JP7265431B2 - 構造体 - Google Patents
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Description
ウレタンゴムは、耐摩耗性に優れ、さらに外輪に強固に接着固定できる。外輪にウレタンゴムを装着する製造工程は以下の通りである。
すなわち、金型内でウレタンゴムを長時間にわたり硬化させる必要があり、外輪の外周面への接着剤の塗布に時間がかかり、ウレタンゴムの硬化後にウレタンの外周面を研磨により所定の寸法、精度に仕上げる必要がある。
よって、ウレタンゴムが外周面に被覆された転がり軸受を大量生産する場合には、ウレタンゴムを外周面に被覆するための設備を多数備える必要があり、設備費が嵩む。また、外輪の外周面をサンドブラストで粗く加工する工程や、粗く加工した外周面に接着剤を塗布する工程が必要である。このため、ウレタンゴムが被覆された転がり軸受を、安価で大量に製造することは難しい。
この構成によれば、第一の材料層に非晶性熱可塑性樹脂を含有させることで、第二の材料層との熱融着性が高まり、第二の材料層が第一の材料層に充分に固定される。また、第一の材料層に熱可塑性エラストマーを含有させることで、第一の材料層上に第二の材料層を成形する際の熱により、第一の材料層のウエルド部に割れやクラックが生じることを抑制できる。その結果、第一の材料層の抜き力が低下しにくくなり、第一の材料層が金属部材に充分に固定される。加えて、第一の材料層と第二の材料層とを一層良好に熱融着することができる。その結果、第二の材料層を第一の材料層に一層強固に固定でき、第二の材料層が金属部材から脱落することを一層確実に防止できる。よって、被覆層が金属部材に充分に固定され、信頼性が高い構造体が得られる。
また、第二の材料層に熱可塑性エラストマーを含有させることで、第一の材料層に第二の材料層を熱融着により強固に固定できる。よって、従来必要とされていた、サンドブラスト加工工程や、接着剤による塗布工程を不要にできる。これにより、構造体を安価で大量に製造することができる。
また、第二の材料層を第一の材料層よりも軟らかい材料とすることにより、第一の材料層に硬い材料を使用できる。軟らかい材料とは、曲げ弾性率、硬度(例えば、デュロ硬度A(デュロメータ硬さA))が小さい材料をいう。硬い材料とは、曲げ弾性率、硬度(例えば、デュロ硬度A(デュロメータ硬さA))が大きい材料をいう。
また、第二の材料層を第一の材料層よりも軟らかい材料とすることにより、第二の材料層を第一の材料層に熱融着により一層強固に固定できる。加えて、例えば構造体が軸受のとき、外輪で紙幣や切符などの搬送物を搬送する場合や、軸受を移動体の車輪として接触物に沿って転がせる場合に、第二の材料層で音(ノイズ)を低減できる。
この構成によれば、第二の材料層が第一の材料層により強固に固定される。
Tm≧Tg-5 ・・・(1)
この構成によれば、第二の材料層が第一の材料層により強固に固定される。
この構成によれば、第二の材料層が第一の材料層により強固に固定される。
この構成によれば、第一の材料層の抜き力がより低下しにくくなり、第一の材料層が金属部材により強固に固定される。
この構成によれば、第一の材料層のウエルド部に割れやクラックが生じることをより抑制できる。その結果、第一の材料層の抜き力がより低下しにくくなり、第一の材料層が金属部材により強固に固定される。加えて、成形時の収縮率が大きくなりにくく、精密な成形が容易となる。
図1は、第一実施形態に係る軸受10の断面図である。
図1に示すように、軸受10は、輪体12、複数の転動体14、リテーナ16および被覆層18を備える転がり軸受である。
輪体12は、外輪21および内輪22を備える。外輪21と内輪22は、軸受10の軸線Oと同軸上に配置されている。内輪22は、外輪21の径方向の内側に配置される。
複数の転動体14は、輪体12を構成する外輪21と内輪22との間において、環状に配置される。リテーナ16は、複数の転動体14を周方向に均等配列させた状態で転動自在に保持する。
外周面24は、外輪21の径方向外側に環状に形成されている。内周面25は、外輪21の径方向内側に環状に形成されている。中央部26は、軸線O方向の中央に形成されている。中央部26は、内周面25のうち軸線O方向中央の部位25aが外輪21の外周面24から径方向内側に間隔T1をおいて形成されている。外周面24のうち中央部26に相当する部位には、周方向へ延びる溝部28として凹部が形成されている。
一例として、溝部28は、外輪21の軸線O方向の中央において断面形状が曲面に形成され、外輪21の径方向外側に開口されている。溝部28は、外輪21の軸線O方向の中央に対して対称の形状に形成されている。
外輪転動面29は、軸線O方向の中央に形成され、外周面24の径方向において溝部28と重なる位置に配置されている。
さらに、溝部28の断面形状を曲面に形成することにより、溝部28の底面に平坦部を有しない。これにより、溝部28を刃具で加工する際に、刃具の切削抵抗を小さく抑えることができ、溝部28の加工が容易になる。さらに、刃具の切削抵抗を小さく抑えることにより刃具の寿命を延ばすことができる。
