JP2004106270A - 多層成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂の発泡層を有する貼り合わせ成形において、成形時に発泡層に生じる損傷を防止して、ソフトで触感の良い貼り合わせ成形品を得る。
【解決手段】金型のキャビティ空間に第1樹脂を充填して基材を成形した後、金型を一旦開いて表皮シートを金型内に装填し、該基材と該表皮シートの間に空隙を形成するようにして該金型を型閉して、空隙に発泡性を有した第2樹脂を充填する。前記工程により金型内で発泡させた損傷することなく成形品を製造できるので、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】金型のキャビティ空間に第1樹脂を充填して基材を成形した後、金型を一旦開いて表皮シートを金型内に装填し、該基材と該表皮シートの間に空隙を形成するようにして該金型を型閉して、空隙に発泡性を有した第2樹脂を充填する。前記工程により金型内で発泡させた損傷することなく成形品を製造できるので、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表皮シートに軟質材の樹脂と硬質材の樹脂を積層させてクッション性を有する多層成形品を製造する多層成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
表皮シートを表層に配した多層成形品の製造方法に関する従来技術として、予め表皮材の裏面に発泡層を積層した発泡層付きの表皮材を金型内に配した後、該金型内に基材となる熱可塑性樹脂を充填して、表皮シートと基材とを一体化させ、発泡層付きの多層成形品を製造する方法が知られている。発泡層付きの表皮材を用いた多層成形品は、触った時に柔らかく感じるために触感が良く、例えば、自動車のドア内壁やインパネ等といった内装部品等に用いるのに好適であり、近年その需要は増加の一途をたどっている。
【0003】
しかし、発泡層付き表皮シートを用いる前記の成形方法は、表皮シートを供給するロール交換の頻度が格段に多く、表皮シートの保管に大きなスペースを必要とするという問題を有しており、また表皮シートの残材がリサイクルが困難であるという問題を有していた。
この問題を解決するために、例えば特許文献1に開示される成形方法がある。前記特許文献1に開示される技術は、型開された可動金型と固定金型の間に発泡層を有しない表皮シートを配して、型内で表皮シートに発泡層を形成する技術である。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−113561号公報
【0005】
前記特許文献1に開示される成形方法は、型開きされた可動金型と固定金型の間に発泡層を有しない表皮シートを配して型閉じ動作を行ない、該両金型を予め設定された第一型開量に保持した状態で、前記固定金型と表皮シートとで形成される金型空間内に第一層充填物となる第一層発泡剤入り溶融樹脂を射出充填する。そして、射出充填直後に前記両金型を相対的に離間させ予め設定された第二型開量に保持することにより、前記第一層発泡剤入り溶融樹脂中の発泡剤による気泡の発生・膨張を行なわせながら第一層充填物を形成する。その後、前記両金型を相対的に離間させ予め設定された第三型開量に保持した状態で、前記固定金型と第一層充填物とで形成される金型空間内に第二層充填物となる第二層コアー材溶融樹脂を射出充填し、前記両金型に所定の型締力を負荷させて第二層充填物を形成すると同時に、表皮シート、第一層充填物、第二層充填物の順に積層融着一体化させる方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した特許文献1に開示される成形方法は、固定金型と表皮シートとで形成される空間に発泡層を形成した後、第ニ充填物を型内に射出成形するために、前記発泡層が第ニ充填物によって押しつぶされて発泡層の厚みが薄くなり、クッション性を損なうという問題を生じる。
【0007】
そのため、前記成形方法は、触感を向上させるために型内で形成する発泡層を、予め第ニ充填物により押しつぶされることを見越して厚めに形成する必要がある。しかし、発泡層の厚みを増加させるためには第一層発泡剤入り溶融樹脂を多く使用する必要があり不経済であるとともに、発泡工程に要する時間が長くなって成形時間が長くなると問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ソフトで触感の多層成形品を効率的に得ることができる多層成形品の製造方法に関するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明による多層成形品の製造方法は、
(1) 第1の射出装置により金型のキャビティ空間に第1樹脂を充填して基材を成形する第1の工程と、前記基材を成形した後に該キャビティ空間の容積を拡大することにより空隙を生じさせる第2の工程と、第2の射出装置により該空隙に発泡性を有した第2樹脂を充填して該キャビティ空間内で発泡させる第3の工程とを備え、金型内において基材にクッション性を有する発泡層を積層して成形した。
【0010】
(2) 上記(1)記載の多層成形品の製造方法において、前記金型は、前記キャビティ空間の周りを囲むように形成したシェアエッジ構造の嵌合部で嵌め合わされる固定型と可動型とを備えており、該可動型と該固定型とがシェアエッジ構造の嵌合部で嵌合したまま摺動することによってキャビティ空間の容積を拡大させる構造とした。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)記載の多層成形品の製造方法において、前記第4の工程において、前記キャビティ空間の容積を拡大させながら第2樹脂を発泡させた。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の多層成形品の製造方法において、前記第1樹脂は発泡性を有したものであって、前記第1の工程において、前記金型キャビティ空間を容積を拡大させながら第1樹脂を発泡させた。
