JP3813307B2 - パストランジスタ論理回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、NMOSトランジスタまたはPMOSトランジスタのいずれか一方の型のMOSトランジスタを直列に接続して論理回路を構成したパストランジスタ論理回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
同一タイプ(N型またはP型)のMOSトランジスタを組み合わせて構成され、正反転の相補入力信号に基づいて論理演算を行い、その結果を正反転の極性で相補出力する論理回路は、一般に相補型パストランジスタ論理回路( CPL回路:Complementary Pass-Transistor Logic)と呼ばれる。
【0003】
図13は4つのNMOSトランジスタで構成したCPL回路の一例を示す図である。図13(a)〜13(d)は、いずれも同じ回路構成を有し、入力端子に入力される信号の種類と、出力端子から出力される信号の種類がそれぞれ異なっている。図13の回路は、入出力端子の信号の種類によってそれぞれ異なる論理演算を行う。
【0004】
例えば、図13(a)の回路は図14(a)のAND /NANDゲートと等価になり、図13(b)の回路は図14(b)のようなOR/NOR ゲートと、図13(c)の回路は図14(c)のようなEXOR/EXNOR ゲートと、図13(d)の回路は図14(d)のような2組のAND /NANDゲートとそれぞれ等価になる。
【0005】
このように、図13のようなCPL論理回路は、少ないゲート数で種々の論理回路を構成でき、高速動作が可能で、消費電力も少ないという特徴があり、半導体基板上に形成したときに、素子形成面積を小さくできる。
【0006】
ところで、CPL回路は、同一型のMOSトランジスタを直列接続して構成されるため、MOSトランジスタのしきい値電圧の影響により、出力電圧が電源電圧VDDよりも低くなるという特徴がある。例えば、図15のように、3つのNMOSトランジスタM1〜M3が直列接続され、初段のNMOSトランジスタM1のドレイン端子と各トランジスタM1〜M3のゲート端子に電源電圧VDDが印加される場合を考えると、最終段のNMOSトランジスタM3のソース電圧は電源電圧VDDよりもしきい値電圧Vth分だけ低い電圧になる。
【0007】
このため、通常は、パストランジスタロジックの出力電圧をフル振幅電圧(電源電圧VDDと接地電圧)に変換する電圧変換回路を、パストランジスタロジックの後段に設けることが多い(IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS VOL.25 NO.2 APRIL 1990 p.389-395) 。
【0008】
図16は電圧変換回路を備えた従来のCPL回路の一例を示す回路図である。図16の回路は、NMOSトランジスタのみで構成されるスイッチ回路11と、インバータI1,I2およびPMOSトランジスタP1,P2からなる電圧変換回路12とを備える。スイッチ回路11は、上述したパストランジスタ論理構成になっており、3種類の相補入力信号A,Aバー,B,Bバー,C,Cバーの排他的論理和(A EXOR B EXOR C )を演算した結果を、相補出力信号F,Fバーとして出力する。
【0009】
電圧変換回路12内のPMOSトランジスタP1,P2は交差ラッチ負荷回路を構成しており、インバータI1,I2に流れるリーク電流を防止する目的で設けられている。仮に、PMOSトランジスタP1,P2がないと仮定すると、スイッチ回路11の出力電圧は、電源電圧VDDからスイッチ回路11内部のNMOSトランジスタのしきい値電圧Vthを引いた電圧よりも低くなり、インバータI1,I2内部の不図示のPMOSトランジスタは完全にはオフしなくなる。このため、インバータI1,I2内部のNMOSトランジスタとPMOSトランジスタを貫通するリーク電流が流れる。これに対して、図16のようなPMOSトランジスタP1,P2を設ければ、スイッチ回路11の出力が論理「1」のときに、ほぼ電源電圧VDD近くまでインバータI1,I2の入力電圧を引き上げることができ、リーク電流が流れなくなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図16の交差ラッチ負荷回路内のPMOSトランジスタP1,P2を正常にオン・オフさせるためには、スイッチ回路11のオン抵抗をPMOSトランジスタP1,P2のオン抵抗よりも十分に小さくする必要がある。スイッチ回路11のオン抵抗を小さくするには、スイッチ回路11を構成する各NMOSトランジスタのサイズ(形成面積)を大きくしなければならず、スイッチ回路11内の論理が複雑な場合には、スイッチ回路11全体のサイズがかなり大きくなってしまう。
