JP3810726B2 - 基板加熱制御システム及び基板加熱制御方法 - Google Patents

基板加熱制御システム及び基板加熱制御方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCDV装置における基板加熱プロセスを管理する基板加熱制御システム及び基板加熱制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラズマCVDは、多くの薄膜作成方法の中でも最も自由度が高く、無機物や有機物、複合物質等に至るまで、様々な物質の製膜に応用可能である。プラズマCVDにおいて制御可能なパラメータは、ガス組成、ガス流量、圧力、プラズマ出力、基板温度、基板バイアス等が存在し、膜堆積に関する物理現象や化学現象をこれらのパラメータによって独立に制御することが可能である。
従来、プラズマCVD装置における基板温度制御方法として、図5に示す温度制御系が存在する。基板ヒータカバーにおけるTHC(ヒータカバー温度)の設定値と実際のTHCを比較してPID演算を行う。ことで、サイリスタが基板を加熱するヒータ本体へ出力する電力の最適値を算出し、この値に基づいてヒータ本体の温度制御を行う。また、温度モニタによってヒータ本体の温度を監視し、温度上限に関する条件リミットを設定しておくことでヒータ本体の暴走を防止することができる。
【0003】
しかし、上述の温度制御方法ではヒータ温度制御を行う系と、ヒータ温度の上限監視を行う系がそれぞれ独立して動作するため、温度管理効率が悪いという問題点がある。この問題点を解決するとともに、基板表面の温度管理を行う制御方法として、次に述べる方法が有効であることが知られている。すなわち、半導体加熱ステージである基板支持用電極の上方に半導体基板を載せて移動する移載部を設け、この移載部上に半導体基板を置く。移載部には加熱ヒータ及び熱電対が設けられており、熱電対によって測定された移載部上の半導体基板温度を温度コントローラに出力する。温度コントローラは、この温度情報に基づいて加熱ヒータの温度を制御する(特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平07−17683号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、プラズマCVD装置における基板加熱制御システムが大型化するに伴って、基板ヒータ本体の応答速度の低下が発生すると、温度整定にかかる時間が長時間化し、従来のような温度制御方法ではより大きな温度管理効率の低下を招くといった問題点がある。具体的には、大型の基板加熱制御システムにおける起動所要時間は10数時間に昇る場合がある。このため、プラズマCVD装置における基板加熱制御システムにおいては、温度管理における時間効率を従来以上に向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、温度管理における時間効率を向上させることができる基板加熱制御システム及び基板加熱制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の課題を解決すべくなされたもので、請求項1に記載の発明は、基板を加熱するヒータと、該ヒータを覆うヒータカバーと、前記ヒータの温度を測定し、出力するヒータ温度測定部と、前記ヒータカバーの温度を測定し、出力するヒータカバー温度測定部と、前記ヒータカバーの設定温度を入力する入力部と、前記ヒータカバーの温度設定値と、前記ヒータカバーの温度測定値とを受けて、該設定値と該測定値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第1の指令値を出力する第1のPID制御部と、予め設定された複数の温度管理モードを記憶する記憶部と、前記ヒータカバーの温度測定値に基づいて、前記温度管理モードを記憶部より読み出し、前記温度管理モードを切り替えるモード切替部と、前記温度管理モードで制御を行い、第2の指令値を出力する制御部と、前記制御部で算出された前記第2のヒータ温度指令値が予め設定された上限値を超えると当該第2の指令値を前記上限値に設定し、前記第2の指令値が予め設定された下限値を下回ると当該第2の指令値を前記下限値に設定する上下限リミッタと、前記ヒータの温度測定値と、前記第1の指令値または第2の指令値とを受けて、該測定値と該指令値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第3の指令値を出力する第2のPID制御部と、前記第3の指令値に基づいて、該ヒータへの電力制御を行うサイリスタと、を具備することを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記温度管理モードは、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より低い場合、前記第1の指令値を無視し、昇温の初期段階で前記ヒータカバーに多めの熱量を投入して昇温時間を短縮するべく予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する起動モードと、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、前記第1の指令値を前記第2の指令値とする待機モードまたは生産モードとからなることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記温度管理モードは、ヒータの電源投入時に、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より高い場合、予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する再起動モードを
