JP3809962B2 - 内燃機関における回動軸構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関における回動軸構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
この種の内燃機関における回動軸構造については、例えば、実開昭59−54770号公報に、駆動軸に連動して回動するプランジャのシリンダ内での移動によってポンプ作用を行わせるとともに、そのプランジャのストロークを容易に調整できるようにしたプランジャ式潤滑油ポンプの構造が開示されている。図2を参照しながら同潤滑油ポンプの構造を説明すると、クランクケース1内の駆動軸2に連動する歯輪3にプランジャ4を設け、潤滑油流入口5につながるポンプ室6の吸入口7と潤滑油吐出口8につながるポンプ室6の排出口9とを開口したシリンダ10内に上記プランジャ4を嵌挿し、歯輪3の回動により歯輪3に設けたプランジャ4はシリンダ10内で回動しながら上下動し、そのプランジャ4に形成した凹溝11はシリンダ10に開口した吸入口7と排出口9とに交互に連通し、その吸入口7との連通により上動した時に凹溝11内に潤滑油が流入し、その排出口9との連通により下動した時に吐出口8に潤滑油が排出される構成である。この駆動軸2の材質としては、従来は合金鋼の表面に浸炭を施したものが用いられており、ギヤ部の歯切り・浸炭・研磨等の製造工程数が多く、製造コストが高くついていた。
【0003】
そこで、この駆動軸として、機械的性質・耐熱性・摺動性・耐摩耗性等に優れたエンジニアリングプラスチックスを射出成形したものを使用することにより製造コストの低減を図ろうとする試みが行われているが、諸特性・コストの両面を満足するような材料は提供されていない。
【0004】
例えば、ポリイミド系樹脂は、要求される諸特性は満足するが、材料コストが高いので、本来の低コスト化の目的を達成できない。
【0005】
また、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶ポリマー、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等は耐熱性が充分ではないため、オイルシール12との摺動摩擦熱によりオイルシール12と接触する駆動軸2の部分が溶融し、その部分から潤滑油が漏れる不具合が発生することがある。
【0006】
上記樹脂に比べて耐熱性の高い樹脂、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルニトリル等では、ソルベントクラックが発生しやすく、耐久性に問題がある。
【0007】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、機械的特性・耐久性・耐熱性に優れるとともに製造コストの低い、内燃機関における回動軸構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、回動軸の本体は機械的特性に優れた樹脂で構成し、オイルシールとの当接部は耐熱性、摺動性および耐摩耗性に優れた材料で構成することにより、課題解決を図ったものであり、本発明の要旨は、閉塞された内燃機関を構成するケース内に設けられた駆動軸と噛合う噛合部と、外周面をオイルシールを介して該ケースに回動自在に保持される支持部とを備えると共に、該ケース内の潤滑油雰囲気中で回動する内燃機関における回動軸において、前記回動軸本体を樹脂にて形成すると共に、該回動軸本体の前記オイルシールとの当接部を本体樹脂硬度に比べて高硬度の被膜または筒状体にて形成したことを特徴とする内燃機関における回動軸構造にある。
【0009】
回動軸本体を形成する樹脂の組成を、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカーまたは酸化亜鉛ウィスカーのうち少なくとも1種を10重量%以上含有し、残部が66ナイロン、MXD6ナイロン、46ナイロン、ポリフタル酸アミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂、高密度ポリエチレン樹脂またはシリコン樹脂のうち少なくとも1種からなるもので構成することができる。また、この樹脂組成物に潤滑剤として、二硫化モリブデン、グラファイト、シリコンオイルまたはフッ化カーボンのうち少なくとも1種を1〜10重量%添加することが好ましい。
