JP3811439B2 - 平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイ - Google Patents
平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイ Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネル用ディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイスペーサ、及び、平面パネルディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
電界放出型ディスプレイ(FED)は、従来の陰極線管(CRT)を応用した自発光型の平面パネルディスプレイとして知られている。FEDは多くの陰極(電界放出素子)を二次元状に配列してなる陰極構造体を備えており、減圧環境下において陰極から放出される電子を、各蛍光画素領域に衝突させて発光画像を形成している。蛍光画素領域は燐層を含んでなる。
【0003】
この平面パネルディスプレイは、陰極構造体を有する背板を備えている。このような平面パネルディスプレイの一例は特許文献1に記載されている。このディスプレイの背板はガラス板上に陰極構造体を堆積することによって形成される。
【0004】
この平面パネルディスプレイは燐層が堆積されたガラス面板を備えている。ガラスまたは燐層の上には電界印加用の導電性層が堆積される。
【0005】
面板は背板から0.1mm〜1mm乃至2mm離間されている。面板と背板との間には壁体からなる短冊状スペーサが垂直に介在している。このスペーサは正確な位置に配置されることが望ましいが、ディスプレイ内を減圧すると、大気圧によってスペーサには大きな荷重が加えられる。
【0006】
この荷重は10インチのディスプレイでは1トンにも達するといわれている。この荷重によって、スペーサが不整列状態になったり傾斜したりすると、放出された電子が偏向し、ディスプレイ上に目視可能な欠陥が生じる。スペーサは面板及び背板間の非常に大きな圧縮力に耐える必要があり、スペーサ毎の高さは等しく、且つ、平坦である必要もある。また、スペーサの熱膨張率は面板としてのガラス板に近く、且つ、温度依存性も小さくなければならないとされている。
【0007】
また、面板と背板との間には例えば1kV以上の高電圧が印加されるので、スペーサには高電圧に対する耐性と2次放射特性が要求される。従来のスペーサとしては、アルミナからなる絶縁材料を導電材料でコーティングしてなるものや(例えば、特許文献2〜3参照)、酸化物微粒子等により形成された凹凸膜を有するもの(例えば、特許文献4参照)や、遷移金属酸化物が分散されたセラミックよりなるもの(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【特許文献1】
米国特許第5541473号明細書
【特許文献2】
特表2002−508110号公報
【特許文献3】
特表2001−508926号公報
【特許文献4】
特開2001−68042号公報
【特許文献5】
特表平11−500856号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスペーサを用いた場合には画像の歪み等が発生する場合があった。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、画像の歪み等の発生を低減できる平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、その製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材は、SiC及びB4Cの少なくとも一方と、Al2O3と、TiCと、を含む焼結体であることを特徴とする。
【0010】
本発明の平面パネルディスプレイ用スペーサ基材によれば、TiCとAl2O3とを含む複合セラミクスであるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えると共に所定の導電性を示して帯電しにくくなり、平面パネルディスプレイのスペーサとした場合に画像の歪み等を低減することができる。
【0011】
さらに、非酸化物としてTiCに加えてさらにSiC、B4Cを含むので、Al2O3の組成が変動した場合の焼結体の比抵抗の変動が、非酸化物としてTiCのみを含むAl2O3複合セラミクス焼結体の比抵抗の変動に比して小さくなる。このため、比抵抗のばらつきの小さい平面パネルディスプレイスペーサを得ることが容易となり、スペーサにおける帯電がさらに好適に低減されて、平面パネルディスプレイにおける画像の歪み等をより低減することができる。
【0012】
ここで、Al2O3の含有量が80〜90重量%、TiCの含有量が10〜18重量%であり、さらにSiC及びB4Cを合わせた含有量が7重量%以下であることが好ましい。ここで、焼結体の全含有量の合計を100重量%とする。これによれば、熱膨張係数、比抵抗等に優れたスペーサ基材が得られる。
【0013】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法は、SiC粉末及びB4C粉末の少なくとも一方とAl2O3粉末とTiC粉末とを混合して混合物を得る工程と、混合物を焼成して焼結体を得る工程と、を含むことを特徴とする。これによれば、上述のスペーサ基材を好適に得ることができる。
【0014】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサは、SiC及びB4Cの少なくとも一方と、Al2O3と、TiCと、を含む焼結体から形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る平面パネルディスプレイは、陰極構造体を有する背板と、蛍光画素領域を有する面板と、背板及び面板間に介在された上記の平面パネルディスプレイ用スペーサと、を備えることを特徴とする。これらによれば、画像の歪みの少ない好適な平面パネルディスプレイを実現できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、本実施形態に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材及びその製造方法について説明する。本実施形態においては、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材として、SiC(炭化珪素)及びB4C(炭化硼素)の少なくとも一方を含むと共に、Al2O3(アルミナ)及びTiC(炭化チタン)を含有する複合セラミクス焼結体を用いる。
