JP5325845B2 - ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系フィルム - Google Patents
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Description
例えば果物や野菜類の包装では、プラスチック包装材の内側に水滴がつくと、そこから被包装体である果物や野菜が傷みだすなどの問題が生じるため、透湿性の高いものが好まれる。特に、柑橘類、葉物類、きのこ類の包装には透湿性の高いものの方が有益であるため、このような用途には、透湿性の高いポリ乳酸系フィルムが特に適している。
また、透湿性が高いという特徴を活かして、例えば特許文献1に開示されているように、電子部品の保護材、特に偏光シート、位相差シート、反射防止シートやその他の液晶部材の保護膜等にも利用されており、例えば特許文献2には、ポリ乳酸を用いてなる光学フィルム用表面保護フィルムが開示されている。この種の光学用シートは、積層され固定枠で固定した液晶モジュールとして使用されるのが一般的であり、液晶モジュールは製造された後、次工程で製品の筐体内に組み込まれ、製品となるが、流通過程でゴミやほこりの付着を防止するため透明プラスチック保護フィルムが貼られる。次工程では、フィルムは一旦はがされるのであるが、保護フィルムの透湿性が低いと、剥がす前ではこの液晶モジュールの表示部に取り込まれる湿気は低く、剥がされた後では湿気を多分に吸収するので、表示部の色目が変化することがある。特に保護フィルムに貼りムラがあると、気泡やしわが入った状態で貼り付けられると、吸湿に程度の違いが生じ、液晶モジュールの色目は変化し、色ムラが生じる。本来、使用時には保護膜は剥がして使用するので、保護膜の有無にかかわらず色目が変化しないことが求められ、具体的には透湿性が高いことが好まれる。
しかし、このようなポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸によって結晶化されるために接着性や印刷性が低下するという新たな課題が生じることになる。つまり、結晶化したポリ乳酸の表面のぬれ指数は一般的に低く、360μN/cm以下程度なので接着性、インキの密着性が不充分となるのである。
そこで、一般的にはコロナ処理やプラズマ処理のようにフィルム表面を酸化処理してぬれ性を向上させることが行われる訳であるが、フィルム表面をコロナ処理、プラズマ処理等の物理的或いは化学的処理するためには、処理装置を設置する必要があり、現状設備に組み込むスペースを要するため、場合によっては製造ラインの構成そのものを改造する必要が生じ、多額の費用が掛かることになる。他のぬれ性向上の手段として、製膜後に再度巻き出して処理する方法もあるが、この方法にしても設備の設置コストが掛かる上、作業が2度手間となってしまう。そして何より、これらで処理した場合のフィルムのぬれ性は経時的に低下するようになり、処理後の初期の段階では良好なぬれ指数を示していたものが、数ヶ月後には数十μN/cm程度にまで低下ことにもなる。
以上の点より、ポリ乳酸系延伸フィルムに関し、ぬれ性を向上させる新たな方法が望まれていた。
かかる問題の解決手段としては、例えば特許文献7に開示されているように、帯電防止剤を塗布して帯電防止性を付与する手段や、特許文献8や特許文献9などのように帯電防止性能をもつ添加剤を配合する手段などが挙げられるが、前者は、経時的に性能が低下しやすく、またこの塗布面に印刷インキが密着せず脱落する問題がある上、ヒートシールや溶断シールによって袋状にするときに著しくシール強度が低下する要因にもなる。他方、後者については、帯電防止性能を得難いがために低分子量添加剤を多量に配合せねばならず、フィルムの透明性を著しく損うことになるばかりか、経時的にこの添加物が吹き出してフィルムの外観を悪化させる問題を抱えていた。
よって、ポリ乳酸系フィルムに関して帯電防止性を有効に高めるための新たな手段が求められていた。
本発明のポリ乳酸系組成物を用いてフィルムを製造する場合、上記ポリ乳酸系組成物を含有した樹脂層からなる単層構成のポリ乳酸系フィルムとすることも、又、少なくとも二層以上の積層構成からなり、片側または両側の最外層が上記ポリ乳酸系組成物を含有した樹脂層からなるポリ乳酸系フィルムとすることもできる。
そして、上記いずれかの構成を備えたポリ乳酸系フィルムにおいても、ぬれ性、接着性及び印刷適性に優れたフィルムとすることができる。具体的には、ぬれ指数が400〜540μN/cmであるポリ乳酸系フィルムとすることもできるし、又、表面抵抗R(Ω)の対数LogRが13以下のポリ乳酸系フィルムとすることもできる。
上記いずれの構成からなるポリ乳酸系フィルムにおいても、透湿度に優れたフィルムとすることができ、具体的には透湿度220〜900g/m2・dayのポリ乳酸系フィルムとすることができる。
