JP3812364B2 - スピーカー - Google Patents

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JP3812364B2
JP3812364B2 JP2001142628A JP2001142628A JP3812364B2 JP 3812364 B2 JP3812364 B2 JP 3812364B2 JP 2001142628 A JP2001142628 A JP 2001142628A JP 2001142628 A JP2001142628 A JP 2001142628A JP 3812364 B2 JP3812364 B2 JP 3812364B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカーに関する。より詳細には、本発明は、輸送・保管に便利で、音質を低下させずに最低共振周波数f0を低下させることが可能で、かつ、適切なQを有するスピーカーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高域再生スピーカー(ツィーター)においては、最低共振周波数f0を低下させて再生帯域を広げる、いわゆるワイドレンジ化の試みが数多くなされている。例えば、磁気回路を構成するポールに貫通孔を形成し、当該孔に連通する長い管を設けることにより、f0を低下させる試みがなされている。しかし、このような技術によればインピーダンスのQが適切な範囲より大きくなる傾向が強く、しかも、ツィーターは、その構造に起因して振動板の背面側の容積を十分に確保することが困難であるので、所望のワイドレンジ化にはほど遠い状態である。
【0003】
管を長くすればf0を低下させることは可能であるが、定在波が発生したり、高周波数域においてポール孔のインピーダンスが上昇したりして、ツィーターの再生音質が低下してしまう。従って、管を長くするだけでは、所望のワイドレンジ化を達成することはできない。しかも、長い管を有するスピーカーは、輸送および保管が困難であり、商品価値を低下させてしまう。
【0004】
一方、磁気回路を構成するポールのアンダープレート部分に小さな貫通孔を形成し、カバーによって磁気回路外部に規定されたバックキャビティにより容積を確保する試みも数多くなされている。しかし、上記と同様に、単にバックキャビティを設けるだけでは、f0およびQのいずれについても所望の改善は得られない。
【0005】
以上のように、輸送・保管に便利で、音質を低下させずに最低共振周波数f0を低下させることが可能で、かつ、適切なQを有するスピーカーが強く望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、輸送・保管に便利で、音質を低下させずに最低共振周波数f0を低下させることが可能で、かつ、適切なQを有するスピーカーを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、ツィーターの構造(特に、背面側に規定される空間の構造)と音質と再生帯域との関係について鋭意検討した結果、振動板の背面側に規定された空間とバックキャビティとを分離して形成し、かつ、磁気ギャップの背面側に規定される空間と該バックキャビティを連通させることにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のスピーカーは、エッジを介してフレームに取り付けられた振動板と、磁気回路と、該磁気回路の背面側にキャビティを規定するカバーとを備える。該磁気回路の該振動板に対応する部分には貫通孔が形成され、該カバーが、該キャビティと分離した、該貫通孔を含み振動板側が開き背面側が閉じた空間を規定する。さらに、該磁気回路の磁気ギャップに対応する部分には少なくとも1つの貫通孔が形成され、該貫通孔を介して、該磁気ギャップの背面側に規定された空間と該キャビティとが連通する。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記振動板を平面視したときの面積をS1とし、上記エッジを平面視したときの面積をS2とし、上記磁気ギャップに対応する部分に形成された貫通孔の合計面積をS3としたとき、上記振動板側が開き背面側が閉じた空間の容積V1と、上記磁気ギャップの背面側に規定された空間の容積V2と、上記キャビティの容積V3とは、V1/V2が0.25(S1/S2)〜S1/S2の範囲であり、かつ、(V2・S2)/(V3・S3)が1.5〜5.0の範囲であるような関係を有する。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記キャビティおよび/または上記磁気ギャップの背面側に規定された空間には吸音材が配されている。
【0011】
以下、本発明の作用について説明する。
本発明によれば、磁気ギャップの背面側に規定される空間と連通するバックキャビティを形成し、かつ、振動板背面側に、該バックキャビティと分離し振動板側が開き背面側が閉じた空間を形成することにより、輸送・保管に便利で、音質を低下させずに最低共振周波数f0を低下させることが可能で、かつ、適切なQを有するスピーカーを提供する。より詳細には、背面側に分離した2つの空間を形成することにより、振動板とエッジとがそれぞれ背面に押し出した空気によって互いに影響されることがないので、優れた周波数特性を有するスピーカーが得られる。