【0018】
このようなスペーサ基材は、SiC及びB4Cの少なくとも一方の粉末と、Al2O3粉末と、TiC粉末とを混合し、成形し、成形体を所定の温度で焼成し、放冷することにより得られる。
【0019】
ここで、スペーサ基材は、Al2O3を80〜90重量%含むことが好ましい。Al2O3が90重量%を超えると絶縁性が高くなりすぎる傾向がある。また、Al2O3が80重量%を下回ると絶縁性が低くなりすぎる傾向がある。
【0020】
また、スペーサ基材は、TiCを10〜18重量%含むことが好ましい。TiCが10重量%を下回ると導電性等の添加効果が小さくまたAl2O3も粒成長しやすくなり、また、TiCが18重量%を超えると、加工性が急激に悪化する傾向がある。
【0021】
さらに、SiCやB4Cは、これらを合わせて7重量%以下となるようにすることが好ましい。7重量%を超えるとこれらSiCやB4Cが焼結体内で偏在しやすくなる傾向がある。
【0022】
原料のAl2O3粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜1μm、特に0.4〜0.6μmであることが好ましい。またTiC粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜3μm、特に0.5〜1.5μmであることが好ましい。また、SiCやB4C粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜3μm、特に0.5〜1μmであることが好ましい。
【0023】
また、焼成は、非酸化性雰囲気中においてホットプレス法を適用できる。焼結温度としては、1500〜1800℃、特に1650〜1750℃が好ましい。1500℃より低いと緻密な焼結体が得られにくく、1800℃より高いとTiC等の非酸化物の昇華が増し、表面層と内部とが異構造になる傾向がある。また、プレス圧力は約20〜30MPa(約200〜300kgf/cm2)程度が好ましい。焼結時間は1〜3時間程度が好ましい。
【0024】
非酸化性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや、水素、一酸化炭素、各種炭化水素等、あるいはこれらの混合ガス、真空等種々の雰囲気が利用できる。なお、非酸化性雰囲気とするのは、TiC、SiC、B4Cの酸化を防ぐためである。
【0025】
さらに、焼成工程では、ホットプレス法に代えて、成形体を非酸化雰囲気中(例えば、1200℃まで真空中、その後はアルゴン雰囲気中が好ましい)で予備焼結し、次いでHIP炉内でこの予備焼結体を焼結する熱間等方等圧加圧法(HIP)法を用いてもよい。予備焼結の温度は1400〜1650℃、時間は1〜3時間とすることが好ましい。また、HIPの温度は1300〜1500℃、時間は1〜5時間、圧力は約100MPa〜150MPa(約1000〜1500kgf/cm2)で、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。この場合、室温でArガス等を約30〜40MPa(約300〜400kgf/cm2)まで加圧し、その後、上記のような加熱により加圧する。
【0026】
なお、焼成・放冷後には、例えば、ダイヤモンド砥石等によって焼結体の加工を行うことができ、例えば、直径6インチ、厚み2mm程度の円板状の基板とすることが好ましい。
【0027】
このようにして得られるスペーサ基材は、TiCとAl2O3とを含む複合セラミクスであるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えることができる。このため、平面パネルディスプレイのスペーサとして用いると、スペーサが不整列状態になったり傾斜したりしにくくなり、画像の歪みが低減される。
【0028】
また、所定の導電性を示して電荷がたまることが抑制されるので、スペーサとして用いた場合に、帯電による電子軌道の偏向が抑制され、さらに画像の歪みが低減される。
【0029】
加えて、非酸化物としてTiCに加えてさらにSiC、B4Cを含むので、酸化物であるAl2O3の組成が変動した場合の比抵抗の変動が、非酸化物としてTiCのみを含むAl2O3複合セラミクスの比抵抗の変動に比して小さくなる。このため、比抵抗のばらつきの小さいスペーサを容易に得ることができる。そして、このように比抵抗のばらつきが小さいスペーサを平面パネルディスプレイに採用すると、各スペーサに対して所望の電位分布を形成することができ、電荷のたまりをより効率よく抑制することができて、画像の歪みをより低減できる。
【0030】
次に、図1のテーブルを参照しながら、本実施形態に係る複合セラミクス焼結体と、SiC及びTiCを含まないAl2O3−TiC複合セラミクス焼結体と、において、Al2O3の組成を微少に変動させた場合における比抵抗の変動について説明する。
【0031】
(実施例1)
まず、Al2O3粉末(平均粒径0.5μm、純度99.9%)、TiC粉末(平均粒径0.7μm、純度99%、炭素含有量19%以上でその1%以下は遊離黒鉛である)、SiC粉末(平均粒径0.5μm)をボールミル中で粉砕混合し混合組成物を得た。本実施例では、Al2O3の含有量が83重量%、TiCの含有量が13.6重量%、SiCの含有量が3.4重量%となるように混合組成物を調合した。
【0032】
続いて、この混合物を成形し、ホットプレス法によって真空雰囲気で1時間、焼結温度1500〜1800℃、プレス圧力約20〜30MPa(約200〜300kgf/cm2)で焼成し焼結体を得た。
【0033】
(実施例2〜5)
Al2O3、TiC、SiCの含有量を各々82.5重量%、14.0重量%、3.5重量%(実施例2)、各々82.0重量%、14.4重量%、3.6重量%(実施例3)、各々81.5重量%、14.8重量%、3.7重量%(実施例4)、各々80.0重量%、13.0重量%、7.0重量%(実施例5)とする以外は実施例1と同様にして実施例2〜5の焼結体を得た。
