JP3813022B2 - フォトクロミック性を有する酸化チタンゲルおよびガラス物品 - Google Patents
フォトクロミック性を有する酸化チタンゲルおよびガラス物品 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフォトクロミック性を有する酸化チタンゲルおよびそれを用いたフォトクロミック性を有するガラス物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
光によって着色する材料、すなわちフォトクロミック材料は、写真材料として現在広く使用されているが、実用用途としてはさらに光メモリや窓材料としての展開が期待されている材料である。フォトクロミック性を示す材料としては、ハロゲン化銀や色中心を利用した酸化チタンなどの無機系の材料や、ジアリールエテン、スピロピラン等の有機系の材料がある。
無機系の材料は作製のために高温での処理(結晶化や焼成)が必要であり、一方、有機系の材料は合成が複雑であるものが多く、高価なものになりやすい問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を鑑み、簡便な方法で、安価な原料を用い、しかも常温に近い温度で合成できるフォトクロミック性を発現する酸化チタンゲルと、該酸化チタンゲルを用いたフォトクロミック性を有するガラス物品の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、チタンアルコキシドと、塩触媒と、水および/または酸と、からゲル化させてなる酸化チタンゲルであって、塩触媒が、ヒドラジン誘導体の塩、アミジン誘導体の塩およびヒドロキシルアミン誘導体の塩から選ばれる1種以上の塩触媒である、フォトクロミック性を有する酸化チタンゲルを提供する。
本発明は、また、2枚のガラスが空隙を設けて配され、かつ周囲部が封止され、該空隙に前記のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲルが充填されてなるフォトクロミック性を有するガラス物品を提供する。
【0005】
有機チタン化合物に水を添加すると、模式的には、Ti(OR)4 +xH2 O→(加水分解)→Ti(OH)x (OR)4-x →(重縮合)→(Ti(OH)y (OR)z O(4-y-z)/2 )m のような形で加水分解、重縮合反応が進行していく。この際の反応条件を制御することによって微粉末やモノリシックゲル、コーティング剤、または紡糸によってファイバといった形態に形成できる。これらの手法は一般にゾルゲル法と呼ばれて広く知られている。
【0006】
本発明は、前記の塩触媒を添加すると、室温での反応で酸化チタンの沈殿を生じることなく透明または半透明のゲルを形成でき、しかも該ゲルがフォトクロミック性を有するという新規知見に基づきなされたものである。
【0007】
チタンアルコキシドとしては、Ti(OR)4 (Rは炭素数1〜8の炭化水素基)で表されるアルコキシドを用いることが好ましい。具体的には、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどが挙げられる。取扱い性の観点から、チタンテトラブトキシドが特に好ましい。
【0008】
チタンアルコキシドは、通常アルコール等の有機溶媒に溶解させて使用する。チタンアルコキシドの濃度[チタンアルコキシド/(チタンアルコキシド+有機溶媒)]としては、0.2mol/l以上であることが好ましい。0.2mol/l未満ではゲル化反応が進みにくくなる。
【0009】
塩触媒は、チタンアルコキシドの加水分解および/または重縮合を促進させ、透明または半透明の酸化チタンゲルを形成するために添加される、本発明の根幹をなす重要な構成要素である。
塩触媒としては、ヒドラジン誘導体の塩酸塩、アミジン誘導体の塩酸塩およびヒドロキシルアミン誘導体の塩酸塩から選ばれる1種以上の塩触媒であることが好ましい。
【0010】
塩触媒の添加量は、チタンアルコキシドに対してモル比で1/1000〜1/1であることが好ましい。1/1000未満の添加ではゲル化促進の効果が得られにくく、1/1超の添加は特に効果がないだけでなく、塩触媒が水、アルコール等溶媒へ溶解しにくくなり、均一に系内に導入しにくくなる。
【0011】
ヒドラジン誘導体の塩としては、R1 R2 NNH2 ・nHX(R1 、 R2 はそれぞれ独立に有機基または水素原子、nは1または2、HXは塩酸、臭化水素酸、炭酸または硫酸)で表されるものが好ましい。ヒドラジン誘導体にはヒドラジン自身も含まれる。
【0012】
