結果を示すものであり、2)4)はそれぞれ従来の操業条件に上記した操業条件を付加したものである。例えば、4)に示す例では従来の操業条件に加えて、湯面レベルの変動幅を10mm以内とした例を示している。
【0028】
ところが、前記1)の場合のように、鋳片表層における酸化物系非鉄介在物やパウダー等を主体とする表層介在物指数が高く、また、過剰なArガス吹き込みでは、鋳型内でボイルが多発し、これによって、パウダーを巻き込み易くなって、鋳片表層におけるパウダーを主体とする表層介在物指数が高くなることが確認された。
従って、表層介在物に対して、前記2)の如くArガスを適正量吹き込むことが有効で、特に、鋳造速度0.8m/min以上のとき、その効果は大きくなって、表層介在物指数は大幅に減少することが確認された。
【0029】
また、前記3)のようにtN値を0.25以下にすることで初期凝固シェルのたおれ込みを浅くでき、Ar気泡や介在物の捕捉による表面欠陥が防止され、前記2)と同様に鋳造速度0.8m/min以上でその効果が大きくなる。
これは、tN値が適正範囲を外れるとオッシレーションマーク(つめ)深さが深くなって、図19に示すように鋳片の内側に介在物や気泡が捕捉され易くなるためであり、オッシレーションマーク(つめ)深さを浅くすることで抑制できる。
一方、鋳造中の湯面レベルの変動が大きいと、つめの外側に溶鋼とパウダーのオーバーフローが生じ、これが凝固して表層にCタイプ疵を形成する。
従って、前記のようにつめの深さを浅くし、かつ湯面レベルを安定させると共に、適正量のArガスを吹き込むことによる介在物の浮上除去効果により鋳片の品質を大幅に向上できる。
【0030】
(2)鋳片の全体欠陥指数と鋳造量との関係について
図11に示すように、1)従来例のように対策をしない場合(×)、2)Arガスを適正量吹き込んだ場合(☆)、3)tN値を0.25以下とし、且つ湯面レベルの変動幅を10mm以内とした場合(●)について検討した結果、いずれも鋳造量が上昇するにつれてシェルウォッシング効果が大きくなり、その結果、鋳片の全体欠陥指数は減少する傾向にあることが確認された。
【0031】
ところが、前記1)の場合、不活性ガスによる介在物の浮上促進を図ることができないこと、及び凝固シェルのたおれ込みや湯面レベルの変動等から、鋳片表層における酸化物系非鉄介在物やパウダー等を主体とする表層介在物指数が高いことが確認された。
従って、表層介在物に対して、前記2)の如くArガスを適正量吹き込むこと、及び3)のようにtN値を0.25以下とし、且つ湯面レベルの変動幅を10mm以内にすることが有効で、特に、鋳造量2.0T/min以上のとき、溶鋼のノズル吐出流によるシェルウォッシング等により、その効果が大きくなって、表層介在物指数(鋳片の全体欠陥指数)も大幅に減少することが確認された。
この結果、前記(1)、(2)より、浸漬ノズル等を介して鋳型内にArガス等の不活性ガスを20L/min以下の流量で吹き込むと共に、tN値を0.25以下とし、且つ湯面レベルの変動幅を10mm以内として、鋳造速度0.8m/min以上、また鋳造量2.0T/min以上好ましくは2.5T/min以上で連続鋳造を行うことによって、鋳片の表層介在物指数を大幅に低減することが可能となることが確認された。
【0032】
(3)内部介在物指数と鋳造速度との関係について
図12に示すように、1)従来で特に対策のない場合(×)、2)Arガスを適正量吹き込んだ場合(●)、3)湯面レベルの変動幅を10mm以内とした場合(○)について検討した結果、いずれも鋳造速度が上昇するにつれて溶鋼中の酸化物系非鉄介在物の侵入深さが深くなって、内部介在物指数が高くなることが確認された。
【0033】
特に、前記1)の場合、鋳型の湯面の近傍を流動する上向きの溶鋼流の流速の増大や湯面レベルの変動等から、パウダーを巻き込み易くなると共に、その侵入深さも深くなって、酸化物系非鉄介在物が浮上することができず、その結果、鋳片にトラップされて、また、鋳型内でボイルが多発し、これによってパウダーを巻き込み易くなって、内部介在物指数が高くなることが確認された。
従って、内部介在物に対して、前記2)の如くArガスの適正量を吹き込むことが有効で、特に、鋳造速度1.6m/min以下のとき、その効果は大きくなって、内部介在物指数の増加を最小限に抑制できることが確認された。
このように、浸漬ノズル等を介して鋳型内にArガス等の不活性ガスを20L/min以下の流量で吹き込むと共に、湯面レベルの変動幅を10mm以内として鋳造速度1.6m/min以下で連続鋳造を行うことにより、鋳片の内部介在物指数を大幅に低減することができ、生産性を向上できることが確認された。
【0034】
(4)コーナー縦割れ指数と鋳造速度との関係について
図13に示すように、1)何も対策をしなかった場合(×)、2)鋳型の鋳型壁のテーパーを最適化(鋳型1m当たり1.1〜1.4%縮幅)した場合(○)、3)鋳片の短辺側にサポートロールを設置(二次冷却帯に沿って鋳型の下端から0.6m以上の範囲内)した場合(●)について検討した結果、いずれも、鋳造速度が速くなるにつれて、コーナー縦割れ指数が増加することが確認された。
【0035】
ところが、前記1)の場合、鋳造速度が速くなるほど、鋳型内での凝固シェルの不均一性が増大し、特に、鋳造速度が0.8m/minを超えると、急激にコーナー縦割れ指数が増加する。また、前記2)の場合、鋳型のテーパーの最適化により、シェルの不均一性が改善され、コーナー縦割れ指数が低下するが、軽微なものであったことが確認された。