【0013】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の多層成形品の製造方法において、前記第1樹脂及び第2樹脂の少なくとも一つを発泡させる際において、射出装置の射出動作に連動して、前記金型キャビティ空間を容積を拡大させた。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の好ましい1例を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態に係り、図1は本発明方法に使用する多層射出成形装置の全体構成図であり、図2は多層成形の際の各工程ステップのステップを説明するである。図3は型内被覆成形方法で作られた成形品の構成と特徴をを説明する図であ。図4は本発明の多段開型開制御とランプ制御を説明する図である。
【0015】
本実施形態に係わる多層成形方法に使用される多層成形装置100は、図1に示すように、金型10と型締装置20と多層射出装置30と制御装置60とを備えて構成される。多層射出装置30は第1の射出装置30Aと第2の射出装置30Bから構成され、金型10は固定盤1に取り付けられた固定型3と可動盤2に取り付けられた可動型4とからなる。
【0016】
型締装置20は、可動盤2と固定盤1と型締シリンダ22と、型締シリンダ22を制御して駆動する図示しない油圧源を備え、可動盤2は図示しないタイバーに案内されて、型締シリンダ22の駆動により可動型4とともに前後進できるよう構成されている。
【0017】
本実施形態においては、位置センサHが、可動盤2の位置を検出できるように配されており、可動盤2の位置を検出した該位置センサHの出力信号は、制御装置60に入力され、制御装置60は、該位置センサHの出力信号よって可動盤2の位置を検知し、型締シリンダ22を制御する図示しない油圧源に指令を与えて、可動盤2を所望の位置に正確に移動させることによって、可動盤2に取り付けられた可動型4を固定盤1に取付けられた固定型3に対して所望の位置に正確に移動させて金型10を自在に開閉し、型締できるよう構成されている。
【0018】
なお、本実施形態においては図1に示すような直圧の油圧式の型締装置20を使用したが、可動盤2を所望の位置に正確に、かつ、自在に移動させることができ、金型に十分な型締力を負荷することのできる型締装置であれば本実施形態に限らないことは勿論であり、電動式であっても良く、またタイプも直圧タイプ、に限らずトグルタイプ又は他のタイプの型締装置を本発明に用いても良い。
【0019】
図1に示す射出装置30A、および、射出装置30Bは、バレルとバレルに内装されスクリュフライトを有するスクリュと、該バレル内に第1樹脂を供給するホッパと、該スクリュを前後進させる射出用シリンダ(35A、35B)と、該スクリュを回転させるスクリュ回転用油圧モータ(37A、37B)と、前記射出用シリンダとスクリュ回転用油圧モータをそれぞれ制御して駆動する図示しない油圧源を備えており、前記バレル外周面には、図示しないヒータが取付けられている。
【0020】
前記射出装置30A、および、射出装置30Bは、スクリュ回転用油圧モータ(37A、37B)によってスクリュが回転することにより、ホッパからペレット形状の樹脂がバレル内に供給される構造となっており、該供給されたペレット形状の樹脂は、バレルに取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュの回転によって混練圧縮作用を受けることによって溶融し、スクリュ前方に送られる。
【0021】
また、前記射出装置30Aのバレル先端部にあるノズル部には回転式のバルブ31Aが配され、バルブ31Aが回転することによって、樹脂流路の開閉をおこなうことができ、スクリュの前方に送られた第1樹脂はバルブ31Aが開の状態となっている場合にのみ、射出用シリンダ35Aの駆動により前進するスクリュによって、バレルの先端部にあるノズルから押出す(射出と称することもある)ことができる。
【0022】
また、同様に射出装置30Bについてもバレル先端部にあるノズル部には回転式のバルブ31Bが配され、バルブ31Bが回転することによって、樹脂流路の開閉をおこなうことができ、スクリュの前方に送られた第2樹脂はバルブ31Bが開の状態となっている場合にのみ、射出用シリンダ35Bの駆動により前進するスクリュによって、バレルの先端部にあるノズルから押出すことができる。
【0023】
制御装置60は、型締装置20を制御する構成として型締制御部と型締条件設定器を有し、多層射出装置30を制御する構成として射出装置制御部と射出条件設定器を有している。また、本実施形態では、金型10の型開量Ltを制御するため、可動盤2の動きを位置センサHで検知し常時測定しており、測定結果は制御装置60に伝えられる構成となっている。
【0024】
また、本実施形態に用いる金型10は、金型キャビティ空間5(キャビティ空間5と称することもある)の周りを囲むようにシェアエッジ構造の嵌合部で嵌め合わされる固定型3と可動型4とからなり、該金型10を型締装置20に取り付け可動型4を固定型3に対し前後進させることによって、固定型3と可動型4を該嵌合部で嵌合したまま摺動することができるよう構成されている。そのため、可動型4を固定型3に対して後進させて、金型10を所望の寸法だけ型開きすると、固定型3と可動型4は嵌合部で嵌合したまま嵌合部の長さの距離だけは摺動することができる。これによって、金型10は、嵌合部の長さの距離だけキャビティ空間5の容積を変化させることができる。
【0025】
また、金型10はキャビティ空間5に第1樹脂を充填した後、可動型4を固定型3から離間させることにより金型10を所望の寸法だけ型開きすると、第1樹脂が固定型3のキャビティ面に付着して残る型構造であるので、第1樹脂と可動型4のキャビティ面との間に所望の距離を有した空隙(空間)が生じるようになっており、該空隙に第2樹脂を充填できるようゲートが配されている。また、成形後の成形品は、図示されていない製品突き出し装置によって固定型3より突き出して、取りだすことができる構造となっている。