【0011】
このように、図16のような交差ラッチ負荷回路を備えたCPL回路を半導体基板上に形成すると、スイッチ回路11の論理が複雑になるほど、スイッチ回路11を構成する各MOSトランジスタのサイズが大きくなるという問題があり、各NMOSトランジスタのサイズが大きくなると、それに応じて寄生容量が増えて動作速度が遅くなり、消費電力も増えるといった不具合が発生する。
【0012】
ところで、単出力型のパストランジスタ論理回路も提案されている(例えばIEEE 1994 CUSTOM INTEGRATED CIRCUITS CONFERENCE p.603-606)。
【0013】
図17は上記文献に記載されている単出力型のパストランジスタ論理回路の一例を示す回路図である。図17の回路は、単出力型のパストランジスタ論理回路で構成されたスイッチ回路11aと、電圧変換用のインバータI3とを備える。スイッチ回路11aには3種類の相補入力信号A,Aバー,B,Bバー,C,Cバーが入力され、図18に示すように、論理演算{A AND (B EXOR C)}を行った結果がスイッチ回路11aから出力される。図17のインバータI3は、図19に具体的構成を示すように、PMOSトランジスタP1〜P3とNMOSトランジスタN1,N2とで構成されている。
【0014】
図17の回路において、スイッチ回路11aの出力Fが論理「0」から論理「1」に変化する際の回路動作を説明する。スイッチ回路11aの出力Fが論理「0」のときは、インバータI3の出力電圧はほぼ電源電圧VDDに等しく、インバータI3内の負荷用PMOSトランジスタP3はオフである。出力Fの電圧がインバータI3の論理しきい値電圧を超えるとインバータI3は反転し、PMOSトランジスタP3もオンするため、出力OUT は接地電圧になる。
【0015】
次に、スイッチ回路11aの出力Fが論理「1」から論理「0」に変化する際の回路動作を説明する。論理が変化する前は、インバータI3内のPMOSトランジスタP3はオンしており、出力OUT の電圧は接地電圧である。出力Fの論理が「0」に変化すると、この時点ではPMOSトランジスタP3はまだオフしていないため、電源電圧VDDからの負荷電流(リーク電流)がPMOSトランジスタP3と出力端子Fを介してスイッチ回路11a内の接地端子に流れる。その後、出力Fの電圧がインバータI3の論理しきい値電圧よりも低くなると、インバータI3が反転してPMOSトランジスタP3はオフし、負荷電流は流れなくなる。
【0016】
このように、図17の回路は、スイッチ回路11aの論理が切り替わったときに、リーク電流が流れるという問題がある。
【0017】
また、図17の回路では、スイッチ回路11aの出力Fの論理「0」の電圧レベルをインバータI3の論理しきい値電圧以下に下げる必要があり、そのためには、スイッチ回路1のオン抵抗をインバータI3内のPMOSトランジスタP1,P2のオン抵抗よりも十分に小さくしなければならない。スイッチ回路1内のオン抵抗を小さくするには、上述したように、スイッチ回路1内の各MOSトランジスタの形成面積(サイズ)を大きくしなければならず、チップサイズの小型化が妨げられ、寄生容量が増加し、動作速度も遅くなり、消費電力も増加する等の問題が生じる。
【0018】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電力が少なく、チップサイズを小型化でき、寄生容量も少なく、高速動作が可能なパストランジスタ論理回路を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、N型またはP型のいずれか一方の型のMOSトランジスタを複数組み合わせて構成され、複数種類の相補入力信号の論理に基づいて所定の論理演算を行った結果を単出力するスイッチ回路と、このスイッチ回路から出力された単出力電圧を増幅する電圧変換回路とを備え、この電圧変換回路の出力端子から第1および第2の電源電圧のいずれか一方を単出力するパストランジスタ論理回路において、前記電圧変換回路は、前記スイッチ回路から出力された単出力電圧が印加される高入力抵抗の制御ゲートを有し、前記出力端子電圧が前記第1の電源電圧になるように、前記単出力電圧に応じて回路内部を流れる電流を制御する駆動回路と、前記出力端子電圧が前記第2の電源電圧になるように、前記出力端子電圧に応じて回路内部を流れる電流を制御する負荷回路と、を備えることを特徴とするパストランジスタ論理回路が提供される。
【0034】