従って、コーナー縦割れに対して、前記3)の如く鋳片の短辺側にサポートロールを設置することが有効で、特に、鋳造速度1.6m/min以下のとき、その効果は大きくなって、コーナー縦割れ指数は大幅に減少する。
【0036】
(5)エッジ割れ指数及び置き割れ指数と鋳造速度との関係について
図14に示すように、1)何も対策をしなかった場合(×)、2)注水幅切り(スプレー幅切り)を行った場合(○)、3)鋳片の長辺側に分割ロールを配置した場合(●)、4)エッジエアーブロー設備を配置した場合(▲)について検討した結果、いずれも、鋳造速度が速くなるほど、エッジ割れ指数及び置き割れ指数が低減することが確認された。
ここで、分割ロールとは、図3(a)に示すような鋳片の板幅方向に複数に分割形成されたロールをいい、更に、鋳片の板厚を狭める方法としては、鋳片を挟んで対向するロールの間隔を絞る方法などを挙げることができる。
【0037】
前記2)の場合、鋳造速度が速くなるほど鋳片温度が高くなって、割れ感受性が低下するため、エッジ割れ指数は減少傾向にあるが全体としては高い水準にある。
従って、エッジ割れに対して、前記3)の如く鋳片の長辺側に分割ロールを配置することがエッジ割れ指数を低減するために有効であり、特に、鋳造速度0.8m/min以上のとき、その効果は大きくなって、エッジ割れ指数を大幅に減少できる。
そして、前記4)の如くエッジエアーブロー設備を配置すると、ロールに沿って流れる冷却水の垂れ水による鋳片コーナー部の冷却水が軽減され、エッジ部の鋳片温度が上昇し、エッジ割れ指数は更に低減することも確認された。
この結果、前記(4)、(5)より、鋳片の短辺側をサポートロール等で支持すると共に、鋳片の長辺側を分割ロールで支持することにより、鋳片のコーナー縦割れ及びエッジ割れを防止することができることが確認された。
また、鋳片の冷却過程の鋳片端部と中央部の温度偏差による収縮量の差による熱応力によって切断終了後の鋳片に置き割れが発生する。
この置き割れは前記のエッジ割れと同様であり、前記の2)4)の対策によって鋳片温度差を150℃以下とすることで防止できる。
【0038】
(6)内部割れ指数と鋳造速度との関係について
図15に示すように、1)何も対策をしなかった場合(×)、2)鋳片の長辺側に分割ロールを配置した場合(●)について検討した結果、いずれも、鋳造速度が速くなるほど、内部割れ指数が増加することが確認された。
そして、前記1)の場合、鋳造速度が速くなるほど、鋳片温度が高くなって、凝固シェルの形成速度が遅くなって、割れ感受性が上昇するため、内部割れ指数の全体レベルが増加し、発生率が極めて高くなることが確認された。
従って、内部割れに対して、前記2)の如く鋳片の長辺側に分割ロールを配置することが有効で、特に鋳造速度1.6m/min以下のとき、その効果は大きくなって、内部割れ指数は大幅に減少することが分かる。
【0039】
(7)中心割れ発生指数とロール間隔絞り率について
図16に示すように、鋳型下端から鋳片の完全凝固位置までのロール間隔を1.3%以上狭くすることにより、即ち鋳片の縮小率を1.3%以上として、内部割れ(中心割れ)の発生を防止することができることが確認された。なお、鋳片の縮小率が5%を超える場合には、変形量が大きくなりすぎるために逆に内部割れが増える要因となるので好ましくない。
前記(1)〜(7)に説明したように、ステンレス鋼の表面欠陥及び内部欠陥を低減できることが確認された。
そして、この結果、図17中、斜線枠内で示すように、ステンレス鋼の手入れ負荷軽減率を約65%以上と高くすることができると共に、生産性指数を約11以上と高くすることができ、高品質なステンレス鋼を普通鋼並みの高い生産性でかつ高い製品歩留りで製造することができる。
【0040】
なお、前述した表層介在物指数とは、鋳造速度0.5m/minで連続鋳造を行ったときの鋳片の表層直下10mm以内の表層介在物を基準8として指数化したもの、内部介在物指数とは、鋳造速度1.4m/minで連続鋳造を行ったときの鋳片の中心部の内部介在物を基準8として指数化したものである。
ここで、コーナー縦割れ指数、中心割れ指数及び置き割れ指数とは、鋳造速度1.6m/minで連続鋳造を行ったときの鋳片のコーナー縦割れ、中心割れ及び置き割れのそれぞれを基準値8として指数化したもの、エッジ割れ指数とは、鋳造速度0.5m/minで連続鋳造を行ったときの鋳片のエッジ割れを基準値8として指数化したものである。
内部割れ指数とは、鋳造速度1.4m/minで連続鋳造を行ったときの鋳片の内部割れを基準8として指数化したものであり、手入れ負荷軽減率とは、普通鋼で手入れがなかった場合を100%として指数化したもの、生産性指数とは、所定の連鋳機で普通鋼を大量生産するときの最大生産能力を24として指数化したものである。
全体欠陥指数とは前記表層介在物指数、内部介在物指数、コーナー縦割れ指数、中心割れ指数及び置き割れ指数及び内部割れ指数等を用いて総合的に評価して得られる評価値である。
【0041】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の連続鋳造方法に好適に用いることができる湾曲型連鋳機Aの全体構成について説明する。
図1及び図2に示すように、図示しない建屋内には、図示しない鋳床が立設されており、この鋳床上には、回転可能なレードルターレット11が配設され、更に、このレードルターレット11上に、取鍋12が載置されている。