【0034】
(実施例6〜9)
SiCに代えてB4C粉末(平均粒径0.5μm)を採用し、実施例1と同様にして実施例5〜8の焼結体を得た。具体的には、Al2O3、TiC、B4Cの含有量を各々84.0重量%、13.6重量%、2.4重量%(実施例6)、各々83.5重量%、14.0重量%、2.5重量%(実施例7)、各々83.0重量%、14.4重量%、2.6重量%(実施例8)、各々82.5重量%、14.8重量%、2.7重量%(実施例9)とした。
【0035】
(実施例10)
Al2O3、TiC、SiCに加えて、さらに、B4Cを含むこと以外は実施例1と同様にして、実施例10の焼結体を得た。具体的には、Al2O3、TiC、SiC、B4Cの含有量を各々82.0重量%、14.6重量%、2.6重量%、0.8重量%とした。
【0036】
(比較例1〜7)
SiCまたはB4Cのいずれも含有しない焼結体として、SiCを添加しない以外は実施例1と同様にして比較例1〜7の焼結体を得た。具体的には、Al2O3、TiCの含有量を各々90.0重量%、10.0重量%(比較例1)、83.0重量%、17.0重量%(比較例2)、各々82.0重量%、18.0重量%(比較例3)、各々81.0重量%、19.0重量%(比較例4)、各々80.0重量%、20.0重量%(比較例5)、各々79.0重量%、21.0重量%(比較例6)、各々75.0重量%、25.0重量%(比較例7)とした。
【0037】
このようにして得られた焼結体の比抵抗値と熱膨張係数とを図1に示す。
【0038】
SiCやB4Cを添加しない焼結体(比較例1〜7)においては、例えば、比較例4と比較例5とを比べると明らかなように、Al2O3の組成が1重量%変動するだけで、比抵抗が1×106倍も変動してしまう。このため、例えば、比抵抗値を1×106〜1×1012Ωcmの間の所定の値に設定したい場合には、極めて精密にアルミナ組成を設定しなければならない。また、製造の際にアルミナの組成が変動すると、焼結体の比抵抗がばらつきやすく歩留まりが低下しやすい。このため、Al2O3−TiC系の複合材料で1×106〜1×1012Ωcm程度の比抵抗値のスペーサを作ることは困難であった。
【0039】
これに対して、SiCやB4Cを添加した焼結体(実施例1〜10)においては、例えば、実施例1と実施例4との比較や、実施例6と実施例9との比較により明らかなように、Al2O3の組成が1.5重量%変動しないと比抵抗が1×106倍変動せず、Al2O3の組成の変動による比抵抗の変動が大きく低減される。このため、SiCやB4Cの添加により、特に1×106〜1×1012Ωcm程度の比抵抗値のスペーサ基材やスペーサを高い歩留まりで容易に得ることができる。
【0040】
なお、SiCやB4Cの添加は、熱膨張係数にはほとんど影響を与えなかった。
【0041】
また、実施例1〜10の焼結体は、密度4.0〜4.5g/cm2、ビッカーズ強度1800〜2100(Hv20)、抗折強度600〜900MPa、ヤング率380〜420GPa、比抵抗1.0×1014〜1×10-3Ωcm、熱伝導率15〜35W/mKであって、強度等いずれの観点からも、平面パネルディスプレイのスペーサ基材として好ましいことが確認された。
【0042】
次に、上述のスペーサ基材から形成されるスペーサと、このスペーサが適用される平面パネルディスプレイであるFEDの概要について説明する。
【0043】
図2は平面パネルディスプレイ10の平面図、図3は平面パネルディスプレイ10のIII−III矢印断面図、図4は平面パネルディスプレイ面板側内部構造を示す平面パネルディスプレイ側面図である。
【0044】
ガラス製の面板101上には、ブラックマトリックス構造体102が形成されている。ブラックマトリックス構造体102は燐層からなる複数の蛍光画素領域を含んでいる。燐層は高エネルギー電子が衝突すると、光を放出して可視ディスプレイを形成する。特定の蛍光画素領域から発した光は、ブラックマトリックス構造を介して外部に出力される。ブラックマトリックスは、互いに隣接する蛍光画素領域からの光の混合を抑制するための格子状黒色構造体である。
【0045】
面板101上には、その表面に対して垂直に立設した壁体であるスペーサ103−119が取り付けられている。
【0046】
面板101上にはスペーサ103〜119(103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119)を介して背板201が設けられる(図3参照)。スペーサ103〜119は、面板101と背板201との間の間隔を均等に保持している。背板201の能動領域面は陰極構造体202を含んでいる。この陰極構造体202は電子を放出するための突起からなる陰極(電界(電子)放出素子)を複数有している。
【0047】
陰極構造体202の形成領域は背板201の面積よりも小さい。面板101の外周領域と背板201の外周領域との間にはガラスシール203が介在しており、中央部に密閉室を提供している。この密閉室内は電子が飛行可能な程度に減圧されている。また、この密閉室内には、陰極構造体202、ブラックマトリックス構造体102及びスペーサ103〜119が配置されることとなる。シール203は融解ガラスフリットによって形成される。
【0048】
なお、全てのスペーサ103〜119の構造は同一であるので、以下では、一つのスペーサ103に着目して説明を行う。
【0049】
スペーサ(平面パネルディスプレイ用スペーサ)103は、図4に示すように、その長手方向の両端に設けられた接着剤301,302によって面板101に固定されている。本例の接着剤301,302の材料はUV硬化性ポリイミド接着剤であるが、熱硬化性接着剤または無機接着剤を使用することができる。なお、接着剤301,302はブラックマトリックス構造体102の外側に配置される。
【0050】
次に、スペーサ103について詳説する。
【0051】
図5はスペーサ103の製造方法を説明するための説明図である。このスペーサの製造方法は、上述の陰極構造体(202)を有する背板(201)と蛍光画素領域(ブラックマトリックス構造体102)を有する面板(101)との間に介在する平面パネルディスプレイ用スペーサを製造する方法である。このスペーサ103は、例えば、以下の工程▲1▼〜▲7▼を順次実行することによって製造することができる。