加えて、溝部28は、外輪21の軸線O方向の中央に対して対称の形状に形成されている。外輪21の外周面24中央に溝部28がバランスよく形成されている。これにより、外輪21の変形や溝部28による外輪21の剛性低下が外輪転動面29に及ぼす影響を一層良好に抑制できる。
さらに、溝部28は、断面形状が曲面に形成されている。一方、外輪転動面29も断面形状が曲面に形成されている。すなわち、溝部28は外輪転動面29と同形状に形成されている。これにより、外輪21の焼入れなどの熱処理による変形の影響を一層少なく抑えることができる。
内輪22の外周面32における軸線O方向の中間部には、内輪転動面33が形成される。内輪転動面33は、転動体14の外表面に沿うように側面断面が円弧状に形成されている。内輪転動面33の断面における曲率半径は、転動体14の外表面の曲率半径と略同一か、若干大きくなるように形成される。内輪転動面33は、内輪22の外周面32の全周にわたって形成されている。内輪転動面33は、複数の転動体14の外表面が当接可能である。
第1側面48は、第1外周面46の一端と第1内周面47の一端とを連結し、軸受10の軸線O方向に対して交差するように形成された面である。第1側面48は、外周面24の第1端縁24aから軸線O方向において外周面24の中央側に間隔S1をおいて形成されている。第2側面49は、外周面24の第2端縁24bから軸線O方向において外周面24の中央側に間隔S1をおいて形成されている。
非晶性熱可塑性樹脂は熱可塑性エラストマーとの熱融着性に優れる。第一の材料層43が非晶性熱可塑性樹脂を含むことで、後述する第二の材料層44に含まれる熱可塑性エラストマーとの熱融着性が高まり、第一の材料層43と第二の材料層44とが熱融着され、第二の材料層44が第一の材料層43に充分に固定される。
また、第一の材料層43が熱可塑性エラストマーを含むことで、第一の材料層上に第二の材料層を成形する際の熱により、第一の材料層のウエルド部に割れやクラックが生じることを抑制できる。その結果、第一の材料層の抜き力が低下しにくくなり、第一の材料層43が外輪21に充分に固定される。第一の材料層43と第二の材料層44とを一層良好に熱融着することができる。これにより、第二の材料層44を第一の材料層43に一層強固に固定でき、第二の材料層44が外輪21の外周面24から脱落することを一層確実に防止できる。よって、被覆層18が外輪21に充分に固定され、信頼性が高い軸受10が得られる。
ポリカーボネート樹脂の種類には特に制限なく、公知のものを用いることができる。また、ポリカーボネート樹脂は、慣用の方法(例えば、ホスゲン法、エステル交換法など)により製造することができる。なお、本明細書においてポリカーボネート樹脂とは、下記一般式(i)で表される構造単位を有する基本構造の重合体を意味する。
ポリカーボネート樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせおよび任意の比率で併用してもよい。さらに、ポリカーボネート樹脂は、本発明の優れた特性を損なわない範囲において、他の樹脂と混合しアロイ化して得られる樹脂として用いてもよい。アロイ化する際に用いる他の樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
非晶性熱可塑性樹脂のMFR値は、JIS K 7210に準拠して測定される値である。
熱可塑性エラストマーとしては、ソフトセグメントおよびハードセグメントの種類により、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(PPVC)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)などが挙げられる。機械的強度、耐摩耗性の観点からTPU、TPEE、TPSが好ましく、TPEEがより好ましい。
TPUは、耐摩耗性に最も優れるが成形性に問題があり、吸湿性が高く充分な乾燥が必要である。さらに、アニール処理も必要であり、製造に時間がかかるとともに成形精度にも問題がある。また、TPUは、機械的強度や耐摩耗性が熱可塑性エラストマー中で最も優れている。このため、TPUは、被覆層18に機械的強度や耐摩耗性の特性が必要な場合に使用される。
TPEEは、TPU以外の熱可塑性エラストマーの中では耐摩耗性、機械的強度が最も優れるとともに、非晶性熱可塑性樹脂との熱融着性にも優れている。また、TPEEは、吸湿性も低く、成形性も良好なため被覆層18の材料として最適である。
熱可塑性エラストマーのMFR値は、JIS K 7210に準拠して測定することができる。
ここで、熱可塑性エラストマーが、2種以上のハードセグメントが存在するなどで融点が2つ以上存在する場合、熱可塑性エラストマーを充分に溶融させて第一の材料層43を成形するという観点から、最も温度の高い融点を熱可塑性エラストマーの融点として取り扱うこととする。