また、上述した鋳床上には、一対のレール(図示せず)が敷設されており、この一対のレール上には、図示しない移動可能な走行台車が配設され、更に、この走行台車上に、タンディッシュ13が配設されている。
【0042】
また、上述した建屋の床面上には、図示しない架台が立設されており、この架台上には、鋳型を上下方向に振動させるための図示しないオッシレーション装置が配設され、更に、このオッシレーション装置の先部に配設された支持台上に、鋳型14が上、下動可能に支持されている。
また、上述した床面上には、図示しない複数のローラエプロン架台が適宜角度を変えて配設されており、このローラエプロン架台上に、複数(本実施の形態では25)のロールセグメント15A〜15ZZが配設されることによって、二次冷却帯19が構成されている。
なお、ロールセグメント15ZZの下流側(図では右下側)には、上記した鋳型14からこの二次冷却帯19を介して鋳片18を引き抜くための上、下一対のピンチロール28が配設されており、このピンチロール28の下流側には、鋳片18を所望の長さで切断する図示しないカッティング装置が配設されている。
【0043】
次に、上記した湾曲型連鋳機Aに使用する鋳型14の具体的構成を、図2を参照しながら説明する。
図示するように、オッシレーション装置の支持台上には、一対の鋳型長辺21a、21bが平行間隔を開けて配設されており、この一対の鋳型長辺21a、21b間に、一対の鋳型短辺22a、22bが、各鋳型長辺21a、21bの長手方向に沿って進退可能に配設されている。
なお、各鋳型長辺21a、21bの鋳型壁は、二次冷却帯19の湾曲半径Rに合わせた曲面になっている。
そして、これに合わせて、各鋳型短辺22a、22bは、それぞれ正面視弧字状に形成されている。
【0044】
また、一対の鋳型長辺21a、21bの下部間の幅(即ち、一方の鋳型長辺21aの鋳型壁下端から、他方の鋳型長辺21bの鋳型壁迄の法線方向の幅)bは、一対の鋳型長辺21a、21bの深さ、1m当たり、各鋳型長辺21a、21bの上端間の幅aより、1.1〜1.4%縮幅されている。
同様に、一対の鋳型短辺22a、22bの下端間の幅dは、この一対の鋳型短辺22a、22bをそれぞれ上、下1対(又は2対)の駆動手段によって鋳型長辺21a、21bの長手方向に沿って駆動することにより、一対の鋳型短辺22a、22bの深さ1m当たり、各鋳型短辺22a、22bの上端間の幅cより、1.1〜1.4%の縮小率で縮幅されたテーパーを有している。
従って、鋳型14の鋳型壁と鋳片18との間にエアーギャップが発生するのを防止することができるので、常に強固な(厚さの厚い)凝固シェルを形成することができ、鋳片18のバルジング及び、このバルジングに伴う表面欠陥と内部欠陥とを防止できるようになっている。
【0045】
次に、図1〜図3を参照して、二次冷却帯19について説明する。
まず、ロールセグメント15Aの具体的構成について説明する。
図1、図2及び図3(a)に示すように、鋳片18を挟んで対向する一対の小径の分割ロール25が、湾曲半径Rに沿って平行間隔を開けて3組配設されている。また、この分割ロール25間には、鋳片18の板幅方向に沿って、適当間隔を開けて、複数のスプレーノズル26が配設されている(図3(a)参照)。
また、短辺22a、22bの下端から連続した少なくとも0.6m以上の領域に短辺を支持するサポートロール30が設けてある。
【0046】
なお、この分割ロール25が小径ロールからなると共に、分割ロール25間の間隔を、スプレーノズル26が収まるだけの狭い隙間を開けて配設しているため、鋳片18のバルジング、及び、このバルジングに伴う表面欠陥及び内部欠陥を防止することができる構造となっている。
また、鋳片18の板幅方向に配設されたスプレーノズル26は、幅切り注水(注水幅切り、スプレー幅切り)が可能となっている(図3(b)参照)と共に、鋳片18の引き抜き方向に隣り合う分割ロール25間でかつ鋳片18の板幅方向の両端部近傍には、鋳片18の両端部に向かって(即ち両端部から外側に向かって)エアーを吹き付けるエアーノズル27を備えた図示しないエッジエアーブロー装置が配設されている。
【0047】
従って、鋳片18のコーナー部が過冷却されてコーナー縦割れやエッジ割れが発生するのを防止することができると共に、図3(c)に示すように、鋳片18の上面を伝って冷却水が鋳片18の両端部へ流れていって、鋳片18の両端部が過冷却されてコーナー縦割れやエッジ割れが発生するのを確実に防止できる。
そして、上記した構成を有するロールセグメント15Aの下流側には、ロールセグメント15Bが配設されている。
次に、このロールセグメント15Bの具体的構成について説明する。
図1に示すように、鋳片18を挟んで対向する一対の小径の分割ロール25が、湾曲半径Rに沿って平行間隔を開けて3組配設されていると共に、その下流側に、鋳片18を挟んで対向する一対の分割ロール25a(分割ロール25より大径)が、4組配設されている。
また、このロールセグメント15Bには、上記したロールセグメント15Aと同様、分割ロール25、25a間に、図示しない複数のスプレーノズルが配設されていると共に、鋳片18の板幅方向の両端部近傍に、エアーを吹き付ける図示しないエッジエアーブロー装置が配設されている。
【0048】
次に、上記した構成を有するロールセグメント15Bの下流側に配設されたロールセグメント15C〜15Jの具体的構成について、その中のロールセグメント15Cの場合を例に取って説明する。