【0026】
なお、本発明の実施形態においては、金型10を所望の寸法だけ型開きすると、第1樹脂と可動型4のキャビティ面との間に所望の距離を有した空隙が生じるような型構造になっているが、金型10の型開の際に、固定型3のキャビティ面との間に空隙が生じるような型構造になっていても良く、その場合は、固定型3のキャビティ面と第1樹脂との間に生じた空隙に、第2樹脂を充填できるようゲートが配されていれば良い。
【0027】
次に、本実施形態による多層成形の工程を、図1に基づいて以下に説明する。図2のステップ1(図2−1)で成形開始(サイクルスタート)を始めた多層成形工程は、図2−2の工程において、型締装置20の作動させて金型10を型閉する。
【0028】
型閉された金型10が、所定の圧力で型締力を負荷された後、切替バルブ31Aが閉から開に切替わる。そして、図2−3の工程に進み、射出シリンダ35Aを駆動して射出装置30Aを射出動作することによって、基材としての第1樹脂をキャビティ空間5内に射出充填する。
その後、第1射出装置30Aは、スクリュ位置切替えにより保圧工程に切り替わり、予め設定された時間の間、保圧工程を行った後、切替バルブ31Aは開から閉に切替わる。
【0029】
ここで、本実施形態に使用した第1樹脂はポリプロピレン(株式会社グランドポリマー社製/GP−5)であって、射出装置30Aのバレル設定温度180℃で可塑化溶融しており、金型設定温度は40℃である。
【0030】
なお、本実施の形態においては、第1樹脂として発泡性のないポリプロピレン樹脂を用い、射出開始時から後述する図2−5のステップに入る直前まで金型10を開かない工程(図2−4のステップを省略)とした。
しかし、第1樹脂の射出充填時においては、必要に応じて、図2−3のステップに参考として記載した射出圧縮、あるいは射出プレスの型締動作を並行して行っても良く、また、第1樹脂に発泡性の樹脂を使用した場合は、図2−4のステップに示したような発泡に合わせるようにして型を開く動作を行うなどしても良い。
【0031】
次ぎに、制御装置60には図示されていないタイマAが内蔵されており、タイマAは射出装置30Aの保圧完了時から計時開始を始めている。
図2−5の工程では、予め型締条件設定器に設定された設定時間とタイマAの経過時間T1が同じになったとき金型10の型締力の負荷を解除し、可動型10を反固定型3側に移動させて、金型10を完全に開いた状態とした。この際、第1樹脂により成形された一次成形品は固定型3側に付着して残る
なお、本実施形態におけるタイマAの設定時間T1は、短すぎると第1樹脂が内部まで固化しておらず成形品の形が壊れてしまうため、成形品が壊れることなく固定型3の金型キャビティ面に付着して残ることのできる最短の時間とすることが好ましい。本実施の形態においては、前記タイマAの経過時間T1が15秒になったときに冷却完了として金型10の型締力の負荷を解除した。
【0032】
金型10が開いた時点で、図2−6のステップに進み、図示しない表皮材取付け装置によって、可動型4の金型キャビティ面に表皮シートSを配置する。
ここで、本実施形態に用いた表皮シートSは、共和レザー社製の熱可塑製エラストマ樹脂で片面に側模様を賦与した厚さ0.4mmのシートである。なお、本発明に適用される表皮シートSは実施形態に記載のものに限らず、後述する第2樹脂と型内で損傷することなく接着する特性を有するシートであれば良い。
【0033】
表皮シートSが可動型4の金型キャビティ面にセットされた後、図2−7のステップに進み、可動盤2の位置を位置センサーHでモニターしながら、予め型締条件設定器に設定された可動盤4の位置まで正確に移動させる。前記予め型締条件設定器に設定された可動盤4の位置になったとき、金型10は型開量2.4mmとなって、第1樹脂による成形品と可動型4の金型キャビティ面に配置した表皮シートSとの間には所望の距離(本実施形態では約2.4mm)を有した空隙を生じる。この際には、固定型3と可動型4との間に形成されるキャビティ空間5は、樹脂が漏れ出さないように、キャビティ空間5の周りを囲むように形成したシェアエッジ構造の嵌合部にて、封止されている。
【0034】
図2−8の工程では、切替バルブ31Bが閉から開に切替わり射出装置30Bが射出動作することによって、第2樹脂を、第1樹脂と表皮シートSの間に生じた空隙に、射出充填する。
【0035】
なお、本実施形態において使用した第2樹脂は、サーモプラスチックエラストマであるミラストマM3800(三井化学株式会社製)に、無機系発泡剤であるポリスレンEE205(永和化成工業株式会社製)を重量比で10%添加したものを、射出装置31Aのバレル設定温度180℃で可塑化溶融したものである。ここで、前記無機系発泡剤のポリスレンは、化学発泡材入りのマスターバッチであって、グレードによって異なるが、マスターバッチ中に20〜40%程度の化学発泡剤を含んでいる。なお、本実施形態の発泡成形品は非架橋なのでマテリアルリサイクルが容易である。
なお、第2樹脂の射出充填時においては、必要に応じて、図2−8のステップに参考として記載した射出圧縮、あるいは射出プレスの型締動作を並行して行っても良い。
【0036】
第2樹脂の射出充填完了後、図2−9のステップに進み、切替バルブ31Bを開から閉に切替え、予め型締条件設定器に設定された型開量まで、さらに金型を開きながら、第2樹脂を発泡させた。本実施形態においては、第2樹脂を充填する前の型開量2.4mmから、さらに4.0mm金型を開いて合計6.4mmの型開量とした。
なお、型開量が6.4mmになるまで金型10を一挙に開いて、第2樹脂を発泡させても良いが、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開くことが好ましく、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開くことによって、均一な発泡層を形成することが可能である。
【0037】