本発明の一態様を、例えば図5に対応づけて説明すると、「スイッチ回路」は図5のスイッチ回路1aに、「電圧変換回路」は電圧変換回路8に、「駆動回路」はNMOSトランジスタN1に、「負荷回路」はPMOSトランジスタP1,P2と蓄電回路9に、それぞれ対応する。
【0035】
本発明の一態様を、例えば図5に対応づけて説明すると、「第1のMOSトランジスタ」は図5のNMOSトランジスタN1に、「第2のMOSトランジスタ」はPMOSトランジスタP1に、「第3のMOSトランジスタ」はPMOSトランジスタP2に、「蓄電回路」は蓄電回路9に、それぞれ対応する。
【0036】
本発明の一態様を、例えば図8に対応づけて説明すると、「第1のMOSトランジスタ」は図8のNMOSトランジスタN1に、「第2のMOSトランジスタ」はPMOSトランジスタP1に、「第3のMOSトランジスタ」はNMOSトランジスタN2に、「蓄電回路」は蓄電回路9に、それぞれ対応する。
【0037】
本発明の一態様を、例えば図5および図8に対応づけて説明すると、「キャパシタ素子」はコンデンサCに、「第4のMOSトランジスタ」はPMOSトランジスタP4に、それぞれ対応する。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用したパストランジスタ論理回路について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では、図面でバーの付いた信号には、信号名の後に「バー」という文字を付けて表す。
【0039】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明に係るパストランジスタ論理回路の第1の実施形態の回路図である。図1の回路は、複数のNMOSトランジスタを組み合わせて構成されたスイッチ回路1と、スイッチ回路1の出力をフル振幅電圧(電源電圧VDDと接地電圧)に変換する電圧変換回路2とを備える。スイッチ回路1は、上述した図16のスイッチ回路11と同様に、複数種類の相補(正反転)入力信号A1〜An,A1バー〜Anバーの論理に応じて所定の論理演算を行い、その演算結果を相補出力する。相補入力信号A2〜An,A2バー〜Anバーはスイッチ回路1内の不図示のNMOSトランジスタの各ゲート端子に入力され、入力信号A1,A1バーはスイッチ回路1内の電流の流れる経路(電流パス)の一端に入力され、この電流パスの他端から相補出力信号F ,F バーが出力される。
【0040】
図1の電圧変換回路2は、PMOSトランジスタP1,P2からなる交差ラッチ負荷回路3と、駆動回路4とを備える。駆動回路4は、NMOSトランジスタN1,N2を有し、NMOSトランジスタN1,N2のゲート端子はそれぞれ、スイッチ回路1の相補出力端子F,Fバーに接続され、各トランジスタN1,N2のソース端子は接地されている。
【0041】
また、NMOSトランジスタN1のドレイン端子は、PMOSトランジスタP1のドレイン端子とPMOSトランジスタP2のゲート端子に接続され、NMOSトランジスタN2のドレイン端子は、PMOSトランジスタP2のドレイン端子とPMOSトランジスタP1のゲート端子に接続されている。PMOSトランジスタP1,P2のソース端子はいずれも電源電圧VDDに設定されており、PMOSトランジスタP1,P2のドレイン端子から、スイッチ回路1の相補出力をフル振幅電圧に変換した電圧が出力される。
【0042】
ここで、スイッチ回路1から出力される論理「1」に対応する電圧V(H) は(1)式で表され、論理「0」に対応する電圧V(L) は(2)式で表される。
【0043】
V(H) =VDD−Vthn …(1)
V(L) =0 …(2)
ただし、(1)式のVthn はスイッチ回路1内の不図示のNMOSトランジスタのしきい値電圧である。
【0044】
図1の回路は、電圧変換回路2の論理しきい値電圧を上述した電圧V(H) よりも低くしている。このようにするには、例えば電圧変換回路2の回路構成を工夫することにより実現でき、あるいは、製造プロセス段階で、NMOSトランジスタN1,N2のしきい値電圧を調整することで実現できる。
【0045】
図1の回路において、例えば、スイッチ回路1の出力Fバーが論理「1」の場合には、電圧変換回路2内のNMOSトランジスタN1がオンし、出力OUT は接地電圧になるとともに、PMOSトランジスタP2がオンして出力OUT バーは電源電圧VDDになる。逆に、スイッチ回路1の出力Fが論理「1」の場合には、NMOSトランジスタN2がオンし、出力OUT バーは接地電圧になるとともに、PMOSトランジスタP1がオンして出力OUT は電源電圧VDDになる。
【0046】