図1に示すように、このロールセグメント15Cには、鋳片18を挟んで対向する一対の小径の分割ロール25aが、湾曲半径Rに沿って平行間隔を開けて6組配設されていると共に、この分割ロール25a間に、複数のスプレーノズル(図示せず)、及び、鋳片18の板幅方向の両端部近傍に、エアーを吹き付けるエッジエアーブロー装置(図示せず)が必要に応じて配設されている。
そして、上記した構成を有するロールセグメント15Jの下流側に、ロールセグメント15Kが配設されているが、このロールセグメント15Kは、鋳片18の引き抜き方向中央部に位置する下方のロール25eが大径のバックアップロール17によって押圧支持されている(このため、ロールセグメント15Kの鋳片18の引き抜き方向中央部に位置する一対のロール25eを矯正ロールともいう)以外、上記したロールセグメント15Jと同様なものなので、その説明を省略する。
【0049】
次に、上記した構成を有するロールセグメント15Kの下流側に配設されたロールセグメント15L〜15ZZの具体的構成について説明する。
図1に示すように、このロールセグメント15L〜15ZZは、それぞれ、鋳片18を挟んで対向する上、下一対の大径のロール25eが、平行間隔を開けて3組配設されていると共に、このロール25e間には、複数のスプレーノズル(図示せず)、及びエッジエアーブロー装置(図示せず)が必要に応じて配設されている。
そして、ロールセグメント15Aにより第1の冷却ゾーン16A、ロールセグメント15Bにより第2の冷却ゾーン16B、ロールセグメント15Cにより第3の冷却ゾーン16C、ロールセグメント15Dにより第4の冷却ゾーン16D、ロールセグメント15E、15Fにより第5の冷却ゾーン16Eが構成されている。
【0050】
また、ロールセグメント15G、15Hにより第6の冷却ゾーン16F、ロールセグメント15J〜15Lにより第7の冷却ゾーン16G、ロールセグメント15M〜15Pにより第8の冷却ゾーン16H、ロールセグメント15Q〜15Tにより第9の冷却ゾーン16J、ロールセグメント15U〜15ZZにより第10の冷却ゾーン16Kが構成されている。
更に、ロールセグメント15A〜15Kにより湾曲部19A、ロールセグメント15L〜15ZZにより水平部19Bが構成されている。
なお、上記した湾曲部19Aにおいて、鋳片18を挟んで対向する分割ロール25〜25d及びロール25eの間隔は、この二次冷却帯19の上流側から下流側に向かって縮幅されていると共に、この湾曲部19Aトータルで1.3〜5%に縮幅されている。即ち、鋳型14の下端から鋳片18の完全凝固位置までの少なくとも一部領域において、鋳片18の板厚が1.3〜5%の縮小率で狭められている。
【0051】
従って、通常、ステンレス鋼を連続鋳造する際、鋳片18内溶鋼が完全に凝固するまでのロール間隔絞り率は約1%程度であるが、それより更に約0.3%程度多く絞り込むので、鋳片18を効果的に押圧することができ、この結果、内部割れを防止することができる。
また、冷却ゾーン16Gより上流側の冷却ゾーン16E、16Fを構成する分割ロール25c、25d、及び、冷却ゾーン16Gより下流側の冷却ゾーン16H〜16Kを構成するロール25eは駆動ロールとなっている。
なお、図1中ではこのような駆動可能なロールを他と区別する記号◎で示している。
この駆動ロールを駆動することによって、鋳片18を円滑に引き抜くことができると共に、冷却ゾーン16Gの矯正ロールより上流側の駆動ロールと、下流側の駆動ロールの回転速度を適宜変更することにより、従来、鋳片の矯正部に発生するような内部割れを防止することができる。
【0052】
実施の形態におけるその他の構成は以下の通りである。
図4(a)、(b)に示すように、タンディッシュ13の吐出口13bには、図示しない円筒状の通気性耐火物が内側に配置されたタンディッシュノズル33が配設され、このタンディッシュノズル33には図示しないArガス送給手段に連通するArガス供給管34が接続されている。
浸漬ノズル13aの内壁の所定部には、薄肉円筒状のスリット36が配設され、スリットの内孔側に配置された通気性耐火物35又は通気孔を介してArガスが吹き込まれるようになっている。そして、このスリット36には図示しないArガス送給手段に連通するArガス供給管37が接続されている。
更に、タンディッシュ13のストッパー38の軸心部には、ストッパーノズル38aが形成され、このストッパーノズル38aには図示しないArガス送給手段に連通するArガス供給管(図示せず)が接続されている。
従って、タンディッシュノズル33、ストッパーノズル38a及び浸漬ノズル13aを介して、必要に応じて鋳型14内へArガスを吹き込むことができ、浸漬ノズル13aの内壁に酸化物系非鉄介在物が付着するのを防止できる構造となっている。
【0053】
ここで、浸漬ノズルの吐出口の傾き角度は、水平面(又は湯面レベル)に対し上向き角度(α)15°以下、水平面に対し下向き角度(β)35°以下とするのが望ましい(図4(a)、(b)参照)。
これは、吐出口の上向き角度(α)が15°を超えると、パウダー直下の溶鋼流速が早くなり、パウダーの巻き込みによる表層介在物や内部介在物が増加する傾向が現れるからである。
吐出口の下向き角度(β)が35°を超えると、溶鋼流の侵入深さが深くなり、その結果、介在物の浮上除去が阻害され、内部欠陥(介在物)が発生する傾向が現れる。
こうして、浸漬ノズル13aの吐出口13cの傾き角度は、図4(a)、(b)に示すように、水平面に対し上向き角度(α)が15°以下、水平面に対し下向き角度(β)が35°以下になっている。従って、表層介在物や内部介在物が発生するのを防止することができる。
