JP3812194B2

JP3812194B2 - 貼り合わせ成形方法

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Publication number: JP3812194B2
Application number: JP36409698A
Authority: JP
Inventors: 啓一郎古屋敷
Original assignee: Ube Industries Ltd
Current assignee: Ube Corp
Priority date: 1998-12-22
Filing date: 1998-12-22
Publication date: 2006-08-23
Anticipated expiration: 2018-12-22
Also published as: JP2000185332A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表皮材とコア材の溶融樹脂を一体的に成形する貼り合わせ成形方法に係わり、特に裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を用いる貼り合わせ成形において、該成形時に発泡層に生じる損傷を防止して、ソフトで触感の良い貼り合わせ成形品を得ることができる貼り合わせ成形方法に関するものである。
【０００２】
【従来技術】
従来から、成形品の外観や触感等を向上させて成形品の付加価値を高めるための方法として、型開した一対の金型の間に加飾した表皮材を入れて、型閉した後、金型内にコア材である溶融樹脂を充填して表皮材とコア材の樹脂を一体的に成形する貼り合わせ成形方法が行われている。
【０００３】
貼り合わせ成形方法に用いる表皮材は、成形後に外観面を形成することとなる表皮材の表面（表面側と称することもある）に付加価値を高めるための加飾として、絵柄が印刷されていたり、起毛が植設されていたり、あるいは、クリヤー感を出すために透明樹脂の層が形成されていたり等、様々な加工が施されている。また、貼り合わせ成形時にコア材である樹脂と融着することとなる表皮材の裏面（裏面側と称することもある）は、コア材の溶融樹脂との融着性のある材料が選定されている。
【０００４】
また、前記表皮材として、予めプレス成形などによって金型のキャビティ形状とほぼ同様な形状に賦形された表皮材（以下、プリフォームされた表皮材と称することもある）、あるいは、シート状の表皮材（表皮シートと称することもある）が用いられることが多く、シート状の表皮材は、型閉した金型の間に挟み込まれることによって金型キャビティとほぼ同様な形状に賦形されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、高級感のあるソフトで触感の良い貼り合わせ成形品を成形するため、裏面に発泡樹脂の層（発泡層と称することもある）を有する表皮材使用して、貼り合わせ成形を行なうことが多くなっている。
【０００６】
ところが、前記した従来の貼り合わせ成形方法では、コア材である溶融樹脂を金型内に充填して表皮材とコア材の樹脂を一体的にする際、金型内に充填されるコア材の溶融樹脂の温度で表皮材が加熱され、また、該充填される樹脂の高い充填圧で表皮材が金型に強く押圧される。
【０００７】
裏面に発泡層を有する表皮材を貼り合わせ成形に用いると、充填されるコア材の溶融樹脂が発泡層に直接接するため、発泡層は極度に加熱された状態で強く押圧されることとなり、発泡層は加熱された状態で高い圧力を受けると、融かされて消失したり、つぶされたりする等して損傷（溶損と称することもある）する。そのため、裏面に発泡層を有する表皮材を用いて貼り合わせ成形をおこなっても、発泡層が溶損し成形品にソフト感を出すことができなかった。
【０００８】
また、成形時に発泡層が溶損することを考慮して、表皮材の裏面に厚い発泡層を配したとしても、該発泡層に生じる溶損の程度は、全体的に均一でなく場所によって異なるため、成形後の発泡層の厚みが不均一となり、その結果、成形品の表面に凹凸が生じて外観を損ねる等といった問題がおこる。
【０００９】
