JP3817164B2 - 折り曲げ罫線入りシート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、折り曲げ罫線入りシート及びこれを用いたプラスチックケースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプラスチック製品の多く、特にプラスチック包装材は、使用後すぐに棄却されることが多く、その処理問題が指摘されている。一般包装用プラスチックとして代表的なものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等があげられるが、これら材料は燃焼時の発熱量が多く、燃焼処理中に燃焼炉を傷める恐れがある。さらに、現在でも使用量の多いポリ塩化ビニルは、その自己消化性のため燃焼することができない。また、このような焼却できない材料も含めプラスチック製品は埋め立て処理されることが多いが、その化学的、生物的安定性のためほとんど分解せず残留し、埋立地の寿命を短くする等の問題を起こしている。
【0003】
プラスチックケース用シートの材料としては、塩化ビニル樹脂が多く使用されている。しかし、上記の環境的な理由から、他の樹脂の利用が進んでいる。この樹脂の例としては、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)があげられる。しかし、このA−PETも上記のとおり、廃棄物処理上の問題を有している。
【0004】
これに対し、PETの特性に比較的類似している樹脂であり、生分解性を有する樹脂として、ポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、燃焼熱量はポリエチレンの半分以下、土中・水中で自然に加水分解が進行し、次いで微生物により無害な分解物となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ポリ乳酸からなるプラスチックケース用シートは、破断伸度が数%しかなく、脆性が高いため、折り曲げ罫線を設けようとすると、シートが割れる場合がある。また、折り曲げ罫線を設ける際にシートの割れが生じなくても、折り曲げるときにシートが割れる場合がある。
【0006】
また、ケースとするには、折り曲げた少なくとも2面の端面通しを、溶剤にて接着するのが一般的であるが、結晶化したポリ乳酸シートは、溶剤接着ができないという問題点を有する。
【0007】
そこで、この本発明は、上記問題を解決し、折り曲げ罫線を設け、この折り曲げ罫線に沿って折り曲げると共に、折り曲げた少なくとも二面の端面通しを溶剤にて接着することによりプラスチックケースとすることのできるシートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする少なくとも3層からなる2軸延伸シートに折り曲げ罫線を設けることにより上記課題を解決したのである。
【0009】
少なくととも3層からなる2軸方向に延伸したシートを用いることにより、強度や耐衝撃性が向上し、折り曲げ罫線を設けるときや、折り曲げ罫線に沿ってシートを折り曲げるときに、割れを生じるのを防止でき、かつ溶剤接着することができる。
また、ポリ乳酸系重合体を使用するので、環境的に優しいプラスチックケースを提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を詳細に説明する。
この発明にかかる折り曲げ罫線入りシートは、ポリ乳酸系重合体を主成分とする少なくとも3層からなり、2軸延伸したシート(以下、「積層延伸シート」と称する。)に折り曲げ罫線を設けたものである。
【0011】
上記ポリ乳酸系重合体は、D−乳酸単位又はL−乳酸単位の単独重合体又はD−乳酸単位及びL−乳酸単位の共重合体であって、他の共重合成分としてヒドロキシカルボン酸単位やジカルボン酸単位とジオール単位からなるポリエステルを含んでもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでもよい。
【0012】
上記他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類があげられる。
【0013】
上記ジカルボン酸単位としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはこれらの無水物や誘導体が挙げられる。一方、ジオール単位としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール、またはこれらの誘導体が挙げられる。いずれも、炭素数2〜10のアルキレン基またはシクロアルキレン基を持つ、2官能性化合物を主成分とするものが好ましい。もちろん、これらジカルボン酸単位あるいはジオール単位のいずれにおいても、2種類以上用いても構わない。
