JP3812873B2 - ノンハロゲン難燃被覆電線 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車など特に難燃性が求められる分野に用いられるノンハロゲン難燃被覆電線技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用薄肉被覆電線は、自動車内の狭隘なスペースに配索され、その後も、常に振動やオイル等に晒される環境で用いられる。このため、通常の被覆電線では求められないような過酷な条件に耐えることが求められ、さらに、難燃性、軽量性はもちろん、最近では環境問題対策としてハロゲンフリーが求められている。
このような要求を満足するものとして、被覆層にノンハロゲン系難燃化剤としての水酸化マグネシウムを多量に添加したオレフィン系被覆電線が用いられるようになってきた。
【0003】
しかしながら、上記のように水酸化マグネシウムを多量に添加した結果、自動車用被覆電線として求められるその他の性質、例えば耐摩耗性、耐油性が著しく低下する。このため、絶縁被覆層の厚さを塩ビ被覆電線並の200μmにすることはもちろん、現状では300μmより薄くすることが困難で、その結果配索性、重量、太さの点でも問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、自動車用薄肉被覆電線として用いた場合でも、耐摩耗性、難燃性、耐油性及び耐折り曲げ性のすべてを満足できる、軽量で細径化が可能なノンハロゲン難燃被覆電線を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のノンハロゲン難燃被覆電線は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、絶縁被覆層が、導体に直接接する第1層と、該第1層の外側に配された第2層とからなる被覆電線であって第1層がショアD硬度60未満、酸素指数24以上の難燃ポリオレフィン樹脂組成物からなり第2層がショアD硬度60以上であって、前記第1層を構成する樹脂組成物と同種類のポリオレフィン樹脂組成物からなっており、外径が3.10mm以下、前記絶縁被覆層の厚さが400μm以下、第1層の厚さが30μm以上で、かつ、第2層の層厚が65μm以上150μm以下であるノンハロゲン難燃被覆電線である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のノンハロゲン難燃被覆電線において、その外径が3.10mm以下であることが必要であり、好ましくは2.60mm以下である。外径が3.10mmを超えると充分な耐折り曲げ性を得ることができない。なお、3.10mm以下であれば極めて過酷な条件が想定される自動車用電線としても用いることができる。
【0007】
また、本発明のノンハロゲン難燃被覆電線において、導体は通常、導体と用いられているものすべてを用いることができる。すなわち、撚り線、単線などを問わない。但し、自動車用薄肉被覆電線をして用いる場合、耐折り曲げ性を考慮すると、撚り線であることが望ましい。
【0008】
絶縁被覆層のうち、第1層は上記導体の周囲に接して形成される。本発明において、この第1層はショアD硬度60未満、酸素指数24以上の難燃ポリオレフィン樹脂組成物(第1層用樹脂組成物)からなることが必要である。ショアD硬度が60以上の樹脂組成物を用いた場合、耐折り曲げ性が低下して実用上用いることができないものとなってしまう。
【0009】
また、この樹脂組成物において、その酸素指数が24以上であることが必要である。酸素指数の値が24未満であると難燃性が不足し、難燃性が厳しく求められる分野(例えば自動車用薄肉被覆電線)に用いることができない。
【0010】
難燃化剤は水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなど、一般にオレフィン系被覆電線において難燃化剤として用いられているものを用いることができる。これら難燃化剤1種類または2種類以上を、ベース樹脂(オレフィン系樹脂)とし、これらをニーダー等の混練手段等を用いて均一に混合し第1層用樹脂組成物として用いる。なお難燃化剤としては混練温度等を含めた電線加工条件を考慮すると水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。