また、金型内に充填するコア材樹脂の溶融温度や充填圧力を下げると前記のような問題は生じなくなるが、樹脂の溶融温度や充填圧力を下げるとコア材が金型に充填できなくなることが多く、また、成形品に要求される強度等の面からコア材の樹脂の種類を変更できないため、該コア材樹脂の溶融温度や充填圧力を下げることができない。
【００１０】
従って、貼り合わせ成形に発泡層を有する表皮材を使用する場合は、該発泡層がコア材の溶融樹脂によって極度に加熱されることを防ぐための手段として、発泡層がコア材の溶融樹脂と直接に接しないよう保護層を設け、発泡層を表皮材の表面を形成する層と保護層の間の中間層として配する必要があった。
しかし、予め表皮材に保護層を設けると、賦形性が悪化するので、プリフォーム等の際に、しわや破れ等の問題が生じやすくなる。
特に、表皮シートを用いた貼り合わせ成形の場合、金型で挟み込むことによって表皮材を賦形するため、賦形性が悪いとしわや破れ等の問題が生じて成形が困難である。
【００１１】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を用いてソフトで触感の良い貼り合わせ成形品を得ることができる貼り合わせ成形方法に関するものである。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、
（１）型開された一対の金型の間に、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を配し、型閉したのち型締力を与え、該金型のキャビティ面と該発泡層との間に、第一の樹脂を溶融状態で充填した後、第二の樹脂を溶融状態で充填し、該表皮材と前記二つの樹脂とを一体的に成形する貼り合わせ成形方法であって、該第一の樹脂の充填時の溶融温度は、該第二の樹脂の充填時の溶融温度より低い構成とした。
【００１３】
（２）型開された一対の金型の間に、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を配し、型閉したのち型締力を与え、該金型のキャビティ面と該発泡層との間に、第一の樹脂を溶融状態で充填した後、第二の樹脂を溶融状態で充填し、該表皮材と前記二つの樹脂とを一体的に成形する貼り合わせ成形方法であって、前記溶融状態で充填する際において該第一の樹脂は該第二の樹脂より高流動性である構成とした。
【００１４】
（３）上記（１）、または、（２）に記載の貼り合わせ成形方法において、前記第一の樹脂を溶融状態で充填した後、一旦金型をわずかに開いて該第一の樹脂と金型のキャビティ面との間に空隙を形成し、該空隙に前記第二の樹脂を溶融状態で充填する構成とした。
【００１５】
（４）上記（１）、または、（２）、または、（３）の貼り合わせ成形方法おいて、前記第一の樹脂は、熱可塑性エラストマ樹脂である構成とした。
【００１６】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図１、および、図２は本発明の実施例に係り、図１は本発明方法に使用する貼り合わせ成形装置の全体構成図、図２は貼り合わせ成形の際におけるステップを示す金型と金型内の状態を説明する概念図、図３は表皮シートＳの成形後の発泡層を厚みを従来方法と実施例とで比較したグラフであり、図３の（ａ）は本発明の場合を示し、図３の（ｂ）は従来の場合を示す。図４は本発明の実施例による貼り合わせ成形法のフローチャートである。図５は本発明方法に係る貼り合わせ成形品の構造を説明する縦断面図である。
【００１７】
図１に示すように、本発明の貼り合わせ成形方法に使用される実施例の貼り合わせ成形装置１００は、金型１０と型締装置２０と多層射出装置３０と制御装置６０とで構成される。多層射出装置３０は第一の射出装置３０Ａと第二の射出装置３０Ｂから構成され、金型１０は固定盤１に取り付けられた固定金型３と可動盤２に取り付けられた可動金型４とからなる。
【００１８】
型締装置２０は、可動盤２と固定盤１と型締シリンダ２２と、型締シリンダ２２に所望の油圧を供給する油圧源を備え、可動盤２は図示しないタイバーに案内されて、型締シリンダ２２の駆動により可動金型４とともに前後進できるよう構成されている。