【0054】
次に、上記構成を有する湾曲型連鋳機Aを用いる本実施の形態に係るステンレス鋼の連続鋳造方法について説明する。
まずレードルターレット11に支持された取鍋12からロングノズル12aを介してタンディッシュ13にC濃度0.05〜0.3wt%、Cr濃度13〜18wt%、Ni濃度0.20〜0.5wt%の溶鋼を注湯すると共に、このタンディッシュ13から浸漬ノズル13aを介して鋳型14内に溶鋼を鋳造量2.0〜4.5T/minで注湯する。
この際、タンディッシュノズル33、ストッパーノズル38a及び浸漬ノズル13aを介して鋳型14内へ20L/min以下の流量でArガスを吹き込みながら、鋳型14内で冷却凝固された鋳片18を、二次冷却帯19を介して鋳造速度0.8m/min〜1.6m/minで引き抜きながら鋳造する。
【0055】
この場合、鋳造条件として前記のtN値を0.20とし、鋳型14内の湯面レベルの変動幅を10mm以内にすることで、オッシレーションや湯面変動に伴う表面欠陥を防止することができる。
この際、二次冷却帯19に沿って鋳型14の下端から4m内の冷却水量を、全冷却水量の40〜65%とすることにより、鋳片18を強冷却することができ、鋳片18のバルジング、及びこのバルジングに起因する内部割れを防止することができる。
また、湾曲部19Aの少なくとも1つの冷却ゾーン16A〜16Gで鋳片18の板幅方向の両端部への注水を停止すると共に、この鋳片18の板幅方向の両端部へエアーを吹き付けることにより、この鋳片18の板幅方向の両端部の過冷却を防止することができ、矯正部におけるエッジ割れ、及び鋳片18の切断後の置き割れを防止することができる。
【0056】
そして、冷却ゾーン16A〜16Fを経た鋳片18は冷却ゾーン16Gの矯正ロールで矯正される。この際、この矯正ロールより上流側の図示しない駆動ロールと、この矯正ロールより下流側の駆動ロールの回転速度を変更させることで、矯正部付近の鋳片18に圧縮力を付与させる圧縮鋳造を行うことにより、鋳片18の内部割れを防止することができる。
また、鋳造されるステンレス鋼の鋳型14内への鋳造量を2.0T/min以上とし、且つ湾曲部に2基の電磁攪拌装置を配置して未凝固状態の鋳片18の電磁攪拌を行った。
【0057】
本実施の形態に係るステンレス鋼の連続鋳造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
(1) 浸漬ノズル13aを介して鋳型14内へArガスを20L/min以下の流量で吹き込むことにより、浸漬ノズル13a内に酸化物系非鉄介在物が付着するのを防止することができる。
(2) 鋳片18の短辺側を二次冷却帯19に沿って鋳型14の下端から0.6〜2mの範囲内をサポートロール30で支持することにより、鋳片18の短辺側バルジング、及びこのバルジングに起因するコーナー縦割れやエッジ割れ等の表面欠陥を防止することができる。
【0058】
(3) 鋳片18の板厚を、鋳型14の下端からこの鋳片18の完全凝固位置まで1.3〜5%狭めながら、この鋳片18を引き抜くことにより、鋳片18の内部割れを防止することができる。
(4) 鋳造に際し、tN値を0.25以内で且つ湯面変動幅を10mm以内としてあるために、オッシレーション振動に伴うつめ深さの改善及び湯面変動に伴うCタイプ疵を防止できる。
(5) 湾曲部19Aの少なくとも1つの冷却ゾーン16A〜16Gで幅切り注水を行うことにより、鋳片18のコーナー部の過冷却を防止することができ、エッジ割れ及び鋳片端部の過冷却を防止することができる。
(6) 鋳型14の鋳型壁に、鋳型14の深さ1m当たり1.1〜1.4%のテーパーを設けることにより、エアーギャップの発生を防止して、強固な初期凝固シェルを形成することができ、バルジング、及びこのバルジングに起因する表面欠陥及び内部欠陥を防止できる。
【0059】
(7) 鋳型14の下端から4m以内を通過する鋳片18に、二次冷却帯19の全冷却水量の40%以上の冷却水を吹き付けることにより、鋳片18の強冷却を行って、強固な初期凝固シェルを形成することができ、バルジング、及びこのバルジングに起因する表面欠陥及び内部欠陥を防止できる。
(8) 二次冷却帯19を通過する鋳片18の板幅方向の両端部にエアーを吹き付けることにより、たとえ、鋳片18を伝った冷却水があっても、鋳片18の両端部が過冷却されるのを防止でき、エッジ割れ及び置き割れを防止できる。
(9) 二次冷却帯19の矯正部(又は矯正ロール)を通過する鋳片18を圧縮鋳造することにより、矯正に伴う内部割れ及びエッジ割れの発生を防止することができる。
【0060】
(10) 凝固しつつある鋳片18に少なくとも1段の電磁攪拌を行うことでデンドライトの生成を抑制して60%以上の等軸晶率を確保してリジングの発生を防止することができる。この理由からも湾曲型では2段で電磁攪拌を行うことが望ましい。
(11) 湾曲型連鋳機Aを使用すること及び鋳片を未凝固の状態で矯正するために、垂直曲げ型の連鋳機では、曲げ部を有することに起因する表面割れや内部割れが発生していたが、これを防止することができる。
【0061】
上記説明したように、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系等の割れ感受性の高いステンレス鋼を連続鋳造する際、表面欠陥及び内部欠陥の無い高品質なステンレス鋼を、鋳造速度0.8m/min以上、かつ鋳造量2.0T/min以上で連続鋳造することができ、この結果、鋳片18の無手入れ化を促進することができると共に、普通鋼並みの高い生産性を得ることができる。