熱可塑性エラストマーの融点は、DSCを用いて測定される値である。
無機繊維としては、繊維状粒子から構成される粉末であることが好ましく、平均繊維長が1~300μmであり、かつ平均アスペクト比が3~200であるものがより好ましい。無機繊維の平均繊維長は、1~200μmがより好ましく、3~100μmがさらに好ましく、5~50μmが特に好ましい。無機繊維の平均アスペクト比は、3~100がより好ましく、5~50がさらに好ましく、8~40が特に好ましい。上記範囲の平均繊維長および平均アスペクト比を有する無機繊維を用いることにより、第二の材料層44が第一の材料層43により強固に固定される。
無機繊維の平均繊維長および平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)の観察により測定することができ、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は平均繊維長および平均繊維径より算出することできる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により、複数の無機繊維を撮影し、その観察像から無機繊維を任意に300個選択し、それらの繊維長および繊維径を測定し、繊維径の全てを積算して個数で除したものを平均繊維長とし、繊維径の全てを積算し個数で除したものを平均繊維径とすることができる。
チタン酸カリウムの寸法は、上述の無機繊維の寸法の範囲であれば特に制限はないが、通常、平均繊維径は0.01~1μmが好ましく、0.05~0.8μmがより好ましく、0.1~0.7μmがさらに好ましい。平均繊維長は1~50μmが好ましく、3~30μmがより好ましく、10~20μmがさらに好ましい。平均アスペクト比は10以上好ましく、10~100がより好ましく、15~35がさらに好ましい。
ワラストナイトの寸法は、上述の無機繊維の寸法の範囲であれば特に制限はないが、通常、平均繊維径は0.1~15μmが好ましく、1~10μmがより好ましく、2~7μmがさらに好ましい。平均繊維長は3~180μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~40μmがさらに好ましい。平均アスペクト比は3以上が好ましく、3~30がより好ましく、5~15がさらに好ましい。
第一の材料層43に含まれる無機繊維の含有量は、軸受10の用途に対応させて適宜決定すればよいが、例えば、第一の材料層43の総質量に対して、1~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、20~35質量%がさらに好ましい。
第一の材料層43は、外周面24に沿って非晶性熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを含む材料で環状に形成されている。よって、第一の材料層43が冷却されて硬化する際の収縮により、第一の材料層43が外周面24に強固に取り付けられる。
第一の材料層43が溝部28に充填される。外周面24の溝部28に第一の材料層43の突部43aが充填されることにより、外周面24の溝部28と第一の材料層43の突部43aとを凹凸状に係合させることができる。
第一の材料層43が外輪21の外周面24に設けられた状態において、外周面24のうち、第一の材料層43の軸線O方向の両側部に位置する第1側部24cおよび第2側部24dが外部に露出されている。
外周面層52は、第一の材料層43の第1外周面46を覆う層である。第1側面層53は、外周面層52の一端部52aに連結され、第一の材料層43の第1側面48を覆う層である。第1側面層53は、外輪21の外周面24の第1側部24cに接触されている。
第2側面層54は、外周面層52の他端部52bに連結され、第一の材料層43の第2側面49を覆う層である。第2側面層54は、外輪21の外周面24の第2側部24dに接触されている。
すなわち、第二の材料層44の第1側面層53および第2側面層54で第一の材料層43の両側面(第1側面48、第2側面49)が挟み込まれている。
第二の材料層44が熱可塑性エラストマーを含むことで、第一の材料層43に含まれる非晶性熱可塑性樹脂との熱融着性が高まり、第一の材料層43と第二の材料層44とが熱融着され、第二の材料層44が第一の材料層43に充分に固定される。
熱可塑性エラストマーとしては、第一の材料層43の説明において先に例示した熱可塑性エラストマーが挙げられる。中でも、TPU、TPEE、TPSが好ましい。特に、TPEEは、吸湿性も低く、成形性も良好なため軸受10の第二の材料層44の材料として最適である。
熱融着は、2色成形時に特に効果を発揮する。
デュロ硬度Aは、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用い測定される値である。
ここで、本発明において、「軟らかい材料」とは、第二の材料層44の曲げ弾性率および硬度(例えば、デュロ硬度A(デュロメータ硬さA))の少なくとも一方が、第一の材料層43よりも小さいことを意味する。