本実施例においては、位置センサＨが、可動盤２の位置を検出できるようにして配されており、可動盤２の位置を検出した該位置センサＨの出力信号は、制御装置６０に入力され、制御装置６０は、該位置センサＨの出力信号よって可動盤２の位置を検知し、型締シリンダ２２に油圧を供給する型締シリンダ制御バルブを制御して、可動盤２を所望の位置に正確に移動させることによって、可動盤２に取り付けられた可動金型４を固定盤１に取付けられた固定金型３に対して所望の位置に正確に移動させて金型１０を自在に開閉し、また、型締できるよう構成されている。
なお、本実施例においては図１に示すような直圧タイプの型締装置２０を使用したが、可動盤２を所望の位置に正確に、かつ、自在に移動させることができ、金型に十分な型締力を負荷することのできる型締装置であれば、本実施例に限らず、トグルタイプ、あるいは、他のタイプの型締装置を本発明に用いても良い。
【００１９】
図１に示す射出装置３０Ａ、および、射出装置３０Ｂは、バレルとバレルに内装されスクリュフライトを有するスクリュと、該バレル内にコア材樹脂を供給するホッパと、該スクリュを前後進させる射出シリンダと、該スクリュを回転させる油圧モータと、射出シリンダと油圧モータに所望の油圧を供給する油圧源を備え、前記バレル外周面には、図示しないヒータが取付けられている。
【００２０】
前記射出装置３０Ａ、および、射出装置３０Ｂは、油圧モータによってスクリュが回転することにより、ホッパからペレット形状のコア材樹脂がバレル内に供給される構造となっており、該供給されたペレット形状のコア材の樹脂は、バレルに取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュの回転によって混練圧縮作用を受けることによって溶融し、スクリュ前方に送られる。
【００２１】
また、前記射出装置３０Ａのバレル先端部にあるノズル部には回転式のバルブ３１Ａが配され、バルブ３１Ａが回転することによって、樹脂流路の開閉をおこなうことができ、スクリュの前方に送られたコア材の溶融樹脂はバルブ３１Ａが開の状態となっている場合にのみ、射出シリンダにより前進するスクリュによって、バレルの先端部にあるノズルから押出（射出と称することもある）ことができる。
また、同様に射出装置３０Ｂについてもバレル先端部にあるノズル部には回転式のバルブ３１Ｂが配され、バルブ３１Ｂが回転することによって、樹脂流路の開閉をおこなうことができ、スクリュの前方に送られたコア材の溶融樹脂はバルブ３１Ｂが開の状態となっている場合にのみ、射出シリンダにより前進するスクリュによって、バレルの先端部にあるノズルから押出ことができる。
【００２２】
制御装置６０は、型締装置２０を制御する構成として型締制御部と型締条件設定器を有し、多層射出装置３０を制御する構成として射出装置制御部と射出条件設定器を有している。
また、本実施例では、金型１０の型開量Ｌｔを制御するため、可動盤２の動きを位置センサＨで検知し常時測定しており、測定結果は制御装置６０に伝えられる構成となっている。
【００２３】
本実施例に用いる金型１０は、金型キャビティ５に第一の樹脂を充填した後、可動金型４を固定金型３から離間させることにより金型１０を所望の寸法だけ型開きすると、表皮材と第一樹脂が一体となった半成形品が可動金型４のキャビティ面に付着して残る型構造であるので、第一の樹脂と固定金型３のキャビティ５面との間に所望の距離を有した空隙（空間）が生じるようになっている。
また、成形後の成形品は、可動金型４のキャビティ面に付着して残るが、図示されていない製品突き出し装置によって可動金型３より突き出して、取りだすことができる構造となっている。
【００２４】
なお、本発明の実施例においては、金型１０を所望の寸法だけ型開きすると、第一の樹脂と固定金型３のキャビティ５面との間に所望の距離を有した空隙が生じるような型構造になっているが、該金型１０の型開の際に、表皮材の表面と可動金型４のキャビティ面との間に空隙が生じるような型構造になっていても、第一の樹脂と固定金型３のキャビティ５面との間に第二の樹脂を溶融状態で充填にする際に、前記半成形品が、第二の樹脂の充填圧力によって、金型内で、表皮材の表面と可動金型４のキャビティ面との間の空隙をなくす方向に移動することによって、第一の樹脂と金型のキャビティ５面との間に第二の樹脂を充填できれば良い。