図1のPMOSトランジスタP1,P2は、図16の回路と異なり、NMOSトランジスタN1,N2のドレイン電圧に応じてオン・オフするため、スイッチ回路1の相補出力F,Fバーの論理が切り替わっても、スイッチ回路1内には直流電流は流れない。また、スイッチ回路1の相補出力F,FバーはNMOSトランジスタN1,N2のゲート端子に入力され、PMOSトランジスタP1,P2は直接にはスイッチ回路1に接続されていないため、PMOSトランジスタP1,P2のゲート電圧がスイッチ回路1のオン抵抗の影響を受けることはない。
【0047】
例えば、スイッチ回路1を構成する各NMOSトランジスタのサイズがすべて同一と仮定すると、スイッチ回路1内の論理が複雑になってNMOSトランジスタの接続段数が増えるに従って、スイッチ回路1の内部抵抗が増加し、スイッチ回路1の出力電圧の立ち上がり時間や立ち下がり時間も増大する。しかし、スイッチ回路1の内部には直流電流が流れないので、スイッチ回路1の出力電圧は最終的にはV(H) ,V(L) になり、電圧変換回路2の論理しきい値電圧がV(H) より低い限り、電圧変換回路2は正常に動作する。
【0048】
したがって、スイッチ回路1を構成する各NMOSトランジスタのサイズを大きくしてオン抵抗を下げる必要がなく、本実施形態のパストランジスタ論理回路を半導体基板上に形成したときに、チップサイズを小さくできる。また、スイッチ回路1内の各MOSトランジスタのサイズを小さくすることで、寄生容量を減らすことができ、高速動作が可能となり、消費電力も低減できる。
【0049】
また、本実施形態のスイッチ回路1は、従来のパストランジスタ論理回路と同様に、NMOSトランジスタの組み合わせにより構成されるため、スタティックCMOS論理回路で構成した場合よりも、少ない素子数で論理回路を構成できる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態は、パストランジスタ構成のスイッチ回路1の出力段にRSフリップフロップを接続したものである。
【0051】
図2はパストランジスタ論理回路の第2の実施形態の回路図である。図2の回路は、複数のNMOSトランジスタが直列接続されたパストランジスタ構成のスイッチ回路1と、スイッチ回路1から出力される相補出力信号の論理に応じてセットまたはリセットされるRSフリップフロップ5とを備える。
【0052】
図2のRSフリップフロップ5は、NMOSトランジスタN1,N2からなる駆動回路4と、PMOSトランジスタP1,P2とNMOSトランジスタN1,N2からなるラッチ回路51とを備える。PMOSトランジスタP1,P2のソース端子は電源電圧端子VDDに接続され、NMOSトランジスタN1〜N4のソース端子は接地されている。
【0053】
RSフリップフロップ5は、フル振幅電圧を出力する出力端子Q,Qバーを有し、出力端子Qには、PMOSトランジスタP2のドレイン端子と、NMOSトランジスタN2,N4のドレイン端子と、PMOSトランジスタP1のゲート端子と、NMOSトランジスタN3のゲート端子とが接続されている。また、出力端子Qバーには、PMOSトランジスタP1のドレイン端子と、NMOSトランジスタN1,N3のドレイン端子と、PMOSトランジスタP2のゲート端子と、NMOSトランジスタN4のゲート端子とが接続されている。
【0054】
スイッチ回路1は、論理が同時には「1」にならないような信号S,Rを出力する。まず、スイッチ回路1の出力Rが論理「0」で、出力Sが論理「0」から「1」に変化した場合の動作を説明する。出力Sが論理「0」のときは、PMOSトランジスタP1はオンしており、出力Sが論理「1」になると、NMOSトランジスタN1のゲート電圧は次第に高くなる。やがて、NMOSトランジスタN1のドレイン−ソース間の電流がPMOSトランジスタP1のドレイン−ソース間の電流よりも多くなると、RSフリップフロップ5の出力Qバーは接地電圧になる。このとき、PMOSトランジスタP2はオンし、PMOSトランジスタP2のドレイン電圧Qは接地電圧から電源電圧VDDに変化する。また、それに応じてNMOSトランジスタN3もオンする。
【0055】
仮にこの状態でスイッチ回路1の出力Sが論理「1」から論理「0」に変化しても、NMOSトランジスタN3はオン状態を保持するため、RSフリップフロップ5の出力Qバーは接地電圧のまま変化しない。
【0056】
次に、スイッチ回路1の出力Rが論理「0」から「1」に変化した場合の動作を説明する。出力Rが論理「1」になると、NMOSトランジスタN2はオンして、RSフリップフロップ5の出力Qは接地電圧になる。またこのとき、PMOSトランジスタP1はオンし、RSフリップフロップ5の出力Qバーは電源電圧VDDになり、それに応じてNMOSトランジスタN4はオンする。この状態で、スイッチ回路1の出力Rがローレベルに変化しても、NMOSトランジスタN4はオン状態を保持するため、出力Qは接地電圧のまま変化しない。