さらに有することを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、該真空度が該閾値より高い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、該真空度が該閾値より高い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、基板を加熱するヒータを覆うヒータカバーの設定温度を入力する過程と、前記ヒータカバーの温度を測定する過程と、前記ヒータカバーの温度設定値と前記ヒータカバーの温度測定値とに基づいて、該設定値と該測定値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第1の指令値を出力する過程と、前記ヒータカバーの温度測定値に基づいて、予め設定された複数の温度管理モードを記憶する記憶部より該温度管理モードを読み出し、前記温度管理モードを切り替える過程と、前記温度管理モードで制御を行い、第2の指令値を出力する過程と、前記制御部で算出された前記第2のヒータ温度指令値が予め設定された上限値を超えると当該第2の指令値を前記上限値に設定し、前記第2の指令値が予め設定された下限値を下回ると当該第2の指令値を前記下限値に設定する過程と、前記ヒータの温度を測定する過程と、前記ヒータの温度測定値と、前記第1の指令値または第2の指令値とに基づいて、該測定値と該指令値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第3の指令値を出力する過程と、前記第3の指令値に基づいて、前記ヒータへの電力制御を行う過程とを有することを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記温度管理モードは、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より低い場合、予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する起動モードと、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、前記第1の指令値を前記第2の指令値とする待機モードまたは生産モードとからなることを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記温度管理モードは、ヒータの電源投入時に、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より高い場合、前記第1の指令値を無視し、昇温の初期段階で前記ヒータカバーに多めの熱量を投入して昇温時間を短縮するべく予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する再起動モードをさらに有することを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器中に、前記基板が存在する場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、前記基板が存在しない場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、該真空度が該閾値より高い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の基板加熱制御システムの一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における基板加熱制御システムの上位制御系の構成を示す構成図であり、図2は、その下位制御系の構成を示す構成図である。本実施形態における基板加熱制御システムは、ヒータ1と、ヒータカバー2と、ヒータ温度測定部3と、ヒータカバー温度測定部4と、入力部5と、PID制御部6と、記憶部7(図示せず)と、モード切替部8と、制御部9と、PID制御部10と、サイリスタ11と、リミッタ12と、パワー調整トリマ13とからなる。
【0020】
ヒータ1は、プラズマCVD装置内のチャンバー内に設けられており、サイリスタ11の電力制御によって基板を加熱する。ヒータカバー2は、ヒータ1を覆う形で設けられたカバーであり、ヒータカバー温度測定部4が内蔵または外装されている。ヒータ温度測定部3は、ヒータカバー温度測定部4と同様にヒータ1に内蔵または外装されたヒータ1の温度測定を行う熱電対等の温度測定器であって、PID制御部10と電気的に接続されている。ヒータカバー温度測定部4は、
ヒータ温度測定部3と同様にヒータカバー2の温度測定を行う熱電対等の温度測定器であって、PID制御部6と電気的に接続されている。入力部5は、基板加熱制御システムの管理者等がヒータカバーの設定温度を入力する入力装置である。
【0021】
PID制御部6は、ヒータカバーの温度設定値と、ヒータカバーの温度測定値との差分変化に基づくPID演算を行う。PLC(Programmable Logic Controller)による制御回路である。記憶部7は、上述のPLCに組み込まれたROM、RAM等の半導体メモリであり、複数の温度管理モードを記憶している。ここで、温度管理モードとは、プラズマCVD装置における基板加熱制御に関する一連の過程における、様々な状況に対応させたヒータカバーの温度設定値パターンであって、起動モード、待機モード、生産モード及び再起動モード等からなる。