【0010】
高硬度の被膜または筒状体を金属またはポリイミド樹脂で構成することができる。そして、この金属としては、金属メッキまたは金属カラーを埋設したものを採用することができる。
【0011】
また、後記する理由により、高硬度の筒状体は、両端部の外径が中央部より小さいパイプ状の金属カラーとし、前記両端部は回動軸本体樹脂内に埋没し、前記中央部はオイルシールに当接する構造とすることが好ましい。
【0012】
さらに、回動軸は潤滑油ポンプの駆動軸とし、駆動軸は内燃機関のクランク軸とすることができる。
【0013】
【作用】
回動軸本体は樹脂製であり、射出成形により製造することができるので、コスト低減が可能となる。
また、回動軸本体のオイルシールに当接する部分を高硬度の被膜または筒状体とすることで、耐熱性・耐摩耗性が向上する。
さらに、回動軸本体の樹脂に補強繊維を10重量%以上添加することにより、疲労限界強度・耐衝撃性・曲げ強度・クリープ特性等の機械的特性ならびに低線膨張係数・低吸湿性等の寸法安定性が改善され、歯部が折損することはない。
【0014】
そして、潤滑剤を1〜10重量%添加することにより、耐摩耗性がさらに改善される。
【0015】
また、高硬度の筒状体を、両端部の外径が中央部より小さいパイプ状の金属カラーとし、前記両端部は回動軸本体樹脂内に埋没し、前記中央部はオイルシールに当接する構造とすることで、射出成形工程の冷却固化中において、金属カラーの両端部の外周を取り巻く樹脂が成形収縮して金属カラーを締めつけるように作用するので、樹脂と金属カラー両端部外周面との間にクリアランスが生じることはなく、優れたシール性が付与される。
【0016】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。次の表1に示すような配合(重量%)の材料から図2に示すような外観形状の潤滑油ポンプの駆動軸2を射出成形により作製し、図1に示すように、実施例1〜3のものはオイルシールとの当接部に金属メッキ(Cr)13を施し、実施例4〜7のものはオイルシールとの当接部に金属カラー(低合金耐熱鋼)14を埋設した。また、比較例1、2のものには、金属部を設けなかった。
そして、これらの駆動軸の耐摩耗性、耐疲労性および騒音性を評価した。その評価方法としては、「50ccのスクーターのエンジンに取り付け、スタンドを上げた状態でアクセル開度50%にて連続2時間運転し、耐摩耗性と耐疲労性は駆動軸ギヤ部の変形、欠け、摩耗の程度およびシャフト部の溶融、摩耗の程度についての目視観察に基づく結果により評価し、騒音性は運転中の聴感にて評価する。」という方法に従った。それらの結果を表1に示す。表1における各記号の意味は以下のとおりである。
◎=極めて優れている。
○=優れている。
△=やや劣る。
×=劣る。
【0017】
【表1】
【0018】
表1に明らかなように、本実施例1〜7に係るものは、耐摩耗性、耐疲労性および騒音性のすべてにおいて優れているが、比較例1、2は耐摩耗性、耐疲労性および騒音性のすべてにおいて劣っている。
【0019】
なお、駆動軸2がオイルシールと当接する部位以外にも、ギヤ部15、16、軸受との嵌合部17、18(図2参照)など、他の摩耗しやすい箇所にも上記と同様に金属メッキを施し、または金属カラーを埋設することができる。
【0020】
このように樹脂製駆動軸がオイルシールと当接する部分に金属メッキを施したり金属カラーを埋設することにより、耐熱性・耐摩耗性等を向上することができるが、樹脂と金属の熱膨張係数は異なるので(樹脂の熱膨張係数の方が大きいので)、射出成形工程における冷却固化中の両者の収縮量が相違し、樹脂と金属との境界面にクリアランスが生じることがある。このようなクリアランスはシール性を低下させることになるので、以下に説明する図3のような構造を採用することによりシール性を向上することが可能である。
【0021】
図3は、両端部Aの外径dが中央部(オイルシールに当接する部位)Bの外径Dより小さいパイプ状の金属カラー19を埋設した樹脂製駆動軸20(以下「本発明駆動軸」という)の部分断面を含む側面図である。図4は本発明駆動軸とのシール性を比較するために円筒状の金属カラー21を埋設した樹脂製駆動軸22(以下「比較例駆動軸」という)の部分断面を含む側面図である。そして、図3、図4に示す駆動軸のオイルシール性およびエアシール性に対する金属カラーの効果を確認するために以下の実験を行った。