【0012】
好ましい実施形態においては、振動板の背面側に規定された空間と磁気ギャップの背面側に規定された空間とバックキャビティとは、それぞれの空間の容積をV1〜V3とし、上記振動板を平面視したときの面積をS1とし、上記エッジを平面視したときの面積をS2とし、上記磁気ギャップに対応する部分に形成された貫通孔の合計面積をS3としたとき、V1/V2が0.25(S1/S2)〜S1/S2の範囲であり、かつ、(V2・S2)/(V3・S3)が1.5〜5.0の範囲であるような関係を有する。このような関係を有することにより、各空間の圧力差に起因して生じる空気の流れによりボイスコイルの動きが阻害されるのを抑制することができ、その結果、優れた周波数特性を有するスピーカーが得られるからである。さらに、このような関係を有することにより、低域再生状態と高域再生状態との間の移行が格段に円滑となり、非常に優れたワイドレンジ化が達成できるからである。より詳細には以下の通りである。高域再生状態では空気量は少なく空間容積は小さい方が好ましく、低域再生状態では空間容積は大きい方が好ましい。磁気ギャップに対応する部分に貫通孔を設けて、磁気ギャップの背面側に規定された空間とバックキャビティとを上記のような所定の関係で連通させることにより、高域再生状態においては空気の影響を少なくし、低域再生状態においてはバックキャビティを有効に利用して容積を確保することができる。すなわち、上記のような関係を有することにより、貫通孔が空気の流れに対する適切な抵抗として機能するので、低域再生状態と高域再生状態との間の移行を適切な周波数で行うことができ、その結果、音圧を損なうことなく再生周波数帯域を拡大することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0014】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーを説明するための概略断面図である。本発明のスピーカー100は、エッジ2を介してフレームに取り付けられた振動板1と、磁気回路3と、該磁気回路の背面側にキャビティ4を規定するカバー5とを備える。磁気回路3は、ポール6と、プレート7と、マグネット8とを含む。必要に応じて、磁気回路3の背面側(すなわち、ポール6の背面側)に、第2のマグネット(いわゆるキャンセルマグネット)9が配設され得る。
【0015】
磁気回路5の振動板1に対応する部分(すなわち、ポール6の中心部分)には貫通孔10が形成されている。カバー5は、ポール6と一緒になって、貫通孔10を含み振動板側が開き背面側が閉じた空間11を規定する。当該空間11は、キャビティ4と分離している。すなわち、空間11とキャビティ4とは、カバー5によって仕切られている。空間11とキャビティ4とを分離することが本発明の特徴の1つであり、このことにより、振動板とエッジとがそれぞれ背面に押し出した空気によって動かされることがないので、歪みの少ない周波数特性を有するスピーカーが得られる。さらに、磁気回路3の磁気ギャップに対応するポール6の部分には少なくとも1つの貫通孔12が形成され、該貫通孔12を介して、該磁気ギャップの背面側に規定された(すなわち、ポール6とマグネット8との間に規定された)空間13とキャビティ4とが連通する。
【0016】
好ましくは、キャビティ4および/または空間13には吸音材が配され得る。吸音材を配することにより、さらに良好なワイドレンジ化が達成され得るからである。吸音材は、キャビティ4および/または空間13の任意の適切な位置に任意の適切な大きさで配置され得る。さらに好ましくは、吸音材は空間13に配され得る。代表的には、配置される吸音材の体積は、空間13の容積V2の30〜100%、さらに好ましくは50〜80%の範囲である。このような範囲の大きさの吸音材を配することにより、定在波を抑制し、かつ、低域再生状態と高域再生状態との間の移行を円滑にすることができるので、音圧を損なうことなく再生周波数帯域を拡大することが可能となる。
【0017】
好ましくは、上記振動板1を平面視したときの面積をS1とし、上記エッジ2を平面視したときの面積をS2とし(図2(a)参照)、上記磁気ギャップに対応する部分に形成された貫通孔12の合計面積をS3としたとき(図2(b)参照)、上記振動板背面側に規定された空間11の容積V1と、上記磁気ギャップの背面側に規定された空間13の容積V2と、上記キャビティ4の容積V3とは、V1/V2が0.25(S1/S2)〜S1/S2の範囲であり、かつ、(V2・S2)/(V3・S3)が1.5〜5.0の範囲であるような関係を有する。このような関係を有することにより、長いキャビティを規定することなく、良好にf0を低下させることができるからである。このような関係を用いて各々の空間を規定することにより、空気の流れ(結果的に、反射、管共振(定在波)など)が良好に制御されるからである。さらに好ましくは、V1/V2は0.50(S1/S2)〜S1/S2の範囲であり、および/または、(V2・S2)/(V3・S3)は1.5〜4.0の範囲である。なお、実用的なV1/V2は1〜4の範囲、さらに好ましくは2〜4の範囲であり、実用的なV3/V2は3〜8の範囲、さらに好ましくは4〜6の範囲である。
【0018】