曲げ弾性率や硬度は、熱可塑性エラストマーや無機繊維の種類や含有量などにより調整できる。
Tm≧Tg-5 ・・・(1)
無機繊維としては、第一の材料層43の説明において先に例示した無機繊維が挙げられる。
非晶性熱可塑性樹脂としては、第一の材料層43の説明において先に例示した非晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えばグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ボロンナイトライド(BN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂等の摺動性改良剤;カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、および染料等の着色剤;離型剤;熱伝導剤;帯電防止剤;造核剤;老化防止剤(酸化防止剤);紫外線吸収剤;難燃剤などが挙げられる。これらその他の添加剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせおよび任意の比率で併用してもよい。
また、第二の材料層44の第1側面層53および第2側面層54で第一の材料層43の両側面(第1側面48、第2側面49)が挟み込まれている。よって、第二の材料層44が射出成形後に冷却して収縮することにより、第一の材料層43の第1側面48および第2側面49を、第二の材料層44の第1側面層53および第2側面層54で挟持できる。これにより、第二の材料層44を第一の材料層43に一層強固に係合させることができる。
よって、第1側面48に対する第1側面層53の接触面積が大きく確保されている。第2側面49に対する第2側面層54の接触面積が大きく確保されている。これにより、第二の材料層44が冷却して収縮することにより、第1側面48および第2側面49の全域を第1側面層53および第2側面層54で挟持できる。この結果、第二の材料層44を第一の材料層43に一層強固に係合させることができる。よって、第二の材料層44に軸線O方向の力や、外輪21の外周面24からめくられる方向の力がかかった場合でも、第二の材料層44が外輪21の外周面24から剥がれ難くできる。
また、第一の材料層43および第二の材料層44を、例えば2色成形で射出成形する際に、第一の材料層43に含まれる非晶性熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーと、第二の材料層44に含まれる熱可塑性エラストマーを、ウレタンゴムのように金型内で長時間にわたり硬化させる必要がない。すなわち、第一の材料層43および第二の材料層44を射出成形する際に、ウレタンゴムのように金型内で長時間にわたり硬化させる工程を不要にできる。
これにより、外輪21の外周面24に被覆層18(第一の材料層43、第二の材料層44)が形成された軸受10を安価に大量に製造できる。
第一の材料層43や第二の材料層44を射出成形するために金型が用いられる。特に、第二の材料層44を射出成形する金型は、例えばゲートG1が第二の材料層44の第1側面層53に相当する位置に配置される。溶融された熱可塑性エラストマーがゲートG1から金型の内部(キャビティ)に充填されることにより、第一の材料層43および外周面24の第1側部24cおよび第2側部24dに第二の材料層44がインサート成形される。
金型のゲートG1を第1側面層53に相当する位置に設けることにより、熱可塑性エラストマーの充填個所を外周面層52の被覆外周面52cからずらすことができる。
このように、ゲートG1やパーティングラインPLを外周面層52の被覆外周面52cからずらすことにより、熱可塑性エラストマーをゲートG1から金型内に充填させる際に生じるバリや、パーティングラインPLにより生じるバリなどが外周面層52の被覆外周面52cに生じさせないようにできる。これにより、外周面層52の被覆外周面52cからバリを除去する後加工を不要にできる。
ここで、第1側面層53の外側面53bと第2側面層54の内周面54aとの間の間隔が被覆層18の幅寸法となる。被覆層18の幅寸法は、輪体12の幅寸法と同一に設定されている。
すなわち、小型の軸受の場合、例えば、被覆層を外周面に接着剤で接着すると接着剤の塗布ムラにより、接着剤を外周面に均一の厚さ寸法に塗布できないおそれがある。一方、小型の軸受の場合、被覆層の厚さ寸法が1.0mmより小さくなることが考えらえる。この状態において、接着剤が外周面に均一の厚さ寸法に塗布されていない場合、被覆層の硬度が不均一になることが考えられる。
このため、被覆層が被覆された小型の軸受で搬送物を搬送する場合や、被覆層を接触物に沿って転がり動作させる場合に、音(ノイズ)が発生したり、トルクムラの原因となったりするおそれがある。
これにより、軸受10を小型に形成した場合でも、搬送物を軸受10で搬送する場合や、接触物に沿って軸受10を転がり動作させる際に、音(ノイズ)の発生や、トルクムラの原因を抑えることができる。