入手容易性および取扱い容易性の観点から、ヒドラジン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、1−ベンジル−1−フェニルヒドラジン、4−ブロモフェニルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジン、2−クロロフェニルヒドラジン、4−クロロフェニルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、1,1−ジフェニルヒドラジン、2,4−ジクロロフェニルヒドラジン、2,6−ジクロロフェニルヒドラジン、4−フルオロフェニルヒドラジン、2−メトキシフェニルヒドラジン、4−メトキシフェニルヒドラジン、1−ナフチルヒドラジン、2−ニトロフェニルヒドラジン、3−ニトロフェニルヒドラジン、4−ニトロフェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン、p−トルイルヒドラジン、m−トルイルヒドラジン、o−トルイルヒドラジン、の塩酸塩が好ましい例として挙げられる。また、ヒドラジンの炭酸塩、ヒドラジンの臭化水素酸塩も好ましい例として挙げられる。
【0013】
アミジン誘導体の塩としては、HN=CR3 NH2 ・nHX(R3 は有機基、水素原子またはアミノ基、nは0.5または1、HXは塩酸、臭化水素酸、炭酸または硫酸)で表されるものが好ましい。
入手容易性および取扱い容易性の観点から、アセトアミジンの塩酸塩、グアニジンの塩酸塩、グアニジンの炭酸塩、グアニジンの硫酸塩、アルギニンの塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0014】
ヒドロキシルアミン誘導体の塩としては、R4 R5 NOR6 ・nHX(R4 、 R5 、 R6 はそれぞれ独立に有機基または水素原子、nは0.5または1、HXは塩酸、臭化水素酸、炭酸または硫酸)で表されるものが好ましい。ヒドロキシルアミン誘導体にはヒドロキシルアミン自身も含まれる。
入手容易性および取扱い容易性の観点から、ヒドロキシルアミンの塩酸塩、ヒドロキシルアミンの硫酸塩、N−メチルヒドロキシルアミンの塩酸塩、O−メチルヒドロキシルアミンの塩酸塩、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンの塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0015】
本発明において用いる塩触媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。塩触媒の選択によって、ゲルの透明性や初期/呈色時の色調などを制御できる。
【0016】
ヒドラジン誘導体の塩酸塩は、得られるゲルの透明性が高く特に好適である。ヒドラジン誘導体の塩酸塩は塩触媒の中でも塩基としてよりも酸としての働きが強く、チタンアルコキシドの加水分解反応よりも重縮合に対して強く働く。このため、結果として得られる酸化チタンゲルは低次元の重合体となりやすく、この低次元ネットワーク化により形成された酸化チタンゲルが特に透明性が高く強いフォトクロミック性を示すと考えられる。
ヒドラジン誘導体の塩酸塩のうちでも、ヒドラジン、1−ベンジル−1−フェニルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジンの一塩酸塩がゲルの透明性の観点からは最も好ましい。
【0017】
一方、系内に酸を添加してさらに重縮合速度を増加させ、低次元重合性を高めることもできる。
塩触媒は、水および/または酸の添加に前後して、または同時に系内に導入されることが好ましい。塩触媒をあらかじめ水溶液としておいて、その水溶液を添加してもよい。
水および/または酸は、酸化チタンがゲル化するのに必要な量が含有されていればよい。特に、チタンに対して等モル以上の水が含有されていることが好ましい。
【0018】
本発明の酸化チタンゲルは、低次元重合によりゲル化させたものであり、透明性が高く、強いフォトクロミック特性が発現する。この低次元重合性を高める、すなわち初期のチタンアルコキシドの加水分解を抑制するために、チタンアルコキシドにキレート配位して加水分解速度を低減させうる加水分解抑制剤が添加されることが好ましい。
【0019】
キレート配位可能な化合物としては、β−ジケトン類(例えばアセチルアセトンなど)、β−ケトエステル類、二塩基酸類(シュウ酸など)、アミノエタノール類、多価アルコール類、多価アルコール類の数分子縮合体などがある。得られるゲルの透明性の観点からは、多価アルコールおよび多価アルコール類の縮合体が好ましい。
【0020】
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−3,5−ヘプタンジオールなどが挙げられる。特にジエチレングリコールが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