▲1▼上述の複合セラミクス焼結体の基板(平面パネルディスプレイ用スペーサ基材)A103を用意する(図5(a))。
▲2▼次に、基板A103の両面に、膜厚が数nm〜1μm、材料がTi,Au,Cr,Pt等の金属からなる金属膜Mをスパッタリング法によって形成する(図5(b)。なお、この金属膜Mは分離後には金属膜mとして記載する。
▲3▼基板A103の平面形状が四角形となるように周囲を切断し、周辺部を除去する(図5(c))。
▲4▼基板A103の厚み(D)よりも小さい間隔(W)で基板を短冊状に切断し、これらの短冊体を分離し、しかる後、洗浄を行う(図5(d))。
▲5▼短冊状に切断されてなる短冊体の切断面を、全て短冊体の切断面に垂直な方向の寸法Wが300±50μm以内となるように同時に研磨する(図5(e))。
▲6▼スペーサ103の厚み方向及びスペーサ103の長手方向を含む平面に平行な端面上に金属膜eをパターニングして形成する(図5(f))。この形成には、まず、この端面を洗浄し、続いて、この端面上にスパッタリング法によってTi,Au,Cr,Pt等の金属膜を100nm堆積し、ドライエッチング用のマスクを金属膜上にパターニングした後、イオンミリングによって当該金属膜をエッチングし、金属膜eを形成する。なお、金属膜eの長手方向はスペーサ103の長手方向に一致する。
【0052】
また、厚み方向Dに関し、金属膜eのスペーサ103の一端部からの距離D1、金属膜eの寸法D2、金属膜eのスペーサ103の他端部からの距離D3は、製品公差及び誤差が±5μm以内となるように設定される。
▲7▼複数の短冊体の前記端面とは反対側の端面を同時に研磨し、その幅W1を50〜100μmから選択される値に設定する(図5(g))。この値が小さいほどスペーサ103は目立たないが、圧縮力に耐えにくくなる傾向があるため、本例では50〜100μmから選択して設定する。なお、上述の研磨とは、機械研磨及び/又は化学研磨を含むものとする。
【0053】
また、いずれの工程においても、その平坦度は少なくとも50μm以下に抑制される。
【0054】
このスペーサ103は、上述のように、SiC及びB4Cの少なくとも一方を含むと共にSiCを含むAl2O3の複合セラミクス焼結体から形成されており、高硬度であって圧縮力による変形に耐え、また、所定の比抵抗の導電性を示し電荷がたまりにくくされ、画像の歪みを抑制することができる。また、SiCやB4Cが添加されることにより、スペーサの比抵抗のばらつきが小さくなるので、さらに、画像のひずみ等の発生が抑制される。
【0055】
加えて、本来の厚みの製品公差が所定値X以内であるアルティック含有基板の厚み方向が、上述の圧縮力の方向と一致するように切断することで、圧縮力に抗する方向の寸法の製品公差を所定値X以内とすることができ、寸法変動に起因する背板及び面板間の電界強度の面内変動及び当該変動に基づく蛍光強度の面内変動を著しく抑制することができる。特に、所定値である厚みの製品公差Xが±20μm以内であれば、蛍光強度の面内変動を目視不可能な程度に抑制することができる。
【0056】
この場合、厚みの誤差も所定値X以内することができる。ここで、誤差とは、1つの対象物の厚みの平均値に対する変動量の最大値で規定するものとする。この場合においても、所定値である厚みの誤差Xが±20μm以内であれば、蛍光強度の面内変動を著しく抑制することができる。
【0057】
また、このスペーサ103は、厚み方向の両端面に金属膜mを有する。この金属膜mは、切断前に形成された金属膜Mの一部分である。この金属膜mは、背板及び面板との接触抵抗の面内不均一性等を低減させ、スペーサ全体としての抵抗率、導電率の設定に寄与する。
【0058】
上述のスペーサ103は直方体であるが、これは厚み方向及び長手方向を含む平面に平行な端面を有し、この端面上にパターニングされた金属膜eを有している。このパターンは内部電界分布を規定するものであるが、その基板厚み方向に沿った形成位置精度は、厚み方向の精度が高いため、元々の基板表面に形成した場合の形成位置精度よりも高くすることができる。
【0059】
なお、上述のスペーサは反射型のFEDにも適用することができる。また、上述のスペーサ基材は特性に大きな影響を与えない程度に他の材料を含んでいてもよい。
【0060】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、TiCとAl2O3とを含む複合セラミクスであるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えると共に所定の導電性を示して電荷がたまりにくくされる。さらに、非酸化物としてTiCに加えてさらにSiC、B4Cを含むので、Al2O3の組成が変動した場合の焼結体の比抵抗の変動が、非酸化物としてTiCのみを含むAl2O3複合セラミクス焼結体の比抵抗の変動に比して小さくなり、比抵抗のばらつきを小さくできる。
【0061】
このため、画像の歪み等の発生をより低減できる平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、その製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜10、比較例1〜7のスペーサ基材の組成及び特性を示す図である。
【図2】平面パネルディスプレイの平面図である。
【図3】平面パネルディスプレイのIII−III矢視断面図である。
【図4】平面パネルディスプレイ面板側の内部構造を示す平面パネルディスプレイ側面図である。
【図5】スペーサの製造方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…平面パネルディスプレイ、101…面板、102…ブラックマトリックス構造、102…ブラックマトリックス構造体、103…スペーサ(平面パネルディスプレイ用スペーサ)、201…背板、202…陰極構造体、203…ガラスシール、301,302…接着剤、A103…基板(平面パネルディスプレイ用スペーサ基材)、e…金属膜、M…金属膜、m…金属膜。
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、平面パネル用ディスプレイ用スペーサ基材の製造方法、平面パネルディスプレイスペーサ、及び、平面パネルディスプレイに関する。
【0002】