また、以下のようにして被覆層18を形成してもよい。まず、第一の材料層43を環状などの所望の形状に予め成形しておく。この第一の材料層43の第1外周面46、第1側面48、第2側面49を覆うように、第二の材料層44をインサート成形する。第二の材料層44が形成された第一の材料層43を外輪21の外周面24に嵌め込むなどして取り付ける。
次に、第一実施形態の軸受10の変形例について説明する。
図2は、第一実施形態に係る軸受の変形例を示す側面図である。
図2に示すように、第二の材料層44の被覆外周面に、歯車用の複数の歯57を形成することも可能である。これにより、軸受10を歯車55として用いることが可能になる。歯車55は、例えば、遊星歯車機構の内部の小さなプラネタリギア(遊星歯車)として用いることが可能である。
歯車55は、複数の歯57が熱可塑性エラストマーで形成されている。これにより、歯車55が噛み合う際に発生する駆動音を低減することが可能である。
また、複数の歯57を形成する第二の材料層44は、歯車55の耐摩耗性、機械的強度などを考慮してデュロ硬度Aが95を超えた熱可塑性エラストマーの使用も可能である。
図3に示すように、例えば、軸受10は移動体(駆動モジュール)1に取り付けられて車輪として用いられる。移動体1は、本体部2と、本体部2の両側に取り付けられた複数の軸受10とを備えている。複数の軸受10は、内輪22が支持軸41に取り付けられることにより固定されている。
支持軸41は本体部2に取り付けられている。内輪22が支持軸41に固定されることにより、外輪21および被覆層18が支持軸41に回転自在に支持されている。すなわち、複数の軸受10は車輪として用いられる。
外輪21に被覆層18が形成されているので、軸受10が接触物5を転がりながら移動する際に、被覆層18(特に、第二の材料層44)により音(ノイズ)を低減させることができる。また、外輪21の外周面24に被覆層18が強固に係合されているので、外輪21の外周面24から被覆層18が脱落することを防止できる。
このように、移動体1に複数の軸受10を備えることにより、耐久性を確保できるとともに低コストの移動体1を得ることができる。
また、その他の例として、軸受10を走行方向が旋回する自在車に適用してもよい。軸受10を自在車に適用することにより、移動体1の走行方向に対応させて軸受10を旋回させることができる。
このように、搬送装置に軸受10を備えることにより、耐久性を確保できるとともに低コストの搬送装置を得ることができる。
図4は、第二実施形態に係る軸受130の断面図である。
図4に示すように、軸受130は、第一実施形態の被覆層18を被覆層132に代えたもので、その他の構成は第一実施形態の軸受10と同様である。
被覆層132は、第一実施形態の第一の材料層43を第一の材料層113に代え、第二の材料層44を第二の材料層134に代えたものである。
第1層側面136は、外輪21の外周面24の第1端縁24aと面一に形成されている。第2層側面137は、外輪21の外周面24の第2端縁24bと面一に形成されている。すなわち、第二の材料層134は、外輪21の外周面24や、第一の材料層113と同じ幅寸法W2に形成されている。
第二の材料層134は、第一の材料層113の第1外周面116に強固に熱融着により係合されている。
これにより、第5実施形態の軸受130によれば、第二の材料層134を第一の材料層113を介して外輪21の外周面24に強固に係合させることができる。
図5は、第三実施形態に係る軸受140の断面図である。
図5に示すように、軸受140は、第一実施形態の輪体12を輪体152に代え、第一実施形態の被覆層18を被覆層142に代えたもので、その他の構成は第一実施形態の軸受10と同様である。
輪体152は、第一実施形態の外輪21を外輪154に代えたものである。
被覆層142は、第一実施形態の第一の材料層43を第一の材料層143に代え、第二の材料層44を第二の材料層144に代えたものである。
第一の材料層143は、外周面24に沿って非晶性熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを含む材料で環状に形成されている。よって、第一の材料層143が冷却されて硬化する際の収縮により、第一の材料層143が外周面24に強固に取り付けられる。
第二の材料層144の材質は、第一実施形態の第二の材料層44と同様である。
また、第二の材料層144を第一の材料層143よりも軟らかい材料とすることにより、第一の材料層143に硬い材料を使用できる。
また、第一の材料層143が外輪154の外周面24に形成されることにより、第一の材料層143が環状に形成される。よって、第一の材料層143が冷却されて硬化する際の収縮により、第一の材料層143が外輪154の外周面24に強固に取り付けられる。
また、第二の材料層144を第一の材料層143よりも軟らかい材料とすることにより、軸受140の外輪で紙幣や切符などの搬送物を搬送する場合や、軸受140を移動体の車輪として接触物に沿って転がせる場合に、第二の材料層144で音(ノイズ)を低減できる。
