JP3815890B2 - 制震構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、横揺れエネルギーを吸収自在な免震部を備えた免震柱を、建物の特定階に設けてある制震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の制震構造としては、図9に示すように、前記特定階Sの柱Pを、すべて前記免震柱P2で構成し、地震による横揺れエネルギーを、柱の前記免震部4の横変位によって吸収するものがあった(例えば、特公平4−54027号公報参照)。
そして、前記免震柱P2の免震部4としては、複数の金属製薄板3a・ゴム製薄板3bを交互に積層させて構成し、上下の板3a・3bどうしが横方向に位置ずれすることで免震を図れるように形成してあるものがあった(例えば、特開平7−97827号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように免震柱P2は、地震に横揺れを受けることによって免震部4が変形した状態になるわけであるが、例えば、このような柱に外壁部材2を取り付けてある場合には、特に大きく集中する前記免震部の変形に外壁部材2を追従させるために、図9に示すように、前記外壁部材2を、免震部4に対応した部分と、その上下の柱部分にそれぞれ対応した部分との複数分割に構成し、且つ、それらの分割外壁部材間に伸縮目地を形成する必要がある。
従って、外壁部材の部品点数が増加すると共に、各外壁部材の組み付け手間が掛かり、且つ、目地の防水手間も増加することから、建築コストの増大につながりやすい問題点がある。
更には、外壁部分に前記複数の分割外壁部材や伸縮目地を設ける必要があることから、建物外観の意匠性の自由性が低く、場合によっては美観性を損なう危険性もある。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、建物の免震を図りながら、外壁部材の取付手間の複雑化を緩和できる制震構造を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1の発明の特徴構成は、図1・2・5・8に例示するごとく、横揺れエネルギーを吸収自在な免震部4を備えた免震柱P2を、建物Bの特定階Sに設けてある制震構造において、前記建物Bの前記特定階Sにおいて外側全面に配置する各柱を、前記免震柱P2とは別に、前記特定階Sより上層階の一般柱P1に比べて靱性を増強した増強柱P3又は前記一般柱P1で構成してあると共に、前記特定階Sにおける外側全面より内側に配置する各柱を前記免震柱P2で構成してあるところにある。
【0006】
請求項2の発明の特徴構成は、図2に例示するごとく、前記建物Bの前記特定階Fにおける外側全面に配置する各柱、前記増強柱P2で構成してあるところにある。
【0007】
請求項3の発明の特徴構成は、図1・5・8に例示するごとく、前記特定階Sが、前記建物Bの地上階の下層階であるところにある。
【0008】
請求項4の発明の特徴構成は、図5に例示するごとく、前記特定階Sの外壁2は、建物構造部1に対して相対移動自在に取り付けてあるところにある。
【0009】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0010】
〔作用及び効果〕
請求項1の発明の特徴構成によれば、前記建物の前記特定階において外側全面に配置する各柱を、前記免震柱とは別に、前記特定階より上層階の一般柱に比べて靱性を増強した増強柱又は前記一般柱で構成してあるから、前記免震柱によって地震の横揺れエネルギーを吸収して、前記特定階より上層階の横揺れ低減を図ることができながら、靱性を増強された前記増強柱によってダンパー効果を発揮して、特定階そのものの横変位をも、従来のものに比べて少なく、且つ、その動きを緩やかなものとすることが可能となる。
また、前記特定階における外側全面に配置する各柱は、前記増強柱又は前記一般柱であるから、前記免震柱に比べて横変位が全長にわたって分散され易く、従来のように取り付ける外壁部材を縦に複数分割にしたり、多くの伸縮目地を形成したりする必要性が低く、少ない部品点数で効率よく建築施工することができ、建築の迅速性・経済性をより向上させることが可能となる。
更には、特定階での全周にわたって、他の階と同様に外壁部材を構成することが可能となるから、建物外観設計上の自由性が向上する。