【0011】
第2層を構成する樹脂組成物はショアD硬度60以上のポリオレフィン樹脂組成物であることが必要である。ショアD硬度が60未満であると充分な耐摩耗性を得ることができない。なお、第2層を構成する樹脂組成物(第2層用樹脂組成物)は無機充填材あるいは無機難燃化剤を有しないものであることが好ましい。すなわち、これらが添加されていると、電線としたとき、強く折り曲げた場合に白化が生じやすい。
【0012】
また、本発明の第1層あるいは第2層に用いる樹脂組成物のベース樹脂とする樹脂は共にオレフィン系樹脂であることが必要である。すなわち、第1層用樹脂組成物において、オレフィン系樹脂をベース樹脂として用いることにより、無機充填材、無機難燃化剤の高充填が可能となり、その結果被覆電線としたときに優れた難燃性が得られる。一方、第2層において、第1層を構成する樹脂組成物と同種類であるオレフィン系樹脂を用いることにより、絶縁被覆層を構成するこれら両層が互いに融着し、完全に一体化することができ、その結果、ハロゲンフリーでありながら難燃性、耐摩耗性、耐折り曲げ性などを充分に満足できる優れた被覆電線を得ることができる。なお、オレフィン系樹脂としてポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられるが、特にポリプロピレン系樹脂の場合、加熱変形性に優れるため好ましい。
【0013】
なお、オレフィン系樹脂は分子量や各物性が異なる様々な種類のものが広く入手でき、これらを適宜選択して用いることができるが、第1層で用いるオレフィン系樹脂の場合、難燃化剤の添加による物性を考慮し選択する必要がある。
これら導体、第1層用樹脂組成物、及び、第2層用樹脂組成物を用い、押出成型機で被覆電線を形成する。
【0014】
この際、第2層の層厚が65μm以上150μm以下となることが必要である。65μm未満の場合には耐摩耗性が低下し、一方150μm超の場合には充分な難燃性が得られず、同時に耐折り曲げ性が低下し、白化が生じやすくなる。なお、絶縁被覆層の白化はマイクロクラックの発生によるものであり、白化が生じた絶縁被覆層は絶縁性が低下するおそれがある。
【0015】
さらに、一般的な自動車用薄肉被覆電線を想定した場合、第1層及び第2層からなる絶縁被覆層の厚さが180μm以上であることが必要である。180μm未満であると、耐摩耗性が低下する。しかし、用途によってはこのような過酷な条件での耐摩耗性が不要な場合には、絶縁被覆層の厚さを薄くすることが可能である。但し、この場合にも第1層の厚さが30μm以上であることが、その他の性能や安定生産を満足する上で必要である。
【0016】
また、絶縁被覆層の厚さは400μm以下であることが必要である。400μm超であると電線を180°になるまで屈曲させたときの曲げ外径が大きくなり、結果として耐折り曲げ性が低下することとなる。
【0017】
なお、通常の自動車用薄肉被覆電線の絶縁被覆層の厚さは200μm〜350μmであり、従来技術においては、このような厚さの絶縁被覆層を有する薄肉電線において、充分な耐摩耗性、耐油性、難燃性を満足するノンハロゲン難燃被覆電線の安定生産が困難であったが、本発明のノンハロゲン難燃被覆電線の場合には最低180μmの絶縁被覆層があれば、充分な性能を有する被覆電線を安定して得ることができ、絶縁被覆層を200μmとすれば、余裕を持ってこれら要求性能を満足することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明のノンハロゲン難燃被覆電線について具体的に説明する。
なお、以下、原料樹脂、難燃化剤として表1に示したものを用いた。
【0019】
【表1】
Figure 0003812873
【0020】
ニーダーを用いて、樹脂1あるいは樹脂2と難燃化剤とを、配合比を変化させてさまざまな酸素指数、硬さを有する第1層用難燃樹脂組成物を得た。
また、樹脂1及び樹脂3を、配合比を変化させて混合し、さまざまな硬さを有する第2層用樹脂組成物を得た。