図6は、第四実施形態に係る構造体160の断面図である。
図6に示すように、構造体160は、平坦部材162の外面163に被覆層164が形成されている。平坦部材162は、例えばステンレスなどの金属材料からなる金属部材である。
被覆層164は、平坦部材162の外面163に形成された第一の材料層165と、第一の材料層165の外面165aに形成された第二の材料層166とを備えている。
突起部171は、平坦部材162の外面163に形成された第一の材料層165で覆われる。第一の材料層165は、第1実施形態の第一の材料層43(図1参照)と同じ材料であり、具体的には非晶性熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを含む材料で形成されている。第一の材料層165は、突起部171に係止されることにより、平坦部材162の外面163に強固に係止されている。
第二の材料層166は、外周面層175、第1側面層176および第2側面層177を有する。第二の材料層166の第1側面層176および第2側面層177で第一の材料層165の両側面(第1側面165b、第2側面165c)が挟み込まれている。よって、第二の材料層166が冷却して収縮することにより、第一の材料層165の第1側面165bおよび第2側面165cを第二の材料層166(第1側面層176、第2側面層177)で挟持できる。これにより、第二の材料層166を第一の材料層165に強固に係合させることができる。
また、第四実施形態の構造体160によれば、第一実施形態の軸受10と同様に、平坦部材162の外面163に被覆層164が形成された構造体160を大量に、かつ安価に製造することができる。
実施例および比較例における各種測定・評価方法と、使用した材料は以下の通りである。
<MFR値の測定>
JIS K 7210に準拠し、測定温度280℃、測定荷重2.16kgの条件にてMFR値を測定した。
示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度10℃/minで、測定試料を予想される融点以上の温度まで加熱した。次いで、降温速度10℃/minで、測定試料を0℃まで冷却し、そのまま1分間放置した。その後、再び昇温速度10℃/minで加熱昇温したときの融解ピークを測定し、これを融点とした。また、融解ピークと同時に融解熱およびガラス転移温度を測定した。
ISO 527-4に準拠して、引張り強さおよび破断伸びを測定した。
JIS K 7161-2に記載の引張り特性の試験に使用するダンベル形状の試験片を、金型を用いて作製した。マイクロメータを用いて試験片の流れ方向の寸法(全長)を測定した。同様に金型の寸法(全長)を測定し、下記式より流れ方向の成形収縮率を求めた。
成形収縮率={(金型寸法-試験片の寸法)/金型寸法}×100
図7に示す万能試験機200を用意した。万能試験機200は、中空状の抜き打ち治具210と台座220とを備える。
図7(a)に示すように、軸受130を抜き打ち治具210と台座220との間にセットし、軸受130の軸線方向に抜き打ち治具210を押し込み、第一の材料層113と第二の材料層134との融着面が剥離する際の最大荷重を求め、これを第二の材料層134の抜き力とした。
次いで、図7(b)に示すように、第二の材料層が剥離された軸受131を抜き打ち治具210と台座220との間にセットし、軸受131の軸線方向に抜き打ち治具210を押し込み、外輪と第一の材料層113との融着面が剥離する際の最大荷重を求め、これを第一の材料層113の抜き力とした。
3つの軸受130について測定を行い、第一の材料層113および第二の材料層134の抜き力の平均値と標準偏差を求めた。
なお、図7においては、軸受130の構成部材のうち第一の材料層113および第二の材料層134のみを図示し、第一の材料層113および第二の材料層134以外の構成部材は省略する。
第一の材料層の外観を目視にて観察し、割れの有無を確認した。
JIS K 7171に準拠して、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
ASTM D256に準拠し、試験片(1/8インチ、ノッチ付き)のアイゾット衝撃強度を測定した。
JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用いて、デュロ硬度Aを測定した。
移動テーブルに試験片を設置し、接触相手材としてガラスプレートを用い、荷重0.7kg、速度0.16m/sで20分間往復摺動試験を行ったときの、試験片の摩耗量を測定した。
<非晶性熱可塑性樹脂>
非晶性熱可塑性樹脂として、芳香族ポリカーボネート樹脂(MFR値:44g/10min、ガラス転移温度:147℃)またはABS樹脂(MFR値:127g/10min、ガラス転移温度:102℃)を用いた。
熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(MFR値:44g/10min、融点:142℃、デュロ硬度A:58)を用いた。