また、本明細書において「主成分」と記載した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものである。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、一般的には、その成分が組成物中で50質量%以上、特に70質量%以上を占める成分である。
さらに、ポリエーテルエステルアミドは、特表2003―510433や特許第3452582号に記載されているように生分解性を備えていることが示唆されており、本発明のポリ乳酸系組成物及びこれを用いたポリ乳酸系フィルムも生分解性を示すことを期待することができる。
本実施形態にかかるポリ乳酸系組成物は、ポリ乳酸系重合体(A)と、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)、及び/又は、所定のブロックポリマー(C)と、を主成分としてなるポリ乳酸系組成物である。すなわち、前記成分(A)及び(B)を主成分としてなるポリ乳酸系組成物であるか、前記成分(A)及び(C)を主成分としてなるポリ乳酸系組成物であるか、或いは前記成分(A)(B)及び(C)を主成分としてなるポリ乳酸系組成物である。
この際の「主成分」とは、成分(A)(B)(C)以外の成分を含有することを許容する意を包含するものである。成分(A)(B)(C)の合計含有量は、これらの成分の機能が妨げられない範囲であれば特に限定するものではないが、本ポリ乳酸系組成物において50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上を占めるのが好ましい。
本実施形態に用いるポリ乳酸系重合体(A)は、乳酸を主成分とするモノマーが縮重合してなる重合体である。
乳酸には、2種類の光学異性体すなわちL−乳酸及びD−乳酸があり、これら2種の構造単位の割合で結晶性が異なる。例えば、L−乳酸とD−乳酸の割合が約80:20〜20:80のランダム共重合体では結晶性が低く、ガラス転移点60℃付近で軟化する透明完非結晶性ポリマーとなる。その一方、L−乳酸とD−乳酸の割合が約100:0〜80:20、又は約20:80〜0:100のランダム共重合体は、ガラス転移点は前記の共重合体同様に60℃程度であるが結晶性が高い。その結晶化度は、上記のL−乳酸とD−乳酸の割合によって定まり、溶融押出した後、ただちに急冷すれば透明性の優れた非晶性の材料になり、ゆっくり冷却すれば結晶性の材料となる。例えば、L−乳酸のみからなる単独重合体やD−乳酸のみからなる単独重合体は、180℃以上の融点を有する半結晶性ポリマー(:処理によって室温において結晶性にも非結晶性にもなるポリマー。)である。
この際、共重合される「他のヒドロキシカルボン酸単位」としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必用に応じて重合調節剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸を得ることができる。
次に、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)について説明する。
なお、式中でR1及びR2は、単一ジアミンと単一ジカルボン酸とであるが如く示されているが、それぞれ2種以上が混合してなる共縮重合でかまわない。
なお、式中では単一ポリエーテルであるが如く示されているが、2種以上の成分からなる重合体であってもかまわない。
加えて、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)は導電性にも優れ、ポリ乳酸系組成物に混合することにより帯電防止剤としても機能する。なお、ポリエーテルエステルアミド重合体中にイオン性物質を導入して、さらに導電性能を高めることもできる。
また、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)はポリ乳酸系重合体(A)に混合することで、フィルム成形時のぬれ性を改善する効果も発揮し、表面処理することなくフィルムの接着性及びインキ密着性を高めることができる。
ポリ乳酸系重合体(A)に混合するポリエーテルエステルアミドの屈折率が1.40〜1.50の範囲内であれば、少なくとも通常の10〜100μm厚のフィルムであれば、フィルムのヘーズは10%未満となり、見た目の不透明感が残ることがない。さらに、屈折率1.41〜1.49のポリエーテルエステルアミド重合体を用いればフィルムのヘーズを6%以下にすることができる。
次に、ブロックポリマー(C)について説明する。
該ポリオレフィンのブロックと該ポリオキシエチレン鎖を有するポリマーのブロックとの結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合及びイミド結合からなる郡から選ばれる少なくとも一種の結合であればよい。