【0014】
また、溶融粘度の向上のためポリマー中に分岐を設ける目的で、3官能以上のカルボン酸、アルコール類あるいはヒドロキシカルボン酸を用いることができる。具体的には、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸あるいはペンタエリスリットやトリメチロールプロパン等の多官能性成分を用いることができる。これらの成分は多量に用いると、得られるポリマーが架橋構造を持ち、熱可塑性でなくなったり、熱可塑性であっても部分的に高度に架橋構造を持ったミクロゲルが生じ、フィルムにしたときフィッシュアイとなる恐れがある。従って、これら多官能性成分が、ポリマー中に含まれる割合は、ごくわずかで、ポリマーの化学的性質、物理的性質を大きく左右しない程度に制限される。
【0015】
また、ポリ乳酸系重合体に他の脂肪族ポリエステルを混合することもできる。例えばポリエチレンスベレート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレンデカンジカルボキシレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネートアジペートやこれらの重合体をポリ乳酸系重合体に混合することができる。
【0016】
また、上記他の脂肪族エステルには、エステル結合残基に代えて、ウレタン結合残基及び/又はカーボネート結合残基を重量平均分子量の5%まで含有することができる。このウレタン結合残基やカーボネート結合残基は、鎖延長剤による残基である。
【0017】
さらに、必要に応じ、他の少量共重合成分として、テレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いてもよい。
【0018】
上記ポリ乳酸系重合体に含有されるポリ乳酸以外の共重合成分の量は、このポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シートの光線透過率が90%以上であれば、限定されない。上記2軸延伸シートの光線透過率が90%を下回ると、透明性が低下し、透明プラスチックケースとして使用しにくくなる。
【0019】
上記ポリ乳酸系重合体がポリ乳酸である場合は、その重合法としては、縮重合法、開環重合法等公知の方法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸又はD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して、任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸を得ることができる。
【0020】
上記ポリ乳酸系重合体がポリ乳酸と上記ヒドロキシカルボン酸単位やジカルボン酸単位とジオール単位からなるポリエステルとの共重合体である場合、その重合法としては、例えば、ポリ乳酸又は上記ポリエステルのいずれか一方を別途重合体として準備しておき、この重合体の存在下に他方の構成モノマーを重合させる。通常は、予め準備した上記ポリエステルの存在下でラクチドの重合を行うことにより、ポリ乳酸との上記ポリエステルのブロック共重合体を得ることができる。基本的には、上記ポリエステルを共存させる点が相違するだけで、ラクチド法でポリ乳酸系重合体を調整する場合と同様に重合を行うことができる。この時、ラクチドの重合が進行すると同時に、ポリ乳酸と上記ポリエステルの間で適度なエステル交換反応が起こり、比較的ランダム性が高い共重合体が得られる。出発物質として、ウレタン結合を有するポリエステルウレタンを用いた場合には、エステル−アミド交換も生成する。
【0021】
上記ポリ乳酸系重合体の好ましい重量平均分子量は、6万〜70万であり、より好ましくは8万〜40万、特に好ましくは10万〜30万である。分子量が6万より小さいと、機械物性や耐熱性等の実用物性がほとんど発現されず、70万より大きいと、溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣る。
【0022】
この発明にかかる折り曲げ罫線入りシートは、上記のとおり少なくとも3層からなる積層延伸シートであり、各層とも、上記ポリ乳酸系重合体を主成分とする。上記の積層延伸シートは、外部と接触する2つの最外層と、この最外層以外の内層に分けることができる。以下、上記内層のうち少なくとも1層をA層、上記最外層をB層と称する。
【0023】
上記A層は、結晶性の高いポリ乳酸系重合体から構成され、上記B層は、結晶性の低いポリ乳酸系重合体から構成される。最外層であるB層を結晶性の低いポリ乳酸系重合体で構成することにより、溶剤接着が可能となり、後述するようにプラスチックケースの製造に好ましくなる。