本実施の形態においては、金型10を6.4mmまで一挙に開かず、わずかに金型10を開く微少型開を何回か繰り返して行う微少多段型開動作を行うことによって、発泡終了時に金型10が6.4mmまで開くように型開速度を調整することにより、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開いた。
【0038】
本実施の形態においては、前記微少多段型開動作として、金型10を2mm開いて2秒保持した後、さらに2mm開くことによって、合計4mmの型開をおこなった。
【0039】
なお、本実施の形態においては、微少型開を何回か繰り返して行う微少多段型開動作を行う多段型開制御を行ったが、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開く型開制御はこれに限らず、樹脂の発泡程度に合わせて金型を徐々に開く、ランプ制御等を行っても良い。図4に多段開制御とランプ制御の概念図を示す。第2樹脂の発泡が完了した後、金型10を大きく型開きし、成形品を金型から取出して1サイクルを終了する。前記の工程により得られた成形品の発泡層の発泡倍率は1.6倍であった。
【0040】
以上説明した工程を行うことにより、本発明は、第2樹脂を発泡させることで、図3の(ロ)に記載した成形品の特徴を備えて、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。
また、これらの多層成形品を一つの金型を使用して、型締装置の型閉動作を利用して行うことから、金型費が安価で済み、コストを抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、ミラストマM3800(三井化学株式会社製)に、無機系発泡剤であるポリスレンEE205(永和化成工業株式会社製)を重量比で10%添加したものを使用した例を説明したが、表1の組み合わせにおいて実験を行っており、表1に示す第2樹脂は、発泡倍率に差があり成形した成形品に多少触感に差がでるものの、それぞれの場合において、触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができた。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、前記ミラストマM3800、及びミラストマ5030Nは三井化学株式会社製であり、PER M142E、及びPER 352Eは株式会社トクヤマ社製であり、サントプレーン111−35は、エーイーエスジャパン株式会社製である。また、前記添加剤ポリスレンは永和化成株式会社製である。
【0044】
なお、第2樹脂として用いる樹脂は、サーモプラスチックエラストマ(熱可塑性エラストマ樹脂と称することもある)が好ましいが、これに限るものではなく、発泡してクッション性を有することのできる樹脂であれば良い。
なお、サーモプラスチックエラストマ樹脂は、常温では加硫ゴムの性質を示すが、加熱すると可塑化されて一般的なプラスチック成形装置で成形できる高分子材料であり、例えばプラスチックとエラストマのブレンドによって、あるいは、(ポリスチレン)−(ポリブタジエン)−(ポリスチレン)のようなブロックコポリマー等の形で存在しているものを示しており、本発明に用いる好ましいサーモプラスチックエラストマ樹脂は、ポリスチレン系のサーモプラスチックエラストマ樹脂に限らず、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリブタジエン系等、どのようなサーモプラスチックエラストマ樹脂を用いても良い。
第2樹脂として、前述したサーモプラスチックエラストマ樹脂を用いると、金型内での成形性が非常に良く、かつ、成形後の多層成形品は、触感に優れた柔らかい成形品となる。
【0045】
また、本発明による他の実施形態として、第1樹脂に表2に示すような発泡性の樹脂を使用して、成形をおこなった。
【0046】
【表2】
【0047】
それぞれの場合において、図3の(ハ)に記載した成形品の特徴を備えて、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができた。
【0048】
【発明の効果】
以上説明した工程を行うことにより、本発明は、金型内で発泡させた第2樹脂を押しつぶすことなく成形品を製造できるので、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。また、発泡層付きの表皮シートを用いる必要がないので、表皮シートの保管に大きなスペースを必要せず、表皮シートの残材もリサイクルしやすいといった優れた効果を有する。本発明は、これらの多層成形品を一つの金型を使用して、型締装置の型閉動作を利用して行うことから、金型費が安価で済むと共に、サイクルタイムを短縮して、コストを抑えることができる。
【0049】
本発明によって得られた多層成形品は、基材樹脂を発泡させることで、発泡層と発泡層が積層されて、成形後の多層成形品の触感が著しく向上し、軽量でありながら剛性が高く、断熱性の高い、高級感のある多層成形品となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明方法に使用する多層射出成形装置の全体構成図である。
【図2】本実施の形態に係わる多層成形の際の各工程ステップのステップを説明するである。
【図3】型内被覆成形方法で作られた成形品の構成と特徴を説明する図である。
【図4】本発明の多段開型開制御とランプ制御を説明する図である。本発明に係わる多層成形方法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 固定盤
2 可動盤
3 固定型
4 可動型
5 金型キャビティ
10 金型
20 型締装置
22 型締シリンダ
30 多層射出装置
30A 第1射出装置
30B 第2射出装置
31A 切替バルブ
31B 切替バルブ
35A 射出用シリンダ
35B 射出用シリンダ
100 多層射出成形装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、表皮シートに軟質材の樹脂と硬質材の樹脂を積層させてクッション性を有する多層成形品を製造する多層成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