【0062】
【実施例】
続いて、本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の連続鋳造方法の確認試験を行った結果について説明する。
(実施例1〜3、従来例1)
実施例1〜3、従来例1においては、表1にそれぞれ示す操業条件でステンレス鋼の連続鋳造を行い表2に示す品質結果を得た。
なお、鋳片18の短辺側を支持するサポートロール30はサポートロール30の上端を鋳型14の下端に配置して、サポートロール30の下端位置が鋳型14の下端から1mを超え、2m以下の所に設置した。鋳片18の長辺側を支持する分割ロール25は、ロールセグメント15E〜15Hに設置するものとした(図1参照)。
【0063】
【表1】
Figure 0003588411
【0064】
【表2】
Figure 0003588411
【0065】
ここで、例えば、実施例1は、Cr濃度が13wt%となるステンレスの溶鋼を鋳型テーパー率(縮小率)が1.30%の鋳型に注入して、鋳型内に吹き込まれるArガスの吹込量(Arガス吹込量)を10L/minとして、鋳造速度及び鋳造量をそれぞれ1.40m/min、2.0T/minとした例である。
ここでは、鋳型下部の所定位置に設けた鋳片短辺側サポートロールにより鋳片を支持し(表1中では有として表示している)、鋳型下端から完全凝固位置までのロール間隔絞り率を1.3%にして、鋳型下端から4.0m以内の二次冷却水量を全冷却水量に対して52%としている。
さらに、鋳造時における湯面変動の条件を規定するtN値と湯面レベルとを所定の範囲に制御した(表1中では有として表示)。なお、実施例1においては、エッジエアーブロー設備を用いる鋳片板幅方向両端部へのエアーの吹きつけ、及び鋳片の電磁攪拌についてはこれを省略した(表1中では無として表示)。
【0066】
この結果、表2の実施例1に示されるように、(1)表層介在物指数、(2)コーナー縦割れ指数、(3)エッジ割れ指数、(4)内部介在物指数、(5)内部割れ指数、(6)手入れ負荷軽減比率、及び(7)生産性指数はそれぞれ(1)0.4、(2)0.8、(3)1.1、(4)1.2、(5)1.2、(6)70%、(7)14.1となっている。
このように、これらの各指数を従来例と比較すれば明らかなように、実施例1〜実施例3は従来例より優れる結果であることが分かる。
なお、実施例2はスプレー幅切りを実施した例であり、実施例3はこれに加えて鋳片長辺側のロールを分割ロールとした点、電磁攪拌及びエッジエアーブローを実施した点で実施例1と構成が異なっている。
表2の評価の欄における記号○、◎、×はそれぞれは良好、さらに良好、不良をあらわしている。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、本実施の形態では、2分割状の分割ロール25を使用したが、3分割又はそれ以上の数に分割されたものを使用することもできる。
また、本実施の形態では、鋳片18の短辺側を支持するため、サポートロール30を使用したが、その他一般に用いられているグリッドやシュープレートを使用してもよい。
【0068】
また、図5(a)、(b)に示すように、鋳型14内に電磁力を付与し、鋳型14内の溶鋼流動を制御し、下向きの溶鋼流並びに上向きの溶鋼流の適正化を図ることにより表面及び内部介在物の増加を防止することができる。
さらに、二次冷却帯の水平部を通過する鋳片18に対し、該水平部の少なくとも1つの冷却ゾーンで冷却水の注水を停止状態に維持してロールの過度の変形を防止することも可能である。
【0069】
なお、ロール冷却とは、図6に示すように、内部に冷却水通路45aを有するロール45によって、鋳片18を引き抜きながら冷却することであり、このようなロール冷却を必要に応じて用いることにより、さらに効果的にロールの過度の変形が防止できる。
また、図7(a)、(b)に示すように、連鋳機を経た鋳片18の板幅方向の両端部を保温及び/又は加熱してもよい。
即ち、図7(a)に示すように、鋳片18の板幅方向の両端部を覆う断面視コ字状の保温装置の一例である筐体46を設けることによって、鋳片18の板幅方向の両端部を保温してもよい。また、図7(b)に示すように、鋳片18の板幅方向の両端部に向かって炎を吹き付ける加熱装置の一例であるバーナー47を設けることによって、鋳片18の板幅方向の両端部を加熱してもよい。
【0070】
【発明の効果】
請求項1〜11記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、タンディッシュから浸漬ノズルを介して鋳型内へ溶鋼を注湯する連続鋳造に際して、(1)浸漬ノズル及び/又はタンディッシュノズルを介して該鋳型内へ吹き込む不活性ガスの流量、(2)オッシレーション振動させる前記鋳型のtN値、(3)鋳型内の湯面レベルの変動幅、(4)グリッド及び/又はサポートロールにより支持される短辺側鋳片の支持範囲、(5)鋳型の下端から鋳片の完全凝固位置までの少なくとも一部領域における鋳片の板厚の縮小率、及び(6)溶鋼の鋳造速度をそれぞれ特定範囲に設定するので、特にCr濃度13wt%以上となるような割れ感受性の高いステンレス鋼を連続鋳造するに際して、鋳片の表面欠陥及び内部欠陥を低減した手入れ化の少ない高品質なステンレス鋼を普通鋼並みの高い生産性でかつ高い製品歩留りで製造することができる。
【0071】