ポリオレフィン(a212)は、上記ポリオレフィン(a211)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィンである。
ポリオレフィン(a214)は、上記ポリオレフィン(a213)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィンである。
ポリ乳酸系重合体(A)に混合するブロックポリマーの屈折率が1.40〜1.50の範囲内であれば、少なくとも通常の10〜100μm厚のフィルムの場合、フィルムのヘーズは10%未満となり見た目の不透明感が残ることがない。さらに、屈折率1.41〜1.49のブロックポリマーを用いればフィルムのヘーズを6%以下にすることができる。
本実施形態のポリ乳酸系組成物における各成分の配合割合は、ポリ乳酸系重合体(A)と、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)及び/又は所定のブロックポリマー(C)(成分(B)及び成分(C)を配合する場合には両者の合計量、以下同様。)とを、質量比で95:5〜65:35とすることが重要であり、好ましい範囲としては、質量比で90:10〜70:30である。
ポリエーテルエステルアミド重合体(B)及び/又はブロックポリマー(C)の配合割合が5%以上であれば、ぬれ指数は400μN/cm以上となり、接着性、インキ密着性に優れたフィルム等を製造することができる。その一方、35%以下であれば、その結晶性のために延伸が出来なくなることはない。また、本実施形態のポリ乳酸系組成物を用いて積層フィルムを構成する場合、例えば、表層、裏層或いは表裏層を、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)及び/又はブロックポリマー(C)が35%を著しく超えて配合されてなるポリ乳酸系組成物を用いて形成する場合、各層を薄く形成すれば延伸可能となるが、それでも押出し引取時に流れムラが発生し、外観の劣悪なフィルムが得られる可能性がある。また、フィルム表面の極性が高まるとフィルム同士のブロッキングが生じ易くなるため、この意味でもポリエーテルエステルアミド(B)及び/又はブロックポリマー(C)の混合割合は35%以下であることが重要である。
なお、この場合、帯電防止性の観点においてであるから、積層フィルムを形成する場合には少なくとも片側の最外層におけるポリ乳酸系組成物の混合割合が質量比で90:10〜65:35であることが重要である。
ポリ乳酸系重合体は一般的に耐衝撃性に劣り、2軸延伸して配向する場合には耐衝撃性が向上するが、延伸しない場合には何らかの方法で耐衝撃性を向上させる必要がある。そこで、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)及び/又はブロックポリマー(C)を耐衝撃性改良剤として機能させるためには、成分(B)及び/又は成分(C)の混合割合を質量比で10%以上とするのが好ましい。成分(B)及び/又は成分(C)が10%を下回ると、ダート型衝撃試験機であるハイドロショット高速衝撃試験機HTM−1型((株)島津製作所製)を用いた耐衝撃性を評価したときに、破壊エネルギーが200N・mを下回るようになり実用性に乏しいものとなってしまう。より好ましい実用性を供するためには、300N・m以上の耐衝撃性を必要とするため、成分(B)及び/又は成分(C)の配合割合を15%以上とするのが好ましい。他方、35%を超えると、上述のとおりフィルム同士のブロッキング等が生じるため好ましくない。
積層フィルムとする場合には、全層を通して平均した割合が上記を範囲であることが好ましく、全層を通して上記範囲にあるならば、積層構成のどの層にのみ配合してもかまわず、例えば中間層にのみ混合してもかまわない。
本実施形態のポリ乳酸系組成物には、成分(A)(B)(C)以外に、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加することができる。
また、フィルムの滑り性の向上や柔軟性を付与する目的で、先に記述したポリ乳酸との共重合成分として上げた脂肪族ポリエステル若しくは脂肪族・芳香族ポリエステルの単独重合体を混合してもかまわない。これらの重合体の重量平均分子量はおおよそ2万〜30万程度である。
次に、本実施形態のポリ乳酸系組成物を用いた成形品の例として、上記実施形態のポリ乳酸系組成物を用いたポリ乳酸系フィルムについて説明する。但し、本発明のポリ乳酸系組成物を用いた成形品が次に説明するフィルムに限定されるものではない。