【0057】
このように、図2のRSフリップフロップ5は、スイッチ回路1の相補出力S,Rの論理に応じてセットまたはリセットした結果をフル振幅で出力する。また、スイッチ回路1の相補出力は、駆動回路4内の高入力抵抗の制御ゲート、すなわちNMOSトランジスタN1,N2の各ゲート端子に入力されるため、スイッチ回路1の内部には直流電流は流れない。
【0058】
なお、図2の回路において、スイッチ回路1内の論理が複雑でスイッチ回路1内に多数のトランジスタが直列接続されている場合には、スイッチ回路1の内部抵抗が増加してスイッチ回路1の出力電圧の立ち上がり時間や立ち下がり時間が長くなる。しかし、このような場合でも、スイッチ回路1には直流電流は流れないので、スイッチ回路1の出力電圧は最終的には(1),(2)式に示したV(H) ,V(L) になり、出力V(H) がRSフリップフロップ5の論理しきい値電圧よりも高いという条件を満たす限り、図2の回路は正しく動作し、スイッチ回路1内のオン抵抗の大小の影響を受けなくなる。したがって、スイッチ回路1内の論理が複雑でスイッチ回路1内に多数のNMOSトランジスタが直列接続されている場合でも、各トランジスタのサイズを大きくしてオン抵抗を下げる必要がなくなり、チップサイズを小型化できる。
【0059】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態は、単出力型のパストランジスタ論理回路に電圧変換回路を接続したものであり、電圧変換回路2の内部にコンデンサを設けたことを特徴とする。
【0060】
図3はパストランジスタ論理回路の第3の実施形態の回路図である。図3の回路は、複数のNMOSトランジスタからなる単出力型パストランジスタ構成のスイッチ回路1aと、スイッチ回路1aの出力をフル振幅電圧に変換するバッファ6とを備える。図3のスイッチ回路1aには3種類の相補入力信号A,Aバー,B,Bバー,C,Cバーが入力され、等価的に図4のような論理演算{A NAND (B EXOR C)} を行った結果Fを出力する。
【0061】
図5は図3に示したバッファ6の具体的構成を示す回路図である。バッファ6は、PMOSトランジスタP1〜P4とNMOSトランジスタN1,N2とコンデンサCとを有し、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1のゲート端子にはスイッチ回路1aの出力端子Fが接続されている。
【0062】
PMOSトランジスタP3とNMOSトランジスタN2はインバータ回路7を構成しており、入力信号を反転してフル振幅電圧(電源電圧VDDまたは接地電圧)を出力する。インバータ回路7の出力は、バッファ6の出力OUT となる。
【0063】
インバータ回路7の前段には、PMOSトランジスタP1,P2,P4とNMOSトランジスタN1とコンデンサCとからなる電圧変換回路8が接続されている。この電圧変換回路8は、スイッチ回路1aの出力Fを反転して出力する。電圧変換回路8内のPMOSトランジスタP1にはPMOSトランジスタP2が接続されており、このPMOSトランジスタP2のゲート電圧はインバータ回路7の出力により制御される。
【0064】
PMOSトランジスタP2のドレイン端子とPMOSトランジスタP1のソース端子との接続点には、コンデンサCとPMOSトランジスタP4からなる蓄電回路9が接続されている。この蓄電回路9は、PMOSトランジスタP2がオフのときに、PMOSトランジスタP1のソース電圧が不定にならないようにPMOSトランジスタP1のソース電圧を制御する。
【0065】
ここで、スイッチ回路1aの出力端子Fが接続された経路をノードp、PMOSトランジスタP1のドレイン端子とNMOSトランジスタN1のドレイン端子との接続点をノードq、PMOSトランジスタP1のソース端子とPMOSトランジスタP2のドレイン端子との接続点をノードrとして、図5の回路の動作を説明する。
【0066】
まず、スイッチ回路1aの出力Fが論理「0」から論理「1」に変化した場合の動作を説明する。出力Fが論理「0」の場合には、PMOSトランジスタP1,P2とNMOSトランジスタN2はオンしており、PMOSトランジスタP1のドレイン端子とソース端子はほぼ電源電圧VDDになる。ノードpの電圧が徐々に上昇してNMOSトランジスタN1がオンすると、PMOSトランジスタP1のドレイン−ソース間抵抗は大きくなり、ノードqの電圧は徐々に低くなってやがて接地電圧になる。それに応じて、PMOSトランジスタP3はオンし、バッファ6の出力OUT は電源電圧VDDまで上昇する。このとき、ノードrは、PMOSトランジスタP1,P2がオフしたときの電圧を保持する。