【0022】
起動モードとは、図3及び図4に示す起動昇温プログラムによって制御される、ヒータ起動時の昇温モードであり、具体的には上述のPID制御部6の出力する指令値を用いずに、図4に示すヒータ1の温度設定値パターンによって制御される。昇温パターンは、基板ヒータ目標温度に対してオーバーシュートをしないこと及び起動昇温時間が極力短くなることを考慮して実際の基板加熱制御システムの加熱試験結果によって例えば図4のように定められる。
待機モードとは、起動モード終了後に移行する温度整定モードであり、真空容器を長時間高真空状態で保持させるために、上述のPID制御部6の出力する指令値によってPI制御を行う。
生産モードとは、真空容器にて製膜プロセスを実施する際の温度管理モードであって、真空容器中に基板が存在するか否か、或いは真空容器の真空度が予め決められた閾値より高いか低いかを判定することにより、PID制御部6における制御パラメータを変化させる。すなわち、真空容器中に、基板が存在する場合、PID制御部6における制御パラメータのゲインを増加させ、基板が存在しない場合、制御パラメータのゲインを減少させる。また、真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、PID制御部6における制御パラメータのゲインを増加させ、真空度が閾値より高い場合、制御パラメータのゲインを減少させる。
【0023】
モード切替部8は、上述のヒータカバー2の温度測定値に基づいて、温度管理モードを記憶部7より読み出し、温度管理モードを切り替える制御器であって、PID制御部6と同様、PLC上の制御回路である。
制御部9は、PID制御部6等と同様に、PLC上の制御回路であって、モード切替部8の出力する温度管理モードに基づいて、ヒータ温度を設定し、これを指令値として出力する。
加算器14は、同様にPLC上の制御回路でであって、PID制御部6の出力がOFFの時は制御部9の出力する指令値を、制御部6の出力がOFFの時は制御部9の出力する指令値をリミッタ12に出力する。
リミッタ12は、制御部9の指令値が、予め設定された上限値を超えた場合これを上限値に修正し、同様に設定された下限値を超えた場合これを下限値に修正する。この上限値及び下限値はヒータ1の設定可能レンジ等によって定めることができる。
PID制御部10は、PID制御部6等と同様に、ヒータ1の温度設定値と、ヒータ1の温度測定値との差分変化に基づくPID演算を行う。PLC上の制御回路である。
サイリスタ11は、PID制御部10の指令値に基づいてヒータ1への電力制御を行うパワー半導体デバイスである。
パワー調整トリマ13は、サイリスタ11のパワー調整を行う可変抵抗器である。
【0024】
以下、本実施形態の基板加熱制御システムの動作について図面を参照して説明する。図3は、ヒータ1の電源投入から起動までの流れを示すフローチャートである。また、図4はヒータ1の設定温度と、ヒータカバー2の測定温度の時系列的関係を示す温度グラフである。
【0025】
基板加熱制御システムの管理者等がヒータカバー2の設定温度を入力部5より入力し、ヒータ1の電源を投入すると(図3のステップ1)、ヒータカバー温度測定部4がヒータカバー2の温度の測定値をPID制御部6に出力する。このとき、図3、4に示すようにヒータカバー2の温度が20℃であって所定の閾値よりも低い(ステップS2でYes)ことから、モード切替部8は記憶部7より上述の起動モードに対応する起動昇温プログラムを読み出してこれをセットする(ステップS3)。ここで、ヒータカバーの温度の閾値は、実際の基板加熱制御システムの加熱試験結果によって定められる数値α(後述する)によって決定する。例えば、閾値はヒータカバー設定温度とαの差で表される。
【0026】
起動昇温プログラムのセットを受けて、PID制御部6はOFFされる。そして制御部9は、このプログラムに従って図4に示す昇温パターンを実行する。すなわち、制御部9は、まずヒータの設定温度を20℃に設定し、規定時間である45分後にヒータカバーの設定温度250℃に150℃を加えた400℃となるように、時間経過とともに右上がりの線に乗せてヒータ設定温度を出力する。
このヒータ設定温度はリミッタ12を介し、ヒータ温度設定値THSとしてPID制御部10に入力される。PID制御部10は、ヒータ温度測定部3よりヒータ温度測定値を、リミッタ12よりヒータ温度設定値THSを受けて、この差分変化を算出し、PID演算を行う。サイリスタ11は、PID制御部10よりヒータの設定温度を示す指令値を受けて、ヒータ1の電力制御を行う。このとき、パワー調整トリマ13はサイリスタ11のパワー調整を行う。ヒータ1は、サイリスタによる電力制御に基づいて基板を加熱する。
【0027】
このように起動初期段階でヒータ温度を高めに持ち上げることで、ヒータカバーに多めの熱量を投入して昇温時間を短縮することができる効果が得られる。
【0028】
加熱開始から45分経過後(ステップS4でYes)、制御部9は昇温プログラムに基づいてヒータ1の設定温度の上昇を停止させ、ヒータ1の設定温度400℃に設定したまま、モード切替部8がヒータカバー2の温度を監視する。そして、ヒータカバー2の温度が(設定温度―α)℃に達すると、制御部9はヒータの設定温度を下げて再びヒータカバー2の温度を監視する。
【0029】
このようにヒータカバー2の測定温度が(設定温度−α)である、図4に示すA時点でヒータ温度設定値を下げることで、投入しすぎた熱量を調整する目的でヒータカバーに投入する熱量をさげることでオーバーシュートを抑制する。
【0030】
