JP3816726B2 - レトロフォーカス型広角レンズ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として、35mm一眼レフレックスカメラ用交換レンズ、スチルビデオ、ビデオカメラのレトロフォーカス型広角レンズに用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、長いバックフォーカスを有する広画角の撮影レンズとして負の屈折力のレンズ群が先行するレトロフォーカス(逆望遠型)型レンズが種々と提案されている。しかしながら、レトロフォーカス型レンズは前群に負の屈折力、後群に正の屈折力のレンズ群を有した非対称のレンズ構成になっている為、無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行うと、レンズ系への軸外光束の光線高の変化が大きくなるので、諸収差の発生量が多くなる傾向があった。この為、レトロフォーカス型レンズにおいてはフォーカスの際の収差変動を補正する為に様々なフォーカス方法が用いられている。例えば、特開昭61−90116号公報では画角95°程度、口径比1:2.8程度で無限遠から近距離へフォーカスする際、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔を変化させながら双方のレンズ群を物体側に移動させるレトロフォーカス型レンズを開示している。また、特開平7−35974号公報では画角84°程度、口径比1:1.4程度で無限遠から近距離へフォーカスする際、第1レンズ群を固定し、第2群のみを物体側に移動させるレトロフォーカス型レンズを開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術においては、特開昭61−90116号公報は、口径比が1:2.8と大きい。また、特開平7−35974号公報は口径比が1:1.4と小さいが、近距離時の撮影倍率が低いなどの問題点があった。
【0004】
本発明は、口径比が1:1.8と小さく、適切なパワー配置により近距離時の撮影倍率が1:3程度のレンズの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明においては物体側より順に正又は負の屈折力の第1群、絞り、正の屈折力の第2群で構成され、該第2群は正の屈折力の第2a群、負の屈折力の第2b群、正の屈折力の第2c群を有し、無限遠から近距離物体に合焦する時、前記第1群と第2群との間隔が減少するように、第1群、第2群が光軸に沿って物体側に移動し、以下の条件を満たすことで上記の目的を達成した。
【0006】
(1)0.0<|f/f|<0.25
(2)0.5<Δd/Δd<0.75
(3)1 . 15<f /f 2a <1 . 40
但し、fは、第1群の焦点距離
fは、全レンズ系の焦点距離
Δdは、無限遠から撮影倍率1:3程度の近距離時に合焦するときの第1群の移動量
Δdは、無限遠から撮影倍率1:3程度の近距離時に合焦するときの第2群の移動量
は、第2群の焦点距離
2a は、第2a群の焦点距離
【0007】
また、前記第1群は正の屈折力の第1a群、負の屈折力の第1b群、正の屈折力の第1c群より成り、以下の条件を満たすことが望ましい。
(4)0 . 6<D 1c /f<0 .
但し、D 1c は、第1c群の中心厚の和
【0008】
さらに、前記第1b群、第2a群は非球面を有しており、以下の条件を満たすことが望ましい。
(5)0.020<Δx/Hmax<0.040
但し、Δxは、非球面の近軸球面からの有効径周辺部の光軸方向のズレ量
maxは、非球面の最大の光線高
【0009】
【作用】
条件式(1)は第1群の屈折力を規定するものであり、フォーカシングをするときの収差変動、主に球面収差の補正を行うための条件である。ここで、下限を越えると球面収差が補正不足になる。上限を越えると球面収差が補正過剰になってしまう。
【0010】
条件式(2)は、第1群と第2群の移動比を規定するものであり、至近での非点収差の補正を行う条件である。一般にレトロフォーカス型レンズの場合、近距離での撮影を行うとき、すべての光学系を同時に動かしてフォーカシングをする方法では、非点収差が大幅に補正過剰になってしまう。第1群、第2群との間隔を減少するフォーカシングを行うと、補正過剰であった非点収差が、良好に補正することができる。ここで、下限を越えると非点収差が補正不足になり、レンズ群の移動量が増えるので好ましくない。上限を越えると非点収差が補正過剰になり、近距離時に良好な画像を得ることが出来ない。
【0011】
条件式(3)は、第2a群の屈折力を規定するものであり、下限を越えると、第2群の有効径が大きくなり、レンズ鏡筒が太くなってしまう。上限を越えると、レンズの敏感度が大きくなり製造上好ましくない。また、像面に近いレンズの有効径が大きくなる為、鏡筒設計に支障をきたす。
【0012】
条件式(4)は、第1c群の中心厚の和を規定するものであり、厚い正レンズは負の歪曲と像面湾曲を補正するのに必要である。ここで、下限を越えると、収差の十分な補正効果が得られない。上限を越えると、レンズ全長が長くなり好ましくない。
【0013】
条件式(5)は、非球面形状を規定するものであり、第1b群の非球面形状が下限を越えると、非球面の効果が弱くなり、非点収差を十分に補正することが出来ない。上限を越えると、非点収差が補正過剰となり、また非球面形状の変化が激しいため生産性が悪くなる。また、第2a群の非球面形状が下限を越えると、非球面の効果が弱くなり、球面収差を十分に補正することができなくなる。上限を越えると、マージナルの球面収差が正の方向に倒れる為、性能が劣化する。また、敏感度が大きくなり製造上好ましくない。
【0014】
更に好ましくは以下の条件を満足する事により、近距離物体へ合焦する時の第1群の移動量を制限でき、鏡筒設計の負担を緩和できる。
(6)‐0.25<f/f<0.0
但し、fは、第1群の焦点距離
fは、全レンズ系の焦点距離
【0015】
【実施例】