【0067】
また、PMOSトランジスタP4のゲート端子には外部から制御クロックφバーが入力されており、このクロックの周期に応じてPMOSトランジスタP4は周期的にオン・オフを繰り返す。PMOSトランジスタP4がオンすると、ノードrは電源電圧VDDにまで上昇し、コンデンサCへの充電が行われる。これにより、ノードrの電圧は、常に電源電圧VDDか、電源電圧VDDよりも若干低い電圧になる。PMOSトランジスタP4のゲート端子に印加される制御クロックφバーは、DRAMのリフレッシュパルスと同様に、数ミリ秒に1回の割合でPMOSトランジスタを周期的にオンさせてコンデンサCを充電する。
【0068】
次に、スイッチ回路1aの出力Fが論理「1」から論理「0」に変化した場合の動作を説明する。出力Fが論理「0」に変化する前は、ノードqの電圧は接地電圧で、バッファ6の出力OUT は電源電圧VDDであり、PMOSトランジスタP2はオフしている。また、ノードrの電圧は、周期的にコンデンサCが充電されることから、ほぼ電源電圧VDDである。出力Fが論理「0」に変化すると、PMOSトランジスタP1がオンし、コンデンサCに蓄積された電荷はPMOSトランジスタP1のソース−ドレイン間を通ってノードqを充電する。このため、ノードqの電圧が上昇し、NMOSトランジスタN2はオンに、PMOSトランジスタP3はオフになる。したがって、バッファの出力OUT は接地電圧になり、PMOSトランジスタP2がオンする。
【0069】
なお、制御クロックφバーの論理が「0」で、スイッチ回路1aの出力Fの論理が「1」の場合には、ノードrの電圧は電源電圧VDD近くになることから、PMOSトランジスタP1は完全にはオフしなくなるため、PMOSトランジスタP1とP4を通って直流電流が流れるが、制御クロックφバーが論理「0」になる期間は、制御クロックφバーの周期に対してわずかであり、消費電力の増加はほとんど問題にならない。
【0070】
図3のパストランジスタ回路は、スイッチ回路1aの出力Fをバッファ6内のPMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1の各ゲート端子に入力しているため、バッファ6からスイッチ回路1aに負荷電流が流れることがなく、図17の回路に比べて消費電力を低減できる。
【0071】
また、スイッチ回路1aの出力Fの電圧V(H) が電圧変換回路8のしきい値電圧よりも高い限りは、誤動作が生じるおそれがなく、スイッチ回路1a内の論理が複雑でスイッチ回路1a内に多数のNMOSトランジスタが直列接続されていても、各NMOSトランジスタのサイズを大きくしてオン抵抗を下げる必要がない。
【0072】
〔第4の実施形態〕
第4の実施形態は、基本的な回路構成は第3の実施形態と同じであり、電圧変換回路8の内部にディプレッション型のMOSトランジスタを設けた点に特徴がある。
【0073】
図6はパストランジスタ論理回路の第4の実施形態の回路図である。図6の回路は、スイッチ回路1aとバッファ6aとで構成され、スイッチ回路1aの構成は図3と同じであり、等価的に図7の論理回路と同じになる。バッファ6aは、図8に詳細な構成を示すように、インバータ回路7と電圧変換回路8とを備える。
【0074】
インバータ回路7はPMOSトランジスタP3とNMOSトランジスタN2を有し、電圧変換回路8はPMOSトランジスタP1と、NMOSトランジスタN1,N3 と、PMOSトランジスタP4およびコンデンサCからなる蓄電回路9とを有する。
【0075】
図8に示すバッファ6aは、PMOSトランジスタP1にディプレッション型のNMOSトランジスタN3を接続した点に特徴がある。このNMOSトランジスタN3のゲート端子には、電圧変換回路8の出力端子が接続されている。
【0076】
ディプレッション型のNMOSトランジスタN3は、スイッチ回路1aの出力F(ノードp)がローレベルのときに、それ自身で電流を供給する能力を有するため、コンデンサCから電荷が供給されなくても、ノードr,qの電圧を所定電圧にまで引き上げることができる。
【0077】
したがって、蓄電回路9からの電荷の供給が少なくても安定動作が可能となり、コンデンサCの容量を小さくできるので、パストランジスタ論理回路を小型化できる。
【0078】
次に、以上に説明した各実施形態の回路と従来の回路について、信号遅延時間と、消費電流と、PD積(Power ×Delay)をシミュレーションで比較した結果を説明する。
【0079】