本実施形態のポリ乳酸系組成物を用いて、ポリ乳酸系組成物を主成分として含有する樹脂層のみからなる単層構成のポリ乳酸系フィルムを製造することができる。この際、単層構成のポリ乳酸系フィルムの厚みは5μm〜1mm、特に10μm〜800μm、中でも特に15μm〜500μmとするのが好ましい。
また、上記実施形態のポリ乳酸系組成物を用いて積層構成のポリ乳酸系フィルムを製造することもできる。例えば、少なくとも二層以上からなる積層構成とし、片側または両側の最外層を上記実施形態のポリ乳酸系組成物を主成分して含有する樹脂層から形成することができる。
ここで、ポリ乳酸系重合体(A)を主成分として含有する樹脂層をX層と表現し、上記実施形態のポリ乳酸系組成物(:成分(A)と成分(B)及び/又は成分(C)とを所定割合で混合)を主成分とする樹脂層をY層と表現すると、ぬれ指数向上或いは/並びに帯電防止性能の向上の観点からは、Y層を最外層にもつ積層構造が好ましい。例えばY/X/Yの3層構成のものや、Y/X/Y/X/Yなどの5層構成のもの、Y/X/Y/X/・・・/Yなどのその他の多層構成のものを挙げることができる。
また、フィルムがカールしないように各層の厚さ等を調整して製造する場合には、片側のみをY層(機能層)とする積層構造が好ましい。例えばY/Xからなる2層構成のもの、Y/X/Y/Xなどの4層構成のもの、さらにはY/X/・・・/Xなどのそのほかの多層構成のものを採用することもできる。
なお、上記積層構造においてXとYの積層順序を上記の逆にしても構わない。
また、最外層を構成するY層の厚みは1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、特に好ましくは4μm〜50μmである。
ここで、ポリ乳酸系重合体(A)を主成分とする樹脂層をX層と表現し、上記実施形態のポリ乳酸系組成物(成分(A)と成分(B)及び/又は成分(C)とを所定割合で混合)を主成分とする樹脂層をY層と表現すると、例えばX/Y/Xなどの3層構成のものとすることも、X/Y/Y/X、X/Y/X/Yなどの4層構成のものとすることも、X/Y/X/Y/・・・/Xなどのそのほかの多層構成とすることもできる。
但し、上記積層構造においてXとYの積層順序は上記の逆でも構わない。
中間層のうちの少なくとも一層を構成するY層の厚みは5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、、特に好ましくは20〜800μmである。
なお、フィルムとは通常、狭義では100μm未満を称すことがあり、100μm以上ではシートと称すことがある。しかしながら、実際のところ明確に定義されているものではなく、本紙では100μm以上のシートもすべてフィルムとする。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、X/Y間の各層の間に厚みが10μm以下、好ましくは5μm以下の接着剤層、接着用樹脂層、リサイクル樹脂層或いはX層とY層の中間的な層を積層してあってもよい。
上記構成のポリ乳酸系フィルムにおいて各層には、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等の各種改質剤を添加するようにしてもよい。
上記の無機充填材としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、カオリン、クレー等が挙げられる。また、顔料としては酸化チタンが挙げられる。酸化チタンは、白色用であり更に隠蔽性を得るために配合することが多い。使用する酸化チタンの種類としてはアナターゼ型、ルチル型があり、どちらも使用することが可能であるが酸化チタン表面は光化学的に活性の高い物質であり、耐光性を考慮するなら後者若しくは表面処理行った失活したものを使用することが好ましい。なお、酸化チタンを配合した白色のシートは合成紙、カード、記録材として有用である。
この無機充填材は、ポリ乳酸系重合体(A)100質量部に対し、1〜35質量部含有するように配合するのが好ましく、より好ましくは5〜20質量部配合する。
本実施形態のポリ乳酸系フィルム、特にポリ乳酸系2軸延伸フィルムの収縮率は、温風120℃/5分間後で10%以下、より好ましくは7%以下、特に0.1〜5%であることが好ましい。10%を越えると、フィルムにしわ、波打ち等の外観をひどく損なう要因となり得るからである。
フィルムの透湿性を上記範囲に高めるためには、単層フィルムであるか積層フィルムであるかを問わず、フィルム全体の質量部100に対してポリエーテルポリエステルアミド重合体(B)及び/又はブロックポリマー(C)を10〜35質量部、好ましくは15〜30質量部含有するようにするのが好ましい。フィルム全体の質量部100に対してポリエーテルポリエステルアミド重合体(B)及び/又はブロックポリマー(C)が10〜35質量部含有されていれば、JISZ0208B法で評価したときの透湿度が220〜900g/m2・dayの範囲内とすることができる。