無機繊維として、チタン酸カリウム繊維(6チタン酸カリウム、平均繊維長:15μm、平均繊維径:0.5μm)を用いた。
その他の添加剤として、シリコーン樹脂を用いた。
表1に示す配合組成に基づき、被覆層の第一の材料層および第二の材料層を2色成形により形成し、図4に示す軸受130を製造した。具体的には、表1に示す成形温度にて、外輪21の外周面24に第一の材料層113を射出成形によりインサート成形した後、第二の材料層134を射出成形によりインサート成形して、軸受130を得た。
第一の材料層113と同じ組成で試験片を作製し、引張り強さ、破断伸び、曲げ弾性率および成形収縮率を測定した。同様に、第二の材料層134と同じ組成で試験片を作製し、引張り強さ、破断伸び、デュロ硬度Aおよび曲げ弾性率を測定した。各試験片を作製する際の成形温度は、表1に示す成形温度とした。これらの結果を表1に示す。
また、第一の材料層113および第二の材料層134の抜き力を測定した。さらに、第一の材料層113の外観評価を行った。これらの結果を表1に示す。
なお、第一の材料層における非晶性熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの質量比(非晶性熱可塑性樹脂:熱可塑性エラストマー)は、実施例1では97.1:2.9であり、実施例2では93.9:6.1であり、実施例3では87.9:12.1であり、実施例4では82.9:17.1であり、実施例5では97.1:2.9であり、比較例1~3では100:0であった。
表1中の「PC」は芳香族ポリカーボネート樹脂の略号であり、「ABS」はABS樹脂の略号である。
表1に示す第一の材料層の配合組成に基づき、試験片を作製して成形収縮率を測定した。試験片を作製する際の成形温度は、240℃とした。結果を表1に示す。
なお、第一の材料層における非晶性熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの質量比(非晶性熱可塑性樹脂:熱可塑性エラストマー)は、78.6:21.4であった。
すなわち、第一の材料層の抜き力を測定している際には、必ずウエルド部が径方向に向かって完全に割れて(割れによってできた空間が)周方向に広がることで、溝部から第一の材料層が外れて抜ける。この動作中に第一の材料層に掛かった最大の力が抜き力として測定されるが、特に比較例1、2の第一の材料層には初めからウエルド部に割れが生じており、この割れの大きさ(深さ)も各サンプルでバラつきがある。
従って、比較例1、2の場合小さな抜き力しか得られず、また抜き力の値には大きなバラつきが生じているものと考えられる。これに対し、実施例1~5の場合にはウエルド部に割れを生じていないため大きな抜き力が得られると共に、そのバラつきも小さい。
さらに、実施例1~5の場合、第一の材料層の成形収縮率は0.44%以下であった。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂を55質量%と、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを15質量%と、チタン酸カリウム繊維を30質量%用いた場合(参考例6)の成形収縮率は0.48%であった。これらの結果より、熱可塑性エラストマーの含有量が少なくなるほど成形時の収縮率が大きくなりにくく、精密な成形が容易となることが示された。
比較例3で得られた軸受は、実施例1~5に比べて第一の材料層の抜き力が小さかった。
以下、実験例について説明する。
実験例1~4では、熱可塑性エラストマーに無機繊維を配合することで第一の材料層や第二の材料層の摩耗量の軽減抑制効果が得られることを確認するために、ポリエステル系熱可塑性エラストマーへのチタン酸カリウム繊維の配合量を変化させた場合の、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの物性(引張り強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、アイゾットノッチおよびデュロ硬度A)と摩耗量を測定した。結果を表2、図8に示す。
表2、図8において、チタン酸カリウム繊維を含有しないポリエステル系熱可塑性エラストマーを「エラストマー(単体)」として示す。また、チタン酸カリウム繊維を10質量%含有したポリエステル系熱可塑性エラストマーを「エラストマー(10wt%)」として示す。チタン酸カリウム繊維を20質量%含有したポリエステル系熱可塑性エラストマーを「エラストマー(20wt%)」として示す。チタン酸カリウム繊維を30質量%含有したポリエステル系熱可塑性エラストマーを「エラストマー(30wt%)」として示す。
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーにチタン酸カリウム繊維を10質量%、20質量%、30質量%含有させた状態において、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのデュロ硬度Aを94から96,97,98と略同様に確保できた。