ヒータカバー2の温度が例えば(設定温度―α/10)℃に達すると、モード切替部8は記憶部7より上述の待機モードに対応する待機プログラムを読み出してこれをセットする。すなわち、PID制御部6は、ヒータカバー温度測定部4よりヒータカバー2の温度測定値である(設定温度―α/10)と設定温度250℃との差分変化を算出し、PI制御を開始する(ステップS5)。そして、ヒータカバーの温度が設定温度である250℃に到達すると(ステップS6)、起動完了とする(ステップS7)。
【0031】
ここで、何らかのトラブル又は短時間のメンテナンスでヒータの電源を落とさざるを得ない場合等、短時間の電源OFFによってはヒータの温度がさほど低下しない。この場合に起動昇温プログラムを起動させると温度が整定するまでに時間を要する。従って、ヒータOFF後の温度低下が例えばα℃以下であれば、モード切替部8は起動昇温プログラムではなく、上述の再起動モードに対応する再起動昇温プログラムを読み出して、制御部9がこれを実行する。
ここで、上述の数値αはこのように、起動昇温プログラムによって温度制御を行った方が早いか、すぐさまPID制御を開始した方が早いかを実際の基板加熱制御システムの加熱試験結果によって定めることができる。本実施形態では、例としてα=30℃とする。
すなわち、上述のステップS2において、ヒータカバーの温度が[設定温度(=250)−α(=30)]=220℃以上である場合、制御部9は再起動昇温プログラムに基づいてPID制御を実行し、上述のように、ヒータカバーの温度が、[設定温度(=250)−α/10(=3)=247℃となると、モード切替部8は記憶部7より上述の待機モードに対応する待機プログラムを読み出してこれをセットする。そして、ヒータカバーの温度が設定温度である250℃に到達すると、再起動が完了する。
【0032】
このように、ヒータOFF時のヒータカバー温度のヒステリシス制御を行うことで、ヒータ温度整定時間の短縮を図ることができる効果が得られる。
【0033】
プラズマCVD装置は、基板加熱制御システムより起動完了または再起動完了を示す信号を受けて、他の制御プロセスの準備完了とともに製膜制御を開始する。
すなわち、モード切替部8は記憶部7より上述の生産モードに対応する生産プログラムを読み出してこれをセットする。
プラズマCVD装置における他の搬送システム等によって、基板が真空容器中に移送されてくると、真空容器の圧力管理システムよりガス導入又は排気のシーケンスの状態を示す信号が基板加熱制御システムに出力される。
制御部9は、この信号を受けて、真空容器中に基板が存在するか否か、或いは真空容器の真空度が予め決められた閾値より高いか低いかを判定することにより、PID制御部6における制御パラメータを変化させる。すなわち、真空容器中に、基板が存在する場合、PID制御部6における制御パラメータのゲインを増加させ、基板が存在しない場合、制御パラメータのゲインを減少させる。また、真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、PID制御部6における制御パラメータのゲインを増加させ、真空度が閾値より高い場合、制御パラメータのゲインを減少させる。そして、この制御パラメータの設定値で、ヒータカバーの温度設定値と、ヒータカバーの温度測定値との差分変化に基づくPID演算を行い、ヒータ設定温度を出力する。
【0034】
ここで、真空度に関する閾値は、上述の閾値である数値αの決定方法と同様に、実際の基板加熱制御システムの加熱試験によって定めることができる。すなわち、ガスが存在する場合はヒータの熱量が奪われ易くなるためゲインをあげなければヒータ温度が低下して製膜条件が崩れてしまい、 ガスが存在しない場合は、ゲインが高すぎると温度制御がハンチングし易くなる。従って、この製膜条件やハンチング防止を考慮して、加熱試験行った上で閾値を定める。
【0035】
上述のPID制御部6の出力するヒータ設定温度は、リミッタ12を介してヒータ温度設定値THSとして、PID制御部10に入力される。そして、上述の起動モードと同様に、PID制御部10及びサイリスタ11を介して、ヒータ1は基板を加熱する。
【0036】
このように、真空容器内では容器内の状態に即してPI制御パラメータの値を切り替えることでプラズマCVD装置における製膜制御に最適な温度制御が可能となる。
【0037】
なお、本実施形態においては、プラズマCVD装置における、真空容器のガス導入又は排気のシーケンスの状態に基づいて、真空容器内にガスが存在するか否かの判定を行ったが、ガス導入弁の開閉監視を行う、或いは真空容器内の圧力監視を圧力センサ等で測定し、この測定情報に基づいた上述の判定制御を行ってもよい。
【0038】
上述の基板加熱制御システムは内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した基板加熱制御に関する一連の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明は、基板を加熱するヒータと、ヒータを覆うヒータカバーと、ヒータの温度を測定し、出力するヒータ温度測定部と、ヒータカバーの温度を測定し、出力するヒータカバー温度測定部と、ヒータカバーの設定温度を入力する入力部と、ヒータカバーの温度設定値と、ヒータカバーの温度測定値とを受けて、この設定値と測定値との差分変化を算出し、差分変化に対するPID演算を行い、第1の指令値を出力する第1のPID制御部と、予め設定された複数の温度管理モードを記憶する記憶部と、ヒータカバーの温度測定値に基づいて、温度管理モードを記憶部より読み出し、温度管理モードを切り替えるモード切替部と、第1の指令値を受けて、温度管理モードで制御を行い、第2の指令値を出力する制御部と、ヒータの温度測定値と、第2の指令値とを受けて、この測定値と指令値との差分変化を算出し、差分変化に対するPID演算を行い、第3の指令値を出力する第2のPID制御部と、第3の指令値に基づいて、ヒータへの電力制御を行うサイリスタとを具備するので、ヒータの温度制御によって、ヒータカバーの温度静定を行うため効率的な温度制御を行うことができる効果を得ることができる。