フィルムのぬれ指数を当該範囲に調整するためには、上記の単層構成、或いは、上記積層構成のうち、片側または両側の最外層が本実施形態のポリ乳酸系組成物を主成分して含有する樹脂層から形成すればよい。
フィルムの耐衝撃性は、ダート型衝撃試験の測定値(ハイドロショット値)が、200〜500N・mm、特に250〜450N・mmであるのが好ましい。
次に、本実施形態に係るポリ乳酸系フィルムの製造方法の一例として、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法について説明する。
なお、無延伸フィルム、一軸延伸の製造方法については、以下に説明するポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法を参酌して製造することができる。
なお、2軸延伸フィルムの製造においては、縦延伸にはロール法を採用すると共に横延伸にはテンター法を採用する逐次2軸延伸法、或いは縦横同時にテンター法で延伸する同時2軸延伸法を用いればよい。
但し、これらの適性範囲は、重合体の組成や無延伸シートの熱履歴によって異なるので、フィルムの強度、伸びを考慮しながら適宜決めるのが好ましい。
縦横延伸倍率のいずれかが1.5〜5倍の範囲を著しく外れるか、或いは、延伸温度が55〜95℃を著しく外れた場合には、得られるフィルムの厚み精度が著しく低下することになり、特に延伸後熱処理されるフィルムにおいてはこの傾向が著しい。このような厚み振れは、フィルムを印刷したり、或いは他のフィルムや金属薄膜、紙とのラミネーションさらには製袋等の二次加工において、製品にしわ、波打ち等の外観を低下させる要因となるので注意が必要である。
本実施形態に係るポリ乳酸系フィルムは、フィルム表面に印刷を施し、飲料、食品、薬品、電化品、雑貨等の袋やケース等の包装材、またカード等の被記録材、販促・広告・ディスプレー用シートとして好適に使用することができる。具体的な例としては、パチンコ機、スロット機、ゲーム機等の遊戯機のディスプレー用印刷シート、自動販売機等に使用される広告用印刷シート、販売店頭で使用される表示札、生花用札、選挙ポスター等に用いることができる。
また、本実施形態に係るポリ乳酸系フィルムは、透明性、透湿性及び耐電防止性に優れえているから、各種電子部品とりわけ光学用シートや液晶モジュール類の保護フィルムとして好ましく利用することができる。
無延伸フィルムは、熱成形シートとしても有用である。
口金より溶融押出しし、キャストロールで引き取ったときのフィルムの幅振れを調査した。使用した口金はリップ幅550mm、リップギャップ約2mm。引き取り速度は10〜20m/分の範囲内で調整した。
引き取ったシートの幅が10mm以上変動するときは不良で×、10mm未満のときには良好で○、と評価した。
ダイヤルゲージを用いてフィルムを接触して測定した。
JIS C 2151に基づいて測定を行った。巻き取ったフィルムの内面を3点、外面を3点測定し、これらの平均値を算出した。
JIS C 6768に基づいて測定を行った。巻き取ったフィルムの内側の中央から任意に3回測定し、ぬれ指数を判定した。
フィルムをA3サイズに切り出し、そのフィルム上に下記に示すグラビアインキをスポイドで約0.5cc滴下し、ただちにメイヤーバー(No.4)で展開し、塗布した。次に、この塗布したフィルムを40±3℃に設定したオーブンで約30秒乾燥した。インキ密着性は、印刷面にセロテ−プ(ニチバン(株)製エルパックLP−18)を貼り、セロテープ(登録商標)の上から指で5回こすった。その直後、セロテ−プを一気に剥がし、インキがどれほど剥離したかを目視で観察した。評価は、全くインキの剥離しないものを5とし、完全に剥離するものを1とし、5段階評価した。
=評価用インキ=
PANNカラーS39藍(東洋インキ製造株式会社製)
フィルムを40mm×50mmに2枚切り出し、印刷層にあたる面同士を重ね合わせた。さらに上下に約40mm×50mmの鏡面板を重ね合わせ、恒温恒湿器内に置いた。この鏡面板上に約5kgの重りをのせて放置した。試験温度と湿度の設定は、50℃/80%RHとした。放置2日後、重ねあわせたフィルムの剥離具合を見た。
フィルム同士がくっつき、剥がしにくいものを不良として×、剥離の優れるものは良好として○、と評価した。
ダート型衝撃試験機であるハイドロショットR高速衝撃試験機HTM−1型((株)島津製作所製)を用い耐衝撃性を評価した。フィルムをおおよそ100mm×100mmに切り出し、その試験片を試験機のクランプに固定し、フィルム中央に錘を落として衝撃を与え、試験片が破壊するときのエネルギーを読み取った。測定温度は23℃、落錘の落下速度は3m/秒。フィルム破壊時のエネルギーが低いほど耐衝撃性は劣ることになる。
フィルムをJISZ0208B法に基づいて測定した。