さらに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーにチタン酸カリウム繊維を10質量%、20質量%、30質量%含有させた状態において、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの摩耗量を12.5×10-3cm3から10.1×10-3cm3,7.0×10-3cm3,3.8×10-3cm3と減少させることができた。
18,132,142,164 被覆層
21,154 外輪(金属部材)
43,113,143,165 第一の材料層
44,134,144,166 第二の材料層
160 構造体
162 平坦部材(金属部材)
Claims (8)
- 金属部材と、前記金属部材上に形成された被覆層とを備えた構造体であって、
前記被覆層は、前記金属部材上に形成された第一の材料層と、前記第一の材料層上に形成された第二の材料層とを備え、
前記第一の材料層は、非晶性熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとを含み、前記第一の材料層の総質量に対して、前記第一の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーの含有量が2~12質量%であり、前記第一の材料層に含まれる非晶性熱可塑性樹脂の含有量が58~68質量%であり、
前記第二の材料層は、熱可塑性エラストマーを含み、
前記第二の材料層は、前記第一の材料層よりも軟らかい材料である、構造体。 - 金属部材と、前記金属部材上に形成された被覆層とを備えた構造体であって、
前記被覆層は、前記金属部材上に形成された第一の材料層と、前記第一の材料層上に形成された第二の材料層とを備え、
前記第一の材料層は、非晶性熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとを含み、前記第一の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーの含有量が、前記第一の材料層の総質量に対して2~12質量%であり、前記第一の材料層に含まれる非晶性熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの質量比(非晶性熱可塑性樹脂:熱可塑性エラストマー)が85:15~95:5であり、
前記第二の材料層は、熱可塑性エラストマーを含み、
前記第二の材料層は、前記第一の材料層よりも軟らかい材料である、構造体。 - 金属部材と、前記金属部材上に形成された被覆層とを備えた構造体であって、
前記被覆層は、前記金属部材上に形成された第一の材料層と、前記第一の材料層上に形成された第二の材料層とを備え、
前記第一の材料層は、非晶性熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとを含み、
前記第二の材料層は、熱可塑性エラストマーを含み、
前記第二の材料層は、前記第一の材料層よりも軟らかい材料であり、
前記第二の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーの融点をTm、前記第一の材料層に含まれる非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとしたときに、Tg≧Tm≧Tg-5を満たす、構造体。 - 前記第二の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーの融点をTm、前記第一の材料層に含まれる非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとしたときに、下記式(1)を満たす、請求項1または2に記載の構造体。
Tm≧Tg-5 ・・・(1) - 前記第一の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーの含有量が、前記第一の材料層の総
質量に対して2~12質量%である、請求項3に記載の構造体。 - 前記第一の材料層は、無機繊維をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造体。
- 前記第一の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーと、前記第二の材料層に含まれる熱可塑性エラストマーとが同じ種類である、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造体。
- 前記非晶性熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造体。
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