【００２５】
つぎに、本実施例による貼り合わせ成形の工程を、図２、および、図４に基づいて以下に説明する。
図４（１）で成形開始（サイクルスタート）を始めた貼り合わせ成形工程は、次の図４（２）から（３）までの工程では、型締装置２０の作動により金型１０を大きく型開きし、図２（ａ）に示すように、金型が大きく型開き状態のとき、上下のロール６、６により、表皮材である表皮シートＳを固定金型３側に裏面（発泡層）を向けた状態で張架して、固定金型３と可動金型４の間に供給し、表皮シートＳを金型間にセットする。
【００２６】
表皮シートＳを型内にセット完了後、図４（４）の工程に進み、金型１０は型締装置２０の作動により型閉されるが、表皮シートＳが一定の張力を保って引っ張られたまま、可動金型４によって固定金型３側に押しつけられ、固定金型３と可動金型４の間に挟み込まれる。
表皮シートＳは、固定金型３と可動金型４の間に挟み込まれることによって、キャビティ形状にそって、伸ばされ、変形し、キャビティ形状とほぼ同様な形状になり金型の中に配される。
また、型閉時に、金型１０内に内蔵された図示していないシート切断機構が作動し金型１０の上下両端部で表皮シートＳを切断する。
【００２７】
図５に成形後の成形品の縦断面図を示すが、本実施例で表皮材として使用した表皮シートＳは多層構造のシートであり裏面側にポリオレフィン系樹脂（ポリプロピレンとポリエチレンの混合物）の発泡層、中間層（ベース層と称することもある）にポリプロピレン、表面側の表面層にポリ沸化ビニリデン、アクリル等を含有したクリヤー層を有する加飾シートである。
なお、本発明に使用できる表皮材は、裏面が樹脂の発泡層で形成される表皮材であって、本実施例にあるような多層構造のシートに限らないことは勿論である。
【００２８】
そして、型閉された金型１０が、所定の圧力で型締力を負荷された後、図４（５）から（６）の工程に進み、図２（ｂ）に示すように、切替バルブ３１Ａが閉から開に切替わり、射出装置３０Ａの射出動作により、第一の樹脂（本実施例においては、低密度ポリエチレン）が、表皮シートＳの裏面である発泡層と固定金型３のキャビティ５間に射出充填され、スクリュ位置切替えにより保圧に切り替わり、予め設定された時間の間、保圧され後、切替バルブ３１Ａが開から閉に切替わる。
【００２９】
なお、本実施例に使用した第一の樹脂の低密度ポリエチレンのメルトフローレートは、ＡＳＴＭのＤ１２３８において５０ｇ／１０ｍｉｎであり、該低密度ポリエチレンは射出装置３０Ａのバレル設定温度１４０℃で可塑化溶融している。また、該低密度ポリエチレンは、後述する第二の樹脂（本実施例においては、ポリプロピレン）との融着性を高める目的で、成形に用いる前にマレイン化処理を予め行ない、マレイン変性としている。
【００３０】
ここで、制御装置６０には図示されていないタイマＡが内蔵されており、タイマＡは射出装置３０Ａの保圧完了時から計時開始を始めている。
次の図４（７）の工程では、予め型締条件設定器に設定された設定時間とタイマＡの経過時間ｔ₁が同じになったとき金型の型締力の負荷を解除し、可動盤２の位置を位置センサーＨでモニターすることによって、金型を所望の量だけ正確に型開きし、予め型締条件設定器に設定された型開量Ｌｔ（本実施例においては３．５ｍｍ）だけ、型開きを行なう。
型開き後は、常に所望の位置（型開量制御と称することもある）にあるように可動盤２の位置を制御する。。
このことにより、第一の樹脂と金型のキャビティ５面との間には所望の距離（本実施例では、３．５ｍｍ）を有した空隙を生じる。
勿論、この型開き時には、両金型３，４間に形成されるキャビティ空間は、樹脂が漏れ出さないように封止されている。なお、この時の両金型３，４の相対位置は図２（ｃ）に示す通りである。
【００３１】
なお、本実施例においては、第一の樹脂の充填完了後に、一旦金型をわずかに開いて型開状態として第一の樹脂と固定金型３の金型キャビティ５面との間に空隙を生じさせたが、金型のキャビティ部に中子（可動コア）を配しキャビティ可変機構とし、コア材の溶融樹脂の充填完了後に、油圧シリンダ等の駆動手段によって該中子を摺動させることにより前記空隙を生じさせる方法を適用しても良い。