加水分解抑制剤の添加の効果としては、1)ゲル化の制御が容易になる、2)加水分解抑制剤の種類、量などの制御で呈色するための吸収波長を変えられる、3)緩和時間が短くなる、などが挙げられる。
【0022】
ゲルの作成方法としては、例えば、チタンアルコキシドをアルコール等の有機溶媒に溶解させ、そこに塩触媒の水溶液を添加し、しばらく撹拌して反応を行った後室温で数時間静置する。加水分解抑制剤を添加する場合には、チタンアルコキシドの溶液にあらかじめ添加しておくことが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下に本発明の詳細を例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0024】
「例1」
チタンテトラブトキシド0.2モル、ジエチレングリコール0.5モルを1−ブタノール1000ml中に加えた後、ヒドラジン一塩酸塩0.01モルを水1.25モルに溶解させた水溶液を添加し、1時間25℃で撹拌させた。その後、溶液をホウケイ酸ガラス製光路長1cmの角型セルに入れ、25℃で静置した。溶液は約2時間後に透明性の高いゲルとなり、流動性を示さなくなった。上記セルを用いて測定したゲルの光線透過率(初期透過率)は波長550nmで89%であった。このゲルに150Wキセノンランプを用いて5分間光を照射したところ、濃青色に着色し、波長550nmの光線透過率(着色時透過率)は53%まで低下した。また、この着色ゲルを暗所に静置したところ、約4時間で完全に退色し、光照射前と同じ透明なゲルとなった。結果を表1に示す。
なお、表1において、「初期透過率」は初期の光線透過率(波長550nm)を、「着色時透過率」は着色時の光線透過率(波長550nm)を、示す。
【0025】
「例2」
例1におけるジエチレングリコールを添加せず、添加する水量を1.25モルから1.5モルとした以外は例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0026】
「例3〜7」
ヒドラジン一塩酸塩のかわりに表1に示す塩触媒に変更した以外は例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0027】
「例8(比較例)」
ヒドラジン一塩酸塩を添加しない以外は例1と同様に行った。水の添加により白色沈殿物が認められ、ゲル化しなかった。
【0028】
「例9(比較例)」
ヒドラジン一塩酸塩のかわりに酢酸アンモニウムを使用した以外は例1と同様に行った。静置により約4時間でゲル化したが、このゲルの透明性は低く、光を照射しても着色は見られなかった。
【0029】
「例10」
厚さ3mmのフロート板ガラス(20cm×20cm)を2枚、空隙を2mmに保って端部をブチラール樹脂および接着剤を用いて封止した。このブチラール樹脂を通して注射器でゲル化前の例1の溶液を注ぎ込み、そのまま静置して2枚のガラスの間でゲル化させ、フォトクロミック性を有するガラス物品を得た。このガラス物品の透過率は85%であり、太陽光に暴露させると濃青色を呈し、1時間暴露で透過率は52%となった。また暗所に静置すると約4時間で完全に退色した。またこのサイクルを繰り返しても着色−退色過程に劣化は見られなかった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便な方法で、安価な原料により、常温に近い温度で合成できるフォトクロミック性を発現し、透明性の高い酸化チタンゲルが得られる。また、簡便な方法で、安価な原料により、フォトクロミック性を有するガラス物品が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明はフォトクロミック性を有する酸化チタンゲルおよびそれを用いたフォトクロミック性を有するガラス物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
光によって着色する材料、すなわちフォトクロミック材料は、写真材料として現在広く使用されているが、実用用途としてはさらに光メモリや窓材料としての展開が期待されている材料である。フォトクロミック性を示す材料としては、ハロゲン化銀や色中心を利用した酸化チタンなどの無機系の材料や、ジアリールエテン、スピロピラン等の有機系の材料がある。