【0011】
請求項2の発明の特徴構成によれば、請求項1の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記建物の前記特定階における外側全面に配置する各柱、前記増強柱で構成してあるから、建物の全周にわたって、外壁部材を縦に複数分割にしたり、多くの伸縮目地を形成したりする必要性が低く、より少ない部品点数で効率よく建築施工することができ、建築の迅速性・経済性を更に向上させることが可能となる。
更には、特定階での全周にわたって、他の階と同様に外壁部材を構成することが可能となるから、建物外観設計上の自由性をより向上させることが可能となる。
【0012】
請求項3の発明の特徴構成によれば、請求項1又は2の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記特定階が、前記建物の地上階の下層階であるから、特定階より上層の各階に対して前記特定階での横揺れ低減効果を期待することが可能となる。
即ち、側方を地盤によって支持されることがなく横揺れの悪影響を受け易い地上階において、その最下層階に、地震による横揺れエネルギーを吸収する前記特定階を形成してあることによって、実質上、地上階全体の横揺れを低減することが可能となり、より効率の良い制震を図ることが可能となる。
【0013】
請求項4の発明の特徴構成によれば、請求項1〜3の何れかの発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記特定階の外壁は、建物構造部に対して相対移動自在に取り付けてあるから、地震の発生に伴って特定階に大きな横変位が生じる場合であっても、外壁と建物構造部との相対移動によって外壁に大きな力が作用することを防止でき、外壁の破壊を緩和することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0015】
図1〜2は、本発明の制震構造を取り入れて形成した建物Bを示すものである。
前記建物Bは、地下一階、地上八階、塔屋三階からなる鉄骨構造で構成され、横揺れエネルギーを吸収自在な特定階Sを地上一階層F1に設けてある。
又、建物Bは、全階層を通じて複数の柱・梁・スラブからなる建物構造部1の外周部に、プレキャストの外壁パネル(外壁に相当)2を取り付けて構成してある。
【0016】
前記特定階Sを除く他の階層は、通常設計による柱(以後、一般柱という)P1を、図2に示すように、平面図における横列と縦列との交点に配して構成してあり、最外列に配置してある各柱に沿わせて前記外壁パネル2が配置してある。
【0017】
前記特定階Sについては、各柱の配置は他の階層と同様であるが、柱の構成を異ならせて地震の横揺れエネルギーを吸収できるように構成してある。
具体的には、最外列に位置する柱以外の柱(以後、免震柱という)P2は、前記一般柱P1より高強度に形成してあると共に、長手方向の中間部に免震装置3を介在させてある。
そして、最外列に位置する柱(以後、増強柱という)P3は、図3に示すように、前記一般柱P1と同様の柱の外周部に低降伏点鋼材を囲繞して一体化を図り、靱性の増強を図ってある。
【0018】
前記免震装置3は、図4に示すように、金属製薄板3aとゴム製薄板3bとを交互に積層させて一体化し、夫々の薄板3a・3bどうしが横方向に層間変位自在に形成してあることによって、前記免震柱P2の上端部と下端部との横方向相対移動に抵抗しながら追従し、免震効果を発揮できるように構成してあるものである。尚、前記各薄板3a・3bの中央部には、夫々を貫通する状態に鉛製の棒状体3cを設けてあり、前記各薄板3a・3bの層間変位に対するダンパー効果をより増強できるように構成してある。
前記免震装置3の介在部分を免震部4という。
【0019】
前記外壁パネル2は、取付金具5を用いて前記建物構造部1に対して相対移動自在に取り付けてある(図5参照)。
【0020】
当該制震構造によれば、地震が発生した場合、横揺れに追従しやすい前記地上一階層F1が前記免震装置3によってそのエネルギーを吸収することによって、地上二階層F2以上の階層への横揺れを低減することが可能となる。また、それでいて、免震柱P2及び前記増強柱P3による鉛直荷重支持効果、及び、横揺れに対するダンパー効果を発揮できるから、建物の横変位を最小限にとどめた状態で確実な支持が可能となる。
