JP3816255B2 - 金属塗装体及びその塗装方法 - Google Patents

金属塗装体及びその塗装方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海岸沿い等腐食の生じやすい場所で使用される道路柵等の金属塗装体及びその塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、海岸沿い等塩害のような腐食の生じやすい環境下で使用される金属製品に対して、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミドに代表されるような熱可塑性樹脂を主成分に用いた塗料による防食処理が行われていた。
しかしこのような塗膜は耐候性が劣り、経年劣化により表層にクラック等が発生し、該クラックにさらに腐食物質が浸透し、急激に腐食が進行するといった欠点があった。
また塗膜が傷つけられた場合でも腐食物質が浸透することから、塗膜を厚くして傷が金属面に到達するのを防ぐため、600〜700μm以上の塗膜厚を必要とした。
【0003】
さらに上記塗膜を保護するため該塗膜上にトップコート層を施すことも検討されたが、上記塗膜が熱可塑性樹脂のため、トップコート層も熱処理ができず、常温硬化タイプの塗料となり、かつ上記塗膜が耐溶剤性に優れていて、通常の塗料に使用されるキシレン、トルエン、酢酸エチル等の溶剤では相溶性に劣るなど、トップコート層の良好な密着性は得られなかった。
したがってトップコート層に溶解力の強いシクロヘキサン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン等の溶剤を使用すると、熱可塑性樹脂塗膜が浸食されて耐久性が著しく阻害される弊害が生じた。
さらにまた、熱可塑性樹脂塗膜とトップコート層との熱膨張率や塗膜硬度が大きく異なることも良好な密着性は得られない原因であった。
【0004】
なお、プラズマ放電処理やコロナ放電処理等で熱可塑性樹脂塗膜を活性化してトップコート層との密着性を向上させる方法もあるが、複雑な構造の製品ではハンドリングがきわめて複雑になり、処理できない部分が発生する等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点の解消を図るため、熱可塑性樹脂塗膜とキシレン、トルエン、酢酸エチル等の溶剤を使用した常温硬化タイプのトップコート層との密着性を向上させ、耐久性のある防食処理を施した金属塗装体を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明に係る金属塗装体の塗装方法は、加熱された金属被塗物の表面に下塗りとして熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料を流動浸漬により施し、下塗り層が余熱を有し完全に固化する以前に上塗りとして常温養生により硬化する溶剤タイプの塗料を塗装する金属塗装体の塗装方法であって、上塗り層としての溶剤タイプの塗料を塗装する際の前記下塗り層の表面温度が50〜250度の範囲として、上塗り層の塗料を溶剤と共に下塗り層の表層に浸透させるようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また本発明に係る金属塗装体の塗装方法は、熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料がポリエチレンテレフタレートを主成分とするものである。
【0008】
さらに本発明に係る金属塗装体は、前記に記載の金属塗装体の塗装方法によって、金属被塗物の表面に下塗りとして熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料が塗装され、上塗りとして常温養生により硬化する溶剤タイプの塗料が塗装されたことを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明に使用される金属被塗物としては道路等屋外設置されて使用される例えば道路柵、橋梁の高欄、街灯支柱等の金属製品であれば特に限定しない。
【0011】
金属被塗物の下塗りとして塗装される熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料とは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするもので、単体でもかまわないし、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンイソフタレート等のイソフタル酸を用いたポリエステル、あるいはポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等のテレフタル酸を用いたポリエステルを1種類あるいは2種類以上、共重合やブレンドしてもよい。
【0012】
ポリエチレンテレフタレートを主成分とした熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料は、ガラス転移点が約80°Cと高く、かつ硬度も高い塗膜が得られる。また通常の塗料に使用されるキシレン、トルエン、酢酸エチル等の汎用の溶剤との相溶性もよく、容易に膨潤して塗膜表面の分子間密度が低下し、このような溶剤を用いたトップコート層との密着性も向上する。
【0013】
熱可塑性飽和ポリエステルにポリエチレンイソフタレートが共重合された場合は金属被塗物との密着性が向上し、また塗膜が傷つけられた場合でも腐食物質が金属被塗物の表面まで浸透するのを抑制する効果が極めて大きくなる。したがって膜厚も400μm程度と薄くすることができる。
【0014】
上塗りとして塗装される常温養生により硬化する溶剤タイプの塗料の樹脂分としては、耐候性、耐薬品性の点からフッ素樹脂系塗料が好適である。また溶剤はキシレン、トルエン、酢酸エチル等の汎用の溶剤が使用される。
【0015】
次に金属被塗物への下塗りとして塗装される熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料の塗装方法としては流動浸漬、静電粉体塗装とも使用可能であるが、静電粉体塗装の場合は塗装後の加熱時に、塗料が溶解して膜厚制御が困難であるので、流動浸漬塗装の方が好適である。
【0016】