無機系の材料は作製のために高温での処理(結晶化や焼成)が必要であり、一方、有機系の材料は合成が複雑であるものが多く、高価なものになりやすい問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を鑑み、簡便な方法で、安価な原料を用い、しかも常温に近い温度で合成できるフォトクロミック性を発現する酸化チタンゲルと、該酸化チタンゲルを用いたフォトクロミック性を有するガラス物品の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、チタンアルコキシドと、塩触媒と、水および/または酸と、からゲル化させてなる酸化チタンゲルであって、塩触媒が、ヒドラジン誘導体の塩、アミジン誘導体の塩およびヒドロキシルアミン誘導体の塩から選ばれる1種以上の塩触媒である、フォトクロミック性を有する酸化チタンゲルを提供する。
本発明は、また、2枚のガラスが空隙を設けて配され、かつ周囲部が封止され、該空隙に前記のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲルが充填されてなるフォトクロミック性を有するガラス物品を提供する。
【0005】
有機チタン化合物に水を添加すると、模式的には、Ti(OR)4 +xH2 O→(加水分解)→Ti(OH)x (OR)4-x →(重縮合)→(Ti(OH)y (OR)z O(4-y-z)/2 )m のような形で加水分解、重縮合反応が進行していく。この際の反応条件を制御することによって微粉末やモノリシックゲル、コーティング剤、または紡糸によってファイバといった形態に形成できる。これらの手法は一般にゾルゲル法と呼ばれて広く知られている。
【0006】
本発明は、前記の塩触媒を添加すると、室温での反応で酸化チタンの沈殿を生じることなく透明または半透明のゲルを形成でき、しかも該ゲルがフォトクロミック性を有するという新規知見に基づきなされたものである。
【0007】
チタンアルコキシドとしては、Ti(OR)4 (Rは炭素数1〜8の炭化水素基)で表されるアルコキシドを用いることが好ましい。具体的には、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどが挙げられる。取扱い性の観点から、チタンテトラブトキシドが特に好ましい。
【0008】
チタンアルコキシドは、通常アルコール等の有機溶媒に溶解させて使用する。チタンアルコキシドの濃度[チタンアルコキシド/(チタンアルコキシド+有機溶媒)]としては、0.2mol/l以上であることが好ましい。0.2mol/l未満ではゲル化反応が進みにくくなる。
【0009】
塩触媒は、チタンアルコキシドの加水分解および/または重縮合を促進させ、透明または半透明の酸化チタンゲルを形成するために添加される、本発明の根幹をなす重要な構成要素である。
塩触媒としては、ヒドラジン誘導体の塩酸塩、アミジン誘導体の塩酸塩およびヒドロキシルアミン誘導体の塩酸塩から選ばれる1種以上の塩触媒であることが好ましい。
【0010】
塩触媒の添加量は、チタンアルコキシドに対してモル比で1/1000〜1/1であることが好ましい。1/1000未満の添加ではゲル化促進の効果が得られにくく、1/1超の添加は特に効果がないだけでなく、塩触媒が水、アルコール等溶媒へ溶解しにくくなり、均一に系内に導入しにくくなる。
【0011】
ヒドラジン誘導体の塩としては、R1 R2 NNH2 ・nHX(R1 、 R2 はそれぞれ独立に有機基または水素原子、nは1または2、HXは塩酸、臭化水素酸、炭酸または硫酸)で表されるものが好ましい。ヒドラジン誘導体にはヒドラジン自身も含まれる。
【0012】
入手容易性および取扱い容易性の観点から、ヒドラジン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、1−ベンジル−1−フェニルヒドラジン、4−ブロモフェニルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジン、2−クロロフェニルヒドラジン、4−クロロフェニルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、1,1−ジフェニルヒドラジン、2,4−ジクロロフェニルヒドラジン、2,6−ジクロロフェニルヒドラジン、4−フルオロフェニルヒドラジン、2−メトキシフェニルヒドラジン、4−メトキシフェニルヒドラジン、1−ナフチルヒドラジン、2−ニトロフェニルヒドラジン、3−ニトロフェニルヒドラジン、4−ニトロフェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン、p−トルイルヒドラジン、m−トルイルヒドラジン、o−トルイルヒドラジン、の塩酸塩が好ましい例として挙げられる。また、ヒドラジンの炭酸塩、ヒドラジンの臭化水素酸塩も好ましい例として挙げられる。
【0013】
アミジン誘導体の塩としては、HN=CR3 NH2 ・nHX(R3 は有機基、水素原子またはアミノ基、nは0.5または1、HXは塩酸、臭化水素酸、炭酸または硫酸)で表されるものが好ましい。