【0024】
具体的には、上記A層を構成する結晶性ポリ乳酸系重合体のD−乳酸の含有割合をDa(重量%)、上記B層を構成するポリ乳酸系重合体のD−乳酸の含有割合をDb(重量%)としたとき、下記の式(1)又は式(2)のいずれかの関係を満足するDa及びDbを採用するのが好ましい。
Da≦7 、Db≧5 、かつ、Db>Da (1)
Da≧93、95≧Db、かつ、Db<Da (2)
【0025】
すなわち、上記A層は、支持層となるので結晶性が高い方が好ましく、具体的には、Daは7重量%以下又は93重量%以上が好ましく、5重量%以下又は95重量%以上がより好ましい。7重量%を上回って93重量%を下回る場合は、支持層としての結晶化度が低くなり、十分な耐熱性が得られない場合があり、加熱されると変形が生じやすい。
【0026】
また、上記B層は、溶剤接着される層となるので結晶性が低い方が好ましく、具体的には、Daが7重量%以下の場合は、Dbは5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましい。5重量%を下回ると、結晶化度が高くなり、溶剤接着性が得られない場合がある。
さらに、Daが93重量%以上の場合は、Dbは、95重量%以下が好ましく、93重量%以下がより好ましい。95重量%を上回ると、結晶化度が高くなり、溶剤接着性が得られない場合がある。
【0027】
さらに、DaとDbとの関係は、Daが7重量%以下の場合は、Dbが大きい方が好ましく、Daが93重量%以上の場合は、Dbが小さい方が好ましい。これらの条件を満たすと、A層が支持層として、B層が溶剤接着層としての役割を果たすことができる。
【0028】
なお、上記A層を構成する結晶性ポリ乳酸系重合体と上記B層を構成するポリ乳酸系重合体は、異なる2種類以上のポリ乳酸系重合体の混合体であってもよい。この場合、Da及びDbは、それぞれ構成する複数のポリ乳酸系重合体を構成するD−乳酸の含有割合から算出される平均値となる。
【0029】
上記B層の厚みは、特に限定されないが、2μm以上、100μm未満がよく、5μm以上、50μm以下が好ましく、5μm以上、〜30μm以下がより好ましい。100μm以上だと、シートの耐熱性が劣る場合がある。一方、2μm未満だと、溶剤シール強度に劣る場合がある。
【0030】
また、上記積層延伸シートを用いて、プラスチックケースを作成する場合の全体の厚みは、100〜500μmがよく、150〜400μmが好ましい。100μmより薄いと、座屈強度が劣化し、特にプラスチックケース状にして落下すると、ケース収納物に傷がつきやすい。一方、500μmより厚いと、ケース状に加工しにくい場合がある。
【0031】
上記B層を構成する結晶性ポリ乳酸系重合体が複数のポリ乳酸系重合体の混合体である場合、その複数のポリ乳酸系混合体の1つがA層を構成するポリ乳酸系重合体であってもよい。
【0032】
また、上記A層以外の内層は、上記ポリ乳酸系重合体を主成分とすれば、特に限定されるものではなく、B層を構成する結晶性ポリ乳酸系重合体であっても、A層とB層の中間的な層であってもよい。
【0033】
さらに、上記積層延伸シートを構成する各層の一部又は全部が再生された樹脂によって構成されていてもよい。
さらにまた、上記積層延伸シートを構成する各層には、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加してもよい。
【0034】
上記の積層延伸シートを構成する各層間は、通常に用いられる方法を採用することができる。例えば、この発明の効果を阻害しない範囲で接着用樹脂層によって層同士を接合する方法、複数の押出機からフィールドブロック式或いはマルチマニホール式にひとつの口金を連結する、いわゆる共押出しをする方法、巻き出した混合フィルムの表面上に別種のフィルムをロールやプレス板を用いて加熱圧着する方法等があげられる。なお、上記の接着用樹脂層によって接合する方法、及び加熱圧着する方法においては、各層は2軸延伸を行った後に各層の接合が行われ、上記共押出し法においては、積層シートした後に、2軸延伸が行われる。
【0035】
ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸シート、すなわち上記のA層やB層の各層の製造法としては、Tダイ、Iダイ、丸ダイ等から押し出ししたシート状物又は円筒状物を冷却キャストロールや水、圧空等により急冷し非結晶に近い状態で固化させた後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により2軸に延伸する方法があげられる。
【0036】
通常2軸延伸シートの製造においては、縦延伸をロール法で、横延伸をテンター法で行う逐次2軸延伸法や、縦横同時にテンターで延伸する同時2軸延伸法が一般的である。