表皮シートを表層に配した多層成形品の製造方法に関する従来技術として、予め表皮材の裏面に発泡層を積層した発泡層付きの表皮材を金型内に配した後、該金型内に基材となる熱可塑性樹脂を充填して、表皮シートと基材とを一体化させ、発泡層付きの多層成形品を製造する方法が知られている。発泡層付きの表皮材を用いた多層成形品は、触った時に柔らかく感じるために触感が良く、例えば、自動車のドア内壁やインパネ等といった内装部品等に用いるのに好適であり、近年その需要は増加の一途をたどっている。
【0003】
しかし、発泡層付き表皮シートを用いる前記の成形方法は、表皮シートを供給するロール交換の頻度が格段に多く、表皮シートの保管に大きなスペースを必要とするという問題を有しており、また表皮シートの残材がリサイクルが困難であるという問題を有していた。
この問題を解決するために、例えば特許文献1に開示される成形方法がある。前記特許文献1に開示される技術は、型開された可動金型と固定金型の間に発泡層を有しない表皮シートを配して、型内で表皮シートに発泡層を形成する技術である。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−113561号公報
【0005】
前記特許文献1に開示される成形方法は、型開きされた可動金型と固定金型の間に発泡層を有しない表皮シートを配して型閉じ動作を行ない、該両金型を予め設定された第一型開量に保持した状態で、前記固定金型と表皮シートとで形成される金型空間内に第一層充填物となる第一層発泡剤入り溶融樹脂を射出充填する。そして、射出充填直後に前記両金型を相対的に離間させ予め設定された第二型開量に保持することにより、前記第一層発泡剤入り溶融樹脂中の発泡剤による気泡の発生・膨張を行なわせながら第一層充填物を形成する。その後、前記両金型を相対的に離間させ予め設定された第三型開量に保持した状態で、前記固定金型と第一層充填物とで形成される金型空間内に第二層充填物となる第二層コアー材溶融樹脂を射出充填し、前記両金型に所定の型締力を負荷させて第二層充填物を形成すると同時に、表皮シート、第一層充填物、第二層充填物の順に積層融着一体化させる方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した特許文献1に開示される成形方法は、固定金型と表皮シートとで形成される空間に発泡層を形成した後、第ニ充填物を型内に射出成形するために、前記発泡層が第ニ充填物によって押しつぶされて発泡層の厚みが薄くなり、クッション性を損なうという問題を生じる。
【0007】
そのため、前記成形方法は、触感を向上させるために型内で形成する発泡層を、予め第ニ充填物により押しつぶされることを見越して厚めに形成する必要がある。しかし、発泡層の厚みを増加させるためには第一層発泡剤入り溶融樹脂を多く使用する必要があり不経済であるとともに、発泡工程に要する時間が長くなって成形時間が長くなると問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ソフトで触感の多層成形品を効率的に得ることができる多層成形品の製造方法に関するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明による多層成形品の製造方法は、
(1) 第1の射出装置により金型のキャビティ空間に第1樹脂を充填して基材を成形する第1の工程と、前記基材を成形した後に該キャビティ空間の容積を拡大することにより空隙を生じさせる第2の工程と、第2の射出装置により該空隙に発泡性を有した第2樹脂を充填して該キャビティ空間内で発泡させる第3の工程とを備え、金型内において基材にクッション性を有する発泡層を積層して成形した。
【0010】
(2) 上記(1)記載の多層成形品の製造方法において、前記金型は、前記キャビティ空間の周りを囲むように形成したシェアエッジ構造の嵌合部で嵌め合わされる固定型と可動型とを備えており、該可動型と該固定型とがシェアエッジ構造の嵌合部で嵌合したまま摺動することによってキャビティ空間の容積を拡大させる構造とした。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)記載の多層成形品の製造方法において、前記第4の工程において、前記キャビティ空間の容積を拡大させながら第2樹脂を発泡させた。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の多層成形品の製造方法において、前記第1樹脂は発泡性を有したものであって、前記第1の工程において、前記金型キャビティ空間を容積を拡大させながら第1樹脂を発泡させた。
【0013】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の多層成形品の製造方法において、前記第1樹脂及び第2樹脂の少なくとも一つを発泡させる際において、射出装置の射出動作に連動して、前記金型キャビティ空間を容積を拡大させた。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の好ましい1例を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態に係り、図1は本発明方法に使用する多層射出成形装置の全体構成図であり、図2は多層成形の際の各工程ステップのステップを説明するである。図3は型内被覆成形方法で作られた成形品の構成と特徴をを説明する図であ。図4は本発明の多段開型開制御とランプ制御を説明する図である。
【0015】
本実施形態に係わる多層成形方法に使用される多層成形装置100は、図1に示すように、金型10と型締装置20と多層射出装置30と制御装置60とを備えて構成される。多層射出装置30は第1の射出装置30Aと第2の射出装置30Bから構成され、金型10は固定盤1に取り付けられた固定型3と可動盤2に取り付けられた可動型4とからなる。
【0016】