入手容易性および取扱い容易性の観点から、アセトアミジンの塩酸塩、グアニジンの塩酸塩、グアニジンの炭酸塩、グアニジンの硫酸塩、アルギニンの塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0014】
ヒドロキシルアミン誘導体の塩としては、R4 R5 NOR6 ・nHX(R4 、 R5 、 R6 はそれぞれ独立に有機基または水素原子、nは0.5または1、HXは塩酸、臭化水素酸、炭酸または硫酸)で表されるものが好ましい。ヒドロキシルアミン誘導体にはヒドロキシルアミン自身も含まれる。
入手容易性および取扱い容易性の観点から、ヒドロキシルアミンの塩酸塩、ヒドロキシルアミンの硫酸塩、N−メチルヒドロキシルアミンの塩酸塩、O−メチルヒドロキシルアミンの塩酸塩、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンの塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0015】
本発明において用いる塩触媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。塩触媒の選択によって、ゲルの透明性や初期/呈色時の色調などを制御できる。
【0016】
ヒドラジン誘導体の塩酸塩は、得られるゲルの透明性が高く特に好適である。ヒドラジン誘導体の塩酸塩は塩触媒の中でも塩基としてよりも酸としての働きが強く、チタンアルコキシドの加水分解反応よりも重縮合に対して強く働く。このため、結果として得られる酸化チタンゲルは低次元の重合体となりやすく、この低次元ネットワーク化により形成された酸化チタンゲルが特に透明性が高く強いフォトクロミック性を示すと考えられる。
ヒドラジン誘導体の塩酸塩のうちでも、ヒドラジン、1−ベンジル−1−フェニルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジンの一塩酸塩がゲルの透明性の観点からは最も好ましい。
【0017】
一方、系内に酸を添加してさらに重縮合速度を増加させ、低次元重合性を高めることもできる。
塩触媒は、水および/または酸の添加に前後して、または同時に系内に導入されることが好ましい。塩触媒をあらかじめ水溶液としておいて、その水溶液を添加してもよい。
水および/または酸は、酸化チタンがゲル化するのに必要な量が含有されていればよい。特に、チタンに対して等モル以上の水が含有されていることが好ましい。
【0018】
本発明の酸化チタンゲルは、低次元重合によりゲル化させたものであり、透明性が高く、強いフォトクロミック特性が発現する。この低次元重合性を高める、すなわち初期のチタンアルコキシドの加水分解を抑制するために、チタンアルコキシドにキレート配位して加水分解速度を低減させうる加水分解抑制剤が添加されることが好ましい。
【0019】
キレート配位可能な化合物としては、β−ジケトン類(例えばアセチルアセトンなど)、β−ケトエステル類、二塩基酸類(シュウ酸など)、アミノエタノール類、多価アルコール類、多価アルコール類の数分子縮合体などがある。得られるゲルの透明性の観点からは、多価アルコールおよび多価アルコール類の縮合体が好ましい。
【0020】
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−3,5−ヘプタンジオールなどが挙げられる。特にジエチレングリコールが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
加水分解抑制剤の添加の効果としては、1)ゲル化の制御が容易になる、2)加水分解抑制剤の種類、量などの制御で呈色するための吸収波長を変えられる、3)緩和時間が短くなる、などが挙げられる。
【0022】
ゲルの作成方法としては、例えば、チタンアルコキシドをアルコール等の有機溶媒に溶解させ、そこに塩触媒の水溶液を添加し、しばらく撹拌して反応を行った後室温で数時間静置する。加水分解抑制剤を添加する場合には、チタンアルコキシドの溶液にあらかじめ添加しておくことが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下に本発明の詳細を例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0024】
「例1」