本発明の場合、金属被塗物へ熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料を下塗りした後、十分余熱がある状態で上塗り塗装を施す。下塗りされた熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料が余熱により完全に固化していない状態では、樹脂内部の分子運動が活発となり、表層の分子間の密度が低下し、上塗り塗料の溶剤が浸透しやすく、該溶剤の作用により下塗り層の表層の分子間の密度がさらに低下する。そのため上塗り塗料が溶剤と共に下塗り層によく浸透することになり、下塗り層と上塗り層との密着性が向上するとともに、余熱により上塗り塗料の乾燥硬化が早められる。
【0017】
なお、下塗り層の表面温度は50〜250°C程度であれば塗装可能であり、とくに余熱温度が100〜150°C程度の範囲であるのが好ましい。余熱温度が50°Cより低温度では上塗り塗料中の溶剤の揮発が遅くなり、該溶剤が必要以上に下塗り層の表層の奧まで浸透し下塗り層の耐久性の劣化を起こす危惧がある。また余熱温度が250°Cより高温度では下塗り層の表層の分子間の結合を十分に緩める以前に上塗り塗料中の溶剤が揮発し、上塗り層と下塗り層の密着性が低下する。
【0018】
【作用】
本発明金属塗装体は熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料を下塗りとすることにより、上塗りに汎用の常温乾燥タイプの溶剤型塗料を用いるにも拘わらず、優れた耐候性を有しながら耐候性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性、耐汚染性、平滑性のある塗膜を得ることができる。
【0019】
また本発明金属塗装体の塗装方法は熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料の下塗り層が余熱を有している間に常温乾燥タイプの溶剤型塗料を上塗りとして用いるので、下塗り層と上塗り層との密着性が向上するとともに、下塗り層と上塗り層とを連続した一連の工程として実施することができ、従来下塗り層と上塗り層とを別行程で行っていた場合に比べ、塗装に要する時間が5分の1程度に短縮できる。また金属被塗物のみ加熱するだけで下塗り層も上塗り層も特に加熱されることがなく、熱履歴による物性の低下も生じがたい。
【0020】
【実施例】
以下本発明の実施例について詳述する。
【0021】
実施例1
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、該防護柵パネルを50〜100°Cまで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、その後約24時間養生し、金属塗装体を得た。
【0022】
実施例2
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、該防護柵パネルを100〜150°Cまで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後約1時間養生し、金属塗装体を得た。
【0023】
実施例3
上塗り用塗料として、アクリルシリコン系樹脂(日本触媒社製、ユーダフルC−3000)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(日本バイエルウレタン社製、スミジュールN−3200)を15.6重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、該防護柵パネルを100〜150°Cまで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後約1時間養生し、金属塗装体を得た。
【0024】
実施例4
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、該防護柵パネルを200〜250°Cまで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後約1時間養生し、金属塗装体を得た。
【0025】
実施例5
上塗り用塗料として、アクリルシリコン系樹脂(日本触媒社製、ユーダフルC−3000)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(日本バイエルウレタン社製、スミジュールN−3200)を15.6重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した亜鉛めっき鋼板(100×200×6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレートを主成分とし、ポリエチレンイソフタレートを共重合した飽和ポリエステル系粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、該亜鉛めっき鋼板を100〜150°Cまで冷却した。
冷却後、上記飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後約1週間養生し、金属塗装体を得た。
【0026】
比較例1
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去し、室温まで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、その後1週間養生し、金属塗装体を得た。
【0027】
比較例2
上塗り用塗料として、アクリルシリコン系樹脂(日本触媒社製、ユーダフルC−3000)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(日本バイエルウレタン社製、スミジュールN−3200)を15.6重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去し、室温まで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、その後1週間養生し、金属塗装体を得た。
【0028】
比較例3
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:シクロヘキサン:クロロホルム:テトラヒドロフランを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、室温まで冷却した。