【0022】
〔オイルシール性の調査〕
これらの駆動軸を、駆動軸が下部になるように図2と類似構造の潤滑油ポンプに組み込み、雰囲気温度を−20℃と室温の2水準とし、6日間静置した。静置後、金属カラーと樹脂とのクリアランスを観察できるように2分割し、その後金属カラーを取り外し、樹脂部へのオイルの染みだし状態を確認した。
その結果、比較例駆動軸の場合、金属カラー21内周面と樹脂との間のクリアランスは0.1mm程度存在しているのが認められた。また、この比較例駆動軸においては、−20℃で金属カラー端部に接していた樹脂部にはオイルの染みが認められた。
しかし、本発明駆動軸においては、金属カラー19の両端部(外径dの部分)を取り巻く樹脂の成形収縮により金属カラー19が締めつけられるので、樹脂と金属カラー19両端部外周面との間にクリアランスが生じることはなく、確実にシールされた状態になっていたので、樹脂部にオイルの染みは認められなかった。
【0023】
なお、D(駆動軸の外径)は10mm、dは6mm、金属カラー19の外径D部の厚みは3mm、金属カラー19の外径d部の厚みは1mm、金属カラー21の厚みは1mmである。
【0024】
〔エアシール性の調査〕
上記駆動軸の一端から金属カラー部の一端付近までエアホースを挿入し、これを水に浸漬してエア圧を0.4MPaまで徐々に増大させ、金属カラー部の他端からエアが漏れるかどうかを確認した。このような実験をエアホースの挿入方向を逆にした場合についても行った。水温は、3〜5℃、20〜24℃、85〜90℃の3水準とし、温度変化による影響を少なくするために、各水温における測定時間は30秒以内とした。サンプル数(実験に供した駆動軸の数)は本発明および比較例の両方とも5とし、同一サンプルについて、『室温のもの(事前に駆動軸に熱処理を施さなかったもの)』、『事前に駆動軸を130℃の雰囲気に30分以上放置したもの』、『事前に駆動軸を−20℃の雰囲気に30分以上放置したもの』の順で測定した。その結果、いずれの場合もエア漏れは確認できなかった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の内燃機関における回動軸構造は上記のとおり構成されているので、射出成形工程の冷却固化中において、金属カラーの両端部の外周を取り巻く樹脂が成形収縮して金属カラーを締めつけるように作用するので、樹脂と金属カラー両端部外周面との間にクリアランスが生じることはなく、優れたシール性が付与されるという顕著な効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回動軸構造を示す、図2の破線部の拡大図であって、図1(a) はオイルシールとの当接部に金属メッキを施した駆動軸の要部断面図、図1(b) はオイルシールとの当接部に金属カラーを埋設した駆動軸の要部断面図である。
【図2】プランジャ式潤滑油ポンプの縦断面図である。
【図3】本発明の回動軸(駆動軸)の部分断面を含む側面図である。
【図4】比較例の回動軸(駆動軸)の部分断面を含む側面図である。
【符号の説明】
1…クランクケース
2、20、22…駆動軸
3…歯輪
4…プランジャ
5…潤滑油流入口
6…ポンプ室
7…吸入口
8…潤滑油吐出口
9…排出口
10…シリンダ
11…凹溝
12…オイルシール
13…金属メッキ
14、19、21…金属カラー
15、16…ギヤ部
17、18…軸受嵌合部
Claims (1)
- 閉塞された内燃機関を構成するケース内に設けられた駆動軸と噛み合う噛合部と、外周面をオイルシールを介して該ケースに回動自在に保持される支持部とを備えると共に、該ケース内の潤滑油雰囲気中で回動する内燃機関における回動軸であって、前記回動軸本体を樹脂にて形成するとと共に、該回動軸本体の前記オイルシールとの当接部を本体樹脂硬度に比べて高硬度の筒状体にて形成した内燃機関における回動軸構造において、高硬度の筒状体が、両端部の外径が中央部より小さいパイプ状の金属カラーであり、前記両端部は回動軸本体樹脂内に埋没し、前記中央部はオイルシールに当接する構造であることを特徴とする内燃機関における回動軸構造。
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