特に、請求項2記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、二次冷却帯の少なくとも1つの冷却ゾーンで前記鋳片の板幅方向両端部への注水を停止状態に維持するので、鋳片のコーナー部の過冷却を防止することができ、製品歩留りを高くすることができる。特に、二次冷却帯の湾曲部を通過する鋳片に対し、該湾曲部の少なくとも1つの冷却ゾーンで鋳片の板幅方向両端部への注水を停止すると、鋳片を強冷却して、バルジング及びバルジングに伴う表面欠陥や内部欠陥を防止することができる。
また、請求項3記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、鋳型の鋳造壁面に特定割合で縮小するテーパーを設けているので、エアーギャップの発生を防止して、強固な初期凝固シェルを形成することができ、バルジング及びこのバルジングに起因する表面欠陥や内部欠陥を防止できる。
【0072】
請求項4記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、二次冷却帯に沿って鋳型の下端から4m以内を通過する鋳片に、前記二次冷却帯の全冷却水量に対する特定比率の範囲の冷却水を吹き付けるので、鋳片の強冷却を行って強固な初期凝固シェルを形成することができ、バルジング及びこのバルジングに起因する表面欠陥や内部欠陥を防止できる。
【0073】
請求項5記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、二次冷却帯を通過する鋳片の板幅方向両端部にエアーを吹き付けるので、鋳片を伝った冷却水によって鋳片の両端部が過冷却されるのを防止でき、コーナー縦割れを防止できる。この結果、鋳片表層で発生するコーナー縦割れに起因するブレークアウトを防止することができ、このブレークアウトに起因する地金処理及び復旧作業による生産性の低下を防止することができる。
請求項6記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、二次冷却帯の矯正部及び/又はその近傍を通過する鋳片の圧縮鋳造を行うので、鋳片に圧縮力を付与して矯正に伴う内部割れの発生を防止することができる。
【0074】
請求項7記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、二次冷却帯の湾曲部を通過する未凝固状態の鋳片の少なくとも一カ所、好適には2カ所を電磁攪拌するので、鋳片の未凝固部分を攪拌して鋳片の中心部に不純物が偏析するのを防止することができると共に、柱状晶の生成を防いで均質な結晶粒を有する鋳片を製造することができる。
請求項8記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、二次冷却帯の水平部における少なくとも1つの冷却ゾーンの注水を停止状態に維持するので、鋳片の輻熱を利用して、鋳片の板幅方向及び板厚方向の温度差を小さくすることができ、この結果、コーナー縦割れやエッジ割れ等の表面欠陥等を防止することができる。
【0075】
請求項9記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、連鋳機を経た鋳片の板幅方向両端部を保温及び/又は加熱するので、鋳片の板幅方向の温度差を少なくすることができ、この結果、表面割れなどを防止することができる。
請求項10記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、鋳型内に供給される溶鋼の鋳造量を特定値以上としているので、介在物や気泡性の欠陥等の全体欠陥を減少し、且つ鋳造生産性を向上できる。
請求項11記載のステンレス鋼の連続鋳造方法は、連鋳機が湾曲型連鋳機であるので、垂直曲げ型の連鋳機の曲げ部で発生していたような表面欠陥や内部割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の連続鋳造方法に好適に用いる湾曲型連鋳機の説明図である。
【図2】鋳型近辺の要部斜視図である。
【図3】(a)は二次冷却帯の一冷却ゾーンの要部斜視図である。
(b)は二次冷却帯の一冷却ゾーンの幅切り注水の要部説明図である。
(c)は従来例の二次冷却帯の要部説明図である。
【図4】(a)はタンディッシュの要部断面図である。
(b)は他のタンディッシュの要部断面図である。
【図5】(a)、(b)は電磁攪拌の説明図である。
【図6】ロール冷却の説明図である。
【図7】(a)、(b)はそれぞれ鋳片の保温装置及び加熱装置の説明図である。
【図8】垂直曲げ型連鋳機の説明図である。
【図9】湾曲型連鋳機の説明図である。
【図10】鋳造速度と表層介在物指数との関係を示す特性図である。
【図11】鋳造量と鋳片の全体欠陥指数との関係を示す特性図である。
【図12】鋳造速度と内部介在物指数との関係を示す特性図である。
【図13】鋳造速度とコーナー縦割れ指数との関係を示す特性図である。
【図14】鋳造速度とエッジ割れ指数との関係を示す特性図である。
【図15】鋳造速度と内部割れ指数との関係を示す特性図である。
【図16】ロール間隔絞り率と中心割れ発生指数との関係を示す特性図である。
【図17】生産性指数と手入れ負荷軽減率との関係を示す特性図である。
【図18】従来の垂直曲げ型連鋳機の鋳型近辺の要部説明図である。
【図19】図18におけるA部拡大図である。
【図20】従来の垂直曲げ型連鋳機の二次冷却帯の要部説明図である。
【図21】鋳片のバルジング、コーナー縦割れ及びエッジ割れの説明図である。