【従来の技術】
電界放出型ディスプレイ(FED)は、従来の陰極線管(CRT)を応用した自発光型の平面パネルディスプレイとして知られている。FEDは多くの陰極(電界放出素子)を二次元状に配列してなる陰極構造体を備えており、減圧環境下において陰極から放出される電子を、各蛍光画素領域に衝突させて発光画像を形成している。蛍光画素領域は燐層を含んでなる。
【0003】
この平面パネルディスプレイは、陰極構造体を有する背板を備えている。このような平面パネルディスプレイの一例は特許文献1に記載されている。このディスプレイの背板はガラス板上に陰極構造体を堆積することによって形成される。
【0004】
この平面パネルディスプレイは燐層が堆積されたガラス面板を備えている。ガラスまたは燐層の上には電界印加用の導電性層が堆積される。
【0005】
面板は背板から0.1mm〜1mm乃至2mm離間されている。面板と背板との間には壁体からなる短冊状スペーサが垂直に介在している。このスペーサは正確な位置に配置されることが望ましいが、ディスプレイ内を減圧すると、大気圧によってスペーサには大きな荷重が加えられる。
【0006】
この荷重は10インチのディスプレイでは1トンにも達するといわれている。この荷重によって、スペーサが不整列状態になったり傾斜したりすると、放出された電子が偏向し、ディスプレイ上に目視可能な欠陥が生じる。スペーサは面板及び背板間の非常に大きな圧縮力に耐える必要があり、スペーサ毎の高さは等しく、且つ、平坦である必要もある。また、スペーサの熱膨張率は面板としてのガラス板に近く、且つ、温度依存性も小さくなければならないとされている。
【0007】
また、面板と背板との間には例えば1kV以上の高電圧が印加されるので、スペーサには高電圧に対する耐性と2次放射特性が要求される。従来のスペーサとしては、アルミナからなる絶縁材料を導電材料でコーティングしてなるものや(例えば、特許文献2〜3参照)、酸化物微粒子等により形成された凹凸膜を有するもの(例えば、特許文献4参照)や、遷移金属酸化物が分散されたセラミックよりなるもの(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【特許文献1】
米国特許第5541473号明細書
【特許文献2】
特表2002−508110号公報
【特許文献3】
特表2001−508926号公報
【特許文献4】
特開2001−68042号公報
【特許文献5】
特表平11−500856号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスペーサを用いた場合には画像の歪み等が発生する場合があった。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、画像の歪み等の発生を低減できる平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、その製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材は、SiC及びB4Cの少なくとも一方と、Al2O3と、TiCと、を含む焼結体であることを特徴とする。
【0010】
本発明の平面パネルディスプレイ用スペーサ基材によれば、TiCとAl2O3とを含む複合セラミクスであるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えると共に所定の導電性を示して帯電しにくくなり、平面パネルディスプレイのスペーサとした場合に画像の歪み等を低減することができる。
【0011】
さらに、非酸化物としてTiCに加えてさらにSiC、B4Cを含むので、Al2O3の組成が変動した場合の焼結体の比抵抗の変動が、非酸化物としてTiCのみを含むAl2O3複合セラミクス焼結体の比抵抗の変動に比して小さくなる。このため、比抵抗のばらつきの小さい平面パネルディスプレイスペーサを得ることが容易となり、スペーサにおける帯電がさらに好適に低減されて、平面パネルディスプレイにおける画像の歪み等をより低減することができる。
【0012】
ここで、Al2O3の含有量が80〜90重量%、TiCの含有量が10〜18重量%であり、さらにSiC及びB4Cを合わせた含有量が7重量%以下であることが好ましい。ここで、焼結体の全含有量の合計を100重量%とする。これによれば、熱膨張係数、比抵抗等に優れたスペーサ基材が得られる。
【0013】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法は、SiC粉末及びB4C粉末の少なくとも一方とAl2O3粉末とTiC粉末とを混合して混合物を得る工程と、混合物を焼成して焼結体を得る工程と、を含むことを特徴とする。これによれば、上述のスペーサ基材を好適に得ることができる。
【0014】
本発明に係る平面パネルディスプレイ用スペーサは、SiC及びB4Cの少なくとも一方と、Al2O3と、TiCと、を含む焼結体から形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る平面パネルディスプレイは、陰極構造体を有する背板と、蛍光画素領域を有する面板と、背板及び面板間に介在された上記の平面パネルディスプレイ用スペーサと、を備えることを特徴とする。これらによれば、画像の歪みの少ない好適な平面パネルディスプレイを実現できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、本実施形態に係る平面パネルディスプレイ用スペーサ基材及びその製造方法について説明する。本実施形態においては、平面パネルディスプレイ用スペーサ基材として、SiC(炭化珪素)及びB4C(炭化硼素)の少なくとも一方を含むと共に、Al2O3(アルミナ)及びTiC(炭化チタン)を含有する複合セラミクス焼結体を用いる。
【0018】
このようなスペーサ基材は、SiC及びB4Cの少なくとも一方の粉末と、Al2O3粉末と、TiC粉末とを混合し、成形し、成形体を所定の温度で焼成し、放冷することにより得られる。
【0019】
ここで、スペーサ基材は、Al2O3を80〜90重量%含むことが好ましい。Al2O3が90重量%を超えると絶縁性が高くなりすぎる傾向がある。また、Al2O3が80重量%を下回ると絶縁性が低くなりすぎる傾向がある。
【0020】