図9,10はシミュレーションに用いた具体的な回路図である。図9(a)〜(c)は相補出力型のスイッチ回路1を含む例を示している。図9(a)はスイッチ回路1aの後段にインバータI1,I2を接続した従来のパストランジスタ論理の回路図(CPL:Complementary Pass-Transistor Logic) 、図9(b)は図16に対応するプルアップ負荷を有する従来のパストランジスタ論理の回路図(PLCPL:P-Load CPL)、図9(c)は第1の実施形態に対応する回路図(OLPL:Output Latch Pass-Transistor Logic) である。
【0080】
一方、図10(a)〜(c)は単出力型のスイッチ回路1aを含む例を示している。図10(a)は図17に対応する従来の回路図(SCPL:Single-ended CPL) 、図10(b)は第3の実施形態に対応する回路図(SOLPL1:Single-ended OLPL1) 、図10(c)は第4の実施形態に対応する回路図(SOLPL2:single-ended OLPL2) である。
【0081】
図11は、図9,10の回路に基づいてシミュレーションを行った結果を示すプロット図であり、横軸はいずれも、スイッチ回路1a内のNMOSトランジスタの接続段数を示している。図11(a)は接続段数と信号遅延時間との関係、図11(b)は接続段数と消費電流との関係、図11(c)は接続段数とPD積との関係を示している。これらの図中の各プロットは、各図の右側に示した回路に対応している。
【0082】
図11(a)に示すように、スイッチ回路1a内の接続段数が少ない場合には、各回路の信号遅延時間はあまり変わらない。接続段数が多くなると、負荷トランジスタ(PMOSトランジスタ)を有する図9(b)のPLCPL 回路と図10(a)のSCPL回路の信号遅れ時間は急増する。第1,3,4の実施形態(図9(c),10(b),10(c))の回路の信号遅延時間はほぼ同じである。
【0083】
また、図11(b)に示すように、スイッチ回路1a内の接続段数が少ない場合には、第1の実施形態(図9(c))のOLPL回路が最も消費電流が多く、接続段数が多くなるに従って、従来の回路である図9(b)のPLCPL 回路の消費電流が多くなる。第3および第4の実施形態(図10(b),10(c))の回路の消費電流は、接続段数にかかわわらず、常に最低水準にあり、接続段数による消費電流の変化も、第1の実施形態(図9(c))と同様に少ない。
【0084】
また、図11(c)に示すように、スイッチ回路1a内の接続段数が少ない場合には、第1の実施形態(図9(c))のOLPL回路のPD積は他の回路に比べて若干大きいが、接続段数が多くなると、従来の回路のPD積は急激に増大するが、第1の実施形態の図9(c)の回路のPD積はあまり大きくならない。また、第3の実施形態(図10(b))と第4の実施形態(図10(c))のPD積は、接続段数にかかわらず常に最低水準にあり、接続段数による変化が第1の実施形態(図9(c))の回路と同様に小さい。
【0085】
以上に説明した各実施形態では、スイッチ回路がNMOSトランジスタで構成されている例を説明したが、スイッチ回路をPMOSトランジスタで構成してもよい。
【0086】
図12は、スイッチ回路をPMOSトランジスタで構成した場合の第1の実施形態に対応する回路図である。スイッチ回路をPMOSトランジスタで構成した場合には、駆動回路4内のMOSトランジスタはP型になり、交差ラッチ負荷回路3内のMOSトランジスタはN型になる。
【0087】
また、上述した第1および第2の実施形態では、スイッチ回路1から1組の相補出力信号F,Fバーを出力する例を説明したが、スイッチ回路1から複数組の相補出力信号を出力し、それぞれの相補出力信号ごとに電圧変換回路を設けてもよい。
【0088】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、スイッチ回路の出力を電圧変換回路の高入力抵抗の制御ゲートに入力するので、スイッチ回路の内部には直流電流は流れず、電圧変換回路の動作はスイッチ回路内部のオン抵抗の影響を受けなくなる。このため、本発明のパストランジスタ論理回路を半導体基板上に形成したときに、スイッチ回路内部のMOSトランジスタのサイズ(形成面積)を小さくでき、寄生容量を小さくできるとともに、動作速度を向上でき、消費電力も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パストランジスタ論理回路の第1の実施形態の回路図。
【図2】パストランジスタ論理回路の第2の実施形態の回路図。
【図3】パストランジスタ論理回路の第3の実施形態の回路図。