型締装置20は、可動盤2と固定盤1と型締シリンダ22と、型締シリンダ22を制御して駆動する図示しない油圧源を備え、可動盤2は図示しないタイバーに案内されて、型締シリンダ22の駆動により可動型4とともに前後進できるよう構成されている。
【0017】
本実施形態においては、位置センサHが、可動盤2の位置を検出できるように配されており、可動盤2の位置を検出した該位置センサHの出力信号は、制御装置60に入力され、制御装置60は、該位置センサHの出力信号よって可動盤2の位置を検知し、型締シリンダ22を制御する図示しない油圧源に指令を与えて、可動盤2を所望の位置に正確に移動させることによって、可動盤2に取り付けられた可動型4を固定盤1に取付けられた固定型3に対して所望の位置に正確に移動させて金型10を自在に開閉し、型締できるよう構成されている。
【0018】
なお、本実施形態においては図1に示すような直圧の油圧式の型締装置20を使用したが、可動盤2を所望の位置に正確に、かつ、自在に移動させることができ、金型に十分な型締力を負荷することのできる型締装置であれば本実施形態に限らないことは勿論であり、電動式であっても良く、またタイプも直圧タイプ、に限らずトグルタイプ又は他のタイプの型締装置を本発明に用いても良い。
【0019】
図1に示す射出装置30A、および、射出装置30Bは、バレルとバレルに内装されスクリュフライトを有するスクリュと、該バレル内に第1樹脂を供給するホッパと、該スクリュを前後進させる射出用シリンダ(35A、35B)と、該スクリュを回転させるスクリュ回転用油圧モータ(37A、37B)と、前記射出用シリンダとスクリュ回転用油圧モータをそれぞれ制御して駆動する図示しない油圧源を備えており、前記バレル外周面には、図示しないヒータが取付けられている。
【0020】
前記射出装置30A、および、射出装置30Bは、スクリュ回転用油圧モータ(37A、37B)によってスクリュが回転することにより、ホッパからペレット形状の樹脂がバレル内に供給される構造となっており、該供給されたペレット形状の樹脂は、バレルに取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュの回転によって混練圧縮作用を受けることによって溶融し、スクリュ前方に送られる。
【0021】
また、前記射出装置30Aのバレル先端部にあるノズル部には回転式のバルブ31Aが配され、バルブ31Aが回転することによって、樹脂流路の開閉をおこなうことができ、スクリュの前方に送られた第1樹脂はバルブ31Aが開の状態となっている場合にのみ、射出用シリンダ35Aの駆動により前進するスクリュによって、バレルの先端部にあるノズルから押出す(射出と称することもある)ことができる。
【0022】
また、同様に射出装置30Bについてもバレル先端部にあるノズル部には回転式のバルブ31Bが配され、バルブ31Bが回転することによって、樹脂流路の開閉をおこなうことができ、スクリュの前方に送られた第2樹脂はバルブ31Bが開の状態となっている場合にのみ、射出用シリンダ35Bの駆動により前進するスクリュによって、バレルの先端部にあるノズルから押出すことができる。
【0023】
制御装置60は、型締装置20を制御する構成として型締制御部と型締条件設定器を有し、多層射出装置30を制御する構成として射出装置制御部と射出条件設定器を有している。また、本実施形態では、金型10の型開量Ltを制御するため、可動盤2の動きを位置センサHで検知し常時測定しており、測定結果は制御装置60に伝えられる構成となっている。
【0024】
また、本実施形態に用いる金型10は、金型キャビティ空間5(キャビティ空間5と称することもある)の周りを囲むようにシェアエッジ構造の嵌合部で嵌め合わされる固定型3と可動型4とからなり、該金型10を型締装置20に取り付け可動型4を固定型3に対し前後進させることによって、固定型3と可動型4を該嵌合部で嵌合したまま摺動することができるよう構成されている。そのため、可動型4を固定型3に対して後進させて、金型10を所望の寸法だけ型開きすると、固定型3と可動型4は嵌合部で嵌合したまま嵌合部の長さの距離だけは摺動することができる。これによって、金型10は、嵌合部の長さの距離だけキャビティ空間5の容積を変化させることができる。
【0025】
また、金型10はキャビティ空間5に第1樹脂を充填した後、可動型4を固定型3から離間させることにより金型10を所望の寸法だけ型開きすると、第1樹脂が固定型3のキャビティ面に付着して残る型構造であるので、第1樹脂と可動型4のキャビティ面との間に所望の距離を有した空隙(空間)が生じるようになっており、該空隙に第2樹脂を充填できるようゲートが配されている。また、成形後の成形品は、図示されていない製品突き出し装置によって固定型3より突き出して、取りだすことができる構造となっている。
【0026】
なお、本発明の実施形態においては、金型10を所望の寸法だけ型開きすると、第1樹脂と可動型4のキャビティ面との間に所望の距離を有した空隙が生じるような型構造になっているが、金型10の型開の際に、固定型3のキャビティ面との間に空隙が生じるような型構造になっていても良く、その場合は、固定型3のキャビティ面と第1樹脂との間に生じた空隙に、第2樹脂を充填できるようゲートが配されていれば良い。
【0027】
次に、本実施形態による多層成形の工程を、図1に基づいて以下に説明する。図2のステップ1(図2−1)で成形開始(サイクルスタート)を始めた多層成形工程は、図2−2の工程において、型締装置20の作動させて金型10を型閉する。
【0028】
型閉された金型10が、所定の圧力で型締力を負荷された後、切替バルブ31Aが閉から開に切替わる。そして、図2−3の工程に進み、射出シリンダ35Aを駆動して射出装置30Aを射出動作することによって、基材としての第1樹脂をキャビティ空間5内に射出充填する。
その後、第1射出装置30Aは、スクリュ位置切替えにより保圧工程に切り替わり、予め設定された時間の間、保圧工程を行った後、切替バルブ31Aは開から閉に切替わる。
【0029】