【0021】
これら第1層用難燃樹脂組成物、第2層用樹脂組成物、及び、導体として直径0.32mmの銅線を7本撚り合わせ、圧縮した軟銅撚線(直径0.90mm)を用いて、押し出し成形機により、その構成を図1にモデル的に示すような被覆電線を作製した。また、このときの第1層用難燃樹脂組成物、第2層用樹脂組成物の硬度や酸素指数(JIS・K7201に準拠して測定した値)、ショアD硬度、第2層の層厚、絶縁被覆層厚、及び電線外径について表2及び表3に示した。
【0022】
また、これら表にはそれら作製した電線の評価結果を併せて示した。
すなわち、電線製造性として、製造時に各層の層厚制御が可能であったものを○、制御が困難で、良品が得られにくかったものを×として評価した。なお、この電線製造性を×としたものは、以下の評価を行わなかった。
【0023】
また、耐磨耗性については、JASO(日本自動車規格)・D611−94の5.11(2)項に準拠し、但し、5Nの加重で、直径が0.45mmのピアノ線を使用し、絶縁体の磨耗によりピアノ線が導体に接触するまでの往復回数を測定し、300回以上の摩擦に耐えるものを合格とし、合格品を○、不合格品を×として記載した。
難燃性については、同じくJASO・D611−94の5.9項に準拠して測定し、15秒以内に消炎するものを合格(○)とし、15秒以上燃焼が続いたものを不合格(×)とした。
【0024】
一方、耐折り曲げ性については次のように評価した。即ち、電線を180゜になるまで屈曲した後、屈曲部の白化の有無を目視で確認した。このとき白化(マイクロクラックの発生による)が見られたものを「初期の白化」として不合格(×)、白化しなかったものを合格(○)として評価した。なおこれら電線は屈曲させた状態で3日間放置し、その後、電線の両端を試験者が手で引っ張り、そのときの絶縁体に割れが発生しないか調べ、「放置後の割れ」として、割れが生じなかったものを合格、割れが生じたものを不合格とし、合格品を○、不合格品を×として評価した。
【0025】
また、耐油性は導体を引き抜いた長さ150mmの絶縁被覆層を試料とし、両端25mmを残して70℃に保ったエンジンオイル中に24時間浸漬し、その後表面に残留した油分をふき取る。常温となった後引っ張り試験器で引っ張り強さ及び伸びを測定する。このデータから、オイルに浸漬しない試料での測定値を基準としたときの変化率を求め、変化率が±10%以内のものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0026】
【表2】
Figure 0003812873
【0027】
【表3】
Figure 0003812873
【0028】
これら表2及び表3より本発明に係るノンハロゲン難燃被覆電線は、耐摩耗性、難燃性、耐油性及び耐折り曲げ性に優れ、安定生産、軽量化及び細径化の可能なノンハロゲン難燃被覆電線であることが理解される。
なお、ノンハロゲン電線でありながら従来の塩ビ製自動車用薄肉電線の絶縁被覆層(厚さ200μm)よりも薄い180μmの絶縁被覆層でもこのような優れた諸性能が得られたことから、上記実施例1〜6のノンハロゲン難燃被覆電線はまさに自動車用薄肉電線として用いるのに最適なものであるが判る。
【0029】
ここで、これら表2の実施例1〜6の電線について、実際に自動車を用いて配索テストを行ったが、従来の厚い絶縁被覆層を有するノンハロゲン難燃被覆電線に比べてこれらいずれの電線も非常に配索しやすく、また、そのときの絶縁被覆層に何らの障害も生じないことが確認された。
【0030】
また、上記表2中の実施例1と同様にして、ただし、導体として直径0.26mmの銅線を37本撚り合わせた後圧縮した軟銅撚線α(直径1.80mm)、直径0.26mmの銅線を58本撚り合わせた後圧縮した軟銅撚線β(直径2.30mm)、直径0.26mmの銅線を98本撚り合わせた後圧縮した軟銅撚線γ(直径2.90mm)のそれぞれを用いて、ノンハロゲン難燃被覆電線A(外径:2.60mm)、ノンハロゲン難燃被覆電線B(外径:3.10mm)及びノンハロゲン難燃被覆電線C(外径:3.70mm)を得、これら電線について表2に示す各項目の評価を行った。その結果、ノンハロゲン難燃被覆電線Cでは、耐折り曲げ性について初期の白化、放置後の割れが共に生じたが、電線A及びBでは全ての項目で満足できる結果が得られた。