【0040】
また、第2の指令値が予め設定された上限値または下限値を超えた場合、第2の指令値を修正する上下限リミッタをさらに具備するので、ヒータの暴走を防ぐことができる効果が得られる。
【0041】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、温度管理モードは、ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より低い場合、第1の指令値を無視し、予め設定された昇温パターンに基づいて第2の指令値を決定する起動モードと、ヒータカバーの温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、第1の指令値を第2の指令値とする待機モードまたは生産モードとからなるので、起動時においては予め設定された昇温パターンに基づいて、ヒータの応答速度をあげることができるとともに、プラズマCVD装置における製膜プロセスにおける待機モードまたは生産モードにスムーズに移行できる効果が得られる。
【0042】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、起動モードは、ヒータの電源投入時に、ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より高い場合、第1の指令値を無視し、予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する再起動モードをさらに有するので、ヒータOFF時のヒータカバー温度のヒステリシス制御を行うことで、ヒータ温度整定時間の短縮を図ることができる効果が得られる。
【0043】
請求項、請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、生産モードは、ヒータが設置される真空容器中に、基板が存在する場合、第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、基板が存在しない場合、第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させるので、プラズマCVD装置における製膜制御に最適な温度制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態における基板加熱制御システムの上位制御系の構成を示す構成図である。
【図2】 本実施形態における基板加熱制御システムの下位制御系の構成を示す構成図である。
【図3】 ヒータ1の電源投入から起動までの流れを示すフローチャートである。
【図4】 ヒータ1の設定温度と、ヒータカバーの測定温度の時系列的関係を示す温度グラフである。
【図5】 従来の基板加熱制御システムの制御系の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
1…ヒータ
2…ヒータカバー
3…ヒータ温度測定部
4…ヒータカバー温度測定部
5…入力部
6、10…PID制御部
7…記憶部
8…モード切替部
9…制御部
11…サイリスタ
12…リミッタ
13…パワー調整トリマ

Claims (10)

  1. 基板を加熱するヒータと、
    該ヒータを覆うヒータカバーと、
    前記ヒータの温度を測定し、出力するヒータ温度測定部と、
    前記ヒータカバーの温度を測定し、出力するヒータカバー温度測定部と、
    前記ヒータカバーの設定温度を入力する入力部と、
    前記ヒータカバーの温度設定値と、前記ヒータカバーの温度測定値とを受けて、該設定値と該測定値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第1の指令値を出力する第1のPID制御部と、
    予め設定された複数の温度管理モードを記憶する記憶部と、
    前記ヒータカバーの温度測定値に基づいて、前記温度管理モードを記憶部より読み出し、前記温度管理モードを切り替えるモード切替部と、
    前記温度管理モードで制御を行い、第2の指令値を出力する制御部と、
    前記制御部で算出された前記第2のヒータ温度指令値が予め設定された上限値を超えると当該第2の指令値を前記上限値に設定し、前記第2の指令値が予め設定された下限値を下回ると当該第2の指令値を前記下限値に設定する上下限リミッタと、
    前記ヒータの温度測定値と、前記第1の指令値または第2の指令値とを受けて、該測定値と該指令値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第3の指令値を出力する第2のPID制御部と、
    前記第3の指令値に基づいて、該ヒータへの電力制御を行うサイリスタと、
    を具備することを特徴とする基板加熱制御システム。
  2. 前記温度管理モードは、
    前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より低い場合、前記第1の指令値を無視し、昇温の初期段階で前記ヒータカバーに多めの熱量を投入して昇温時間を短縮するべく予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する起動モードと、