ここで、本実施形態に使用した第1樹脂はポリプロピレン(株式会社グランドポリマー社製/GP−5)であって、射出装置30Aのバレル設定温度180℃で可塑化溶融しており、金型設定温度は40℃である。
【0030】
なお、本実施の形態においては、第1樹脂として発泡性のないポリプロピレン樹脂を用い、射出開始時から後述する図2−5のステップに入る直前まで金型10を開かない工程(図2−4のステップを省略)とした。
しかし、第1樹脂の射出充填時においては、必要に応じて、図2−3のステップに参考として記載した射出圧縮、あるいは射出プレスの型締動作を並行して行っても良く、また、第1樹脂に発泡性の樹脂を使用した場合は、図2−4のステップに示したような発泡に合わせるようにして型を開く動作を行うなどしても良い。
【0031】
次ぎに、制御装置60には図示されていないタイマAが内蔵されており、タイマAは射出装置30Aの保圧完了時から計時開始を始めている。
図2−5の工程では、予め型締条件設定器に設定された設定時間とタイマAの経過時間T1が同じになったとき金型10の型締力の負荷を解除し、可動型10を反固定型3側に移動させて、金型10を完全に開いた状態とした。この際、第1樹脂により成形された一次成形品は固定型3側に付着して残る
なお、本実施形態におけるタイマAの設定時間T1は、短すぎると第1樹脂が内部まで固化しておらず成形品の形が壊れてしまうため、成形品が壊れることなく固定型3の金型キャビティ面に付着して残ることのできる最短の時間とすることが好ましい。本実施の形態においては、前記タイマAの経過時間T1が15秒になったときに冷却完了として金型10の型締力の負荷を解除した。
【0032】
金型10が開いた時点で、図2−6のステップに進み、図示しない表皮材取付け装置によって、可動型4の金型キャビティ面に表皮シートSを配置する。
ここで、本実施形態に用いた表皮シートSは、共和レザー社製の熱可塑製エラストマ樹脂で片面に側模様を賦与した厚さ0.4mmのシートである。なお、本発明に適用される表皮シートSは実施形態に記載のものに限らず、後述する第2樹脂と型内で損傷することなく接着する特性を有するシートであれば良い。
【0033】
表皮シートSが可動型4の金型キャビティ面にセットされた後、図2−7のステップに進み、可動盤2の位置を位置センサーHでモニターしながら、予め型締条件設定器に設定された可動盤4の位置まで正確に移動させる。前記予め型締条件設定器に設定された可動盤4の位置になったとき、金型10は型開量2.4mmとなって、第1樹脂による成形品と可動型4の金型キャビティ面に配置した表皮シートSとの間には所望の距離(本実施形態では約2.4mm)を有した空隙を生じる。この際には、固定型3と可動型4との間に形成されるキャビティ空間5は、樹脂が漏れ出さないように、キャビティ空間5の周りを囲むように形成したシェアエッジ構造の嵌合部にて、封止されている。
【0034】
図2−8の工程では、切替バルブ31Bが閉から開に切替わり射出装置30Bが射出動作することによって、第2樹脂を、第1樹脂と表皮シートSの間に生じた空隙に、射出充填する。
【0035】
なお、本実施形態において使用した第2樹脂は、サーモプラスチックエラストマであるミラストマM3800(三井化学株式会社製)に、無機系発泡剤であるポリスレンEE205(永和化成工業株式会社製)を重量比で10%添加したものを、射出装置31Aのバレル設定温度180℃で可塑化溶融したものである。ここで、前記無機系発泡剤のポリスレンは、化学発泡材入りのマスターバッチであって、グレードによって異なるが、マスターバッチ中に20〜40%程度の化学発泡剤を含んでいる。なお、本実施形態の発泡成形品は非架橋なのでマテリアルリサイクルが容易である。
なお、第2樹脂の射出充填時においては、必要に応じて、図2−8のステップに参考として記載した射出圧縮、あるいは射出プレスの型締動作を並行して行っても良い。
【0036】
第2樹脂の射出充填完了後、図2−9のステップに進み、切替バルブ31Bを開から閉に切替え、予め型締条件設定器に設定された型開量まで、さらに金型を開きながら、第2樹脂を発泡させた。本実施形態においては、第2樹脂を充填する前の型開量2.4mmから、さらに4.0mm金型を開いて合計6.4mmの型開量とした。
なお、型開量が6.4mmになるまで金型10を一挙に開いて、第2樹脂を発泡させても良いが、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開くことが好ましく、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開くことによって、均一な発泡層を形成することが可能である。
【0037】
本実施の形態においては、金型10を6.4mmまで一挙に開かず、わずかに金型10を開く微少型開を何回か繰り返して行う微少多段型開動作を行うことによって、発泡終了時に金型10が6.4mmまで開くように型開速度を調整することにより、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開いた。
【0038】
本実施の形態においては、前記微少多段型開動作として、金型10を2mm開いて2秒保持した後、さらに2mm開くことによって、合計4mmの型開をおこなった。
【0039】
なお、本実施の形態においては、微少型開を何回か繰り返して行う微少多段型開動作を行う多段型開制御を行ったが、第2樹脂の発泡の程度に合わせて徐々に金型を開く型開制御はこれに限らず、樹脂の発泡程度に合わせて金型を徐々に開く、ランプ制御等を行っても良い。図4に多段開制御とランプ制御の概念図を示す。第2樹脂の発泡が完了した後、金型10を大きく型開きし、成形品を金型から取出して1サイクルを終了する。前記の工程により得られた成形品の発泡層の発泡倍率は1.6倍であった。
【0040】
以上説明した工程を行うことにより、本発明は、第2樹脂を発泡させることで、図3の(ロ)に記載した成形品の特徴を備えて、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。