なお、通常自動車用の薄肉低圧電線の場合、その導体として外径が0.7mm以上1.8mm以下のものが通常用いられる。
【0031】
さらに、絶縁被覆層の厚さについて検討を行った。
表2における実施例1と同じ条件で、ただし第1層の厚さを変化させて、絶縁被覆層の厚さが300μmのノンハロゲン難燃被覆電線D、絶縁被覆層の厚さが400μmのノンハロゲン難燃被覆電線E、及び、絶縁被覆層の厚さが450μmのノンハロゲン難燃被覆電線Fの3種類の電線を作製した。
【0032】
これら電線D〜Fについて表2に示す各項目の評価を行った。その結果、絶縁被覆層の厚さが450μmのノンハロゲン難燃被覆電線では、180°屈曲に対する耐折り曲げ性で、初期の白化、放置後の割れが共に生じたが、電線D及びEでは全ての項目で満足できる結果が得られた。
【0033】
なお、表2の実施例1〜6の電線と同様に、ただし、第1層の厚さを30μm、絶縁被覆層の厚さを95μmとして作製した電線について同様に評価したところ、耐折り曲げ性で、180°屈曲時に若干の白化が観察されたものの、その他の上記評価性能ではすべて合格しており、また、これら電線の被覆層の絶縁性についてJASO D611−94、5.3(2)項に準拠して評価したところ、充分な絶縁性があることが確認された。従ってこれら、第1層の厚さを30μm、絶縁被覆層の厚さを95μmとして作製した電線は、極めて過酷な条件が想定される自動車用薄肉電線以外の用途では、充分実用可能であることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
本発明のノンハロゲン難燃被覆電線は、耐摩耗性、難燃性、耐油性及び耐折り曲げ性に優れた、安定生産の可能なノンハロゲン難燃被覆電線でありながら、被覆層の厚さを薄くすることが可能であり、このとき同時に軽量化が実現し、特に自動車用薄肉電線として用いるに最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明のノンハロゲン難燃被覆電線の概念を示すモデル図である。
(b)本発明のノンハロゲン難燃被覆電線の一例の断面図である。

Claims (5)

  1. 絶縁被覆層が、導体に直接接する第1層と、該第1層の外側に配された第2層とからなる被覆電線であって
    第1層がショアD硬度60未満、酸素指数24以上の難燃ポリオレフィン樹脂組成物からなり
    第2層がショアD硬度60以上であって、前記第1層を構成する樹脂組成物と同種類のポリオレフィン樹脂組成物からなっており
    外径が3.10mm以下、
    前記絶縁被覆層の厚さが400μm以下、
    第1層の厚さが30μm以上で、かつ、
    第2層の層厚が65μm以上150μm以下であることを特徴とするノンハロゲン難燃被覆電線。
  2. 上記絶縁被覆層の層厚が180μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のノンハロゲン難燃被覆電線。
  3. 第2層を構成するポリオレフィン樹脂組成物が、無機充填材あるいは無機難燃化剤を有しないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノンハロゲン難燃被覆電線。
  4. 第1層を構成する難燃ポリオレフィン樹脂組成物の難燃性付与剤が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のノンハロゲン難燃被覆電線。
  5. 絶縁被覆層が、導体に直接接する第1層と、該第1層の外側に配された第2層とからなる被覆電線であって、第1層がショアD硬度60未満、酸素指数24以上の難燃ポリオレフィン樹脂組成物からなり、第2層がショアD硬度60以上のポリオレフィン樹脂組成物からなっており、かつ、上記絶縁被覆層の層厚が180μm以上、第2層の層厚が65μm以上150μm以下であることを特徴とする自動車用ノンハロゲン難燃被覆電線。
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