以下に本発明のレトロフォーカス型広角レンズの数値実施例1、数値実施例2、数値実施例3を示す。図1は数値実施例1のレンズ断面図、図2は数値実施例2のレンズ断面図、図3は数値実施例3のレンズ断面図、図4は本発明の数値実施例1において無限遠合焦時の収差図、図5は本発明の数値実施例1において撮影倍率1:2.6の近距離合焦時の収差図、図6は本発明の数値実施例2において無限遠合焦時の収差図、図7は本発明の数値実施例2において撮影倍率1:2.6の近距離合焦時の収差図、図8は本発明の数値実施例3において無限遠合焦時の収差図、図9は本発明の数値実施例3において撮影倍率1:2.6の近距離合焦時の収差図である。
【0016】
数値実施例において、fは焦点距離、FnoはFナンバー、2ωは画角であり、rはレンズ各面の曲率半径、dはレンズ厚またはレンズの間隔、nは各レンズのd線の屈折率、νはアッベ数を示す。
【0017】
また、非球面の形状は、レンズ面の中心部の曲率半径をRとし、光軸からの高さをH、円錐係数をAとし、A、A、A、A、A10を各非球面係数としたとき下式で表すものとする。
【数1】
Figure 0003816726
【0018】
数値実施例1
f=27.10
Fno=1.86
2ω=77.2
【0019】
Figure 0003816726
【0020】
5面の非球面係数
A=1.0
A2=0.00000E+00
A4=0.39371E-05
A6=0.10779E-07
A8=-0.97950E-11
A10=0.52670E-13
【0021】
15面の非球面係数
A=1.0
A2=0.00000E+00
A4=0.13651E-04
A6=-0.38380E-08
A8=0.60900E-11
A10=-0.58850E-14
【0022】
Figure 0003816726
【0023】
条件式
(1)0.00
(2)0.64
(3) . 31
(4) . 64
(5)5面=0.033
15面=0.031
(6)0.00
【0024】
数値実施例2
f=24.69
Fno=1.85
2ω=82.44
【0025】
Figure 0003816726
【0026】
5面の非球面係数
A=1.0
A2=0.00000E+00
A4=0.38440E-05
A6=0.10581E-07
A8=-0.99037E-11
A10=0.50550E-13
【0027】
15面の非球面係数
A=1.0
A2=0.00000E+00
A4=0.13754E-04
A6=-0.36849E-08
A8=0.26087E-11
A10=0.39670E-14
【0028】
Figure 0003816726
【0029】
条件式
(1)0.08
(2)0.62
(3) . 25
(4) . 72
(5)5面=0.027
15面=0.033
(6)‐0.08
【0030】
数値実施例3
f=27.27
Fno=1.87
2ω=76.8
【0031】
Figure 0003816726
【0032】
5面の非球面係数
A=1.0
A2=0.00000E+00
A4=0.13080E-05
A6=0.97820E-08
A8=-0.97950E-11
A10=0.52670E-13
【0033】
15面の非球面係数
A=1.0
A2=0.00000E+00
A4=0.13581E-04
A6=-0.38380E-08
A8=0.60900E-11
A10=0.10920E-13
【0034】
Figure 0003816726
【0035】
条件式
(1)0.05
(2)0.72
(3) . 37
(4) . 71
(5)5面=0.018
15面=0.032
(6)満たしていない
【0036】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の構成によれば、口径比が1:1.8と明るく、近距離時の撮影倍率が1:3程度のレンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の数値実施例1のレンズ断面図である。
【図2】本発明の数値実施例2のレンズ断面図である。
【図3】本発明の数値実施例3のレンズ断面図である。
【図4】本発明の数値実施例1において無限遠合焦時の収差図である。
【図5】本発明の数値実施例1において撮影倍率1:2.6の近距離合焦時の収差図である。
【図6】本発明の数値実施例2において無限遠合焦時の収差図である。
【図7】本発明の数値実施例2において撮影倍率1:2.6の近距離合焦時の収差図である。
【図8】本発明の数値実施例3において無限遠合焦時の収差図である。
【図9】本発明の数値実施例3において撮影倍率1:2.6の近距離合焦時の収差図である。

Claims (3)

  1. 物体側より順に正又は負の屈折力の第1群、絞り、正の屈折力の第2群で構成され、該第2群は正の屈折力の第2a群、負の屈折力の第2b群、正の屈折力の第2c群を有し、無限遠から近距離物体に合焦する時、前記第1群と第2群との間隔が減少するように、第1群、第2群が光軸に沿って物体側に移動し、以下の条件を満たすことを特徴とするレトロフォーカス型広角レンズ。
    (1)0.0<|f/f|<0.25
    (2)0.5<Δd/Δd<0.75
    (3)1 . 15<f /f 2a <1 . 40
    但し、fは、第1群の焦点距離
    fは、全レンズ系の焦点距離
    Δdは、無限遠から撮影倍率1:3程度の近距離時に合焦するときの第1群の移動量
    Δdは、無限遠から撮影倍率1:3程度の近距離時に合焦するときの第2群の移動量
    は、第2群の焦点距離
    2a は、第2a群の焦点距離
  2. 前記第1群は正の屈折力の第1a群、負の屈折力の第1b群、正の屈折力の第1c群より成り、以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1記載のレトロフォーカス型広角レンズ。
    (4)0 . 6<D 1c /f<0 .
    但し、D 1c は、第1c群の中心厚の和
  3. 前記第1b群、第2a群は非球面を有しており、以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載のレトロフォーカス型広角レンズ。
    (5)0.020<Δx/Hmax<0.040
    但し、Δxは、非球面の近軸球面からの有効径周辺部の光軸方向のズレ量
    maxは、非球面の最大の光線高
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