粘着加工されている偏光板(日東電工製 NWF SEG1425WVARC150K)をガラス板に貼り付けて、偏光板の約半分の面積部分の上に表面保護用フィルムを置き、その外周部をOPPテープ(三菱樹脂製ダイアハローテープ)で外周部からの湿気の侵入を防止するよう二重に貼り付け固定し、評価サンプルを作成した。この評価サンプルを35℃、80%RHの恒温恒湿機に投入し、10時間保管後取り出し、室温にした。
真上及び種種の角度から目視にて観察し、表面保護フィルムを貼り合せていなかった部分と、表面保護フィルムを貼り合せた部分とで明るさに差がない場合を良好として○、ある(むらがある)場合を不良として×、と評価した。
樹脂成分として、L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つランダム共重合体であって、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸系重合体(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製、分子量約20万、屈折率1.45)80質量%と、ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタットNC7530、三洋化成株式会社製、屈折率1.53)20質量%とを混合して、合計100質量部のポリ乳酸に、乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.05質量部混合して75mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃で口金よりシート状に押出した。
そして、この押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、無延伸フィルムを得た。
続いて二軸延伸装置を用い、長手方向にロール及び赤外線ヒーターで75℃に加熱しながら2.8倍に延伸し、次いで、幅方向にテンターで予熱ゾーン温度72℃設定、延伸ゾーンの温度76℃設定で3.2倍に延伸した。テンターでの熱処理ゾーンの温度は140℃にし、熱処理した二軸延伸フィルムを作製した。フィルム厚みはおおよそ平均で40μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。
フィルムの評価結果を表1に示す。
ポリエーテルエステルアミドを、商品名ペレスタットNC6321(三洋化成株式会社製、屈折率1.51)に替えた以外は、サンプル1と同様にして、厚み40μmの二軸延伸フィルムを作製した。
フィルムの評価結果を表1に示す。
サンプル2と同様にして、押出して厚み300μmの無延伸シートを作製した。
このフィルムの評価結果を表1に示す。
ポリエーテルエステルアミドの代わりに、ポリオレフィンのブロックとポリオキシエチレン鎖を有するポリマーのブロックとが交互に繰り返し結合してなる構造を有するブロックポリマー(「ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー」という。)としての商品名ペレスタット303(三洋化成株式会社製、屈折率1.49)を用いた以外は、サンプル1と同様にして、厚み40μmの二軸延伸フィルムを作製した。
フィルムの評価結果を表1に示す。
樹脂成分として、ポリ乳酸系重合体(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)と、ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマーである商品名ペレスタット300(三洋化成株式会社製、屈折率1.49)とを、質量比率で95:5の割合に混合し、合計100質量部のポリ乳酸に、乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.05質量部を混合して、58mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体を75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
押出機からの溶融樹脂の吐出量とキャスト速度を調整して、表層、中間層、裏層の厚み比は1:5:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整し、約35℃のキャスティングロールにて急冷し、300μm又は40μmの無延伸共押出フィルムを得た。