【図4】図3に示すスイッチ回路の等価回路図。
【図5】図3に示すバッファの具体的構成を示す回路図。
【図6】パストランジスタ論理回路の第4の実施形態の回路図。
【図7】図6に示すスイッチ回路の等価回路図。
【図8】図5に示すバッファの具体的構成を示す回路図。
【図9】相補出力型のパストランジスタ論理回路のシミュレーション用の回路図。
【図10】単出力型のパストランジスタ論理回路のシミュレーション用の回路図。
【図11】シミュレーション結果を示すプロット図。
【図12】スイッチ回路をPMOSトランジスタで構成した場合のパストランジスタ論理回路の例を示す回路図。
【図13】4つのNMOSトランジスタで構成したスイッチ回路の一例を示す図。
【図14】図13の等価回路図。
【図15】3つのNMOSトランジスタを直列接続してスイッチ回路を構成した図。
【図16】電圧変換回路を備えた従来のパストランジスタ論理回路の一例を示す回路図。
【図17】単出力型のパストランジスタ論理回路の一例を示す回路図。
【図18】図17の等価回路図。
【図19】図17に示すインバータの具体的構成を示す回路図。
【符号の説明】
1,1a スイッチ回路
2 電圧変換回路
3 交差ラッチ負荷回路
4 駆動回路
5 RSフリップフロップ
6,6a バッファ
51 ラッチ回路
Claims (4)
- N型またはP型のいずれか一方の型のMOSトランジスタを複数組み合わせて構成され、複数種類の相補入力信号の論理に基づいて所定の論理演算を行った結果を単出力するスイッチ回路と、このスイッチ回路から出力された単出力電圧を増幅する電圧変換回路とを備え、この電圧変換回路の出力端子から第1および第2の電源電圧のいずれか一方を単出力するパストランジスタ論理回路において、
前記電圧変換回路は、
前記スイッチ回路から出力された単出力電圧が印加される高入力抵抗の制御ゲートを有し、前記出力端子電圧が前記第1の電源電圧になるように、前記単出力電圧に応じて回路内部を流れる電流を制御する駆動回路と、
前記出力端子電圧が前記第2の電源電圧になるように、前記出力端子電圧に応じて回路内部を流れる電流を制御する負荷回路と、を備えることを特徴とするパストランジスタ論理回路。 - 前記駆動回路は、ソース端子が前記第1の電源電圧に設定され、ドレイン端子が前記出力端子に接続される第1導電型の第1のMOSトランジスタを含んで構成され、
前記負荷回路は、
ドレイン端子が前記出力端子に接続された第2導電型の第2のMOSトランジスタと、ソース端子が前記第2の電源電圧に設定され、ドレイン端子が前記第2のMOSトランジスタのソース端子に接続された第2導電型の第3のMOSトランジスタと、前記第2および第3のMOSトランジスタの接続経路に電荷を蓄積する蓄電回路とを備え、前記第1および第2のMOSトランジスタのゲート端子は互いに接続されて前記制御ゲートとして用いられ、前記第3のMOSトランジスタのゲート端子には、前記出力端子電圧の反転電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載のパストランジスタ論理回路。 - 前記駆動回路は、ソース端子が前記第1の電源電圧に設定され、ドレイン端子が前記出力端子に接続された第1導電型の第1のMOSトランジスタを含んで構成され、前記負荷回路は、ドレイン端子が前記出力端子に接続された第2導電型の第2のMOSトランジスタと、ソース端子が前記第2のMOSトランジスタのソース端子に接続され、ドレイン端子が前記第2の電源電圧に設定された第1導電型でデプリーション型の第3のMOSトランジスタと、前記第2および第3のMOSトランジスタの接続経路に電荷を蓄積する蓄電回路とを備え、前記第1および第2のMOSトランジスタの制御端子は互いに接続されて前記制御ゲートとして用いられ、前記第3のMOSトランジスタのゲート端子には、前記出力端子電圧の反転電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載のパストランジスタ論理回路。
- 前記蓄電回路は、一端が前記第2のMOSトランジスタのソース端子に接続され、他端が前記第1の電源電圧に設定されるキャパシタ素子と、ソース端子が前記第2の電源電圧に設定され、ドレイン端子が前記第2のMOSトランジスタのソース端子に接続される第4のMOSトランジスタとを備え、前記第4のMOSトランジスタのゲート端子には、前記キャパシタ素子を周期的に充電するためのクロックが入力されることを特徴とする請求項2または3に記載のパストランジスタ論理回路。
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