【0037】
延伸倍率や延伸温度等の延伸条件は特に限定されず、得られる2軸延伸シートであるA層の配向度(ΔP)が3.0×10-3〜15×10-3となるように延伸条件を設定することが好ましい。ΔPが3.0×10-3より小さいと、シート自体が脆いため、後述する折り曲げ罫線を設け、そのシートを折り曲げてケースを組み立てる際に、シートが割れやすくなる。また、15×10-3より大きいと、後述する折り曲げ罫線を設け、そのシートを折り曲げてケースを組み立てる際に、配向した方向に割れが生じやすくなる。
【0038】
上記の延伸倍率は、縦方向で1.5〜5.0倍がよく、2.0〜4.0倍が好ましい。さらに、横方向で1.5〜5.0倍がよく、2.0〜4.0倍が好ましい。また、上記の延伸温度は、55〜90℃がよく、65〜85℃が好ましい。
【0039】
上記延伸倍率や延伸温度の範囲にならない場合は、上記のA層の配向度(ΔP)を満たさず、得られる積層延伸シートを折り曲げる際に割れが生じやすくなる。また、得られた積層延伸シートの厚み精度が著しく低下し、特に延伸後熱処理されるシートにおいてこの傾向が著しい。このような厚みぶれは、シートを印刷する際に、製品にしわ、波うち等の外観を悪化させる要因となる場合が多い。
【0040】
上記の2軸延伸した後、シートの熱収縮を抑制するため、シートを把持した状態で熱処理するのが好ましい。延伸法としてテンター法を用いる場合は、クリップでシートを把持した状態で延伸されるので、延伸後直ちに熱処理するのが好ましい。
【0041】
得られる積層延伸シートの収縮率は、水浴80℃で1分間浸漬した後の収縮率で5%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましい。5%を超えると、フィルムにしわ、浪打ち等の外観を悪化させる要因を生じさせる場合がある。
【0042】
上記のポリ乳酸系重合体を主成分とする積層延伸シートには、所定の形状の折り曲げ罫線が設けられる。その折り曲げ罫線の形状としては、図1〜図6に示される形状があげられる。
【0043】
図1に示す折り曲げ罫線は、積層延伸シート1に断面形状がV字状の凹溝2aを設けることにより形成された罫線である。また、図2に示す折り曲げ罫線は、その断面形状がW字状の凹溝2bを設けることにより形成され、図3に示す折り曲げ罫線は、その断面形状が台形状の凹溝2cを設けることにより形成された罫線である。これらの折り曲げ罫線は、図7〜図9に示される罫線刃11a、11b、11cの刃先12a、12b、12cを積層延伸シート1に押圧することにより形成される。
【0044】
図4(a)(b)に示す折り曲げ罫線は、積層延伸シート1にV字状の凹溝2dを設け、この凹溝の底部にその長さ方向に沿って凹凸を形成した罫線である。この凹凸の凹部は凹溝2dの底部から形成されるが、この凹部により、積層延伸シート1を折り曲げる際に柔軟性が発揮される。また、上記凹凸の凸部3により、積層延伸シート1を折り曲げる際に強度を保つことができる。この凹凸を設けることにより、積層延伸シート1を折り曲げる際に割れ等が生じるのを防止できる。なお、この折り曲げ罫線の凹溝2dは、V字状に限られず、台形状、U字状等任意の形状を採用することができる。
【0045】
上記図4(a)(b)に示す折り曲げ罫線は、図10に示される罫線刃11dの刃先12dを積層延伸シート1に押圧することにより形成される。上記刃先12dは、突状部13の一部に断続的に凹部14を設けたものである。
【0046】
図5(a)(b)に示す折り曲げ罫線は、積層延伸シート1にV字状又はU字状の凹溝2eを設け、この凹溝の底部にその長さ方向に沿って断続的に深溝4を設け、この深溝4中に断続孔5を形成した罫線である。この折り曲げ罫線を設けると、凹溝2eと深溝4により凹凸が形成され、図4に示す折り曲げ罫線の場合と同様に、柔軟性が発揮されると共に強度が保たれ、積層延伸シート1を折り曲げる際に割れ等が生じるのを防止できる。また、断続孔5を設けたので、この折り曲げ罫線に沿って積層延伸シート1を折り曲げる際に生じる歪みや弾性力が凹溝2eの長さ方向に分散して均一化し小さくなるので、折り曲げ角度が正確になり、組み立て後の平面性が良好となる。
【0047】
上記図5(a)(b)に示す折り曲げ罫線は、図11に示される罫線刃11eの刃先12eを積層延伸シート1に押圧することにより形成される。上記刃先12eは、突状部15の一部に断続的により突出した突起部16を設けたものである。
【0048】
図6(a)〜(c)に示す折り曲げ罫線は、積層延伸シート1にV字状の深溝部6と、上記深溝部6より浅い溝から形成される延伸部7を交互に設けた罫線である。この折り曲げ罫線を設けると、折り曲げ罫線部全体の平均肉厚を薄くしても、特に延伸部7によりこの部分の強度が増すので、この折り曲げ罫線に沿って積層延伸シート1を折り曲げる際に、シートの割れ等が抑制される。このため、細くてシャープな折り曲げ部が得ることが可能となる。