    前記ヒータカバーの温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、前記第1の指令値を前記第2の指令値とする待機モードまたは生産モードと
    からなることを特徴とする請求項1に記載の基板加熱制御システム。
  3. 前記温度管理モードは、ヒータの電源投入時に、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より高い場合、予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する再起動モードを
    さらに有することを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御システム。
  4. 前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器中に、前記基板が存在する場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、前記基板が存在しない場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させる
    ことを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御システム。
  5. 前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、該真空度が該閾値より高い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させる
    ことを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御システム。
  6. 基板を加熱するヒータを覆うヒータカバーの設定温度を入力する過程と、
    前記ヒータカバーの温度を測定する過程と、
    前記ヒータカバーの温度設定値と前記ヒータカバーの温度測定値とに基づいて、該設定値と該測定値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第1の指令値を出力する過程と、
    前記ヒータカバーの温度測定値に基づいて、予め設定された複数の温度管理モードを記憶する記憶部より該温度管理モードを読み出し、前記温度管理モードを切り替える過程と、
    前記温度管理モードで制御を行い、第2の指令値を出力する過程と、
    前記制御部で算出された前記第2のヒータ温度指令値が予め設定された上限値を超えると当該第2の指令値を前記上限値に設定し、前記第2の指令値が予め設定された下限値を下回ると当該第2の指令値を前記下限値に設定する過程と、
    前記ヒータの温度を測定する過程と、
    前記ヒータの温度測定値と、前記第1の指令値または第2の指令値とに基づいて、該測定値と該指令値との差分変化を算出し、該差分変化に対するPIまたはPID演算を行い、第3の指令値を出力する過程と、
    前記第3の指令値に基づいて、前記ヒータへの電力制御を行う過程と
    を有することを特徴とする基板加熱制御方法。
  7. 前記温度管理モードは、
    前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より低い場合、予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する起動モードと、
    前記ヒータカバーの温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、前記第1の指令値を前記第2の指令値とする待機モードまたは生産モードと
    からなることを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御方法。
  8. 前記温度管理モードは、ヒータの電源投入時に、前記ヒータカバーの温度が予め設定された第1の閾値より高い場合、前記第1の指令値を無視し、昇温の初期段階で前記ヒータカバーに多めの熱量を投入して昇温時間を短縮するべく予め設定された昇温パターンに基づいて前記第2の指令値を決定する再起動モードを
    さらに有することを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御方法。
  9. 前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器中に、前記基板が存在する場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、前記基板が存在しない場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させる
    ことを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御方法。
  10. 前記生産モードは、前記ヒータが設置される真空容器の真空度が予め決められた閾値より低い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを増加させ、該真空度が該閾値より高い場合、前記第1のPID制御部における制御パラメータのゲインを減少させる
    ことを特徴とする請求項に記載の基板加熱制御方法。
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