樹脂成分として、ポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)とポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー(商品名:ペレスタット300、三洋化成株式会社製)とを、表2に示すように質量比率で95:5、90:10、80:20、70:30、60:40の割合に混合し、58mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体を75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
次に、押出機からの溶融樹脂の吐出量とキャスト速度を調整して、表層、中間層、裏層の厚み比は1:8:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整し、約35℃のキャスティングロールにて急冷し、無延伸フィルムを得た。
この無延伸フィルムを、二軸延伸装置を用いて長手方向にロール及び赤外線ヒーターで74℃に加熱しながら2.6倍に延伸し、次いで、幅方向にテンターで予熱ゾーン温度72℃設定、延伸ゾーンの温度77℃設定で3.3倍に延伸した。テンターでの熱処理ゾーンの温度は135℃にし、熱処理した二軸延伸フィルムを作製した。
フィルム厚みはおおよそ平均で40μmから50μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。
フィルムの評価結果を表2に示す。なお、比較例6ではフィルム表面にムラが生じ、外観が著しく劣ったものであった。
樹脂成分として、ポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)80質量%と、ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー(商品名:ペレスタット300、三洋化成株式会社製)20質量%とを混合して、合計100質量部のポリ乳酸に、乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.05質量部を混合して75mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃で口金よりシート状に押出した。この押出シートをサンプル7と同様に二軸延伸フィルムを作製した。
フィルム厚みはおおよそ平均で50μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。
フィルムの評価結果を表3に示す。
樹脂成分として、ポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)と、ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー(商品名:ペレスタット300、三洋化成株式会社製)とを、質量割合で70:30又は100:0となるように混合し、そのほかはサンプル3と同様にして、表3に示すように厚さ300μm又は40μmの無延伸フィルムを得た。
フィルムの評価結果を表3に示す。
樹脂成分として、ポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)と、ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー(商品名:ペレスタット300、三洋化成株式会社製)とを、質量割合で100:0又は97:3となるように混合し、そのほかはサンプル1と同様に押出し、二軸延伸して表3のように厚さ40μmのフィルムを得た。
フィルムの評価結果を表3に示す。
樹脂成分として、ポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)と、ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー(商品名:ペレスタット300、三洋化成株式会社製)とを、質量割合で60:40又は50:50となるように混合し、そのほかはサンプル1と同様に押出し、二軸延伸しようとした。
しかし、サンプル16の場合には、縦延伸後、テンターに縦延伸フィルムを導いて、幅方向に延伸しようとしたが、途中で破断が発生した。予熱ゾーンならびに延伸ゾーンの温度設定をそれぞれ65〜90℃まで変更したが、破断は解消されなかった。
サンプル17の場合には、押出した溶融樹脂をキャストロールで急冷し、引取りを行ったが、フィルムの表面にムラが生じ、またシートの幅振れがひどく、いわゆるドローレゾナンス現象が起こって、外観が良好で厚み精度のよい無延伸フィルムを得ることができなかった。