【００３２】
本実施例におけるタイマＡの設定時間ｔ₁は、短すぎると表皮材と第一の樹脂が一体となった半成形品が可動金型４のキャビティ面に付着して残らず、半成形品の形が壊れてしまうため、第一の樹脂の充填完了から経過時間ｔ₁後に金型を大きく開けて、半成形品が壊れることなく可動金型４のキャビティ面に付着して残る時間を探索し、半成形品が壊れることなく可動金型４のキャビティ面に付着して残ることのできる最短の時間とした。
【００３３】
次の図４（８）の工程では、図２（ｃ）に示すように、切替バルブ３１Ｂが閉から開に切替わり、射出装置３０Ｂの射出動作することによって、第二の樹脂（本実施例においては、ポリプロピレン）を、第一の樹脂と金型のキャビティ５面との間に生じた空隙に射出充填する。
第二の樹脂の射出充填完了後、図４（９）、（１０）の工程に進み、切替バルブ３１Ｂを開から閉に切替え、予め型締条件設定器に設定された型開量Ｌｔ（本実施例においては、２．５ｍｍ）まで金型を閉じることにより金型内に充填された第二の樹脂に圧力をかけながら（型締による保圧工程と称することもある）成形品の冷却を行ない、第二の樹脂の冷却にともない発生するひけの発生を防止する。冷却完了後、図４（１１）の工程に進み、可動盤２の型開量制御を解除する。そして、図４（１２）から（１４）までの工程では、型締シリンダ２２の作動により金型１０を大きく型開きし、成形品を金型より取出すことにより１サイクルを終了する。
【００３４】
なお、本実施例において使用したポリプロピレンのメルトフローレートは、ＡＳＴＭのＤ１２３８において５５ｇ／１０ｍｉｎであり、射出装置３０Ｂのバレル設定温度２００℃で可塑化溶融している。
【００３５】
なお、本実施例は、型締による保圧工程をおこなうことで、射出装置３０Ｂより保圧をかけた際に生じる第二の樹脂の金型ゲート部からの補償流動による第一の樹脂の損傷を防止している。
しかしながら、射出装置３０Ｂより保圧をかけて前記ひけの発生を防止するという射出成形において一般的な保圧方法を本発明においても適用できることは勿論である。
【００３６】
図３は、成形後の表皮シートＳの発泡層の厚みを測定した結果を示すグラフである。
本実施例において使用した裏面側にポリオレフィン系樹脂（ポリプロピレンとポリエチレンの混合物）の発泡層を配する表皮材の発泡層の融点は１２０℃から１４０℃の間である。
従来法では、第一の樹脂の充填なしに、第二の樹脂（ポリプロピレン）のみをコア材として充填しており、第二の樹脂は充填に高い溶融温度（２００℃）を要し、高い溶融温度を有した第二の樹脂が発泡層に直接接するため、発泡層は極度に加熱されて溶損が発生し、成形前と比べると発泡層の厚みが著しく減少している。
【００３７】
以上のように本実施例では、成形品のコア材として２種類の樹脂を充填し、第一の樹脂は溶融温度（本実施例においては、１４０℃である）が低くいため、充填の際の発泡層が受ける温度を低く抑えることができる、
その結果、発泡層の溶損が少なく、成形後でも発泡層の厚みは十分に厚みを保持している。その後、所望の寸法だけ型開きして所望の距離を有した空隙を生じさせ、該空隙に、第二の樹脂を射出充填するが、充填に高い溶融温度（本実施例においては、２００℃である）を要する第二の樹脂を空隙に射出充填したとしても、高い溶融温度を有した第二の樹脂が発泡層に直接接することはないため、発泡層は極度に加熱されることがなく溶損を防止することができる。
【００３８】
なお、本発明方法に用いる第一の樹脂の充填時の溶融温度が、前記表皮材の裏面の発泡層が溶解する温度（溶解温度と称することもある）より高くても、第二の樹脂が発泡層に直接接する時に比較し、発泡層の溶損が抑える効果が認められるが、好ましくは、第一の樹脂の充填時の溶融温度が該発泡層の溶解温度よりあまり高くない範囲の温度（溶解温度より４０℃程度まで高い範囲の温度）であり、特に好ましくは、第一の樹脂の充填時の溶融温度が、該発泡層の溶解温度と同等、あるいは、それより低い範囲の温度である。
また、前記溶解温度は、結晶性樹脂では融点に相当する温度である。
【００３９】