また、スペーサ基材は、TiCを10〜18重量%含むことが好ましい。TiCが10重量%を下回ると導電性等の添加効果が小さくまたAl2O3も粒成長しやすくなり、また、TiCが18重量%を超えると、加工性が急激に悪化する傾向がある。
【0021】
さらに、SiCやB4Cは、これらを合わせて7重量%以下となるようにすることが好ましい。7重量%を超えるとこれらSiCやB4Cが焼結体内で偏在しやすくなる傾向がある。
【0022】
原料のAl2O3粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜1μm、特に0.4〜0.6μmであることが好ましい。またTiC粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜3μm、特に0.5〜1.5μmであることが好ましい。また、SiCやB4C粉末は、微粉であることが好ましく、平均粒子径が0.1〜3μm、特に0.5〜1μmであることが好ましい。
【0023】
また、焼成は、非酸化性雰囲気中においてホットプレス法を適用できる。焼結温度としては、1500〜1800℃、特に1650〜1750℃が好ましい。1500℃より低いと緻密な焼結体が得られにくく、1800℃より高いとTiC等の非酸化物の昇華が増し、表面層と内部とが異構造になる傾向がある。また、プレス圧力は約20〜30MPa(約200〜300kgf/cm2)程度が好ましい。焼結時間は1〜3時間程度が好ましい。
【0024】
非酸化性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや、水素、一酸化炭素、各種炭化水素等、あるいはこれらの混合ガス、真空等種々の雰囲気が利用できる。なお、非酸化性雰囲気とするのは、TiC、SiC、B4Cの酸化を防ぐためである。
【0025】
さらに、焼成工程では、ホットプレス法に代えて、成形体を非酸化雰囲気中(例えば、1200℃まで真空中、その後はアルゴン雰囲気中が好ましい)で予備焼結し、次いでHIP炉内でこの予備焼結体を焼結する熱間等方等圧加圧法(HIP)法を用いてもよい。予備焼結の温度は1400〜1650℃、時間は1〜3時間とすることが好ましい。また、HIPの温度は1300〜1500℃、時間は1〜5時間、圧力は約100MPa〜150MPa(約1000〜1500kgf/cm2)で、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。この場合、室温でArガス等を約30〜40MPa(約300〜400kgf/cm2)まで加圧し、その後、上記のような加熱により加圧する。
【0026】
なお、焼成・放冷後には、例えば、ダイヤモンド砥石等によって焼結体の加工を行うことができ、例えば、直径6インチ、厚み2mm程度の円板状の基板とすることが好ましい。
【0027】
このようにして得られるスペーサ基材は、TiCとAl2O3とを含む複合セラミクスであるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えることができる。このため、平面パネルディスプレイのスペーサとして用いると、スペーサが不整列状態になったり傾斜したりしにくくなり、画像の歪みが低減される。
【0028】
また、所定の導電性を示して電荷がたまることが抑制されるので、スペーサとして用いた場合に、帯電による電子軌道の偏向が抑制され、さらに画像の歪みが低減される。
【0029】
加えて、非酸化物としてTiCに加えてさらにSiC、B4Cを含むので、酸化物であるAl2O3の組成が変動した場合の比抵抗の変動が、非酸化物としてTiCのみを含むAl2O3複合セラミクスの比抵抗の変動に比して小さくなる。このため、比抵抗のばらつきの小さいスペーサを容易に得ることができる。そして、このように比抵抗のばらつきが小さいスペーサを平面パネルディスプレイに採用すると、各スペーサに対して所望の電位分布を形成することができ、電荷のたまりをより効率よく抑制することができて、画像の歪みをより低減できる。
【0030】
次に、図1のテーブルを参照しながら、本実施形態に係る複合セラミクス焼結体と、SiC及びTiCを含まないAl2O3−TiC複合セラミクス焼結体と、において、Al2O3の組成を微少に変動させた場合における比抵抗の変動について説明する。
【0031】
(実施例1)
まず、Al2O3粉末(平均粒径0.5μm、純度99.9%)、TiC粉末(平均粒径0.7μm、純度99%、炭素含有量19%以上でその1%以下は遊離黒鉛である)、SiC粉末(平均粒径0.5μm)をボールミル中で粉砕混合し混合組成物を得た。本実施例では、Al2O3の含有量が83重量%、TiCの含有量が13.6重量%、SiCの含有量が3.4重量%となるように混合組成物を調合した。
【0032】
続いて、この混合物を成形し、ホットプレス法によって真空雰囲気で1時間、焼結温度1500〜1800℃、プレス圧力約20〜30MPa(約200〜300kgf/cm2)で焼成し焼結体を得た。
【0033】
(実施例2〜5)
Al2O3、TiC、SiCの含有量を各々82.5重量%、14.0重量%、3.5重量%(実施例2)、各々82.0重量%、14.4重量%、3.6重量%(実施例3)、各々81.5重量%、14.8重量%、3.7重量%(実施例4)、各々80.0重量%、13.0重量%、7.0重量%(実施例5)とする以外は実施例1と同様にして実施例2〜5の焼結体を得た。
【0034】
(実施例6〜9)
SiCに代えてB4C粉末(平均粒径0.5μm)を採用し、実施例1と同様にして実施例5〜8の焼結体を得た。具体的には、Al2O3、TiC、B4Cの含有量を各々84.0重量%、13.6重量%、2.4重量%(実施例6)、各々83.5重量%、14.0重量%、2.5重量%(実施例7)、各々83.0重量%、14.4重量%、2.6重量%(実施例8)、各々82.5重量%、14.8重量%、2.7重量%(実施例9)とした。
【0035】
(実施例10)
Al2O3、TiC、SiCに加えて、さらに、B4Cを含むこと以外は実施例1と同様にして、実施例10の焼結体を得た。具体的には、Al2O3、TiC、SiC、B4Cの含有量を各々82.0重量%、14.6重量%、2.6重量%、0.8重量%とした。
【0036】
(比較例1〜7)