樹脂成分として、L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位をもつポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)と、L−乳酸:D−乳酸=94.5:5.5の構造単位をもつポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)と、ポリオレフィン/ポリオキシエチレンブロックポリマー(商品名:ペレスタット300、三洋化成株式会社製)とを、質量割合で20:50:30で混合し、さらにこの樹脂成分100質量部に対して10質量部のアナターゼ型二酸化チタン(商品名:TA−300、富士チタン工業(株)製)を混合し、58mmφの同方向二軸押出機にて脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体100質量部に対して上記と同種の二酸化チタン10質量部を混合した組成物を、75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
押出機からの溶融樹脂の吐出量とキャスト速度を調整して、表層、中間層、裏層の厚み比は1:10:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整し、約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸フィルムを得た。
フィルム厚みはおおよそ平均で250μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。
上記サンプル3、4、10及び11で得られたフィルムをA3サイズに切り取り、その片側に水性粘着剤エマルジョンである商品名REGITEXA5005((株)レヂテックス社製)の原液を水で約2倍に希釈したものを、メイヤーバー#4で塗布した。次いで、おおよそA4サイズにある金属製枠2枚の間に該フィルムを挟み込み、金属製クリップでしっかりと固定した。この枠で固定したフィルムを約70℃の熱風循環式オーブンに入れて2分間乾燥した。
得られたフィルムは、粘着性をもつ保護フィルムとして使用できた。
上記サンプル3、5及び12で得られたフィルムを、熱成形機(三和興業社製PLAVAC−FE36PH型)にクランプし、赤外線ヒーターでシート温度が70℃になるように予熱した後、プラグにより金型内に押し込んで予備成形を行った。予熱時の温度は、あらかじめ熱電対をフィルムに貼り付け、ヒーターの容量及び加熱時間との関係を調べ、求めたものである。
次いで、図1に示される金型を使用し、金型内を真空にしてカップ状に成形を行った。
Claims (10)
- ポリ乳酸系重合体(A)と、ポリエーテルエステルアミド重合体(B)と、を含有してなり、前記成分(A)と前記成分(B)との割合が質量比で85:15〜70:30であり、前記成分(A)は、L−乳酸とD−乳酸の割合が100:0〜94:6若しくは6:94〜0:100であるポリ乳酸系重合体であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
- 前記成分(A)は、L−乳酸とD−乳酸の割合が99.5:0.5〜97:3若しくは3:97〜0.5:99.5であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリ乳酸系組成物を含有した樹脂層からなることを特徴とする単層構成のポリ乳酸系フィルム。
- 少なくとも二層以上の積層構成からなり、片側または両側の最外層が、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系組成物を含有した樹脂層であることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
- 少なくとも三層以上の積層構成からなり、中間層のうち少なくとも一層が、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系組成物を含有した樹脂層であることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
- 少なくとも一方向に延伸されてなる請求項3〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
- ぬれ指数が400〜540μN/cmであることを特徴とする請求項3、4又は6に記載のポリ乳酸系フィルム。
- 表面抵抗R(Ω)の対数LogRが13以下であることを特徴とする請求項3、4又は6に記載のポリ乳酸系フィルム。
- 透湿度が220〜900g/m2・dayであることを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
- ダート型衝撃試験の測定値(ハイドロショット値)が、200〜500N・mmであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系無延伸フィルム。
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