また、本実施例の場合、第一の樹脂と第二の樹脂の種類を異ならせたが、一般的に、樹脂は分子量によってその性質が大きくことなり、同じ種類の樹脂であっても、分子量が低いものは軟化温度が低いが強度的に弱く、分子量が大いものは軟化温度が高いが強度的に強いという性質を有することが多いことから、同じ種類で分子量のみが異なる樹脂を２種類用い、分子量の小さいものを第一の樹脂とし、分子量の大きいものを第二の樹脂として用い、本発明を実施しても良い。
【００４０】
また、本発明による第２の実施例として、充填時の溶融粘度が第二の樹脂より低く高流動性である樹脂を、第一の樹脂として用いて前述した実施例（第１の実施例と称することもある）と同様な貼り合わせ成形方法をおこなった。
結果、高流動性の第一の樹脂を充填する際の充填圧力は、第二の樹脂の充填圧力より低く抑えることができるので、第一の樹脂の溶融温度で発泡層が加熱された際に、第一の樹脂の充填圧力によって発泡層にかかる圧力を低く抑えることができ、第一の樹脂の充填時に発生する発泡層の損傷を防止できる。
【００４１】
第一の樹脂の充填完了後、所望の寸法だけ型開きして所望の距離を有した空隙を生じさせ、該空隙に、第二の樹脂を射出充填するが、高い充填圧力を必要とする第二の樹脂を空隙に射出充填したとしても、第二の樹脂が発泡層に直接接することはないため、発泡層は極度に加熱されることがなく、従って、第二の樹脂の高い充填圧力によって発泡層に高い圧力が負荷されても、該発泡層が加熱されていないため溶損することはなく、第二の樹脂の充填が完了し発泡層に負荷されていた高い圧力がなくなれば発泡層は元の厚みに復元するので、成形品のソフト感を損なうことがない。
【００４２】
なお、充填時の流動性が第二の樹脂より高流動性である樹脂を第一の樹脂として用いて、かつ、第一の樹脂の充填時の溶融温度を第二の樹脂の充填時の溶融温度より低くすれば、成形時に発泡層が溶融樹脂から受ける温度と圧力の両方を低く抑えることができるので、さらに発泡層の溶損を防止する効果が高く、良好な成形品を得ることができる。
【００４３】
また、本発明による第３の実施例として、第一の樹脂として熱可塑性エラストマ樹脂を用いて第１の実施例と同様な貼り合わせ成形方法をおこなった。
その結果、発泡層と第二の樹脂との間にソフト感のある熱可塑性エラストマ樹脂が配されることとなるため、成形後の貼り合わせ成形品の触感が大きく向上し、高級感のある貼り合わせ成形品を得ることができた。
第３の実施例に使用した熱可塑性エラストマ樹脂は、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマ樹脂であり、射出装置３０Ａのバレル設定温度１８０℃で可塑化溶融している。この材料の硬度は、ＪＩＳＫ６３０１のＡ法において、３５ポイントのものである。
【００４４】
低密度ポリエチレンを使用した実施例に比較すると、発泡層の溶損は大きいが、第二の樹脂のみをコア材として充填する、従来法に比較すれば発泡層の溶損は小さく発泡層の厚みが減少も小さい。
【００４５】
なお、熱可塑性エラストマ樹脂（ＴＰＥと称することもある）は、常温では加硫ゴムの性質を示すが、加熱すると可塑化されて一般的なプラスチック成形装置で成形できる高分子材料であり、例えば、プラスチックとエラストマのブレンドによって、あるいは、（ポリスチレン）−（ポリブタジエン）−（ポリスチレン）のようなブロックコポリマー等の形で存在している。
また、第３の実施例には第一の樹脂としてポリスチレン系の熱可塑性エラストマ樹脂を使用したが、発泡層、および、第二の樹脂との融着性を有し、充填時の溶融温度が第二の樹脂の充填時の溶融温度より低い、あるいは、第二の樹脂より充填時に高流動性である、かすれば、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマ樹脂に限らず、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリブタジエン系等、どのような熱可塑性熱エラストマ樹脂を第一の樹脂として用いても良い。
【００４６】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の貼り合わせ成形方法においては、