SiCまたはB4Cのいずれも含有しない焼結体として、SiCを添加しない以外は実施例1と同様にして比較例1〜7の焼結体を得た。具体的には、Al2O3、TiCの含有量を各々90.0重量%、10.0重量%(比較例1)、83.0重量%、17.0重量%(比較例2)、各々82.0重量%、18.0重量%(比較例3)、各々81.0重量%、19.0重量%(比較例4)、各々80.0重量%、20.0重量%(比較例5)、各々79.0重量%、21.0重量%(比較例6)、各々75.0重量%、25.0重量%(比較例7)とした。
【0037】
このようにして得られた焼結体の比抵抗値と熱膨張係数とを図1に示す。
【0038】
SiCやB4Cを添加しない焼結体(比較例1〜7)においては、例えば、比較例4と比較例5とを比べると明らかなように、Al2O3の組成が1重量%変動するだけで、比抵抗が1×106倍も変動してしまう。このため、例えば、比抵抗値を1×106〜1×1012Ωcmの間の所定の値に設定したい場合には、極めて精密にアルミナ組成を設定しなければならない。また、製造の際にアルミナの組成が変動すると、焼結体の比抵抗がばらつきやすく歩留まりが低下しやすい。このため、Al2O3−TiC系の複合材料で1×106〜1×1012Ωcm程度の比抵抗値のスペーサを作ることは困難であった。
【0039】
これに対して、SiCやB4Cを添加した焼結体(実施例1〜10)においては、例えば、実施例1と実施例4との比較や、実施例6と実施例9との比較により明らかなように、Al2O3の組成が1.5重量%変動しないと比抵抗が1×106倍変動せず、Al2O3の組成の変動による比抵抗の変動が大きく低減される。このため、SiCやB4Cの添加により、特に1×106〜1×1012Ωcm程度の比抵抗値のスペーサ基材やスペーサを高い歩留まりで容易に得ることができる。
【0040】
なお、SiCやB4Cの添加は、熱膨張係数にはほとんど影響を与えなかった。
【0041】
また、実施例1〜10の焼結体は、密度4.0〜4.5g/cm2、ビッカーズ強度1800〜2100(Hv20)、抗折強度600〜900MPa、ヤング率380〜420GPa、比抵抗1.0×1014〜1×10-3Ωcm、熱伝導率15〜35W/mKであって、強度等いずれの観点からも、平面パネルディスプレイのスペーサ基材として好ましいことが確認された。
【0042】
次に、上述のスペーサ基材から形成されるスペーサと、このスペーサが適用される平面パネルディスプレイであるFEDの概要について説明する。
【0043】
図2は平面パネルディスプレイ10の平面図、図3は平面パネルディスプレイ10のIII−III矢印断面図、図4は平面パネルディスプレイ面板側内部構造を示す平面パネルディスプレイ側面図である。
【0044】
ガラス製の面板101上には、ブラックマトリックス構造体102が形成されている。ブラックマトリックス構造体102は燐層からなる複数の蛍光画素領域を含んでいる。燐層は高エネルギー電子が衝突すると、光を放出して可視ディスプレイを形成する。特定の蛍光画素領域から発した光は、ブラックマトリックス構造を介して外部に出力される。ブラックマトリックスは、互いに隣接する蛍光画素領域からの光の混合を抑制するための格子状黒色構造体である。
【0045】
面板101上には、その表面に対して垂直に立設した壁体であるスペーサ103−119が取り付けられている。
【0046】
面板101上にはスペーサ103〜119(103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119)を介して背板201が設けられる(図3参照)。スペーサ103〜119は、面板101と背板201との間の間隔を均等に保持している。背板201の能動領域面は陰極構造体202を含んでいる。この陰極構造体202は電子を放出するための突起からなる陰極(電界(電子)放出素子)を複数有している。
【0047】
陰極構造体202の形成領域は背板201の面積よりも小さい。面板101の外周領域と背板201の外周領域との間にはガラスシール203が介在しており、中央部に密閉室を提供している。この密閉室内は電子が飛行可能な程度に減圧されている。また、この密閉室内には、陰極構造体202、ブラックマトリックス構造体102及びスペーサ103〜119が配置されることとなる。シール203は融解ガラスフリットによって形成される。
【0048】
なお、全てのスペーサ103〜119の構造は同一であるので、以下では、一つのスペーサ103に着目して説明を行う。
【0049】
スペーサ(平面パネルディスプレイ用スペーサ)103は、図4に示すように、その長手方向の両端に設けられた接着剤301,302によって面板101に固定されている。本例の接着剤301,302の材料はUV硬化性ポリイミド接着剤であるが、熱硬化性接着剤または無機接着剤を使用することができる。なお、接着剤301,302はブラックマトリックス構造体102の外側に配置される。
【0050】
次に、スペーサ103について詳説する。
【0051】
図5はスペーサ103の製造方法を説明するための説明図である。このスペーサの製造方法は、上述の陰極構造体(202)を有する背板(201)と蛍光画素領域(ブラックマトリックス構造体102)を有する面板(101)との間に介在する平面パネルディスプレイ用スペーサを製造する方法である。このスペーサ103は、例えば、以下の工程▲1▼〜▲7▼を順次実行することによって製造することができる。
▲1▼上述の複合セラミクス焼結体の基板(平面パネルディスプレイ用スペーサ基材)A103を用意する(図5(a))。
▲2▼次に、基板A103の両面に、膜厚が数nm〜1μm、材料がTi,Au,Cr,Pt等の金属からなる金属膜Mをスパッタリング法によって形成する(図5(b)。なお、この金属膜Mは分離後には金属膜mとして記載する。
▲3▼基板A103の平面形状が四角形となるように周囲を切断し、周辺部を除去する(図5(c))。
▲4▼基板A103の厚み(D)よりも小さい間隔(W)で基板を短冊状に切断し、これらの短冊体を分離し、しかる後、洗浄を行う(図5(d))。
▲5▼短冊状に切断されてなる短冊体の切断面を、全て短冊体の切断面に垂直な方向の寸法Wが300±50μm以内となるように同時に研磨する(図5(e))。