【0049】
この折り曲げ罫線は、図12(a)〜(c)に示す突状の罫線刃11fの断続的に設けられた刃先12fを積層延伸シート1に押圧して食い込ませて押し広げながら深溝部6を形成すると共に、上記押し広げにより刃先12fの間の積層延伸シート部を幅方向に延伸して、深溝部6の間に延伸部7を形成させる。上記罫線刃11fの間を、上面が鞍型状の凸部17に形成することにより、得られる折り曲げ罫線の延伸部7の上面の形状が鞍型状となる。
【0050】
上記の各折り曲げ罫線を設けた2軸延伸シートは、プラスチックケース用シートとして使用することができる。このプラスチックケース用シートをその折り曲げ曲線に沿って折り曲げて組み立てることにより、プラスチックケースが製造される。このとき、折り曲げた少なくとも2面の端面通しを、溶剤にて接着する。
【0051】
このとき使用できる溶剤としては、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、酢酸エチル等があげられる。
【0052】
この溶剤接着は、上記の折り曲げた2面の端面通し間に溶剤を流し込み、両者を互いに押し付ける。そして、溶剤を揮散させることにより、両者は接合される。
【0053】
このようにして製造されたプラスチックケースは化粧品収納ケース等、各種のケースとして使用することができる。
【0054】
【実施例】
以下、この発明について実施例を用いて詳述する。
(ポリ乳酸系重合体の製造)
(A層用重合体の製造)
撹拌機と加熱装置を備えた500リットルバッチ式重合装置に、ピューラックジャパン社製L−ラクチド(商品名:PURASORB L)97Kg、同社製DL−ラクチド(商品名:PURASORB DL)3Kg、及びオクチル酸スズ15ppmを入れた。窒素置換を行った後、185℃、撹拌速度100rpmで60分間重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工業(株)製40mmφ同方向2軸押出機に供し、ベント圧4torrで脱気しながら、200℃でストランド状に押し出し、ペレット化した。得られたポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は20万、D体含有量は1.7%であった。
【0055】
(B層用重合体の製造)
撹拌機と加熱装置を備えた500リットルバッチ式重合装置に、ピューラックジャパン社製L−ラクチド(商品名:PURASORB L)76Kg、同社製DL−ラクチド(商品名:PURASORB DL)24Kg、及びオクチル酸スズ15ppmを入れた。窒素置換を行った後、185℃、撹拌速度100rpmで60分間重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工業(株)製40mmφ同方向2軸押出機に供し、ベント圧4torrで脱気しながら、200℃でストランド状に押し出し、ペレット化した。得られたポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は20万、D体含有量は15%であった。
【0056】
(シートの作製)
上記のB層用重合体から形成されるB層が外層となり、A層用重合体から形成されるA層が内層となるように、それぞれ30mmφの小型単軸押出機を用いて、キャスティング温度52℃にて、Tダイから、共押出しをした。そして、2つのB層の間にA層が挟まれた3層の未延伸積層シート(以下、「試料1」と称する。)を得た。
次いで、試料1を表1に示す条件で縦延伸を行った後、横延伸を行い、さらに、135℃で15秒間保持して熱処理を行い、試料2〜試料6の積層延伸シート(A層厚:190μm、B層厚:30μm、全体厚:250μm)を得た。得られた各積層延伸シートの配向度(ΔP)を下記の方法で測定し、表1に示す。
【0057】
[配向度(ΔP)の測定]
アッベ屈折計を用いて対象シートの直交3軸方向の屈折率(α、β、γ)を測定した。なお、αは、シートの厚さ方向の屈折率をいい、γは、シート面内の最大屈折率をいい、βは、γの測定方向と直交するフィルム面内方向の屈折率をいう。
そして、下記の式(2)に従って、配向度(ΔP)を算出した。
ΔP={(γ+β)/2}−α (2)
(但し、α<β<γ)
【0058】
【表1】
Figure 0003817164
【0059】
(実施例1)
図10、図11、図12に示す罫線刃11d、11e、11fを上記試料2〜6に押圧し、図4、図5又は図6に示す折り曲げ罫線入りシートを作製した。そして、これらの折り曲げ罫線入りシートについて、罫線に沿って折り曲げた。