【図22】鋳片の内部割れの説明図である。
【図23】鋳型と凝固シェルとの間に形成されるエアーギャップの説明図である。
【符号の説明】
A 湾曲型連鋳機 11 レードルターレット
12 取鍋 12a ロングノズル
13 タンディッシュ 13a 浸漬ノズル
13b 吐出口 13c 吐出口
14 鋳型 15A ロールセグメント
15B ロールセグメント 15C ロールセグメント
15D ロールセグメント 15E ロールセグメント
15F ロールセグメント 15G ロールセグメント
15H ロールセグメント 15J ロールセグメント
15K ロールセグメント 15L ロールセグメント
15M ロールセグメント 15N ロールセグメント
15P ロールセグメント 15Q ロールセグメント
15R ロールセグメント 15S ロールセグメント
15T ロールセグメント 15U ロールセグメント
15V ロールセグメント 15W ロールセグメント
15X ロールセグメント 15Y ロールセグメント
15Z ロールセグメント 15ZZ ロールセグメント
16A 第1の冷却ゾーン 16B 第2の冷却ゾーン
16C 第3の冷却ゾーン 16D 第4の冷却ゾーン
16E 第5の冷却ゾーン 16F 第6の冷却ゾーン
16G 第7の冷却ゾーン 16H 第8の冷却ゾーン
16J 第9の冷却ゾーン 16K 第10の冷却ゾーン
17 バックアップロール 18 鋳片
19 二次冷却帯 19A 湾曲部(湾曲冷却帯)
19B 水平部(水平冷却帯) 21a 鋳型長辺
21b 鋳型長辺 22a 鋳型短辺
22b 鋳型短辺 25 分割ロール
25a 分割ロール 25b 分割ロール
25c 分割ロール 25c 分割ロール
25d 分割ロール 25e ロール
26 スプレーノズル 27 エアーノズル
28 ピンチロール 30 サポートロール
33 タンディッシュノズル 34 Arガス供給管
35 通気性耐火物 36 スリット
37 Arガス供給管 38 ストッパー
38a ストッパーノズル 45 ロール
45a 冷却水通路 46 筐体(保温装置)
47 バーナー(加熱装置)

Claims (11)

  1. 溶鋼を冷却する鋳型と該鋳型から引き抜かれる鋳片を冷却する二次冷却帯とを備えた連鋳機を用いてステンレス鋼を製造するステンレス鋼の連続鋳造方法において、
    タンディッシュから浸漬ノズルを介して前記鋳型内へ前記溶鋼を注湯しつつ、該浸漬ノズル及び/又はタンディッシュノズルを介して該鋳型内へ不活性ガスを20L/min以下の流量で吹き込むと共に、
    オッシレーション振動させる前記鋳型のtN(sec)値を0.25以下とし、且つ該鋳型内の湯面レベルの変動幅を10mm以内として、
    グリッド及び/又はサポートロールを用いて前記鋳型の下端から連続して0.6〜2mとなる範囲の前記鋳片の短辺側を支持し、
    前記鋳型の下端から前記鋳片の完全凝固位置までの少なくとも一部領域において前記鋳片の板厚を1.3〜5%の縮小率で狭めながら、
    前記溶鋼を0.8〜1.6m/minの鋳造速度で連続鋳造することを特徴とするステンレス鋼の連続鋳造方法。
  2. 前記二次冷却帯の少なくとも1つの冷却ゾーンで前記鋳片の板幅方向両端部への注水を停止状態に維持することを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  3. 前記鋳型の鋳造壁面に深さ1m当たり1.1〜1.4%の割合で縮小するテーパーを設けることを特徴とする請求項1又は2記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  4. 前記二次冷却帯に沿って前記鋳型の下端から4m以内を通過する前記鋳片に、前記二次冷却帯の全冷却水量の40%以上の冷却水を吹き付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  5. 前記二次冷却帯を通過する前記鋳片の板幅方向両端部にエアーを吹き付けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  6. 前記二次冷却帯の矯正部及び/又はその近傍を通過する前記鋳片の圧縮鋳造を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  7. 前記二次冷却帯の湾曲部を通過する未凝固状態の前記鋳片の少なくとも一カ所を電磁攪拌することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  8. 前記二次冷却帯の水平部における少なくとも1つの冷却ゾーンの注水を停止状態に維持することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  9. 前記連鋳機を経た前記鋳片の板幅方向両端部を保温及び/又は加熱することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  10. 前記鋳型内に供給される溶鋼の鋳造量が2.0T/min以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
  11. 前記連鋳機が湾曲型連鋳機であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のステンレス鋼の連続鋳造方法。
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