▲6▼スペーサ103の厚み方向及びスペーサ103の長手方向を含む平面に平行な端面上に金属膜eをパターニングして形成する(図5(f))。この形成には、まず、この端面を洗浄し、続いて、この端面上にスパッタリング法によってTi,Au,Cr,Pt等の金属膜を100nm堆積し、ドライエッチング用のマスクを金属膜上にパターニングした後、イオンミリングによって当該金属膜をエッチングし、金属膜eを形成する。なお、金属膜eの長手方向はスペーサ103の長手方向に一致する。
【0052】
また、厚み方向Dに関し、金属膜eのスペーサ103の一端部からの距離D1、金属膜eの寸法D2、金属膜eのスペーサ103の他端部からの距離D3は、製品公差及び誤差が±5μm以内となるように設定される。
▲7▼複数の短冊体の前記端面とは反対側の端面を同時に研磨し、その幅W1を50〜100μmから選択される値に設定する(図5(g))。この値が小さいほどスペーサ103は目立たないが、圧縮力に耐えにくくなる傾向があるため、本例では50〜100μmから選択して設定する。なお、上述の研磨とは、機械研磨及び/又は化学研磨を含むものとする。
【0053】
また、いずれの工程においても、その平坦度は少なくとも50μm以下に抑制される。
【0054】
このスペーサ103は、上述のように、SiC及びB4Cの少なくとも一方を含むと共にSiCを含むAl2O3の複合セラミクス焼結体から形成されており、高硬度であって圧縮力による変形に耐え、また、所定の比抵抗の導電性を示し電荷がたまりにくくされ、画像の歪みを抑制することができる。また、SiCやB4Cが添加されることにより、スペーサの比抵抗のばらつきが小さくなるので、さらに、画像のひずみ等の発生が抑制される。
【0055】
加えて、本来の厚みの製品公差が所定値X以内であるアルティック含有基板の厚み方向が、上述の圧縮力の方向と一致するように切断することで、圧縮力に抗する方向の寸法の製品公差を所定値X以内とすることができ、寸法変動に起因する背板及び面板間の電界強度の面内変動及び当該変動に基づく蛍光強度の面内変動を著しく抑制することができる。特に、所定値である厚みの製品公差Xが±20μm以内であれば、蛍光強度の面内変動を目視不可能な程度に抑制することができる。
【0056】
この場合、厚みの誤差も所定値X以内することができる。ここで、誤差とは、1つの対象物の厚みの平均値に対する変動量の最大値で規定するものとする。この場合においても、所定値である厚みの誤差Xが±20μm以内であれば、蛍光強度の面内変動を著しく抑制することができる。
【0057】
また、このスペーサ103は、厚み方向の両端面に金属膜mを有する。この金属膜mは、切断前に形成された金属膜Mの一部分である。この金属膜mは、背板及び面板との接触抵抗の面内不均一性等を低減させ、スペーサ全体としての抵抗率、導電率の設定に寄与する。
【0058】
上述のスペーサ103は直方体であるが、これは厚み方向及び長手方向を含む平面に平行な端面を有し、この端面上にパターニングされた金属膜eを有している。このパターンは内部電界分布を規定するものであるが、その基板厚み方向に沿った形成位置精度は、厚み方向の精度が高いため、元々の基板表面に形成した場合の形成位置精度よりも高くすることができる。
【0059】
なお、上述のスペーサは反射型のFEDにも適用することができる。また、上述のスペーサ基材は特性に大きな影響を与えない程度に他の材料を含んでいてもよい。
【0060】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、TiCとAl2O3とを含む複合セラミクスであるので高硬度の導電性セラミクスであるアルティック(AlTiC)の性質を示し、圧縮力による変形に耐えると共に所定の導電性を示して電荷がたまりにくくされる。さらに、非酸化物としてTiCに加えてさらにSiC、B4Cを含むので、Al2O3の組成が変動した場合の焼結体の比抵抗の変動が、非酸化物としてTiCのみを含むAl2O3複合セラミクス焼結体の比抵抗の変動に比して小さくなり、比抵抗のばらつきを小さくできる。
【0061】
このため、画像の歪み等の発生をより低減できる平面パネルディスプレイ用スペーサ基材、その製造方法、平面パネルディスプレイ用スペーサ、及び、平面パネルディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜10、比較例1〜7のスペーサ基材の組成及び特性を示す図である。
【図2】平面パネルディスプレイの平面図である。
【図3】平面パネルディスプレイのIII−III矢視断面図である。
【図4】平面パネルディスプレイ面板側の内部構造を示す平面パネルディスプレイ側面図である。
【図5】スペーサの製造方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…平面パネルディスプレイ、101…面板、102…ブラックマトリックス構造、102…ブラックマトリックス構造体、103…スペーサ(平面パネルディスプレイ用スペーサ)、201…背板、202…陰極構造体、203…ガラスシール、301,302…接着剤、A103…基板(平面パネルディスプレイ用スペーサ基材)、e…金属膜、M…金属膜、m…金属膜。
Claims (5)
- SiC及びB4Cの少なくとも一方と、Al2O3と、TiCと、を含む焼結体であることを特徴とする平面パネルディスプレイ用スペーサ基材。
- 前記Al2O3の含有量が80〜90重量%、TiCの含有量が10〜18重量%であり、さらにSiC及びB4Cを合わせた含有量が7重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の平面パネル用ディスプレイ用スペーサ基材。
- SiC粉末及びB4C粉末の少なくとも一方と、Al2O3粉末と、TiC粉末と、を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を焼成し焼結体を得る工程と、
を含むことを特徴とする平面パネルディスプレイ用スペーサ基材の製造方法。 - SiC及びB4Cの少なくとも一方と、Al2O3と、TiCと、を含む焼結体から形成されることを特徴とする平面パネルディスプレイ用スペーサ。
- 陰極構造体を有する背板と、蛍光画素領域を有する面板と、前記背板及び面板間に介在された請求項4に記載の平面パネルディスプレイ用スペーサと、を備えることを特徴とする平面パネルディスプレイ。
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