【0060】
(結果)
試料3〜5の延伸シートを用いた場合、上記いずれの折り曲げ罫線を設ける際に割れは生じなかった。また、得られた折り曲げ罫線入りシートについて、罫線に沿って折り曲げても、割れは生じず、容易に折り曲げることができた。
また、試料2及び6の延伸シートを用いた場合、上記いずれの折り曲げ罫線を設ける際に割れは生じなかった。また、得られた折り曲げ罫線入りシートについて、罫線に沿って折り曲げたとき、小さな割れが生じる場合が見られ、折り曲げるのに注意を要した。
さらに、前述した試料4の延伸シートを用いた折り曲げ罫線入りシートにテトラヒドロフランを滴下した後、罫線に沿ってシートを折り曲げ、重ね合わせて溶剤接着を行った。接着した試料を23℃、相対湿度80%RHの環境下に1週間放置したが、剥がれることはなかった。
【0061】
(比較例1)
図10、図11、図12に示す罫線刃11d、11e、11fを上記試料1に押圧し、図4、図5又は図6に示す折り曲げ罫線入りシートを作製した。そして、これらの折り曲げ罫線入りシートについて、罫線に沿って折り曲げた。
【0062】
(結果)
図11の罫線刃11eを用いた場合、折り曲げ罫線を設ける際に割れを生じた。そして、次の折り曲げ工程に進めなかった。
また、図10又は図12の罫線刃11d、11fを用いた場合、折り曲げ罫線を設ける際に割れは生じなかった。しかし、得られた折り曲げ罫線入りシートについて、罫線に沿って折り曲げたとき、割れが生じた。
なお、ポリ乳酸のみからなる延伸シートを用いて、各種の折り曲げ罫線を設けたところ、同様の結果が得られた。
【0063】
【発明の効果】
この発明によれば、少なくととも3層からなる2軸方向に延伸したシートを用いるので、強度や耐衝撃性が向上し、折り曲げ罫線を設けるときや、折り曲げ罫線に沿ってシートを折り曲げるときに、割れを生じるのを防止でき、かつ溶剤接着することができる。
【0064】
また、ポリ乳酸系重合体を使用するので、環境的に優しいプラスチックケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】折り曲げ罫線を設けた積層延伸シートの例を示す斜視図
【図2】折り曲げ罫線を設けた積層延伸シートの他の例を示す斜視図
【図3】折り曲げ罫線を設けた積層延伸シートの他の例を示す斜視図
【図4】(a)折り曲げ罫線を設けた積層延伸シートの他の例を示す斜視図
(b)(a)のA−A断面図
【図5】(a)折り曲げ罫線を設けた積層延伸シートの他の例を示す斜視図
(b)(a)のB−B断面図
【図6】(a)折り曲げ罫線を設けた積層延伸シートの他の例を示す斜視図
(b)(a)のC−C断面図
(c)(a)のD−D断面図
【図7】罫線刃の例を示す斜視図
【図8】罫線刃の他の例を示す斜視図
【図9】罫線刃の他の例を示す斜視図
【図10】罫線刃の他の例を示す斜視図
【図11】罫線刃の他の例を示す斜視図
【図12】(a)罫線刃の他の例を示す斜視図
(b)(a)の正面図
(c)(a)の側面図
【符号の説明】
1 積層延伸シート
2a、2b、2c、2d、2e 凹溝
3 凸部
4 深溝
5 断続孔
6 深溝部
7 延伸部
11a、11b、11c、11d、11e、11f 罫線刃
12a、12b、12c、12d、12e、12f 刃先
13 突状部
14 凹部
15 突状部
16 突起部
17 凸部

Claims (3)

  1. ポリ乳酸系重合体を主成分とする少なくとも3層を有する積層延伸シートに折り曲げ罫線を設けたシートであり、
    上記積層延伸シートの最外層を、結晶性の低いポリ乳酸系重合体から構成すると共に、上記積層延伸シートの最外層以外の少なくとも一層を、結晶性の高いポリ乳酸系重合体から構成し、
    上記積層延伸シートの最外層を構成するポリ乳酸系重合体のD−乳酸の含有割合をDb(重量%)、上記積層延伸シートの最外層以外の少なくとも一層を構成するポリ乳酸系重合体のD−乳酸の含有割合をDa(重量%)としたとき、下記の式(1 ) 又は式(2)のいずれかの関係を満たし、
    Da≦7 、Db≧5 、かつ、Db>Da (1)
    Da≧93、95≧Db、かつ、Db<Da (2)
    上記積層延伸シートの最外層の厚さが2μm以上、100μm未満であり、全体の厚みが150〜500μmであり、
    上記積層延伸シートの延伸倍率が、縦方向が2.0〜4.0倍であり、横方向が2.0〜4.0である折り曲げ罫線入りシート。
  2. 請求項に記載の折り曲げ罫線入りシートからなるプラスチックケース用シート。
  3. 請求項に記載のプラスチックケース用シートを上記折り曲げ罫線に沿って折り曲げて組み立てられたプラスチックケース。
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