冷却後、ポリエチレンテレフタレート系飽和ポリエステル粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後1週間養生し、金属塗装体を得た。
【0029】
比較例4
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:シクロヘキサン:クロロホルム:テトラヒドロフランを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリアミド系粉体塗料(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド)が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、室温まで冷却した。
冷却後、ポリアミド系粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後1週間養生し、金属塗装体を得た。
【0030】
比較例5
上塗り用塗料として、クロロトリフルオロエチレン系フッ素樹脂(東亞合成社製、ザフロンFC110)40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチルイソブチルケトンを、3:1:1:1で配合した混合溶剤60重量部に溶解後、顔料分散剤としてシリカ微粉末を0.5重量部添加、さらに白色顔料として酸化チタンを25重量部添加し、撹拌機で500回転、20分間撹拌した。その後イソシアネート硬化剤(東亞合成社製、コロネート2515)を5重量部添加し、さらに撹拌機で500回転、10分間撹拌し、白色塗料を得た。
一方、約70μmの溶融亜鉛メッキを施した格子状防護柵パネル(900×2000×100mm、部材厚6mm)を350±10°Cで30分加熱後、ポリアミド系粉体塗料(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド)が充填されている流動浸漬槽に速やかに浸漬した。約3〜8秒浸漬後、速やかに浸漬槽より取り出し、余剰付着粉体をエアスプレーで除去した後、該防護柵パネルを100〜150°Cまで冷却した。
冷却後、ポリアミド系粉体塗料層の上に上記上塗り用塗料をエアスプレーで塗布し、塗布後約1時間養生し、金属塗装体を得た。
【0031】
上記実施例および比較例に対して、次のような各種試験を行い、その結果を表1に示す。
【0032】
密着性試験
試験方法:碁盤目状に1mm×1mm(100×100)、2mm×2mm(25×25)で下塗り層に到達する傷を入れ、セロハンテープ剥離を行い、剥離しないで残存している数をカウントした。
【0033】
Figure 0003816255
【0034】
Figure 0003816255
【0035】
Figure 0003816255
【0036】
鉛筆硬度試験
試験方法:三菱ユニ鉛筆を使用し、塗膜が傷ついた鉛筆硬度を調べる。
【0037】
Figure 0003816255
【0038】
Figure 0003816255
【0039】
Figure 0003816255
【0040】
Figure 0003816255
【0041】
Figure 0003816255
【0042】
Figure 0003816255
【0043】
【表1】
Figure 0003816255
【0044】
【発明の効果】
以上詳述した如く、本発明金属塗装体は金属被塗物の表面に下塗りとして熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料を塗装することにより、上塗りに汎用の常温乾燥タイプの溶剤型塗料を用いるにも拘わらず、優れた耐候性を有しながら耐候性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性、耐汚染性、平滑性のある塗膜を得ることができる。
【0045】
また本発明金属塗装体は、熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料がポリエチレンテレフタレートを主成分とする場合は常温乾燥タイプの溶剤型塗料との相溶性が一層良好となり、物性も向上する。
【0046】
さらに本発明金属塗装体は、加熱された金属被塗物の表面に下塗りが流動浸漬により施された場合は、金属被塗物の熱と熱交換により下塗りが厚く均一に塗布され、好ましい。
【0047】
さらに本発明金属塗装体の塗装方法は、加熱された金属被塗物の表面に下塗りとして熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料を流動浸漬により施し、下塗り層が余熱を有し完全に固化する以前に上塗りとして常温養生により硬化する溶剤タイプの塗料を塗装するので、熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料の下塗り層が余熱を有している間に常温乾燥タイプの溶剤型塗料を上塗りとして用いることにより、下塗り層と上塗り層との密着性が向上するとともに、下塗り層と上塗り層とを連続した一連の工程として実施することができ、従来下塗り層と上塗り層とを別行程で行っていた場合に比べ、塗装に要する時間が5分の1程度に短縮でき、さらに金属被塗物のみ加熱するだけで下塗り層も上塗り層も特に加熱されることがなく、熱履歴による物性の低下も生じがたい。

Claims (3)

  1. 加熱された金属被塗物の表面に下塗りとして熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料を流動浸漬により施し、下塗り層が余熱を有し完全に固化する以前に上塗りとして常温養生により硬化する溶剤タイプの塗料を塗装する金属塗装体の塗装方法であって、上塗り層としての溶剤タイプの塗料を塗装する際の前記下塗り層の表面温度が50〜250度の範囲として、上塗り層の塗料を溶剤と共に下塗り層の表層に浸透させるようにしたことを特徴とする金属塗装体の塗装方法。
  2. 熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料がポリエチレンテレフタレートを主成分とする請求項1記載の金属塗装体の塗装方法。
  3. 前記請求項1又は請求項2に記載の金属塗装体の塗装方法によって、金属被塗物の表面に下塗りとして熱可塑性飽和ポリエステル系粉体塗料が塗装され、上塗りとして常温養生により硬化する溶剤タイプの塗料が塗装されたことを特徴とする金属塗装体。
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