また、これらの多層成形品を一つの金型を使用して、型締装置の型閉動作を利用して行うことから、金型費が安価で済み、コストを抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、ミラストマM3800(三井化学株式会社製)に、無機系発泡剤であるポリスレンEE205(永和化成工業株式会社製)を重量比で10%添加したものを使用した例を説明したが、表1の組み合わせにおいて実験を行っており、表1に示す第2樹脂は、発泡倍率に差があり成形した成形品に多少触感に差がでるものの、それぞれの場合において、触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができた。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、前記ミラストマM3800、及びミラストマ5030Nは三井化学株式会社製であり、PER M142E、及びPER 352Eは株式会社トクヤマ社製であり、サントプレーン111−35は、エーイーエスジャパン株式会社製である。また、前記添加剤ポリスレンは永和化成株式会社製である。
【0044】
なお、第2樹脂として用いる樹脂は、サーモプラスチックエラストマ(熱可塑性エラストマ樹脂と称することもある)が好ましいが、これに限るものではなく、発泡してクッション性を有することのできる樹脂であれば良い。
なお、サーモプラスチックエラストマ樹脂は、常温では加硫ゴムの性質を示すが、加熱すると可塑化されて一般的なプラスチック成形装置で成形できる高分子材料であり、例えばプラスチックとエラストマのブレンドによって、あるいは、(ポリスチレン)−(ポリブタジエン)−(ポリスチレン)のようなブロックコポリマー等の形で存在しているものを示しており、本発明に用いる好ましいサーモプラスチックエラストマ樹脂は、ポリスチレン系のサーモプラスチックエラストマ樹脂に限らず、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリブタジエン系等、どのようなサーモプラスチックエラストマ樹脂を用いても良い。
第2樹脂として、前述したサーモプラスチックエラストマ樹脂を用いると、金型内での成形性が非常に良く、かつ、成形後の多層成形品は、触感に優れた柔らかい成形品となる。
【0045】
また、本発明による他の実施形態として、第1樹脂に表2に示すような発泡性の樹脂を使用して、成形をおこなった。
【0046】
【表2】
【0047】
それぞれの場合において、図3の(ハ)に記載した成形品の特徴を備えて、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができた。
【0048】
【発明の効果】
以上説明した工程を行うことにより、本発明は、金型内で発泡させた第2樹脂を押しつぶすことなく成形品を製造できるので、軽量で触感に優れた柔らかい多層成形品を得ることができる。また、発泡層付きの表皮シートを用いる必要がないので、表皮シートの保管に大きなスペースを必要せず、表皮シートの残材もリサイクルしやすいといった優れた効果を有する。本発明は、これらの多層成形品を一つの金型を使用して、型締装置の型閉動作を利用して行うことから、金型費が安価で済むと共に、サイクルタイムを短縮して、コストを抑えることができる。
【0049】
本発明によって得られた多層成形品は、基材樹脂を発泡させることで、発泡層と発泡層が積層されて、成形後の多層成形品の触感が著しく向上し、軽量でありながら剛性が高く、断熱性の高い、高級感のある多層成形品となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明方法に使用する多層射出成形装置の全体構成図である。
【図2】本実施の形態に係わる多層成形の際の各工程ステップのステップを説明するである。
【図3】型内被覆成形方法で作られた成形品の構成と特徴を説明する図である。
【図4】本発明の多段開型開制御とランプ制御を説明する図である。本発明に係わる多層成形方法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 固定盤
2 可動盤
3 固定型
4 可動型
5 金型キャビティ
10 金型
20 型締装置
22 型締シリンダ
30 多層射出装置
30A 第1射出装置
30B 第2射出装置
31A 切替バルブ
31B 切替バルブ
35A 射出用シリンダ
35B 射出用シリンダ
100 多層射出成形装置
Claims (5)
- 第1の射出装置により金型のキャビティ空間に第1樹脂を充填して基材を成形する第1の工程と、前記基材を成形した後の金型を開いて表皮シートを金型内に装填する第2の工程と、該基材と該表皮シートの間に第2の樹脂を充填する空隙を形成するように該金型を型閉する第3の工程と、第2の射出装置により該空隙に発泡性を有した第2樹脂を充填して該キャビティ空間内で発泡させる第4の工程とを備え、金型内において基材にクッション性を有する発泡層を積層して成形する多層成形品の製造方法。
- 前記金型は、前記キャビティ空間の周りを囲むように形成したシェアエッジ構造の嵌合部で嵌め合わされる固定型と可動型とを備えており、該可動型と該固定型とがシェアエッジ構造の嵌合部で嵌合したまま摺動することによってキャビティ空間の容積を拡大させる構造とした請求項1記載の多層成形品の製造方法。
- 前記第4の工程において、前記キャビティ空間の容積を拡大させながら第2樹脂を発泡させる請求項1、又は請求項2記載の多層成形品の製造方法。
- 前記第1樹脂は発泡性を有したものであって、前記第1の工程において、前記金型キャビティ空間を容積を拡大させながら第1樹脂を発泡させる請求項1〜請求項3までのいずれか1項に記載の多層成形品の製造方法。
- 前記第1樹脂及び第2樹脂の少なくとも一つを発泡させる際において、射出装置の射出動作に連動して、前記金型キャビティ空間の容積を拡大させることを特徴とする請求項1〜請求項4までのいずれか1項に記載の多層成形品の製造方法。
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