第１の発明では、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を用いて貼り合わせ成形する際において、金型のキャビティ面と表皮材の裏面の発泡層との間に、充填時の溶融温度が低い第一の樹脂を充填した後に、充填時の溶融温度が高い第二の樹脂を充填することによって、高い溶融温度を有する第二の樹脂が発泡層に直接接することはなくなり、発泡層は極度に加熱されることがなく溶損が防止されて、良好な貼り合わせ成形品を得ることができる。
【００４７】
第２の発明では、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を用いて貼り合わせ成形する際において、金型のキャビティ面と表皮材の裏面の発泡層との間に、高流動性の第一の樹脂を低い充填圧力で充填した後に、第二の樹脂を充填することにより、第二の樹脂が発泡層に直接接することがなくなり、第一の樹脂の充填圧力で発泡層が受ける圧力を低く抑えることができ、成形時の発泡層のつぶれが抑えられ発泡層の損傷を防止できる。
【００４８】
第３の発明では、第一の樹脂を溶融状態で充填した後、一旦金型をわずかに開いて型開状態として充填空間を形成し、第一の樹脂と金型のキャビティ面との間に第二の樹脂を溶融状態で充填することによって、金型等の構造を複雑にすることなく、溶損のない良好な貼り合わせ成形品を得ることができる貼り合わせ成形を、安定して実施することができる。
【００４９】
第４の発明では、前記第一の樹脂を熱可塑性エラストマ樹脂とすることによって、発泡層と第二の樹脂との間にソフト感のある熱可塑性エラストマ樹脂が配されて、成形後の貼り合わせ成形品の触感が大きく向上し、高級感のある高付加価値な貼り合わせ成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の方法に適用される貼り合わせ成形装置の実施例に係る全体構成図である。
【図２】本発明の貼り合わせ成形の実施例に係る際におけるステップを示す金型と金型内の状態を説明する概念図であり、（ａ）は金型間に表皮シートＳをセットした状態を示す図、（ｂ）は第一の樹脂を射出充填した状態を示す図、（ｃ）は第二の樹脂を射出充填した状態を示す図、（ｄ）は成形品を金型より取出した状態を示す図である。
【図３】成形後の発泡層の厚みを従来方法と本発明の実施例とで比較したグラフである。
【図４】本発明の貼り合わせ成形方法の実施例に係る工程フローチャートである。
【図５】本発明の貼り合わせ成形方法の実施例に係る成形品の構造を説明する縦断面図である。
【符号の簡単な説明】
３固定金型
４可動金型
５金型キャビティ
１０金型
２０型締装置
３０多層射出装置
６０制御装置
１００貼り合わせ成形装置
Ｓ表皮シート

Claims

型開された一対の金型の間に、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を配し、型閉したのち型締力を与え、該金型のキャビティ面と該発泡層との間に、第一の樹脂を溶融状態で充填した後、第二の樹脂を溶融状態で充填し、該表皮材と前記二つの樹脂とを一体的に成形する貼り合わせ成形方法であって、該第一の樹脂の充填時の溶融温度は、該第二の樹脂の充填時の溶融温度より低いことを特徴とする貼り合わせ成形方法。
型開された一対の金型の間に、裏面に樹脂の発泡層を有する表皮材を配し、型閉したのち型締力を与え、該金型のキャビティ面と該発泡層との間に、第一の樹脂を溶融状態で充填した後、第二の樹脂を溶融状態で充填し、該表皮材と前記二つの樹脂とを一体的に成形する貼り合わせ成形方法であって、前記溶融状態で充填する際において該第一の樹脂は該第二の樹脂より高流動性であることを特徴とする貼り合わせ成形方法。
前記第一の樹脂を溶融状態で充填した後、一旦金型をわずかに開いて該第一の樹脂と金型のキャビティ面との間に空隙を形成し、該空隙に前記第二の樹脂を溶融状態で充填することを特徴とする請求項１、又は、請求項２記載の貼り合わせ成形方法。
前記第一の樹脂は、熱可塑性エラストマ樹脂であることを特徴とする請求項１、又は、請求項２、又は、請求項３記載の貼り合わせ成形方法。