振動板1の背面側に規定される空間11の形状(および空間11に含まれる貫通孔10の形状)としては、上記のような要件を満たす限りにおいて任意の適切な形状が採用され得る。好ましい形状の一例としては、図1に示すような形状が挙げられる。具体的には、ポール6に形成された貫通孔10は、振動板側では径が連続的に減少し、背面側では一定の径を有する。空間11のうちカバー5によって規定される部分は、振動板側では、貫通孔10よりも小さくかつ一定の径を有する円筒状であり、背面側の所定の位置から断面が放物線を描くように径が減少し最終的に閉じた空間となる。好ましい形状の別の例としては、図3に示すような形状(いわゆる、ホーンをふさいだような形状)が挙げられる。このような形状によれば、定在波の発生が顕著に抑制され得る。空間11の形状は、得られるスピーカーの目的に応じて適宜変更され得る。例えば、ポール6部分から空間が閉じる部分まで径が連続的に減少するような形状でもよく、中間部分で径が極小値を有するような形状であってもよい。
【0019】
磁気ギャップに対応する部分の貫通孔12は、任意の適切な径を有し、任意の適切な数で形成される。好ましくは、貫通孔12の径および数は、貫通孔12の合計面積S3が上記の要件を満たすように組み合わせて選択され得る。実用的には、貫通孔12は、ポール6の円周方向に等間隔で2〜8個、好ましくは2〜6個形成される。図2(b)では、貫通孔を2個形成した場合を例示している。
【0020】
本発明のスピーカーは、その目的を達する限りにおいて、あらゆる用途に幅広く用いられ得るが、ツィーターとして特に好適に用いられ得る。
【0021】
【実施例】
(実施例1)
図1に示すようなスピーカーを作製した。V1/V2が2、(V2・S2)/(V3・S3)が1.6となるように設計した。さらに、磁気ギャップ背面側の空間部分には、当該空間の容積の60%の体積を有する発泡ポリウレタンを配置した。得られたスピーカーについて、通常の方法で、周波数特性を測定した。得られた結果を図4に示す。
【0022】
(比較例1)
ポールの中心部分(振動板に対応する部分)に貫通孔を形成し、当該孔に連通する長い管を設けたスピーカーを作製した。得られたスピーカーを実施例1と同様の評価に供した。結果を図5に示す。
【0023】
図4と図5とを比較すると明らかなように、本発明のスピーカーは、比較例のスピーカーに比べて、f0が低下し、200Hzおよび10kHz付近での音圧が上昇し、f0におけるQがより適切である。すなわち、本発明のスピーカーは、比較例のスピーカーに比べて良好なワイドレンジ化が達成できていることがわかる。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、振動板の背面側に規定された空間とバックキャビティとを分離して形成し、かつ、磁気ギャップの背面側に規定される空間と該バックキャビティを連通させることにより、輸送・保管に便利で、音質を低下させずに最低共振周波数f0を低下させることが可能で、かつ、適切なQを有するスピーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカーを説明するための概略断面図である。
【図2】(a)は図1のスピーカーのA−A線による断面図であり、(b)は図1のスピーカーのB−B線による断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態によるスピーカーを説明するための概略断面図である。
【図4】本発明の実施例のスピーカーについての周波数特性を示すグラフである。
【図5】比較例のスピーカーについての周波数特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 振動板
2 エッジ
3 磁気回路
4 キャビティ
5 カバー
6 ポール
7 プレート
8 マグネット
10 貫通孔
11 空間
12 貫通孔
13 空間
100 スピーカー

Claims (3)

  1. エッジを介してフレームに取り付けられた振動板と、磁気回路と、該磁気回路の背面側にキャビティを規定するカバーとを備え、
    該磁気回路の該振動板に対応する部分に貫通孔が形成され、該カバーが、該キャビティと分離した、該貫通孔を含み振動板側が開き背面側が閉じた空間を規定し、
    該磁気回路の磁気ギャップに対応する部分に少なくとも1つの貫通孔が形成され、該貫通孔を介して、該磁気ギャップの背面側に規定された空間と該キャビティとが連通する
    スピーカー。
  2. 前記振動板を平面視したときの面積をS1とし、前記エッジを平面視したときの面積をS2とし、前記磁気ギャップに対応する部分に形成された貫通孔の合計面積をS3としたとき、前記振動板側が開き背面側が閉じた空間の容積V1と、前記磁気ギャップの背面側に規定された空間の容積V2と、前記キャビティの容積V3とが、V1/V2が0.25(S1/S2)〜S1/S2の範囲であり、かつ、(V2・S2)/(V3・S3)が1.5〜5.0の範囲であるような関係を有する、請求項1に記載のスピーカー。
  3. 前記キャビティおよび/または前記磁気ギャップの背面側に規定された空間に吸音材が配されている、請求項1または2に記載のスピーカー。
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