また、横揺れを吸収する地上一階層F1においても、外壁パネルは横変位による応力を受けにくいから特別な細工を必要とせず、外観設計上の自由性が向上すると共に、取り付け作業を簡単・迅速に実施することが可能となり、建築コストの増大を抑制することが可能となる。
【0021】
また、ここで説明した建物の制震構造は、新築建物に適応できることに加えて、既設建物に対する耐震補強時に採用することも可能である。
【0022】
次に、上述の建物に対する緩衝効果の確認として、耐震補強を施してない状態と、耐震補強を施した状態との建物変位状況を、各階毎に解析した結果を図6・7に示す。
両図とも、(イ)は、各階層の変形角を表し、(ロ)は、各階層の層間変位量を表し、(ハ)は、最大塑性率を示す。
前記変形角の単位はラジアンであり、前記層間変位量の単位はcmである。
また、最大塑性率とは、部材が外力の作用により塑性変形を起こす時、前変形量の弾性限における変形量に対する割合を言い、この値が大きいほど塑性変形が大きいことを示している。
図6に見られるように、耐震補強を施してない状態においては、上層階の全域において地震による変形の悪影響が表れている。
一方、図7に見られるように、耐震補強を施した状態においては、特定階で地震の横変位を吸収していると共に、その効果として、上層階への悪影響が著しく低下している。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
〈1〉 前記建物は、先の実施形態で説明した鉄骨構造に限るものではなく、例えば、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造や鋼管コンクリート造であってもよい。
また、柱の配置についても、先の実施形態で説明した矩形配置に限るものではない。そして、特定階における外側全面に配置する各柱を、前記増強柱で構成するものの他、前記一般柱のみで構成したり、増強柱と一般柱とを混在させた構成であってもよい。
〈2〉 前記特定階は、先の実施形態で説明した地上一階層に限るものではなく、例えば、それ以上の階層に設けてあってもよい。
更には、複数階に設けるものであってもよい。
また、ここで言う地上階とは、外周部が地中に埋設されていない階層を言い、例えば、図8に示すように、実質的には、地下に位置する階層であっても周囲が解放された状態に形成されている階層は地上階と言う。
〈3〉 前記免震柱は、先の実施形態で説明した免震装置を免震部に備えたものに限るものではなく、異なる形式の免震装置を用いて免震部を構成してあってもよい。
また、先の実施形態で説明した建物の構成に加えて、例えば、粘性壁や制震壁を追加してあってもよい。そして、独立したダンパーを別途備える構成であってもよい。
〈4〉 前記増強柱は、先の実施形態で説明した鉄板を囲繞させて靱性の増強を図ってあるものに限るものではなく、例えば、炭素シートを巻き付けて一体化を図る構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】建物を示す断面図
【図2】建物の特定階の平面図
【図3】増強柱の要部を示す一部切欠き斜視図
【図4】免震柱の要部を示す一部切欠き斜視図
【図5】特定階の要部を示す断面図
【図6】建物変位状況(比較例)を示す図
【図7】建物変位状況(本件)を示す図
【図8】別実施形態の建物を示す断面図
【図9】従来の建物の特定階要部を示す断面図
【符号の説明】
1 建物構造部
2 外壁
4 免震部
B 建物
P1 一般柱
P2 免震柱
P3 増強柱
S 特定階

Claims (4)

  1. 横揺れエネルギーを吸収自在な免震部を備えた免震柱を、建物の特定階に設けてある制震構造であって、
    前記建物の前記特定階において外側全面に配置する各柱を、前記免震柱とは別に、前記特定階より上層階の一般柱に比べて靱性を増強した増強柱又は前記一般柱で構成してあると共に、前記特定階における外側全面より内側に配置する各柱を前記免震柱で構成してある制震構造。
  2. 前記建物の前記特定階における外側全面に配置する各柱、前記増強柱で構成してある請求項1に記載の制震構造。
  3. 前記特定階が、前記建物の地上階の下層階である請求項1又は2に記載の制震構造。
  4. 前記特定階の外壁は、建物構造部に対して相対移動自在に取り付けてある請求項1〜3の何れか一項に記載の制震構造。
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