チタンテトラブトキシド0.2モル、ジエチレングリコール0.5モルを1−ブタノール1000ml中に加えた後、ヒドラジン一塩酸塩0.01モルを水1.25モルに溶解させた水溶液を添加し、1時間25℃で撹拌させた。その後、溶液をホウケイ酸ガラス製光路長1cmの角型セルに入れ、25℃で静置した。溶液は約2時間後に透明性の高いゲルとなり、流動性を示さなくなった。上記セルを用いて測定したゲルの光線透過率(初期透過率)は波長550nmで89%であった。このゲルに150Wキセノンランプを用いて5分間光を照射したところ、濃青色に着色し、波長550nmの光線透過率(着色時透過率)は53%まで低下した。また、この着色ゲルを暗所に静置したところ、約4時間で完全に退色し、光照射前と同じ透明なゲルとなった。結果を表1に示す。
なお、表1において、「初期透過率」は初期の光線透過率(波長550nm)を、「着色時透過率」は着色時の光線透過率(波長550nm)を、示す。
【0025】
「例2」
例1におけるジエチレングリコールを添加せず、添加する水量を1.25モルから1.5モルとした以外は例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0026】
「例3〜7」
ヒドラジン一塩酸塩のかわりに表1に示す塩触媒に変更した以外は例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0027】
「例8(比較例)」
ヒドラジン一塩酸塩を添加しない以外は例1と同様に行った。水の添加により白色沈殿物が認められ、ゲル化しなかった。
【0028】
「例9(比較例)」
ヒドラジン一塩酸塩のかわりに酢酸アンモニウムを使用した以外は例1と同様に行った。静置により約4時間でゲル化したが、このゲルの透明性は低く、光を照射しても着色は見られなかった。
【0029】
「例10」
厚さ3mmのフロート板ガラス(20cm×20cm)を2枚、空隙を2mmに保って端部をブチラール樹脂および接着剤を用いて封止した。このブチラール樹脂を通して注射器でゲル化前の例1の溶液を注ぎ込み、そのまま静置して2枚のガラスの間でゲル化させ、フォトクロミック性を有するガラス物品を得た。このガラス物品の透過率は85%であり、太陽光に暴露させると濃青色を呈し、1時間暴露で透過率は52%となった。また暗所に静置すると約4時間で完全に退色した。またこのサイクルを繰り返しても着色−退色過程に劣化は見られなかった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便な方法で、安価な原料により、常温に近い温度で合成できるフォトクロミック性を発現し、透明性の高い酸化チタンゲルが得られる。また、簡便な方法で、安価な原料により、フォトクロミック性を有するガラス物品が得られる。
Claims (6)
- チタンアルコキシドと、塩触媒と、水および/または酸と、からゲル化させてなる酸化チタンゲルであって、塩触媒が、ヒドラジン誘導体の塩、アミジン誘導体の塩およびヒドロキシルアミン誘導体の塩から選ばれる1種以上の塩触媒である、フォトクロミック性を有する酸化チタンゲル。
- 塩触媒が、ヒドラジン誘導体の塩酸塩、アミジン誘導体の塩酸塩およびヒドロキシルアミン誘導体の塩酸塩から選ばれる1種以上の塩触媒である請求項1記載のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲル。
- 塩触媒が、ヒドラジン誘導体の塩酸塩である請求項1または2記載のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲル。
- チタンアルコキシドにキレート配位可能な化合物が添加されてなる請求項1、2または3記載のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲル。
- チタンアルコキシドにキレート配位可能な化合物がジエチレングリコールである請求項1、2、3または4記載のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲル。
- 2枚のガラスが空隙を設けて配され、かつ周囲部が封止され、該空隙に請求項1、2、3、4または5記載のフォトクロミック性を有する酸化チタンゲルが充填されてなるフォトクロミック性を有するガラス物品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19199498A JP3813022B2 (ja) | 1998-07-07 | 1998-07-07 | フォトクロミック性を有する酸化チタンゲルおよびガラス物品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19199498A JP3813022B2 (ja) | 1998-07-07 | 1998-07-07 | フォトクロミック性を有する酸化チタンゲルおよびガラス物品 |
Publications (2)
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